特許第5794563号(P5794563)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5794563
(24)【登録日】2015年8月21日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】非接触給電システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 17/00 20060101AFI20150928BHJP
   B60L 11/18 20060101ALI20150928BHJP
【FI】
   H02J17/00 B
   B60L11/18 C
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-106745(P2011-106745)
(22)【出願日】2011年5月11日
(65)【公開番号】特開2012-239308(P2012-239308A)
(43)【公開日】2012年12月6日
【審査請求日】2014年2月28日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000173809
【氏名又は名称】一般財団法人電力中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(72)【発明者】
【氏名】名雪 琢弥
(72)【発明者】
【氏名】福島 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】根本 孝七
【審査官】 宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−252446(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/125864(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/131346(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/028092(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/062198(WO,A1)
【文献】 特開2002−084673(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/014634(WO,A2)
【文献】 粟井 郁雄,小森 琢也,共振器結合型ワイヤレス給電システムの簡便な設計,電気学会論文誌C,日本,(社)電気学会,2010年12月 1日,Vol.130,No.12,p.2198−2203
【文献】 粟井 郁雄,磁気結合共振器型ワイヤレス給電システムのBPF理論による設計法,電気学会論文誌C,日本,(社)電気学会,2010年12月 1日,Vol.130,No.12,p.2192−2197
【文献】 工藤 浩喜,大舘 紀章,小川 健一郎,庄木 裕樹,磁気共鳴型無線電力伝送の伝送距離変化時の効率改善技術の提案,電子情報通信学会2011年総合大会講演論文集 通信1,日本,(社)電子情報通信学会,2011年 2月28日,B−1−9,p.9
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00− 3/12、 7/00−13/00、
15/00−15/42、
H02J 7/00− 7/12、 7/34− 7/36、17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれの自己インダクタンスLが等しい4個のコイルを、隣接するコイル間に所定の間隔を介して順次並設するとともに、両端部以外の各コイルと各コイルの両端に接続された各コンデンサでそれぞれ形成する閉回路が共振回路となっている3段の非接触トランスを有する非接触電力伝送部と、
直流電源が接続され、該直流電源の直流出力電圧を交流電圧に変換するとともに、変換した交流電圧が前記非接触電力伝送部の一端側のコイルに印加されるように前記一端側のコイルが接続されてインバータとして駆動される一方の電力変換装置と、
前記非接触電力伝送部の他端側のコイルに接続され、該他端側のコイルを介して印加される交流電圧を直流出力電圧に変換し、該直流出力電圧を直流負荷に印加するコンバータとして駆動される他方の電力変換装置とを有する非接触給電システムであって、
前記一端側のコイルとこれに隣接するコイル、該コイルとこれに隣接するコイル、該コイルと前記他端側のコイルの結合係数をA,B,Cとするとき、A=Cで、かつAまたはCとBとの比が一定になるように構成するとともに、この場合の当該非接触給電システムの等価回路において、1番目と2番目の前記コイル間および3番目と4番目の前記コイル間の結合係数をともにkaとし、2番目と3番目の前記コイル間の結合係数をkbとするときの前記結合係数ka,kbに対応する相互インダクタンスMa,Mbのうち、相互インダクタンスMbがMb<<Lとなる条件のもとで、前記等価回路の高周波電源側から見たインピーダンスZが、
Z≒2jω(La+Lb)+R+(ka/kb)jω(2kb−ka)Lと、表される(ただし、La,Lbは、前記等価回路における漏れインダクタンス、ω=高周波電源の周波数、Rは負荷抵抗)ことを利用して前記インピーダンスの虚部の(ka/kb)jω(2kb−ka)Lの項の値を小さくするために(2kb−ka)≒0が成立するように前記結合係数AまたはCとBとの比を構成したことを特徴とする非接触給電システム。
【請求項2】
請求項1に記載する非接触給電システムにおいて、
前記結合係数A,B,Cの比を2:1:2としたことを特徴とする非接触給電システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載する非接触給電システムにおいて、
前記一方および他方の電力変換装置は、インバータまたはコンバータの何れか一方として駆動されるとともに、スイッチ手段を介して直流電源および直流負荷がそれぞれ接続されており、インバータ駆動される一方または他方の電力変換装置には前記スイッチ手段を介して前記直流電源が接続され、コンバータ駆動される他方または一方の電力変換装置には前記スイッチ手段を介して直流負荷が接続されるように構成されていることを特徴とする非接触給電システム。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか一つに記載する非接触給電システムにおいて、
一方および他方の前記電力変換装置と、前記直流負荷および直流電源との間に昇降圧コンバータを配設するとともに、
一方側から他方側に電力を供給する際には、一方側の昇降圧コンバータを昇圧コンバータとして動作させるとともに他方側の昇降圧コンバータを必要に応じて降圧コンバータとして動作させるように制御する一方、他方側から一方側に電力を供給する際には逆の動作になるように制御するように構成したことを特徴とする非接触給電システム。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れか一つに記載する非接触給電システムにおいて、
前記一端側のコイルおよび前記一方の電力変換装置は家側に設置され、
前記他側のコイルおよび前記他方の電力変換装置は車両側に搭載されていることを特
徴とする非接触給電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は非接触給電システムに関し、特に電力を伝送するために相対向するコイルの間隔が大きい場合に適用して有用なものである。
【背景技術】
【0002】
電気自動車に対する次世代の充電方式として、利便性等の観点から非接触充電技術が注目されている。この種の非接触充電技術としては、電磁誘導による非接触充電技術が最も汎用性があるものとして提案されている。電磁誘導による非接触充電技術においては地上側に配設された固定コイルに車両側に搭載した車載コイルを相対向させて両コイルを介した電磁結合を利用して地上側から車両側へ充電用の電力を供給している。
【0003】
非接触給電および非接触充電の一例として図6に示すような双方向非接触給電システムが提案されている(非特許文献1参照)。同図に示すように、当該双方向非接触給電システムは、インバータまたはコンバータとして機能する電力変換装置1,2、スイッチSW1,SW2で交互に選択される直流電源DC1,DC2、スイッチSW4,SW3で交互に選択される負荷R1,R2ならびにノイズカット用のリアクトルL1,L2および平滑用のコンデンサC3,C4を有している。
【0004】
一方側の電力変換装置1と他方側の電力変換装置2とは非接触トランス3を介して電磁結合され、双方向の電力授受を行うようになっている。すなわち、電力変換装置1をインバータとして機能させる場合にはスイッチSW1を投入するとともに、スイッチSW4を投入して電力変換装置2をコンバータとして機能させる。逆の場合には、スイッチSW2を投入するとともに、スイッチSW3を投入して電力変換装置2をインバータとして機能させるとともに、電力変換装置1をコンバータとして機能させる。ここで、非接触トランス3とは、一方側のコイル3Aと他方側のコイル3Bとを分割し、故意にギャップを介して相対向させたトランスをいう。
【0005】
このように非接触トランス3を介して電力の授受を行わせる場合、漏れ磁束の増大に伴い一方側のコイル3Aと他方側のコイル3Bとの双方と鎖交する磁束が減少し、相互インダクタンスMが小さくなる。このため、非接触トランス3を用いる非接触給電方式では、10kHz以上の高い周波数ωでコイル電流をスイッチングしたり、コンデンサC1,C2をコイル3A,3Bの近傍へ挿入して良好な電力伝送を担保している。加えて、双方向性を保証するため、図5では最もシンプルな構成である直列−直列型のコンデンサ配置として一方側と他方側の回路を同様に構成している。
【0006】
かかる非接触充電を効率よく行うためには、例えば家側に設置される固定コイルである一方側のコイル3Aと車載コイルである他方側のコイル3Bとの間の間隔をあまり拡大させないことが肝要である。コイル3A,3B間の間隔が増大すれば両者の結合係数kが小さくなり、コイル3A,3Bを大型化する等、結合係数kを維持させる設計をしない限り、実用的な電力伝送をすることができないからである。すなわち、例えば電磁結合方式の場合には高周波電源側から見た負荷側の合成インピーダンスZにおいて結合係数kが負荷抵抗Rの係数となっているので、結合係数kが小さくなると、これに伴い無効電力に較べ、伝送される電力の実部が小さくなってしまう。この結果、効率の良い電力伝送を行うことができない。
【0007】
したがって、非接触給電方式において一次側インバータ出力側から見た負荷側の合成インピーダンスにおいて結合係数kが負荷抵抗Rの係数とならなければ、結合係数kが小さくなっても、すなわち非接触部を構成するため相対向させるコイルの間隔が大きくても実用的な非接触給電が可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【非特許文献1】電力中央研究所報告(H09015)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記従来技術に鑑み、結合係数が小さい場合でも効率の良い電力伝送が可能な非接触給電を行い得る非接触給電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成する本発明の構成は次の知見を基礎とするものである。いま、図1に示すような回路を考える。当該回路は自己インダクタンスLが同じ4個のコイルを間隔を置いて並べることにより、全体として3段の非接触トランスを構成したもので、周波数ωの高周波電源から負荷抵抗Rに非接触で電力伝送を行うものである。ここで、各非接触トランス間の結合係数をka、kbとする。また、2番目と3番目のコイルには自己インダクタンスLと共振するように、式(1)が成立するようなコンデンサCを接続して閉回路を構成する。
【0011】
(1/jωC)+jωL=0 ・・・・(1)
ここで、1番目と2番目のコイル間および3番目と4番目のコイル間の結合係数をともにkaとし、2番目と3番目のコイル間の結合係数をkbとすると各結合係数ka,kbに対応する相互インダクタンスMa,Mbは次式(2)、(3)で表わされる。
【0012】
Ma=ka・L ・・・・(2)
Mb=kb・L ・・・・(3)
ここで、図2に示すような図1の等価回路を考えると、漏れインダクタンスLa+Lbは次式(4)のように示される。
【0013】
L=Ma+La+Lb+Mb ・・・・(4)
また、次式(5)
Mb<<L ・・・・(5)
が成立するとすると、式(1)は次式(6)で表わされる。
【0014】
(1/jωC)+jω(Ma+La+Lb)≒0 ・・・・(6)
この結果、高周波電源側から見た合成インピーダンスZは次式(7)で表わされる。
【0015】
Z≒2jω(La+Lb)+R+(ka/kb)jω(2kb−ka)L ・・・・(7)
ここで、例えば、ka/kb=2となるように結合係数ka,kbを決めると式(7)は結合係数kbによらず次式(8)で表わされる。
Z=2jω(La+Lb)+R ・・・・(8)
【0016】
すなわち、合成インピーダンスZの実部Re(Z)=Rとなるので、多段の非接触トランスにおける結合係数の比率を適切に設定してやることにより結合係数が小さくても非接触の電力伝送を良好に成立させることができる。例えば3段の非接触トランスを用いた場合において比率が2:1:2であれば実用的な電力伝送が実現される。
【0017】
これらの解析結果は、共振周波数が一致した2個以上のLC回路を並設した場合には、結合係数が小さくても有意な非接触電力伝送が実現可能であることを意味している。
【0018】
本発明は上記知見に基づき、上述の如き目的を達成するもので、その第1の態様は、
それぞれの自己インダクタンスLが等しい4個のコイルを、隣接するコイル間に所定の間隔を介して順次並設するとともに、両端部以外の各コイルと各コイルの両端に接続された各コンデンサでそれぞれ形成する閉回路が共振回路となっている3段の非接触トランスを有する非接触電力伝送部と、
直流電源が接続され、該直流電源の直流出力電圧を交流電圧に変換するとともに、変換した交流電圧が前記非接触電力伝送部の一端側のコイルに印加されるように前記一端側のコイルが接続されてインバータとして駆動される一方の電力変換装置と、
前記非接触電力伝送部の他端側のコイルに接続され、該他端側のコイルを介して印加される交流電圧を直流出力電圧に変換し、該直流出力電圧を直流負荷に印加するコンバータとして駆動される他方の電力変換装置とを有する非接触給電システムであって、
前記一端側のコイルとこれに隣接するコイル、該コイルとこれに隣接するコイル、該コイルと前記他端側のコイルの結合係数をA,B,Cとするとき、A=Cで、かつAまたはCとBとの比が一定になるように構成するとともに、この場合の当該非接触給電システムの等価回路において、1番目と2番目の前記コイル間および3番目と4番目の前記コイル間の結合係数をともにkaとし、2番目と3番目の前記コイル間の結合係数をkbとするときの前記結合係数ka,kbに対応する相互インダクタンスMa,Mbのうち、相互インダクタンスMbがMb<<Lとなる条件のもとで、前記等価回路の高周波電源側から見たインピーダンスZが、
Z≒2jω(La+Lb)+R+(ka/kb)jω(2kb−ka)Lと、表される(ただし、La,Lbは、前記等価回路における漏れインダクタンス、ω=高周波電源の周波数、Rは負荷抵抗)ことを利用して前記インピーダンスの虚部の(ka/kb)jω(2kb−ka)Lの項の値を小さくするために(2kb−ka)≒0が成立するように前記結合係数AまたはCとBとの比を構成したことを特徴とする非接触給電システムにある。
【0019】
本態様によれば、各コイルの間隔を適切にすることにより、当該非接触給電システムの等価回路の電源側から見たインピーダンスにおける虚部の値を可及的に小さくすることができるので、インピーダンスの実部の要素となる固定値である負荷抵抗Rに対する虚部の(ka/kb)jω(2kb−ka)Lの項の値を可及的に小さくすることができ、2番目と3番目の前記コイル間の結合係数kbが小さくてもその影響を大きく受けることなく、有効電流を負荷抵抗に供給することができるので、効率的な電力伝送を行い得る。また、かかる電力伝送は、Mb<<Lの条件のもとで行われるので、多段の非接触トランスの共振回路を構成する隣接するコイル同士の間隔(ギャップ)を大きくすることができ、その分製作が容易になる。
【0020】
本発明の第2の態様は、
第1の態様に記載する非接触給電システムにおいて、
前記結合係数A,B,Cの比を2:1:2としたことを特徴とする非接触給電システムにある。
【0021】
本態様によれば、当該非接触給電システムにおける等価回路のインピーダンスZの式における第3項の値を零にすることができる。
【0022】
本発明の第3の態様は、
1または第2の態様に記載する非接触給電システムにおいて、
前記一方および他方の電力変換装置は、インバータまたはコンバータの何れか一方として駆動されるとともに、スイッチ手段を介して直流電源および直流負荷がそれぞれ接続されており、インバータ駆動される一方または他方の電力変換装置には前記スイッチ手段を介して前記直流電源が接続され、コンバータ駆動される他方または一方の電力変換装置には前記スイッチ手段を介して直流負荷が接続されるように構成されていることを特徴とする非接触給電システムにある。
【0023】
本態様によれば、非接触トランスを構成する第2のコイルと第3のコイルとの間隔(ギ
ャップ)を大きくした状態で双方向給電が可能になる。
【0024】
本発明の第4の態様は、
第1〜第3の態様の何れか一つに記載する非接触給電システムにおいて、
一方および他方の前記電力変換装置と、前記直流負荷および直流電源との間に昇降圧コンバータを配設するとともに、
一方側から他方側に電力を供給する際には、一方側の昇降圧コンバータを昇圧コンバータとして動作させるとともに他方側の昇降圧コンバータを必要に応じて降圧コンバータとして動作させるように制御する一方、他方側から一方側に電力を供給する際には逆の動作になるように制御するように構成したことを特徴とする非接触給電システムにある。
【0025】
本態様によれば、インバータとして機能する電力変換装置に入力される直流電圧および
コンバータとして機能する電力変換装置から出力される直流電圧を所望の電圧値に任意に
調節することができる。この結果、非接触電力伝送部におけるコイルの結合係数に基づき
変化しても一方側と他方側とでの電源電圧および負荷電圧を容易に対称とすることができ
る。
【0026】
本発明の第5の態様は、
第1〜第4の態様の何れか一つに記載する非接触給電システムにおいて、
前記一端側のコイルおよび前記一方の電力変換装置は家側に設置され、
前記他側のコイルおよび前記他方の電力変換装置は車両側に搭載されていることを特徴とする非接触給電システムにある。
【0027】
本態様によれば、一方の電力変換装置が車両に搭載されて移動するものであっても、第
2のコイルと第3のコイルとの間隔を大きくとることができるので、両者間の非接触給電
を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、高周波電源から見た合成インピーダンスZの実部Re(Z)=Rとなり負荷抵抗Rの項を独立に含ませることができるので、結合係数kが負荷抵抗Rの係数とならない。この結果、非接触部分のコイルの間隔を大きくすることができ、コイルの大型化を招来することなく所定の非接触給電システムの構築を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の基礎となる知見を説明するための回路図である。
図2図1の回路の等価回路図である。
図3】本発明の実施の形態に係る双方向非接触給電システムを示すブロック線図である。
図4図1に示す双方向非接触給電システムにより一方側から他方側へ電力伝送を行う場合の態様を示すブロック線図である。
図5図1に示す双方向非接触給電システムにより他方側から一方側へ電力伝送を行う場合の態様を示すブロック線図である。
図6】従来技術に係る双方向非接触給電システムを示すブロック線図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0033】
図3は本発明の実施の形態に係る双方向非接触給電システムを示すブロック線図である。同図に示すように、本形態に係る双方向非接触給電システムは、図6に示す双方向非接触給電システムと同様に、一方側(図中の左側;以下同じ)と他方側(図中の右側;以下同じ)とが分離されて対称に構成されており、図6に示すシステムの非接触トランス3の代わりに非接触電力伝送部3を構成するとともに昇降圧コンバータ7,8を追加したものである。その他の構成は図6に示す双方向非接触給電システムと同様であるので、図6と同一部分には同一番号を付し、重複する説明は省略する。
【0034】
図3に示すように、非接触電力伝送部3は、4個のコイル3A,3B,3C,3Dを隣接するコイル(3A,3C)、(3C,3D)、(3D,3B)間に所定の間隔を介して順次並設するとともに、コイル3C,3DとコンデンサC5,C6とでそれぞれ形成する閉回路が共振回路となっている3段の非接触トランス4,5,6を有している。
【0035】
ここで、本形態におけるコイル3A〜3Dはそれぞれの自己インダクタンスが同一で、かつコイル3A,3C間、コイル3C,3D間、およびコイル3D,3B間の結合係数をka,kb,kcとするとき、比率が2:1:2となるように構成してある。
【0036】
昇降圧コンバータ7は、一方側で直流電源DC1および負荷R1と電力変換装置1との間に接続され、昇降圧コンバータ8は、他方側で直流電源DC2および負荷R2と電力変換装置2との間に接続されている。かくして、一方側から他方側に電力を伝送する場合には、スイッチ手段SW1がON状態となって直流電源DC1を昇降圧コンバータ7の入力側に接続するとともにスイッチ手段SW4がON状態となって負荷R2を昇降圧コンバータ8の出力側に接続する。反対に、他方側から一方側に電力を伝送する場合には、スイッチ手段SW2がON状態となって直流電源DC2を昇降圧コンバータ8の入力側に接続するとともにスイッチ手段SW3がON状態となって負荷R1を昇降圧コンバータ7の出力側に接続するように制御される。
【0037】
かかる昇降圧コンバータ7,8はそのスイッチング制御により、電力変換装置1,2に印加する入力電圧を所定の値に調整するとともに、負荷R2,R1に印加する入力電圧を所定の値に調整する。
【0038】
上述の電力変換装置1,2の所定周波数(例えば10kHz)でのスイッチング、昇降圧コンバータ7,8の電圧調整のためのスイッチングおよびスイッチ手段SW1〜SW8の開閉制御は図示しない制御手段により行われる。
【0039】
上述の如き本形態によれば、一方側から他方側へ電力伝送を行う場合には、インバータとして機能させる一方側の電力変換装置1に、スイッチ手段SW1を介して一方側の直流電源DC1を接続し、コンバータとして機能させる他方側の電力変換装置2に、スイッチ手段SW4を介して他方側の負荷R2を接続するとともに、他方側から一方側に電力を供給する場合には、他方側の機器と一方側の機器の機能が逆転されるように接続することができるので、双方向の電力伝送を良好に行うことができる。
【0040】
ここで、本形態の場合には上式(8)が成立している。すなわち、非接触電力伝送部3を介して結合された一方側と他方側とにおいて、一方側の高周波電源から見た他方側の合成インピーダンスZの実部Re(Z)=Rとなり負荷抵抗R2または負荷抵抗R1の項を独立に含ませることができる。この結果、結合係数ka,kb,kcは負荷抵抗R1,R2の係数とならない。したがって、非接触電力伝送部3において隣接するコイル3A〜3D間の間隔を大きくしても充分な効率で電力伝送を行うことができる。
【0041】
本形態では、電力変換装置1,2のスイッチング周波数をkHzのオーダーとしたが、結合係数ka〜kcが小さくても充分な伝送効率が担保されているので、充分効率の良い電力伝送を行うことができる。
【0042】
また、本形態では昇降圧コンバータ7,8を具備するので、結合係数ka,kb,kcの影響で電圧が変動しても電力変換装置1,2の入力電圧または出力電圧を任意に調整することができる。この結果、直流電源DC1,DC2や負荷R1,R2の性能にかかわらず電力変換装置1,2に対する所望の入出力電圧に調整し得る。この結果、副次的な効果として、複数のバッテリーをユニット化したモジュールで直流電源を形成した場合等、その冗長性を確保し得る。すなわち、例えばバッテリーの放電に伴い出力電圧が単調減少した場合でもその出力電圧の昇圧により定格通りの性能を発揮させることが可能になる。
【0043】
また、一方側および他方側の具体的な構成は、上述の如き構成を備えていれば、それ以上特別な制限はないが、例えば一方側を家等の固定部とし、他方側を車両とした場合の双方向非接触給電システムとして有用なものとなる。この場合、非接触電力伝送部3のコイル3Aを家側に、コイル3Bを車両側に搭載し、車両の移動によりコイル3Cとコイル3Dとを相対向させれば良い。ここで、車載側の機器はハイブリッド電気自動車や電気自動車に装備されている機器をそのまま流用できる。特に、車載用のバッテリーは車両走行用のモーターが主な負荷となる。
【0044】
したがって、一方側を家側とし、他方側を車両として通常は家側から車載バッテリーに充電を行い、非常時に車載バッテリーを電源として家側の負荷の電力を賄う等の使用態様に適用して有用なシステムを構築することができる。また、この場合、車載バッテリーは、通常多数のバッテリーをユニット化したモジュールで形成されているので、その冗長性も確保し得る。
【0045】
図4は、図3に示す双方向非接触給電システムにより一方側から他方側へ電力伝送を行う場合の態様の一例を示すブロック線図である。同図に示す例では直流電源DC1の出力電圧を昇降圧コンバータ7で昇圧して電力変換装置1に印加するとともに非接触電力伝送部3を介して他方側に伝送された電力をそのまま(必要に応じ昇降圧コンバータ8により電圧調整を行っても良い)負荷R2に供給している。
【0046】
一方、図5は、図3に示す双方向非接触給電システムにより逆に(他方側から一方側へ)電力伝送を行う場合の態様の一例を示すブロック線図である。同図に示す例では直流電源DC2の出力電圧を昇降圧コンバータ8で昇圧して電力変換装置2に印加するとともに非接触電力伝送部3を介して一方側に伝送された電力をそのまま(必要に応じ昇降圧コンバータ7により電圧調整を行っても良い)負荷R1に供給している。
【0047】
このように昇降圧コンバータ7,8を有する場合には、各部の電圧を任意に調節することができ、種々の定格の直流電源DC1,DC2や負荷R1,R2に柔軟に対応することができるという固有の効果は発揮される。これら昇降圧コンバータ7,8は受電側の電圧値を問わなければ必ずしも必要ではない。
【0048】
また、結合係数ka,kb,kcの比率は2:1:2である必要はない。kaまたはkcとkbとの比が一定であればよい。さらに、各コイル3A〜3Dの自己インダクタンスが同じである必要もない。
【0049】
また、上記実施の形態における非接触電力伝送部3は4個のコイル3A〜3Dで3段の非接触トランス4〜6を構成するようにしたが、少なくとも4個のコイルで、少なくとも3段の非接触トランスが形成されていれば良い。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は電気自動車と家等の固定設備との間で双方向に電力伝送を行うシステムを構築する産業分野において利用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1、2 電力変換装置
3 非接触電力伝送部
3A,3B,3C,3D コイル
4,5,6 非接触トランス
7,8 昇降圧コンバータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6