特許第5794251号(P5794251)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日亜化学工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5794251-発光装置および発光装置の製造方法 図000002
  • 特許5794251-発光装置および発光装置の製造方法 図000003
  • 特許5794251-発光装置および発光装置の製造方法 図000004
  • 特許5794251-発光装置および発光装置の製造方法 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5794251
(24)【登録日】2015年8月21日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】発光装置および発光装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/62 20100101AFI20150928BHJP
【FI】
   H01L33/00 440
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-84833(P2013-84833)
(22)【出願日】2013年4月15日
(62)【分割の表示】特願2005-349709(P2005-349709)の分割
【原出願日】2005年12月2日
(65)【公開番号】特開2013-145921(P2013-145921A)
(43)【公開日】2013年7月25日
【審査請求日】2013年5月14日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】反田 祐一郎
(72)【発明者】
【氏名】玉置 寛人
【審査官】 佐藤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−174200(JP,A)
【文献】 特開2002−064225(JP,A)
【文献】 特開2002−009196(JP,A)
【文献】 特開2000−058924(JP,A)
【文献】 特開2005−079329(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00−33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子と、一対の導電層であってそれぞれ上面と下面とを有する一対の導電層と、該一対の導電層を下方に有する透光性絶縁部材と、を有する発光装置であって、
前記一対の導電層は、前記発光素子がその上面に載置される一方の導電層と、前記発光素子とワイヤにて接続される他方の導電層と、を有し、
前記一方の導電層は、一端と、該一端部に隣接しその上面に前記発光素子が載置される平坦な底面をなす凹部と、その上面が前記凹部の底面より高い位置に頂きをなす凸部と、当該凸部に隣接する他端部と、を有し、
前記他方の導電層は、前記一方の導電層の一端と略同一平面にて向かい合う一端部であって、その下面が露出されている一端部と、前記一方の導電層の他端同一平面に位置すると共にその下面が露出された他端を有することを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記一方の導電層又は他方の導電層は、側面に突出部を有している請求項1記載の発光装置。
【請求項3】
前記導電層は、メッキ層である請求項1又は請求項2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記発光素子は、透光性絶縁部材で被覆されている請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明・自動車・産業機器・一般民生機器(ディスプレイなど)に用いられる発光装置およびその製造方法に係わり、特に薄型/小型タイプの表面実装型発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の表面実装型発光装置として、例えば、ガラスエポキシやセラミックスなどの絶縁性基板の表面にパターン形成された一対の導電性部材に発光素子を電気的に接続し、前記発光素子付近を透光性絶縁部材にて封止してなる発光装置があげられる。
【0003】
上記のような発光装置は、製造工程及び部品点数が多いため、製造コストが高い。さらに、前記発光素子から発生した熱は、熱伝導率の低い絶縁性材料からなる基板を介して外部に放熱されることから、充分な放熱性が得られず、高出力タイプの発光素子を用いた場合や連続使用が望まれる場合に適用することができなかった。また、前記絶縁性基板を薄くすれば放熱経路を短くすることはできるが、上面に形成される導電性部材の強度を確保することができなくなる。このように、発光装置の放熱性の向上と薄型・小型化の実現とを共に実現することは困難であった。
【0004】
一方、上記のような基板を有さず、一対の電極が発光素子等を封止する透光性樹脂の底面に固着されてなる発光装置が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2001−203396号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の樹脂に埋め込まれている電極の側面は、埋め込み方向に対してほぼ平行であることから、回路基板への実装工程や実装後の使用時に受ける衝撃等により、前記樹脂から前記電極が脱離し、発光装置の一体性が失われてしまう。特に、発光装置の場合、発光素子を封止する絶縁部材に透光性を持たせなければならないため、フィラー等を含有させて機械的強度を高めることができないことから、上記の問題が発生する確率は非常に高い。
【0007】
また、上記の公報において、発光装置の具体的製造方法は明記されていない。
【0008】
そこで本発明は、信頼性の高い薄型・小型化発光装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の問題点を解決すべく、本発明者は鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに到った。
【0010】
本発明の発光装置は、発光素子と、一対の導電層であってそれぞれ上面と下面とを有する一対の導電層と、該一対の導電層を下方に有する透光性絶縁部材と、を有する発光装置であって、一対の導電層は、発光素子がその上面に載置される一方の導電層と、発光素子とワイヤにて接続される他方の導電層と、を有し、一方の導電層は、一端と、該一端部に隣接しその上面に発光素子が載置される平坦な底面をなす凹部と、その上面が前記凹部の底面より高い位置に頂きをなす凸部と、当該凸部に隣接する他端部と、を有し、他方の導電層は、一方の導電層の一端と略同一平面にて向かい合う一端部であって、その下面が露出されている一端部と、一方の導電層の他端同一平面に位置すると共にその下面が露出された他端を有することを特徴とする。

【0011】
前記突出部は、前記導電層の平面側にあることが好ましい。
【0012】
前記突出部の平面側角部は、丸みを帯びていることが好ましい。
【0013】
前記導電層は、前記発光素子を収納された凹部を有し、前記凹部内に前記発光素子からの光を波長変換することが可能な色変換部材を有することもできる。
【0014】
また、本発明の発光装置の製造方法は、発光素子と、該発光素子が載置されるもしくは前記発光素子と電気的に接続される複数の導電層と、前記発光素子を封止するとともに前記導電層を底面に有する透光性絶縁部材と、を有し、前記導電層は側面の一部に突出部を有する発光装置の製造方法であって、金属母型材の平面にレジストを塗布し、前記レジストの一部を除去し開口部を形成する第一の工程と、前記開口部内に導電性粒子を付着させて導電層を形成する第二の工程と、引き続き前記開口部内から前記レジストの平面にわたって前記導電性粒子を付着させ導電層の突出部を形成する第三の工程と、前記レジストを除去した後、前記導電層の平面に発光素子を載置し電気的に接続し、透光性絶縁部材にて被覆する第四の工程と、前記前記導電層の底面および前記透光性絶縁性部材の底面から金属母型材を剥離する第五の工程と、を有することを特徴とする。
【0015】
前記第一の工程において、金属母型材の平面に、予め前記発光素子を収納することが可能な凹部を形成してもよい。
【0016】
前記第一の工程において、前記金属母型材の前記凹部の底面と側面の成す角度は、鈍角であることが好ましい。
【0017】
前記第三の工程において、前記導電層の平面に異方性導電材料を介して前記発光素子をフリップチップ実装することが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の発光装置は、上記のように構成されていることから、コストの低減が可能な薄型・小型化発光装置の信頼性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面を参照しながら説明する。ただし、以下に示す形態は、本発明の技術思想を具体化するための発光装置を例示するものであって、本発明は発光装置を以下に限定するものではない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細な説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
【0020】
<発光装置>
本発明の実施の形態に係る発光装置について、図面を用いて説明する。図1(a)は、実施の形態に係る発光装置を示す概略平面図であり、図1(b)は、図1(a)のA−A線における概略断面図である。
【0021】
図1(a)および図1(b)において、発光素子1と、前記発光素子1が載置されるとともに前記発光素子1の一方の電極とワイヤ3にて電気的に接続される一方の導電層2aと、前記発光素子1の他方の電極とワイヤ3にて電気的に接続される他方の導電層2bと、これらを封止する透光性絶縁部材4とを有し、前記透光性絶縁部材4の底面に前記一方の導電層2aおよび前記他方の導電層2bは離間して配置されている。前記一方の導電層2aおよび前記他方の導電層2bは、それぞれ側面に突出部2c・2dを具備している。以下、本実施の形態の各構成について詳述する。
【0022】
(発光素子1)
本形態における発光素子1は、発光ダイオードやレーザダイオードなど、発光装置の光源となり得るものである。また、本形態における発光装置において、発光素子1とともに、受光素子、およびそれらの半導体素子を過電圧による破壊から守る保護素子(例えば、ツェナーダイオードやコンデンサー)、あるいはそれらを組み合わせたものを搭載することができる。
【0023】
発光素子1の一例として、LEDチップについて説明する。LEDチップを構成する半導体発光素子としては、ZnSeやGaNなど種々の半導体を使用したものを挙げることができるが、蛍光物質を有する発光装置とする場合には、その蛍光物質を効率良く励起できる短波長が発光可能な窒化物半導体(InAlGa1−X−YN、0≦X、0≦Y、X+Y≦1)が好適に挙げられる。半導体層の材料やその混晶度によって発光波長を種々選択することができる。例えば、LEDチップは、可視光領域の光だけでなく、紫外線や赤外線を出力する発光素子とすることができる。
【0024】
また、本実施の形態の発光装置において、発光素子1は同一面側に正負一対の電極を有しているものを用いているが、これに限定されるものではなく、対向する面にそれぞれ正および負の電極を有するものも適用することができる。
【0025】
(導電層2a・2b)
本実施の形態で用いられる複数の導電層2a・2bは、透光性絶縁部材との密着性、放熱性、および導通性が良好な材料であれば特に限定されず、種々の材料にて構成することができる。
【0026】
特に、薄型・小型化発光装置の場合、回路基板との接合時における強度が必要となることから、導電層の硬度は450Hv〜550Hvであることが好ましい。また、導電層の熱伝導度は、0.01cal/(S)(cm)(℃/cm)以上であることが好ましく、より好ましくは0.5cal/(S)(cm)(℃/cm)である材料を用いるとよい。また、電気抵抗は、300μΩ・cm以下が好ましく、より好ましくは、3μΩ・cm以下である。
【0027】
これらの導電層に用いられる具体的な材料として、Cu、Au、Ni、W、Mo、Mn、およびTaなど、高融点金属の微粒子からなるメッキ層などがあげられる。これらの高融点金属のうち、特に、Niは、他の金属と比較して、引っ張りや強さ強度が高い、弾性率が高く高温でも強度が高い、熱膨張係数が金属中でも小さいなどの優れた物理的性質を有している。このような高融点金属は、発熱量の多いLEDやLDなどの半導体発光素子を搭載させる材料として適している。また、導電層の表面に、光沢度が90以上である導電性膜を設けることが好ましく、これにより光反射機能を兼ねた導電層とすることができる。ここで本明細書における光沢度とは、JIS規格に基づき、発光素子からの光を60°で入射したときの鏡面反射率が10%となる、屈折率1.567のガラス面を光沢度0と規定し、日本電色工業株式会社製VSR300A微小面色差計にて測定した値である。一方、ITOやIZOなどの透明電極材料を用い、全面に発光することが可能な発光装置とすることもできる。
【0028】
(突出部2c・2d)
本実施の形態における導電層2a・2bは、側面に突出部2c・2dを有している。これにより、導電層2a・2bと透光性絶縁部材4との接着性を高めることができる。回路基板に実装された発光装置に衝撃が加えられた場合、薄い導電層を透光性絶縁部材の背面に単に固着しているだけでは、発光装置の一体化を保つことはできない。また、導電層の側面をエッチング等にて荒らすことにより透光性絶縁部材との密着性を高めることも考えられるが、複数の導電層が離間して配置されていることから、発光素子から向かい合う導電層の側面を粗面とすると、前記祖面に照射された光が離間部分の絶縁部材中に閉じこめられてしまう可能性が高い。また、透光性絶縁部材に機械的強度を高めるため方法として、酸化チタン、酸化ジルコニア、酸化アルミニウム、および酸化ケイ素などの拡散剤を添加したり、ヒュームドシリカやヒュールドアルミニウムなどの増粘剤、または顔料などを添加する手法があるが、好ましい強度を得るためには多量に含有させねばならず、透光性が低下してしまう。このように、光取り出し効率を維持しつつ封止部材自体の機械的強度を高めることは困難であった。そこで本発明では、発光装置の基本的構成部材のほとんどと架橋している導電性部材を光学特性的におよび密着性的に好ましい形状とすることで、発光装置全体の一体性を高めている。
【0029】
突出部2c・2dの角部は、丸みを帯びていることが好ましい。これにより、突出部に発光素子から照射された光が突出部下部に閉じられることを抑制することができる。突出部の位置は、特に限定されないが、導電層の平面側にあることが好ましく、これにより向かい合う導電層の離間部分による光のロスを低減させることができる。さらに、突出部の平面側の角部は、丸みを帯びていることが好ましく、さらには、突出部の側面が平面から底面にかけて放物線状にたれていることが好ましく、これにより光度の高い発光装置を得ることができる。ここで、本明細書において、平面とは、発光装置の光取り出し方向に該当する面をいい、前記平面と対向する面を底面という。
【0030】
また、突出部2c・2dの厚みは、各導電層の全厚みの10%から70%であることが好ましく、より好ましくは30%〜60%、さらに好ましくは40%〜60%であることが好ましい。また、一方の導電層2aの発光装置内部側の突出部2cと前記一方の導電層2aと隣り合う他方の導電層2bの発光装置内部側の突出部2dとの間隔は、生産性を考慮すると50μm〜1mmであることが好ましい。さらに光の取り出し効率を考慮すると、50μm〜300μmが好ましく、さらに50μm〜100μmであることが好ましい。
【0031】
また、図3に示すように、他の実施の形態の発光装置は、一方の導電層2aの一端に平坦な底面を有する凹部を形成し、発光素子1を前記凹部内に載置している。前記一方の導電層2aの他端の底面は、前記凹部の底面と略平行な位置となるように、凸形状となっている。また、他方の導電層2bは、前記一方の導電層2aの一端と略同一平面にて向かい合う一端と、前記一方の導電層2aの他端と略同一平面に位置する他端とを有している。このような構成とすることにより、導電層の裏面を他の部材にて補強することなく、発光装置の機械的強度を高めることができる。さらに、実装面の支点を多数有することから、実装精度が向上される。また、前記導電層は、ほぼ均一は厚みを有することが好ましく、これにより機械的強度をさらに向上させることができる。
【0032】
(ダイボンド部材5)
本実施の形態において、発光素子1は、発光装置の略中央部となる一方の導電層2aの上面にダイボンドされ、前記発光素子1の各電極は、前記一方の導電層2aおよび他方の導電層2bとそれぞれワイヤ3にて電気的に接続されている。
【0033】
本形態におけるダイボンド部材5とは、発光素子1と導電層2aとを固定させるための部材である。例えば、熱硬化性樹脂などの従来から用いられているダイボンド部材を用いることができ、具体的には、エポキシ樹脂、アクリル樹脂やイミド樹脂などがあげられる。また、ダイボンド部材5の熱膨張率を調整するため、これらの樹脂にフィラーを含有させることもできる。これにより、発光素子が導電層2aから剥離することを抑えることができる。また、発光素子1をダイボンドさせると共に導電層2aと電気的に接続させる場合や高い放熱性を要する場合は、Agペースト、カーボンペースト、ITOペーストあるいは金属バンプ等を用いることが好ましく、特に発熱量の多いパワー系発光装置の場合、融点が高いことから高温下にて組織的構造が変化することが少なく力学特性の低下が少ないAu−Sn系の共晶はんだを用いることが好ましい。しかしながら、発光素子1からの光に対する反射率が高い部材をダイボンド部材5として用いる場合、前記ダイボンド部材5により光が吸収されたり、発光素子1の内部に光が閉じこめられたりすることから、前記発光素子1の底面に対する前記ダイボンド部材5の占有率は、5%〜95%であることが好ましく、より好ましくは20%〜70%、さらには20%〜50%であることが好ましい。5%より少ない場合、発光素子1の放熱性および実装性が低下してしまう。また、95%より大きい場合、上述のように発光素子1の光取り出し効率が低減してしまう。
【0034】
(ワイヤ3)
本形態において、発光素子1の電極と導電層2a・2bとを接続するワイヤ3は、導電層2a・2bとのオーミック性、機械的接続性、電気伝導性及び熱伝導性がよいものが求められる。熱伝導度としては0.01cal/(s)(cm)(℃/cm)以上が好ましく、より好ましくは0.5cal/(s)(cm)(℃/cm)以上である。また、作業性などを考慮してワイヤ3の直径は、Φ10μm〜Φ45μmであることが好ましい。具体的なワイヤの材料として、Au、Cu、Pt、Al等の金属及びそれらの合金を用いた導電性ワイヤがあげられる。また、本実施の形態において、ワイヤは、導電層2a・2b側から発光素子1の電極へボンディングする(BSOB(Bond Stitch Ball))ことが好ましく、これにより高速・狭ピッチでの低超ループを形成することができ、超薄型・小型化の発光装置を実現することができる。また、ワイヤの応力点が1カ所となることから、信頼性の高い発光装置が得られる。
【0035】
(透光性絶縁部材4、色変換部材6)
本実施の形態の発光装置は、載置された発光素子1やワイヤ3などを塵芥、水分や外力などから保護、これら各部材の一体化、および発光素子1の光取り出し効率の向上を目的として、透光性絶縁部材4にて封止されている。透光性絶縁部材4の材料は、エポキシ樹脂やシリコーン樹脂、ユリア樹脂などの透光性樹脂や、ガラスなどのような透光性向き部材から選択することができる。また、このような透光性絶縁部材4中に、発光素子からの光の少なくとも一部を吸収して異なる波長を有する光を発する蛍光物質を含有させ、色変換部材6とすることもできる。この場合、透光性絶縁部材4として耐熱性および耐光性に優れ、紫外線を含む短波長の高エネルギー光に曝されても着色劣化しにくいシリコーン樹脂や変性シリコーン樹脂を用いることが好ましく、これにより色ズレや色ムラの発生が抑制される。また、半田付けなど被覆部材の熱膨張や熱収縮の繰り返しが行われたとしても、発光素子1と導電層2a・2bとを接続しているワイヤ3の断線や、ダイボンド部材5の剥離などの発生を抑制することができる。本形態に利用することができる蛍光物質は、発光素子の光を変換させるものであり、発光素子からの光をより長波長に変換させるものの方が効率がよい。発光素子からの光がエネルギーの高い短波長の可視光の場合、アルミニウム酸化物系蛍光体の一種であるYAG:Ce蛍光体やCaSi蛍光体が好適に用いられる。特に、YAG:Ce蛍光体は、その含有量によってLEDチップからの青色系の光を一部吸収して補色となる黄色系の光を発するため、白色系の混色光を発する高出力な発光ダイオードを、比較的簡単に形成することができる。
【0036】
本形態に利用することができる蛍光物質は、発光素子の光を変換させるものであり、発光素子からの光をより長波長に変換させるものの方が効率がよい。発光素子からの光がエネルギーの高い短波長の可視光の場合、アルミニウム酸化物系蛍光体の一種であるYAG:Ceが好適に用いられる。特に、YAG:Ce蛍光体は、その含有量によってLEDチップからの青色系の光を一部吸収して補色となる黄色系の光を発するため、白色系の混色光を発する高出力な発光ダイオードを、比較的簡単に形成することができる。
【0037】
<発光装置の製造方法>
本実施の形態の発光装置の製造方法は、金属母型材の平面にレジストを塗布し、前記レジストの一部を除去して開口部を形成する第一の工程と、前記開口部内に導電性粒子を付着させて導電層を形成する第二の工程と、引き続き前記開口部内から前記レジストの平面にわたって前記導電性粒子を付着させ導電層の突出部を形成する第三の工程と、前記レジストを除去した後、前記導電層の平面に発光素子を載置し電気的に接続し、透光性絶縁部材にて被覆する第四の工程と、前記前記導電層の底面および前記透光性絶縁性部材の底面から金属母型材を剥離する第五の工程と、を有することを特徴とする。以下、本実施の形態の発光装置を製造するための前記各工程について、詳述する。
【0038】
(第一の工程)
本実施の形態の発光装置において、各構成部材は、全て金属母型材を裏打ち材として用いて形成される。これにより、薄く且つ精度の高い発光装置を得ることができる。
【0039】
金属母型材とは、薄い導電層に張り合わせる箔であり、前記金属母型材の平面に発光装置の各構成部材を取り付け、製造時において発光装置全体としての剛性を確保するものであり、発光装置が完成した後、金属母型材は引き剥がして除去される。このような引き剥がし可能な金属母型材の材料は、特に限定されないが、特に体心立方構造を持つ金属であるFe,Mo,W,およびフィラメント系ステンレスなどの金属を用いることが好ましい。これにより、金属母型材と上面に積層される導電層の引き剥がし強度の制御が容易となり、発光装置の生産性を高めることができる。
【0040】
上述したような金属母型材は、平面に積層される導電層2a・2bおよび透光性絶縁部材4と引き剥がすことが可能な剥離層を有している。このような剥離層として、金属中間層を用いることができる。前記金属中間層は、上面にレジストをパターニングする際のエッチング工程においてバリアとして機能することができる材料が好ましい。く、前記金属母型材と前記金属中間層との界面には、弱接合層が形成されていることが好ましい。また、積層される導電層と前記金属母型材の間における引き剥がし強度が0.01〜0.8N/mmの範囲内にあることが好ましい。0.01N/mm未満であると、エッチング工程や搬送工程などのハンドリングで導電層が部分的に剥がれるおそれがある。また0.8N/mmを超えると、発光装置の各構成部材を形成した後の引き剥がし工程において、形成した導電層が金属母型材について剥がれないことがある。本発明において、金属中間層は、Cu、Ti,Ag,Sn,Ni,Zn,またはこれらの金属の何れかを主成分とする合金を使用することができる。特にTiを主成分とする材料では、水素を含んでいることが好ましく、これにより、金属中間層自体を脆く容易に壊れやすい性質となり、適度な引き剥がし強さを有することができる。Tiを主成分とする材料では、0.5mass%〜5mass%の水素を含むことが好ましく、また、Zrを主成分とする材料では、0.02mass%〜2.5mass%の水素を含むことが好ましい。前記水素量の範囲より少ないと、脆化が不十分で、導電層と金属母型材とを引き剥がす際の引き剥がし強さに大きなバラツキが生じ、前記水素量の範囲を超えると、発光装置の各構成部材を取り付ける工程や搬送工程において、導電層が剥がれてしまう恐れがある。ここで、本明細書におけて、主成分とするとは、その該当する材料を50mass以上有することを言う。
【0041】
また、前記金属母型材と前記金属中間層との界面に、弱接合層を用いてもよい。前記弱接合層は、酸素濃化層であることが好ましい。このような酸素濃化層は脆弱である。したがって、このような酸素濃化層を、予め前記金属母型材と前記金属中間層の界面に部分的に形成しておくことで、引き剥がし強度を制御することができる。ここで、酸素濃化層とは、その他の金属中間層の部分と比べて酸素含有量が高いものを言う。
【0042】
このようにして構成された剥離可能な金属母型材上に、レジストをパターニングすることにより、所望とする導電層の平面形状の開口部を形成する。前記レジストパターンの側面は、金属母型材に対してほぼ垂直であることが好ましい。前記開口部のピッチ間は、所望とする発光装置の導電層の突出部の突出長さに合わせて調整する。
【0043】
(第二の工程・第三の工程)
次に、前記開口部内に導電性粒子を付着させて導電層を形成し、引き続き前記開口部内から前記レジストの平面にわたって前記導電性粒子を付着させ導電層の突出部を形成する第三の工程と前記レジストパターンの上方から導電性粒子を塗布する。この際、塗布量を調整することにより、導電層2a・2bの突出部の形状を調整することができる。導電性粒子の積層高さは、レジストパターンの厚みの1.3倍〜2.5倍の厚みが好ましく、より好ましくは1.5倍〜2.3倍、さらに好ましくは1.8倍〜2.0倍であることが好ましい。ここで導電性粒子の積層方法として、真空蒸着、スパッタ、イオンプレーティング、電気蒸着、および電気沈着等を用いることができる。特に真空蒸着や電気蒸着は、成膜速度が速く好ましい。また、超薄膜の導電層を形成する場合は、スパッタやイオンプレーティングなどを用いて良質な膜を得ることができる。このようにして、導電性粒子を積層した後、レジストパターンを除去することにより、導電層2a・2bを形成することができる。
【0044】
(第四の工程)
次に、導電層の平面に発光素子を載置し電気的に接続し、これらの構成部材を覆うように透光性絶縁部材4を塗布して硬化する。
【0045】
(第五の工程)
次に、前記金属母型材のみロールに巻き取り、前記金属母型材を前記導電層2a・2bおよび前記透光性絶縁部材4から剥離する。得られた発光装置の底面に残存した金属中間層は、目的に応じ、反射部材や接合促進剤として用いるか、選択エッチングにより導電層2a・2bおよび透光性絶縁部材をほとんどエッチングしない金属中間層のエッチング液を用いて除去する。特に、導電層2a・2bを高い熱伝導性を有する材料にて構成している場合、導電層2a・2bを過度にエッチングすることなく金属中間層を除去することが可能である。
【0046】
以下、本発明に係る実施例について詳述する。なお、本発明は以下に示す実施例のみに限定されないことは言うまでもない。
【実施例】
【0047】
(実施例1)
金属母型材として厚みが60μmであるSUS430帯材を用い、前記金属母型材の平面にTiからなる中間層を形成し、水素ガス雰囲気中にて熱処理を施す。次に厚み70μmでからなるレジストを形成し、□0.5mm×0.2mmの開口部と□0.5mm×1.0mmの開口部とが0.2mmピッチにて並列するようにパターニングする。
【0048】
次に、開口部内にAu/Ni層を形成する。Ni層の上面は前記レジストの平面より低くなるように形成する。引き続きAu層をレジスト平面をオーバーするように形成する。そして、最表面であるAu層にAgメッキを施す。最後に、レジストを除去することにより、厚みおよび突出長さがそれぞれ50μmである突出部2c・2dを有する導電層2a・2bを得ることができる。
【0049】
続いて、一対の導電層2a・2bに発光素子1を電気的に接続する。具体的には、発光素子1として約460nmに発光ピーク波長を持ち同一面側に正負の電極を有する窒化ガリウム系化合物半導体を用い、一方の導電層2a上にダイボンド樹脂5にて固定する。次に、前記発光素子1の一対の電極上にAuバンプを形成したのち、前記一方の導電層2aから前記Auバンプへワイヤボンディングする(BSOB)。そして、これら各構成部材を覆うようにシリコーン樹脂4を塗布し、硬化させる。
【0050】
次に、前記金属母型材のみロールに巻き取り、前記導電層2a・2bおよび前記シリコーン樹脂4から剥離する。得られた連続する発光装置を、前記導電層の突出部の外周部のシリコーン樹脂部分にてダイシングすることにより、図1に示す発光装置を得ることができる。
【0051】
このようにして得られた発光装置は、1.6mm×0.8mm×0.2mmと超薄型・小型化であり、優れた信頼性を有している。
【0052】
(実施例2)
レジストを、□0.5mm×0.2mmの開口部と□0.5mm×1.0mmの開口部と□0.5mm×0.2mmの開口部とが、それぞれ0.2mmピッチにて並列するようにパターニングし、一発光装置においてワイヤボンディング用の導電層を2つ、発光素子の載置用の導電層を1つとする以外は、実施例1と同様にして製造し、図2に示す発光装置を得る。このようにして得られた発光装置は、図1よりも熱引きに優れている。
【0053】
(実施例3)
前記金属母型材上に、予めエッチングにより複数の深さ80μmの凹部を形成し、発光素子1を収納することが可能な凹部を具備する導電層2aを形成する。次に、前記凹部内に発光素子1を載置し、前記発光素子1の各電極と各導電層2a・2bとをそれぞれワイヤ3にて電気的に接続した後、前記凹部内に前記発光素子からの光を吸収し長波長へ変換することが可能な蛍光物質が含有された透光性絶縁部材6を充填する。具体的には、シリコーン樹脂と(Y0.8Gd0.23Al512:Ce0.03蛍光物質とを、重量比で100:15となるように混合撹拌されてなる混合物を前記凹部内に充填させ、4時間放置し、前記蛍光物質を沈降させる。充填量は、中央部突出していると、集光性を高めることができる。
シリコーン樹脂を50℃3時間、50℃から150℃に上昇させながら1時間、および150℃4時間の工程にて硬化させ、色変換部部材6を形成する。
【0054】
次に、発光素子1からの光を集光することが可能な形状に透光性絶縁部材4を形成する。
具体的には、圧着成形やトランスファーモールドにて形成することができる。このようにして得られた発光装置を、前記導電層の突出部の外周部のシリコーン樹脂部分にてダイシングすることにより、図3に示すような集光率の高い発光装置を得ることができる。
【0055】
(実施例4)
レジストを、□0.5mm×0.2mmの開口部0.2mmピッチにて並列するようにパターニングする以外は実施例1と同様にして導電層2a・2bを形成する。次に、前記発光素子1と前記導電層2a・2bとを、異方性導電部材を介してフリップチップ実装する。
【0056】
本実施の形態では、前記異方性導電部材は、プラスチック粒子表面にNi薄膜を無電解メッキに形成した後、Au薄膜を置換メッキしてなる導電性粒子を、シリコーン樹脂中に5vol%添加されたものを用いているが、これに限定されず、熱可塑性又は熱硬化性を有する有機物又は無機物からなる接着剤中に導電性粒子が具備されているものであれば特に限定されない。また、発光素子1からの光を効率よく反射することが可能な導電性粒子を用いることが好ましい。具体的な導電性粒子として、Ni粒子や、プラスチックやシリカ等の粒子の表面にNiやAu等からなる金属コートを有するものを利用することができる。また、導電性粒子の含有量は、前記接着剤に対して0.3vol%〜1.2vol%が好ましく、これにより発光素子1を載置する際の加熱および加圧により容易に導通を取ることができる。
【0057】
最後に、前記導電層の中心部分にてダイシングすることにより、図4に示すような超薄型・小型化発光装置が得られる。ここで、各実施例において、ダイシングラインは、所望とする発光装置のサイズに合わせて、前記実施例1乃至3のように導電層の外周部であるシリコーン樹脂部分にてダイシングするか、実施例4のように導電性層上にてダイシングするか、選択することができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、発光ダイオードや半導体レーザなどの発光素子を搭載させた発光装置として、各種インジケータ、光センサー、ディスプレイ、フォトカプラ、バックライト光源や光プリンタヘッドなどに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
図1図1(a)は、本実施の形態に係る発光装置を示す概略平面図であり、図1(b)は、図1(a)のA−A線における概略断面図である。
図2図2(a)は、本実施の形態に係る発光装置を示す概略平面図であり、図2(b)は、図1(a)ののA−A線における概略断面図である。
図3図3(a)は、本実施の形態に係る発光装置を示す概略平面図であり、図3(b)は、図3(a)のA−A線における概略断面図である。
図4図4(a)は、本実施の形態に係る発光装置を示す概略平面図であり、図4(b)は、図4(a)のA−A線における概略断面図である。
【符号の説明】
【0060】
1 発光素子
2a・2b 導電層
2c・2d 突出部
3 ワイヤ
4 透光性絶縁部材
5 ダイボンド部材
6 色変換部材
7 異方性導電部材
図1
図2
図3
図4