特許第5795002号(P5795002)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5795002
(24)【登録日】2015年8月21日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】スパッタリング方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/35 20060101AFI20150928BHJP
   H01L 21/285 20060101ALI20150928BHJP
【FI】
   C23C14/35 C
   H01L21/285 S
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-545603(P2012-545603)
(86)(22)【出願日】2011年11月14日
(86)【国際出願番号】JP2011006340
(87)【国際公開番号】WO2012070195
(87)【国際公開日】20120531
【審査請求日】2013年4月8日
(31)【優先権主張番号】特願2010-261817(P2010-261817)
(32)【優先日】2010年11月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】特許業務法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】佐野 昭文
(72)【発明者】
【氏名】小平 周司
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 恒吉
(72)【発明者】
【氏名】濱口 純一
(72)【発明者】
【氏名】坂本 勇太
(72)【発明者】
【氏名】沼田 幸展
(72)【発明者】
【氏名】豊田 聡
【審査官】 塩谷 領大
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/157439(WO,A1)
【文献】 特開昭63−083258(JP,A)
【文献】 特開昭61−246368(JP,A)
【文献】 特開平03−150355(JP,A)
【文献】 特開昭60−136230(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/150997(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/134346(WO,A1)
【文献】 特開2000−144404(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00−14/58
H01L 21/285
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空チャンバ内でターゲットに処理すべき基板を対向配置し、
所定真空度に達した真空チャンバ内にスパッタガスを導入し、
基板からターゲットに向かう方向を上として、ターゲットの方に設けた磁石ユニットより当該ターゲットのスパッタ面の方空間に磁場を発生させた状態でターゲットに所定の電力を投入して真空チャンバ内にプラズマを形成してこのターゲットをスパッタリングし、基板表面に所定の薄膜を成膜するスパッタリング方法において、
スパッタリング中、基板全面に亘って垂直な静磁場を作用させ、
ターゲットの侵食量に応じて前記静磁場の強度を段階的に上昇させ、前記薄膜の基板面内における膜厚分布を調節することを特徴とするスパッタリング方法。
【請求項2】
前記静磁場を真空チャンバに付設した少なくとも1個の電磁石により発生させ、ターゲットに電力投入したときの積算電力から電磁石のコイルへの通電電流を制御して前記静磁場の強度を段階的に上昇させることを特徴とする請求項1記載のスパッタリング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスやシリコンウエハ等の基板表面に所定の薄膜を成膜するためのスパッタリング方法に関し、特に、ターゲットの使用状態(侵食状態)やターゲット種に関係なく、常時、膜厚分布を一定に保持し得るものに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程において所望のデバイス構造を得る際に、処理すべき基板たるシリコンウエハに対して成膜する工程があり、このような成膜工程にはスパッタリング装置が従来から用いられている。
【0003】
上記スパッタリング装置では、真空雰囲気を形成した真空チャンバにアルゴンなど不活性ガスたるスパッタガスを導入すると共に、基板表面に形成しようとする薄膜の組成に応じて形成されたターゲットに、直流電源や高周波電源により所定の電力を投入してグロー放電させてプラズマを形成する。そして、プラズマ中で電離したアルゴンイオン等の不活性ガスのイオンをターゲットに衝突させることでターゲットからターゲットの原子、分子を放出させ、これらスパッタ粒子が基板表面に付着、堆積することで成膜される。また、ターゲットのスパッタ面と背向する側に、交互に極性を変えて複数の磁石を設けた磁石ユニットを配置し、この磁石ユニットによりターゲットの前方(スパッタ面側)にトンネル状の磁場を発生させ、ターゲットの前方で電離した電子及びスパッタリングによって生じた二次電子を捕捉することで、ターゲットの前方での電子密度を高めてプラズマ密度を高くしたものも知られている(所謂マグネトロン型)。
【0004】
このようなスパッタリング装置では、ターゲットのうち上記磁場の影響を受ける領域でターゲットが優先的にスパッタリングされて侵食されていく。例えば、上記領域が、放電の安定性やターゲットの使用効率の向上等の観点からターゲット中央付近にあると、スパッタリング時のターゲットの侵食量はその中央付近で局所的に多くなる。このため、ターゲットのスパッタリングによる成膜時間が増加するのに従い、ターゲット表面の使用状態が変化して、ターゲットのスパッタ面と基板との間の距離(以下、「T−S間距離」という)がターゲット面内で変化する。
【0005】
ここで、磁石ユニットは、通常、一定のT−S間距離の下、特定種かつ未使用状態のターゲットにて基板に対して成膜したときに、基板表面における膜厚分布がその全面に亘って均等になるように設計されている。このため、上記の如くT−S間距離が変化したり、また、ターゲット種を変更したりすると、これに伴い、膜厚分布も変化する。
【0006】
そこで、真空チャンバ内で基板を保持するステージに、ターゲットに向かって進退自在に駆動する駆動機構を設け、T−S間距離(やT−M(マスク)間距離)を、ターゲットの積算電力に応じて変化させることが特許文献1(請求項8の記載参照)で知られている。然し、このような機構では、真空チャンバ内の真空雰囲気を維持しながらステージを駆動するためのベローズや駆動部品が必要となり、このようなベローズや駆動部品等は、一般に高価かつ耐久性に劣り、また、装置構成も複雑になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−140069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上の点に鑑み、ターゲット種やターゲットの使用状態等のスパッタ条件に応じて、基板に成膜したときの膜厚分布が簡単に調整でき、しかも、装置構成が簡単にできて低コストのスパッタリング方法及びスパッタリング装置を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、真空チャンバ内でターゲットに処理すべき基板を対向配置し、所定真空度に達した真空チャンバ内にスパッタガスを導入し、基板からターゲットに向かう方向を上として、ターゲットの方に設けた磁石ユニットより当該ターゲットのスパッタ面の方空間に磁場を発生させた状態でターゲットに所定の電力を投入して真空チャンバ内にプラズマを形成してこのターゲットをスパッタリングし、基板表面に所定の薄膜を成膜するスパッタリング方法において、スパッタリング中、基板全面に亘って垂直な静磁場を作用させ、ターゲットの侵食量に応じて前記静磁場の強度を段階的に上昇させ、前記薄膜の基板面内における膜厚分布を調節することを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、スパッタリング中、基板全面に亘って垂直な静磁場を作用させることで、成膜時の磁場強度に応じて、ターゲットからのスパッタ粒子やプラズマ中にて電離したスパッタ粒子のイオンが、基板表面に対して略直角な方向からこの基板に高い指向性を持ってかつ強い直進性を持って入射して付着、堆積するようになる。ここで、例えば、スパッタリング中、ターゲットが侵食されてくると、ターゲットの全面でT−S間(またはT−M間)距離が変化してくる。このような場合には、ターゲットに投入した電力の積算電力から前記静磁場の強度を段階的に上昇させる。これにより、基板に成膜したときの膜厚分布を、ターゲットの侵食状態(使用状態)に応じて調節することができる。また、ターゲット種を変更した場合、ターゲットから放出されるスパッタ粒子の飛散分布も変わり得るが、磁場強度を変化させるだけで調整できる。なお、本発明において、スパッタ条件とは、ターゲット種やターゲットの侵食状態だけでなく、スパッタリング時の真空チャンバ内のスパッタガスの分圧やターゲットへの投入電力を含むものである。
【0011】
本発明においては、前記静磁場を真空チャンバに付設した少なくとも1個の電磁石により発生させ、電磁石のコイルへの通電電流を制御して前記静磁場の強度を段階的に上昇させればよい。これによれば、真空チャンバ内の真空雰囲気を維持しながら所定の部品を駆動する等は不要になり、従来例のものと比較して装置構成を簡単にできる。その上、ベローズ等の部品を用いる従来例と比較して装置の製造コスト等も低くできる。なお、スパッタ条件をターゲットの侵食量とした場合、ターゲットに電力投入したときの積算電力から前記通電電流を制御すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態のスパッタリング方法を実施し得るスパッタリング装置の模式的断面図。
図2】本発明の効果を示す実験の結果を示すグラフ。
図3】本発明の効果を示す他の実験の結果を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、ガラスやシリコンウエハ等の基板表面に所定の薄膜を成膜するための本発明の実施形態のスパッタリング方法について説明する。図1中、SMは、本実施形態のスパッタリング方法を実施し得るスパッタリング装置である。スパッタリング装置SMは、真空雰囲気の形成が可能な真空チャンバ1を備え、真空チャンバ1の天井部にカソードユニットCが取付けられている。以下においては、図1中、真空チャンバ1の天井部側を向く方向を「上」とし、その底部側を向く方向を「下」として説明する。
【0014】
カソードユニットCは、ターゲット2と、このターゲット2の上方に配置された磁石ユニット3とから構成されている。ターゲット2は、基板Wの輪郭より大きな表面積でかつ公知の方法で平面視円形や矩形に形成されたものである。なお、ターゲット2は、処理すべき基板Wに形成しようとする薄膜に応じて適宜選択でき、例えば、Cu、Al、Ti、Co、Ta、W製とできる。ターゲット2は、図示省略のバッキングプレートに装着した状態で、そのスパッタ面を下方にして絶縁体Iを介して真空チャンバ1の上部に取り付けられる。また、ターゲット2は、DC電源や高周波電源等のスパッタ電源E1に接続され、スパッタ中、ターゲット2に負の電位を持った電力が投入される。
【0015】
ターゲット2の上方に配置される磁石ユニット3は、ターゲット2のスパッタ面21の下方空間に磁場を発生させ、スパッタ時にスパッタ面21の下方でのプラズマ密度を高める公知の閉鎖磁場若しくはカスプ磁場構造を有するものであり、ここでは詳細な説明を省略する。なお、磁石ユニット3は、一定のT−S間距離の下、特定種かつ未使用状態のターゲットにて、所定条件(圧力、ターゲットへの投入電力等)で基板Wに対して成膜したときに、基板表面における膜厚分布がその全面に亘って均等になるように設計される。真空チャンバ1内には、導電性を有するアノードシールド4が配置されている。また、真空チャンバ1の底部には、カソードユニットCに対向させてステージ5が絶縁部材51を介して配置され、基板Wを位置決め保持するようになっている。なお、特に図示して説明しないが、ステージ5に高周波電源を接続し、基板Wにバイアスを印加する構造にしてもよい。
【0016】
真空チャンバ1の側壁には、アルゴン等の希ガスたるスパッタガスを導入するガス管6が接続され、このガス管6がマスフローコントローラ6aを介して図示省略のガス源に連通する。そして、これらの部品がガス導入手段を構成し、流量制御されたスパッタガスが真空チャンバ1内に導入できる。なお、上記と同一構成のガス導入手段を更に設け、窒素などの反応ガスを導入して反応性スパッタリングによる成膜を行い得るように構成してもよい。また、真空チャンバ1の側壁には、リング状のヨーク71に導線72を巻回してなるコイル7が、真空チャンバ1の上下方向の略中央に設けられ、これらの部品が電磁石を構成する。そして、電源E2からコイル7に通電できるようになっている。
【0017】
電源E2からコイル7に通電すると、電流の向き及び大きさに応じて、例えば、ターゲット2のスパッタ面21及び基板W全面に亘って垂直な磁力線(磁束)MFが所定間隔で通るように下向きの垂直磁場が発生する。これにより、ターゲット2のスパッタリング時に、ターゲットからのスパッタ粒子やプラズマ中で電離したスパッタ粒子のイオンが垂直磁場の影響で失活せずに、基板W全面に亘って、且つ、この基板W表面に対して略直角な方向から付着し、堆積する。なお、コイルの個数は上記に限定されるものではなく、複数であってもよい。複数のコイルを設ける場合、コイル相互の間の距離、導線の径や巻数は、例えばターゲット2のスパッタ面21の面積、T−S間距離、成膜条件、電源E2の定格電流値や発生させようとする磁場強度(ガウス)に応じて適宜設定される。
【0018】
真空チャンバ1の底部には、ターボ分子ポンプやロータリポンプなどからなる図示省略の真空排気装置に通じる排気管8が接続されている。上記スパッタリング装置SMは、マイクロコンピュータやシーケンサ等を備えた公知の制御手段9を有し、制御手段9により上記各電源E1、E2の作動、マスフローコントローラ6aの作動や真空排気装置の作動等を統括管理するようになっている。また、制御手段9は、ターゲット2に投入した電力の積算電力を管理でき、これに応じて、コイル7への通電電流を制御し得る。
【0019】
次に、上記スパッタリング装置SMを用い基板Wへのスパッタリング方法を説明する。先ず、真空排気手段を作動させて真空チャンバ1内を所定の真空度(例えば、10−5Pa)まで真空引きしておき、ステージ5に基板Wをセットする。その後、電源E2によりコイル7に通電し、ターゲット2及び基板W全面に亘って下向きの垂直な磁力線MFが所定間隔で通るように垂直磁場を発生させる。そして、真空チャンバ1内にマスフローコントローラ6aを制御してアルゴンガス(スパッタガス)を所定の流量で導入し(スパッタリング中のアルゴン分圧は、0.05〜50Pa)、スパッタ電源E1よりターゲット2に負の電位を持つ所定電力(1〜35kW)を投入して放電させ、真空チャンバ1内にプラズマ雰囲気を形成する。これにより、基板Wの全面に亘って垂直に発生させた磁力線MFの影響を受けて、ターゲット2のスパッタリングにより生じたスパッタ粒子やプラズマ中にて電離したスパッタ粒子のイオンが、基板Wに対して略直角な方向からこの基板Wに高い指向性を持ってかつ強い直進性を持って入射して付着、堆積する。
【0020】
ところで、上記条件で複数枚の基板Wに成膜を行うと、ターゲット2のうち、磁石ユニット3からの磁場の影響を受ける領域でターゲット2が優先的にスパッタリングされて侵食されていく(図1中、ターゲット2に2点鎖線で示す如く、侵食される)。この場合、T−S間距離がターゲット2面内で変化し、その結果、基板Wに成膜したときの膜厚分布が、ターゲット2の侵食状態(即ち、使用時間)に応じて変化していく。そこで、本実施形態では、特定のターゲット2にてそのターゲット2のライフエンドまで複数枚の基板Wに成膜し、このとき、所定の積算電力毎(例えば200kWh)に膜厚分布を測定すると共に、これら積算電力毎に、基板W全面における膜厚分布が所定の範囲(例えば、2%以内)となるときのコイル7の通電電流を求め、制御手段9に予め記憶させることとした。これにより、ターゲット2の積算電力、つまり、侵食状態に応じて、コイル7への通電電流のみを変化させることで、ターゲット2のライフエンドまで基板W全面における膜厚分布が所定の範囲(例えば、2%以内)に保持できる。
【0021】
なお、コイル7への通電電流は、ターゲット種やターゲット侵食状態に応じて、15〜30Aの範囲に設定される。15Aより低いと、膜厚分布を変化させることができないという不具合があり、30Aを超えると、プラズマが不安定になるという不具合が生じる。
【0022】
次に、以上の効果を確認するために、図1に示すスパッタリング装置SMを用いて以下の各実験を行った。実験1では、ターゲット2として高純度のタングステン製ターゲットを用い、基板Wを、φ300mmのシリコンウエハとし、また、スパッタ条件として、T―S間距離を60mm、スパッタガスたるアルゴンガスの導入量を150sccm、電源E1からターゲット2への投入電力を4kWに設定し、基板Wを200℃に加熱保持しながら、40nmの膜厚でタングステン膜を成膜した(スパッタ時間は17秒)。
【0023】
図2は、スパッタリング中、コイル7に通電せず、コイル7への通電電流を15A、または、コイル7への通電電流を30Aに設定してそれぞれタングステン膜を形成したときの、基板の径方向における膜厚分布を示すグラフである。これによれば、コイル7に通電しない場合(即ち、垂直磁場なし)、基板中央部の膜厚が薄く、その径方向外側に向かうに従い、膜厚が厚くなっている。そこで、通電電流を15Aに設定して成膜すると、特に基板中央部の膜厚が増加して膜厚分布の面内均一性が著しく向上することが判る。また、通電電流を30Aに上昇させて成膜を行うと、特に基板中央部の膜厚が増加していることが判る。これにより、通電電流を変化させることで、膜厚分布を制御できることが確認された。
【0024】
次に、実験2では、ターゲットとして、厚さが6mmのタングステンターゲットを用い、上記と同一の条件で、ライフエンド(1400kWh)まで基板に成膜を行った。このとき、実験2では、スパッタリング開始当初は、コイル7への通電電流を0Aとし、ターゲットの積算電力が500kWhに達すると通電電流を15Aに設定し、垂直磁場を基板に作用させながら成膜し、また、1000kWhに達すると通電電流を30Aに設定し、垂直磁場を基板に作用させながら成膜した。なお、比較実験として、上記と同一の条件で、ターゲットライフエンド(1400kWh)まで、垂直磁場を作用させることなしに基板に成膜を行った。
【0025】
図3は、上記条件で基板に成膜したときの、ターゲットの積算電力における基板の膜厚分布を示すグラフであり、図3中、実線で示すものが実験2の結果であり、また、点線で示すものが比較実験の結果である。これによれば、比較実験では、当初約1.5%であった膜厚分布が、ターゲットのライフエンド近傍では、約4%となり、膜厚分布の均一性が損なわれていることが判る。それに対して、実験2では、所定の積算電力に応じて垂直磁場を作用させると共に、その強度を変化させることで、ターゲット2のライフエンド近傍でも2.5%の膜厚分布にできていることが判る。
【0026】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記に限定されるものではない。上記実施形態では、ターゲットの侵食状態に応じてコイルへの通電電流を変化させ、膜厚分布を均一に調節するものを例に説明したが、ターゲット種等の他のスパッタ条件に応じて通電電流を変化させ、膜厚分布を制御するものにも適用できる。また、上記実施形態では、コイルを用いて垂直磁場を発生させているが、これと永久磁石と組み合わせて磁場を発生させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0027】
SM…スパッタリング装置、1…真空チャンバ、2…ターゲット、6…ガス管、7…コイル、C…カソードユニット、E1、E2…電源、MF…磁力線、W…基板。
図1
図2
図3