特許第5793867号(P5793867)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱レイヨン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5793867-重合体の製造方法 図000020
  • 特許5793867-重合体の製造方法 図000021
  • 特許5793867-重合体の製造方法 図000022
  • 特許5793867-重合体の製造方法 図000023
  • 特許5793867-重合体の製造方法 図000024
  • 特許5793867-重合体の製造方法 図000025
  • 特許5793867-重合体の製造方法 図000026
  • 特許5793867-重合体の製造方法 図000027
  • 特許5793867-重合体の製造方法 図000028
  • 特許5793867-重合体の製造方法 図000029
  • 特許5793867-重合体の製造方法 図000030
  • 特許5793867-重合体の製造方法 図000031
  • 特許5793867-重合体の製造方法 図000032
  • 特許5793867-重合体の製造方法 図000033
  • 特許5793867-重合体の製造方法 図000034
  • 特許5793867-重合体の製造方法 図000035
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5793867
(24)【登録日】2015年8月21日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/04 20060101AFI20150928BHJP
   G03F 7/039 20060101ALN20150928BHJP
【FI】
   C08F2/04
   !G03F7/039 601
【請求項の数】3
【全頁数】45
(21)【出願番号】特願2010-529184(P2010-529184)
(86)(22)【出願日】2010年7月7日
(86)【国際出願番号】JP2010061534
(87)【国際公開番号】WO2011004840
(87)【国際公開日】20110113
【審査請求日】2013年6月28日
(31)【優先権主張番号】特願2009-160857(P2009-160857)
(32)【優先日】2009年7月7日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2009-298029(P2009-298029)
(32)【優先日】2009年12月28日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2009-298030(P2009-298030)
(32)【優先日】2009年12月28日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱レイヨン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(72)【発明者】
【氏名】安田 敦
(72)【発明者】
【氏名】押切 友也
(72)【発明者】
【氏名】松本 大祐
(72)【発明者】
【氏名】加藤 圭輔
(72)【発明者】
【氏名】前田 晋一
【審査官】 久保田 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−239889(JP,A)
【文献】 国際公開第1999/050322(WO,A1)
【文献】 特開2008−115148(JP,A)
【文献】 特開2007−045922(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00− 2/60
C08F 12/00−34/04
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応器内に単量体および重合開始剤を滴下しながら、前記反応器内で2種以上の単量体α〜α(ただし、nは2以上の整数を表す。)を重合して、構成単位α’〜α’(ただし、α’〜α’は単量体α〜αからそれぞれ導かれる構成単位を表す。)からなる重合体(P)を得る重合体の製造方法であって、下記(I)及び(II)の工程を有し、
(I)前記反応器内に、前記重合開始剤を滴下する前または前記重合開始剤の滴下開始と同時に、前記反応器内に、前記単量体α〜αを、各単量体の反応性比に応じて、重合初期から定常状態で重合させる割合の第1の組成で含有する第1の溶液を供給する工程;
(II)得ようとする重合体(P)における構成単位α’〜α’の含有比率を表わす目標組成(単位:モル%)がα’:α’:…:α’であるとき、前記反応器内に前記第1の溶液を供給開始した後または前記第1の溶液の供給開始と同時に、前記単量体α〜αを、前記目標組成と同じ組成で含有する第2の溶液を供給する工程;
前記重合開始剤の滴下開始から前記第2の溶液の滴下終了までを基準時間とし、前記重合開始剤の全供給量を前記基準時間で除した値を平均供給速度とするとき、前記基準時間の0%からj%(jは5〜20)までの期間を、前記平均供給速度よりも高速で重合開始剤を滴下する高速供給期間とする、重合体の製造方法。
【請求項2】
前記第1の組成は、下記(i) 〜(iii)の手順により求められる請求項1に記載の重合体の製造方法。
(i)まず単量体組成が目標組成α’:α’:…:α’と同じである単量体混合物100質量部と重合開始剤と溶媒を含有する滴下溶液を、溶媒のみを入れた反応器内に一定の滴下速度で滴下し、滴下開始からの経過時間がt、t、t…tのときに、それぞれ反応器内に残存している単量体α〜αの組成(単位:モル%)M:M:…:Mと、tからtまでの間、tからtまでの間、tからtm+1までの間にそれぞれ生成した重合体における構成単位α’〜α’の比率(単位:モル%)P:P:…:Pを求める。
(ii)前記P:P:…:Pが、目標組成α’:α’:…:α’に最も近い時間帯「tからtm+1までの間(mは1以上の整数。)」を見つける。
(iii)前記「tからtm+1までの間」におけるP:P:…:Pの値と、経過時間tにおけるM:M:…:Mの値とから、下記式により、ファクターF、F、…Fを求める。F=P/M、F=P/M、…F=P/M。なお、上記(i) 〜 (iii)の手順で求められるファクターをF、F、…Fで表わすと、α=α’/F、α=α’/F、…α=α’/Fである。
【請求項3】
反応器内に単量体および重合開始剤を滴下しながら、前記反応器内で2種以上の単量体α〜α(ただし、nは2以上の整数を表す。)を重合して、構成単位α’〜α’(ただし、α’〜α’は単量体α〜αからそれぞれ導かれる構成単位を表す。)からなる重合体(P)を得る重合工程を有し、
前記反応器内に、前記重合開始剤を滴下する前または前記重合開始剤の滴下開始と同時に、前記反応器内に、前記単量体α〜αを第1の組成で含有する第1の溶液を供給開始し、
前記反応器内に前記第1の溶液を供給開始した後または前記第1の溶液の供給開始と同時に、前記反応器内に前記単量体α〜αを第2の組成で含有する第2の溶液を滴下開始し、
前記第2の溶液の滴下開始は、前記重合開始剤の滴下開始と同時または前記重合開始剤の滴下開始より後であり、得ようとする重合体(P)における構成単位α’〜α’の含有比率を表わす目標組成(単位:モル%)がα’:α’:…:α’であるとき、前記第2の組成は前記目標組成と同じであり、前記第1の組成(単位:モル%)をα:α:…:αで表わし、下記(i)〜(iii)の手順で求められるファクターをF、F、…Fで表わすと、α=α’/F、α=α’/F、…α=α’/Fであり、前記重合開始剤の滴下開始から前記第2の溶液の滴下終了までを基準時間とするとき、前記基準時間の20%が経過する以前に、前記第1の溶液の供給が終了し、
前記重合開始剤の全供給量を前記基準時間で除した値を平均供給速度とするとき、前記基準時間の0%からj%(jは5〜20)までの期間を、前記平均供給速度よりも高速で重合開始剤を滴下する高速供給期間とし、前記高速供給期間に前記重合開始剤の全供給量のうちの30〜90質量%を前記反応器内に供給する請求項1に記載の重合体の製造方法。
(i)まず単量体組成が目標組成α’:α’:…:α’と同じである単量体混合物100質量部と重合開始剤と溶媒を含有する滴下溶液を、溶媒のみを入れた反応器内に一定の滴下速度で滴下し、滴下開始からの経過時間がt、t、t…のときに、それぞれ反応器内に残存している単量体α〜αの組成(単位:モル%)M:M:…:Mと、tからtまでの間、tからtまでの間、…にそれぞれ生成した重合体における構成単位α’〜α’の比率(単位:モル%)P:P:…:Pを求める。
(ii)前記P:P:…:Pが、目標組成α’:α’:…:α’に最も近い時間帯「tからtm+1までの間(mは1以上の整数。)」を見つける。
(iii)前記「tからtm+1までの間」におけるP:P:…:Pの値と、経過時間tにおけるM:M:…:Mの値とから、下記式により、ファクターF、F、…Fを求める。F=P/M、F=P/M、…F=P/M
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は重合体の製造方法、前記製造方法により得られるリソグラフィー用重合体、並びにリソグラフィー用途に好適な共重合体、およびこれらのリソグラフィー用重合体を用いたレジスト組成物、並びに前記レジスト組成物を用いてパターンが形成された基板を製造する方法に関する。
本願は、2009年7月7日に、日本に出願された特願2009−160857号、2009年12月28日に、日本に出願された特願2009−298029号、2009年12月28日に、日本に出願された特願2009−298030号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子、液晶素子等の製造工程においては、近年、リソグラフィーによるパターン形成の微細化が急速に進んでいる。微細化の手法としては、照射光の短波長化がある。
最近では、KrFエキシマレーザー(波長:248nm)リソグラフィー技術が導入され、さらなる短波長化を図ったArFエキシマレーザー(波長:193nm)リソグラフィー技術及びEUV(波長:13.5nm)リソグラフィー技術が研究されている。
また、例えば、照射光の短波長化およびパターンの微細化に好適に対応できるレジスト組成物として、酸の作用により酸脱離性基が脱離してアルカリ可溶性となる重合体と、光酸発生剤とを含有する、いわゆる化学増幅型レジスト組成物が提唱され、その開発および改良が進められている。
【0003】
ArFエキシマレーザーリソグラフィーにおいて用いられる化学増幅型レジスト用重合体としては、波長193nmの光に対して透明なアクリル系重合体が注目されている。
例えば下記特許文献1には、単量体として、(A)ラクトン環を有する脂環式炭化水素基がエステル結合している(メタ)アクリル酸エステル、(B)酸の作用により脱離可能な基がエステル結合している(メタ)アクリル酸エステル、および(C)極性の置換基を有する炭化水素基または酸素原子含有複素環基がエステル結合している(メタ)アクリル酸エステルを用いてなるリソグラフィー用の共重合体が記載されている。
【0004】
ところで、(メタ)アクリル酸エステルの重合体はラジカル重合法で重合されるのが一般的である。一般に、モノマーが2種以上ある多元系重合体では、各モノマー間の共重合反応性比が異なるため、重合初期と重合後期で生成する重合体の共重合組成比が異なり、得られる重合体は組成分布を持つようになる。
共重合体における構成単位の組成比にばらつきがあると、溶媒への溶解性が低くなりやすく、レジスト組成物を調製する際に、溶媒に溶解させるのに長時間を要したり、不溶分が発生することで製造工程数が増加したりする等、レジスト組成物の調製に支障を来たす場合がある。また、得られるレジスト組成物の感度が不充分となりやすい。
これに対して、例えば下記特許文献2には、高い解像度を有するレジストを得るために、相対的に重合速度が速い単量体と遅い単量体の供給比率を前工程と後工程で変化させ、共重合組成分布の狭い重合体を得る方法が記載されている。
【0005】
また、重合過程で生成する微量の高分子量成分(ハイポリマー)も、リソグラフィー用重合体のレジスト用溶媒への溶解性やアルカリ現像液への溶解性の低下の原因となり、その結果レジスト組成物の感度が低下する。
下記特許文献3では、かかるハイポリマーの生成を抑える方法として、重合性モノマーを含有する溶液と、重合開始剤を含有する溶液とを、各々独立した貯槽に保持し、重合開始剤を、重合性モノマーよりも先に重合系内に供給する方法が提案されている。
【0006】
一方、例えば、ArFエキシマレーザーリソグラフィーにおいて用いられる化学増幅型レジスト用重合体として、波長193nmの光に対して透明なアクリル系重合体が注目されている。前記アクリル系重合体としては、例えば、エステル部にアダマンタン骨格を有する(メタ)アクリル酸エステルとエステル部にラクトン骨格を有する(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体が提案されている(特許文献4、5等)。
ところで、(メタ)アクリル酸エステルの重合体はラジカル重合法で重合されるのが一般的である。一般に、単量体が2種以上ある多元系重合体では、各単量体間の共重合反応性比が異なるため、重合初期と重合後期で生成する共重合体の単量体組成が異なり、得られる共重合体は組成分布を持つようになる。このような組成分布を有する共重合体はレジスト性能を低下させやすいため、組成分布を制御する検討がなされてきた。
【0007】
例えば、特許文献6には、共重合体溶液をゲル・パーミエイション・クロマトグラフィー(以下、「GPC」と記す)にて分割した10〜数十個のフラクションにそれぞれ含まれる共重合体の、ラクトン骨格を有する(メタ)アクリレート単量体に由来する構成単位の含有比率(モル%)が、共重合体全体における平均の含有比率の−10〜+10モル%内であると、溶剤に対する溶解性の点で好ましいことが記載されている。
また特許文献7には、GPCにおける共重合体全体のピークの5%に相当する低分子量域での、水酸基を有する構成単位のモル組成が、共重合体全体における水酸基を有する構成単位の平均モル組成の±10%以内であると、半導体リソグラフィーにおけるパターンの微細化の点で好ましいことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−145955号公報
【特許文献2】特開2001−201856号公報
【特許文献3】特開2004−269855号公報
【特許文献4】特開平10−319595号公報
【特許文献5】特開平10−274852号公報
【特許文献6】国際公開第1999/050322号パンフレット
【特許文献7】国際公開第2005/105869号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献2、3に記載されている方法では、リソグラフィー用重合体の溶解性、またはレジスト組成物の感度が充分に改善されない場合がある。
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、共重合体における構成単位の含有比率のばらつき、および分子量のばらつきを改善でき、溶媒への溶解性、およびレジスト組成物に用いたときの感度を向上できる重合体の製造方法、前記製造方法により得られるリソグラフィー用重合体、前記リソグラフィー用重合体を用いたレジスト組成物、および前記レジスト組成物を用いて、パターンが形成された基板を製造する方法を提供することを目的とする。
【0010】
また、上記特許文献6、7に記載されるような従来の方法では、共重合体の溶剤への溶解性が必ずしも充分ではなく、更なる溶解性の向上が求められていた。
例えば、半導体リソグラフィー用共重合体にあっては、共重合体の溶解性が不充分であると、半導体リソグラフィー用組成物を調製する際に、溶媒に溶解させるのに長時間を要したり、不溶分が発生することで製造工程数が増加したりする等の不都合を生じる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)前記課題を解決するために、本発明の第1の態様は、反応器内に単量体および重合開始剤を滴下しながら、前記反応器内で2種以上の単量体α〜α(ただし、nは2以上の整数を表す。)を重合して、構成単位α’〜α’(ただし、α’〜α’は単量体α〜αからそれぞれ導かれる構成単位を表す。)からなる共重合体(P)を得る重合体の製造方法であって、下記(I)及び(II)の工程を有し、
(I)前記反応器内に、前記重合開始剤を滴下する前または前記重合開始剤の滴下開始と同時に、前記反応器内に、前記単量体α〜αを、各単量体の反応性比に応じて、重合初期から定常状態で重合させる割合の第1の組成で含有する第1の溶液を供給する工程
(II)得ようとする重合体(P)における構成単位α’〜α’の含有比率を表わす目標組成(単位:モル%)がα’:α’:…:α’であるとき、前記反応器内に前記第1の溶液を供給開始した後または前記第1の溶液の供給開始と同時に、前記単量体α〜αを、前記目標組成と同じ組成で含有する第2の溶液を供給する工程
前記重合開始剤の滴下開始から前記第2の溶液の滴下終了までを基準時間とし、前記重合開始剤の全供給量を前記基準時間で除した値を平均供給速度とするとき、前記基準時間の0%からj%(jは5〜20)までの期間を、前記平均供給速度よりも高速で重合開始剤を滴下する高速供給期間とする、重合体の製造方法である。
(2)前記第1の組成は、下記(i) 〜(iii)の手順により求められる請求項1に記載の重合体の製造方法。
(i)まず単量体組成が目標組成α’:α’:…:α’と同じである単量体混合物100質量部と重合開始剤と溶媒を含有する滴下溶液を、溶媒のみを入れた反応器内に一定の滴下速度で滴下し、滴下開始からの経過時間がt、t、t…tのときに、それぞれ反応器内に残存している単量体α〜αの組成(単位:モル%)M:M:…:Mと、tからtまでの間、tからtまでの間、tからtm+1までの間にそれぞれ生成した重合体における構成単位α’〜α’の比率(単位:モル%)P:P:…:Pを求める。
(ii)前記P:P:…:Pが、目標組成α’:α’:…:α’に最も近い時間帯「tからtm+1までの間(mは1以上の整数。)」を見つける。
(iii)前記「tからtm+1までの間」におけるP:P:…:Pの値と、経過時間tにおけるM:M:…:Mの値とから、下記式により、ファクターF、F、…Fを求める。F=P/M、F=P/M、…F=P/M
なお、上記(i) 〜 (iii)の手順で求められるファクターをF、F、…Fで表わすと、α=α’/F、α=α’/F、…α=α’/Fである。
(3)反応器内に単量体および重合開始剤を滴下しながら、前記反応器内で2種以上の単量体α〜α(ただし、nは2以上の整数を表す。)を重合して、構成単位α’〜α’(ただし、α’〜α’は単量体α〜αからそれぞれ導かれる構成単位を表す。)からなる重合体(P)を得る重合工程を有し、前記反応器内に、前記重合開始剤を滴下する前または前記重合開始剤の滴下開始と同時に、前記反応器内に、前記単量体α〜αを第1の組成で含有する第1の溶液を供給開始し、前記反応器内に前記第1の溶液を供給開始した後または前記第1の溶液の供給開始と同時に、前記反応器内に前記単量体α〜αを第2の組成で含有する第2の溶液を滴下開始し、前記第2の溶液の滴下開始は、前記重合開始剤の滴下開始と同時または前記重合開始剤の滴下開始より後であり、得ようとする重合体(P)における構成単位α’〜α’の含有比率を表わす目標組成(単位:モル%)がα’:α’:…:α’であるとき、前記第2の組成は前記目標組成と同じであり、前記第1の組成(単位:モル%)をα:α:…:αで表わし、下記(i)〜(iii)の手順で求められるファクターをF、F、…Fで表わすと、α=α’/F、α=α’/F、…α=α’/Fであり、前記重合開始剤の滴下開始から前記第2の溶液の滴下終了までを基準時間とするとき、前記基準時間の20%が経過する以前に、前記第1の溶液の供給が終了し、前記重合開始剤の全供給量を前記基準時間で除した値を平均供給速度とするとき、前記基準時間の0%からj%(jは5〜20)までの期間を、前記平均供給速度よりも高速で重合開始剤を滴下する高速供給期間とし、前記高速供給期間に前記重合開始剤の全供給量のうちの30〜90質量%を前記反応器内に供給する請求項1に記載の重合体の製造方法。
(i)まず単量体組成が目標組成α’:α’:…:α’と同じである単量体混合物100質量部と重合開始剤と溶媒を含有する滴下溶液を、溶媒のみを入れた反応器内に一定の滴下速度で滴下し、滴下開始からの経過時間がt、t、t…tのときに、それぞれ反応器内に残存している単量体α〜αの組成(単位:モル%)M:M:…:Mと、tからtまでの間、tからtまでの間、tからtm+1までの間にそれぞれ生成した重合体における構成単位α’〜α’の比率(単位:モル%)P:P:…:Pを求める。
(ii)前記P:P:…:Pが、目標組成α’:α’:…:α’に最も近い時間帯「tからtm+1までの間(mは1以上の整数。)」を見つける。
(iii)前記「tからtm+1までの間」におけるP:P:…:Pの値と、経過時間tにおけるM:M:…:Mの値とから、下記式により、ファクターF、F、…Fを求める。F=P/M、F=P/M、…F=P/M
【発明の効果】
【0016】
上記製造方法によれば、構成単位の含有比率のばらつき、および分子量のばらつきを改善でき、溶媒への溶解性、およびレジスト組成物に用いたときの感度を向上できる、共重合体が得られる。
上記リソグラフィー用共重合体は、構成単位の含有比率のばらつき、および分子量のばらつきが改善され、溶媒への溶解性が良好であり、レジスト組成物に用いたときに高い感度が得られる。
また、上記リソグラフィー用共重合体は、高分子量域における共重合体の単量体組成のばらつきが小さく、溶媒への溶解性が良好である。またレジスト組成物に用いたときに高い感度が得られる。
上記レジスト組成物は、化学増幅型であり、共重合体のレジスト溶媒への溶解性が良好であるため組成物中の不溶分が少なく、また感度に優れる。
上記基板の製造方法によれば、欠陥が少なく、高精度の微細なレジストパターンを安定して形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】参考例1の結果を示すグラフである。
図2】参考例1の結果を示すグラフである。
図3】実施例1の結果を示すグラフである。
図4】実施例1の結果を示すグラフである。
図5】実施例2の結果を示すグラフである。
図6】実施例2の結果を示すグラフである。
図7】参考例2の結果を示すグラフである。
図8】参考例2の結果を示すグラフである。
図9】実施例3の結果を示すグラフである。
図10】実施例3の結果を示すグラフである。
図11】参考例1の結果を示すグラフである。
図12】実施例1の結果を示すグラフである。
図13】実施例2の結果を示すグラフである。
図14】参考例2の結果を示すグラフである。
図15】実施例3の結果を示すグラフである。
図16】溶出曲線の例を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書において、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸またはメタクリル酸を意味し、「(メタ)アクリロイルオキシ」は、アクリロイルオキシまたはメタクリロイルオキシを意味する。
本発明における重合体の重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーにより、ポリスチレン換算で求めた値である。
本明細書において、2種以上の単量体α〜α(ただし、nは2以上の整数を表す。)を重合して、構成単位α’〜α’(ただし、α’は単量体αから導かれる構成単位を表し、iは2以上n以下の整数を表わし、nは2以上の整数を表す。)からなる共重合体に関するものである。共重合体の単量体組成とは、共重合体を構成する全構成単位に対する各構成単位の含有比率(単位:モル%)を意味する。
本明細書において、リソグラフィー用共重合体は、レジスト用共重合体、リソグラフィーにおいて用いられる反射防止膜用の共重合体など、リソグラフィー用途に好適である。
【0019】
(製造方法)
<重合体(P)>
本発明の重合体(P)は構成単位α’〜α’(ただし、α’〜α’は単量体α〜αからそれぞれ導かれる構成単位を表す。nは2以上の整数を表す。)からなる。nの上限は、本発明による効果が得られやすい点で6以下が好ましい。特に重合体(P)がレジスト用重合体である場合には、5以下がより好ましく、4以下がさらに好ましい。
例えば、n=3である場合は、重合体(P)は構成単位α’、α’、α’からなる三元系重合体P(α’/α’/α’)であり、n=4の場合は、構成単位α’、α’、α’、α’からなる四元系重合体P(α’/α’/α’/α’)である。
【0020】
上記重合体(P)の用途は特に限定されない。例えば、リソグラフィー工程に用いられるリソグラフィー用重合体が好ましい。リソグラフィー用重合体としては、レジスト膜の形成に用いられるレジスト用重合体、レジスト膜の上層に形成される反射防止膜(TARC)、またはレジスト膜の下層に形成される反射防止膜(BARC)の形成に用いられる反射防止膜用重合体、ギャップフィル膜の形成に用いられるギャップフィル膜用重合体、トップコート膜の形成に用いられるトップコート膜用重合体が挙げられる。
リソグラフィー用重合体の重量平均分子量(Mw)は1,000〜200,000が好ましく、2,000〜40,000がより好ましい。分子量分布(Mw/Mn)は1.0〜10.0が好ましく、1.1〜4.0がより好ましい。
【0021】
重合体(P)の構成単位は、特に限定されず、用途および要求特性に応じて適宜選択される。
前記重合体がレジスト用共重合体である場合には、酸脱離性基を有する構成単位を有することが好ましく、この他に、必要に応じてラクトン骨格を有する構成単位、親水性基を有する構成単位等の公知の構成単位を有していてもよい。レジスト用重合体(P)の重量平均分子量(Mw)は1,000〜100,000が好ましく、3,000〜30,000がより好ましい。分子量分布(Mw/Mn)は1.0〜3.0が好ましく、1.1〜2.5がより好ましい。
【0022】
反射防止膜用重合体は、例えば、吸光性基を有する構成単位を有するとともに、レジスト膜との混合を避けるため、硬化剤などと反応して硬化可能なアミノ基、アミド基、ヒドロキシル基、エポキシ基等の反応性官能基を有する構成単位を含むことが好ましい。
吸光性基とは、レジスト組成物中の感光成分が感度を有する波長領域の光に対して、高い吸収性能を有する基であり、具体例としては、アントラセン環、ナフタレン環、ベンゼン環、キノリン環、キノキサリン環、チアゾール環等の環構造(任意の置換基を有していてもよい。)を有する基が挙げられる。特に、照射光として、KrFレーザ光が用いられる場合には、アントラセン環又は任意の置換基を有するアントラセン環が好ましく、ArFレーザ光が用いられる場合には、ベンゼン環又は任意の置換基を有するベンゼン環が好ましい。
上記任意の置換基としては、フェノール性水酸基、アルコール性水酸基、カルボキシ基、カルボニル基、エステル基、アミノ基、又はアミド基等が挙げられる。
特に、吸光性基として、保護された又は保護されていないフェノール性水酸基を有する反射防止膜用重合体が、良好な現像性・高解像性の観点から好ましい。
上記吸光性基を有する構成単位・単量体として、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、p−ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0023】
ギャップフィル膜用重合体は、例えば、狭いギャップに流れ込むための適度な粘度を有するとともに、レジスト膜や反射防止膜との混合を避けるため、硬化剤などと反応して硬化可能な反応性官能基を有する構成単位を含むことが好ましい。
具体的にはヒドロキシスチレンと、スチレン、アルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の単量体との共重合体が挙げられる。
液浸リソグラフィーに用いられるトップコート膜用重合体の例としては、カルボキシル基を有する構成単位を含む共重合体、水酸基が置換したフッ素含有基を有する構成単位を含む共重合体等が挙げられる。
【0024】
<構成単位・単量体>
重合体(P)は、その構成単位α’〜α’にそれぞれ対応する単量体α〜αを重合させて得られる。単量体はビニル基を有する化合物が好ましく、ラジカル重合しやすいものが好ましい。特に(メタ)アクリル酸エステルは波長250nm以下の露光光に対する透明性が高い。
以下、重合体(P)がレジスト用重合体である場合に、好適に用いられる構成単位およびそれに対応する単量体について説明する。
【0025】
[酸脱離性基を有する構成単位・単量体]
レジスト用重合体は、酸脱離性基を有することが好ましい。「酸脱離性基」とは、酸により開裂する結合を有する基であり、前記結合の開裂により酸脱離性基の一部または全部が重合体の主鎖から脱離する基である。
レジスト用組成物において、酸脱離性基を有する構成単位を有する重合体は、酸成分と反応してアルカリ性溶液に可溶となり、レジストパターン形成を可能とする作用を奏する。
酸脱離性基を有する構成単位の割合は、感度および解像度の点から、重合体を構成する全構成単位(100モル%)のうち、20モル%以上が好ましく、25モル%以上がより好ましい。また、基板等への密着性の点から、60モル%以下が好ましく、55モル%以下がより好ましく、50モル%以下がさらに好ましい。
【0026】
酸脱離性基を有する単量体は、酸脱離性基および重合性多重結合を有する化合物であればよく、公知のものを使用できる。重合性多重結合とは重合反応時に開裂して共重合鎖を形成する多重結合であり、エチレン性二重結合が好ましい。
酸脱離性基を有する単量体の具体例として、炭素数6〜20の脂環式炭化水素基を有し、かつ酸脱離性基を有している(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。前記脂環式炭化水素基は、(メタ)アクリル酸エステルのエステル結合を構成する酸素原子と直接結合していてもよく、アルキレン基等の連結基を介して結合していてもよい。
前記(メタ)アクリル酸エステルには、炭素数6〜20の脂環式炭化水素基を有するとともに、(メタ)アクリル酸エステルのエステル結合を構成する酸素原子との結合部位に第3級炭素原子を有する(メタ)アクリル酸エステル、または、炭素数6〜20の脂環式炭化水素基を有するとともに、前記脂環式炭化水素基に−COOR基(Rは置換基を有していてもよい第3級炭化水素基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基、またはオキセパニル基を表す。)が直接または連結基を介して結合している(メタ)アクリル酸エステルが含まれる。
【0027】
特に、波長250nm以下の光で露光するパターン形成方法に適用されるレジスト組成物を製造する場合には、酸脱離性基を有する単量体の好ましい例として、例えば、2−メチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、2−エチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、1−(1’−アダマンチル)−1−メチルエチル(メタ)アクリレート、1−メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、1−エチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、1−メチルシクロペンチル(メタ)アクリレート、1−エチルシクロペンチル(メタ)アクリレート、2−イソプロピル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、1−エチルシクロオクチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの中でも、1−エチルシクロヘキシルメタクリレート(実施例のm−2)、2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート(実施例のm−5)、1−エチルシクロペンチルメタクリレート、2−イソプロピル−2−アダマンチルメタクリレートがより好ましい。
酸脱離性基を有する単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
[極性基を有する構成単位・単量体]
「極性基」とは、極性を持つ官能基または極性を持つ原子団を有する基であり、具体例としては、ヒドロキシ基、シアノ基、アルコキシ基、カルボキシ基、アミノ基、カルボニル基、フッ素原子を含む基、硫黄原子を含む基、ラクトン骨格を含む基、アセタール構造を含む基、エーテル結合を含む基などが挙げられる。
これらのうちで、波長250nm以下の光で露光するパターン形成方法に適用されるレジスト用重合体は、極性基を有する構成単位として、ラクトン骨格を有する構成単位を有することが好ましく、さらに後述の親水性基を有する構成単位を有することが好ましい。
【0029】
(ラクトン骨格を有する構成単位・単量体)
ラクトン骨格としては、例えば、4〜20員環程度のラクトン骨格が挙げられる。ラクトン骨格は、ラクトン環のみの単環であってもよく、ラクトン環に脂肪族または芳香族の炭素環または複素環が縮合していてもよい。
共重合体がラクトン骨格を有する構成単位を含む場合、その含有量は、基板等への密着性の点から、全構成単位(100モル%)のうち、20モル%以上が好ましく、35モル%以上がより好ましい。また、感度および解像度の点から、60モル%以下が好ましく、55モル%以下がより好ましく、50モル%以下がさらに好ましい。
【0030】
ラクトン骨格を有する単量体としては、基板等への密着性に優れる点から、置換あるいは無置換のδ−バレロラクトン環を有する(メタ)アクリル酸エステル、置換あるいは無置換のγ−ブチロラクトン環を有する単量体からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、無置換のγ−ブチロラクトン環を有する単量体が特に好ましい。
【0031】
ラクトン骨格を有する単量体の具体例としては、β−(メタ)アクリロイルオキシ−β−メチル−δ−バレロラクトン、4,4−ジメチル−2−メチレン−γ−ブチロラクトン、β−(メタ)アクリロイルオキシ−γ−ブチロラクトン、β−(メタ)アクリロイルオキシ−β−メチル−γ−ブチロラクトン、α−(メタ)アクリロイルオキシ−γ−ブチロラクトン、2−(1−(メタ)アクリロイルオキシ)エチル−4−ブタノリド、(メタ)アクリル酸パントイルラクトン、5−(メタ)アクリロイルオキシ−2,6−ノルボルナンカルボラクトン、8−メタクリロキシ−4−オキサトリシクロ[5.2.1.02,6 ]デカン−3−オン、9−メタクリロキシ−4−オキサトリシクロ[5.2.1.02,6 ]デカン−3−オン等が挙げられる。また、類似構造を持つ単量体として、メタクリロイルオキシこはく酸無水物等も挙げられる。
これらの中でも、α−メタクリロイルオキシ−γ−ブチロラクトン(実施例のm−1)、α−アクリロイルオキシ−γ−ブチロラクトン(実施例のm−4)、5−メタクリロイルオキシ−2,6−ノルボルナンカルボラクトン、8−メタクリロキシ−4−オキサトリシクロ[5.2.1.02,6 ]デカン−3−オンがより好ましい。
ラクトン骨格を有する単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
(親水性基を有する構成単位・単量体)
本明細書における「親水性基」とは、−C(CF−OH、ヒドロキシ基、シアノ基、メトキシ基、カルボキシ基およびアミノ基の少なくとも1種である。
これらのうちで、波長250nm以下の光で露光するパターン形成方法に適用されるレジスト用重合体は、親水性基としてヒドロキシ基またはシアノ基を有することが好ましい。
共重合体における親水性基を有する構成単位の含有量は、レジストパターン矩形性の点から、全構成単位(100モル%)のうち、5〜30モル%が好ましく、10〜25モル%がより好ましい。
【0033】
親水性基を有する単量体としては、例えば、末端ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリ酸エステル;単量体の親水性基上にアルキル基、ヒドロキシ基、カルボキシ基等の置換基を有する誘導体;環式炭化水素基を有する単量体(例えば(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸1−イソボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸トリシクロデカニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンチル、(メタ)アクリル酸2−メチル−2−アダマンチル、(メタ)アクリル酸2−エチル−2−アダマンチル等。)が置換基としてヒドロキシ基、カルボキシ基等の親水性基を有するものが挙げられる。
【0034】
親水性基を有する単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシ−n−プロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシアダマンチル、2−または3−シアノ−5−ノルボルニル(メタ)アクリレート、2−シアノメチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。基板等に対する密着性の点から、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシアダマンチル、2−または3−シアノ−5−ノルボルニル(メタ)アクリレート、2−シアノメチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート等が好ましい。
これらの中でも、メタクリル酸3−ヒドロキシアダマンチル(実施例のm−3)、2−シアノメチル−2−アダマンチルメタクリレート(実施例のm−6)がより好ましい。
親水性基を有する単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
[放射線を吸収する構造を有する構成単位]
本発明の共重合体が、反射防止膜用の重合体である場合は、リソグラフィー工程において照射される放射線を吸収する分子構造を含む必要がある。
放射線を吸収する構造は、使用する放射線の波長により異なるが、例えばKrFエキシマレーザー光に対してはナフタレン骨格やアントラセン骨格が好ましく、ArFエキシマレーザーに対してはベンゼン骨格が好ましい。
これらの分子構造を有する構成単位を与える単量体の例として、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレンなどのスチレン類及びその誘導体、置換又は非置換のフェニル(メタ)アクリレート、置換又は非置換のナフタレン(メタ)アクリレート、置換又は非置換のアントラセンメチル(メタ)アクリレート等のエチレン性二重結合を有する芳香族含有エステル類等などを挙げることができる。
放射線を吸収する分子構造を有する構成単位の割合は、共重合体の全構成単位(100モル%)のうち、10〜100モル%が好ましい。
【0036】
<重合開始剤>
重合開始剤は、熱により分解して効率的にラジカルを発生するものが好ましく、10時間半減期温度が重合温度条以下であるものを用いることが好ましい。例えばリソグラフィー用重合体を製造する場合の、好ましい重合温度は50〜150℃であり、重合開始剤としては10時間半減期温度が50〜70℃のものを用いることが好ましい。また重合開始剤が効率的に分解するためには、重合開始剤の10時間半減期温度と重合温度との差が10℃以上であることが好ましい。
重合開始剤の例としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]等のアゾ化合物、2,5−ジメチル−2,5−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ(4−tert−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等の有機過酸化物が挙げられる。アゾ化合物がより好ましい。
これらは市販品から入手可能である。例えばジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート(和光純薬工業社製、V601(商品名)、10時間半減期温度66℃)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業社製、V65(商品名)、10時間半減期温度51℃)等を好適に用いることができる。
【0037】
<溶媒>
本発明の重合体の製造方法においては重合溶媒を用いてもよい。重合溶媒としては、例えば、下記のものが挙げられる。
エーテル類:鎖状エーテル(例えばジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等。)、環状エーテル(例えばテトラヒドロフラン(以下、「THF」と記すこともある。)、1,4−ジオキサン等。)等。
エステル類:酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、「PGMEA」と記すこともある。)、γ−ブチロラクトン等。
ケトン類:アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等。
アミド類:N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等。
スルホキシド類:ジメチルスルホキシド等。
芳香族炭化水素:ベンゼン、トルエン、キシレン等。
脂肪族炭化水素:ヘキサン等。
脂環式炭化水素:シクロヘキサン等。
重合溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
重合溶媒の使用量は特に限定されないが、例えば、重合反応終了時の反応器内の液(重合反応溶液)の固形分濃度が20〜40質量%程度となる量が好ましい。
【0038】
<重合体の製造方法>
本発明の重合体の製造方法は、反応器内に単量体および重合開始剤を滴下しながら、前記反応器内で2種以上の単量体α〜αを重合して、構成単位α’〜α’からなる重合体(P)を得る重合工程を有する。 前記重合工程はラジカル重合法で行われ、本発明では、単量体および重合開始剤を反応器内に滴下しながら、前記反応器内で重合を行う滴下重合法を用いる。
【0039】
本発明では、単量体を含有する液として、単量体α〜αを第1の組成で含有する第1の溶液と、単量体α〜αを第2の組成で含有する第2の溶液を用いる。第1の溶液および第2の溶液は溶媒を含有することが好ましい。
[第2の溶液]
第2の溶液における単量体の含有比率(第2の組成)は、得ようとする重合体(P)における構成単位α’〜α’の含有比率を表す目標組成と同じである。
例えば、重合体(P)が、単量体x、y、zを共重合させて得られる3元系の重合体であって、目標組成(モル%、以下同様。)がx’:y’:z’であるとき、第2の組成(モル%、以下同様。)x:y:zはx’:y’:z’と同じにする。
第2の溶液は滴下により反応器に供給する。
【0040】
[第1の溶液]
第1の溶液における単量体の含有比率(第1の組成)は、重合体(P)における目標組成と、重合に用いられる各単量体の反応性とを加味して予め求められた組成である。
具体的に第1の組成は、反応器内に存在する単量体の含有比率が第1の組成であるとき、前記反応器内に上記第2の溶液が滴下されると、滴下直後に生成される重合体分子の構成単位の含有比率が目標組成と同じになるように、設計された組成である。この場合、滴下直後に生成される重合体分子の構成単位の含有比率が、滴下された第2の溶液の単量体の含有比率(目標組成)と同じであるから、滴下直後に反応器内に残存する単量体の含有比率は常に一定(第1の組成)となる。したがって、かかる反応器内に第2の溶液の滴下を継続して行うと、常に目標組成の重合体分子が生成し続けるという定常状態が得られる。
かかる定常状態が得られるような第1の組成が存在することは、本発明より前には知られておらず、本発明者等によって初めて得られた知見である。第1の組成の設計方法は後述する。
第1の溶液は、予め反応器内に仕込んでおいてもよく、滴下等により反応器に徐々に供給してもよく、これらを組み合わせてもよい。
【0041】
[重合開始剤]
重合開始剤は滴下により反応器に供給する。第2の溶液に重合開始剤を含有させてもよい。第1の溶液を滴下する場合は、前記第1の溶液に重合開始剤を含有させてもよい。第1の溶液、第2の溶液とは別に、重合開始剤を含有する溶液(重合開始剤溶液)を滴下してもよい。これらを組み合わせてもよい。
重合開始剤の使用量(全供給量)は、重合開始剤の種類に応じて、また得ようとする重合体(P)の重量平均分子量の目標値に応じて設定される。
例えば、本発明における重合体(P)がリソグラフィー用重合体である場合、反応器に供給される単量体の合計(全供給量)の100モル%に対して、重合開始剤の使用量(全供給量)は1〜25モル%の範囲が好ましく、1.5〜20モル%の範囲がより好ましい。
【0042】
[単量体の含有量]
重合に使用される単量体の合計量(単量体の全供給量)は、第1の溶液に含まれる単量体の合計量と、第2の溶液に含まれる単量体の合計量の総和であり、得ようとする重合体(P)の量に応じて設定される。
また単量体の全供給量のうち、第1の溶液に含まれる単量体の合計量が占める割合が少なすぎると、第1の溶液を用いることによる所期の効果が充分に得られず、多すぎると重合工程の初期に生成される重合体の分子量が高くなりすぎる。したがって、単量体の全供給量に対して、第1の溶液に含まれる単量体の合計量は3〜40質量%が好ましく、5〜30質量%がより好ましい。
【0043】
[重合工程]
重合工程において、反応器内に重合開始剤を滴下したときに、前記反応器内に第1の溶液が存在していることが必要である。したがって、反応器内に重合開始剤を滴下する前または重合開始剤の滴下開始と同時に、前記反応器内に第1の溶液を供給開始する。
また反応器内に第2の溶液を滴下したときに、前記反応器内に第1の溶液と重合開始剤が存在していることが必要である。したがって、反応器内に第1の溶液を供給開始した後または第1の溶液の供給開始と同時に、前記反応器内に第2の溶液を滴下開始する。前記第2の溶液の滴下開始は、前記重合開始剤の滴下開始と同時または前記重合開始剤の滴下開始より後である。重合開始剤の滴下開始と第2の溶液の滴下開始は同時であることが好ましい。
第2の溶液の滴下は、連続的でもよく、断続的でもよく、滴下速度が変化してもよい。生成される重合体の組成および分子量をより安定させるためには、連続的に、一定速度で滴下することが好ましい。
第1の溶液を滴下により供給する場合、連続的でもよく、断続的でもよく、滴下速度が変化してもよい。生成される重合体の組成および分子量をより安定させるためには、連続的に、一定速度で滴下することが好ましい。
【0044】
第1の溶液は、重合工程の初期に、その全量を供給することが好ましい。具体的には、重合開始剤の滴下開始から第2の溶液の滴下終了までを基準時間とするとき、前記基準時間の20%が経過する以前に、第1の溶液の供給を終了する。例えば基準時間が4時間である場合は、重合開始剤の滴下開始から48分経過する以前に、第1の溶液の全量を反応器内に供給する。
第1の溶液の供給終了は、基準時間の15%以前が好ましく、10%以前がより好ましい。
また基準時間の0%の時点で第1の溶液の全量が供給されていてもよい。すなわち重合開始剤の滴下開始前に、反応器内に第1の溶液の全量を仕込んでおいてもよい。
【0045】
重合開始剤は、重合工程の初期における供給量を多くする。具体的には重合開始剤の全供給量を基準時間で除した値を平均供給速度Vjとするとき、基準時間の0%からj%(jは5〜20)までの期間を、平均供給速度Vjよりも高速で重合開始剤を滴下する重合開始剤の高速供給期間とする。
重合開始剤の高速供給期間の開始時点は基準時間の開始時であり、基準時間の0%である。重合開始剤の高速供給期間の終了時点は、基準時間のj%が経過した時点である。前記j%は5〜20%の範囲内であり、5.5〜17.5%が好ましく、6〜15%がより好ましい。
高速供給期間中に反応器内に供給される重合開始剤は、重合開始剤の全供給量のうちの30〜90質量%である。前記高速供給期間中の重合開始剤の供給量によって、重合工程の初期において生成される重合体の重量平均分子量が変化する。したがって、高速供給期間中の重合開始剤の最適な供給量は、単量体の種類、単量体の供給速度、重合開始剤の種類、重合条件等によっても異なるが、特に重合工程の初期に生成される重合体の重量平均分子量が目標値に近くなるように設定することが好ましい。例えば重合開始剤の全供給量の35〜85質量%が好ましく、40〜80質量%がより好ましい。
高速供給期間中の重合開始剤の滴下速度は、前記平均供給速度より高い状態が保たれていればよく、途中で滴下速度を変更してもよい。
高速供給期間の終了後の重合開始剤の滴下速度は、前記平均供給速度よりも低速であればよく、途中で滴下速度を変更してもよい。また、滴下は連続的でもよく断続的でもよい。
重合開始剤の滴下終了は、第1の溶液の供給終了より後、または第1の溶液の供給終了と同時であることが好ましい。
重合開始剤の滴下終了と第2の溶液の滴下終了は同時であることが好ましいが、本発明の効果を妨げない範囲で、若干前後してもよい。
【0046】
重合工程の好ましい態様としては、以下の(a)、(b)が挙げられる。
(a)予め反応器内に、単量体α〜αを第1の組成で含有する第1の溶液を仕込んでおき、反応器内を所定の重合温度まで加熱した後、前記反応器内に、重合開始剤の一部を含む重合開始剤溶液と、単量体α〜αを第2の組成で含有するとともに、重合開始剤の残部を含む第2の溶液をそれぞれ滴下する。重合開始剤溶液と第2の溶液は同時に滴下開始するか、または重合開始剤溶液を先に滴下開始する。同時が好ましい。重合開始剤溶液の滴下開始から第2の溶液の滴下開始までの時間は0〜10分が好ましい。
滴下速度はそれぞれ一定であることが好ましい。重合開始剤溶液は第2の溶液よりも先に滴下を終了する。
本態様において、基準時間の開始、すなわち重合開始剤の滴下開始は、重合開始剤溶液の滴下開始時である。本態様では、重合開始剤の滴下開始前に第1の溶液の全量が反応器内に供給される。すなわち第1の溶液の供給終了は基準時間の0%である。高速供給期間は重合開始剤溶液が滴下されている期間である。前記高速供給期間に反応器内に供給される重合開始剤の量は、重合開始剤溶液に含まれる重合開始剤の量と、重合開始剤溶液が滴下されている期間に滴下される第2の溶液に含まれる重合開始剤の量の合計である。重合開始剤の滴下終了は、第2の溶液の滴下終了時である。
【0047】
(b)反応器内に溶媒のみを仕込み、所定の重合温度まで加熱した後、単量体α〜αを第1の組成で含有するとともに、重合開始剤の一部を含む第1の溶液と、単量体α〜αを第2の組成で含有するとともに、重合開始剤の残部を含む第2の溶液をそれぞれ滴下する。両液は同時に滴下開始するか、または第1の溶液を先に滴下開始する。第1の溶液の滴下開始から第2の溶液の滴下開始までの時間は0〜10分が好ましい。
滴下速度はそれぞれ一定であることが好ましい。第2の溶液よりも第1の溶液の方が先に滴下を終了する。
本態様において、重合開始剤の滴下開始は、第1の溶液の滴下開始時である。高速供給期間は第1の溶液が滴下されている期間である。前記高速供給期間に反応器内に供給される重合開始剤の量は、第1の溶液に含まれる重合開始剤の量と、第1の溶液が滴下されている期間に滴下される第2の溶液に含まれる重合開始剤の量の合計である。重合開始剤の滴下終了は、第2の溶液の滴下終了時である。
【0048】
本発明の方法によれば、前記定常状態が得られるように単量体の含有比率が設計された第1の溶液と第2の溶液を用いることにより、重合反応の開始直後から目標組成とほぼ同じ組成の重合体分子が生成され、その状態が継続される。
したがって、重合工程後に得られる重合体(P)において、構成単位の含有比率のばらつきが小さくなり、これによって溶媒への溶解性が向上し、レジスト組成物に用いた際の感度が向上する。
またこれと同時に、単量体を含む第2の溶液とは別に、単量体を含む第1の溶液を重合工程の初期までに供給するとともに、重合工程の初期を重合開始剤の高速供給期間とすることにより、後述の実施例に示されるように、重合工程において、反応時間による重量平均分子量のばらつきが低減され、溶媒への溶解性が向上し、レジスト組成物に用いた際の感度が向上する。これは、重量平均分子量が高すぎる重合体分子の生成が抑えられたためと考えられる。
したがって、本発明によれば、溶媒への溶解性が良好であり、レジスト組成物に用いた際には高い感度を有する重合体(P)を再現性良く得ることができる。
なお、本発明の重合体はレジスト用途以外の用途にも適用可能であり、溶解性の向上効果が得られるほか、各種性能の向上が期待できる。
【0049】
<第1の組成の設計方法>
以下、第1の組成の設計方法を説明する。
得ようとする重合体(P)における構成単位の含有比率(目標組成、単位:モル%)が、α’:α’:…:α’であるとき、第1の組成(単位:モル%)をα:α:…:αで表わし、下記(i)〜(iii)の手順で求められるファクターをF、F、…Fで表わすと、α=α’/F、α=α’/F、…α=α’/Fとする。
(i)まず単量体組成が目標組成α’:α’:…:α’と同じである単量体混合物100質量部と重合開始剤と溶媒を含有する滴下溶液を、溶媒のみを入れた反応器内に一定の滴下速度で滴下し、滴下開始からの経過時間がt、t、t3、〜tのときに、それぞれ反応器内に残存している単量体α〜αの組成(単位:モル%)M:M:…:Mと、tからtまでの間、tからtまでの間、tからtm+1までの間にそれぞれ生成した重合体における構成単位α’〜α’の比率(単位:モル%)P:P:…:Pを求める。
(ii)前記P:P:…:Pが、目標組成α’:α’:…:α’に最も近い時間帯「tからtm+1までの間(mは1以上の整数。)」を見つける。
(iii)前記「tからtm+1までの間」におけるP:P:…:Pの値と、経過時間tにおけるM:M:…:Mの値とから、下記式により、ファクターF、F、…Fを求める。F=P/M、F=P/M、…F=P/M
【0050】
より具体的に説明すると、例えば、重合体(P)が、単量体x、y、zを共重合させて得られる3元系の重合体であって、目標組成がx’:y’:z’であるとき、第1の組成(モル%、以下同様。)x:y:zは、下記の方法で求められるファクターFx、Fy、Fzを用いて、x=x’/Fx、y=y’/Fy、z=z’/Fzにより算出される値とする。
【0051】
[ファクターFx、Fy、Fzの求め方]
以下、重合体(P)が3元系の重合体である場合を例に挙げて説明するが、2元系または4元系以上でも同様にしてファクターを求めることができる。
(1)まず、単量体組成が目標組成x’:y’:z’と同じである単量体混合物と溶媒と重合開始剤を含有する滴下溶液を、反応器内に一定の滴下速度vで滴下する。反応器内には、予め溶媒のみを入れておく。
滴下開始からの経過時間がt、t、t…tのときに、それぞれ反応器内に残存している単量体x、y、zの組成(モル%)Mx:My:Mzと、tからtまでの間、tからtまでの間、tからtm+1までの間にそれぞれ生成した重合体における構成単位の比率(モル%)Px:Py:Pzを求める。
(2)Px:Py:Pzが、目標組成x’:y’:z’に最も近い時間帯「tからtm+1までの間(mは1以上の整数。)」を見つける。
(3)その「tからtm+1までの間」におけるPx:Py:Pzの値と、経過時間tにおけるMx:My:Mzの値とから、下記式により、ファクターFx、Fy、Fzを求める。
Fx=Px/Mx、Fy=Py/My、Fz=Pz/Mz。
ファクターFx、Fy、Fzは、各単量体の相対的な反応性を反映する値であり、重合に用いられる単量体の組み合わせまたは目標組成が変わると変化する。
【0052】
(4)また、好ましくは、最初の滴下溶液に含まれていた単量体混合物100質量%のうち、上記経過時間tにおいて、反応器内に存在する単量体の合計質量が占める割合(W質量%)を求める。
本発明の方法において、単量体の全供給量のうち、第1の溶液に含まれる単量体の合計量が占める割合をW質量%とすると、重合反応の開始直後から目標組成とほぼ同じ組成の重合体分子が生成される効果が得られやすい。
【0053】
<レジスト組成物>
本発明のレジスト組成物は、本発明のリソグラフィー用重合体をレジスト溶媒に溶解して調製される。レジスト溶媒としては、重合体の製造に用いた上記重合溶媒と同様のものが挙げられる。
本発明のレジスト組成物が化学増幅型レジスト組成物である場合は、さらに活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物(以下、光酸発生剤という。)を含有させる。
【0054】
(光酸発生剤)
光酸発生剤は、化学増幅型レジスト組成物において公知の光酸発生剤の中から任意に選択できる。光酸発生剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
光酸発生剤としては、例えば、オニウム塩化合物、スルホンイミド化合物、スルホン化合物、スルホン酸エステル化合物、キノンジアジド化合物、ジアゾメタン化合物等が挙げられる。
レジスト組成物における光酸発生剤の含有量は、重合体100質量部に対して、0.1〜20質量部が好ましく、0.5〜10質量部がより好ましい。
【0055】
(含窒素化合物)
化学増幅型レジスト組成物は、含窒素化合物を含んでいてもよい。含窒素化合物を含むことにより、レジストパターン形状、引き置き経時安定性等がさらに向上する。すなわち、レジストパターンの断面形状が矩形により近くなる。また半導体素子の量産ライン等では、レジスト膜に光を照射し、次いでベーク(PEB)した後、次の現像処理までの間に数時間放置されることがあるが、そのような放置(経時)によるレジストパターンの断面形状の劣化の発生がより抑制される。
含窒素化合物としては、アミンが好ましく、第2級低級脂肪族アミン、第3級低級脂肪族アミンがより好ましい。
レジスト組成物における含窒素化合物の含有量は、重合体100質量部に対して、0.01〜2質量部が好ましい。
【0056】
(有機カルボン酸、リンのオキソ酸またはその誘導体)
化学増幅型レジスト組成物は、有機カルボン酸、リンのオキソ酸またはその誘導体(以下、これらをまとめて酸化合物と記す。)を含んでいてもよい。酸化合物を含むことにより、含窒素化合物の配合による感度劣化を抑えることができ、また、レジストパターン形状、引き置き経時安定性等がさらに向上する。
有機カルボン酸としては、マロン酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、安息香酸、サリチル酸等が挙げられる。
リンのオキソ酸またはその誘導体としては、リン酸またはその誘導体、ホスホン酸またはその誘導体、ホスフィン酸またはその誘導体等が挙げられる。
レジスト組成物における酸化合物の含有量は、重合体100質量部に対して、0.01〜5質量部が好ましい。
【0057】
(添加剤)
本発明のレジスト組成物は、必要に応じて、界面活性剤、その他のクエンチャー、増感剤、ハレーション防止剤、保存安定剤、消泡剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。前記添加剤は、前記分野で公知のものであればいずれも使用可能である。また、これら添加剤の量は、特に限定されず、適宜決めればよい。
【0058】
<パターンが形成された基板の製造方法>
本発明の、パターンが形成された基板の製造方法の一例について説明する。
まず、所望の微細パターンを形成しようとするシリコンウエハー等の基板の被加工面上に、本発明のレジスト組成物をスピンコート等により塗布する。そして、前記レジスト組成物が塗布された基板を、ベーキング処理(プリベーク)等で乾燥することにより、基板上にレジスト膜を形成する。
ついで、レジスト膜に対して、フォトマスクを介して露光を行い潜像を形成する。露光光としては、250nm以下の波長の光が好ましい。例えばKrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、Fエキシマレーザー、EUV光が好ましく、ArFエキシマレーザーが特に好ましい。また、電子線を照射してもよい。
また、前記レジスト膜と露光装置の最終レンズとの間に、純水、パーフルオロ−2−ブチルテトラヒドロフラン、パーフルオロトリアルキルアミン等の高屈折率液体を介在させた状態で光を照射する液浸露光を行ってもよい。
【0059】
露光後、適宜熱処理(露光後ベーク、PEB)し、レジスト膜にアルカリ現像液を接触させ、露光部分を現像液に溶解させ、除去する(現像)。アルカリ現像液としては、公知のものが挙げられる。
現像後、基板を純水等で適宜リンス処理する。このようにして基板上にレジストパターンが形成される。
レジストパターンが形成された基板は、適宜熱処理(ポストベーク)してレジストを強化し、レジストのない部分を選択的にエッチングする。
エッチング後、レジストを剥離剤によって除去することによって、微細パターンが形成された基板が得られる。
【0060】
本発明の製造方法により得られるリソグラフィー用重合体は、溶媒への溶解性に優れるとともに、高い感度のレジスト膜を形成できる。
したがって、レジスト組成物を調製する際のレジスト溶媒への重合体の溶解を容易にかつ良好に行うことができる。またレジスト組成物はアルカリ現像液に対する優れた溶解性が得られ、感度の向上に寄与する。またレジスト組成物中の不溶分が少ないため、パターン形成において、前記不溶分に起因する欠陥が生じにくい。
したがって本発明の基板の製造方法によれば、本発明のレジスト組成物を用いることによって、基板上に欠陥の少ない、高精度の微細なレジストパターンを安定して形成できる。また、高感度および高解像度のレジスト組成物の使用が要求される、波長250nm以下の露光光を用いるフォトリソグラフィーまたは電子線リソグラフィー、例えばArFエキシマレーザー(193nm)を使用するリソグラフィーによる、パターン形成にも好適に用いることができる。
なお、波長250nm以下の露光光を用いるフォトリソグラフィーに用いられるレジスト組成物を製造する場合には、重合体が前記露光光の波長において透明であるように、単量体を適宜選択して用いることが好ましい。
【0061】
<共重合体のGPCによる分割>
また、本発明の共重合体は、GPCにより得られる溶出曲線において共重合体に係るピークを示す溶離液を、溶出順に、体積が均等になるように8個のフラクションに分割し、得られたフラクションのうち、最も先に溶出されたフラクションに含まれる共重合体の単量体組成と、共重合体全体の単量体組成との差が、各単量体に由来する構成単位のいずれについても−3モル%以上+3モル%以下である。
【0062】
図16は、GPCにおける溶出曲線の例を模式的に示したものであり、横軸はカラムから流出して検出器を通過する溶離液の累積値で表わされる溶出体積V(溶出速度×溶出時間)、縦軸は前記検出器を通過する際に検出される信号強度を表す。一般に、GPCを用いて、重合体の分子量分布の測定を行う場合、溶出体積Vが増大するにしたがって、検出器を通過する溶離液中の重合体の分子量の対数が単調に減少する。すなわち分子量が大きいほど、カラムからの溶出が早い。また信号強度は、検出器を通過する溶離液中における重合体の存在量に比例する。
【0063】
本明細書における「GPCにより得られる溶出曲線において共重合体に係るピークを示す溶離液」とは、溶出曲線における信号強度のピークスタート(図中符号Sで示す。)からピークエンド(図中符号Eで示す。)までの間に検出器を通過する溶離液を意味する。
なお、溶出曲線にベースラインBを引き、溶出体積の小さい側での溶出曲線とベースラインBとの交点をS、溶出体積の大きい側での溶出曲線とベースラインとの交点をEとする。
また「ピークを示す溶離液を、溶出順に、体積が均等になるように8個のフラクションに分割する」とは、ピークスタートSからピークエンドEまでの溶出体積Vを、図16中に破線で示すように、溶出順に、均等に8個に分割し、分割後の各溶出体積に該当する溶離液を、それぞれフラクションとして分取することを意味する。すなわち、図16に示すように、溶出体積がV1〜V2の間に得られるフラクションF1、溶出体積がV2〜V3の間に得られるフラクションF2、溶出体積がV3〜V4の間に得られるフラクションF3、溶出体積がV4〜V5の間に得られるフラクションF4、溶出体積がV5〜V6の間に得られるフラクションF5、溶出体積がV6〜V7の間に得られるフラクションF6、溶出体積がV7〜V8の間に得られるフラクションF7、溶出体積がV8〜V9の間に得られるフラクションF8の、8個のフラクションをそれぞれ分けて収集する。
【0064】
そして本発明では、得られた8個のフラクションのうち、最も先に溶出されたフラクションについて、前記フラクションに含まれる共重合体の単量体組成(以下、分画単量体組成ということもある。)を測定する。最も先に溶出されたフラクションとは、溶出体積Vが最も小さいフラクションであり、図16においては溶出体積がV1〜V2の間に得られるフラクションF1である。溶出体積がより小さいフラクションには、より高分子量の共重合体が含まれる。本明細書において、最も先に溶出されたフラクションを「高分子量フラクション」ということもある。
フラクションに含まれる共重合体の単量体組成は、GPCにより分取した液、すなわちフラクションをH−NMRで分析することによって測定できる。
【0065】
<共重合体の全体の単量体組成の測定>
また本発明では、GPCにより分割する前の共重合体全体の単量体組成(以下、平均単量体組成ということもある。)も測定する。
本発明における平均単量体組成は、赤外線スペクトロスコピー(IR)や、核磁気共鳴スペクトロスコピー(NMR)等で分析することができるが、好ましくは共重合体のH−NMRを測定し、得られる特定のHシグナル強度の比率から平均単量体組成を計算することによって、より正確な値を得ることができる。
【0066】
本発明の共重合体は、分画単量体組成と平均共単量体組成との差が、各単量体に由来する構成単位のいずれについても−3モル%以上+3モル%以下であり、好ましくは−2.6モル%以上+2.6モル%以下である。
例えば、共重合体が構成単位α’、α’、α’からなる三元系重合体である場合、平均単量体組成における構成単位α’、α’、α’の組成比(含有比率ということもある。単位:モル%)を、それぞれXモル%、Yモル%、Zモル%とすると、分画単量体組成における構成単位α’の含有比率(単位:モル%)は、(X−3)モル%以上、(X+3)モル%以下の範囲内であり、好ましくは(X−2.6)モル%以上、(X+2.6)モル%以下である。
また分画単量体組成における構成単位α’の含有比率(単位:モル%)は、(Y−3)モル%以上、(Y+3)モル%以下の範囲内であり、好ましくは(Y−2.6)モル%以上、(Y+2.6)モル%以下である。
同様に、分画単量体組成における構成単位α’の含有比率(単位:モル%)は、(Z−3)モル%以上、(Z+3)モル%以下の範囲内であり、好ましくは(Z−2.6)モル%以上、(Z+2.6)モル%以下である。
【0067】
前記高分子量フラクションにおける分画単量体組成と、全体の平均単量体組成との差が±3モル%以内であると、後述の実施例に示されるように、共重合体の溶剤に対する溶解性が効果的に向上する。また前記共重合体を含むレジスト組成物において感度が向上する。
かかる溶解性向上の効果が得られる理由としては、以下のことが考えられる。
一般に、共重合体の合成における各単量体の使用量は、得ようとする単量体組成の目標値に応じて決められ、合成後の共重合体における平均単量体組成が、前記目標の単量体組成に近くなるように重合条件等が設定される。
しかしながら、多くの場合、共重合させる単量体の共重合反応性比が互いに異なるため、ランダムに共重合せずに、目標の単量体組成に対してばらつきが生じる。また、本発明者等の知見によれば、反応時間(重合率)の違いによっても得られる共重合体の単量体組成に差が生じ、特に重合反応の初期および後期においては、単量体組成が目標値とは大きく異なる共重合体が生成されやすい。
一方、リソグラフィー用組成物に用いられる溶剤は、単量体組成の目標値に合わせて選択されているため、目標の単量体組成に対するばらつきが、溶剤への溶解性を悪化させると推察される。
特に、一般に、高分子量体ほど溶剤に対する溶解性が低いため、高分子量域における単量体組成のばらつきは、溶解性をより悪化させると考えられる。
本発明における高分子量フラクションに含まれる共重合体の分子量は、共重合体全体の分子量分布のうち、分子量が高い方から12.5%(8分の1)の範囲の高分子量域に相当する。本発明の共重合体は、かかる高分子量域において、平均単量体組成に対するばらつきが小さく、したがって、目標の単量体組成に対するばらつきが小さいため、溶剤に対する良好な溶解性が得られると考えられる。
【0068】
また、高分子量域における単量体組成のばらつきが小さいことから、共重合体全体における単量体組成のばらつきも低減されていると推測され、したがってレジスト組成物としたときに高い感度が得られると考えられる。
【実施例】
【0069】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、各実施例、参考例および比較例中「部」とあるのは、特に断りのない限り「質量部」を示す。
【0070】
<実施例1〜3、参考例1〜2、比較例1〜2>
実施例1〜3、参考例1〜2、比較例1〜2について、測定方法および評価方法は以下の方法を用いた。
(重量平均分子量の測定)
重合体の重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)は、下記の条件(GPC条件)でゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーにより、ポリスチレン換算で求めた。
[GPC条件]
装置:東ソー社製、東ソー高速GPC装置 HLC−8220GPC(商品名)、
分離カラム:昭和電工社製、Shodex GPC K−805L(商品名)を3本直列に連結したもの、
測定温度:40℃、
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)、
試料(重合体の場合):重合体の約20mgを5mLのTHFに溶解し、0.5μmメンブレンフィルターで濾過した溶液、
試料(重合反応溶液の場合):サンプリングした重合反応溶液の約30mgを5mLのTHFに溶解し、0.5μmメンブレンフィルターで濾過した溶液、
流量:1mL/分、
注入量:0.1mL、
検出器:示差屈折計。
【0071】
検量線I:標準ポリスチレンの約20mgを5mLのTHFに溶解し、0.5μmメンブレンフィルターで濾過した溶液を用いて、上記の条件で分離カラムに注入し、溶出時間と分子量の関係を求めた。標準ポリスチレンは、下記の東ソー社製の標準ポリスチレン(いずれも商品名)を用いた。
F−80(Mw=706,000)、
F−20(Mw=190,000)、
F−4(Mw=37,900)、
F−1(Mw=10,200)、
A−2500(Mw=2,630)、
A−500(Mw=682、578、474、370、260の混合物)。
【0072】
(単量体の定量)
重合反応溶液中に残存する単量体量は次の方法で求めた。
反応器内の重合反応溶液を0.5g採取し、これをアセトニトリルで希釈し、メスフラスコを用いて全量を50mLとした。この希釈液を0.2μmのメンブレンフィルターで濾過し、東ソー社製、高速液体クロマトグラフHPLC−8020(製品名)を用いて、前記希釈液中の未反応単量体量を、単量体ごとに求めた。
【0073】
この測定において、分離カラムはジーエルサイエンス社製、Inertsil ODS−2(商品名)を1本使用し、移動相は水/アセトニトリルのグラジエント系、流量0.8mL/min、検出器は東ソー社製、紫外・可視吸光光度計UV−8020(商品名)、検出波長220nm、測定温度40℃、注入量4μLで測定した。なお、分離カラムであるInertsil ODS−2(商品名)は、シリカゲル粒径5μm、カラム内径4.6mm×カラム長さ450mmのものを使用した。また、移動相のグラジエント条件は、A液を水、B液をアセトニトリルとし、下記の通りとした。また、未反応単量体量を定量するために、濃度の異なる3種類の各単量体溶液を標準液として用いた。
【0074】
測定時間0〜3分:A液/B液=90体積%/10体積%。
測定時間3〜24分:A液/B液=90体積%/10体積%から、50体積%/50体積%まで。
測定時間24〜36.5分:A液/B液=50体積%/50体積%から、0体積%/100体積%まで。
測定時間36.5〜44分:A液/B液=0体積%/100体積%。
【0075】
(重合体の溶解性の評価)
重合体の20部とPGMEAの80部とを混合し、25℃に保ちながら撹拌を行い、目視で完全溶解を判断し、完全溶解するまでの時間を計測した。
【0076】
(レジスト組成物の感度の評価)
レジスト組成物を6インチシリコンウエハー上に回転塗布し、ホットプレート上で120℃、60秒間のプリベーク(PAB)を行い、厚さ300nmのレジスト膜を形成した。ArFエキシマレーザー露光装置(リソテックジャパン社製、製品名:VUVES−4500)を用い、露光量を変えながら10mm×10mmの面積の18ショットを露光した。次いで110℃、60秒間のポストベーク(PEB)を行った後、レジスト現像アナライザー(リソテックジャパン社製、製品名:RDA−806)を用い、23.5℃にて2.38%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液で65秒間現像した。各露光量のレジスト膜それぞれについて、現像中のレジスト膜厚の経時変化を測定した。
得られたレジスト膜厚の経時変化のデータを基に、露光量(単位:mJ/cm)の対数と、初期膜厚に対する30秒間現像した時点での残存膜厚の割合率(単位:%、以下残膜率という。)との関係をプロットして、露光量−残膜率曲線作成した。この曲線に基づいて、残膜率0%とするための必要露光量(Eth)の値を求めた。すなわち、露光量−残膜率曲線が、残膜率0%の直線と交わる点における露光量(mJ/cm)をEthとして求めた。このEthの値は感度を表し、この値が小さいほど、感度が高いことを示す。
【0077】
<参考例1:第1の組成の設計>
本例は、下記式(m−1)、(m−2)、(m−3)で表される単量体m−1、m−2、m−3を重合して、目標組成がm−1:m−2:m−3=40:40:20(モル%)、重量平均分子量の目標値が10,000の重合体を製造する場合の、第1の組成を求めた例である。
本例で使用した重合開始剤はジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート(前記V601(商品名))である。重合温度は80℃とした。
【0078】
【化1】
【0079】
窒素導入口、撹拌機、コンデンサー、滴下漏斗、および温度計を備えたフラスコに、窒素雰囲気下で、乳酸エチルを67.8部入れた。フラスコを湯浴に入れ、フラスコ内を撹拌しながら湯浴の温度を80℃に上げた。
その後、下記の単量体混合物、溶媒、および重合開始剤を含む滴下溶液(全量は205.725g)を調製し、これを滴下漏斗より4時間かけて一定の滴下速度でフラスコ内に滴下し、さらに80℃の温度を3時間保持した。滴下溶液の滴下開始から7時間後に、室温まで冷却して反応を停止させた。
単量体m−1を28.56部(40モル%)、
単量体m−2を32.93部(40モル%)、
単量体m−3を19.82部(20モル%)、
乳酸エチルを122.0部、
ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレートを2.415部(単量体の全供給量に対して2.5モル%)。
【0080】
上記滴下溶液の滴下開始から0.5,1,2,3,4,5,6,7時間後に、それぞれフラスコ内の重合反応溶液を0.5gサンプリングし、単量体m−1〜m−3の定量をそれぞれ行った。これにより各サンプリング時において反応器内に残存している各単量体の質量がわかる。その結果、例えば滴下開始から2時間後と3時間後の結果は表1の通りであった。
【0081】
【表1】
【0082】
次いで、各単量体の分子量を用いて、各サンプリング時において反応器内に残存している各単量体のモル分率(Mx:My:Mzに該当する。)に換算した。
その結果、例えば滴下開始から2時間後と3時間後の結果は表2の通りであった。
【0083】
【表2】
【0084】
一方、4時間一定速度で反応器に供給された各単量体の質量(全供給量)から、各サンプリング時までに供給された各単量体の合計質量を求め、これから各サンプリング時において反応器内に残存している各単量体の質量を引くことで、各サンプリング時において、それまでに供給された単量体のうち重合体へ転化したものの質量を、各単量体について計算した。
次いで差分データをとることによって、サンプリング時とサンプリング時の間に重合体へ転化したもの質量を、各単量体について求め、モル分率に換算した。このモル分率の値は、各サンプリング時とサンプリング時の間に生成した重合体、すなわち滴下からの経過時間(反応時間)がtからtまでの間、tからtまでの間、tからtm+1の間にそれぞれ生成した重合体における構成単位の含有比率(以下、重合体組成比ということもある。)Px:Py:Pzに該当する。
得られた結果を図1及び図11に示す。図1の横軸は、各反応時間帯(サンプリング時とサンプリング時の間)の終了側の反応時間を示している。すなわち、図1において、横軸の反応時間が3時間のときのデータは、滴下開始から2時間後〜3時間後に生成した重合体のデータに該当する(以下、同様)。また、図11の横軸は、図1の横軸を、各累積重合(反応)率(%)に変更したものである。
【0085】
また、各反応時間にサンプリングした重合反応溶液について、GPC測定により重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)を求めた。結果を表3および図2に示す。
表3および図2における反応時間は、各反応時間帯(サンプリング時とサンプリング時の間)の終了側の反応時間を示している。すなわち、反応時間が3時間のときのデータは、滴下開始から2時間後〜3時間後に生成した重合体のデータに該当する(以下、同様)。
【0086】
【表3】
【0087】
図1の結果に示されるように、重合体組成比(Px:Py:Pz)が、目標組成である40:40:20に最も近いのは、滴下開始から2時間後〜3時間後に生成した重合体であり、Px:Py:Pz=41.05:38.47:20.48であった。
この値と、滴下開始からの経過時間が2時間後におけるMx:My:Mzの値(表2)を用い、Fx=Px/Mx、Fy=Py/My、Fz=Pz/Mzより、ファクターFx、Fy、Fzを求めると、Fx=1.27、Fy=0.76、Fz=1.22となる。
前記ファクターの値と、目標組成を用いて第1の組成x:y:zを求めた。
=40/Fx=40/1.27=31.3モル%。
=40/Fy=40/0.76=52.4モル%。
=20/Fz=20/1.22=16.3モル%。
【0088】
[Wの算出]
最初の滴下溶液に含まれていた単量体混合物(合計81.31部)を100質量%とすると、滴下開始からの経過時間が2時間後において反応器内に存在する単量体の合計質量(表1より14.13部)が占める割合(W)は17.4質量%となる。
【0089】
<実施例1>
本例では、参考例1で求めた第1の組成を用い、本発明に係る前記(a)の方法で重合体を製造した。使用する単量体の種類、重合開始剤の種類、重合温度、重合体の目標組成、および重量平均分子量の目標値は参考例1と同じである。
窒素導入口、撹拌機、コンデンサー、滴下漏斗2個、および温度計を備えたフラスコに、窒素雰囲気下で、下記の第1の溶液を入れた。フラスコを湯浴に入れ、フラスコ内を撹拌しながら湯浴の温度を80℃に上げた。
その後、下記の第2の溶液を滴下漏斗より4時間かけてフラスコ内に滴下し、さらに80℃の温度を3時間保持した。また、第2の溶液の滴下開始と同時に、下記の重合開始剤溶液を別の滴下漏斗より0.25時間かけてフラスコ内に滴下した。第2の溶液の滴下開始から7時間後に、室温まで冷却して反応を停止させた。
単量体の全供給量のうち、第1の溶液に含有させる単量体の量は、参考例1のWより17.4質量%とした。
本例において、基準時間は4時間であり、重合開始剤溶液が滴下されている期間(0.25時間)が高速供給期間である。すなわち、高速供給期間(0〜j%)は基準時間の0〜6.25%(j=6.25%)である。高速供給期間中に反応器内に供給される重合開始剤は、重合開始剤の全供給量のうちの約65質量%である。
【0090】
(第1の溶液)
単量体m−1を3.87部(31.3モル%)、
単量体m−2を7.46部(52.4モル%)、
単量体m−3を2.80部(16.3モル%)、
乳酸エチルを96.5部。
(第2の溶液)
単量体m−1を23.34部(40モル%)、
単量体m−2を26.91部(40モル%)、
単量体m−3を16.20部(20モル%)、
乳酸エチルを98.9部、
ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレートを0.670部(単量体の全供給量に対して0.7モル%)。
(重合開始剤溶液)
乳酸エチルを1.9部、
ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレートを1.243部(単量体の全供給量に対して1.3モル%)。
【0091】
参考例1と同様の手順で、各反応時間に生成した重合体における構成単位の含有比率(重合体組成比)を求めた。その結果を図3に示す。また、図12は、図3の横軸を、各累積重合(反応)率(%)に変更したものである。
また参考例1と同様にして、各反応時間にサンプリングした重合反応溶液について、重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)を求めた。結果を表4および図4に示す。
【0092】
【表4】
【0093】
図1図3の結果を比べると、参考例1(図1)では、滴下開始直後に生成された重合体の重合体組成比は目標組成から大きく外れており、また反応時間によって重合体組成のばらつきが大きい。
これに対して、予め、フラスコ内に第1の溶液を仕込んだ実施例1(図3)では、滴下開始直後から、重合体組成比が目標組成とほぼ同じになり、反応時間による組成比のばらつきも改善された。特に、滴下を継続した反応時間4時間までに得られる重合体の重合体組成比は、目標組成との差が小さい。
また、図11図12の結果を比べると、累積重合(反応)率(%)の観点からも、参考例1(図11)では、滴下開始直後に生成された重合体の重合体組成比は目標組成から大きく外れており、重合組成のばらつきが大きい。
これに対して、予めフラスコ内に第1の溶液を仕込んだ実施例1(図12)では、滴下開始直後から、重合体組成比が目標組成とほぼ同じになり、特に、滴下を継続した累積重合(反応)率が80%以上に到達するまでに得られる重合体の重合体組成比は、目標組成との差が小さい。
【0094】
また図2図4の結果を比べると、参考例1(図2)においては、特に滴下開始から3時間までの重量平均分子量は、その後の重量平均分子量との差が大きく、反応時間によるばらつきも大きい。
これに対して、実施例1(図4)では、滴下開始直後から反応終了時まで、反応時間による重量平均分子量および分子量分布のばらつきが小さい。
【0095】
[重合体の精製]
反応時間7時間が経過した後に、室温まで冷却して反応を停止させ、フラスコ内の重合反応溶液を、約10倍量のメタノールおよび水の混合溶媒(メタノール/水=80/20容量比)に撹拌しながら滴下し、白色の析出物(重合体P1)の沈殿を得た。沈殿を濾別し、再度、前記と同じ量のメタノールおよび水の混合溶媒(メタノール/水=90/10容量比)へ投入し、撹拌しながら沈殿の洗浄を行った。そして、洗浄後の沈殿を濾別し、重合体湿粉160gを得た。この重合体湿粉のうち10gを減圧下40℃で約40時間乾燥した。得られた重合体P1について、Mw、Mw/Mnを求め、溶解性の評価を行った。結果を表10に示す。
【0096】
[レジスト組成物の製造]
上記重合体湿粉の残りを、PGMEAの880gへ投入し、完全に溶解させて重合体溶液とした後、孔径0.04μmのナイロン製フィルター(日本ポール社製、P−NYLON N66FILTER0.04M(商品名))へ通液して、重合体溶液を濾過した。
得られた重合体溶液を減圧下で加熱してメタノールおよび水を留去し、さらにPGMEAを留去し、重合体の濃度が25質量%の重合体P1溶液を得た。この際、最高到達真空度は0.7kPa、最高溶液温度は65℃、留去時間は8時間であった。
【0097】
得られた重合体P1溶液の400部と、光酸発生剤であるトリフェニルスルホニウムトリフレートの2部と、溶媒であるPGMEAとを、重合体濃度が12.5質量%になるように混合して均一溶液とした後、孔径0.1μmのメンブレンフィルターで濾過し、レジスト組成物を得た。得られたレジスト組成物について上記の方法で感度を評価した。結果を表10に示す。
【0098】
<実施例2>
本例では、参考例1で求めた第1の組成を用い、本発明に係る前記(b)の方法で重合体を製造した。使用する単量体の種類、重合開始剤の種類、重合温度、重合体の目標組成、および重量平均分子量の目標値は参考例1と同じである。
窒素導入口、撹拌機、コンデンサー、滴下漏斗2個、および温度計を備えたフラスコに、窒素雰囲気下で、乳酸エチル86.5部を入れた。フラスコを湯浴に入れ、フラスコ内を撹拌しながら湯浴の温度を80℃に上げた。
その後、下記の第2の溶液を滴下漏斗より4時間かけてフラスコ内に滴下し、さらに80℃の温度を3時間保持した。また、第2の溶液の滴下開始と同時に、下記第1の溶液を別の滴下漏斗より0.25時間かけてフラスコ内に滴下した。第2の溶液の滴下開始から7時間後に、室温まで冷却して反応を停止させた。
単量体の全供給量のうち、第1の溶液に含有させる単量体の量は、参考例1のWより17.4質量%とした。
本例において、基準時間は4時間であり、第1の溶液が滴下されている期間(0.25時間)が高速供給期間である。すなわち、高速供給期間(0〜j%)は基準時間の0〜6.25%(j=6.25%)である。高速供給期間中に反応器内に供給される重合開始剤は、実施例1と同じであり、重合開始剤の全供給量のうちの約65質量%である。
【0099】
(第1の溶液)
単量体m−1を3.87部(31.3モル%)、
単量体m−2を7.46部(52.4モル%)、
単量体m−3を2.80部(16.3モル%)、
乳酸エチルを11.9部、
ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレートを1.243部(単量体の全供給量に対して1.3モル%)。
(第2の溶液)
単量体m−1を23.34部(40モル%)、
単量体m−2を26.91部(40モル%)、
単量体m−3を16.20部(20モル%)、
乳酸エチルを98.9部、
ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレートを0.670部(単量体の全供給量に対して0.7モル%)。
【0100】
参考例1と同様の手順で、各反応時間に生成した重合体における構成単位の組成比(重合体組成比)を求めた。その結果を図5及び図13に示す。なお、図13は、図5の横軸を、各累積重合(反応)率(%)に変更したものである。
また参考例1と同様にして、各反応時間にサンプリングした重合反応溶液について、重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)を求めた。結果を表5および図6に示す。
【0101】
【表5】
【0102】
図5の結果に示されるように、本例でも実施例1と同様に、滴下開始後すぐに重合体組成比が目標組成とほぼ同じとなり、反応時間による組成比のばらつきも改善された。特に、滴下を継続した反応時間4時間までに得られる重合体の組成比は、目標組成との差が小さい。また、図13の結果に示されるように、本例でも実施例1と同様に、滴下開始後すぐに重合体組成比が目標組成とほぼ同じとなり、特に、滴下を継続した累積重合(反応)率が80%以上に到達するまでに得られる重合体の重合体組成比は、目標組成との差が小さい。
また図6の結果に示されるように、本例でも実施例1と同様に、滴下開始直後から反応終了時まで、反応時間による重量平均分子量および分子量分布のばらつきが小さい。
【0103】
[重合体の精製]
実施例1と同様にして、反応時間7時間が経過したフラスコ内の重合反応溶液から、重合体P2を得た。重合体P2のMw、Mw/Mn、溶解性評価の結果を表10に示す。
[レジスト組成物の製造]
実施例1と同様にして、重合体P2を含有するレジスト組成物を調製し、感度を評価した。結果を表10に示す。
【0104】
<参考例2:第1の組成の設計>
本例は、下記式(m−4)、(m−5)、(m−6)で表される単量体m−4、m−5、m−6を重合して、目標組成がm−4:m−5:m−6=40:40:20(モル%)、重量平均分子量の目標値が10,000の重合体を製造する場合の、第1の組成を求めた例である。
重合開始剤は参考例1と同じジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレートを用い、重合温度は80℃とした。
【0105】
【化2】
【0106】
窒素導入口、撹拌機、コンデンサー、滴下漏斗、および温度計を備えたフラスコに、窒素雰囲気下で、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を70.6部入れた。フラスコを湯浴に入れ、フラスコ内を撹拌しながら湯浴の温度を80℃に上げた。
その後、下記の単量体混合物、溶媒、および重合開始剤を含む滴下溶液(全量は220.612g)を調製し、これを滴下漏斗より4時間かけて一定の滴下速度でフラスコ内に滴下し、さらに80℃の温度を3時間保持した。滴下溶液の滴下開始から7時間後に、室温まで冷却して反応を停止させた。
単量体m−4を26.83部(40モル%)、
単量体m−5を40.25部(40モル%)、
単量体m−6を17.63部(20モル%)、
PGMEAを127.1部、
ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレートを8.802部(単量体の全供給量に対して8.9モル%)。
【0107】
上記滴下溶液の滴下開始から0.5,1,2,3,4,5,6,7時間後に、それぞれフラスコ内の重合反応溶液を0.5gサンプリングし、単量体m−4〜m−6の定量をそれぞれ行った。これにより各サンプリング時において反応器内に残存している各単量体の質量がわかる。その結果、例えば滴下開始から1時間後と2時間後の結果は表6の通りであった。
【0108】
【表6】
【0109】
次いで、各単量体の分子量を用いて、各サンプリング時において反応器内に残存している各単量体のモル分率(Mx:My:Mzに該当する。)に換算した。
その結果、例えば滴下開始から1時間後と2時間後の結果は表7の通りであった。
【0110】
【表7】
【0111】
一方、参考例1と同様にして、各反応時間にそれぞれ生成した重合体における構成単位の含有比率(重合体組成比、Px:Py:Pz)を求めた。得られた結果を図7に示す。なお、図14は、図7の横軸を、各累積重合(反応)率(%)に変更したものである。
また、各反応時間にサンプリングした重合反応溶液について、MwおよびMw/Mnを求めた。結果を表8および図8に示す。
【0112】
【表8】
【0113】
図7の結果に示されるように、重合体組成比(Px:Py:Pz)が、目標組成である40:40:20に最も近いのは、滴下開始から1時間後〜2時間後に生成した重合体であり、Px:Py:Pz=40.07:39.95:19.99であった。
この値と、滴下開始からの経過時間が2時間後におけるMx:My:Mzの値(表7)を用い、Fx=Px/Mx、Fy=Py/My、Fz=Pz/Mzより、ファクターFx、Fy、Fzを求めると、Fx=0.80、Fy=1.10、Fz=1.42となる。
前記ファクターの値と、目標組成を用いて第1の組成x:y:zを求めた。
=40/Fx=40/0.80=49.8モル%。
=40/Fy=40/1.10=36.2モル%。
=20/Fz=20/1.42=14.0モル%。
【0114】
[Wの算出]
最初の滴下溶液に含まれていた単量体混合物(合計84.71部)を100質量%とすると、滴下開始からの経過時間が1時間後において反応器内に存在する単量体の合計質量(表6より6.40部)が占める割合(W)は7.6質量%となる。
【0115】
<実施例3>
本例では、参考例2で求めた第1の組成を用い、本発明に係る前記(a)の方法で重合体を製造した。使用する単量体の種類、重合開始剤の種類、重合温度、重合体の目標組成、および目標の重量平均分子量は参考例2と同じである。
窒素導入口、撹拌機、コンデンサー、滴下漏斗2個、および温度計を備えたフラスコに、窒素雰囲気下で、下記の第1の溶液を入れた。フラスコを湯浴に入れ、フラスコ内を撹拌しながら湯浴の温度を80℃に上げた。
その後、下記の第2の溶液を滴下漏斗より4時間かけてフラスコ内に滴下し、さらに80℃の温度を3時間保持した。また、第2の溶液の滴下開始と同時に、下記の重合開始剤溶液を別の滴下漏斗より0.25時間かけてフラスコ内に滴下した。第2の溶液の滴下開始から7時間後に、室温まで冷却して反応を停止させた。
単量体の全供給量のうち、第1の溶液に含有させる単量体の量は、参考例2のWより7.6質量%とした。
本例において、基準時間は4時間であり、重合開始剤溶液が滴下されている期間(0.25時間)が高速供給期間である。すなわち、高速供給期間(0〜j%)は基準時間の0〜6.25%(j=6.25%)である。高速供給期間中に反応器内に供給される重合開始剤は、重合開始剤の全供給量のうちの約55質量%である。
【0116】
(第1の溶液)
単量体m−4を2.60部(49.8モル%)、
単量体m−5を2.84部(36.2モル%)、
単量体m−6を0.96部(14.0モル%)。
PGMEAを80.2部。
(第2の溶液)
単量体m−4を24.80部(40モル%)、
単量体m−5を37.21部(40モル%)、
単量体m−6を16.30部(20モル%)、
PGMEAを110.0部、
ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレートを3.456部(単量体の全供給量に対して3.49モル%)。
(重合開始剤溶液)
PGMEAを7.5部、
ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレートを4.224部(単量体の全供給量に対して4.26モル%)。
【0117】
参考例2と同様の手順で、各反応時間に生成した重合体における構成単位の含有比率(重合体組成比)を求めた。その結果を図9に示す。なお、図15は、図9の横軸を、各累積重合(反応)率(%)に変更したものである。
また参考例2と同様にして、各反応時間にサンプリングした重合反応溶液について、重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)を求めた。結果を表9および図10に示す。
【0118】
【表9】
【0119】
図7図9の結果を比べると、参考例2(図7)では、滴下開始直後に生成された重合体の重合体組成比は目標組成から大きく外れており、また反応時間によって重合体組成のばらつきが大きい。
これに対して、予め、フラスコ内に第1の溶液を仕込んだ実施例3(図9)は、滴下開始直後から、重合体組成比が目標組成とほぼ同じになり、組反応時間による組成比のばらつきも改善された。特に、滴下を継続した反応時間4時間までに得られる重合体の重合体組成比は、目標組成との差が小さい。
また、図14図15の結果を比べると、累積重合(反応)率(%)の観点からも、参考例2(図14)では、滴下開始直後に生成された重合体の重合体組成比は目標組成から大きく外れており、重合組成のばらつきが大きい。
これに対して、予めフラスコ内に第1の溶液を仕込んだ実施例3(図15)では、滴下開始直後から、重合体組成比が目標組成とほぼ同じになり、特に、滴下を継続した累積重合(反応)率が80%以上に到達するまでに得られる重合体の重合体組成比は、目標組成との差が小さい。
【0120】
また図8図10の結果を比べると、参考例2(図8)においては、特に滴下開始から3時間までの重量平均分子量は、その後の重量平均分子量との差が大きく、反応時間によるばらつきも大きい。
これに対して、実施例3(図10)では、滴下開始直後から反応終了時まで、反応時間による重量平均分子量および分子量分布のばらつきが小さい。
【0121】
[重合体の精製]
実施例1の重合体の精製工程において使用した、メタノールおよび水の混合溶媒(メタノール/水=80/20容量比)と(メタノール/水=90/10容量比)を、それぞれメタノールおよび水の混合溶媒(メタノール/水=90/10容量比)と(メタノール/水=95/5容量比)に変更したほかは、実施例1と同様にして、反応時間7時間が経過したフラスコ内の重合反応溶液から、重合体P3を得た。重合体P3のMw、Mw/Mn、溶解性評価の結果を表10に示す。
[レジスト組成物の製造]
実施例1と同様にして、重合体P3を含有するレジスト組成物を調製し、感度を評価した。結果を表10に示す。
【0122】
<比較例1>
参考例1において、反応時間7時間が経過した後に、室温まで冷却して反応を停止させて得られるフラスコ内の重合反応溶液を用い、実施例1の重合体の精製工程と同様にして比較重合体1を得た。得られた比較重合体1について、実施例1と同様にしてMw、Mw/Mnを求め、溶解性評価を行った。
また、比較重合体1を用い、実施例1と同様にしてレジスト組成物を調製し、感度を評価した。結果を表10に示す。
【0123】
<比較例2>
参考例2において、反応時間7時間が経過した後に、室温まで冷却して反応を停止させて得られるフラスコ内の重合反応溶液を用い、実施例3の重合体の精製工程と同様にして比較重合体2を得た。得られた比較重合体2について、実施例3と同様にしてMw、Mw/Mnを求め、溶解性評価を行った。
また、比較重合体2を用い、実施例3と同様にしてレジスト組成物を調製し、感度を評価した。結果を表10に示す。
【0124】
【表10】
【0125】
表10の結果より、実施例1、2、3で得た重合体は、比較例1、2で得た重合体とそれぞれ比べて、溶解性が顕著に向上し、レジスト組成物にしたときの感度が向上した。
【0126】
<実施例4、比較例3>
下記共重合体C−1〜2の合成に使用した単量体(m−1)、(m−7)および(m−8)を以下に示す。
【0127】
【化3】
【0128】
<比較例3>
下記合成手順にて、共重合体C−1を合成した。
窒素導入口、撹拌機、コンデンサー、滴下漏斗、および温度計を備えたフラスコに、窒素雰囲気下で、PGMEを56.5部入れた。フラスコを湯浴に入れ、フラスコ内を撹拌しながら湯浴の温度を80℃に上げた。
その後、下記の単量体混合物、溶媒、および重合開始剤を含む滴下溶液(全量は173.3g)を調製し、これを滴下漏斗より4時間かけて一定の滴下速度でフラスコ内に滴下し、さらに80℃の温度を3時間保持した。滴下溶液の滴下開始から7時間後に、室温まで冷却して反応を停止させた。
単量体m−1を18.7部(24.4モル%)、
単量体m−7を18.7部(23.5モル%)、
単量体m−8を30.5部(52.1モル%)、
PGMEを101.7部、
2,2’−アゾビスイソブチレートを3.7部(単量体の全供給量に対して5.0モル%)。
【0129】
<実施例4>
下記合成手順にて、共重合体C−2を合成した。
なお、参考例1と同様の手順により、目標組成比(モル%)が(m−1):(m−7):(m−8)=24.4:23.5:52.1である場合について、下記ファクターFx、Fy、Fzを求めた結果、Fx(m−1)=1.17、Fy(m−7)=0.84、Fz(m−8)=1.02であった。
次いで、前記ファクターの値と、前記目標組成を用いて第1の組成x:y:z及び反応器内に存在する単量体の合計質量(Wo)求めた。
0(m−1)=20.9モル%。
0(m−7)=28.0モル%。
0(m−8)=51.1モル%。
[Wの算出]
参考例1と同様の手順により、滴下開始からの経過時間が1時間後において反応器内に存在する単量体の合計質量が占める割合は、Wo=10.1質量%であった。
【0130】
(第1の溶液)
単量体m−1を1.8部(20.9モル%)、
単量体m−7を2.5部(28.0モル%)、
単量体m−8を3.3部(51.1モル%)、
PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)を56.5部。
【0131】
(第2の溶液)
単量体m−1を18.7部(24.4モル%)、
単量体m−7を18.7部(23.5モル%)、
単量体m−8を30.5部(52.1モル%)、
PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)を101.7部、
2,2’−アゾビスイソブチロニトリルを3.48部(単量体の全供給量に対して4.24モル%)。
(重合開始剤溶液)
PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)を17.7部、
2,2’−アゾビスイソブチロニトリルを0.87部(単量体の全供給量に対して1.06モル%)。
【0132】
<共重合体C−2の合成>
窒素導入口、攪拌機、コンデンサー、滴下漏斗2個及び温度計を備えたフラスコに、窒素雰囲気下で、上記第1の溶液の混合比で調製した混合溶液を入れ、攪拌しながら湯浴の温度を80℃に上げた。
次いで、上記第2の溶液の混合比で調製した混合溶液を滴下漏斗より一定速度で6時間かけてフラスコ中に滴下し、その後、80℃の温度を1時間保持した。
また、上記第2の溶液の混合溶液の滴下開始と同時に、上記重合開始剤溶液の混合比で調製した混合溶液を別の滴下漏斗より0.5時間かけてフラスコ内に滴下した。なお、本工程で滴下する重合開始剤量によって、重合工程の初期に生成する共重合体の重量平均分子量が変化するが、各共重合体の目標とする重合平均分子量に近くなるよう設定している。
次いで、IPE(ジイソプロピルエーテル)を、得られた反応溶液の約7倍量準備し、攪拌しながら反応溶液を滴下して、白色のゲル状物の沈殿を得て、濾別した。
次いで、IPE(ジイソプロピルエーテル)を、上記工程と同量準備し、濾別した沈殿をこの混合溶媒中に投入した。これを濾別、回収し、減圧下60℃で約40時間乾燥し、各共重合体の粉末を得た。
【0133】
(リソグラフィー用共重合体の重量平均分子量)
得られた共重合体C−1〜2について重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)を以下の方法で測定した。
約20mgのサンプルを5mLのTHFに溶解し、0.5μmのメンブランフィルターで濾過して試料溶液を調製し、この試料溶液を東ソー製ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)装置:HCL−8220(製品名)を用いて、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を測定し、分子量分布(Mw/Mn)を求めた。この測定において、分離カラムは、昭和電工社製、Shodex GPC LF−804L(製品名)を3本直列にしたものを用い、溶剤はTHF(テトラヒドロフラン)、流量1.0mL/min、検出器は示差屈折計、測定温度40℃、注入量0.1mLで、標準ポリマーとしてポリスチレンを使用した。測定結果を表11に示す。
【0134】
【表11】
【0135】
[溶解性評価]
リソグラフィー用共重合体C−1〜2をそれぞれ用いて溶解性評価用の溶液を調製し、溶液の温度は常温(25℃)とした。紫外可視分光光度計として、島津製作所社製、UV−3100PC(製品名)を用い、光路長10mmの石英製角型セルに測定用溶液を入れ、波長450nmにおける透過率を測定する方法で、溶解性評価を行った。前記透過率が高いほど溶解性が良好であり、基材上に塗膜した際の面内におけるリソグラフィー性能のばらつき低減に結びつく。結果を表11に示す。
【0136】
(溶解性評価用の溶液調製)
下記の配合成分を混合して評価用溶液を得た。
リソグラフィー用共重合体:2.5部、
溶媒1(PGME):100部、
溶媒2(IPE):16部。
【0137】
表11の結果に示されるように、溶解性を示す透過率の値は、共重合体C−1から2の順に大きくなっていることから、本発明の製造方法による共重合体C−2(実施例4)が、共重合体C−1(比較例3)と比べて、リソグラフィー性能に優れることが確認された。
【0138】
(リソグラフィー用共重合体)
<実施例5〜7、比較例4〜6>
実施例5〜7及び比較例4〜6において、測定方法および評価方法は以下の方法を用いた。
【0139】
(質量平均分子量の測定)
重合体の質量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)は、下記の条件(GPC条件)でGPCにより、ポリスチレン換算で求めた。
[GPC条件]
装置:東ソー社製、東ソー高速GPC装置 HLC−8220GPC(商品名)、
分離カラム:昭和電工社製、Shodex GPC K−805L(商品名)を3本直列に連結したもの、
測定温度:40℃、
溶離液:THF、
試料:共重合体の約20mgを5mLのTHFに溶解し、0.5μmメンブレンフィルターで濾過した溶液、
流量:1mL/分、
注入量:0.1mL、
検出器:示差屈折計。
【0140】
検量線I:標準ポリスチレンの約20mgを5mLのTHFに溶解し、0.5μmメンブレンフィルターで濾過した溶液を用いて、上記の条件で分離カラムに注入し、溶出時間と分子量の関係を求めた。標準ポリスチレンは、下記の東ソー社製の標準ポリスチレン(いずれも商品名)を用いた。
F−80(Mw=706,000)、
F−20(Mw=190,000)、
F−4(Mw=37,900)、
F−1(Mw=10,200)、
A−2500(Mw=2,630)、
A−500(Mw=682、578、474、370、260の混合物)。
【0141】
(共重合体の平均単量体組成の測定)
共重合体の約5質量部を重ジメチルスルホキシドの約95質量部に溶解して試料溶液を調製した。この試料溶液をNMRチューブに入れ、H−NMR(JEOL社製、共鳴周波数:270MHz)を用いて分析した。各構成単位に由来するシグナルの積分強度比から、共重合体の単量体組成を算出した。
【0142】
(共重合体のGPCによる分割)
共重合体の分割は下記の条件(GPC条件)でGPCによりおこなった。また最も先に溶出されたフラクションの溶液から溶媒を留去して固形物を得ることにより、最も高分子量体である重合体を得た。
[GPC条件]
装置:日本分析工業、分取型LC、LC−9105(商品名)、
分離カラム:日本分析工業製、JAIGEL−2H、JAIGEL−3H(商品名)を直列に連結したもの、
測定温度:40℃、
溶離液:THF、
試料:共重合体の約1gを10mLのTHFに溶解し、0.5μmメンブレンフィルターで濾過した溶液、
流量:3.5mL/分、
注入量:10mL、
検出器:紫外・可視吸光光度計、示差屈折計、
分取方法:溶出曲線において、重合体に係るピークを示す溶離液を、溶出順に、体積が均等になるように8等分して分取した。
【0143】
(分画単量体組成の測定)
上記の方法で分取した8個のフラクションのうち、最も先に溶出された高分子量フラクションにおける分画単量体組成を以下の方法で測定した。
最も先に溶出された高分子量フラクションから溶媒を留去して得られた固形物の約5質量部を重ジメチルスルホキシドの約95質量部に溶解して試料溶液を調製した。この試料溶液をNMRチューブに入れ、H−NMR(JEOL社製、共鳴周波数:270MHz)を用いて分析した。各構成単位に由来するシグナルの積分強度比から、共重合体の単量体組成を算出した。
【0144】
(共重合体の溶解性の評価)
共重合体の20部とPGMEAの80部とを混合し、25℃に保ちながら撹拌を行い、目視で完全溶解を判断し、完全溶解するまでの時間を計測した。
【0145】
(レジスト組成物の感度の評価)
レジスト組成物を6インチシリコンウエハー上に回転塗布し、ホットプレート上で120℃、60秒間のプリベーク(PAB)を行い、厚さ300nmのレジスト膜を形成した。ArFエキシマレーザー露光装置(リソテックジャパン社製、製品名:VUVES−4500)を用い、露光量を変えながら10mm×10mmの面積の18ショットを露光した。次いで110℃、60秒間のポストベーク(PEB)を行った後、レジスト現像アナライザー(リソテックジャパン社製、製品名:RDA−806)を用い、23.5℃にて2.38%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液で65秒間現像した。各露光量のレジスト膜それぞれについて、現像中のレジスト膜厚の経時変化を測定した。
【0146】
得られたレジスト膜厚の経時変化のデータを基に、露光量(単位:mJ/cm)の対数と、初期膜厚に対する30秒間現像した時点での残存膜厚の割合率(単位:%、以下残膜率という。)との関係をプロットして、露光量−残膜率曲線作成した。この曲線に基づいて、残膜率0%とするための必要露光量(Eth)の値を求めた。すなわち、露光量−残膜率曲線が、残膜率0%の直線と交わる点における露光量(mJ/cm)をEthとして求めた。このEthの値は感度を表し、この値が小さいほど、感度が高いことを示す。
【0147】
<実施例5>
[共重合体の製造]
本例では、下記単量体(m’−1)、(m’−2)、(m’−3)を重合した。
【0148】
【化4】
【0149】
窒素導入口、撹拌機、コンデンサー、滴下漏斗、および温度計を備えたフラスコに、窒素雰囲気下で、下記の第1の溶液を入れた。フラスコを湯浴に入れ、フラスコ内を撹拌しながら湯浴の温度を80℃に上げた。
その後、下記の重合開始剤溶液を滴下装置から一定速度で0.25時間かけてフラスコ内に滴下するとともに、下記の第2の溶液を滴下装置から一定速度で4時間かけてフラスコ内に滴下した。さらに80℃の温度を3時間保持した。
本例において、重合開始剤溶液が滴下されている期間(高速供給期間)中に反応器内に供給される重合開始剤は、重合開始剤の全供給量のうちの約65質量%である。
【0150】
(第1の溶液)
単量体m’−1を2.72部(32.26モル%)、
単量体m’−2を4.90部(50.48モル%)、
単量体m’−3を2.02部(17.26モル%)、
乳酸エチルを79.0部。
(第2の溶液)
単量体m’−1を23.80部(40.00モル%)、
単量体m’−2を27.44部(40.00モル%)、
単量体m’−3を16.52部(20.00モル%)、
乳酸エチルを98.06部、
ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート(和光純薬工業社製、V601(商品名)、以下同様。)を0.643部(単量体の全供給量に対して0.700モル%)。
(重合開始剤溶液)
乳酸エチルを3.6部、
ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレートを1.196部(単量体の全供給量に対して1.301モル%)。
【0151】
次いで、フラスコ内の重合反応溶液を、約10倍量のメタノールおよび水の混合溶媒(メタノール/水=80/20容量比)を撹拌しながら、ここに滴下し、白色の析出物(共重合体A−1)の沈殿を得た。沈殿を濾別し、再度、前記と同じ量のメタノールおよび水の混合溶媒(メタノール/水=90/10容量比)へ投入し、撹拌しながら沈殿の洗浄を行った。そして、洗浄後の沈殿を濾別し、共重合体湿粉を得た。この共重合体湿粉を減圧下40℃で約40時間乾燥し、白色粉体(66.0g)を得た。
【0152】
得られた白色粉体をH−NMRとGPCにて分析し、共重合体全体の平均単量体組成とMw、Mw/Mnを求めた。
また、GPCにて8個のフラクションに分割し、最も先に溶出された高分子量フラクションにおける分画単量体組成を求めた。
得られた共重合体A−1のMw、Mw/Mn、平均単量体組成および分画単量体組成のそれぞれにおける各単量体の含有比率、ならびに各単量体について分画単量体組成における含有比率から平均単量体組成における含有比率を差し引いた差を表12に示す。
また得られた共重合体A−1の溶解性を上記の方法で評価した。その結果を表12に示す。
【0153】
[レジスト組成物の製造]
上記で得られた共重合体A−1の100部に、光酸発生剤であるトリフェニルスルホニウムトリフレートを2部、および溶剤としてPGMEA700部を混合して均一溶液とした後、孔径0.1μmのメンブランフィルターで濾過し、レジスト組成物溶液を調製した。得られたレジスト組成物について上記の方法で感度を評価した。その結果を表12に示す。
【0154】
<実施例6>
本例では、下記単量体(m’−4)、(m’−5)、(m’−6)を重合した。
【0155】
【化5】
【0156】
実施例5と同様のフラスコに、窒素雰囲気下で、下記の第1の溶液を入れた。フラスコを湯浴に入れ、フラスコ内を撹拌しながら湯浴の温度を80℃に上げた。
その後、下記の重合開始剤溶液を滴下装置から一定速度で0.25時間かけてフラスコ内に滴下するとともに、下記の第2の溶液を滴下装置から一定速度で4時間かけてフラスコ内に滴下した。さらに80℃の温度を3時間保持した。
本例において、重合開始剤溶液が滴下されている期間(高速供給期間)中に反応器内に供給される重合開始剤は、重合開始剤の全供給量のうちの50質量%である。
【0157】
(第1の溶液)
単量体m’−4を2.72部(49.40モル%)、
単量体m’−5を2.88部(33.99モル%)、
単量体m’−6を1.27部(16.61モル%)、
PGMEAを71.8部。
(第2の溶液)
単量体m’−4を30.60部(55.56モル%)、
単量体m’−5を18.86部(22.22モル%)、
単量体m’−6を16.99部(22.22モル%)、
PGMEAを96.1部、
ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート)を2.422部(単量体の全供給量に対して2.955モル%)。
(重合開始剤溶液)
PGMEAを3.6部、
ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレートを2.422部(単量体の全供給量に対して2.955モル%)。
【0158】
次いで、フラスコ内の重合反応溶液を、約10倍量のメタノールおよび水の混合溶媒(メタノール/水=85/15容量比)を撹拌しながら、ここに滴下し、白色の析出物(共重合体A−2)の沈殿を得た。沈殿を濾別し、再度、前記と同じ量のメタノールおよび水の混合溶媒(メタノール/水=9/1容量比)へ投入し、撹拌しながら沈殿の洗浄を行った。そして、洗浄後の沈殿を濾別し、共重合体湿粉を得た。この共重合体湿粉を減圧下40℃で約40時間乾燥し、白色粉体(63.0g)を得た。
得られた共重合体A−2について、実施例5と同様の測定および評価を行った。その結果を表12に示す。
【0159】
<実施例7>
本例では、下記単量体(m’−7)、(m’−8)、(m’−9)を重合した。
【0160】
【化6】
【0161】
実施例5と同様のフラスコに、窒素雰囲気下で、下記の第1の溶液を入れた。フラスコを湯浴に入れ、フラスコ内を撹拌しながら湯浴の温度を80℃に上げた。
その後、下記の重合開始剤溶液を滴下装置から一定速度で0.25時間かけてフラスコ内に滴下するとともに、下記の第2の溶液を滴下装置から一定速度で4時間かけてフラスコ内に滴下した。さらに80℃の温度を3時間保持した。
本例において、重合開始剤溶液が滴下されている期間(高速供給期間)中に反応器内に供給される重合開始剤は、重合開始剤の全供給量のうちの約60質量%である。
【0162】
(第1の溶液)
単量体m’−7を1.70部(17.92モル%)、
単量体m’−8を10.42部(75.34モル%)、
単量体m’−9を0.89部(6.74モル%)、
乳酸エチルを57.3部、
PGMEAを26.2部。
(第2の溶液)
単量体m’−7を20.23部(41.17モル%)、
単量体m’−8を29.51部(41.17モル%)、
単量体m’−9を12.04部(17.66モル%)、
乳酸エチルを57.2部、
PGMEAを30.8部、
ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレートを1.744部(単量体の全供給量に対して2.199モル%)。
(重合開始剤溶液)
乳酸エチルを7.7部、
ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレートを2.569部(単量体の全供給量に対して3.239モル%)。
【0163】
次いで、フラスコ内の重合反応溶液を、約10倍量のメタノールおよび水の混合溶媒(メタノール/水=90/10容量比)を撹拌しながら、ここに滴下し、白色の析出物(共重合体A−3)の沈殿を得た。沈殿を濾別し、再度、前記と同じ量のメタノールおよび水の混合溶媒(メタノール/水=95/5容量比)へ投入し、撹拌しながら沈殿の洗浄を行った。そして、洗浄後の沈殿を濾別し、共重合体湿粉を得た。この共重合体湿粉を減圧下40℃で約40時間乾燥し、白色粉体(58.0g)を得た。
得られた共重合体A−3について、実施例5と同様の測定および評価を行った。その結果を表12に示す。
【0164】
<比較例4>
実施例5において、予めフラスコ内に単量体を入れずに、共重合体を合成した。本例で用いた単量体のモル比は(m’−1):(m’−2):(m’−3)=40.00:40.00:20.00である。
すなわち、実施例5と同様のフラスコに、窒素雰囲気下で、乳酸エチルを64.5部入れた。フラスコを湯浴に入れ、フラスコ内を撹拌しながら湯浴の温度を80℃に上げた。
その後、単量体(m’−1)が27.20部、単量体(m’−2)が31.36部、単量体(m’−3)が18.88部、乳酸エチルが112.6部、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート(上記、V601(商品名))が2.576部入った滴下装置から一定速度で4時間かけてフラスコ内に滴下した。さらに80℃の温度を3時間保持した。
この後、実施例5と同様にして白色の析出物(共重合体B−1)の沈殿を得、濾別、洗浄、洗浄後の濾別、乾燥を行って白色粉体(64.0g)を得た。
得られた共重合体B−1について、実施例5と同様の測定および評価を行った。その結果を表12に示す。
【0165】
<比較例5>
実施例6において、予めフラスコ内に単量体を入れずに、共重合体を合成した。本例で用いた単量体のモル比は(m’−4):(m’−5):(m’−6)=55.56:22.22:22.22である。
すなわち、実施例5と同様のフラスコに、窒素雰囲気下で、PGMEAを61.5部入れた。フラスコを湯浴に入れ、フラスコ内を撹拌しながら湯浴の温度を80℃に上げた。
その後、単量体(m’−4)が34.00部、単量体(m’−5)が20.96部、単量体(m’−6)が18.88部、PGMEAが110.76部、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート(上記、V601(商品名))が8.197部入った滴下装置から一定速度で4時間かけてフラスコ内に滴下した。さらに80℃の温度を3時間保持した。
この後、実施例6と同様にして白色の析出物(共重合体B−2)の沈殿を得、濾別、洗浄、洗浄後の濾別、乾燥を行って白色粉体(63.0g)を得た。
得られた共重合体B−2について、実施例5と同様の測定および評価を行った。その結果を表12に示す。
【0166】
<比較例6>
実施例7において、予めフラスコ内に単量体を入れずに、共重合体を合成した。本例で用いた単量体のモル比は(m’−7):(m’−8):(m’−9)=41.17:41.17:17.66である。
すなわち、実施例5と同様のフラスコに、窒素雰囲気下で、乳酸エチルを42.4部、PGMEAを18.2部入れた。フラスコを湯浴に入れ、フラスコ内を撹拌しながら湯浴の温度を80℃に上げた。
その後、単量体(m’−7)が23.80部、単量体(m’−8)が34.72部、単量体(m’−9)が14.16部、乳酸エチルが76.3部、PGMEAが32.7部、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート(上記、V601(商品名))が5.083部入った滴下装置から一定速度で4時間かけてフラスコ内に滴下した。さらに80℃の温度を3時間保持した。
この後、実施例7と同様にして白色の析出物(共重合体B−3)の沈殿を得、濾別、洗浄、洗浄後の濾別、乾燥を行って白色粉体(57.0g)を得た。
得られた共重合体B−3について、実施例5と同様の測定および評価を行った。その結果を表12に示す。
【0167】
【表12】
【0168】
表12の結果に示されるように、実施例5で得た共重合体A−1と比較例1で得た共重合体B−1とは、質量平均分子量がほぼ同等であるのに、A−1の方が分子量分布が小さく、分画単量体組成と平均単量体組成との差が、単量体(m’−1)、(m’−2)、(m’−3)に由来する各構成単位のいずれについても−3モル%以上+3モル%以下の範囲内である。一方、共重合体B−1は、分画単量体組成と平均単量体組成との差が−3モル%以上+3モル%以下の範囲を超えて大きい構成単位がある。また、共重合体A−1は共重合体B−1に比べて溶解性および感度が格段に優れる。
また、実施例6で得た共重合体A−2と比較例5で得た共重合体B−2、および実施例7で得た共重合体A−3と比較例6で得た共重合体B−3をそれぞれ比較しても、同様の傾向がある。
【産業上の利用可能性】
【0169】
共重合体における構成単位の含有比率のばらつき、および分子量のばらつきを改善でき、溶媒への溶解性、およびレジスト組成物に用いたときの感度を向上できる重合体の製造方法、前記製造方法により得られるリソグラフィー用重合体、前記リソグラフィー用重合体を用いたレジスト組成物、および前記レジスト組成物を用いて、パターンが形成された基板を製造する方法を提供することが可能である。
【符号の説明】
【0170】
B ベースライン
S ピークスタート
E ピークエンド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16