(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来から、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)等のパワーデバイスのように、比較的膜厚の大きい結晶膜を必要とする半導体素子の製造工程では、ウェハ等の基板に単結晶薄膜を気相成長させて成膜するエピタキシャル成長技術が利用される。
【0003】
エピタキシャル成長技術に使用される成膜装置では、常圧または減圧に保持された反応室の内部に、例えば、ウェハを載置し、このウェハを加熱しながら反応室内に原料ガスを供給する。すると、ウェハの表面で原料ガスの熱分解反応および水素還元反応が起こり、ウェハ上にエピタキシャル膜が成膜される。
【0004】
膜厚の大きなエピタキシャルウェハを高い歩留まりで製造するには、均一に加熱されたウェハの表面に新たな原料ガスを次々に接触させて、気相成長の速度を向上させる必要がある。そこで、ウェハを高速で回転させながらエピタキシャル成長させることが行われている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
図5は、従来の成膜装置の模式的な断面図である。
【0006】
成膜装置1100は、半導体基板であるウェハ1101の上で気相成長をさせてエピタキシャル膜の成膜を行う反応室として、チャンバ1103を有する。チャンバ1103の上部には、加熱されたウェハ1101の表面に結晶膜を成長させるための原料ガスを供給するガス供給部1123が設けられている。また、ガス供給部1123には、原料ガスの吐出孔が多数形成されたシャワープレート1124が接続している。
【0007】
チャンバ1103の下部には、反応後の原料ガスを排気するためのガス排気部1125が複数設けられている。ガス排気部1125は、調整バルブ1126および真空ポンプ1127からなる排気機構1128に接続している。チャンバ1103の内部には、ウェハ1101を保持するための
治具であるリング状のサセプタ1102が、回転部1104の上方に設けられている。サセプタ1102は、その内周側に設けられた座ぐり内にウェハ1101の外周部を受け入れる構造となっている。
【0008】
回転部1104は、円筒部1104aと回転軸1104bを有している。回転軸1104bが回転することにより、円筒部1104aを介してサセプタ1102が回転する。
【0009】
図5において、円筒部1104aは上部が解放された構造である。サセプタ1102が設置されてさらにその上にウェハ1101が載置されることにより上部が覆われて、円筒部1104aは、チャンバ1103内のP
11領域に対して隔てられた、中空領域(以下、P
12領域と称す。)を形成する。
【0010】
P
12領域には、ヒータ1120が設けられている。ヒータ1120は、回転軸1104b内に設けられた略円筒状のシャフト1108の内部を通る配線1109によって給電され、ウェハ1101をその裏面から加熱する。
【0011】
回転部1104の回転軸1104bは、チャンバ1103の外部まで延設されており、図示しない回転機構に接続している。円筒部1104aが回転することにより、サセプタ1102を回転させることができ、ひいてはサセプタ1102上に載置されたウェハ1101を回転させることができる。
【0012】
チャンバ1103内へのウェハ1101の搬入、あるいは、チャンバ1103外へのウェハ1101の搬出には、
図5において、図示しない搬送用ロボットを用いて行うことが可能である。その場合、図示しない基板昇降手段を利用することができる。例えば、ウェハ1101の搬出時には、基板昇降手段によりウェハ1101を上昇させて、サセプタ1102から引き離す。次いで、搬送用ロボットにウェハ1101を受け渡し、チャンバ1103の外部へと搬出する。ウェハ1101の搬入時には、搬送用ロボットからウェハ1101を受け取り、ウェハ1101を下降させて、ウェハ1101をサセプタ1102上に載置する。
【発明を実施するための形態】
【0026】
実施の形態1.
図1は、本実施の形態における枚葉式の成膜装置の概略構成図である。
【0027】
図1では、本実施の形態の成膜装置の構成の概略について、成膜室の模式的な断面図を用いて説明している。
【0028】
本実施の形態においては、成膜処理の対象としてウェハ等の基板101を用いる。
図1では、本実施の形態の成膜装置100のサセプタ102に基板101を載置した状態を示している。
【0029】
成膜装置100は、基板101上で気相成長をさせてエピタキシャル膜の成膜を行う
成膜室として、チャンバ103を有する。
【0030】
成膜装置100のチャンバ103の上部には、原料ガス供給部として機能するガス供給部123が設けられている。チャンバ103上部のガス供給部123には、ガス流路131、132が接続しており、ガス流路131、132の他方は、例えば、ガスボンベを用いて構成されたガス貯蔵部133、134に接続されている。ガス流路131、132の途中にはそれぞれ、ガスの流量を調整してガスの供給量の調整が可能なガスバルブ135、136が接続されている。ガス貯蔵部133には、基板101上で行うエピタキシャル膜の成膜のための原料ガス137が貯蔵されている。一方、ガス貯蔵部134には、キャリアガス138が貯蔵されている。したがって、ガスバルブ135は、ガス供給部123からチャンバ103内に供給される原料ガス137の制御用として設けられている。一方、ガスバルブ136は、ガス供給部123からチャンバ103内に供給されるキャリアガス138の制御用として設けられている。
【0031】
成膜装置100は、チャンバ103内に供給されるガスを制御するための制御部であるガス制御部140を有する。ガス制御部140は、ガスバルブ135、136に接続している。ガス制御部140は、ガスバルブ135、136を制御し、ガス供給部123からチャンバ103内に供給される原料ガス137およびキャリアガス138を制御する。そして、高温に加熱された基板101の表面にエピタキシャル膜を成長させて成膜するための原料ガス137を供給する。
【0032】
ガス供給部123には、原料ガス137等の吐出孔が多数形成されたシャワープレート124が接続している。シャワープレート124を基板101の表面と対向して上部に配置することにより、基板101の表面に原料ガス137が供給される。
【0033】
チャンバ103の下部には、反応後の原料ガス137等を排気するためのガス排気部125が複数設けられている。ガス排気部125は、調整バルブ126および真空ポンプ127からなる排気機構128に接続している。また、排気機構128は、図示しない制御機構により制御されてチャンバ103内を所定の圧力に調整する。
【0034】
チャンバ103の内部には、サセプタ102が、回転部104の上方に設けられている。サセプタ102は、開口部を有して構成されたリング状の形状を有する。そして、サセプタ102は、サセプタ102の内周側に座ぐりが設けられ、この座ぐり内に基板101の外周部を受け入れて支持する構造を有する。また、サセプタ102は、高温下にさらされることから、例えば、等方性黒鉛の表面にCVD法によって高耐熱な高純度のSiCを被覆して構成される。
【0035】
尚、サセプタ102の構造について、
図1に示すサセプタ102は一例であり、これに限られるものではない。
【0036】
図2は、本実施の形態の成膜装置のサセプタの別の例の構造を説明する模式的な拡大断面図である。
【0037】
サセプタ102の別の例であるサセプタ102aは、その内周側に、座ぐりの上方に張り出すように形成された張り出し部150を有する。このサセプタ102aの張り出し部150は、後述するように、サセプタ102a上に載置する基板101の少なくとも一部がサセプタ102a上から浮いた状態で回転された場合、基板101がサセプタ102a上から外れて飛び出すことがないように、基板101のサセプタ102a上での大きな上下動を抑制するように機能する。
【0038】
回転部104は、円筒部104aと回転軸104bを有している。回転部104では、円筒部104aの上部でサセプタ102を支持している。そして、回転軸104bが図示しないモータによって回転することにより、円筒部104aを介してサセプタ102が回転する。こうして、サセプタ102の上に基板101が載置された場合、その基板101を回転させることができる。
【0039】
図1において、円筒部104aは、上部が開口する構造を有し、上部が解放された構造である。そして、円筒部104aの上部にサセプタ102が配置され、サセプタ102上に基板101が載置されることにより、上部が覆われて中空領域(以下、P
2領域と称す。)を形成する。ここで、チャンバ103内をP
1領域とすると、P
2領域は、基板101とサセプタ102によって実質的にP
1領域と隔てられた領域となる。そのため、後述するインヒータ120とアウトヒータ121周囲のP
2領域で発生した汚染物質によって基板101が汚染されるのを防ぐことができる。また、P
1領域にある原料ガス137や、原料ガス137とともに用いられるキャリアガス138がP
2領域内に進入し、P
2領域内に配置されたインヒータ120とアウトヒータ121に接触することを防ぐことができる。
【0040】
ここで、本実施の形態の成膜装置100では、後述するように、開口する上部がP
2領域まで伸びているガス導入管111からP
2領域にパージガス151を供給するように構成されている。成膜装置100は、ガス導入管111からP
2領域にパージガス151を供給することが可能である。
【0041】
そして、成膜装置100では、
図1に示すように、円筒部104aの底部近傍の側壁部分には、その側壁を貫通する貫通孔を設けることが可能である。この貫通孔は、P
2領域に供給されたパージガス151を排出する排出部155を構成する。
円筒部104aでは、排出部155からの排出が可能な量でP
2領域にパージガス151を供給し、インヒータ120とアウトヒータ121の周囲をパージすることができる。その場合でも、P
2領域に供給されたパージガス151は、排出部155から排出され、P
2領域とP
1領域とが隔てられた状態は実質的に維持される。
【0042】
P
2領域には、ヒータとしてのインヒータ120とアウトヒータ121が設けられている。インヒータ120およびアウトヒータ121には抵抗加熱ヒータを用いることが可能であり、それらはカーボン(C)材の表面に高耐熱なSiCを被覆して構成される。これらのヒータは、回転軸104b内に設けられた略円筒状の石英製のシャフト108の内部を通る配線109によって給電され、サセプタ102を介して基板101をその裏面から加熱する。アウトヒータ121は周囲の部材に熱が逃げやすい基板101の外周部の加熱を主な目的とする。インヒータ120とは別にアウトヒータ121を設けて2重ヒータとすることにより、基板101の加熱における面内均一性を向上させることができる。
【0043】
加熱により変化する基板101の表面温度は、チャンバ103の上部に設けられた放射温度計122によって計測される。尚、シャワープレート124を透明石英製とすることによって、放射温度計122による温度測定が、シャワープレート124で妨げられないようにすることができる。計測した温度データは、図示しない制御機構に送られた後、インヒータ120およびアウトヒータ121の出力制御にフィードバックされる。これにより、基板101を所望の温度となるように加熱できる。
【0044】
シャフト108の内部には、基板昇降手段として昇降ピン110が配置されている。昇降ピン110の下端は、シャフト108の下部に設けられた図示されない昇降装置まで伸びている。そして、その昇降装置を動作させて昇降ピン110を上昇または下降させることができる。この昇降ピン110は、基板101のチャンバ103内への搬入とチャンバ103外への搬出の時に使用される。昇降ピン110は基板101を下方から支持し、持ち上げてサセプタ102から引き離す。そして、基板101搬送用ロボット(図示されない)との間で基板101の受け渡しができるように、基板101を回転部104上のサセプタ102から離れた上方の所定の位置に配置するように動作する。
【0045】
シャフト108の内部にはさらに、円筒部104aの内部のP
2領域にパージガス151を供給するパージガス供給部として、開口する上部がP
2領域まで伸びているガス導入管111が配置されている。ガス導入管111にはガス流路152が接続しており、ガス流路152の他方は、例えば、ガスボンベを用いて構成されたガス貯蔵部153に接続されている。ガス貯蔵部153には、P
2領域に供給されるパージガス151が貯蔵されている。
【0046】
ガス流路152の途中には、ガスの流量を調整してガスの供給量の調整が可能なガスバルブ154が接続されている。ガスバルブ154は、上述したガス制御部140に接続している。したがって、成膜装置100では、ガス制御部140がガスバルブ154を制御し、ガス導入管111からP
2領域に供給されるパージガス151を制御する。そして、ガス制御部140は、基板101の表面にエピタキシャル膜を成長させるための原料ガス137を制御するとともに、キャリアガス138を制御し、さらに、P
2領域に供給されてP
2領域をパージするパージガス151を制御する。
【0047】
ガス貯蔵部153に貯蔵され、ガス制御部140の制御によって、ガス導入管111からP
2領域に供給可能なパージガス151としては、アルゴン(Ar)ガスおよびヘリウム(He)ガス等の不活性ガスの他、水素(H
2)ガスや窒素(N
2)ガス等を挙げることができる。それらパージガスを1種のみ使用することが可能であり、2種以上のパージガスを同時に使用することも可能である。
【0048】
本実施の形態の成膜装置100では、基板101上でエピタキシャル膜を成長させて成膜する成膜工程において、ガス制御部140を用い、P
1領域への供給される原料ガス137とP
2領域をパージするパージガス151とをそれぞれ制御することができる。そして、成膜装置100では、パージガス151の供給を、原料ガス137の供給と一緒に行うようにすることができる。
【0049】
したがって、成膜装置100は、サセプタ102上に載置された基板101を回転させながら、円筒部104aのP
2領域にパージガス151を供給することができる。そして、P
2領域に供給されたパージガス151が、基板101とサセプタ102の間から抜け出るようにすることによって、基板101の少なくとも一部がサセプタ102から浮いた状態を形成することができる。成膜装置100では、基板101の少なくとも一部がサセプタ102から浮いた状態で基板101を回転するようにし、P
1領域へ供給される原料ガス137を用いて基板101上でエピタキシャル膜を成膜することができる。
【0050】
成膜装置100は、上述のように、円筒部104aのP
2領域にパージガス151を供給し、回転する基板101の少なくとも一部がサセプタ102から浮いた状態を形成する。成膜装置100では、上述のように排出部155が設けられることがある。そして、基板101の浮いた状態の形成前から、排出部155からの排出が可能な量でP
2領域にパージガス151を供給し、インヒータ120とアウトヒータ121の周囲をパージするようにする場合がある。その場合、基板101の浮いた状態の形成前までにP
2領域に供給されていたパージガス151の供給量を一時的に増やすことで、基板101の少なくとも一部がサセプタ102から浮くようにすることができる。
【0051】
成膜装置100は、例えば、チャンバ103のP
1領域と円筒部104aのP
2領域で、圧力がほぼ等しくなるように構成される。そして、P
1領域にある原料ガス137や、原料ガス137とともに用いられるキャリアガス138がP
2領域内に進入しないように、P
2領域の圧力が若干高くなるように設定される。例えば、チャンバ103内が減圧状態にされ、P
1領域の圧力が300Torrに設定された場合、円筒部104aのP
2領域の圧力は301Torr〜305Torr程度に設定される。そのため、P
2領域内に供給されるパージガス151の流量は、5リットル/分程度またはそれ以下となる量が設定される。そして、成膜装置100では、基板101を回転させてエピタキシャル膜を成膜する工程において、常時、こうした流量のパージガス151をP
2領域内に供給することが可能である。
【0052】
そして、円筒部104aのP
2領域にパージガス151を供給し、回転する基板101の少なくとも一部がサセプタ102から浮いた状態を形成する。その場合、ガス制御部140の制御によってパージガス151の供給量を、常時供給されている量から一時的に増大し、そうした状態を形成することができる。例えば、パージガス151の供給量を一時的に増やして6リットル/分〜10リットル/分の流量とし、基板101の少なくとも一部がサセプタ102から浮くようにすることができる。
【0053】
基板101の少なくとも一部がサセプタ102から浮いた状態は一時的なものとすることが可能である。そして、そのような状態が形成された後の成膜装置100では、基板101とサセプタ102の間からパージガス151が抜け出すことにより、基板101はサセプタ102上の位置に戻ることになる。こう変動を繰り返すことにより、基板101はサセプタ102上で微小に上下に振動している状態を形成することができる。このとき、基板101は、サセプタ102の回転に伴って高速に回転している。したがって、基板101は、微小に上下に振動しながら高速回転する状態となる。
【0054】
成膜装置100は、成膜工程において、上述のような状態を形成ながら、回転する基板101上でエピタキシャル膜を成膜することができる。その場合、サセプタ102の座ぐり内に受け入れられた基板101の外周部は、その座ぐり部分との間で、対向する部分同士が同じ接触状態のまま維持されて成膜処理されることはなくなる。
【0055】
上述したように、成膜装置100は、チャンバ103内で気相成長をさせるとき、基板101の表面のみではなく、基板101を支持しているサセプタ102の表面にも原料ガス137に起因する薄膜が形成される。上述した従来の成膜装置では、そうしたことが成膜処理中に繰り返されると、サセプタ上に形成された薄膜によって基板がサセプタに接着されたような状態となる問題があった。
【0056】
しかしながら、本実施の形態の成膜装置100は、円筒部104aのP
2領域に供給されたパージガス151を利用し、基板101を微小に上下に振動しながら高速回転させることができる。したがって、基板101とサセプタ102との間に原料ガス137に起因する薄膜が形成されても、基板101がサセプタ102に貼り付くことを防止することができる。
【0057】
実施の形態2.
次に、本実施の形態の成膜方法の一例について説明する。本実施の形態の成膜方法は、
図1に示した成膜装置100を用いて行うことができる。したがって、
図1等の図面を適宜参照しながら説明する。
【0058】
本実施の形態の成膜方法は、気相成長をさせて基板101上にエピタキシャル膜を成膜する。そして、その成膜処理に際し、基板101とサセプタ102との間に原料ガス137に起因する薄膜が形成されても、基板101がサセプタ102に貼り付くことを防止することができる。尚、基板101の直径は、例えば、200mmまたは300mmとすることができる。
【0059】
基板101の、成膜装置100のチャンバ103内への搬入は、図示しない搬送用ロボットを用いて行う。基板101の搬入に際し、ガス制御部140の制御によって、開口する上部がP
2領域まで伸びているガス導入管111からP
2領域にパージガス151を供給することが可能である。パージガス151の流量としては、基板101をサセプタ102上に載置するのに好適な流量が選択される。すなわち、P
2領域に供給されたパージガス151が、基板101とサセプタ102の間から抜け出て、基板101の少なくとも一部がサセプタ102から浮いた状態を形成することがないように流量が設定されることが好ましい。例えば、P
2領域に供給されるパージガス151の流量は、5リットル/分程度またはそれ以下となる量が設定される。
【0060】
パージガス151としては、上述したガスの使用が可能である。そして、カーボン材から構成されるインヒータ120およびアウトヒータ121に接触してもそれらに損傷を与えることの少ないアルゴンガスおよび窒素ガスのうちの少なくとも一方を選択して使用することが好ましい。
【0061】
成膜装置100の回転部104の内部には、
図1に示したように、回転軸104bの内部を貫通する昇降ピン110が設けられている。搬送用ロボットからの基板101の受け取りは、この昇降ピン110が用いられる。
昇降ピン110を初期位置から上昇させ、サセプタ102上方の所定の位置で、搬送用ロボットから昇降ピン110が基板101を受け取った後、基板101を支持した状態で昇降ピン110を下降させる。
【0062】
そして、
図1に示したように、昇降ピン110を所定の初期位置に戻す。こうして、基板101は、回転部104の円筒部104a上のサセプタ102の上に載置される。
【0063】
次に、チャンバ103内を常圧の状態または適当な減圧の状態にし、ガス制御部140の制御によってガス供給部123からP
1領域にキャリアガス138である水素ガスを供給する。そして、キャリアガス138を流しながら、回転部104に付随させて、基板101を50rpm程度で回転させる。
【0064】
ガス導入管111からは、ガス制御部140の制御によって、上述した流量のパージガス151が円筒部104aのP
2領域内に供給されている。P
2領域に供給されたパージガス151は、P
2領域内をパージして、排出部155から排出される。P
2領域は、実質的にP
1領域と隔てられた領域となる。
【0065】
尚、P
2領域を形成する円筒部104aが、排出部155を有して構成されていない場合には、パージガス151の供給を停止するか、ごく少ない流量とすることができる。そのようにしても、P
2領域は実質的にP
1領域と隔てられた領域となる。そして、基板101をサセプタ102上に安定して載置することができる。
【0066】
次に、インヒータ120およびアウトヒータ121によって基板101を1100℃〜1200℃に加熱する。例えば、成膜温度である1150℃まで徐々に加熱する。
【0067】
放射温度計122による測定で基板101の温度が1150℃に達したことを確認した後は、徐々にサセプタ102上の基板101の回転数を上げていくようにする。そして、ガス制御部140の制御によって、ガス供給部123からシャワープレート124を介して原料ガス137をチャンバ103の内部に供給する。本実施の形態においては、原料ガス137としてトリクロロシランを用いることができ、ガス制御部140の制御によって、キャリアガス138としての水素ガスと混合した状態で、ガス供給部123からチャンバ103の内のP
1領域に導入する。
【0068】
そして、本実施の形態の成膜方法では、ガス制御部140の制御によって、ガス供給部123からP
1領域への原料ガス137の供給が開始されるとともに、ガス導入管111からP
2領域内に供給されているパージガス151の供給量を増大させるようにする。そして、パージガス151が基板101とサセプタ102の間から抜け出るようにすることによって、基板101の少なくとも一部がサセプタ102から浮くようにし、その状態で基板101を回転するようにする。その結果、上述したように、基板101は、微小に上下に振動しながら高速回転する状態となる。
【0069】
尚、ガス供給部123からP
1領域への原料ガス137の供給の開始前に、ガス導入管111からP
2領域へのパージガス151の供給が停止されていた場合には、P
1領域への原料ガス137の供給の開始とともに、ガス導入管111からP
2領域へパージガス151を供給するようにする。そして、基板101の少なくとも一部がサセプタ102から浮くようにし、その状態で基板101を回転するようにする。
【0070】
チャンバ103の内部のP
1領域に導入された原料ガス137は、基板101の方に流下する。一方、基板101は、ガス制御部140の制御による円筒部104aのP
2領域へのパージガス151の供給により、上述のように、微小に上下に振動しながら高速回転をしている。
【0071】
そして、基板101の温度を1150℃に維持し、円筒部104a上のサセプタ102を900rpm以上の高速で回転させながら、ガス供給部123からシャワープレート124を介して次々に新たな原料ガス137を基板101に供給する。これにより、基板101上での気相成長が促進され、高い成膜速度で効率良くエピタキシャル膜を成膜させることができる。
【0072】
このように、原料ガス137を導入しつつサセプタ102を回転させることにより、基板101の上に均一な厚さのシリコンのエピタキシャル層を成長させることができる。例えば、パワー半導体の用途では、300mmの基板上に10μm以上、多くは10μm〜100μm程度の厚膜が形成される。厚膜を形成するには、成膜時の基板の回転数を高くするのがよく、例えば、上記のように900rpm程度の回転数とするのがよい。
【0073】
そして、本実施の形態の成膜方法では、上述したように、チャンバ103内で気相成長をさせるとき、基板101の表面のみではなく、基板101を支持しているサセプタ102の表面にも原料ガス137に起因する薄膜が形成される。
【0074】
しかしながら、本実施の形態の成膜装置100は、ガス制御部140の制御により円筒部104aのP
2領域に供給されたパージガス151を利用することができる。そして、上述のように、基板101を微小に上下に振動しながら高速回転させることができる。したがって、基板101とサセプタ102との間に原料ガス137に起因する薄膜が形成されても、基板101がサセプタ102に貼り付くことを防止することができる。
【0075】
基板101上に所定の膜厚のエピタキシャル膜を成膜した後は、インヒータ120およびアウトヒータ121による加熱を停止し、ガス供給部123からの原料ガス137の供給を終了する。キャリアガス138の供給も、原料ガス137の供給終了とともに終了することができるが、ガス制御部140の制御によって、基板101の温度が所定の値より低くなるまで供給を継続することも可能である。
【0076】
そして、原料ガス137の供給終了とともに、P
2領域内に供給されているパージガス151の供給量を増大させることも終了し、パージガス151の流量を増大される前の状態に戻すようにする。
【0077】
基板101上でのエピタキシャル膜の成膜を終了し、エピタキシャル膜の成膜された基板101が所定の温度まで降温した後、基板101はチャンバ103の外に搬出される。その場合、まず昇降ピン110を上昇させる。そして、基板101を下方側から支持した後、昇降ピン110をさらに上昇させて、サセプタ102から持ち上げて引き離すようにする。このとき、本実施の形態の成膜方法によって成膜処理された基板101では、基板101がサセプタ102に貼り付くことが防止されている。したがって、昇降ピン110は、エピタキシャル膜の成膜された基板101を容易にサセプタ102から引き離すことができ、基板101や基板101上のエピタキシャル膜を損傷させることはない。
【0078】
そして、昇降ピン110は搬送用ロボット(図示されない)に基板101を受け渡す。基板101を受け渡された搬送用ロボットは、その基板101をチャンバ103の外に搬出する。
【0079】
尚、本実施の形態の成膜方法では、上述したように、ガス制御部140の制御によって、P
2領域へのキャリアガス138の供給が開始されるとともに、P
2領域内に供給されているパージガス151の供給量を増大させるようにすることができる。しかし、パージガス151の供給量の増大は、ガス制御部140の制御によって、その前から行うように制御することも可能である。例えば、基板101を、上述したように、50rpm程度で回転させた後、インヒータ120およびアウトヒータ121によって基板101を成膜温度まで徐々に加熱するとき、パージガス151の供給量を増大させることができる。
【0080】
また、本実施の形態の成膜方法は、ガス制御部140の制御によって、例えば、ガス供給部123からP
1領域への原料ガス137の供給が開始されるとともに、ガス導入管111からP
2領域内に供給されているパージガス151の供給量を増大させるようにしている。そして、原料ガス137を供給して高温状態の基板101上でエピタキシャル膜を成膜する工程において、P
1領域への原料ガス137の供給の後、パージガス151の供給量が増大された状態を継続して維持することができる。
【0081】
しかし、本実施の形態の成膜方法では、必ずしもパージガス151の供給量が一時的に増大されるパージガス増大期間を連続する1つの期間とする必要はない。
例えば、本実施の形態の成膜方法の別の例として、原料ガス137を供給して高温状態の基板101上でエピタキシャル膜を成膜する工程において、ガス制御部140の制御によって、パージガス増大期間を不連続に複数回設けることも可能である。
【0082】
そうした本実施の形態の成膜方法の別の例では、パージガス増大期間を、パージガス151の供給量が増大前の状態に戻される期間を挟んで、複数回設けるようにすることが可能である。
【0083】
このようにしても、パージガス151の供給量が増大される間に、高温に加熱された基板101を微小に上下に振動しながら高速回転させる期間を設けることができ、基板101とサセプタ102との間に原料ガス137に起因する薄膜が形成されても、基板101がサセプタ102に貼り付くことを防止することができる。
【0084】
また、本実施の形態の成膜方法では、上述のように、高温状態の基板101を高速回転させて、基板101上にエピタキシャル膜を成膜させる場合、原料ガス137の供給を連続的に行うことが可能である。しかし、成膜速度を向上させてより効率良くエピタキシャル膜を成膜させるため、高温状態の基板101上でエピタキシャル膜を成膜する工程において、原料ガス137の供給期間を不連続とすることもできる。すなわち、高温状態の基板101上に原料ガス137を供給してエピタキシャル膜を成膜する工程において、原料ガス137の供給を一定期間停止するガス停止期間を少なくとも1回設けることも可能である。こうしたガス停止期間を設けることにより、基板101上での気相成長反応の飽和が回避され、結果として、基板101上でのより効率的なエピタキシャル膜の成膜が可能となる。
【0085】
そして、本実施の形態の成膜方法で、ガス制御部140の制御によってそうしたガス停止期間を設ける場合、上述した本実施の形態の成膜方法の別の例では、ガス停止期間中にパージガス増大期間を設けるようにすることが可能である。
【0086】
図3は、本実施の形態の成膜方法の別の例を説明するグラフである。
【0087】
図3は、本実施の形態の成膜方法の別の例において、ガス制御部140の制御によって制御され、ガス導入管111からP
2領域内に供給されるパージガス151の流量が経時的に変化する状況を示している。
【0088】
すなわち、本実施の形態の成膜方法の別の例では、高温加熱された基板101上でエピタキシャル膜を成膜する工程において、ガス制御部140の制御により、原料ガス137の供給を行うガス供給期間を不連続に複数回設けることが可能である。そして、複数のガス供給期間の間には、ガス制御部140の制御により、原料ガス137の供給を一定期間停止するガス停止期間を設けることが可能である。本実施の形態の成膜方法の別の例では、そのガス停止期間内に、ガス停止期間と同じかそれより短い期間の間、パージガス増大期間を設けることが可能である。
【0089】
このようにしても、パージガス増大期間では、高温に加熱された基板101を微小に上下に振動しながら高速に回転させることができる。したがって、基板101とサセプタ102との間に原料ガス137に起因する薄膜が形成されても、基板101がサセプタ102に貼り付くことを防止することができる。
【0090】
そして、ガス停止期間以外の、原料ガス137が供給されるガス供給期間では、パージガス151の供給量が増大されることはなく、増大前のパージガス151の供給量が維持され、基板101の微小な上下動の発生が抑えられている。したがって、本実施の形態の成膜方法の別の例では、基板101がサセプタ102に貼り付くことを防止するとともに、より安定した条件下で、より効率良く高品位のエピタキシャル膜を成膜することが可能となる。
【0091】
尚、上述したように、P
2領域を形成する円筒部104aが排出部155を有しない場合には、パージガス151の供給を停止するか、ごく少ない流量とし、P
2領域を実質的にP
1領域と隔てられた領域としている。その場合には、本実施の形態の成膜方法のさらに別の例として、ガス停止期間中にパージガス151の供給を開始し、パージガス151を供給するパージガス供給期間を設けるようにすることが可能である。
【0092】
図4は、本実施の形態の成膜方法のさらに別の例を説明するグラフである。
【0093】
図4は、ガス制御部140によって制御され、P
2領域内にパージガス151が供給されるパージガス供給期間が不連続に設けられ、P
2領域内に供給されるパージガス151の流量が経時的に変化する状況を示している。
【0094】
すなわち、本実施の形態の成膜方法のさらに別の例では、高温加熱された基板101上でエピタキシャル膜を成膜する工程において、ガス制御部140の制御により、原料ガス137の供給を行うガス供給期間を不連続に複数回設けることが可能である。そして、複数のガス供給期間の間には、ガス制御部140の制御により、原料ガス137の供給を一定期間停止するガス停止期間を設けることが可能である。本実施の形態の成膜方法のさらに別の例では、そのガス停止期間内に、ガス停止期間と同じかそれより短い期間の間、一時的にパージガス151をP
2領域に供給するパージガス供給期間を設けることが可能である。
【0095】
このようにしても、パージガス151が供給されるパージガス供給期間では、高温に加熱された基板101を微小に上下に振動しながら高速回転させることができる。したがって、基板101とサセプタ102との間に原料ガス137に起因する薄膜が形成されても、基板101がサセプタ102に貼り付くことを防止することができる。
【0096】
そして、ガス停止期間以外の、原料ガス137が供給されるガス供給期間では、パージガス151が供給されることはなく、基板101の微小な上下動の発生が抑えられている。したがって、本実施の形態の成膜方法のさらに別の例では、基板101がサセプタ102に貼り付くことを防止するとともに、より安定した条件下で、より効率良く高品位のエピタキシャル膜を成膜することが可能となる。
【0097】
尚、本発明は上記各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々変形して実施することができる。
【0098】
例えば、上記各実施の形態では、成膜装置の一例としてエピタキシャル膜の成膜装置を挙げたが、本発明はこれに限られるものではない。
成膜室内に原料ガスを供給し、
成膜室内に載置される半導体基板を加熱して半導体基板の表面に膜を形成する成膜装置であれば、CVD装置等の他の成膜装置であってもよい。