特許第5794791号(P5794791)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5794791
(24)【登録日】2015年8月21日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】切削装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20150928BHJP
【FI】
   H01L21/78 F
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-41559(P2011-41559)
(22)【出願日】2011年2月28日
(65)【公開番号】特開2012-178511(P2012-178511A)
(43)【公開日】2012年9月13日
【審査請求日】2014年1月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100125519
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 憲二
(72)【発明者】
【氏名】井上 隆資
(72)【発明者】
【氏名】對馬 隆幸
(72)【発明者】
【氏名】加藤 優介
【審査官】 今井 聖和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−171321(JP,A)
【文献】 特開2010−087417(JP,A)
【文献】 特開2009−130173(JP,A)
【文献】 特開2007−242726(JP,A)
【文献】 特開2002−329683(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
B23Q 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルで保持された被加工物を切削する切削ブレードを有する切削手段と、該チャックテーブルを移動して、該切削ブレードで被加工物を切削する切削領域と該チャックテーブルに被加工物を着脱する着脱領域とに位置付けるチャックテーブル移動手段とを備えた切削装置であって、
該切削領域と該着脱領域とを仕切る仕切り板と
仕切り板と被加工物とが接触しない開放位置と、該切削領域と該着脱領域とを遮断する遮断位置との間で該仕切り板を移動する仕切り板移動手段と、を具備し
該仕切り板移動手段は、該切削ブレードで被加工物を切削する際に該仕切り板を該開放位置に位置付け、該チャックテーブルが該着脱領域に位置付けられた際に該仕切り板を該遮断位置に位置付けることを特徴とする切削装置。
【請求項2】
該チャックテーブルにアクセスするための扉を更に具備し、
該チャックテーブルが該着脱領域に位置付けられ、該仕切り板が該遮断位置に移動されることで該扉のロックが解除されることを特徴とする請求項1記載の切削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業者がウエーハ等の被加工物を搬送する手動式切削装置(マニュアルダイサー)に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエーハの切削に使用されている一般的な切削装置は、ウエーハを保持するチャックテーブルと、チャックテーブルに保持されたウエーハを切削する切削ブレードを回転可能に支持する切削手段と、チャックテーブルを切削ブレードに対して加工送りする加工送り手段と、カセット中に収容されているウエーハをチャックテーブルまで搬送し、切削加工の終了したウエーハをチャックテーブルからカセットまで自動的に搬送する自動搬送装置を備えていて、ウエーハを効率良く個々のデバイスに分割することができる。
【0003】
このような自動搬送装置を備えた切削装置に対して、特殊な被加工物の切削又は小量ロットの被加工物の切削に使用される手動式切削装置(マニュアルダイサー)がある。マニュアルダイサーでは、作業者が被加工物を搬送してチャックテーブルに対して被加工物を着脱する。
【0004】
マニュアルダイサーでも自動搬送装置を有するダイサーと同様に、チャックテーブルが加工送り手段により被加工物の着脱位置と加工位置との間で移動される。作業者がチャックテーブル上に被加工物を載置するマニュアルダイサーでは、作業者が誤って切削ブレードやブレードカバーに接触しないように、被加工物着脱位置と加工位置との間に仕切りが設けてある。
【0005】
例えば、10mm以上の厚い被加工物を切削する際には、被加工物が仕切りに接触しないように仕切りの下に十分な開口部を設ける必要があるが、この開口部を通じて作業者が誤って切削ブレードに接触してしまう恐れがある。
【0006】
そこで従来は、仕切りの下に例えば10mm以上の高さの開口部を設けた場合、完全に切削ブレードの回転が停止してからでないとチャックテーブルにアクセスするための外装カバーに取り付けられた扉が開かないように制御されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−13312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
切削加工中の切削ブレードは30000rpm等の高速で回転しているため、回転停止の指令を出した後もしばらく惰性で回転し、完全に回転が停止するのには長時間を要する。
【0009】
従来のように、完全に切削ブレードの回転が停止してからでないとチャックテーブルにアクセスするための扉が開かないようなマニュアルダイサーでは、切削ブレードが完全に停止するまで被加工物をチャックテーブルに対して着脱できないので非常に作業性が悪いという問題がある。
【0010】
従来のマニュアルダイサーでは、被加工物の厚みに応じて作業者が仕切りの高さ位置(開口部の高さ)を調整せねばならず非常に作業性が悪かった。更に、作業者が仕切りの高さ位置を被加工物の厚みに応じて調整するのを忘れた場合、被加工物が仕切りに衝突して被加工物を破損させてしまうことがあった。
【0011】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、被加工物着脱領域と切削領域とを仕切る仕切り板の高さ位置を自動的に調整可能な手動式切削装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によると、被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルで保持された被加工物を切削する切削ブレードを有する切削手段と、該チャックテーブルを移動して、該切削ブレードで被加工物を切削する切削領域と該チャックテーブルに被加工物を着脱する着脱領域とに位置付けるチャックテーブル移動手段とを備えた切削装置であって、該切削領域と該着脱領域とを仕切る仕切り板と、該仕切り板と被加工物とが接触しない開放位置と、該切削領域と該着脱領域とを遮断する遮断位置との間で該仕切り板を移動する仕切り板移動手段と、を具備し、該仕切り板移動手段は、該切削ブレードで被加工物を切削する際に該仕切り板を該開放位置に位置付け、該チャックテーブルが該着脱領域に位置付けられた際に該仕切り板を該遮断位置に位置付けることを特徴とする切削装置が提供される。また、該チャックテーブルにアクセスするための扉を更に具備し、該チャックテーブルが該着脱領域に位置付けられ、該仕切り板が該遮断位置に移動されることで該扉のロックが解除されることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の切削装置は、被加工物着脱領域と切削領域とを仕切る仕切り板を開放位置と遮断位置との間で移動する仕切り板移動手段を備えているので、被加工物着脱時と加工中とで自動的に仕切り板の高さ位置を変更できる。
【0014】
従って、被加工物の着脱に際して切削ブレードの回転が完全に停止するまで待つ必要が無く、被加工物を迅速にチャックテーブルに対して着脱できる。また、被加工物の厚みに応じて作業者が仕切り板の高さ位置を調整する必要がないため、作業性が向上する。
【0015】
更に、被加工物着脱時に仕切り板の開口を通じて作業者が切削ブレードやブレードカバーに接触して怪我をしたり、切削ブレードを破損させたり、切削水ノズルの位置等を変更したりして加工品質が悪化してしまうことが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明実施形態の切削装置の外観斜視図である。
図2】切削装置の要部斜視図である。
図3】仕切り板が開放位置にあるときの図2の右側面図である。
図4】仕切り板が遮断位置にあるときの図2の右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。図1を参照すると、本発明実施形態に係る手動式切削装置(マニュアルダイサー)2の外観斜視図が示されている。
【0018】
切削装置2の各機構部分は外装カバー4で覆われている。切削装置2の前面側の外装カバー4には扉6,8が取り付けられている。扉6は取っ手7を把持して引っ張ることにより開閉する回動式であり、扉8は取っ手9を把持して左右にスライドさせるスライド式である。
【0019】
切削装置2の前面側の外装カバー4には更にタッチパネル式の表示モニタ10が配設されている。作業者が表示モニタ10に表示された操作情報にタッチすることにより、切削装置2の操作情報を入力することができる。更に、表示モニタ10には切削装置2の稼働状況が表示される。
【0020】
12は切削装置2の稼働状況を表示する表示ランプであり、切削装置2が正常作動時には例えば緑色で点灯し、何らかの故障が生じた場合には赤色が点滅する。14は非常停止ボタンであり、作業者がこの非常停止ボタン14を押すと切削装置2の作動を直ちに停止することができる。
【0021】
図2を参照すると、本発明実施形態の切削装置2の要部斜視図が示されている。ベース16上に板金製の筐体34が搭載されている。この筐体34に図1に示したアクリル板等の透明樹脂から形成された扉6が回動可能に取り付けられ、同じくアクリル板等の透明樹脂から形成された扉8がスライド可能に装着されている。
【0022】
ベース16上にはチャックテーブル18がX軸方向に移動可能に搭載されている。チャックテーブル18は、図示しない加工送り機構により図2に示された被加工物を着脱する着脱領域Aと、被加工物を切削する切削領域Bとの間でX軸方向に移動される。20はチャックテーブル18を回転するモータ等を切削水から保護するウォーターカバーであり、ウォーターカバー20には蛇腹22,24が取り付けられている。
【0023】
26は切削ユニット(切削手段)であり、サーボモータにより回転駆動されるスピンドル28の先端に切削ブレード30が取り付けられて構成されている。32は切削ブレード30をカバーするブレードカバー(ホイールカバー)である。切削ユニット26は図示しない割り出し送り機構によりY軸方向に移動される。
【0024】
35は被加工物をチャックテーブル18に着脱する着脱領域Aと被加工物を切削ブレード30で切削する切削領域Bとを仕切る仕切り壁であり、図3及び図4に示すように、その下端部に開口35aが形成されている。
【0025】
仕切り壁35に隣接して、仕切り板36が配設されており、仕切り板36はエアシリンダ40により上下方向に移動される。エアシリンダ40は筐体34に取り付けられたステー(支持部材)38上に搭載されており、エアシリンダ40のピストンロッド42が仕切り板36に連結されている。
【0026】
仕切り板36には上下方向に伸長する一対のガイド穴37が形成されており、これらのガイド穴37に仕切り壁35に取り付けられたねじ46が係合している。44は撮像カメラを備えたアライメントユニットである。
【0027】
以下、このように構成された切削装置2の作用について説明する。図2に示すように、チャックテーブル18が被加工物を着脱する着脱領域Aに位置付けられているときには、扉6のロックが解除されて作業者は扉6を開けてチャックテーブル18にアクセスすることができる。
【0028】
更に、エアシリンダ40のピストンロッド42が引き込まれて、図4に示すように、仕切り板36は着脱領域Aと切削領域Bとを遮断する遮断位置に位置付けられ、仕切り壁35の開口35aを大部分閉塞する。その結果、スピンドル28が完全に停止していない場合であっても、作業者は仕切り板36に邪魔をされて切削ブレード30やブレードカバー32にアクセスすることができない。
【0029】
よって、被加工物着脱時に、作業者が切削ブレード30やブレードカバー32に接触して怪我をしたり、切削ブレード30を破損させたり、切削水ノズル31の位置を変更したりして被加工物の加工品質が悪化してしまうことを防止できる。
【0030】
作業者が扉6を閉めて表示モニタ10を介して切削開始指令を入力すると、スピンドル28が回転を開始するとともに、エアシリンダ40のピストンロッド42が伸長されて仕切り板36が図3に示すように上方に移動されて、開放位置に位置付けられる。
【0031】
スピンドル28の回転が所定回転(例えば30000rpm)に達したならば、加工送り機構が駆動されてチャックテーブル18がX軸方向に移動を開始する。この時、仕切り板36は図3に示す開放位置に位置付けられているので、仕切り壁35の開口35aは大きく開けられ、チャックテーブル18に保持された被加工物48は仕切り板36に邪魔されることなく切削領域Bまで移動されて、被加工物48の切削が開始される。
【0032】
半導体ウエーハ等の被加工物の切削が終了すると、チャックテーブル18は図2に示すホームポジションである着脱領域Aに戻される。チャックテーブル18が着脱位置に戻されるのに応じて、仕切り板36は図4に示す遮断位置に下降される。仕切り板36が遮断位置に下降されると、扉6のロックが解除されて扉6を開くことができるように制御される。
【0033】
よって作業者は、スピンドル28の回転が完全に停止しない状態であっても、扉6を開けてチャックテーブル18から切削加工の終了した被加工物を取り出し、新たな被加工物をチャックテーブル18に載置することができ、作業効率が向上する。この時、仕切り板36は遮断位置に位置付けされているので、作業者が誤って切削ブレード30やブレードカバー32に接触してしまうことが防止される。
【符号の説明】
【0034】
2 切削装置
4 外装カバー
6,8 扉
10 表示モニタ
18 チャックテーブル
26 切削ユニット(切削手段)
28 スピンドル
30 切削ブレード
35 仕切り壁
36 仕切り板
40 エアシリンダ
図1
図2
図3
図4