(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5794834
(24)【登録日】2015年8月21日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】フロースルー式測定装置
(51)【国際特許分類】
G01N 5/02 20060101AFI20150928BHJP
【FI】
G01N5/02 A
【請求項の数】4
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2011-130640(P2011-130640)
(22)【出願日】2011年6月10日
(65)【公開番号】特開2013-2815(P2013-2815A)
(43)【公開日】2013年1月7日
【審査請求日】2014年3月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】100087745
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 善廣
(74)【代理人】
【識別番号】100098545
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100106611
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 幸史
(72)【発明者】
【氏名】田中 俊
(72)【発明者】
【氏名】水谷 友海
(72)【発明者】
【氏名】嶽 良太
【審査官】
谷垣 圭二
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−026099(JP,A)
【文献】
特開平06−050974(JP,A)
【文献】
特開昭63−291601(JP,A)
【文献】
実開平01−122835(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 5/00−5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動相溶液の容器と、前記容器の温度調整を行うために温度制御手段とを筐体内に備え、前記移動相溶液の容器から供給される溶液を検出素子に接触させて測定を行うフロースルー式測定装置において、前記筐体の外側に前記容器に溶液を補充するためのリザーバータンクを備え、前記リザーバータンクの少なくとも一部が、透明又は半透明の材料で構成され、測定時に前記容器内の液面の変動に合わせて液面が変動するように前記リザーバータンクを配置したことを特徴とするフロースルー式測定装置。
【請求項2】
前記リザーバータンクは、前記筐体の外壁に着脱可能に装着されることを特徴とする請求項1記載のフロースルー式測定装置。
【請求項3】
前記リザーバータンクと前記容器とを可撓性材料から構成される連通管により接続したことを特徴とする請求項1又は2の何れか1項に記載のフロースルー式測定装置。
【請求項4】
前記検出素子は、水晶振動子であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のフロースルー式測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は溶液中の物質検知あるいは測定に用いるためのフロースルー式測定装置に関し、特に検出方式が水晶振動子マイクロバランス法(以降、「QCM」という。)に最適な測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高感度なQCMによる測定装置においては、水晶自体の温度特性のため、計測対象たる溶液の僅かな温度変化によって、計測値が大きく変化してしまう欠点があり、各溶液の温度を厳密に一定とすることが望ましいが、特に多くの溶液量を必要とする移動相溶液を装置の筐体内に設けられたペルチェ素子等で構成された温調ブロック内に設けられた容器に収容すると、装置が大型化するという問題があった。
更に、移動相溶液の温調効果を十分に機能させるため、移動相溶液を収容したタンクを温調ブロックや断熱材により被覆してしまうと移動相溶液の残りを確認することができず、測定に支障が生じる場合があった。
また、更に、検出素子にサンプル溶液を供給して測定を行うと同時に、その後の測定のために移動相溶液を別種のものに変更する場合にも、検出素子の温度を調整する温調ブロックに設けられた断熱材の一部を開放する等して、別の移動相溶液を温調ブロック内の移動相溶液の容器に供給する必要があり、安定した測定が困難であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで、本発明は、装置の筐体内に収容された移動相溶液用の容器の容量を最小限にとどめた上で、測定の精度を低めることなく容易に、移動相溶液の補充、変更が可能なフロースルー式の測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明者等は鋭意検討の結果、装置の筐体外壁にリザーバータンクを設けることを知見し、以下の通り解決手段を見出した。
即ち、本発明のフロースルー式測定装置は、請求項1に記載の通り、移動相溶液の容器と、前記容器の温度調整を行うために温度制御手段とを筐体内に備え、前記移動相溶液の容器から供給される溶液を検出素子に接触させて測定を行うフロースルー式測定装置において、前記筐体の外側に前記容器に溶液を補充するためのリザーバータンクを
備え、前記リザーバータンクの少なくとも一部が、透明又は半透明の材料で構成され、測定時に前記容器内の液面の変動に合わせて液面が変動するように前記リザーバータンクを配置したことを特徴とする。
また、請求項2記載の本発明は、請求項1記載の発明において、前記リザーバータンクは、前記筐体の外壁に着脱可能に装着されることを特徴とする。
また、請求項
3記載の本発明は、請求項1
又は2の何れか1項に記載の発明において、前記リザーバータンクと前記容器とを可撓性材料から構成される連通管により接続したことを特徴とする。
また、請求項
4記載の本発明は、請求項1乃至
3の何れか1項に記載の発明において、前記検出素子は、水晶振動子であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、リザーバータンクを装置の筐体の外壁に設けることにより、筐体内の移動相溶液の容器を大型化することなく、装置の外側から溶液を補充又は変更することができる。
また、リザーバータンクの少なくとも一部を、透明又は半透明な材料により構成することにより、筐体内の移動相溶液の液面が外部から確認可能となり、溶液の補充が必要な時期を容易に把握することができる。
また、溶液補充が必要な場合には、リザーバータンクに補充を行うことにより、測定装置の温調部分を開放することなく追加することができ、容器とリザーバータンクとの間で液面差を解消するように徐々に溶液が容器に供給されるため、容器内の溶液温度を大きく変化させずに溶液の供給が可能となる。
また、連通管を可撓性の材料により構成することにより、連通管を接続した状態で筐体の外壁からリザーバータンクを外して低位置に置くことができ、筐体内部の容器から迅速に溶液を排出することが可能となり、別種の溶液への置き換えが容易に行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本発明の一実施の形態のフロースルー式測定装置の概略断面図
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1は、本願発明の一実施の形態のフロースルー式測定装置10の概略断面図を示すもので、装置10の筐体1内部に、移動相溶液を収容する容器2、容器に接続される検出素子から構成される公知の検出手段3とを備えている。尚、図示しないが、圧送用のポンプや、測定に必要な電源も筐体1内には設けられている。容器2及び検出手段3には、ペルチェ素子やヒーター等の温度調整手段4が設けられており、図示した例では、温調手段により容器及び検出手段が被覆されている。尚、温調手段には、必要に応じて、樹脂やガラス繊維製等のウール材、発泡樹脂、真空断熱材、多孔質材の断熱材等を設けるようにしてもよい。
本実施の形態では、筐体1内の容器2を連通管5により筐体1の外側に設けられたリザーバータンク6と接続している。これにより、温調された容器2内へリザーバータンク6から溶液の補充乃至変更を行うことが可能となる。
リザーバータンク6は、筐体1の外側、即ち、温調された領域外であれば特に制限するものではないが、溶液の補充の観点からすると装置10の外壁の側面に設けることが好ましい。また、取り付け方法についても特に制限するものではないが、清掃等の観点からすると筐体1の外壁に対して、係止や磁着等により着脱できるようにすることが好ましい。
【0008】
リザーバータンク6を構成する材料についても特に制限するものではないが、ガラスやアクリル等の透明又は半透明の材料により構成すれば、リザーバータンク6内の溶液量を外部から確認することができるので好ましい。
この場合、筐体1内の容器2の液面の変動に応じてリザーバータンク6の液面が変動するように配置すれば、容器2の溶液量に応じて溶液を補充することができるので好ましい。具体的には、測定時に容器2の液面が実質的に変動する液面の最下面から最上面までの高さを備えたリザーバータンク6として構成し、筐体1の外壁に容器の液面2の実質的な最下面に揃えて配置するようにすればよい。
【0009】
また、容器2とリザーバータンク6とを接続する連通管5は、ゴムや樹脂等の材料から構成される可撓性の部材とすることが好ましい。連通管5を接続した状態で筐体1の外壁からリザーバータンク6を外して容器2よりも低い位置に置くことができ、容器2から迅速に溶液を排出することが可能となるからである。
【0010】
検出素子としては、圧電素子等を使用することができるが、計測対象たる溶液の僅かな温度変化によって計測値が大きく変化してしまう可能性のある高感度の水晶振動子を使用する場合に特に有効である。
【0011】
尚、上記説明した例では、容器2と検出手段3とを接続している管7は、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ラテックス等の材料から構成している。
また、高さ方向において、容器2に対して検出手段3を設ける位置については、容器2から管7を介して溶液を送出することが可能な最低の液面と、容器2内に溶液を最大に収容した際の最高の液面と、検出手段の最低の液面と、最高の液面とを揃えるようにすることが好ましい。容器2内の溶液の状態を確認し易いからである。
【符号の説明】
【0012】
1 筐体
2 移動相溶液の容器
3 検出手段
4 温度調整手段
5 連通管
6 リザーバータンク
7 管
10 フロースルー式測定装置