【実施例】
【0069】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、各実施例、参考例および比較例中「部」とあるのは、特に断りのない限り「質量部」を示す。
【0070】
<実施例1〜3、参考例1〜2、比較例1〜2>
実施例1〜3、参考例1〜2、比較例1〜2について、測定方法および評価方法は以下の方法を用いた。
(重量平均分子量の測定)
重合体の重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)は、下記の条件(GPC条件)でゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーにより、ポリスチレン換算で求めた。
[GPC条件]
装置:東ソー社製、東ソー高速GPC装置 HLC−8220GPC(商品名)、
分離カラム:昭和電工社製、Shodex GPC K−805L(商品名)を3本直列に連結したもの、
測定温度:40℃、
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)、
試料(重合体の場合):重合体の約20mgを5mLのTHFに溶解し、0.5μmメンブレンフィルターで濾過した溶液、
試料(重合反応溶液の場合):サンプリングした重合反応溶液の約30mgを5mLのTHFに溶解し、0.5μmメンブレンフィルターで濾過した溶液、
流量:1mL/分、
注入量:0.1mL、
検出器:示差屈折計。
【0071】
検量線I:標準ポリスチレンの約20mgを5mLのTHFに溶解し、0.5μmメンブレンフィルターで濾過した溶液を用いて、上記の条件で分離カラムに注入し、溶出時間と分子量の関係を求めた。標準ポリスチレンは、下記の東ソー社製の標準ポリスチレン(いずれも商品名)を用いた。
F−80(Mw=706,000)、
F−20(Mw=190,000)、
F−4(Mw=37,900)、
F−1(Mw=10,200)、
A−2500(Mw=2,630)、
A−500(Mw=682、578、474、370、260の混合物)。
【0072】
(単量体の定量)
重合反応溶液中に残存する単量体量は次の方法で求めた。
反応器内の重合反応溶液を0.5g採取し、これをアセトニトリルで希釈し、メスフラスコを用いて全量を50mLとした。この希釈液を0.2μmのメンブレンフィルターで濾過し、東ソー社製、高速液体クロマトグラフHPLC−8020(製品名)を用いて、前記希釈液中の未反応単量体量を、単量体ごとに求めた。
【0073】
この測定において、分離カラムはジーエルサイエンス社製、Inertsil ODS−2(商品名)を1本使用し、移動相は水/アセトニトリルのグラジエント系、流量0.8mL/min、検出器は東ソー社製、紫外・可視吸光光度計UV−8020(商品名)、検出波長220nm、測定温度40℃、注入量4μLで測定した。なお、分離カラムであるInertsil ODS−2(商品名)は、シリカゲル粒径5μm、カラム内径4.6mm×カラム長さ450mmのものを使用した。また、移動相のグラジエント条件は、A液を水、B液をアセトニトリルとし、下記の通りとした。また、未反応単量体量を定量するために、濃度の異なる3種類の各単量体溶液を標準液として用いた。
【0074】
測定時間0〜3分:A液/B液=90体積%/10体積%。
測定時間3〜24分:A液/B液=90体積%/10体積%から、50体積%/50体積%まで。
測定時間24〜36.5分:A液/B液=50体積%/50体積%から、0体積%/100体積%まで。
測定時間36.5〜44分:A液/B液=0体積%/100体積%。
【0075】
(重合体の溶解性の評価)
重合体の20部とPGMEAの80部とを混合し、25℃に保ちながら撹拌を行い、目視で完全溶解を判断し、完全溶解するまでの時間を計測した。
【0076】
(レジスト組成物の感度の評価)
レジスト組成物を6インチシリコンウエハー上に回転塗布し、ホットプレート上で120℃、60秒間のプリベーク(PAB)を行い、厚さ300nmのレジスト膜を形成した。ArFエキシマレーザー露光装置(リソテックジャパン社製、製品名:VUVES−4500)を用い、露光量を変えながら10mm×10mmの面積の18ショットを露光した。次いで110℃、60秒間のポストベーク(PEB)を行った後、レジスト現像アナライザー(リソテックジャパン社製、製品名:RDA−806)を用い、23.5℃にて2.38%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液で65秒間現像した。各露光量のレジスト膜それぞれについて、現像中のレジスト膜厚の経時変化を測定した。
得られたレジスト膜厚の経時変化のデータを基に、露光量(単位:mJ/cm
2)の対数と、初期膜厚に対する30秒間現像した時点での残存膜厚の割合率(単位:%、以下残膜率という。)との関係をプロットして、露光量−残膜率曲線作成した。この曲線に基づいて、残膜率0%とするための必要露光量(Eth)の値を求めた。すなわち、露光量−残膜率曲線が、残膜率0%の直線と交わる点における露光量(mJ/cm
2)をEthとして求めた。このEthの値は感度を表し、この値が小さいほど、感度が高いことを示す。
【0077】
<参考例1:第1の組成の設計>
本例は、下記式(m−1)、(m−2)、(m−3)で表される単量体m−1、m−2、m−3を重合して、目標組成がm−1:m−2:m−3=40:40:20(モル%)、重量平均分子量の目標値が10,000の重合体を製造する場合の、第1の組成を求めた例である。
本例で使用した重合開始剤はジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート(前記V601(商品名))である。重合温度は80℃とした。
【0078】
【化1】
【0079】
窒素導入口、撹拌機、コンデンサー、滴下漏斗、および温度計を備えたフラスコに、窒素雰囲気下で、乳酸エチルを67.8部入れた。フラスコを湯浴に入れ、フラスコ内を撹拌しながら湯浴の温度を80℃に上げた。
その後、下記の単量体混合物、溶媒、および重合開始剤を含む滴下溶液(全量は205.725g)を調製し、これを滴下漏斗より4時間かけて一定の滴下速度でフラスコ内に滴下し、さらに80℃の温度を3時間保持した。滴下溶液の滴下開始から7時間後に、室温まで冷却して反応を停止させた。
単量体m−1を28.56部(40モル%)、
単量体m−2を32.93部(40モル%)、
単量体m−3を19.82部(20モル%)、
乳酸エチルを122.0部、
ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレートを2.415部(単量体の全供給量に対して2.5モル%)。
【0080】
上記滴下溶液の滴下開始から0.5,1,2,3,4,5,6,7時間後に、それぞれフラスコ内の重合反応溶液を0.5gサンプリングし、単量体m−1〜m−3の定量をそれぞれ行った。これにより各サンプリング時において反応器内に残存している各単量体の質量がわかる。その結果、例えば滴下開始から2時間後と3時間後の結果は表1の通りであった。
【0081】
【表1】
【0082】
次いで、各単量体の分子量を用いて、各サンプリング時において反応器内に残存している各単量体のモル分率(Mx:My:Mzに該当する。)に換算した。
その結果、例えば滴下開始から2時間後と3時間後の結果は表2の通りであった。
【0083】
【表2】
【0084】
一方、4時間一定速度で反応器に供給された各単量体の質量(全供給量)から、各サンプリング時までに供給された各単量体の合計質量を求め、これから各サンプリング時において反応器内に残存している各単量体の質量を引くことで、各サンプリング時において、それまでに供給された単量体のうち重合体へ転化したものの質量を、各単量体について計算した。
次いで差分データをとることによって、サンプリング時とサンプリング時の間に重合体へ転化したもの質量を、各単量体について求め、モル分率に換算した。このモル分率の値は、各サンプリング時とサンプリング時の間に生成した重合体、すなわち滴下からの経過時間(反応時間)がt
1からt
2までの間、t
2からt
3までの間、t
mからt
m+1の間にそれぞれ生成した重合体における構成単位の含有比率(以下、重合体組成比ということもある。)Px:Py:Pzに該当する。
得られた結果を
図1及び
図11に示す。
図1の横軸は、各反応時間帯(サンプリング時とサンプリング時の間)の終了側の反応時間を示している。すなわち、
図1において、横軸の反応時間が3時間のときのデータは、滴下開始から2時間後〜3時間後に生成した重合体のデータに該当する(以下、同様)。また、
図11の横軸は、
図1の横軸を、各累積重合(反応)率(%)に変更したものである。
【0085】
また、各反応時間にサンプリングした重合反応溶液について、GPC測定により重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)を求めた。結果を表3および
図2に示す。
表3および
図2における反応時間は、各反応時間帯(サンプリング時とサンプリング時の間)の終了側の反応時間を示している。すなわち、反応時間が3時間のときのデータは、滴下開始から2時間後〜3時間後に生成した重合体のデータに該当する(以下、同様)。
【0086】
【表3】
【0087】
図1の結果に示されるように、重合体組成比(Px:Py:Pz)が、目標組成である40:40:20に最も近いのは、滴下開始から2時間後〜3時間後に生成した重合体であり、Px:Py:Pz=41.05:38.47:20.48であった。
この値と、滴下開始からの経過時間が2時間後におけるMx:My:Mzの値(表2)を用い、Fx=Px/Mx、Fy=Py/My、Fz=Pz/Mzより、ファクターFx、Fy、Fzを求めると、Fx=1.27、Fy=0.76、Fz=1.22となる。
前記ファクターの値と、目標組成を用いて第1の組成x
0:y
0:z
0を求めた。
x
0=40/Fx=40/1.27=31.3モル%。
y
0=40/Fy=40/0.76=52.4モル%。
z
0=20/Fz=20/1.22=16.3モル%。
【0088】
[W
0の算出]
最初の滴下溶液に含まれていた単量体混合物(合計81.31部)を100質量%とすると、滴下開始からの経過時間が2時間後において反応器内に存在する単量体の合計質量(表1より14.13部)が占める割合(W
0)は17.4質量%となる。
【0089】
<実施例1>
本例では、参考例1で求めた第1の組成を用い、本発明に係る前記(a)の方法で重合体を製造した。使用する単量体の種類、重合開始剤の種類、重合温度、重合体の目標組成、および重量平均分子量の目標値は参考例1と同じである。
窒素導入口、撹拌機、コンデンサー、滴下漏斗2個、および温度計を備えたフラスコに、窒素雰囲気下で、下記の第1の溶液を入れた。フラスコを湯浴に入れ、フラスコ内を撹拌しながら湯浴の温度を80℃に上げた。
その後、下記の第2の溶液を滴下漏斗より4時間かけてフラスコ内に滴下し、さらに80℃の温度を3時間保持した。また、第2の溶液の滴下開始と同時に、下記の重合開始剤溶液を別の滴下漏斗より0.25時間かけてフラスコ内に滴下した。第2の溶液の滴下開始から7時間後に、室温まで冷却して反応を停止させた。
単量体の全供給量のうち、第1の溶液に含有させる単量体の量は、参考例1のW
0より17.4質量%とした。
本例において、基準時間は4時間であり、重合開始剤溶液が滴下されている期間(0.25時間)が高速供給期間である。すなわち、高速供給期間(0〜j%)は基準時間の0〜6.25%(j=6.25%)である。高速供給期間中に反応器内に供給される重合開始剤は、重合開始剤の全供給量のうちの約65質量%である。
【0090】
(第1の溶液)
単量体m−1を3.87部(31.3モル%)、
単量体m−2を7.46部(52.4モル%)、
単量体m−3を2.80部(16.3モル%)、
乳酸エチルを96.5部。
(第2の溶液)
単量体m−1を23.34部(40モル%)、
単量体m−2を26.91部(40モル%)、
単量体m−3を16.20部(20モル%)、
乳酸エチルを98.9部、
ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレートを0.670部(単量体の全供給量に対して0.7モル%)。
(重合開始剤溶液)
乳酸エチルを1.9部、
ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレートを1.243部(単量体の全供給量に対して1.3モル%)。
【0091】
参考例1と同様の手順で、各反応時間に生成した重合体における構成単位の含有比率(重合体組成比)を求めた。その結果を
図3に示す。また、
図12は、
図3の横軸を、各累積重合(反応)率(%)に変更したものである。
また参考例1と同様にして、各反応時間にサンプリングした重合反応溶液について、重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)を求めた。結果を表4および
図4に示す。
【0092】
【表4】
【0093】
図1と
図3の結果を比べると、参考例1(
図1)では、滴下開始直後に生成された重合体の重合体組成比は目標組成から大きく外れており、また反応時間によって重合体組成のばらつきが大きい。
これに対して、予め、フラスコ内に第1の溶液を仕込んだ実施例1(
図3)では、滴下開始直後から、重合体組成比が目標組成とほぼ同じになり、反応時間による組成比のばらつきも改善された。特に、滴下を継続した反応時間4時間までに得られる重合体の重合体組成比は、目標組成との差が小さい。
また、
図11と
図12の結果を比べると、累積重合(反応)率(%)の観点からも、参考例1(
図11)では、滴下開始直後に生成された重合体の重合体組成比は目標組成から大きく外れており、重合組成のばらつきが大きい。
これに対して、予めフラスコ内に第1の溶液を仕込んだ実施例1(
図12)では、滴下開始直後から、重合体組成比が目標組成とほぼ同じになり、特に、滴下を継続した累積重合(反応)率が80%以上に到達するまでに得られる重合体の重合体組成比は、目標組成との差が小さい。
【0094】
また
図2と
図4の結果を比べると、参考例1(
図2)においては、特に滴下開始から3時間までの重量平均分子量は、その後の重量平均分子量との差が大きく、反応時間によるばらつきも大きい。
これに対して、実施例1(
図4)では、滴下開始直後から反応終了時まで、反応時間による重量平均分子量および分子量分布のばらつきが小さい。
【0095】
[重合体の精製]
反応時間7時間が経過した後に、室温まで冷却して反応を停止させ、フラスコ内の重合反応溶液を、約10倍量のメタノールおよび水の混合溶媒(メタノール/水=80/20容量比)に撹拌しながら滴下し、白色の析出物(重合体P1)の沈殿を得た。沈殿を濾別し、再度、前記と同じ量のメタノールおよび水の混合溶媒(メタノール/水=90/10容量比)へ投入し、撹拌しながら沈殿の洗浄を行った。そして、洗浄後の沈殿を濾別し、重合体湿粉160gを得た。この重合体湿粉のうち10gを減圧下40℃で約40時間乾燥した。得られた重合体P1について、Mw、Mw/Mnを求め、溶解性の評価を行った。結果を表10に示す。
【0096】
[レジスト組成物の製造]
上記重合体湿粉の残りを、PGMEAの880gへ投入し、完全に溶解させて重合体溶液とした後、孔径0.04μmのナイロン製フィルター(日本ポール社製、P−NYLON N66FILTER0.04M(商品名))へ通液して、重合体溶液を濾過した。
得られた重合体溶液を減圧下で加熱してメタノールおよび水を留去し、さらにPGMEAを留去し、重合体の濃度が25質量%の重合体P1溶液を得た。この際、最高到達真空度は0.7kPa、最高溶液温度は65℃、留去時間は8時間であった。
【0097】
得られた重合体P1溶液の400部と、光酸発生剤であるトリフェニルスルホニウムトリフレートの2部と、溶媒であるPGMEAとを、重合体濃度が12.5質量%になるように混合して均一溶液とした後、孔径0.1μmのメンブレンフィルターで濾過し、レジスト組成物を得た。得られたレジスト組成物について上記の方法で感度を評価した。結果を表10に示す。
【0098】
<実施例2>
本例では、参考例1で求めた第1の組成を用い、本発明に係る前記(b)の方法で重合体を製造した。使用する単量体の種類、重合開始剤の種類、重合温度、重合体の目標組成、および重量平均分子量の目標値は参考例1と同じである。
窒素導入口、撹拌機、コンデンサー、滴下漏斗2個、および温度計を備えたフラスコに、窒素雰囲気下で、乳酸エチル86.5部を入れた。フラスコを湯浴に入れ、フラスコ内を撹拌しながら湯浴の温度を80℃に上げた。
その後、下記の第2の溶液を滴下漏斗より4時間かけてフラスコ内に滴下し、さらに80℃の温度を3時間保持した。また、第2の溶液の滴下開始と同時に、下記第1の溶液を別の滴下漏斗より0.25時間かけてフラスコ内に滴下した。第2の溶液の滴下開始から7時間後に、室温まで冷却して反応を停止させた。
単量体の全供給量のうち、第1の溶液に含有させる単量体の量は、参考例1のW
0より17.4質量%とした。
本例において、基準時間は4時間であり、第1の溶液が滴下されている期間(0.25時間)が高速供給期間である。すなわち、高速供給期間(0〜j%)は基準時間の0〜6.25%(j=6.25%)である。高速供給期間中に反応器内に供給される重合開始剤は、実施例1と同じであり、重合開始剤の全供給量のうちの約65質量%である。
【0099】
(第1の溶液)
単量体m−1を3.87部(31.3モル%)、
単量体m−2を7.46部(52.4モル%)、
単量体m−3を2.80部(16.3モル%)、
乳酸エチルを11.9部、
ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレートを1.243部(単量体の全供給量に対して1.3モル%)。
(第2の溶液)
単量体m−1を23.34部(40モル%)、
単量体m−2を26.91部(40モル%)、
単量体m−3を16.20部(20モル%)、
乳酸エチルを98.9部、
ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレートを0.670部(単量体の全供給量に対して0.7モル%)。
【0100】
参考例1と同様の手順で、各反応時間に生成した重合体における構成単位の組成比(重合体組成比)を求めた。その結果を
図5及び
図13に示す。なお、
図13は、
図5の横軸を、各累積重合(反応)率(%)に変更したものである。
また参考例1と同様にして、各反応時間にサンプリングした重合反応溶液について、重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)を求めた。結果を表5および
図6に示す。
【0101】
【表5】
【0102】
図5の結果に示されるように、本例でも実施例1と同様に、滴下開始後すぐに重合体組成比が目標組成とほぼ同じとなり、反応時間による組成比のばらつきも改善された。特に、滴下を継続した反応時間4時間までに得られる重合体の組成比は、目標組成との差が小さい。また、
図13の結果に示されるように、本例でも実施例1と同様に、滴下開始後すぐに重合体組成比が目標組成とほぼ同じとなり、特に、滴下を継続した累積重合(反応)率が80%以上に到達するまでに得られる重合体の重合体組成比は、目標組成との差が小さい。
また
図6の結果に示されるように、本例でも実施例1と同様に、滴下開始直後から反応終了時まで、反応時間による重量平均分子量および分子量分布のばらつきが小さい。
【0103】
[重合体の精製]
実施例1と同様にして、反応時間7時間が経過したフラスコ内の重合反応溶液から、重合体P2を得た。重合体P2のMw、Mw/Mn、溶解性評価の結果を表10に示す。
[レジスト組成物の製造]
実施例1と同様にして、重合体P2を含有するレジスト組成物を調製し、感度を評価した。結果を表10に示す。
【0104】
<参考例2:第1の組成の設計>
本例は、下記式(m−4)、(m−5)、(m−6)で表される単量体m−4、m−5、m−6を重合して、目標組成がm−4:m−5:m−6=40:40:20(モル%)、重量平均分子量の目標値が10,000の重合体を製造する場合の、第1の組成を求めた例である。
重合開始剤は参考例1と同じジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレートを用い、重合温度は80℃とした。
【0105】
【化2】
【0106】
窒素導入口、撹拌機、コンデンサー、滴下漏斗、および温度計を備えたフラスコに、窒素雰囲気下で、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を70.6部入れた。フラスコを湯浴に入れ、フラスコ内を撹拌しながら湯浴の温度を80℃に上げた。
その後、下記の単量体混合物、溶媒、および重合開始剤を含む滴下溶液(全量は220.612g)を調製し、これを滴下漏斗より4時間かけて一定の滴下速度でフラスコ内に滴下し、さらに80℃の温度を3時間保持した。滴下溶液の滴下開始から7時間後に、室温まで冷却して反応を停止させた。
単量体m−4を26.83部(40モル%)、
単量体m−5を40.25部(40モル%)、
単量体m−6を17.63部(20モル%)、
PGMEAを127.1部、
ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレートを8.802部(単量体の全供給量に対して8.9モル%)。
【0107】
上記滴下溶液の滴下開始から0.5,1,2,3,4,5,6,7時間後に、それぞれフラスコ内の重合反応溶液を0.5gサンプリングし、単量体m−4〜m−6の定量をそれぞれ行った。これにより各サンプリング時において反応器内に残存している各単量体の質量がわかる。その結果、例えば滴下開始から1時間後と2時間後の結果は表6の通りであった。
【0108】
【表6】
【0109】
次いで、各単量体の分子量を用いて、各サンプリング時において反応器内に残存している各単量体のモル分率(Mx:My:Mzに該当する。)に換算した。
その結果、例えば滴下開始から1時間後と2時間後の結果は表7の通りであった。
【0110】
【表7】
【0111】
一方、参考例1と同様にして、各反応時間にそれぞれ生成した重合体における構成単位の含有比率(重合体組成比、Px:Py:Pz)を求めた。得られた結果を
図7に示す。なお、
図14は、
図7の横軸を、各累積重合(反応)率(%)に変更したものである。
また、各反応時間にサンプリングした重合反応溶液について、MwおよびMw/Mnを求めた。結果を表8および
図8に示す。
【0112】
【表8】
【0113】
図7の結果に示されるように、重合体組成比(Px:Py:Pz)が、目標組成である40:40:20に最も近いのは、滴下開始から1時間後〜2時間後に生成した重合体であり、Px:Py:Pz=40.07:39.95:19.99であった。
この値と、滴下開始からの経過時間が2時間後におけるMx:My:Mzの値(表7)を用い、Fx=Px/Mx、Fy=Py/My、Fz=Pz/Mzより、ファクターFx、Fy、Fzを求めると、Fx=0.80、Fy=1.10、Fz=1.42となる。
前記ファクターの値と、目標組成を用いて第1の組成x
0:y
0:z
0を求めた。
x
0=40/Fx=40/0.80=49.8モル%。
y
0=40/Fy=40/1.10=36.2モル%。
z
0=20/Fz=20/1.42=14.0モル%。
【0114】
[W
0の算出]
最初の滴下溶液に含まれていた単量体混合物(合計84.71部)を100質量%とすると、滴下開始からの経過時間が1時間後において反応器内に存在する単量体の合計質量(表6より6.40部)が占める割合(W
0)は7.6質量%となる。
【0115】
<実施例3>
本例では、参考例2で求めた第1の組成を用い、本発明に係る前記(a)の方法で重合体を製造した。使用する単量体の種類、重合開始剤の種類、重合温度、重合体の目標組成、および目標の重量平均分子量は参考例2と同じである。
窒素導入口、撹拌機、コンデンサー、滴下漏斗2個、および温度計を備えたフラスコに、窒素雰囲気下で、下記の第1の溶液を入れた。フラスコを湯浴に入れ、フラスコ内を撹拌しながら湯浴の温度を80℃に上げた。
その後、下記の第2の溶液を滴下漏斗より4時間かけてフラスコ内に滴下し、さらに80℃の温度を3時間保持した。また、第2の溶液の滴下開始と同時に、下記の重合開始剤溶液を別の滴下漏斗より0.25時間かけてフラスコ内に滴下した。第2の溶液の滴下開始から7時間後に、室温まで冷却して反応を停止させた。
単量体の全供給量のうち、第1の溶液に含有させる単量体の量は、参考例2のW
0より7.6質量%とした。
本例において、基準時間は4時間であり、重合開始剤溶液が滴下されている期間(0.25時間)が高速供給期間である。すなわち、高速供給期間(0〜j%)は基準時間の0〜6.25%(j=6.25%)である。高速供給期間中に反応器内に供給される重合開始剤は、重合開始剤の全供給量のうちの約55質量%である。
【0116】
(第1の溶液)
単量体m−4を2.60部(49.8モル%)、
単量体m−5を2.84部(36.2モル%)、
単量体m−6を0.96部(14.0モル%)。
PGMEAを80.2部。
(第2の溶液)
単量体m−4を24.80部(40モル%)、
単量体m−5を37.21部(40モル%)、
単量体m−6を16.30部(20モル%)、
PGMEAを110.0部、
ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレートを3.456部(単量体の全供給量に対して3.49モル%)。
(重合開始剤溶液)
PGMEAを7.5部、
ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレートを4.224部(単量体の全供給量に対して4.26モル%)。
【0117】
参考例2と同様の手順で、各反応時間に生成した重合体における構成単位の含有比率(重合体組成比)を求めた。その結果を
図9に示す。なお、
図15は、
図9の横軸を、各累積重合(反応)率(%)に変更したものである。
また参考例2と同様にして、各反応時間にサンプリングした重合反応溶液について、重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)を求めた。結果を表9および
図10に示す。
【0118】
【表9】
【0119】
図7と
図9の結果を比べると、参考例2(
図7)では、滴下開始直後に生成された重合体の重合体組成比は目標組成から大きく外れており、また反応時間によって重合体組成のばらつきが大きい。
これに対して、予め、フラスコ内に第1の溶液を仕込んだ実施例3(
図9)は、滴下開始直後から、重合体組成比が目標組成とほぼ同じになり、組反応時間による組成比のばらつきも改善された。特に、滴下を継続した反応時間4時間までに得られる重合体の重合体組成比は、目標組成との差が小さい。
また、
図14と
図15の結果を比べると、累積重合(反応)率(%)の観点からも、参考例2(
図14)では、滴下開始直後に生成された重合体の重合体組成比は目標組成から大きく外れており、重合組成のばらつきが大きい。
これに対して、予めフラスコ内に第1の溶液を仕込んだ実施例3(
図15)では、滴下開始直後から、重合体組成比が目標組成とほぼ同じになり、特に、滴下を継続した累積重合(反応)率が80%以上に到達するまでに得られる重合体の重合体組成比は、目標組成との差が小さい。
【0120】
また
図8と
図10の結果を比べると、参考例2(
図8)においては、特に滴下開始から3時間までの重量平均分子量は、その後の重量平均分子量との差が大きく、反応時間によるばらつきも大きい。
これに対して、実施例3(
図10)では、滴下開始直後から反応終了時まで、反応時間による重量平均分子量および分子量分布のばらつきが小さい。
【0121】
[重合体の精製]
実施例1の重合体の精製工程において使用した、メタノールおよび水の混合溶媒(メタノール/水=80/20容量比)と(メタノール/水=90/10容量比)を、それぞれメタノールおよび水の混合溶媒(メタノール/水=90/10容量比)と(メタノール/水=95/5容量比)に変更したほかは、実施例1と同様にして、反応時間7時間が経過したフラスコ内の重合反応溶液から、重合体P3を得た。重合体P3のMw、Mw/Mn、溶解性評価の結果を表10に示す。
[レジスト組成物の製造]
実施例1と同様にして、重合体P3を含有するレジスト組成物を調製し、感度を評価した。結果を表10に示す。
【0122】
<比較例1>
参考例1において、反応時間7時間が経過した後に、室温まで冷却して反応を停止させて得られるフラスコ内の重合反応溶液を用い、実施例1の重合体の精製工程と同様にして比較重合体1を得た。得られた比較重合体1について、実施例1と同様にしてMw、Mw/Mnを求め、溶解性評価を行った。
また、比較重合体1を用い、実施例1と同様にしてレジスト組成物を調製し、感度を評価した。結果を表10に示す。
【0123】
<比較例2>
参考例2において、反応時間7時間が経過した後に、室温まで冷却して反応を停止させて得られるフラスコ内の重合反応溶液を用い、実施例3の重合体の精製工程と同様にして比較重合体2を得た。得られた比較重合体2について、実施例3と同様にしてMw、Mw/Mnを求め、溶解性評価を行った。
また、比較重合体2を用い、実施例3と同様にしてレジスト組成物を調製し、感度を評価した。結果を表10に示す。
【0124】
【表10】
【0125】
表10の結果より、実施例1、2、3で得た重合体は、比較例1、2で得た重合体とそれぞれ比べて、溶解性が顕著に向上し、レジスト組成物にしたときの感度が向上した。
【0126】
<実施例4、比較例3>
下記共重合体C−1〜2の合成に使用した単量体(m−1)、(m−7)および(m−8)を以下に示す。
【0127】
【化3】
【0128】
<比較例3>
下記合成手順にて、共重合体C−1を合成した。
窒素導入口、撹拌機、コンデンサー、滴下漏斗、および温度計を備えたフラスコに、窒素雰囲気下で、PGMEを56.5部入れた。フラスコを湯浴に入れ、フラスコ内を撹拌しながら湯浴の温度を80℃に上げた。
その後、下記の単量体混合物、溶媒、および重合開始剤を含む滴下溶液(全量は173.3g)を調製し、これを滴下漏斗より4時間かけて一定の滴下速度でフラスコ内に滴下し、さらに80℃の温度を3時間保持した。滴下溶液の滴下開始から7時間後に、室温まで冷却して反応を停止させた。
単量体m−1を18.7部(24.4モル%)、
単量体m−7を18.7部(23.5モル%)、
単量体m−8を30.5部(52.1モル%)、
PGMEを101.7部、
2,2’−アゾビスイソブチレートを3.7部(単量体の全供給量に対して5.0モル%)。
【0129】
<実施例4>
下記合成手順にて、共重合体C−2を合成した。
なお、参考例1と同様の手順により、目標組成比(モル%)が(m−1):(m−7):(m−8)=24.4:23.5:52.1である場合について、下記ファクターFx、Fy、Fzを求めた結果、Fx(m−1)=1.17、Fy(m−7)=0.84、Fz(m−8)=1.02であった。
次いで、前記ファクターの値と、前記目標組成を用いて第1の組成x
0:y
0:z
0及び反応器内に存在する単量体の合計質量(Wo)求めた。
x
0(m−1)=20.9モル%。
y
0(m−7)=28.0モル%。
z
0(m−8)=51.1モル%。
[W
0の算出]
参考例1と同様の手順により、滴下開始からの経過時間が1時間後において反応器内に存在する単量体の合計質量が占める割合は、Wo=10.1質量%であった。
【0130】
(第1の溶液)
単量体m−1を1.8部(20.9モル%)、
単量体m−7を2.5部(28.0モル%)、
単量体m−8を3.3部(51.1モル%)、
PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)を56.5部。
【0131】
(第2の溶液)
単量体m−1を18.7部(24.4モル%)、
単量体m−7を18.7部(23.5モル%)、
単量体m−8を30.5部(52.1モル%)、
PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)を101.7部、
2,2’−アゾビスイソブチロニトリルを3.48部(単量体の全供給量に対して4.24モル%)。
(重合開始剤溶液)
PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)を17.7部、
2,2’−アゾビスイソブチロニトリルを0.87部(単量体の全供給量に対して1.06モル%)。
【0132】
<共重合体C−2の合成>
窒素導入口、攪拌機、コンデンサー、滴下漏斗2個及び温度計を備えたフラスコに、窒素雰囲気下で、上記第1の溶液の混合比で調製した混合溶液を入れ、攪拌しながら湯浴の温度を80℃に上げた。
次いで、上記第2の溶液の混合比で調製した混合溶液を滴下漏斗より一定速度で6時間かけてフラスコ中に滴下し、その後、80℃の温度を1時間保持した。
また、上記第2の溶液の混合溶液の滴下開始と同時に、上記重合開始剤溶液の混合比で調製した混合溶液を別の滴下漏斗より0.5時間かけてフラスコ内に滴下した。なお、本工程で滴下する重合開始剤量によって、重合工程の初期に生成する共重合体の重量平均分子量が変化するが、各共重合体の目標とする重合平均分子量に近くなるよう設定している。
次いで、IPE(ジイソプロピルエーテル)を、得られた反応溶液の約7倍量準備し、攪拌しながら反応溶液を滴下して、白色のゲル状物の沈殿を得て、濾別した。
次いで、IPE(ジイソプロピルエーテル)を、上記工程と同量準備し、濾別した沈殿をこの混合溶媒中に投入した。これを濾別、回収し、減圧下60℃で約40時間乾燥し、各共重合体の粉末を得た。
【0133】
(リソグラフィー用共重合体の重量平均分子量)
得られた共重合体C−1〜2について重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)を以下の方法で測定した。
約20mgのサンプルを5mLのTHFに溶解し、0.5μmのメンブランフィルターで濾過して試料溶液を調製し、この試料溶液を東ソー製ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)装置:HCL−8220(製品名)を用いて、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を測定し、分子量分布(Mw/Mn)を求めた。この測定において、分離カラムは、昭和電工社製、Shodex GPC LF−804L(製品名)を3本直列にしたものを用い、溶剤はTHF(テトラヒドロフラン)、流量1.0mL/min、検出器は示差屈折計、測定温度40℃、注入量0.1mLで、標準ポリマーとしてポリスチレンを使用した。測定結果を表11に示す。
【0134】
【表11】
【0135】
[溶解性評価]
リソグラフィー用共重合体C−1〜2をそれぞれ用いて溶解性評価用の溶液を調製し、溶液の温度は常温(25℃)とした。紫外可視分光光度計として、島津製作所社製、UV−3100PC(製品名)を用い、光路長10mmの石英製角型セルに測定用溶液を入れ、波長450nmにおける透過率を測定する方法で、溶解性評価を行った。前記透過率が高いほど溶解性が良好であり、基材上に塗膜した際の面内におけるリソグラフィー性能のばらつき低減に結びつく。結果を表11に示す。
【0136】
(溶解性評価用の溶液調製)
下記の配合成分を混合して評価用溶液を得た。
リソグラフィー用共重合体:2.5部、
溶媒1(PGME):100部、
溶媒2(IPE):16部。
【0137】
表11の結果に示されるように、溶解性を示す透過率の値は、共重合体C−1から2の順に大きくなっていることから、本発明の製造方法による共重合体C−2(実施例4)が、共重合体C−1(比較例3)と比べて、リソグラフィー性能に優れることが確認された。
【0138】
(リソグラフィー用共重合体)
<実施例5〜7、比較例4〜6>
実施例5〜7及び比較例4〜6において、測定方法および評価方法は以下の方法を用いた。
【0139】
(質量平均分子量の測定)
重合体の質量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)は、下記の条件(GPC条件)でGPCにより、ポリスチレン換算で求めた。
[GPC条件]
装置:東ソー社製、東ソー高速GPC装置 HLC−8220GPC(商品名)、
分離カラム:昭和電工社製、Shodex GPC K−805L(商品名)を3本直列に連結したもの、
測定温度:40℃、
溶離液:THF、
試料:共重合体の約20mgを5mLのTHFに溶解し、0.5μmメンブレンフィルターで濾過した溶液、
流量:1mL/分、
注入量:0.1mL、
検出器:示差屈折計。
【0140】
検量線I:標準ポリスチレンの約20mgを5mLのTHFに溶解し、0.5μmメンブレンフィルターで濾過した溶液を用いて、上記の条件で分離カラムに注入し、溶出時間と分子量の関係を求めた。標準ポリスチレンは、下記の東ソー社製の標準ポリスチレン(いずれも商品名)を用いた。
F−80(Mw=706,000)、
F−20(Mw=190,000)、
F−4(Mw=37,900)、
F−1(Mw=10,200)、
A−2500(Mw=2,630)、
A−500(Mw=682、578、474、370、260の混合物)。
【0141】
(共重合体の平均単量体組成の測定)
共重合体の約5質量部を重ジメチルスルホキシドの約95質量部に溶解して試料溶液を調製した。この試料溶液をNMRチューブに入れ、
1H−NMR(JEOL社製、共鳴周波数:270MHz)を用いて分析した。各構成単位に由来するシグナルの積分強度比から、共重合体の単量体組成を算出した。
【0142】
(共重合体のGPCによる分割)
共重合体の分割は下記の条件(GPC条件)でGPCによりおこなった。また最も先に溶出されたフラクションの溶液から溶媒を留去して固形物を得ることにより、最も高分子量体である重合体を得た。
[GPC条件]
装置:日本分析工業、分取型LC、LC−9105(商品名)、
分離カラム:日本分析工業製、JAIGEL−2H、JAIGEL−3H(商品名)を直列に連結したもの、
測定温度:40℃、
溶離液:THF、
試料:共重合体の約1gを10mLのTHFに溶解し、0.5μmメンブレンフィルターで濾過した溶液、
流量:3.5mL/分、
注入量:10mL、
検出器:紫外・可視吸光光度計、示差屈折計、
分取方法:溶出曲線において、重合体に係るピークを示す溶離液を、溶出順に、体積が均等になるように8等分して分取した。
【0143】
(分画単量体組成の測定)
上記の方法で分取した8個のフラクションのうち、最も先に溶出された高分子量フラクションにおける分画単量体組成を以下の方法で測定した。
最も先に溶出された高分子量フラクションから溶媒を留去して得られた固形物の約5質量部を重ジメチルスルホキシドの約95質量部に溶解して試料溶液を調製した。この試料溶液をNMRチューブに入れ、
1H−NMR(JEOL社製、共鳴周波数:270MHz)を用いて分析した。各構成単位に由来するシグナルの積分強度比から、共重合体の単量体組成を算出した。
【0144】
(共重合体の溶解性の評価)
共重合体の20部とPGMEAの80部とを混合し、25℃に保ちながら撹拌を行い、目視で完全溶解を判断し、完全溶解するまでの時間を計測した。
【0145】
(レジスト組成物の感度の評価)
レジスト組成物を6インチシリコンウエハー上に回転塗布し、ホットプレート上で120℃、60秒間のプリベーク(PAB)を行い、厚さ300nmのレジスト膜を形成した。ArFエキシマレーザー露光装置(リソテックジャパン社製、製品名:VUVES−4500)を用い、露光量を変えながら10mm×10mmの面積の18ショットを露光した。次いで110℃、60秒間のポストベーク(PEB)を行った後、レジスト現像アナライザー(リソテックジャパン社製、製品名:RDA−806)を用い、23.5℃にて2.38%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液で65秒間現像した。各露光量のレジスト膜それぞれについて、現像中のレジスト膜厚の経時変化を測定した。
【0146】
得られたレジスト膜厚の経時変化のデータを基に、露光量(単位:mJ/cm
2)の対数と、初期膜厚に対する30秒間現像した時点での残存膜厚の割合率(単位:%、以下残膜率という。)との関係をプロットして、露光量−残膜率曲線作成した。この曲線に基づいて、残膜率0%とするための必要露光量(Eth)の値を求めた。すなわち、露光量−残膜率曲線が、残膜率0%の直線と交わる点における露光量(mJ/cm
2)をEthとして求めた。このEthの値は感度を表し、この値が小さいほど、感度が高いことを示す。
【0147】
<実施例5>
[共重合体の製造]
本例では、下記単量体(m’−1)、(m’−2)、(m’−3)を重合した。
【0148】
【化4】
【0149】
窒素導入口、撹拌機、コンデンサー、滴下漏斗、および温度計を備えたフラスコに、窒素雰囲気下で、下記の第1の溶液を入れた。フラスコを湯浴に入れ、フラスコ内を撹拌しながら湯浴の温度を80℃に上げた。
その後、下記の重合開始剤溶液を滴下装置から一定速度で0.25時間かけてフラスコ内に滴下するとともに、下記の第2の溶液を滴下装置から一定速度で4時間かけてフラスコ内に滴下した。さらに80℃の温度を3時間保持した。
本例において、重合開始剤溶液が滴下されている期間(高速供給期間)中に反応器内に供給される重合開始剤は、重合開始剤の全供給量のうちの約65質量%である。
【0150】
(第1の溶液)
単量体m’−1を2.72部(32.26モル%)、
単量体m’−2を4.90部(50.48モル%)、
単量体m’−3を2.02部(17.26モル%)、
乳酸エチルを79.0部。
(第2の溶液)
単量体m’−1を23.80部(40.00モル%)、
単量体m’−2を27.44部(40.00モル%)、
単量体m’−3を16.52部(20.00モル%)、
乳酸エチルを98.06部、
ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート(和光純薬工業社製、V601(商品名)、以下同様。)を0.643部(単量体の全供給量に対して0.700モル%)。
(重合開始剤溶液)
乳酸エチルを3.6部、
ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレートを1.196部(単量体の全供給量に対して1.301モル%)。
【0151】
次いで、フラスコ内の重合反応溶液を、約10倍量のメタノールおよび水の混合溶媒(メタノール/水=80/20容量比)を撹拌しながら、ここに滴下し、白色の析出物(共重合体A−1)の沈殿を得た。沈殿を濾別し、再度、前記と同じ量のメタノールおよび水の混合溶媒(メタノール/水=90/10容量比)へ投入し、撹拌しながら沈殿の洗浄を行った。そして、洗浄後の沈殿を濾別し、共重合体湿粉を得た。この共重合体湿粉を減圧下40℃で約40時間乾燥し、白色粉体(66.0g)を得た。
【0152】
得られた白色粉体を
1H−NMRとGPCにて分析し、共重合体全体の平均単量体組成とMw、Mw/Mnを求めた。
また、GPCにて8個のフラクションに分割し、最も先に溶出された高分子量フラクションにおける分画単量体組成を求めた。
得られた共重合体A−1のMw、Mw/Mn、平均単量体組成および分画単量体組成のそれぞれにおける各単量体の含有比率、ならびに各単量体について分画単量体組成における含有比率から平均単量体組成における含有比率を差し引いた差を表12に示す。
また得られた共重合体A−1の溶解性を上記の方法で評価した。その結果を表12に示す。
【0153】
[レジスト組成物の製造]
上記で得られた共重合体A−1の100部に、光酸発生剤であるトリフェニルスルホニウムトリフレートを2部、および溶剤としてPGMEA700部を混合して均一溶液とした後、孔径0.1μmのメンブランフィルターで濾過し、レジスト組成物溶液を調製した。得られたレジスト組成物について上記の方法で感度を評価した。その結果を表12に示す。
【0154】
<実施例6>
本例では、下記単量体(m’−4)、(m’−5)、(m’−6)を重合した。
【0155】
【化5】
【0156】
実施例5と同様のフラスコに、窒素雰囲気下で、下記の第1の溶液を入れた。フラスコを湯浴に入れ、フラスコ内を撹拌しながら湯浴の温度を80℃に上げた。
その後、下記の重合開始剤溶液を滴下装置から一定速度で0.25時間かけてフラスコ内に滴下するとともに、下記の第2の溶液を滴下装置から一定速度で4時間かけてフラスコ内に滴下した。さらに80℃の温度を3時間保持した。
本例において、重合開始剤溶液が滴下されている期間(高速供給期間)中に反応器内に供給される重合開始剤は、重合開始剤の全供給量のうちの50質量%である。
【0157】
(第1の溶液)
単量体m’−4を2.72部(49.40モル%)、
単量体m’−5を2.88部(33.99モル%)、
単量体m’−6を1.27部(16.61モル%)、
PGMEAを71.8部。
(第2の溶液)
単量体m’−4を30.60部(55.56モル%)、
単量体m’−5を18.86部(22.22モル%)、
単量体m’−6を16.99部(22.22モル%)、
PGMEAを96.1部、
ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート)を2.422部(単量体の全供給量に対して2.955モル%)。
(重合開始剤溶液)
PGMEAを3.6部、
ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレートを2.422部(単量体の全供給量に対して2.955モル%)。
【0158】
次いで、フラスコ内の重合反応溶液を、約10倍量のメタノールおよび水の混合溶媒(メタノール/水=85/15容量比)を撹拌しながら、ここに滴下し、白色の析出物(共重合体A−2)の沈殿を得た。沈殿を濾別し、再度、前記と同じ量のメタノールおよび水の混合溶媒(メタノール/水=9/1容量比)へ投入し、撹拌しながら沈殿の洗浄を行った。そして、洗浄後の沈殿を濾別し、共重合体湿粉を得た。この共重合体湿粉を減圧下40℃で約40時間乾燥し、白色粉体(63.0g)を得た。
得られた共重合体A−2について、実施例5と同様の測定および評価を行った。その結果を表12に示す。
【0159】
<実施例7>
本例では、下記単量体(m’−7)、(m’−8)、(m’−9)を重合した。
【0160】
【化6】
【0161】
実施例5と同様のフラスコに、窒素雰囲気下で、下記の第1の溶液を入れた。フラスコを湯浴に入れ、フラスコ内を撹拌しながら湯浴の温度を80℃に上げた。
その後、下記の重合開始剤溶液を滴下装置から一定速度で0.25時間かけてフラスコ内に滴下するとともに、下記の第2の溶液を滴下装置から一定速度で4時間かけてフラスコ内に滴下した。さらに80℃の温度を3時間保持した。
本例において、重合開始剤溶液が滴下されている期間(高速供給期間)中に反応器内に供給される重合開始剤は、重合開始剤の全供給量のうちの約60質量%である。
【0162】
(第1の溶液)
単量体m’−7を1.70部(17.92モル%)、
単量体m’−8を10.42部(75.34モル%)、
単量体m’−9を0.89部(6.74モル%)、
乳酸エチルを57.3部、
PGMEAを26.2部。
(第2の溶液)
単量体m’−7を20.23部(41.17モル%)、
単量体m’−8を29.51部(41.17モル%)、
単量体m’−9を12.04部(17.66モル%)、
乳酸エチルを57.2部、
PGMEAを30.8部、
ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレートを1.744部(単量体の全供給量に対して2.199モル%)。
(重合開始剤溶液)
乳酸エチルを7.7部、
ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレートを2.569部(単量体の全供給量に対して3.239モル%)。
【0163】
次いで、フラスコ内の重合反応溶液を、約10倍量のメタノールおよび水の混合溶媒(メタノール/水=90/10容量比)を撹拌しながら、ここに滴下し、白色の析出物(共重合体A−3)の沈殿を得た。沈殿を濾別し、再度、前記と同じ量のメタノールおよび水の混合溶媒(メタノール/水=95/5容量比)へ投入し、撹拌しながら沈殿の洗浄を行った。そして、洗浄後の沈殿を濾別し、共重合体湿粉を得た。この共重合体湿粉を減圧下40℃で約40時間乾燥し、白色粉体(58.0g)を得た。
得られた共重合体A−3について、実施例5と同様の測定および評価を行った。その結果を表12に示す。
【0164】
<比較例4>
実施例5において、予めフラスコ内に単量体を入れずに、共重合体を合成した。本例で用いた単量体のモル比は(m’−1):(m’−2):(m’−3)=40.00:40.00:20.00である。
すなわち、実施例5と同様のフラスコに、窒素雰囲気下で、乳酸エチルを64.5部入れた。フラスコを湯浴に入れ、フラスコ内を撹拌しながら湯浴の温度を80℃に上げた。
その後、単量体(m’−1)が27.20部、単量体(m’−2)が31.36部、単量体(m’−3)が18.88部、乳酸エチルが112.6部、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート(上記、V601(商品名))が2.576部入った滴下装置から一定速度で4時間かけてフラスコ内に滴下した。さらに80℃の温度を3時間保持した。
この後、実施例5と同様にして白色の析出物(共重合体B−1)の沈殿を得、濾別、洗浄、洗浄後の濾別、乾燥を行って白色粉体(64.0g)を得た。
得られた共重合体B−1について、実施例5と同様の測定および評価を行った。その結果を表12に示す。
【0165】
<比較例5>
実施例6において、予めフラスコ内に単量体を入れずに、共重合体を合成した。本例で用いた単量体のモル比は(m’−4):(m’−5):(m’−6)=55.56:22.22:22.22である。
すなわち、実施例5と同様のフラスコに、窒素雰囲気下で、PGMEAを61.5部入れた。フラスコを湯浴に入れ、フラスコ内を撹拌しながら湯浴の温度を80℃に上げた。
その後、単量体(m’−4)が34.00部、単量体(m’−5)が20.96部、単量体(m’−6)が18.88部、PGMEAが110.76部、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート(上記、V601(商品名))が8.197部入った滴下装置から一定速度で4時間かけてフラスコ内に滴下した。さらに80℃の温度を3時間保持した。
この後、実施例6と同様にして白色の析出物(共重合体B−2)の沈殿を得、濾別、洗浄、洗浄後の濾別、乾燥を行って白色粉体(63.0g)を得た。
得られた共重合体B−2について、実施例5と同様の測定および評価を行った。その結果を表12に示す。
【0166】
<比較例6>
実施例7において、予めフラスコ内に単量体を入れずに、共重合体を合成した。本例で用いた単量体のモル比は(m’−7):(m’−8):(m’−9)=41.17:41.17:17.66である。
すなわち、実施例5と同様のフラスコに、窒素雰囲気下で、乳酸エチルを42.4部、PGMEAを18.2部入れた。フラスコを湯浴に入れ、フラスコ内を撹拌しながら湯浴の温度を80℃に上げた。
その後、単量体(m’−7)が23.80部、単量体(m’−8)が34.72部、単量体(m’−9)が14.16部、乳酸エチルが76.3部、PGMEAが32.7部、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート(上記、V601(商品名))が5.083部入った滴下装置から一定速度で4時間かけてフラスコ内に滴下した。さらに80℃の温度を3時間保持した。
この後、実施例7と同様にして白色の析出物(共重合体B−3)の沈殿を得、濾別、洗浄、洗浄後の濾別、乾燥を行って白色粉体(57.0g)を得た。
得られた共重合体B−3について、実施例5と同様の測定および評価を行った。その結果を表12に示す。
【0167】
【表12】
【0168】
表12の結果に示されるように、実施例5で得た共重合体A−1と比較例1で得た共重合体B−1とは、質量平均分子量がほぼ同等であるのに、A−1の方が分子量分布が小さく、分画単量体組成と平均単量体組成との差が、単量体(m’−1)、(m’−2)、(m’−3)に由来する各構成単位のいずれについても−3モル%以上+3モル%以下の範囲内である。一方、共重合体B−1は、分画単量体組成と平均単量体組成との差が−3モル%以上+3モル%以下の範囲を超えて大きい構成単位がある。また、共重合体A−1は共重合体B−1に比べて溶解性および感度が格段に優れる。
また、実施例6で得た共重合体A−2と比較例5で得た共重合体B−2、および実施例7で得た共重合体A−3と比較例6で得た共重合体B−3をそれぞれ比較しても、同様の傾向がある。