特許第5793855号(P5793855)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ JNC株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5793855
(24)【登録日】2015年8月21日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】光硬化性接着剤及び表示素子
(51)【国際特許分類】
   C09J 101/02 20060101AFI20150928BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20150928BHJP
   C09J 155/00 20060101ALI20150928BHJP
   C09J 4/00 20060101ALI20150928BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20150928BHJP
【FI】
   C09J101/02
   C09J11/06
   C09J155/00
   C09J4/00
   G02B5/30
【請求項の数】6
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2010-265613(P2010-265613)
(22)【出願日】2010年11月29日
(65)【公開番号】特開2012-116895(P2012-116895A)
(43)【公開日】2012年6月21日
【審査請求日】2013年8月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】311002067
【氏名又は名称】JNC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100549
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 嘉之
(74)【代理人】
【識別番号】100090516
【弁理士】
【氏名又は名称】松倉 秀実
(74)【代理人】
【識別番号】100126505
【弁理士】
【氏名又は名称】佐貫 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100131392
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 武司
(72)【発明者】
【氏名】金 商国
(72)【発明者】
【氏名】江頭 友弘
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 英司
【審査官】 松波 由美子
(56)【参考文献】
【文献】 特表平07−506387(JP,A)
【文献】 特開平09−286930(JP,A)
【文献】 特開平01−139663(JP,A)
【文献】 特表2007−505434(JP,A)
【文献】 特開2004−250712(JP,A)
【文献】 特開2008−101105(JP,A)
【文献】 特開2012−057141(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 101/02
C09J 4/00
C09J 11/06
C09J 155/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で表されるセルロース及び/又はセルロース誘導体(A)、光重合によって硬化する光硬化性媒体、及び光重合開始剤(C)を含有する光硬化性接着剤であって、
硬化性媒体が、1分子中に1個以上の水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物を含む光硬化性接着剤
【化1】

(式(I)中、Xは独立して水素又はRであり、Rは独立して−(CH2CH(CH3)−O)mH、−CH3、−CH2CH3、−COCH3、−CH2CH2OH、−CH2CH2CH3、−CH2CH2OCH2CH3、又は−CH2CH(CH3)−OCH3を表し、nは10〜
20,000を表す。またRにおいて、mは1〜5の整数を表す。)
【請求項2】
セルロース誘導体(A)におけるRの導入率(Rの導入率=Rの個数/(Rの個数+水酸基の個数))が、13%以上である請求項1に記載の光硬化性接着剤。
【請求項3】
光硬化性媒体が、重量平均分子量1,000〜100,000の共重合体である充填剤(D)を含む請求項1又は2記載の光硬化性接着剤。
【請求項4】
さらに、シランカップリング剤(E)及び界面活性剤(F)の一方又は両方を含む請求項1〜のいずれか一項に記載の光硬化性接着剤。
【請求項5】
二つの光学素子が光硬化性接着剤によって接着されてなる表示素子において、光硬化性
接着剤が、請求項1〜のいずれか一項に記載の光硬化性接着剤である表示素子。
【請求項6】
二つの光学素子が、表示パネルと入力素子である、請求項に記載の表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示画面と、この表示画面上に配置される透光部材を貼り合わせるのに好適な光硬化性接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示パネルは車載用や携帯情報機器用等として用いられることが多くなり、液晶表示パネルを構成する偏光板と入力素子とを接着する接着剤には、優れた接着力、屈折率制御や高い透明性が強く求められている。一般的に表示素子と入力素子の製作方法には、入力素子を表示素子に内蔵する方法(インセル)と、入力素子と表示素子とを接着により貼り合わせる方法(オンセル)とが行われている。前者の内蔵化には複雑なプロセスや精密な工程が必要であるが、後者は入力素子と表示素子を製作し、これらを貼り合わせるだけなので、後者には、製作費用を節約することができるメリットがある。
【0003】
現在、入力素子と表示素子基材を接着するためには、両面テープや光硬化性接着剤が使用されている。表示素子の外周に厚さ0.3〜1mmの両面粘着剤付クッションを設けて透明タッチパネルを固定する方法がある。また、表示素子にタッチパネルを光硬化性接着剤で全面に貼り付ける方法もある。全面に貼り合わせをすることにより、表示素子とタッチパネルやカバープレートとの間の空気層が光硬化性接着剤に代わるため、空気層との界面での反射が減少し画質が向上する。
【0004】
光硬化性接着剤の屈折率はタッチパネルやカバープレートの屈折率とほぼ同一が望ましい。光硬化性接着剤として液状の接着剤を用いる場合、表示素子に約1mmの厚さで接着剤を塗布し、真空中でカバープレートと貼り合わせる方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。接着剤にはゲル状やゴム状のものを用いてもよい。また、同じく液状接着剤を用いて、表示素子とタッチパネルとを大気中で気泡が混入しないように大気中で貼り合わせる方法が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
また、液状接着剤を用いずに透明接着シートで貼り合わせる方法もある。接着面に気泡が入らないように揮発性溶剤と0.2mmの接着シートを用いて表示素子とタッチパネルをラミネートして貼り合わせる方法が知られている(例えば、特許文献3参照。)。さらに、リペア性と衝撃吸収性を備えた透明接着シートとして、厚さ0.1mmのシリコーンゴム層で厚さ3mmのシリコーンゲル層をサンドイッチした3層構造の透明接着シートで表示素子とカバープレートを貼り合わせる方法が知られている(例えば、特許文献4参照。)。
【0006】
今までの光硬化性接着剤は、接着後、貼り合わせミスに対しリペア(貼り直し)ができない欠点がある。従って、高い透明性を有し表示素子と入力素子の接着性等に優れ、かつリペア性を有する光硬化性接着剤の開発が強く望まれている。また、同様にして、被接着材料と同じ程度の屈折率を有する透明接着膜が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平07−114010号公報
【特許文献2】特開平09−274536号公報
【特許文献3】特開平06−75210号公報
【特許文献4】特開2004−101636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、透明性、被接着材との接着性、及びリペア性に優れる接着膜が得られる光硬化性接着剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、式(I)で表される、セルロース誘導体(A)、ラジカル重合性モノマー(B)、光重合開始剤(C)、充填剤(D)、シランカップリング剤(E)、界面活性剤(F)を含有する光硬化性接着剤が、その硬化膜の形成において、光硬化のみで高い透明性、被接着材(例えば、ガラス/ガラス間又はガラス/TAC(トリアセチルセルロース)と同じ程度の屈折率、接着性、リペア性等を有する膜を形成することを見出し、この知見に基づいて本発明を完成した。本発明は以下の項を含む。
【0010】
[1]式(I)で表されるセルロース誘導体(A)、光重合によって硬化する光硬化性媒体、及び光重合開始剤(C)を含有する光硬化性接着剤。
【0011】
【化1】
【0012】
式(I)中、Xは独立して水素又はRであり、Rは独立して−(CH2CH(CH3)−O)mH、−CH3、−CH2CH3、−COCH3、−CH2CH2OH、−CH2CH2CH3、−CH2CH2OCH2CH3、又は−CH2CH(CH3)−OCH3を表し、nは10〜20,000を表す。またRにおいて、mは1〜5の整数を表す。
【0013】
[2]光硬化性媒体が、ラジカル重合性モノマー(B)を含む[1]に記載の光硬化性接着剤。
【0014】
[3]光硬化性媒体が、重量平均分子量1,000〜100,000の共重合体である充填剤(D)を含む[1]又は[2]に記載の光硬化性接着剤。
【0015】
[4]さらに、シランカップリング剤(E)及び界面活性剤(F)の一方又は両方を含む[1]〜[3]のいずれか一項に記載の光硬化性接着剤。
【0016】
[5]ラジカル重合性モノマー(B)が、1分子中に1個以上の水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物を含む[1]〜[4]のいずれか一項に記載の光硬化性接着剤。
【0017】
[6]二つの光学素子が光硬化性接着剤によって接着されてなる表示素子において、光硬化性接着剤が[1]〜[5]のいずれか一項に記載の光硬化性接着剤である表示素子。
【0018】
[7]二つの光学素子が、表示パネルと入力素子である、[6]に記載の表示素子。
【発明の効果】
【0019】
本発明の光硬化性接着剤は、透明性、被接着材との接着性、及びリペア性に優れる接着膜を形成することができる。本発明では、光照射による硬化によって接着膜が形成されることから、接着の作業が容易である。さらに本発明では、光硬化性媒体の種類や組成により、形成される接着膜の屈折率を調整することが可能である。
【0020】
なお、本明細書中、アクリレートとメタクリレートの両者を示すために「(メタ)アクリレート」のように表記することがある。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の光硬化性接着剤
本発明の光硬化性接着剤は、セルロース誘導体(A)、光硬化性媒体、及び光重合開始剤(C)を含有する光硬化性接着剤である。
【0022】
セルロース誘導体(A)
本発明に使用されるセルロース誘導体(A)は式(I)で表される。セルロース誘導体(A)には、本発明における光硬化性媒体に溶解する化合物を用いることができる。セルロース誘導体(A)は一種でも二種以上でもよい。
【0023】
【化2】
【0024】
式(I)中、Xは独立して水素又はRであり、Rは独立して−(CH2CH(CH3)−O)mH、−CH3、−CH2CH3、−COCH3、−CH2CH2OH、−CH2CH2CH3、−CH2CH2OCH2CH3、又は−CH2CH(CH3)−OCH3を表し、nは10〜20,000を表す。またRにおいて、mは1〜5の整数を表す。
【0025】
セルロース誘導体(A)としては、具体的にはヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシプロピルセルロースが挙げられる。セルロース誘導体(A)は、ヒドロキシアルキルを有するセルロース誘導体であることが接着性を高める点で好ましい。中でもヒドロキシプロピルセルロースが特に好ましい。
【0026】
本発明の光硬化性接着剤全量に対するセルロース誘導体(A)の含有量は、接着性を得る観点から0.01重量%以上であることが好ましく、0.05重量%以上であることがより好ましく、1重量%以上であることがさらに好ましい。セルロース誘導体(A)の含有量は、光硬化性接着剤の取り扱いの容易さの観点から、50重量%以下であることが好ましく、30重量%以下であることがより好ましく、20重量%以下であることがさらに好ましい。
【0027】
セルロース誘導体(A)におけるRの導入率は、光硬化性媒体への溶解性の観点から、13%以上であることが好ましく、15〜80%であることがより好ましく、40〜80%であることがさらに好ましい。セルロース誘導体(A)におけるRの導入率は、セルロース中の全水酸基の水素原子数に対するセルロース誘導体(A)中のRの数の百分率で表される。すなわち、セルロース誘導体(A)において、Rの導入率=Rの個数/(Rの個数+水酸基の個数)である。導入率は、例えば1H−NMRや元素分析等の通常の分析機器によって求めることができる。セルロース誘導体(A)におけるRは、セルロース誘導体(A)において、均一に導入されていてもよいし、偏って導入されていてもよい。
【0028】
セルロース誘導体(A)は、セルロースの水酸基をエーテル化やエステル化する通常の方法によって製造することによって得られる。またセルロース誘導体(A)は市販品として得られる。セルロース誘導体(A)の市販品としては、例えば、日本曹達株式会社、製品名:HPC−SSL、HPC−SL、HPC−L、HPC−M、及びHPC−Hが挙げられる。
【0029】
光硬化性媒体
本発明に使用される光硬化性媒体は、透明の液体であり、セルロース誘導体(A)及び光重合開始剤(C)、及び必要に応じてさらに添加される他の成分を溶解する溶解性を有し、かつ光重合によって硬化する材料である。光硬化性媒体は一種でも二種以上でもよい。このような光硬化性媒体としては、例えば、ラジカル重合性モノマー(B)、充填剤(D)、ラジカル重合性又は光架橋性を有するオリゴマー、及び、ラジカル重合性又は光架橋性を有するポリマーが挙げられる。
【0030】
ラジカル重合性モノマー(B)は、ラジカル重合性を有する不飽和二重結合を有していれば特に限定されない。ラジカル重合性モノマー(B)は一種でも二種以上でもよい。ラジカル重合性モノマー(B)としては、例えば、アクリル系モノマー、酸無水物基を有する重合性モノマー、その他のラジカル重合性モノマーが挙げられる。ラジカル重合性基は単官能でも多官能であってもよい。例えばアクリル系モノマーとしては、単官能モノマーと多官能モノマーが挙げられる。
【0031】
アクリル系単官能モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、メタクリロイルモルホリン、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、セカンダリーブチル(メタ)アクリレート、ターシャリーブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、1−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、及び2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0032】
これらの中でも、1分子中に1個以上の水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物、例えばヒドロキシ基を含有するアルキル(メタ)アクリレート、が接着性を高める観点から好ましい。このようなヒドロキシ基を含有するアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、1−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、及び2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0033】
ヒドロキシ基含有アルキル(メタ)アクリレートは、光硬化性接着剤において、光重合による接着膜に可撓性を付与し、光硬化性接着剤の接着力を高めるばかりでなく、更に光重合開始剤やセルロース誘導体の溶媒として有効に作用する。さらに、これらヒドロキシ基含有アルキル(メタ)アクリレートの中でも、アルキル基の炭素数が2〜6のヒドロキシ基含有アルキル(メタ)アクリレートを適宜組み合わせることが、セルロース誘導体の溶媒として有効に作用させる観点から好ましい。
【0034】
アクリル系多官能モノマーとしては、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタジエニルジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、カーボネートジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエーテルジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエステルジオールジ(メタ)アクリレート、ポリカプロラクトンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリブタジエンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFエチレンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートモノステアレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、変性イソシアヌル酸エチレンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性グリセリントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性グリセリントリ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性グリセリントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸トリ(メタ)アクリレート、トリス[(メタ)アクリロキシエチル]イソシアヌレート、カプロラクトン変性トリス[(メタ)アクリロキシエチル]イソシアヌレート、及び、ウレタン(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0035】
酸無水物基を有する重合性モノマーとしては、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、及び無水シトラコン酸が挙げられる。
【0036】
その他のラジカル重合性モノマーとしては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、酢酸アリル、2−アルキルプロペン酸、アクリルアミド、N−アルキルアクリルアミド、ジアルキルアクリルアミド、メタクリルアミド、N−アルキルメタクリルアミド、ジアルキルメタクリルアミド、4−ビニルピリジン、アクリロニトリル、N−ビニルピロリドン、N−ビニルイミダゾール、イソプレン、ジビニルベンゼン、フタル酸ジアリル、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、及びN−フェニルマレイミドが挙げられる。
【0037】
本発明の光硬化性接着剤全量に対するラジカル重合性モノマー(B)の含有量は、重合による接着膜への可撓性の付与の観点から、10〜90重量%であることが好ましく、15〜85重量%であることがより好ましく、20〜85重量%であることがさらに好ましい。
【0038】
また本発明の光硬化性接着剤全量に対するアクリル系単官能モノマーの含有量は、重合による接着膜への可撓性の付与の観点から、0.5〜85重量%であることが好ましく、1〜80重量%であることがより好ましく、5〜75重量%であることがさらに好ましい。
【0039】
また本発明の光硬化性接着剤全量に対するヒドロキシ基を含有するアルキル(メタ)アクリレートの含有量は、光重合開始剤やセルロース誘導体に対する溶媒としての有効性の観点から、2〜90重量%であることが好ましく、5〜85重量%であることがより好ましく、10〜80重量%であることがさらに好ましい。
【0040】
また本発明の光硬化性接着剤全量に対するアクリル系多官能モノマーの含有量は、接着膜への可撓性の付与と接着力の制御との観点から、0.01〜80重量%であることが好ましく、0.05〜60重量%であることがより好ましく、0.1〜50重量%であることがさらに好ましい。
【0041】
また酸無水物基を有する重合性モノマーの含有量は、接着膜への可撓性の付与の観点から、本発明の光硬化性接着剤全量に対して0.01〜80重量%であることが好ましく、0.05〜60重量%であることがより好ましく、0.1〜50重量%であることがさらに好ましい。
【0042】
また本発明の光硬化性接着剤全量に対するその他のラジカル重合性モノマーの含有量は、接着膜への可撓性の付与の観点から、0.01〜80重量%であることが好ましく、1〜60重量%であることがより好ましく、1〜50重量%であることがさらに好ましい。
【0043】
充填剤(D)は、その重量平均分子が1,000〜100,000である共重合体である。充填剤(D)は、前述のラジカル重合性を有するモノマー(B)のラジカル共重合によって得られる。充填剤(D)は一種でも二種以上でもよい。充填剤(D)を含有することは、屈折率の制御の観点から好ましい。
【0044】
充填剤(D)の重量平均分子量は、ポリエチレンオキシドを標準としたGPC分析によって求めることができる。標準のポリエチレンオキシドには、分子量が1,000〜510,000のポリエチレンオキシド(例えば東ソー(株)製のTSK standard)を用い、カラムにはShodex KD−806M(昭和電工(株)製)を用い、移動相としてDMFを用いる条件で測定することができる。
【0045】
本発明の光硬化性接着剤全量に対する充填剤(D)の含有量は、屈折率の制御及び溶解性の観点から、0.001〜80重量%であることが好ましく、0.005〜60重量%であることがより好ましく、0.1〜50重量%であることがさらに好ましい。
【0046】
ラジカル重合性又は光架橋性を有するオリゴマー、及び、ラジカル重合性又は光架橋性を有するポリマーは、例えば、多官能のラジカル重合性モノマーを含むラジカル重合性モノマーのラジカル重合によって得ることができる。
【0047】
光硬化性媒体は、前記の二種以上の化合物からなることが、光硬化性媒体の特性の調整や向上の観点から好ましい。例えば光硬化性媒体が、ラジカル重合性を有するモノマー(B)と充填剤(D)とを含むことは、接着膜への可撓性の付与と屈折率の制御との観点から好ましい。この場合、ラジカル重合性を有するモノマー(B)100重量部に対する充填剤(D)の使用量は、前記の観点から、1〜200重量部であることが好ましく、10〜150重量部であることがより好ましく、20〜100重量部であることがさらに好ましい。
【0048】
また、光硬化性媒体は、本発明の光硬化性接着剤全量に対する、ラジカル重合性を有するモノマー(B)と充填剤(D)との含有量の合計が、前記の観点から、50〜99.9重量%であることが好ましく、70〜99重量%であることがより好ましく、80〜98重量%であることがさらに好ましく、90〜98重量%であることがより一層に好ましい。
【0049】
光重合開始剤(C)
光重合開始剤(C)は、紫外線又は可視光線の照射によりラジカルを発生する化合物であれば特に限定されない。光重合開始剤(C)は一種でも二種以上でもよい。光重合開始剤(C)としては、例えば、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、キサントン、チオキサントン、イソプロピルキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−エチルアントラキノン、アセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−4’−イソプロピルプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、イソプロピルベンゾインエーテル、イソブチルベンゾインエーテル、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、カンファーキノン、ベンズアントロン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4,4’−ジ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,4,4’−トリ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ヘキシルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’−ジ(メトキシカルボニル)−4,4’−ジ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,4’−ジ(メトキシカルボニル)−4,3’−ジ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4,4’−ジ(メトキシカルボニル)−3,3’−ジ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−,2−(o−ベンゾイルオキシム)、2−(4’−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3’,4’−ジメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(2’,4’−ジメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(2’−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4’−ペンチルオキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−[p−N,N−ジ(エトキシカルボニルメチル)]−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、1,3−ビス(トリクロロメチル)−5−(2’−クロロフェニル)−s−トリアジン、1,3−ビス(トリクロロメチル)−5−(4’−メトキシフェニル)−s−トリアジン、2−(p−ジメチルアミノスチリル)ベンズオキサゾール、2−(p−ジメチルアミノスチリル)ベンズチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)、2−(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(4−エトキシカルボニルフェニル)−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジブロモフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、3−(2−メチル−2−ジメチルアミノプロピオニル)カルバゾール、3,6−ビス(2−メチル−2−モルホリノプロピオニル)−9−n−ドデシルカルバゾール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、及び2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドが挙げられる。
【0050】
本発明の光硬化性接着剤全量に対する光重合開始剤(C)の含有量は、紫外線又は可視光線の照射に対する感度の観点から、0.002〜20重量%であることが好ましく、0.005〜15重量%であることがより好ましく、0.01〜10重量%であることがさらに好ましい。
【0051】
本発明の光硬化性接着剤は、本発明の効果が得られる範囲において、セルロース誘導体(A)、光硬化性媒体、及び光重合開始剤(C)以外の他の成分をさらに含有していてもよい。このような他の成分としては、例えばシランカップリング剤(E)及び界面活性剤(F)が挙げられる。
【0052】
シランカップリンク剤(E)
本発明の光硬化性接着剤は、形成される接着膜と基板との接着性をさらに向上させる観点から、シランカップリンク剤(E)をさらに含有してもよい。このような観点から、本発明の光硬化性接着剤全量に対するシランカップリンク剤(E)の含有量は、0.01〜20重量%であることが好ましく、0.05〜15重量%であることがより好ましく、0.1〜10重量%であることがさらに好ましい。シランカップリング剤(E)は一種でも二種以上でもよい。
【0053】
このようなシランカップリンク剤(E)としては、例えば、3−グリシドキシプロピルジメチルエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、及び3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
【0054】
界面活性剤(F)
本発明の光硬化性接着剤は、塗布均一性をさらに向上させる観点から、界面活性剤(F)をさらに含有してもよい。このような観点から、本発明の光硬化性接着剤全量に対する界面活性剤(F)の含有量は、0.01〜10重量%であることが好ましく、0.01〜8重量%であることがより好ましく、0.01〜5重量%であることがさらに好ましい。界面活性剤(F)は一種でも二種以上でもよい。
【0055】
界面活性剤(F)としては、例えば、ポリフローNo.45、ポリフローKL−245、ポリフローNo.75、ポリフローNo.90、ポリフローNo.95(以上いずれも商標、共栄社化学株式会社製)、ディスパーベイク(Disperbyk)161、ディスパーベイク162、ディスパーベイク163、ディスパーベイク164、ディスパーベイク166、ディスパーベイク170、ディスパーベイク180、ディスパーベイク181、ディスパーベイク182、BYK300、BYK306、BYK310、BYK320、BYK330、BYK344、BYK346(以上いずれも商標、ビックケミー・ジャパン株式会社製)、KP−341、KP−358、KP−368、KF−96−50CS、KF−50−100CS(以上いずれも商標、信越化学工業株式会社製)、サーフロンSC−101、サーフロンKH−40(以上いずれも商標、AGCセイミケミカル株式会社製)、フタージェント222F、フタージェント251、FTX−218(以上いずれも商標、株式会社ネオス製)、EFTOP EF−351、EFTOP EF−352、EFTOP EF−601、EFTOP EF−801、EFTOP EF−802(以上いずれも商標、三菱マテリアル株式会社製)、メガファックF−171、メガファックF−177、メガファックF−475、メガファックR−30、メガファックF−556、メガファックR−30(以上いずれも商標、DIC株式会社製)、フルオロアルキルベンゼンスルホン酸塩、フルオルアルキルカルボン酸塩、フルオロアルキルポリオキシエチレンエーテル、フルオロアルキルアンモニウムヨージド、フルオロアルキルベタイン、フルオロアルキルスルホン酸塩、ジグリセリンテトラキス(フルオロアルキルポリオキシエチレンエーテル)、フルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩、フルオロアルキルアミノスルホン酸塩、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンラウレート、ポリオキシエチレンオレレート、ポリオキシエチレンステアレート、ポリオキシエチレンラウリルアミン、ソルビタンラウレート、ソルビタンパルミテート、ソルビタンステアレート、ソルビタンオレエート、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンオレエート、ポリオキシエチレンナフチルエーテル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、及び、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩が挙げられる。
【0056】
本発明の光硬化性接着剤の粘度は、塗工方法に応じて決めることができ、100〜40,000mPa・sであることが好ましい。例えば、スクリーン印刷方法を用いて、厚さ20〜50μmの塗布膜を形成する場合には、生産性良く塗工する観点から、粘度は100〜20,000mPa・sであることが好ましい。光硬化性接着剤の粘度は、例えばセルロース誘導体(A)とラジカル重合性モノマー(B)の含有量によって調整することができる。また光硬化性接着剤の粘度は、E型粘度計(東京計器株式会社、製品名:VISCONIC EMD)を用いる25℃における測定によって求めることができる。
【0057】
本発明の光硬化性接着剤は、少なくとも一方が透明な被接着材を含む二つの被接着材の一方又は両方に本発明の光硬化性接着剤を塗布し、二つの被接着材を貼り合わせ、透明な被接着材を介して接着面に紫外線等の光重合を生じさせる光を照射することによって、二つの被接着材の接着に用いることができる。本発明の光硬化性接着剤によれば、例えば、スクリーン印刷方法で下地被接着材(TACフィルム又はガラス)に塗布し、上板被接着材(TACフィルム又はガラス)を貼り合わせした後、紫外線等を含む光を50〜3,000mJ/cm2で照射して光硬化性接着剤を硬化させることで、前記の被接着材を接着することができる。
【0058】
本発明では、光硬化性媒体が他の成分を溶解することから、溶剤を含有しない光硬化性接着剤を得ることができる。
【0059】
また本発明の硬化性接着剤は、光の照射によって被接着材の接着が可能であることから、高い作業性で被接着材の接着を行うことができる。
【0060】
さらに、本発明の光硬化性接着剤では、被接着材上に形成される接着膜は剥離テープを使用して除去することが可能である。よって、本発明の光硬化性接着剤を使用すれば、被接着材の貼り合わせが失敗した場合でも、接着膜を除去して貼り合わせをやり直す(リペアする)ことができる。
【0061】
さらに、本発明の光硬化性接着剤では、表示素子に一般に用いられるガラスやTACと同じ程度の屈折率を有する接着膜を形成することができる。本発明の光硬化性接着剤は、表示素子の層間接着剤として使用できる。
【0062】
以上の説明から明らかなように、本発明の光硬化性接着剤は、例えば好ましい一態様では、液晶表示素子とタッチパネル間に塗布し、光照射のみで硬化が可能であり、さらに高い接着性と1.5程度の屈折率と95%以上の透過率とを有しており、さらに様々な塗布方法、例えばスピン、ディスペンサー、スクリーン印刷等に対応する粘度調整が可能であり、さらにはTACとの接着性が高いが、接着後の貼り合わせミスに対し、被接着材を剥がした後、接着膜を剥離テープにより除去が可能で、リペア性も有しており、これらの効果を奏することが可能である。
【0063】
本発明の表示素子は、二つの光学素子が本発明の光硬化性接着剤によって接着されてなる表示素子である。本発明の表示素子は、本発明の光硬化性接着剤によって接着された光学素子を有していれば、他の構成要素をさらに有していてもよい。
【0064】
光学素子は、表示素子を構成する部材であって、特定の光学特性の光を発生する部材か、光が通過する部材か、又は通過する光の光学特性を変更する部材である。接着される二つのうちの少なくとも一方の光学素子は、透明であることが好ましい。このような光学素子としては、例えば、ガラス基板を含む光学素子や、TAC基板又はTACフィルムを含む光学素子が挙げられる。光学素子としては、例えば液晶表示素子を構成する各部材が挙げられ、具体的には、表示パネル、入力素子、保護カバー、及びカラーフィルタが挙げられる。
【0065】
表示パネルは、表示素子における画像を表示する部材である。このような表示パネルとしては、例えば、液晶表示素子、プラズマディスプレイ、有機EL、無機EL、及びFEDが挙げられる。入力素子としては、例えば、タッチパネル等の透明入力素子が挙げられる。
【0066】
本発明の表示素子における光学素子の接着面は、光学素子の表面の一部(点又は線状)でもよいし、全体でもよい。本発明の表示素子では、接着膜の屈折率が基板の屈折率と同程度であることから、光学素子の接着面は、表示パネルの画像表示領域の全体を含むことが、表示される画像の画質の観点から好ましい。
【0067】
光学素子における接着面の材質は、透明性や機械的強度等の素子としての機能の充実の観点、及び本発明の光硬化性接着剤による十分な接着性の観点から、ガラスやTACであることが好ましい。
【実施例】
【0068】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0069】
[実施例1〜53]
表1及び表2に記載されているA〜Fの各成分を、これらの表に記載されている配合量(重量%)で混合して攪拌することにより光硬化性接着剤を得た。
【0070】
【表1】
【0071】
【表2】
【0072】
なお、表1及び2中におけるA〜Fの各成分の表示は以下の製品又は成分を表す。
A−1 ヒドロキシプロピルセルロース(Acros Organics,Hydroxypropyl cellulose, Average M.W. 100,000)
A−2 メチルセルロース(和光純薬工業(株)、メチルセルロース400)
A−3 ヒドロキシエチルセルロース(和光純薬工業(株)、ヒドロキシエチルセルロース)
B−1 酸変性エポキシアクリレート (日本化薬株式会社、製品名:KAYARD ZFR−1491)
B−2 酸変性エポキシアクリレート (日本化薬株式会社、製品名:KAYARD CCR−1285)
B−3 酸変性エポキシアクリレート (日本化薬株式会社、製品名:KAYARD CCR−1287)
B−4 酸変性エポキシアクリレート (日本ユピカ株式会社、製品名:ネオポール 8477−350)
B−5 ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(東亞合成株式会社、製品名:アロニックス M−402)
B−6 2官能アクリレート(共栄社化学株式会社、製品名:エポキシエステル80MFA)
B−7 2官能アクリレート(共栄社化学株式会社、製品名:エポキシエステル70PA)
B−8 2官能アクリレート(共栄社化学株式会社、製品名:エポキシエステル200PA)
B−9 4−ヒドロキシブチルアクリレート(日本化成株式会社、製品名:4−HBA)B−10 2−ヒドロキシエチルメタアクリレート(関東化学株式会社、製品名:HEMA)
B−11 2−ヒドロキシエチルアクリレート(関東化学株式会社、製品名:HEA)
C−1 2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド(BASF社、製品名:DAROCUR TPO)
C−2 2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン(BASF社、製品名:IRGACURE 907)
C−3 1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(BASF社、製品名:IRGACURE 184)
D−1 メチルメタクリレート(60)+ブチルメタクリレート(40)共重合体(Mw:10,000)
D−2 メチルメタクリレート(20)+ブチルメタクリレート(80)共重合体(Mw:10,000)
D−3 ブチルメタクリレート(60)+ヒドロキシエチルメタクリレート(40)共重合体(Mw:15,000)
D−4 メチルメタクリレート(16.5)+ヒドロキシエチルメタクリレート(16.5)+ブチルメタクリレート(67)共重合体(Mw:15,000)
E−1 3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(チッソ株式会社、製品名:サイラース、S710)
F−1 界面活性剤(DIC株式会社、製品名:メガファックF−556)
【0073】
得られた光硬化性接着剤について、粘度、光透過率、屈折率、接着性、及びリペア性を評価した。評価結果を表3及び表4に示す。
【0074】
【表3】
【0075】
【表4】
【0076】
光硬化性接着剤の粘度は、E型粘度計(東京計器株式会社、製品名:VISCONIC
EMD)を用いて25℃ において測定した。粘度の単位はmPa・sである。
【0077】
光硬化性接着剤の光透過率測定は、4cm×4cm×0.05cmのサイズのガラス上に50μmビーズスペーサーを散布し、このガラス上に光硬化性接着剤を約0.1mL滴下し、光硬化性接着剤が滴下されたガラスの表面に4cm×4cm×0.05cmのサイズのガラスを貼り合わせ、圧着し、紫外線を照射して露光(全線1,000mJ/cm2、高圧水銀灯)してガラスとガラスを接着して検体を作製し、この検体の、ガラスとガラスの対向方向における光透過率測定を、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光株式会社、製品名:V−670)を用いて測定した。光透過率は、350nm〜800nmの波長を測定したときの400nmでの光透過率(T%)である。
【0078】
光硬化性接着剤の屈折率は、光硬化性接着剤をガラス上にスピンコート法により塗布し、得られた塗膜を窒素雰囲気下で露光(全線1,000mJ/cm2、高圧水銀灯)することによって光硬化性接着剤の膜(膜厚は7〜10μm)を形成し、この膜を、薄膜反射型膜厚測定器(大塚電子株式会社、製品名:FE−3000)を用いて測定した。屈折率は、波長589nmの光での屈折率である。
【0079】
接着性は以下の方法で測定した。
光硬化性接着剤の接着性は、1cm×4cmガラス上に50μmビーズスペーサーを散布し、ガラス上に接着剤を約0.05mL滴下し、接着剤が滴下されたガラスの表面に1cm×4cmのガラス又はTACフィルムを、下のガラスに対してT字型を形成するように貼り合わせ、圧着し、紫外線を照射して露光(全線1,000mJ/cm2、高圧水銀灯)してガラスとガラス又はTACフィルムとをT字型に接着し、このT字型の検体において互いに接着されているガラスとガラス又はTACフィルムとを手で剥離し、剥離時の様子によって評価した。評価基準は以下のとおりである。
○:検体を剥離するときに抵抗がある。
△:検体を剥離するときに抵抗ややあり。
×:検体を剥離するときに抵抗なし。
【0080】
光硬化性接着剤のリペア性は、ガラスとTACフィルムによる前記T字型の検体において互いに接着されているガラスとTACフィルムとを手で剥離し、剥離面に残存する光硬化性接着剤を粘着テープ(住友スリーエム株式会社、電気絶縁テープ ポリエステルフィルムテープ No.56)の貼り付け及び剥離の繰り返しによって除去したときの様子によって評価した。評価基準は以下のとおりである。
○:残存する光硬化性接着剤を1回〜数回の粘着テープの貼り付け及び剥離で除去できた。
×:残存する光硬化性接着剤を粘着テープの貼り付け及び剥離で除去できない。
【0081】
実施例1〜52では、セルロース誘導体(A)、ラジカル重合性モノマー(B)、光重合開始剤(C)、充填剤(D)、シランカップリング剤(E)及び界面活性剤(F)を種々組み合わせて評価したところ、粘度、光透過率、屈折率、接着性、及びリペア性の全ての特性において、表示素子の層間接着剤として満足の得られる結果が得られた。特にTACフィルムとの接着性は良好であった。実施例1〜34のガラスとTACフィルムの間の硬化物を手で剥がすとガラス側には残らず、TAC側への付着を確認した。TAC側に残っている硬化物を上記ポリエステルフィルムテープで除去することができ、リペア性が確認された。
【0082】
特に実施例12〜23、35〜50では、ラジカル重合性モノマー(B)と、このラジカル重合性モノマー(B)を含むか又はこれに類似のモノマーの共重合体である充填剤(D)であって、ラジカル重合性モノマー(B)の光重合物よりも硬度が一般に高い充填剤(D)とを併用することにより、ラジカル重合性モノマー(B)のみを使用する場合に比べてより高い屈折率が得られた。このように、充填剤(D)の使用により屈折率が制御されることが確認された。また実施例12〜23、35〜50では、このような充填剤(D)をラジカル重合性モノマー(B)と併用することにより、ガラスやTACフィルムに対して、ラジカル重合性モノマー(B)による十分な接着性と同等かそれ以上の接着性も得られた。
【0083】
[比較例1〜28]
セルロース誘導体(A成分)を用いない以外は実施例と同様に、表5に記載されているB〜Fの各成分を、この表に記載されている配合量(重量%)で混合して攪拌することにより比較用光硬化性接着剤を得た。また得られた光硬化性接着剤についても、実施例と同様に、粘度、光透過率、屈折率、接着性、及びリペア性について評価した。評価結果を表5、6に示す。
【0084】
【表5】
【0085】
【表6】
【0086】
比較例1〜28では、粘度、光透過率、屈折率、接着性、及びリペア性の全ての特性を、表示素子の層間接着剤として満足する結果は得られなかった。なお、比較例9〜28でも、実施例の結果と同様に、充填剤(D)を含有させることにより屈折率が制御されることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0087】
液晶等の各種表示素子は様々な用途で使用されており、画質の向上のみならず、生産性の向上も求められている。本発明では、光学素子の全面接着を要する表示素子の製造において、光学素子の基板やカバーに通常用いられる透明な部材の屈折率とほぼ同じ屈折率を有する接着膜を形成することができ、屈折率の違いによる画質の低下が生じない。また本発明では、このような接着膜を光照射という簡易な操作で形成することができることから表示素子の作業性の向上をもたらすことができる。さらには本発明では、形成された接着膜は光学素子から剥がすことができることから、貼り付けの失敗による不良品の廃棄を減少させ、表示素子の歩留まりのさらなる向上をもたらすことができる。このように、本発明は、表示素子の製造における品質と生産性の両方の向上に大きく貢献することが期待される。