(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
JIS K 7244−4により周波数0.3Hzおよび25℃で測定された貯蔵弾性率が1000〜4000MPaであり、ガラスを両面に接着させた積層体について25℃で測定した圧縮せん断強さが5〜80MPaであり、膜厚が100〜3,000μmであり、ポリビニルアセタール樹脂を40質量%以上含む、太陽電池用封止材又は合わせガラス用中間膜。
JIS K 7244−4により周波数0.3Hzおよび50℃で測定された貯蔵弾性率が、50〜4000MPaであり、ガラスを両面に接着させた積層体について50℃で測定した圧縮せん断強さが5〜80MPaであり、膜厚が100〜3,000μmであり、ポリビニルアセタール樹脂を40質量%以上含む、太陽電池用封止材又は合わせガラス用中間膜。
厚さ2.8mmのガラスを両面に接着させた積層体についてJIS R 3212の耐貫通性試験に準じて、鋼球を高さ2mから落下させた場合に貫通しない、請求項1又は2に記載の太陽電池用封止材又は合わせガラス用中間膜。
【背景技術】
【0002】
近年、資源の有効利用や環境汚染の防止等の面から、太陽光を電気エネルギーに直接変換する太陽電池が広く使用され、さらなる開発が進められている。
【0003】
結晶系シリコン太陽電池は一般に、
図1に示すように、ガラス基板などからなる表面側透明保護部材11と裏面側保護部材(バックカバー)12との間にエチレン酢酸ビニル重合体(EVA)フィルム等の表面封止材13Aおよび裏面封止材13Bを介して、シリコン発電素子などの太陽電池セル14を複数、封止した構成とされており、フレーム15で補強され施工される。
【0004】
薄膜系シリコン、カドミウム・テルル太陽電池は一般に、
図2に示すように、ガラス基板などからなる表面側透明保護部材11に作製された太陽電池セル16と裏面側保護部材(バックカバー)12との間に可塑化ポリビニルブチラール並びにエチレン酢酸ビニル重合体(EVA)フィルム等の封止材13を介して、封止した構成とされており、フレーム15で補強され施工される。
【0005】
CIGS、CIS太陽電池は一般に、
図3に示すように、ガラス基板などからなる裏面側保護部材12に作製された太陽電池セル16とガラスなどからなる表面側透明保護部材11との間に可塑化ポリビニルブチラール並びにエチレン酢酸ビニル重合体(EVA)フィルム等の封止材13を介して、封止した構成とされており、フレーム15で補強され施工される。
【0006】
従来の太陽電池では、このようにフレームで補強され施工されるのが一般的であるが、太陽電池はさらなる耐久性の向上並びにコストダウンが望まれている。フレームの価格は一般的には封止材の2〜4倍程度であり、フレームレスでの施工は太陽電池のコストダウンに非常に有用である。
【0007】
そこで、フレームレス太陽電池が提案されている(例えば、ザ ソーラー スタンダード(THE SOLAR STANDARD)第1号)。しかしながら耐荷重試験に合格するためには裏面に補強構造が必要である場合が多く、裏面に補強構造が必要でない場合は高価な熱強化ガラスが使用されており、さらなるコストダウンが望まれている。このとき封止材としては可塑化ポリビニルブチラールが広く用いられているが、高温(50℃)付近で物性の低下が見られ、耐久性の観点からも改善が望まれている。太陽電池は発電時に発熱するため使用環境が20℃でも実際には50℃以上に昇温する可能性があるため、高温での耐荷重特性は非常に重要である。
【0008】
また、太陽電池モジュールの安全性適合認定(IEC61730−2)のMST32衝撃破壊試験に合格するためには耐衝撃性も非常に重要である。
【0009】
このような中、太陽電池用封止材として、高い体積抵抗率を有するポリビニルブチラール樹脂を用いることが知られている(例えば、国際公開第2009/151952号)。しかしながら、実施例においては可塑剤使用量が多く50℃付近での物性が不十分であり、またラミネーション温度での流動性が不十分で気泡、密着不良、等の外観不良が発生しやすい。
【0010】
ところで、従来からポリビニルブチラール樹脂は、シート状に成形され、建築物の窓ガラス等の合わせガラス用中間膜として広く使用されている。しかし、ガラスを貼り合わせた後に、熱によりガラス板がずれたり、気泡が発生することがあり、また、ガラスが割れやすい等、耐荷重特性が充分でないという問題があった。このような中、耐荷重特性の優れた耐危険窓設備用ガラス積層体として、アイオノマー樹脂からなるシートが提案されている(例えば、特表2002−514533号公報)。しかしながら、アイオノマー樹脂のシートは耐熱性が低く、50℃付近での物性が不充分である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の太陽電池用封止材又は合わせガラス用中間膜の一態様は、JIS K 7244−4により周波数0.3Hzおよび25℃で測定された貯蔵弾性率が1000〜4000MPaである。貯蔵弾性率は、好ましくは1100〜3000MPaである。さらに好ましくは1200〜2500MPaである。1000MPa未満の場合は耐荷重特性が不充分であり好ましくない。一方、4000MPaを超える場合は、製造が非常に困難である。上記太陽電池用封止材又は合わせガラス用中間膜は、ガラスを両面に接着させた積層体について25℃で測定した圧縮せん断強さが5〜80MPaである。好ましくは10〜80MPaであり、さらに好ましくは10〜60MPaである。なお、上記太陽電池用封止材又は合わせガラス用中間膜がゴムを含む場合は、ガラスを両面に接着させた積層体について25℃で測定した圧縮せん断強さは、7〜80MPaであることが好ましく、9〜60MPaであることがより好ましく、15〜40MPaであることがさらに好ましい。5MPa未満の場合は接着力が低すぎてガラスから剥離する可能性があるため、好ましくない。一方、80MPaを超える場合は、製造が非常に困難である。このような、貯蔵弾性率及びガラスとの接着性を有する太陽電池用封止材又は合わせガラス用中間膜は、ポリビニルアセタール樹脂、特に、ポリビニルブチラール樹脂を用いて、アセタール化度を最適化し、可塑剤を少量使用するか、或いは、全く使用しないことで、得ることができる。また、無機微粒子を添加することも効果的である。
【0032】
次に、ガラスへの接着性を測定するための圧縮せん断強さ試験について説明する。圧縮せん断強さは、
図4及び
図5に示す圧縮せん断強さ測定ジグを使用して測定される。まず、ガラス23およびガラス22に封止材(太陽電池用封止材又は合わせガラス用中間膜)21がはさまれた合わせガラスサンプル24(25mm×25mm)を作製する。
【0033】
合わせガラスサンプル24は、ジグ(下部)31の凹部31aに置かれる(
図5参照)。ジグ(下部)31は、地面と平行な平面に設置されており、凹部31aを有する斜面は、地面に対して角度45度の傾斜を有するものである。凹部31aはこの斜面に対して垂直に窪んでいる。凹部31aの凹みの形状と合わせガラスサンプル24の底面の形状は、同じ25mm×25mmの正方形であり、合わせガラスサンプル24は、凹部31aに引っ掛かることなく設置することが可能である。合わせガラスサンプル24を構成するガラス23は、凹部31aで、ジグ(下部)31と接する。
【0034】
凹部31aの深さは、合わせガラスサンプル24の厚さよりは浅く、合わせガラスサンプル24の上部、すなわちガラス22からなる部分は、ジグ(下部)31の斜面31bよりも上側に突出している。ジグ(下部)31と同様に、ジグ(上部)32の凹部32aの凹みの形状は、合わせガラスサンプル24の底面の形状と同じ25mm×25mmの正方形であり、斜面31bから突出したガラス22は、ジグ(上部)32の凹部32aと接し、係合することが可能である。なお、ジグ(上部)32は、圧縮せん断試験機のクロスヘッドに固定されているが、凹部32aを有する斜面が、ジグ(下部)31の斜面と同様に、地面に対して角度45度の傾斜を有するように、圧縮せん断試験機のクロスヘッドに固定されている。凹部32aはこの斜面に対して垂直に窪んでいる。
【0035】
圧縮せん断試験機のクロスヘッドに固定されたジグ(上部)32は、凹部32aが合わせガラスサンプル24のガラス22に接触するまで、地面に対して垂直方向に2.5mm/minの速度で下げられる(
図5参照)。ジグ(上部)32の凹部32aが、合わせガラスサンプル24の上部と係合した後も、クロスヘッドは2.5mm/minの速度で下げられる。その結果、合わせガラスサンプル24には、せん断応力がかかり、ある時点で封止材21と、ガラス22或いはガラス23は、接着破損が引き起こされる。ここで測定の対象となる圧縮せん断強さは、接着破損を引き起こした時点でのせん断応力をいう。合わせガラスサンプル24を6つ用意し、6回同じ試験を行って、その平均値を、その封止材の接着強さとすることができる。6回同じ試験を行って平均値を取った場合、通常、その誤差は、数%程度に収まることがわかっている。
【0036】
圧縮せん断強さ試験を行うための合わせガラスサンプル24の作製方法としては、例えば、市販のフロートガラス(厚さ3mm、大きさ25mm×25mm)2枚に封止材21を挟んだうえで、真空バック法(条件:30℃から160℃に60分間で昇温し、その後160℃で30分間保持)を採用して作製する方法が挙げられる。
【0037】
また、本発明の太陽電池用封止材又は合わせガラス用中間膜の別の一態様は、JIS K 7244−4により周波数0.3Hzおよび50℃で測定された貯蔵弾性率が50〜4000MPaであり、200〜3000MPaであることがより好ましい。さらには500〜2500MPaであることがさらに好ましい。周波数0.3Hzおよび50℃で測定された貯蔵弾性率が50MPa未満の場合は、特に、50℃付近まで温度が上がった場合における耐荷重特性が不充分であり好ましくない。一方、4000MPaを超える場合は、製造が非常に困難である。周波数0.3Hzおよび50℃で測定された貯蔵弾性率が200MPa以上である場合は、特に耐荷重特性が高い点で好ましい。上記太陽電池用封止材又は合わせガラス用中間膜は、ガラスを両面に接着させた積層体について50℃で測定した圧縮せん断強さが5〜80MPaであり、10〜80MPaであることが好ましく、10〜60MPaであることがより好ましく、10〜30MPaであることが特に好ましい。なお、上記太陽電池用封止材又は合わせガラス用中間膜がゴムを含む場合は、ガラスを両面に接着させた積層体について50℃で測定した圧縮せん断強さは、7〜50MPaであることが好ましく、10〜30MPaであることがより好ましい。ガラスを両面に接着させた積層体について50℃で測定した圧縮せん断強さが5MPa未満の場合は、特に、50℃付近まで温度が上がった場合に接着力が低すぎてガラスから剥離する可能性があるため、好ましくない。一方、80MPaを超える場合は、製造が非常に困難である。
【0038】
また、上記二態様の本発明の太陽電池用封止材又は合わせガラス用中間膜は、厚さ2.8mmのガラスを両面に接着させた積層体についてJIS R 3212の耐貫通性試験に準じて、重さ2260kgの鋼球を高さ2mから落下させた場合に貫通しないことが好ましい。太陽電池の耐衝撃性は、上記した表面側透明保護部材11の種類と厚さ、裏面側保護部材12の種類と厚さ、さらには表面側透明保護部材11と裏面側保護部材12を接着する封止材13の物性が重要であり、中でも特に封止材13の物性が重要である。一般的に、上記の耐荷重特性の観点からは、封止材は硬いものが好ましいと考えられ、耐衝撃性の観点からは、封止材は柔らかいものが好ましいと考えられるので、耐荷重特性と耐衝撃性を両立することは非常に困難である。これに対し、鋼球を高さ2mから落下させた場合に貫通しない上記の太陽電池用封止材又は合わせガラス用中間膜によれば、太陽電池モジュールにおいて、耐荷重特性および耐衝撃性を両立することができ、また、合わせガラスにおいて、耐久性、耐荷重特性および耐衝撃性をすべて満足することができる。鋼球を高さ2mから落下させた場合に貫通するような太陽電池用封止材を用いると、得られる太陽電池モジュールの耐衝撃性が充分でなく、太陽電池モジュールが安全性適合認定(IEC61730−2)のMST32衝撃破壊試験に不合格になるおそれがある。
後述するように、ポリビニルアセタール樹脂に所定量のゴムを混合することで、貯蔵弾性率及び圧縮せん断強さを維持したまま、JIS R 3212の耐貫通性試験に準じて、鋼球を高さ2mから落下させた場合に貫通しない、充分な耐衝撃性を有する上記の太陽電池用封止材又は合わせガラス用中間膜を得ることが可能となる。ここで、鋼球としては、質量2260±20g、直径約82mmの表面が滑らかなものを用いる。
【0039】
本発明の太陽電池用封止材又は合わせガラス用中間膜は、ポリビニルアセタール樹脂を主成分とすることが好ましく、具体的には、ポリビニルアセタール樹脂を40質量%以上含むことが好ましく、50質量%以上含むことがより好ましく、60質量%以上含むことがさらに好ましく、80質量%以上含むことが特に好ましく、ポリビニルアセタール樹脂のみから構成されていてもよい。ポリビニルアセタール樹脂の含有率が40質量%より少なくなると、所望の貯蔵弾性率を得ることが困難になったり、ガラスへの接着性が不充分になる傾向がある。
【0040】
ポリビニルアセタール樹脂としては平均アセタール化度40〜90モル%のものが好ましい。40モル%未満であると吸水率が高く好ましくない。90モル%を超えると、ポリビニルアセタール樹脂を得るための反応時間に長時間を要し、プロセス上好ましくないことがある。より好ましくは60〜85モル%であり、耐水性の観点から更に好ましくは、65〜80モル%である。
【0041】
ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアセタール樹脂中のビニルアセテート成分が30モル%以下のものが好ましい。30モル%を超えると、樹脂の製造時にブロッキングを起こし易くなるため、製造しにくくなる。好ましくは、20モル%以下である。
【0042】
ポリビニルアセタール樹脂は、通常、ビニルアセタール成分、ビニルアルコール成分及びビニルアセテート成分とから構成されており、これらの各成分量は、例えば、JIS K 6728「ポリビニルブチラール試験方法」や核磁気共鳴法(NMR)に基づいて測定することができる。
【0043】
ポリビニルアセタール樹脂が、ビニルアセタール成分以外の成分を含む場合は、ビニルアルコールの成分量とビニルアセテートの成分量を測定し、これらの両成分量を差し引くことで、残りのビニルアセタール成分量を算出することができる。
【0044】
上記ポリビニルアセタール樹脂は、従来公知の方法により製造することができ、代表的には、ポリビニルアルコールをアルデヒド類を用いてアセタール化することにより製造することができる。具体的には、ポリビニルアルコールを温水に溶解し、得られた水溶液を所定の温度、例えば、0〜96℃、好ましくは10〜20℃に保持しておいて、所要の酸触媒及びアルデヒド類を加え、撹拌しながらアセタール化反応を進行させ、次いで、反応温度を70℃に上げて熟成して、反応を完結させ、その後、中和、水洗及び乾燥を行ってポリビニルアセタール樹脂の粉末を得る方法等が挙げられる。
【0045】
ポリビニルアセタール樹脂の原料となるポリビニルアルコール平均重合度は、100以上であることが好ましく、400以上であることがより好ましく、600以上であることがさらに好ましく、700以上であること特に好ましく、750以上であることが最も好ましい。ポリビニルアルコールの平均重合度が低すぎると、得られる太陽電池モジュールの耐貫通性、耐クリープ物性、特に85℃、85%RHのような高温高湿条件下での耐クリープ物性が低下することがある。また、ポリビニルアルコールの平均重合度は、5000以下であることが好ましく、3000以下であることがより好ましく、2500以下であることがさらに好ましく、2300以下であることが特に好ましく、2000以下であることが最も好ましい。ポリビニルアルコールの平均重合度が5000を超えると樹脂膜の成形が難しくなることがある。さらに、得られる太陽電池用封止材又は合わせガラス用中間膜のラミネート適性を向上させ、外観に一層優れた太陽電池モジュール又は合わせガラスを得るためには、ポリビニルアルコールの平均重合度が1500以下であることが好ましく、1100以下であることがより好ましく、1000以下であることがさらに好ましい。なお、ポリビニルアセタール樹脂の平均重合度は、原料となるポリビニルアルコールの平均重合度と一致するため、上記したポリビニルアルコールの好ましい平均重合度はポリビニルアセタール樹脂の好ましい平均重合度と一致する。
【0046】
得られるポリビニルアセタール樹脂のビニルアセテート成分を30モル%以下に設定することが好ましいため、ケン化度が70モル%以上のポリビニルアルコールを使用することが好ましい。ポリビニルアルコールのケン化度が70モル%未満となると、樹脂の透明性や耐熱性が低下することがあり、また反応性も低下することがある。より好ましくは95モル%以上のものである。
【0047】
ポリビニルアルコールの平均重合度及びケン化度は、例えば、JIS K 6726「ポリビニルアルコール試験方法」に基づいて測定することができる。
【0048】
ポリビニルアルコールのアセタール化に用いるアルデヒド類としては、炭素数1〜12のアルデヒドが好ましい。アルデヒドの炭素数が12を超えるとアセタール化の反応性が低下し、しかも反応中に樹脂のブロックが発生しやすくなり、樹脂の合成に困難を伴い易くなる。
【0049】
アルデヒド類としては特に限定されず、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド、2−エチルブチルアルデヒド、n−ヘプチルアルデヒド、n−オクチルアルデヒド、n−ノニルアルデヒド、n−デシルアルデヒド、ベンズアルデヒド、シンナムアルデヒド等の脂肪族、芳香族、脂環式アルデヒドが挙げられる。これらのうちでも炭素数2〜6の脂肪族アルデヒドが好ましく、中でもブチルアルデヒドが特に好ましい。また、アルデヒド類は単一のものが使用されていてもよいし、2種以上が併用されていてもよい。更に、多官能アルデヒド類やその他の官能基を有するアルデヒド類などを全アルデヒド類の20質量%以下の範囲で少量併用してもよい。
【0050】
ポリビニルアセタール樹脂を主成分とする上記の太陽電池用封止材又は合わせガラス用中間膜においては、ポリビニルアセタール樹脂にゴムを混合することが、太陽電池用封止材又は合わせガラス用中間膜の耐衝撃性を向上させる観点から好ましい。ポリビニルアセタール樹脂にゴムを混合することにより、ポリビニルアセタール樹脂とともに、さらにゴムを含む太陽電池用封止材又は合わせガラス用中間膜が得られる。
【0051】
本発明に使用されるゴムは特に制限はないが、例えば、シリコーン・アクリル複合ゴム、アクリル系ゴム、シリコーンゴム、ブタジエン系ゴム(MBS、NBR、ABS、SBR等)、ウレタンゴム、天然ゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、エチレン・プロピレンゴム、フッ素ゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPEE)、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、熱硬化性エラストマーなどが挙げられる。これらの中でも、より一層耐衝撃性を向上させるためには、シリコーン・アクリル複合ゴム、アクリル系ゴム、ブタジエン系ゴムが好ましく、シリコーン・アクリル複合ゴム及びアクリル系ゴムがより好ましい。また、耐衝撃性向上の観点からはポリビニルアセタール樹脂に対して非相溶性のゴムも好ましく、このようなゴムとして、熱硬化性エラストマーがより好ましい。なお、ゴムは1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0052】
耐衝撃性をより一層向上させる観点から、上記ゴムのガラス転移温度は−10℃以下であることが好ましく、−20℃以下であることがより好ましく、−30℃以下であることがさらに好ましい。上記ゴムのガラス転移温度の下限は特に限定されないが、ゴムのガラス転移温度は、−200℃以上であることが好ましく、−150℃以上であることがより好ましい。ガラス転移温度の測定方法は、後述する実施例と同様に、JIS K 7244−4:1999年に基づいて測定し、tanδのピーク値を採用した。
【0053】
また、上記ゴムは耐衝撃性向上の観点から、平均粒子径は50〜400nmが好ましい。ゴムの平均粒子径は、例えば濁度法により求めることができる。
【0054】
また、上記ゴムの含有量は耐衝撃性向上の観点から、ポリビニルアセタール樹脂100質量部に対して、1〜100質量部であることが好ましく、3〜80質量部であることがより好ましく、5〜60質量部であることがさらに好ましい。ゴムの含有量が1質量部より少ないと耐衝撃性の改善効果が小さい。一方、ゴムの含有量が100質量部を超えると、室温(25℃程度)および50℃での貯蔵弾性率やガラスとの接着力が低下することにより、破断強度が不充分となるおそれがあることに加え、得られる太陽電池用封止材又は合わせガラス用中間膜の流動性も低下しラミネートが難しくなるので好ましくない。ゴムの添加量については、用いるポリビニルアセタール樹脂の組成、平均重合度等により適宜選択すればよい。
【0055】
また、本発明の合わせガラス用中間膜を建築用途に使用する場合は、前記中間膜の透明性も重要である。透明性を維持する観点からは、上記ゴムとポリビニルアセタール樹脂との屈折率の差が0.04以下であることが好ましく、0.02以下であることがより好ましく、0.01以下であることが特に好ましい。そして、より一層透明性を向上させる観点からは、アクリル系ゴムを用いることが好ましい。
【0056】
必要に応じて、太陽電池用封止材又は合わせガラス用中間膜のガラス等に対する接着性を制御することも可能である。接着性を制御する方法としては、通常、合わせガラスの接着性調整剤として使用される添加剤を添加する方法、接着性を調整するための各種添加剤を添加する方法等が挙げられる。このような方法によって、接着性調整剤および/または接着性を調整するための各種添加剤を含む太陽電池用封止材又は合わせガラス用中間膜が得られる。
【0057】
接着性調整剤としては、例えば、国際公開第03/033583号に開示されているものを使用することができ、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩が好ましく使用され、例えば、カリウム、ナトリウム、マグネシウム等の塩が挙げられる。上記塩としてはオクタン酸、ヘキサン酸、酪酸、酢酸、蟻酸等のカルボン酸等の有機酸;塩酸、硝酸等の無機酸の塩などが挙げられる。
【0058】
接着性調整剤の最適な添加量は、使用する添加剤により異なるが、得られるフィルム(太陽電池用封止材又は合わせガラス用中間膜)のガラスへの接着力が、パンメル試験(Pummel test;国際公開第03/033583号等に記載)において、一般には3〜10に調整することが好ましく、特に高い耐貫通性を必要とする場合は3〜6、高いガラス飛散防止性を必要とする場合は7〜10に調整することが好ましい。高いガラス飛散防止性が求められる場合は、接着性調整剤を添加しないことも有用な方法である。
【0059】
上記接着性を調整するための各種添加剤としてはシランカップリング剤が挙げられる。典型的にはシランカップリング剤は、組成物(太陽電池用封止材又は合わせガラス用中間膜)の全質量を基準にして約0.01〜約5質量%の量で加えられる。
【0060】
本発明にの太陽電池用封止材又は合わせガラス用中間膜は、さらに可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、ブロッキング防止剤、顔料、染料、機能性無機化合物等が、必要に応じて添加されていてもよい。また、必要に応じて、抽出や洗浄により可塑剤や各種添加剤の含有量を一旦低減させてから、新たに添加してもよい。
さらに、ポリビニルアセタール樹脂を主成分とする上記の太陽電池用封止材又は合わせガラス用中間膜の製造においては、本発明の趣旨に反しない限り、ポリビニルアセタール樹脂と、それ以外の樹脂とを混合することも可能であり、ポリビニルアセタール樹脂とそれ以外の樹脂との積層体を太陽電池用封止材又は合わせガラス用中間膜とすることも可能である。また、無機物(酸化チタン、タルク等)を混合することも可能である。
上記のような成分を添加・混合等して使用することにより、これらの成分を含む太陽電池用封止材又は合わせガラス用中間膜を得ることができる。
【0061】
可塑剤は特に制限はないが、例えば、ジ−(2−ブトキシエチル)−アジピン酸エステル(DBEA)、ジ−(2−ブトキシエチル)−セバシン酸エステル(DBES)、ジ−(2−ブトキシエチル)−アゼライン酸エステル、ジ−(2−ブトキシエチル)−グルタル酸エステル、ジ−(2−ブトキシエトキシエチル)−アジピン酸エステル(DBEEA)、ジ−(2−ブトキシエトキシエチル)−セバシン酸エステル(DBEES)、ジ−(2−ブトキシエトキシエチル)−アゼライン酸エステル、ジ−(2−ブトキシエトキシエチル)−グルタル酸エステル、ジ−(2−ヘキソキシエチル)−アジピン酸エステル、ジ−(2−ヘキソキシエチル)−セバシン酸エステル、ジ−(2−ヘキソキシエチル)−アゼライン酸エステル、ジ−(2−ヘキソキシエチル)−グルタル酸エステル、ジ−(2−ヘキソキシエトキシエチル)−アジピン酸エステル、ジ−(2−ヘキソキシエトキシエチル)−セバシン酸エステル、ジ−(2−ヘキソキシエトキシエチル)−アゼライン酸エステル、ジ−(2−ヘキソキシエトキシエチル)−グルタル酸エステル、ジ−(2−ブトキシエチル)−フタル酸エステル及び/又はジ−(2−ブトキシエトキシエチル)−フタル酸エステルなどが挙げられる。これらの中でも、分子を構成する炭素数及び酸素数の和が28よりも高い可塑剤であることが好ましい。例えば、トリエチレングリコール−ジ(2−エチルヘキサノエート)、テトラエチレングリコール−ジ(2−エチルヘキサノエート)、ジ−(2−ブトキシエトキシエチル)−アジピン酸エステル、ジ−(2−ブトキシエトキシエチル)−セバシン酸エステル、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸−ジイソノニルエステル(DINCH)などが挙げられる。なかでも、圧縮せん断強さやガラスへの接着性を低下させることなく、少量で、所望の可塑効果を得ることができる点から、トリエチレングリコール−ジ(2−エチルヘキサノエート)、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸−ジイソノニルエステルが好ましい。可塑剤の含有量は、ポリビニルアセタール樹脂100質量部に対して、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましく、2質量部以下がさらに好ましく、0質量部(すなわち、可塑剤を含まない)が特に好ましい。また、2種以上の可塑剤を併用してもよい。
【0062】
ポリビニルアセタール樹脂を主成分とする上記の太陽電池用封止材又は合わせガラス用中間膜において可塑剤の含有量は非常に重要であり、ポリビニルアセタール樹脂100質量部に対して、10質量部を超えて含有すると、室温並びに50℃での貯蔵弾性率が低下して好ましくない。添加量については用いるポリビニルアセタール樹脂の組成、分子量等により適宜選択すればよい。なお、可塑剤の含有量がポリビニルアセタール樹脂100質量部に対して10質量部以下(好ましくは5質量部以下、より好ましくは2質量部以下、さらに好ましくは0質量部)である太陽電池用封止材又は合わせガラス用中間膜によれば、得られる太陽電池モジュールの耐荷重特性を向上させることができ、また、得られる合わせガラスの耐久性や耐荷重特性を向上させせることができる。本発明はポリビニルアセタール樹脂を主成分とし、可塑剤の含有量が当該ポリビニルアセタール樹脂100質量部に対して10質量部以下(好ましくは5質量部以下、より好ましくは2質量部以下、さらに好ましくは0質量部)である太陽電池用封止材又は合わせガラス用中間膜を包含する。ここで、当該太陽電池用封止材又は合わせガラス用中間膜は、ポリビニルアセタール樹脂を40質量%以上含むことが好ましく、50質量%以上含むことがより好ましく、60質量%以上含むことがさらに好ましく、80質量%以上含むことが特に好ましく、ポリビニルアセタール樹脂のみから構成されていてもよい。
【0063】
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤などが挙げられ、これらの中でもフェノール系酸化防止剤が好ましく、アルキル置換フェノール系酸化防止剤が特に好ましい。
【0064】
フェノール系酸化防止剤の例としては、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,4−ジ−t−アミル−6−(1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル)フェニルアクリレートなどのアクリレート系化合物、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、オクタデシル−3−(3,5−)ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス(6−t−ブチル−m−クレゾール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、ビス(3−シクロヘキシル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)メタン、3,9−ビス(2−(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス(メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタン、又はトリエチレングリコールビス(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート)などのアルキル置換フェノール系化合物、6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−2,4−ビス−オクチルチオ−1,3,5−トリアジン、6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルアニリノ)−2,4−ビス−オクチルチオ−1,3,5−トリアジン、6−(4−ヒドロキシ−3−メチル−5−t−ブチルアニリノ)−2,4−ビス−オクチルチオ−1,3,5−トリアジン、又は2−オクチルチオ−4,6−ビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−オキシアニリノ)−1,3,5−トリアジンなどのトリアジン基含有フェノール系化合物などがある。
【0065】
リン系酸化防止剤としては、例えば、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、トリス(シクロヘキシルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、又は10−デシロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレンなどのモノホスファイト系化合物、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシルホスファイト)、4,4’−イソプロピリデン−ビス(フェニル−ジ−アルキル(C12〜C15)ホスファイト)、4,4’−イソプロピリデン−ビス(ジフェニルモノアルキル(C12〜C15)ホスファイト)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ジ−トリデシルホスファイト−5−t−ブチルフェニル)ブタン、又はテトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンホスファイトなどのジホスファイト系化合物などがある。これらの中でもモノホスファイト系化合物が好ましい。
【0066】
硫黄系酸化防止剤としては、例えば、ジラウリル3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル3,3’−チオジプロピオネート、ラウリルステアリル3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリル−チオプロピオネート)、3,9−ビス(2−ドデシルチオエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンなどがある。
【0067】
これらの酸化防止剤は単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。酸化防止剤の配合量は、ポリビニルアセタール樹脂100質量部に対して0.001〜5質量部、好ましくは0.01〜1質量部の範囲である。酸化防止剤の量が0.001質量部より少ないと充分な効果が発現しないことがあり、また5質量部より多くしても格段の効果は望めない。
【0068】
また、紫外線吸収剤としては、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α’−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール又は2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロネート、又は4−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)−1−(2−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)エチル)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどのヒンダードアミン系紫外線吸収剤、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、又はヘキサデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエートなどのベンゾエート系紫外線吸収剤などが挙げられる。これらの紫外線吸収剤の添加量は、ポリビニルアセタール組成物に対して質量基準で10〜50,000ppmであることが好ましく、100〜10,000ppmの範囲であることがより好ましい。添加量が10ppmより少ないと充分な効果が発現しないことがあり、また50,000ppmより多くしても格段の効果は望めない。これら紫外線吸収剤は2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0069】
また、光安定剤としてはヒンダードアミン系のもの、例えば、株式会社ADEKA製「アデカスタブLA−57(商品名)」が挙げられる。
【0070】
本発明の太陽電池用封止材又は合わせガラス用中間膜の製造方法は特に限定されるものではなく、上記の樹脂に所定量の可塑剤及び必要に応じて他の添加剤を配合し、これを均一に混練りした後、押出し法、カレンダー法、プレス法、キャスティング法、インフレーション法等、公知の製膜方法によりフィルム(シート)を作製し、これを太陽電池用封止材又は合わせガラス用中間膜とすることができる。
【0071】
公知の製膜方法の中でも特に押出機を用いてフィルム(シート)を製造する方法が好適に採用される。押出し時の樹脂温度は150〜250℃が好ましく、170〜230℃がより好ましい。樹脂温度が高くなりすぎるとポリビニルアセタール樹脂が分解を起こし、揮発性物質の含有量が多くなる。逆に温度が低すぎると、やはり揮発性物質の含有量は多くなる。揮発性物質を効率的に除去するためには、押出機のベント口から減圧により、揮発性物質を除去することが好ましい。
【0072】
また、本発明の太陽電池用封止材又は合わせガラス用中間膜は表面にメルトフラクチャー、エンボスなど、従来公知の方法で凹凸構造を形成することが好ましい。メルトフラクチャー、エンボスの形状は特に限定されず、従来公知のものを採用することができる。
【0073】
また、太陽電池用封止材の全体の膜厚は、20〜10,000μmが好ましく、100〜3,000μmがより好ましく、200〜1,000μmがさらに好ましい。合わせガラス用中間膜の膜厚は、20〜10,000μmが好ましく、100〜3,000μmがより好ましい。薄すぎると太陽電池モジュール又は合わせガラスを作製する際にうまくラミネートできないことがあり、厚すぎるとコスト高に繋がるため好ましくない。
【0074】
本発明の太陽電池用封止材は、太陽電池と表面側透明保護部材及び裏面側保護部材との間を封止して太陽電池モジュールを形成するための封止材として使用できる。このような太陽電池モジュールとしては、種々のタイプのものを例示することができる。例えば、表面側透明保護部材/表面封止材/太陽電池セル/裏面封止材/裏面側保護部材のように太陽電池セルの両側から封止材で挟む構成のもの、表面側透明保護部材/太陽電池セル/封止材/裏面側保護部材のような構成のもの、表面側透明保護部材/封止材/太陽電池セル/裏面側保護部材のような構成のものなどを挙げることができる。
【0075】
太陽電池モジュールを構成する太陽電池セルとしては、単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコンなどのシリコン系、ガリウム・砒素、CIGS、カドミウム・テルルなどのIII−V族やII−VI族化合物半導体系、色素増感、有機薄膜などの有機系等の各種太陽電池セルが挙げられる。
【0076】
太陽電池モジュールを構成する表面側透明保護部材としては、ガラス、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリエステル、フッ素含有樹脂などを例示することができる。また裏面保護部材としては、金属や各種熱可塑性樹脂フィルムなどの単体もしくは多層のシートを例示することができ、具体的には、例えば、錫、アルミ、ステンレススチールなどの金属、ガラス等の無機材料、ポリエステル、無機物蒸着ポリエステル、フッ素含有樹脂、ポリオレフィンなどの1層もしくは多層のシートを例示することができる。
【0077】
太陽電池モジュールの製造に当たっては、本発明の封止材のフィルム(シート)を予め作っておき、封止材が溶融する温度で圧着するという従来公知の方法によって、すでに述べたような構成のモジュールを作製することができる。
【0078】
真空ラミネーター装置を用いる場合、例えば、太陽電池モジュールの製造に用いられる公知の装置を使用し、1〜30,000Paの減圧下、100〜200℃、特に130〜170℃の温度でラミネートされる。真空バッグ又は真空リングを用いる方法は、例えば、EP1235683B1に記載されており、例えば、約20,000Paの圧力下、130〜170℃でラミネートされる。
【0079】
ニップロールを用いる場合、例えば、ポリビニルアセタール樹脂の流動開始温度以下の温度で1回目の仮圧着をした後、さらに流動開始温度に近い条件で仮圧着する方法が挙げられる。具体的には、例えば、赤外線ヒーターなどで30〜100℃に加熱した後、ロールで脱気し、さらに50〜150℃に加熱した後ロールで圧着して接着又は仮接着させる方法が挙げられる。
【0080】
仮圧着後に付加的に行われるオートクレーブ工程は、モジュールの厚さや構成にもよるが、例えば、約1〜1.5MPaの圧力下、130〜155℃の温度で約2時間実施される。
【0081】
本発明の合わせガラス用中間膜により合わせガラスを作製する際に使用するガラスは特に限定されず、フロート板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、網入り板ガラス、熱線吸収板ガラスなどの無機ガラスのほか、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネートなどの従来公知の有機ガラス等が使用でき、これらは無色、有色、あるいは透明、非透明のいずれであってもよい。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、ガラスの厚さは特に限定されないが、100mm以下であることが好ましい。
【実施例】
【0082】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0083】
なお、以下の実施例及び比較例において、使用されたポリビニルブチラール樹脂(PVB)としては、目的とする平均重合度と同じ平均重合度(JIS K 6726「ポリビニルアルコール試験方法」に基づいて測定した平均重合度)を有するポリビニルアルコールを塩酸触媒下にn−ブチルアルデヒドでアセタール化したものを用いた。
【0084】
(実施例1)
平均重合度約900、アセタール化度約69モル%のポリビニルブチラール樹脂を合成し、圧力100Kgf/cm
2、熱板温度150℃にて10分プレスし、厚さ0.76mmのポリビニルブチラールシートを作製した。なお、アセタール化度はJIS K 6728「ポリビニルブチラール試験方法」に基づいて測定した。
【0085】
1.物性評価(貯蔵弾性率)
JIS K 7244−4(1999年制定)に基づいて測定した。測定条件は周波数0.3Hzである。0℃〜100℃まで1℃/minの定速昇温で実施した。上記ポリビニルブチラールシートは、25℃での貯蔵弾性率が1920MPaであり、50℃での貯蔵弾性率が1530MPaであった。
【0086】
2.物性評価(ガラスへの接着性)
上に述べた方法で、圧縮せん断強さ測定を25℃および50℃で実施した。なお、合わせガラスサンプル24としては、市販のフロートガラス(厚さ3mm、大きさ25mm×25mm)2枚に上記ポリビニルブチラールシートを挟んだうえで、真空バック法(条件:30℃から160℃に60分間で昇温し、その後160℃で30分間保持)により作製されたもの(12サンプル)を用いた。試験は各サンプルを用いて、25℃および50℃のそれぞれにおいて6回ずつ行った。測定結果の平均値は、25℃では52MPaであり、50℃では28MPaであった。
【0087】
3.物性評価(破断強度)
市販のフロートガラス(厚さ2.8mm、大きさ26mm×76mm)2枚に上記ポリビニルブチラールシートを挟んだうえで、真空バック法(条件:30℃から160℃に60分間で昇温し、その後160℃で30分間保持)によって、合わせガラスを作製した。その後、オ−トグラフAG−5000Bを用いて合わせガラスの3点曲げ試験を実施し、破断強度を測定した。なお、試験速度は0.25mm/minで行った。25℃では0.80kNであり、50℃では0.70kNであった。
【0088】
4.物性評価(ラミネート適性)
市販のフロートガラス(厚さ3.2mm、大きさ1100mm×1300mm)2枚に上記ポリビニルブチラールシートを挟んだうえで、真空ラミネーター(日清紡メカトロニクス株式会社製 1522N)を用いて以下の条件で合わせガラスを作製した。得られた合わせガラスのラミネート適性を以下の基準により判定したところ、「◎」であった。
<条件>
熱板温度 :165℃
真空引き時間:12分
プレス圧力 :50kPa
プレス時間 :17分
<判断基準>
◎:気泡、密着不良などの外観欠点はなく、密着良好
×:気泡、密着不良などの外観欠点あり
【0089】
5.物性評価(耐クリープ物性)
上記ポリビニルブチラールから大きさ1cm×8cmかつ標線間距離4cmのサンプルを切り出し、クリープ試験機(株式会社安田精機製作所製 No.145クリープテスター)を使用して、85℃、85%RH、荷重なしの条件下で5時間引張試験を行った。試験後の標線間距離は4.2cmであり、伸び率は105%であり、以下の基準から「◎」と判定された。
<判定基準>
◎:伸び率120%以下
○:伸び率120%を超え、200%以下
×:200%を超える
【0090】
6.物性評価(耐貫通性試験)
市販のフロートガラス(厚さ2.8mm、大きさ300mm×300mm)2枚に上記ポリビニルブチラールシートを挟んだうえで、真空ラミネータ(日清紡メカトロニクス株式会社製;1522N)を用いて合わせガラスを作製した。その後、JIS R 3212の耐貫通性試験に準じて高さ2mから2260gの鋼球を落下させた。その結果、鋼球が貫通した(不合格である)ことを確認した。実施例1の合わせガラスは、高さ2mからの耐貫通性試験に不合格であったため、高さ3mから2260gの鋼球を落下させる耐貫通性試験は行わなかった。なお、高さ3mからの耐貫通性試験は実施例12〜21についてのみ行った。
【0091】
7.物性評価(太陽電池モジュールの安全性適合認定(IEC61730−2)のMST32衝撃破壊試験)
市販のフロートガラス(厚さ3.2mm、大きさ864mm(幅方向)×1300mm(長手方向)2枚に上記ポリビニルブチラールシートを挟んだうえで、真空ラミネーター(日清紡メカトロニクス株式会社製;1522N)を用いて合わせガラスを作製し、これを太陽電池モジュールとみなした。この合わせガラスを用いて太陽電池モジュールの安全性適合認定(IEC61730−2)のMST32衝撃破壊試験を、
図6のようなフレームレス施工で実施したところ、高さ1220mmで不合格であった。次に、フロートガラスの厚さを4mmとしたこと以外は同様の方法により衝撃破壊試験を行ったところ、合格であった。なお、フロートガラスの厚さ4mmにおける衝撃破壊試験は実施例1〜11についてのみ行った。以下、
図6について説明する。支持用基礎土台41は略直線状に成形されたものであり、合わせガラス43を支持するための土台となるものである。2本の支持用基礎土台41は、合わせガラス43の長手方向の両端からそれぞれ325mmの位置において、合わせガラス43と接することなく幅方向(合わせガラス43に平行で且つ前記長手方向に垂直な方向)に平行に配置されている。クランプ42(長さ200mm×幅10mm(幅方向にガラスと接触している距離))は、本支持用基礎土台41に約864mmの間隔で、1本の支持用基礎土台41につき、2つずつ設置されており、合計4つのクランプ42が、合わせガラス43の幅方向の両端で、かつ、クランプ42の中央が合わせガラス43の長手方向における端部から325mmの位置となるように、合わせガラス43を固定している。
【0092】
(実施例2〜7)
表1に示す組成の材料(ポリビニルブチラール樹脂)を用いて、実施例1と同様の方法によりポリビニルブチラールシートを作製し、貯蔵弾性率、ガラスへの接着性、破断強度、ラミネート適性、耐クリープ物性、耐貫通性試験及び衝撃破壊試験を評価した。結果を表1に示す。
【0093】
【表1】
【0094】
(実施例8)
平均重合度約900、アセタール化度約69モル%のポリビニルブチラール樹脂を合成し、ポリビニルブチラール樹脂100質量部に対して、可塑剤として3GO(トリエチレングリコール−ジ(2−エチルヘキサノエート))を2質量部加え、圧力100Kgf/cm
2、熱板温度150℃にて10分プレスし、厚さ0.76mmのポリビニルブチラールシートを作製した。作製したポリビニルブチラールシートを用いて、実施例1と同様の方法により、貯蔵弾性率、ガラスへの接着性、破断強度、ラミネート適性、耐クリープ物性、耐貫通性試験及び衝撃破壊試験を評価した。結果を表2に示す。
【0095】
(実施例9〜11)
表2に示す平均重合度とアセタール化度を有するポリビニルブチラール樹脂100質量部に対して、可塑剤として3GOを表2に示す量を用いたこと以外は、実施例8と同様にして、ポリビニルブチラールシートを作製した。作製したポリビニルブチラールシートを用いて、実施例1と同様の方法により、貯蔵弾性率、ガラスへの接着性、破断強度、ラミネート適性、耐クリープ物性、耐貫通性試験及び衝撃破壊試験を評価した。結果を表2に示す。
【0096】
【表2】
【0097】
(実施例12)
平均重合度約1000、アセタール化度約69モル%のポリビニルブチラール樹脂100質量部に対して、シリコーン・アクリル複合ゴム(三菱レイヨン株式会社製;メタブレンS2006、ガラス転移温度−39℃、平均粒子径200nm)を5質量部混合して得られたペレットを、圧力100Kgf/cm
2、熱板温度150℃にて10分プレスし、厚さ0.76mmのポリビニルブチラールシートを作製した。なお、ポリビニルブチラール樹脂のアセタール化度はJIS K 6728「ポリビニルブチラール試験方法」に基づいて測定した。また、シリコーン・アクリル複合ゴムのガラス転移温度は、JIS K 7244−4:1999年に基づいて測定しtanδのピーク値とした。測定条件は周波数0.3Hzである。−150℃〜100℃まで1℃/minの定速昇温で実施した。
作製したポリビニルブチラールシートを用いて、実施例1と同様の方法により、貯蔵弾性率、ガラスへの接着性、破断強度、ラミネート適性、耐クリープ物性、耐貫通性試験及び衝撃破壊試験を評価した。また、使用したポリビニルブチラール樹脂およびゴムの屈折率と上記ポリビニルブチラールシートを用いた合わせガラスのヘイズを以下の方法により評価した。結果を表3に示す。
【0098】
8.物性評価(屈折率)
JIS K 7142に基づいて測定した。
【0099】
9.物性評価(ヘイズ)
JIS K 7136に基づいて、ガラスへの接着性(圧縮せん断強さ)を測定する際に用いた合わせガラスサンプルと同様の合わせガラスサンプルを用いて測定した。
【0100】
(実施例13〜21)
表3及び表4に示す組成の材料(ポリビニルブチラール樹脂およびゴム)を用いて、実施例12と同様の方法によりポリビニルブチラールシートを作製し、貯蔵弾性率、ガラスへの接着性、破断強度、ヘイズ、ラミネート適性、耐クリープ物性、耐貫通性試験及び衝撃破壊試験を評価した。結果を表3及び表4に示す。なお、実施例13〜16及び実施例18〜21においては、ゴムとして、実施例12で用いたシリコーン・アクリル複合ゴムを用いた。実施例17においては、ゴムとして、市販のアクリル系ゴム(三菱レイヨン株式会社製;メタブレンW377、ガラス転移温度−18℃、平均粒子径200nm)を用いた。
【0101】
【表3】
【0102】
【表4】
【0103】
(比較例1)
平均重合度約1700、アセタール化度約69モル%のポリビニルブチラール樹脂を合成し、ポリビニルブチラール樹脂100質量部に対して、可塑剤として3GOを20質量部加え、圧力100Kgf/cm
2、熱板温度140℃にて10分プレスし、厚さ0.76mmのポリビニルブチラールシートを作製した。作製したポリビニルブチラールシートを用いて、実施例1と同様の方法により、貯蔵弾性率、ガラスへの接着性、破断強度、ラミネート適性、耐クリープ物性、耐貫通性試験及び衝撃破壊試験を評価した。結果を表5に示す。
【0104】
(比較例2)
平均重合度約1700、アセタール化度約69モル%のポリビニルブチラール樹脂を合成し、ポリビニルブチラール樹脂100質量部に対して、可塑剤として3GOを35質量部加え、圧力100Kgf/cm
2、熱板温度140℃にて10分プレスし、厚さ0.76mmのポリビニルブチラールシートを作製した。作製したポリビニルブチラールシートを用いて、実施例1と同様の方法により、貯蔵弾性率、ガラスへの接着性、破断強度、ラミネート適性、耐クリープ物性、耐貫通性試験及び衝撃破壊試験を評価した。結果を表5に示す。
【0105】
(比較例3)
平均重合度約1000、アセタール化度約69モル%のポリビニルブチラール樹脂100質量部に対して、シリコーン・アクリル複合ゴム(三菱レイヨン株式会社製;メタブレンS2006、ガラス転移温度−39℃、平均粒子径200nm)を300質量部混合して得られたペレットを、圧力100Kgf/cm
2、熱板温度180℃にて10分プレスし、厚さ0.76mmのポリビニルブチラールシートを作製した。作製したポリビニルブチラールシートを用いて、実施例1と同様の方法により、貯蔵弾性率、ガラスへの接着性、破断強度及びラミネート適性を評価した。さらに、耐貫通性試験を行うため、耐貫通性試験用の合わせガラスサンプルの作製を試みたが、上記ポリビニルブチラールシートの流動性が不充分であっため合わせガラスサンプルを作製することができなかった。結果を表5に示す。
【0106】
(比較例4)
アイオノマー樹脂シート(DuPont社製;SentryGlas(登録商標)Plus(SGP))について、実施例1と同様の方法により、貯蔵弾性率、ガラスへの接着性、破断強度、ラミネート適性、耐貫通性試験及び衝撃破壊試験を評価した。結果を表5に示す。
【0107】
(比較例5)
太陽電池用EVAシート(株式会社ブリヂストン製;EVASAFE)について、実施例1と同様の方法により、貯蔵弾性率、ガラスへの接着性、破断強度、ラミネート適性、耐クリープ物性、耐貫通性試験及び衝撃破壊試験を評価した。結果を表5に示す。
【0108】
(比較例6)
PMMA樹脂(株式会社クラレ製;クラレパラペット HR−L)を圧力100Kgf/cm
2、熱板温度200℃にて10分プレスし、厚さ0.76mmのシートを作製した。作製したシートを用いて、実施例1と同様の方法により、貯蔵弾性率、ガラスへの接着性、破断強度、ラミネート適性及び耐クリープ物性を評価した。結果を表5に示す。
【0109】
【表5】
【0110】
実施例及び比較例から破断強度を高めるには、貯蔵弾性率とガラスへの接着性(圧縮せん断強さ)が特定範囲にあることが重要であることがわかる。市販のフロートガラス(厚さ5.7mm、大きさ26mm×76mm)の破断強度は0.82kN程度であり、本発明の合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスは、ほぼ同じ厚さのフロートガラスに匹敵する耐荷重特性を実現していることがわかる。
【0111】
さらに、実施例及び比較例から、より薄いガラスを用いた場合でも太陽電池モジュールの安全性適合認定(IEC61730−2)のMST32衝撃破壊試験に合格するためには、厚さ2.8mmのガラス両面に接着させた積層体についてJIS R 3212の耐貫通性試験に準じて高さ2mから2260gの鋼球を落下させた場合に貫通しないのが重要であることがわかる。
【0112】
なお、上記実施例及び比較例におけるポリビニルブチラール樹脂の平均重合度を、ポリビニルブチラール樹脂の重量平均分子量(Mw)で表すと、平均重合度900の場合は重量平均分子量(Mw)が57,000、平均重合度1000の場合は重量平均分子量(Mw)が63,000、平均重合度1100の場合は重量平均分子量(Mw)が68,000、平均重合度1200の場合は重量平均分子量(Mw)が80,000、平均重合度1700の場合は重量平均分子量(Mw)が110,000となる。