(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記真空槽内には、前記ターゲットを二個一組有するターゲット装置が複数設けられ、一の前記ターゲット装置内の二個の前記ターゲット間に電圧が印加されて交互にスパッタリングされるように構成された請求項1記載のスパッタリング装置であって、
各前記ターゲット装置内では、二個一組のうち一方の前記ターゲットの近くに、前記光ファイバの前記端面と前記導入孔とが前記ターゲット装置毎にそれぞれ設けられ、
各ターゲット装置内の前記光ファイバの前記端面は、近い方の前記ターゲットの裏面の前記磁石装置と相対的に静止して、前記移動装置により、近い方の前記ターゲットに対して相対的に移動するように構成されたスパッタリング装置。
前記光ファイバの前記端面には集光装置が設けられ、前記集光装置で集光された前記発光光が、前記端面から前記光ファイバ内に入光されるように構成され、前記集光装置は、前記移動装置により、前記ターゲットに対して、前記光ファイバの前記端面と前記磁石装置と共に一緒に相対移動するように構成された請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載のスパッタリング装置。
前記制御装置は、前記光ファイバから送光された前記発光光のうち、予め設定された波長の光を抽出して、抽出された光の光強度を測定するように構成された請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載のスパッタリング装置。
真空槽内にスパッタリングガスと反応性ガスを導入し、ターゲットの裏面に配置された磁石装置を移動させながら前記ターゲットに電圧を印加して前記ターゲットをスパッタリングし、
前記ターゲット表面に形成されるプラズマの発光光を集光装置によって集光し、光ファイバの端面から内部に入光させ、前記発光光に前記光ファイバの内部を通過させ、通過した前記発光光を前記真空槽の外部に配置された制御装置に入光させて複数回光強度を測定し、測定結果から導入する前記反応性ガスの流量を増減させる際に、
前記反応性ガスの流量を増減させる複数回の前記光強度の値は、前記磁石装置の移動に伴って移動する前記プラズマに対して同じ距離で集光した前記発光光から求め、
前記真空槽内に位置する成膜対象物の表面に前記ターゲットの構成材料と前記反応性ガスとが反応した反応生成物の薄膜を形成するスパッタリング方法。
前記集光装置と前記光ファイバの前記端面とを、前記磁石装置に対して相対的に静止させ、前記集光装置と前記光ファイバの前記端面と前記磁石装置とを、前記ターゲットに対して相対的に移動させながら前記光強度を測定する請求項8記載のスパッタリング方法。
前記ターゲットを二個一組有するターゲット装置を複数設け、一の前記ターゲット装置内の二個の前記ターゲット間に電圧を印加して交互にスパッタリングする請求項8記載のスパッタリング方法であって、
各前記ターゲット装置内では、二個一組のうち一方の前記ターゲットの近くに、前記光ファイバの前記端面と前記導入孔とが前記ターゲット装置毎にそれぞれ配置され、
各前記ターゲット装置内では、二個一組のうち一方の前記ターゲットの近くに、前記光ファイバの前記端面と前記導入孔とが前記ターゲット装置毎にそれぞれ設けられ、
各ターゲット装置内の前記光ファイバの前記端面と前記導入孔とは、近い方の前記ターゲットの裏面の前記磁石装置と相対的に静止させながら、近い方の前記ターゲットに対して相対的に移動させるスパッタリング方法。
前記光ファイバの前記端面には集光装置が設けられ、前記集光装置で集光された前記発光光が、前記端面から前記光ファイバ内に入光されるように構成され、前記集光装置は、前記移動装置により、前記ターゲットに対して、前記光ファイバの前記端面と前記磁石装置と共に一緒に相対移動させる請求項8乃至請求項11のいずれか1項記載のスパッタリング方法。
前記光ファイバから送光された前記発光光から、予め設定された波長の光を抽出して、抽出された光の光強度を測定するように構成された請求項8乃至請求項12のいずれか1項記載のスパッタリング方法。
【背景技術】
【0002】
金属化合物から成る絶縁性薄膜をスパッタリングで形成する方法には、金属化合物のターゲットをスパッタリングする方法と、金属ターゲットを反応性ガスを含んだ雰囲気でスパッタリングする方法がある。
【0003】
反応性ガスを用いるスパッタリング方法では、反応性ガスが少ない方がスパッタリング速度が速くなるが、少なくなりすぎると、絶縁性薄膜ではなく、導電性を有する導電性薄膜が形成されてしまう。
【0004】
絶縁性薄膜が形成されるときは、ターゲットに印加できる電圧(スパッタリング電圧)が低くなり、導電性薄膜が形成されるときにはスパッタリング電圧が高くなる。
印加電圧の大小から、成膜速度は、絶縁性薄膜の方が遅く、導電性薄膜の方が速いという結果になる。
そこで、成膜条件を見直し、絶縁性薄膜の成膜速度を、導電性薄膜の成膜速度に近づける試みが成されている。この一例が特許文献1に記載されている。
【0005】
図3の符号102は、電圧を検出してスパッタリング雰囲気中の反応性ガス分圧(導入量)を制御する従来技術のスパッタリング装置であり、真空槽111内部に二個の金属ターゲット115が配置されている。
【0006】
真空槽111には真空排気系112と、スパッタリングガス導入系121と、反応性ガス導入系124が接続されており、真空槽111の内部を真空排気系112によって真空排気し、真空雰囲気が形成された後、スパッタリングガスと反応性ガスとを真空槽111内に導入する。
【0007】
ターゲット115間に交流電圧を印加して交互にスパッタリングすると、ターゲット115上に配置された基板113表面には、ターゲット115を構成する金属と、反応性ガスとが反応した絶縁性薄膜が形成される。
【0008】
このターゲット115の裏面にはマグネトロン磁石130がそれぞれ配置されており、
図2(a)は、ターゲット115(金属シリコン)とマグネトロン磁石130が静止しているときの、スパッタリング電圧を測定し、測定値と設定電圧とを比較して反応性ガス(O
2)の導入量を制御したときの、電圧値と導入量の時間変化を示すグラフであり、50秒付近で制御を開始し、60秒付近でスパッタリング電圧が設定電圧になり、安定したスパッタリングが行われている。
【0009】
しかし、マグネトロン磁石130がターゲット115に対して静止しているため、ターゲット115のスパッタリングされる領域が狭く、ターゲット115の使用効率が低下し、また、異常放電やターゲット割れが生じる。
【0010】
そこで、ターゲット115のスパッタリングされる領域を広くして、ターゲット115を有効活用するために、スパッタリング装置102には、スパッタリング中は、マグネトロン磁石130をターゲット115に対して往復移動させる移動装置140が設けられており、ターゲット115表面の磁界がマグネトロン磁石130の移動に伴って移動するようにされている。
【0011】
このスパッタリング方法では、マグネトロン磁石130の移動に伴ってスパッタリング電圧が変動するため、スパッタリング電圧を検出し、反応性ガスの導入量を制御しようとすると、
図2(b)に示すように、導入量とスパッタリング電圧とが発振してしまい、安定したスパッタリングを行えなくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、遷移領域内で安定して成膜することができるスパッタリング装置と、スパッタリング方法とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
電圧の範囲と反応性ガス分圧の範囲とから成るスパッタリング条件のうち、絶縁性薄膜が形成されるときのスパッタリングを反応領域のスパッタリングと呼び、導電性薄膜が形成されるときを金属領域のスパッタリングと呼ぶと、その領域の中間のスパッタリング条件でもターゲットをスパッタリングすることができることが知られている。
この中間の条件でのスパッタリングは、一般に、遷移領域でのスパッタリングと呼ばれており、遷移領域のスパッタリングで形成される薄膜は、絶縁性薄膜になることが分かっている。
遷移領域では、反応領域よりもスパッタリング電圧が高くなることから、スパッタリング速度が反応領域よりも速く絶縁性薄膜を遷移領域のスパッタリングによって形成することが望まれている。
しかし、遷移領域の反応性ガスの分圧範囲は狭く、その範囲をはずれると、スパッタリング中に遷移領域から金属領域や反応領域に移行してしまう。
また、金属領域と反応領域とでは、反応性ガスが増加するとスパッタリング電圧は小さくなり、減少すると大きくなるが、遷移領域では逆に、反応性ガスが増加するとスパッタリング電圧は大きくなり、減少すると小さくなるので、金属領域と反応領域とで用いられる制御方法では、遷移領域で安定してスパッタリングすることができない。
従って、遷移領域でスパッタリングを行うためには、スパッタリング電圧と電流(又は電力)や、スパッタリング雰囲気中の反応性ガス分圧を精密に制御する必要がある。
しかしながら、工業生産では、ターゲットの使用効率を向上させるために、ターゲットとマグネトロン磁石とを相対的に移動させるスパッタリング方法が主流であり、マグネトロン磁石がターゲットの中央の真裏に位置するときと、ターゲットの縁付近に位置するときとでは、スパッタリング電圧が異なってしまい(縁に位置したときの方がスパッタリング電圧は大きい)、電圧を検出して反応性ガスの分圧を制御することはできない。
また、真空槽中に二個のターゲットを配置し、交互に電圧を印加してスパッタリングを行う方法では、電圧変動を伴うため、電圧検出による反応性ガス分圧の制御も困難である。
図4は、横軸をスパッタリング雰囲気中の反応性ガス分圧、縦軸を放電電圧(スパッタリング電圧)としたときの、反応性ガス分圧と放電電圧(スパッタリング電圧)との関係を示すグラフであり、符号L
1、L
2は、それぞれ金属領域での関係と反応領域での関係を示している。
金属領域のスパッタリングでは、限界を超えて反応性ガス分圧が大きくなると反応領域に移行し、反応領域のスパッタリングでも、限界を超えて反応性ガス分圧が小さくなると、金属領域に移行しており、移行するときの反応性ガス分圧と放電電圧(スパッタリング電圧)との関係は、遷移領域中の関係として、
図4の符号Mに示されている。
本発明は、ターゲットの構成材料と反応性ガスとが反応した反応生成物の薄膜を遷移領域内で安定して形成するスパッタリング装置とスパッタリング方法である。
【0015】
本発明は、真空槽と、前記真空槽内に配置されるターゲットの表面に磁界を形成する磁石装置と、反応性ガスの流量を制御する流量制御装置と、前記流量制御装置によって流量が制御された前記反応性ガスを前記真空槽内に導入させる導入孔と、前記ターゲットの表面に形成されたプラズマの発光光が端面に入光され、前記発光光を前記真空槽の外部に通過させる光ファイバと、前記真空槽外に配置され、前記光ファイバから送光された前記発光光を受光し、前記発光光の光強度から前記流量制御装置を制御して前記反応性ガスの前記導入孔からの流量を増減させる制御装置と、前記磁石装置と前記光ファイバの端面とを相対的に静止させた状態で、前記磁石装置と前記光ファイバの前記端面とを、前記ターゲットに対して相対的に移動させる移動装置とを有し、前記真空槽内に位置する成膜対象物の表面に前記ターゲットの構成材料と前記反応性ガスとが反応した反応生成物の薄膜を形成するスパッタリング装置である。
本発明は、前記真空槽の内部には、同じ物質の前記ターゲットが複数配置され、前記光ファイバの前記端面と、前記導入孔とが、対応した前記ターゲットに近く、他のターゲットからは遠い位置に、前記ターゲット毎にそれぞれ配置され、前記導入孔はそれぞれ前記流量制御装置に接続され、個別に流量制御された前記反応性ガスが各前記導入孔から導入されるように構成され、前記光ファイバの前記端面に前記発光光が入光されて、前記ターゲット毎に前記光強度が測定され、前記光強度から、前記光強度を測定した前記ターゲットに対応する前記導入孔から導入される前記反応性ガスが増減されるスパッタリング装置であって、前記光ファイバの前記端面は、対応する前記ターゲットの裏面に配置された前記磁石装置に対して相対的に静止した状態で、前記移動装置により、対応する前記ターゲットに対して相対的に移動されるように構成されたスパッタリング装置である。
本発明は、前記真空槽内には、前記ターゲットを二個一組有するターゲット装置が複数設けられ、一の前記ターゲット装置内の二個の前記ターゲット間に電圧が印加されて交互にスパッタリングされるように構成されたスパッタリング装置であって、各前記ターゲット装置内では、二個一組のうち一方の前記ターゲットの近くに、前記光ファイバの前記端面と前記導入孔とが前記ターゲット装置毎にそれぞれ設けられ、各ターゲット装置内の前記光ファイバの前記端面は、近い方の前記ターゲットの裏面の前記磁石装置と相対的に静止して、前記移動装置により、近い方の前記ターゲットに対して相対的に移動するように構成されたスパッタリング装置である。
本発明はスパッタリング装置であって、前記光ファイバの前記端面には集光装置が設けられ、前記集光装置で集光された前記発光光が、前記端面から前記光ファイバ内に入光されるように構成され、前記集光装置は、前記移動装置により、前記ターゲットに対して、前記光ファイバの前記端面と前記磁石装置と共に一緒に相対移動するように構成されたスパッタリング装置である。
本発明はスパッタリング装置であって、前記制御装置は、前記光ファイバから送光された前記発光光のうち、予め設定された波長の光を抽出して、抽出された光の光強度を測定するように構成されたスパッタリング装置である。
本発明はスパッタリング装置であって、前記制御装置は、測定した前記発光光の光強度が小さくなると前記反応性ガスの前記流量を減少させて前記ターゲット表面の前記反応性ガスの分圧を小さくし、前記光強度を増加させ、測定した前記発光光の光強度が大きくなると前記流量を増加させて前記ターゲット表面の前記反応性ガスの分圧を大きくし、前記光強度を減少させるように構成されたスパッタリング装置である。
本発明はスパッタリング装置であって、前記ターゲットは、シリコンで構成され、前記反応性ガスは、酸素ガスを含有するスパッタリング装置である。
本発明は、真空槽内にスパッタリングガスと反応性ガスを導入し、ターゲットの裏面に配置された磁石装置を移動させながら前記ターゲットに電圧を印加して前記ターゲットをスパッタリングし、前記ターゲット表面に形成されるプラズマの発光光を集光装置によって集光し、光ファイバの端面から内部に入光させ、前記発光光に前記光ファイバの内部を通過させ、通過した前記発光光を前記真空槽の外部に配置された制御装置に入光させて複数回光強度を測定し、測定結果から導入する前記反応性ガスの流量を増減させる際に、前記反応性ガスの流量を増減させる複数回の前記光強度の値は、前記磁石装置の移動に伴って移動する前記プラズマに対して同じ距離で集光した前記発光光から求め、前記真空槽内に位置する成膜対象物の表面に前記ターゲットの構成材料と前記反応性ガスとが反応した反応生成物の薄膜を形成するスパッタリング方法である。
本発明はスパッタリング方法であって、前記集光装置と前記光ファイバの前記端面とを、前記磁石装置に対して相対的に静止させ、前記集光装置と前記光ファイバの前記端面と前記磁石装置とを、前記ターゲットに対して相対的に移動させながら前記光強度を測定するスパッタリング方法である。
本発明は、前記真空槽の内部には、同じ物質の前記ターゲットを複数配置し、前記光ファイバの前記端面と、導入孔とを、対応した前記ターゲットに近く、他のターゲットからは遠い位置に、前記ターゲット毎にそれぞれ配置し、前記導入孔はそれぞれ流量制御装置に接続し、個別に流量制御された前記反応性ガスが各前記導入孔から導入されるようにし、前記光ファイバの前記端面に前記発光光が入光されて、前記ターゲット毎に前記光強度を測定し、前記光強度から、前記光強度を測定した前記ターゲットに対応する前記導入孔から導入させる前記反応性ガスを増減させるスパッタリング方法であって、前記光ファイバの前記端面は、対応する前記ターゲットの裏面に配置された前記磁石装置に対して相対的に静止させ、対応する前記ターゲットに対して相対的に移動するように構成されたスパッタリング方法である。
本発明は、前記ターゲットを二個一組有するターゲット装置を複数設け、一の前記ターゲット装置内の二個の前記ターゲット間に電圧を印加して交互にスパッタリングするスパッタリング方法であって、各前記ターゲット装置内では、二個一組のうち一方の前記ターゲットの近くに、前記光ファイバの前記端面と前記導入孔とが前記ターゲット装置毎にそれぞれ配置され、各前記ターゲット装置内では、二個一組のうち一方の前記ターゲットの近くに、前記光ファイバの前記端面と前記導入孔とが前記ターゲット装置毎にそれぞれ設けられ、各ターゲット装置内の前記光ファイバの前記端面と前記導入孔とは、近い方の前記ターゲットの裏面の前記磁石装置と相対的に静止させながら、近い方の前記ターゲットに対して相対的に移動させるスパッタリング方法である。
本発明はスパッタリング方法であって、前記光ファイバの前記端面には集光装置が設けられ、前記集光装置で集光された前記発光光が、前記端面から前記光ファイバ内に入光されるように構成され、前記集光装置は、前記移動装置により、前記ターゲットに対して、前記光ファイバの前記端面と前記磁石装置と共に一緒に相対移動させるスパッタリング方法である。
本発明はスパッタリング方法であって、前記光ファイバから送光された前記発光光から、予め設定された波長の光を抽出して、抽出された光の光強度を測定するように構成されたスパッタリング方法である。
本発明はスパッタリング方法であって、測定した前記発光光の光強度が小さくなると前記反応性ガスの前記流量を減少させて前記ターゲット表面の前記反応性ガスの分圧を小さくし、前記光強度を増加させ、測定した前記発光光の光強度が大きくなると前記流量を増加させて前記ターゲット表面の前記反応性ガスの分圧を大きくし、前記光強度を減少させるスパッタリング方法である。
本発明はスパッタリング方法であって、前記ターゲットは、シリコンで構成され、前記反応性ガスは、酸素ガスを含有するスパッタリング方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、反応領域で形成される薄膜と同じ組成の薄膜を形成するときに、遷移領域で安定してスパッタリングできるので、反応領域より成膜速度を速くすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1の符号2は、本発明の一例のスパッタリング装置を示している。
このスパッタリング装置2は、真空槽11と、真空槽11内に配置されたターゲット装置18とを有している。
【0019】
ターゲット装置18は、スパッタリング材料で構成された第一、第二のターゲット15a、15bを有している。
第一、第二のターゲット15a、15bは、ここでは細長の板状に構成されており、第一、第二のターゲット15a、15bがターゲット装置18内の同一平面内に、第一、第二のターゲット15a、15bの長手方向を互いに平行にした状態で互いに離間して配置されている。
【0020】
第一、第二のターゲット15a、15bは、金属ターゲット、合金ターゲット、又はその他の導電性のターゲットであり、ここではシリコンで構成されており、シリコン酸化物の絶縁性薄膜を形成する。
【0021】
真空槽11内の、第一、第二のターゲット15a、15bの表面と対面する位置には、基板ホルダ14が配置され、基板ホルダ14は、成膜対象物である基板13を、基板13表面を第一、第二のターゲット15a、15bの表面と対面させた状態で保持できるように構成されている。基板ホルダ14に基板13を保持させると、一の基板13表面が第一、第二のターゲット15a、15bの両方の表面に一緒に対面する。
【0022】
第一、第二のターゲット15a、15bの裏面には、第一、第二のバッキングプレート16a、16bがそれぞれ配置され、第一、第二のターゲット15a、15bは第一、第二のバッキングプレート16a、16bにそれぞれ密着して取り付けられている。
【0023】
真空槽11の外部には電源17が配置されており、第一、第二のバッキングプレート16a、16bは電源17に電気的に接続されている。
電源17は、ここでは交流電源であり、電源17を動作させると、第一、第二のバッキングプレート16a、16bを介して第一、第二のターゲット15a、15b間に交流電圧が印加され、第一、第二のターゲット15a、15bのうち、一方が正電位又は接地電位に置かれ、他方が負電位に置かれるようにされている。なお、真空槽11は接地されている。
【0024】
第一のターゲット15aの裏面側には第一の磁石装置30aが配置され、第二のターゲット15bの裏面側には第二の磁石装置30bが配置されている。
第一、第二の磁石装置30a、30bは、二個の磁石31a、31b、32a、32bをそれぞれ有している。符号33a、33bはヨークである。
【0025】
二個の磁石31a、31b、32a、32bは、二個の磁石31a、31b、32a、32bの磁極のうち、互いに異なる磁性の磁極が第一、第二のターゲット15a、15bの裏面にそれぞれ向けられており、第一、第二のターゲット15a、15bの表面上に湾曲した磁界がそれぞれ形成される。
【0026】
第一、第二の磁石装置30a、30bには、移動装置40が取り付けられており、移動装置40は、第一、第二のターゲット15a、15bの裏面側で、第一、第二の磁石装置30a、30bを移動させるように構成されている。
移動装置40を動作させると、第一、第二の磁石装置30a、30bは、第一、第二のターゲット15a、15bに対して一緒に、又は別々に相対的に移動する。
【0027】
第一、第二のターゲット15a、15bの表面上の湾曲により、第一、第二のターゲット15a、15bの表面にスパッタリングされやすい位置とされにくい位置とが生じており、第一、第二の磁石装置30aがターゲット15a、15bに対して移動すると、第一、第二のターゲット15a、15bの表面上の湾曲した磁界は第一、第二の磁石装置30a、30bと一緒にそれぞれ移動し、スパッタリングされやすい位置とされにくい位置とが第一、第二のターゲット15a、15bの表面上をそれぞれ移動し、第一、第二のターゲット15a、15bの表面のエロージョン領域は拡大する。
【0028】
なお、第一、第二の磁石装置30a、30bが第一、第二のターゲット15a、15bに対して相対移動すればエロージョン領域は拡大するので、第一、第二の磁石装置30a、30bを静止させて、第一、第二のターゲット15a、15bを移動させても良い。また、第一、第二の磁石装置30a、30bと、第一、第二のターゲット15a、15bの両方を移動させる場合であっても、第一、第二の磁石装置30a、30bと、第一、第二のターゲット15a、15bとを異なる速度にして、第一、第二の磁石装置30a、30bと、第一、第二のターゲット15a、15bとを相対移動させれば、第一、第二のターゲット15a、15b表面のエロージョン領域は拡大する。
【0029】
次に、スパッタリング装置2は、反応性ガスを導入する第一、第二の導入部材25a、25bを有している。
第一の導入部材25aには第一の導入孔26aが設けられ、第二の導入部材25bには第二の導入孔26bが設けられており、第一の導入孔26aは、真空槽11内の、第二のターゲット15bの表面よりも第一のターゲット15aの表面に近い位置に配置され、第二の導入孔26bは、真空槽11内の、第一のターゲット15aの表面よりも第二のターゲット15bの表面に近い位置に配置されていて、第一、第二の導入孔26a、26bは、近接配置された方の第一又第二のターゲット15a、15bの表面上にそれぞれ向けられている。
【0030】
真空槽11の壁面には第一、第二の配管27a、27bが気密に挿通されており、第一の配管27aには第一の導入部材25aが接続され、第二の配管27bには第二の導入部材25bが接続されており、第一、第二の配管27a、27bには、真空槽11の外部に配置された後述する第一、第二の流量制御装置24a、24bがそれぞれ取り付けられている。
真空槽11の外部には、内部に反応性ガス(ここでは酸素ガス)が配置された反応性ガス源23が配置されており、反応性ガス源23は、第一、第二の配管27a、27bに接続されている。
【0031】
反応性ガス源23内の反応性ガスは、第一、第二の配管27a、27b内を流れて第一、第二の導入部材25a、25bに供給されており、第一、第二の流量制御装置24a、24bの内部を通過する際に流量制御され、第一、第二の導入孔26a、26bから、真空雰囲気にされた真空槽11内に放出される。
【0032】
第一の導入孔26aから放出された反応性ガスは第一のターゲット15aの表面付近に導入され、第二の導入孔26bから放出された反応性ガスは第二のターゲット15bの表面付近に導入される。
【0033】
真空槽11の外部には、スパッタリングガス導入系21が配置され、真空槽11の壁面には、スパッタリングガス導入系21に接続された導入孔28が設けられており、スパッタリングガス導入系21内に配置されたスパッタリングガスが導入孔28から真空槽11内に導入されるように構成されている。
【0034】
第一、第二のターゲット15a、15bの間に交流電圧が印加されると、第一、第二のターゲット15a、15bのうち、一方が正電位又は接地電位に置かれてアノード電極として働き、他方が負電位に置かれてカソード電極として働くので、真空槽11内が真空排気されながら、真空槽11内にスパッタリングガスと反応性ガスとが導入されている状態で、第一、第二のターゲット15a、15bの間に交流電圧が印加されると、第一、第二のターゲット15a、15bの表面上に、反応性ガスとスパッタリングガスの混合ガスのプラズマである第一、第二のプラズマが形成され、第一、第二のターゲット15a、15bは交互にスパッタリングされる。第一、第二のプラズマは発光する。
【0035】
なお、電源17が出力する交流電圧の周波数は数十kHzにされており、交流電圧が印加されている間は、第一、第二のプラズマは消滅しないようになっており、第一、第二のプラズマは継続して発光する。
【0036】
スパッタリング装置2は、プラズマ発光光を集光する第一、第二の集光装置51a、51bと、集光した光を送光する第一、第二の光ファイバ57a、57bとを有している。
第一、第二の光ファイバ57a、57bは、真空槽11の壁面に気密に挿通されている。
【0037】
第一の光ファイバ57aの一端は第一の集光装置51aに接続され、その一端の端面58aは、第一の集光装置51aの内部で露出されており、第二の光ファイバ57bの一端は第二の集光装置51bに接続され、その一端の端面58bは第二の集光装置51b内部で露出されている。
第一、第二の光ファイバ57a、57bの他端は真空槽11の外部に位置しており、後述する制御装置56に接続されている。
【0038】
ここでは、第一の集光装置51aは、第二のターゲット15bの表面よりも第一のターゲット15aの表面に近い真空槽11内の位置に配置され、第二の集光装置51bは、第一のターゲット15a表面よりも第二のターゲット15b表面に近い真空槽11内の位置に配置されている。
【0039】
第一、第二の集光装置51a、51bは第一、第二の取込面50a、50bをそれぞれ有しており、第一、第二の取込面50a、50bは、近接配置された方の第一又は第二のターゲット15a、15bの表面上に向けられていて、第一のターゲット15aの表面上に形成された第一のプラズマの発光光は、第一の取込面50aに入射して第一の集光装置51aの内部に取り込まれるようにされており、第二のターゲット15b表面上に形成された第二のプラズマの発光光は、第二の取込面50bに入射して第二の集光装置51bの内部に取り込まれるようになっている。
【0040】
第一、第二の集光装置51a、51bの内部には、図示しないレンズが配置されており、第一、第二の取込面50a、50bから第一、第二の集光装置51a、51bの内部に取り込まれた光は、第一、第二の集光装置51a、51bの内部のレンズによって集光され、第一、第二の光ファイバ57a、57bの一端の端面58a、58bに照射される。照射された光は、端面58a、58bから第一、第二の光ファイバ57a、57bの内部に入光する。
【0041】
入光した光は、第一、第二の光ファイバ57a、57bの内部を通過し、他端の端面へ到達すると、制御装置56の内部に入光する。制御装置56は、入光した光の光強度を測定するように構成されており、制御装置56によって、第一、第二の光ファイバ57a、57bから入光した光の光強度をそれぞれ測定し、光強度を別々に求める。
【0042】
制御装置56は、第一、第二の流量制御装置24a、24bに電気的に接続されており、光強度の測定結果に基づいて生成されたガスの流量の値を示す第一、第二の信号を、第一、第二の流量制御装置24a、24bにそれぞれ出力するように構成されている。
【0043】
第一、第二の流量制御装置24a、24bは、制御装置56から入力された第一、第二の信号が示すガス流量の値を第一、第二の流量制御装置24a、24b内の不図示の記憶装置にそれぞれ記憶し、記憶された値が示す流量の反応性ガスを通過させるように構成されている。第一、第二の流量制御装置24a、24bは、制御装置56から新たな第一、第二の信号が入力されるまで、記憶された値に基づいた流量の反応性ガスを通過させ続ける。従って、制御装置56は、出力する第一、第二の信号が示す値を増加させ又は減少させることで、第一、第二の流量制御装置24a、24bの内部を通過する反応性ガスの流量を増加又は減少させることができる。
【0044】
第一、第二の流量制御装置24a、24bの内部を通過し、流量が増減された反応性ガスが、第一、第二の導入孔26a、26bから真空槽11内に放出され、第一、第二のターゲット15a、15bの表面上に導入されると、第一、第二のターゲット15a、15bの表面上の反応性ガスの濃度が増減される。
【0045】
本発明では、第一、第二の磁石装置30a、30bと同様に、第一、第二の集光装置51a、51bも移動装置40に取り付けられており、移動装置40は、第一、第二の磁石装置30a、30bと、第一、第二の集光装置51a、51bと、第一、第二の光ファイバ57a、57bの端面58a、58bとを移動させる。
【0046】
移動する際には、第一の磁石装置30aと、第一の集光装置51aと、第一の光ファイバ57aの端面58aとは、互いに相対的に静止された状態で、第一のターゲット15aに対して一緒に相対移動するようにされており、第二の磁石装置30bと、第二の集光装置51bと、第二の光ファイバ57bの端面58bとは、互いに相対的に静止された状態で、第二のターゲット15bに対して一緒に相対移動するようにされている。
【0047】
なお、移動装置40は、磁石装置用移動装置40aと集光装置用移動装置40bとを有しており、この例では、第一、第二の磁石装置30a、30bは磁石装置用移動装置40aによって移動され、第一、第二の集光装置51a、51bは集光装置用移動装置40bによって移動されるようにされており、磁石装置用移動装置40aによる移動と、集光装置用移動装置40bによる移動が同方向、同速度にされている。
【0048】
移動装置40によって第一、第二の磁石装置30a、30bを相対移動させると、第一、第二のターゲット15a、15b表面上の第一、第二のプラズマは、形状を変えずに、第一、第二の磁石装置30a、30bと一緒に、第一、第二のターゲット15a、15bの表面上で、ターゲット15a、15bに対して相対的に移動する。
【0049】
この相対移動の間、近接した第一、第二のプラズマに対する第一、第二の取込面50a、50bと第一、第二の光ファイバ57a、57bの端面58a、58bの距離と、近接した第一、第二のプラズマに対する第一、第二の取込面50a、50bと第一、第二の光ファイバ57a、57bの端面58a、58bの向きはそれぞれ一定である。このため、第一、第二の磁石装置30a、30bが相対移動する間、第一、第二の取込面50a、50bの近接した第一、第二のプラズマに対する距離と向きが変化しない。
【0050】
従って、第一、第二の磁石装置30a、30bと、第一、第二の集光装置51a、51bとの、第一、第二のターゲット15a、15bに対する相対移動によって、第一、第二の集光装置51a、51bに入射する第一、第二のプラズマの発光光の光強度変化は生じず、他の要因による第一、第二のプラズマの発光光の光強度変化を、第一、第二の磁石装置30a、30bの相対移動による影響がなく測定できる。
【0051】
次に、スパッタリング装置2を用い、基板表面に絶縁性薄膜を形成する工程を説明する。
先ず、真空槽11に接続された真空排気系12を動作させ、真空槽11内部を真空排気し、真空槽11の内部に真空雰囲気を形成する。
【0052】
次に、真空槽11の内部を真空雰囲気に維持した状態で、基板13を真空槽11の内部に搬入し、基板13を基板ホルダ14に配置し、基板13を第一、第二のターゲット15a、15bの両方の表面に一緒に対面させる。
【0053】
遷移領域でスパッタリング可能な第一、第二のターゲット15a、15bの表面上の反応性ガスの分圧と電力の範囲との関係は予めそれぞれ測定されて求められており、遷移領域内でのスパッタリングが可能な第一、第二のターゲット15a、15bの表面上の分圧の値と、第一、第二の流量制御装置24a、24bからの反応性ガスの導入量との関係も予め測定されている。
【0054】
スパッタリングを開始する際に、第一、第二のターゲット15a、15bの表面上に導入する反応性ガスの初期流量の値として、遷移領域でスパッタリング可能な反応性ガスの導入量の範囲の中から選択された値が制御装置56に記憶されており、その初期流量の値を示す信号が、第一、第二の流量制御装置24a、24bに、第一、第二の信号となってそれぞれ出力され、第一、第二の流量制御装置24a、24bに入力されて記憶される。
【0055】
第一、第二の流量制御装置24a、24bは、記憶した値の流量の反応性ガスを通過させ、第一、第二の導入孔26a、26bから第一、第二のターゲット15a、15bの表面上に導入させ、第一、第二のターゲット15a、15bの表面上の雰囲気を遷移領域でスパッタリングできる反応性ガスの分圧の雰囲気にする。
【0056】
この状態では、第一、第二のターゲット15a、15bの表面上には、遷移領域でスパッタリングできる成膜雰囲気が形成されており、第一、第二の流量制御装置24a、24bは、記憶した値が示す初期流量の反応性ガスを通過させ続ける。
【0057】
次に、移動装置40を起動し、移動装置40によって、第一、第二の磁石装置30a、30bと、第一、第二の集光装置51a、51bと、第一、第二の光ファイバ57a、57bの端面58a、58bとの、第一、第二のターゲット15a、15bに対する相対移動を開始し、相対移動を維持する。
【0058】
電源17を動作させ、第一、第二のターゲット15a、15bとの間に遷移領域でスパッタリングできる交流電圧を印加し、第一、第二のターゲット15a、15bの表面上に、スパッタリングガスと反応性ガスとの混合ガスのプラズマである第一、第二のプラズマをそれぞれ発生させると、第一、第二のターゲット15a、15bの表面上は、遷移領域で交互にスパッタリングされ、第一、第二のターゲット15a、15bと対面する一枚の基板13の表面に、第一のターゲット15aの構成材料と反応性ガスとが反応した反応生成物の薄膜と、第二のターゲット15bの構成材料と反応性ガスとが反応した反応生成物の薄膜が交互に形成される。
【0059】
薄膜が形成される際には、第一、第二のターゲット15a、15bの表面上の第一、第二のプラズマは発光し、第一のプラズマの発光光は第一の取込面50aに入射して第一の集光装置51a内に入光し、第二のプラズマの発光光は第二の取込面50bに入射して第二の集光装置51b内に入光し、入光した光は第一、第二の光ファイバ57a、57b内を通過して制御装置56に入光する。制御装置56は、上述したように、制御装置56に入光した第一、第二のプラズマの発光光の光強度をそれぞれ測定する。
【0060】
遷移領域内で第一、第二のターゲット15a、15bがスパッタリングされたときのプラズマの発光強度は予め測定されており、それら測定された光強度の中から、所望の光強度が第一、第二の基準値として採用され、それぞれ制御装置56に記憶されている。ここでは第一、第二の基準値は同じ値であるが、異なる値であってもよい。
【0061】
制御装置56は、第一のプラズマの発光光の光強度を第一の基準値と比較し、また、第二のプラズマの発光光の光強度を第二の基準値と比較し、比較結果に基づいて、第一、第二のプラズマの発光強度が第一、第二の基準値に近づく流量の値を示す第一、第二の信号を生成し、第一、第二の流量制御装置24a、24bにそれぞれ出力する。
【0062】
第一、第二の流量制御装置24a、24bは、制御装置56から第一、第二の信号が入力されると、入力された第一、第二の信号が示す流量の値を記憶装置に記憶し、記憶した値が示す流量の反応性ガスを通過させ、第一、第二の導入孔26a、26bから真空槽11内に放出させる。
【0063】
第一、第二の導入孔26a、26bから放出された反応性ガスは、第一、第二のターゲット15a、15b表面上にそれぞれ導入される。
第一、第二のターゲット15a、15b表面上への反応性ガスの導入量と、第一、第二のターゲット15a、15b表面上の反応性ガスの分圧とは1:1に対応する。第一、第二のターゲット15a、15b表面上の反応性ガスの導入量が増減すると、第一、第二のターゲット15a、15b表面上の反応性ガスの分圧も増減する。
【0064】
発光光の光強度と反応ガスの導入量の関係を説明すると、一般に、反応性スパッタリングでは、反応性ガスを導入して金属ターゲットをスパッタリングし、金属ターゲットの構成物質と反応性ガスとの反応生成物から成る薄膜を基板表面に形成するが、金属ターゲットの表面も反応生成物で覆われてしまう。
【0065】
しかし、遷移領域のスパッタリングでは、金属ターゲットの表面は、一部が反応生成物で覆われるものの、他の部分は金属ターゲットの表面が露出されており、その露出面積は、スパッタリング雰囲気の反応性ガスの分圧値と1:1の対応関係にあり、金属ターゲットの露出面積は、金属領域では大きく、反応領域では小さく、遷移領域ではその中間である。
従って、反応性ガスの分圧を制御することにより、ターゲット表面の露出面積を、遷移領域の範囲内に維持すれば、遷移領域でスパッタリングを行える条件の一つを満たすことになる。
【0066】
露出面積の大きさと、プラズマの発光強度との間にも1:1の対応関係があり、露出面積の増減は、プラズマの発光強度を測定することにより求められるので、発光強度を測定して、発光強度が一定値を維持するように反応性ガス流量を増減させれば、遷移領域でスパッタリングされる露出面積を維持できることになる。
具体的には、反応性ガスの分圧値が大きくなると露出面積は減少し、プラズマの光強度は小さくなり、分圧値が小さくなると露出面積は増加し、プラズマの光強度は大きくなる。
【0067】
制御装置56は、一定の時間間隔で第一、第二の信号を第一、第二の流量制御装置24a、24bに出力しており、ここでは、制御装置56が前回出力した第一、第二の信号の値は、スパッタリングを開始する際の反応性ガス分圧を形成するための初期値であり、第一、第二の基準値の発光強度が得られる反応性ガス分圧に対応した流量の値が選択されている。
【0068】
そして、制御装置56は、測定した第一の光強度の値を第一の基準値と比較し、測定した第二の光強度の値を第二の基準値と比較しており、測定した第一又は第二の光強度の値の方が大きいときは、プラズマの発光強度を低下させるため、前回出力した第一、第二の信号(最初は初期値)よりも大きい流量を示す第一又は第二の信号を、第一又は第二の流量制御装置24a、24bにそれぞれ出力し、逆に、測定した第一又は第二の光強度が第一又は第二の基準値よりも小さいときは、プラズマ発光を増大させるため、前回出力した第一又は第二の信号よりも小さい流量を示す第一又は第二の信号を第一又は第二の流量制御装置24a、24bに出力する。その結果、第一又は第二の光強度の値は、比較対象の第一又は第二の基準値にそれぞれ近づくようになる。
【0069】
反応性ガスの導入量が変更されたときは、導入量の変更から第一、第二のプラズマの発光光の光強度が変化するまでの間に反映時間を要するため、制御装置56は、前回に第一、第二の信号を出力した後、所定時間経過した後に測定した第一、第二の光強度の値を、第一、第二の基準値と比較する。この比較工程での比較結果に基づいて決定した流量値の第一、第二の信号を、第一、第二の流量制御装置24a、24bに出力する。この出力工程と比較工程とを繰り返し行うと、測定される光強度が一定値に維持され、間接的に露出面積が一定値に維持されるようになると、第一、第二のターゲット15a、15bの表面の露出面積が、第一、第二の基準値に対応した露出面積にそれぞれ維持されることになる。
【0070】
電源17は第一、第二のターゲット15a、15bへの出力電力がそれぞれ一定値になるように動作が設定されていて、第一、第二のターゲット15a、15b表面上の雰囲気の反応性ガスの分圧が変化すると、電源17は、出力する電流、電圧を変化させ、第一、第二のターゲット15a、15bへの出力電力がそれぞれ一定値になるように電流、電圧のいずれか一方又は両方を制御している。このため、第一、第二のターゲット15a、15bの表面を安定して遷移領域でスパッタリングすることができる。
【0071】
このように、制御装置56が、第一、第二のターゲット15a、15bの表面の露出面積の大きさを遷移状態の大きさに維持し、電源17が、出力電力を遷移領域でのスパッタリングが可能な範囲内の一定値に維持しているので、第一、第二のターゲット15a、15bの表面は安定して遷移領域でスパッタリングされており、基板13表面に、第一のターゲット15aの構成材料と反応性ガスとが反応した反応生成物の薄膜と、第二のターゲット15bの構成材料と反応性ガスとが反応した反応生成物の薄膜とが交互に積層された薄膜が交互に形成される。
【0072】
第一のターゲット15aの構成材料と反応性ガスとが反応した反応生成物の薄膜と、第二のターゲット15bの構成材料と反応性ガスとが反応した反応生成物の薄膜とが交互に積層された薄膜が形成される間には、第一、第二のターゲット15a、15bに対する第一、第二の磁石装置30a、30bの相対移動に伴って、第一、第二のターゲット15a、15bの表面上に形成された湾曲した磁界も、第一、第二の磁石装置30a、30bとそれぞれ一緒に相対移動するため、第一、第二のターゲット15a、15bの表面のエロージョン領域は拡大し、相対移動しない場合と比べて第一、第二のターゲット15a、15bの使用効率が高くなる。
【0073】
また、第一、第二の磁石装置30a、30bと第一、第二の集光装置51a、51bとは、相対的に互いに静止しながら、第一、第二のターゲット15a、15bに対して相対的に移動しており、その移動の間は、第一、第二のターゲット15a、15bの表面上の第一、第二のプラズマも、第一、第二の磁石装置30a、30bと第一、第二の集光装置51a、51bと一緒に、第一、第二のターゲット15a、15bに対して相対的に移動する。そのため、制御装置56が第一、第二の信号を生成して出力するのに用いられる第一、第二の光強度の値を測定するときは、第一、第二のプラズマと、第一、第二の集光装置51a、51bとが同じ距離で、かつ、第一、第二のプラズマと、第一、第二の集光装置51a、51bとが同じ向きで測定できるから、第一、第二のプラズマが第一、第二のターゲット15a、15b表面上を移動しても、その影響を受けずに第一、第二の光強度を測定することができる。
【0074】
なお、上記実施例では、反応性ガスの流量が変更された後、発光光の強度が変化する迄の間も、第一の磁石装置30aと、第一の集光装置51aと、第一の光ファイバ57aの端面58aとは、互いに相対的に静止された状態で第一のターゲット15aに対して一緒に相対移動しており、また、第二の磁石装置30bと、第二の集光装置51bと、第二の光ファイバ57bの端面58bとも、互いに相対的に静止された状態で、第二のターゲット15bに対して一緒に相対移動していたが、発光強度の測定値が流量変更に用いられないときは相対的に静止していなくても、測定値が流量変更に用いられるときに、相対的に静止していたときの相対的な位置や向きに復帰した後、第一、第二のプラズマの発光光の発光強度を測定し、その測定値で流量制御を行えばよい。
【0075】
その際、第一、第二の集光装置51a、51bを設けずに、第一、第二の光ファイバ57a、57bの端面58a、58bに第一、第二のプラズマの発光光を入光させている場合は、第一、第二の磁石装置30a、30bに対する端面58a、58bの位置と向きを、相対的に静止されていたときの位置と向きに復帰させる。
【0076】
いずれにしろ、基板13の表面に、所定膜厚の薄膜が形成されると、電源17と移動装置40の動作と、スパッタリングガスと反応性ガスの導入とを停止して、薄膜形成を終了し、真空槽11内を真空雰囲気を維持しながら基板13を真空槽11外に搬出する。
【0077】
次に、未成膜の基板13を真空槽11内に搬入し、搬入した基板13を基板ホルダ14に配置して、第一のターゲット15aの構成材料と反応性ガスとが反応した反応生成物の薄膜と、第二のターゲット15bの構成材料と反応性ガスとが反応した反応生成物の薄膜とが交互に積層された薄膜を形成する。
上記例では、遷移領域内でスパッタリングを開始したが、遷移領域でない領域からスパッタリングを開始した後、発光強度を測定して流量を制御し、遷移領域に移行させた後、基板表面への薄膜形成を開始させてもよい。
【0078】
上記例では、第一、第二のターゲット15a、15bが真空槽11に対して静止していたが、第一、第二の磁石装置30a、30bと、第一、第二の集光装置51a、51bと、第一、第二の光ファイバ57a、57bの端面58a、58bとを真空槽11に対して静止させ、第一、第二のターゲット15a、15bを真空槽11に対して移動させることにより、第一、第二のターゲット15a、15bに対して、第一、第二の磁石装置30a、30bと、第一、第二の集光装置51a、51bと、第一、第二の光ファイバ57a、57bの端面58a、58bとを相対的に移動させる発明も、本発明に含まれる。
【0079】
また、上記例では、第一、第二のターゲット15a、15bはシリコンで構成され、二酸化シリコン等のシリコン酸化物から成る絶縁性薄膜を形成していたが、第一、第二のターゲット15a、15bはシリコンに限らず、Sn、Ta、Ti、Al、Nb等で構成し、それらと反応性ガスとから、絶縁性薄膜を形成してもよいし、これらのうちの二種類以上の金属でなる合金でターゲットを構成して絶縁性薄膜を形成しても良い。
【0080】
また、上記例では、反応性ガスに酸素ガスを用いたが、反応性ガスには、酸素ガスに限らず窒素ガスや、一酸化窒素、二酸化窒素、一酸化二窒素等を用いることもできるし、他にも第一、第二のターゲット15a、15bの構成材料と反応し、絶縁物を生成するガスを広く用いることができる。
【0081】
また、上記例では、第一、第二の集光装置51a、51bは真空槽11の内部に配置されているが、真空槽11の壁面に透明な窓を設け、第一、第二の集光装置を真空槽11の外部に配置して、第一、第二のプラズマの発光光に窓を透過させ、第一、第二の集光装置に入光させる構成の発明も含まれる。
【0082】
また、上記例では、長手方向が互いに平行に配置された二個の長方形のターゲット15a、15bを有する一台のターゲット装置18が真空槽11内に配置されていたが、本発明には、真空槽11内に複数のターゲット装置18が配置されたスパッタリング装置も含まれる。例えば、構成が同じターゲット装置18を、各ターゲット装置18のターゲット15a、15bが一直線上に、互いに平行になるように並べられたスパッタリング装置も本発明に含まれる。このスパッタリング装置は、上記スパッタリング装置2よりも大面積の一枚の基板の表面が、三個以上の第一又は第二のターゲット15a、15bの表面に同時に対面できるので、ターゲット装置18が一台の場合よりも、大面積の基板に成膜することが出来る。
【0083】
上記例では、第一、第二のターゲット15a、15bの表面上の反応性ガスの分圧を別々に制御するため、第一、第二のプラズマの発光光を別々に集光して測定していたが、第一、第二のターゲット15a、15bが近接配置されていて、第一、第二のターゲット15a、15bの表面の分圧に差が無く、第一、第二のターゲット15a、15bの表面のうちの一方の分圧値を制御すると他方も同じ分圧値にされる場合は、第一、第二のターゲット15a、15bのうち、一方のターゲット上のプラズマの発光強度を、上記実施例と同じ手順で測定し、測定結果と基準値とを比較して、第一、第二のターゲット15a、15bの表面上にそれぞれ供給される反応性ガスの分圧値を同じ値に変更するようにしてもよく、その場合は、他方のターゲット上のプラズマ発光の発光光の強度は測定しないで済む。
【0084】
上記例では、電源17によって第一、第二のターゲット15a、15bの間に交流電圧を印加して、第一、第二のターゲット15a、15bの表面を交互にスパッタリングしたが、本発明のターゲットには、第一、第二のターゲット15a、15bと接地電位との間に交流電圧が印加されるスパッタリング装置も含まれる。このような交流電圧が印加されるターゲット装置は、一個又は複数個が真空槽11内に配置され、各ターゲット装置の第一、第二のターゲット15a、15bが、同一平面内に配置されていても良い。
【0085】
上記例では、基板13を基板ホルダ14に配置し、基板13を第一、第二のターゲット15a、15bに対して静止させているが、第一、第二のターゲット15a、15bに対して基板を移動させ、移動させながら、第一、第二のターゲット15a、15bに対して対面させて基板表面に絶縁性薄膜を形成してもよい。
【0086】
なお、上記実施例のスパッタリング装置2では、特定波長の光を透過させる第一、第二の光抽出装置54a、54bと第一、第二の受光装置55a、55bとが制御装置56に設けられており、第一、第二の光ファイバ57a、57bから制御装置56内に入光した第一、第二のプラズマの発光光は、第一、第二の光抽出装置54a、54bに照射され、第一、第二の発光光中の特定波長の光が第一、第二の光抽出装置54a、54bを透過して第一、第二の受光装置55a、55bによって受光されて、透過した光の光強度が測定されるようになっている。
【0087】
また、制御装置56の内部には、計算装置53が設けられており、第一、第二の受光装置55a、55bがそれぞれ受光した光(特定波長の場合を含む)の光強度を検出すると、計算装置53は、第一、第二の受光装置55a、55bの検出結果を、第一、第二の光強度として取り扱い、検出結果を記憶された第一、第二の基準値と比較するようになっている。