特許第5795026号(P5795026)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5795026
(24)【登録日】2015年8月21日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】回転コネクタ装置
(51)【国際特許分類】
   H01R 35/04 20060101AFI20150928BHJP
【FI】
   H01R35/04 U
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-120924(P2013-120924)
(22)【出願日】2013年6月7日
(65)【公開番号】特開2014-238970(P2014-238970A)
(43)【公開日】2014年12月18日
【審査請求日】2014年10月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】荒川 隼人
【審査官】 山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−320450(JP,A)
【文献】 実開昭63−200141(JP,U)
【文献】 実開昭56−118468(JP,U)
【文献】 実開昭63−057524(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 35/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ケースと、
前記第1ケースに対し相対回転可能に取り付けられる第2ケースと、
前記第1ケースと前記第2ケースの間に形成される環状のケーブル収容空間内に配置され、一方向及び逆方向に巻かれた帯状のケーブルと、
を備え、
前記第2ケースには、当該第2ケースが中立位置にあるときに、前記ケーブルの回転方向が変化する部分である反転部が視認可能となる視認窓が形成されており、
前記第2ケースは、視認窓から見える前記ケーブルを拡大して表示するレンズを備え、
前記ケーブルのうち前記反転部に相当する位置の内側には、シート状部材が貼り付けられており、
前記シート状部材は、前記ケーブルが反転した場合に、当該ケーブルの内側に膨らむことを特徴とする回転コネクタ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の回転コネクタ装置であって、
前記第1ケースのうち前記視認窓から視認可能な部分の色は、前記第1ケースの他の部分の色よりも明度が高いことを特徴とする回転コネクタ装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の回転コネクタ装置であって、
前記第1ケースのうち前記視認窓から視認可能な部分の色は、前記ケーブルの色と異なることを特徴とする回転コネクタ装置。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載の回転コネクタ装置であって、
前記第1ケースのうち前記視認窓から視認可能な部分に、光を入れるための入光窓が形成されていることを特徴とする回転コネクタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転コネクタ装置に関する。詳細には、ケーブルの反転部を視認してロテータ(第2ケース)が中立位置にあることを確認するための構成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば自動車のステアリング側と車体側とのように、回転側と固定側を電気的に接続するための回転コネクタ装置が知られている。一般的に、自動車のステアリングは、緊急時に確実な動作を要求されるエアバッグ等の構成を備えている。このため、信頼性の低い摺動電極等は用いず、フラットケーブル等によってステアリング側と車体側とを接続する構成の回転コネクタ装置が採用されている。
【0003】
特許文献1は、この種の回転コネクタ装置を開示する。この回転コネクタ装置は、外側ケース(第1ケース、ステータ)と、内側ケース(第2ケース、ロテータ)と、フラットケーブルと、を備える。
【0004】
内側ケースは、外側ケースに対して相対回転可能である。フラットケーブルは、内側ケースと外側ケースの間に形成された空間に配置される。また、フラットケーブルは、一方向に巻かれた後、巻かれる方向をU字状に反転されて逆方向に巻かれている。
【0005】
この構成により、余分に巻かれたフラットケーブルの長さに相当する分だけ、内側ケースを一方向又は逆方向に回転させることが可能となる。
【0006】
ここで、回転コネクタ装置は、内側ケースを一方向に回転できる回数と、逆方向に回転できる回数と、が等しくなる状態で自動車に取り付ける必要がある。なお、以下の説明では、このときの内側ケースの位置を中立位置と称し、このときの状態を中立状態と称する。
【0007】
特許文献1では、中立状態で回転コネクタ装置を取り付けなければいけない点を考慮し、内側ケースに視認窓を形成する構成が採用されている。内側ケースが中立位置にある場合、視認窓からフラットケーブルの反転部分(U字状の部分)が視認できるように視認窓の位置が考慮されている。
【0008】
更に、特許文献1では、フラットケーブルの反転部分に相当する箇所に所定のマークを付与することで、フラットケーブルが複数本であっても、中立状態を確実に確認することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−320450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ここで、内側ケースに形成された視認窓からは、フラットケーブルの厚み部分が視認できる。しかし、フラットケーブルの厚みは非常に薄いため、中立状態の確認に時間が掛かる又は中立状態の確認ができない可能性がある。
【0011】
また、フラットケーブルは、外側ケースと内側ケースの間の空間に配置されるが、この空間には外部の光が入りにくいことがあった。従って、この空間の視認性は悪く、中立状態の確認が困難になる場合があった。
【0012】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、視認窓からのフラットケーブルの視認性を向上させて、中立状態を容易に確認可能な回転コネクタ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0013】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0014】
本発明の観点によれば、以下の構成の回転コネクタ装置が提供される。即ち、この回転コネクタ装置は、第1ケースと、第2ケースと、ケーブルと、を備える。前記第2ケースは、前記第1ケースに対し相対回転可能に取り付けられる。前記ケーブルは、帯状であり、前記第1ケースと前記第2ケースの間に形成される環状のケーブル収容空間内に配置され、一方向及び逆方向に巻かれる。前記第2ケースには、当該第2ケースが中立位置にあるときに、前記ケーブルの回転方向が変化する部分である反転部が視認可能となる視認窓が形成されている。前記第2ケースは、視認窓から見える前記ケーブルを拡大して表示するレンズを備える。前記ケーブルのうち前記反転部に相当する位置の内側には、シート状部材が貼り付けられており、前記シート状部材は、前記ケーブルが反転した場合に、当該ケーブルの内側に膨らむ。
【0015】
これにより、帯状のケーブルは細いため視認しにくいので、視認窓に拡大機能を持たせることで、ケーブルの視認性を向上させることができる。従って、第2ケースが中立位置にあることを確実にチェックすることができる。また、シート状部材が貼り付けられていることで、第2ケースが中立位置にある場合、視認窓から折り返し部分及びシート状部材が視認できるので、第2ケースの中立位置をより確実にチェックすることができる。
【0016】
前記の回転コネクタ装置においては、前記第1ケースのうち前記視認窓から視認可能な部分の色は、前記第1ケースの他の部分の色よりも明度が高いことが好ましい。
【0017】
これにより、視認窓から入る光を有効に活用してケーブル収容空間を明るく表示できるので、ケーブルの視認性を一層向上させることができる。
【0018】
前記の回転コネクタ装置においては、前記第1ケースのうち前記視認窓から視認可能な部分の色は、前記ケーブルの色と異なることが好ましい。
【0019】
これにより、ケーブルを際立たせることができるので、ケーブルの視認性を一層向上させることができる。
【0020】
前記の回転コネクタ装置においては、前記第1ケースのうち前記視認窓から視認可能な部分に、光を入れるための入光窓が形成されていることが好ましい。
【0021】
これにより、視認窓に加え入光窓からもケーブル収容空間に光を入れることができるので、ケーブル収容空間を明るく表示して、ケーブルの視認性を一層向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態に係るステアリングロールコネクタの全体的な構成を示す外観斜視図。
図2】ステアリングロールコネクタの分解斜視図。
図3】収容空間に収容されたフレキシブルフラットケーブルとリテーナの様子を示す斜視図。
図4】ステアリングロールコネクタの平面図。
図5】視認窓から見えるフレキシブルフラットケーブル及び視認窓の構成を従来例と比較する図。
図6】変形例に係るフレキシブルフラットケーブルを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、図1及び図2を参照して発明の実施の形態を説明する。
【0026】
図1及び図2に示すステアリングロールコネクタ(回転コネクタ装置)1は、ケーブルハウジング13を備えている。ケーブルハウジング13は、互いに相対回転可能なステータ(第1ケース)11とロテータ(第2ケース)12から構成される。
【0027】
ステータ11は、車体側の適宜の部材、例えばステアリングコラムのコンビネーションブラケットスイッチ(図略)に固定されている。ケーブルハウジング13の中心には貫通状の差込孔19が形成され、この差込孔19に、ステアリングコラムに支持されたステアリングシャフトが挿入されている。ステータ11はステアリングシャフトに対して相対回転可能に取り付けられる一方、ロテータ12はステアリングシャフトとともに一体的に回転するように構成されている。また、ステアリングホイール(回転操作具)は、ステアリングシャフトに固定されている。
【0028】
図2等に示すように、ステータ11は、固定側リング板21と、この固定側リング板21の外縁の部分に固定された円筒状の外側筒部31と、を備えている。また、ロテータ12は、リング状に形成された回転側リング板22と、この回転側リング板22の内縁から垂直に延びる円筒状の内側筒部32と、を備えている。ロテータ12はステータ11に対し、前記ステアリングシャフトの回転軸と同一の軸線を中心にして相対的に回転することができる。
【0029】
図2に示すように、ステータ11には挿通孔11aが、ロテータ12には係止凹部12aがそれぞれ形成されている。前記挿通孔11aには、回転止めのための固定ピン17を差し込むことができる。この固定ピン17には係止突起17aが形成されており、当該固定ピン17を前記挿通孔11aに挿通させるとともに係止突起17aを係止凹部12aに係合させることにより、ステータ11に対してロテータ12が回転しないようにロックすることができる。
【0030】
この固定ピン17は、ステアリングロールコネクタ1を車体に取り付ける際に、ロテータ12の位置が中立位置(ロテータ12を時計方向に最大に回した位置と、反時計方向に最大に回した位置と、の中間の位置)からズレないように、当該ステアリングロールコネクタ1の製造時に一時的に取り付けられるものである。これにより、ステアリングロールコネクタ1の車体への組付作業の効率を向上させるとともに、組付ミスを防止することができる。なお、ステアリングロールコネクタ1を適切に車体に取り付けた後は、当該固定ピン17を挿通孔11aへの差込み部分の根元で折り取ることにより、ステータ11に対してロテータ12を回転させることが可能となる。
【0031】
また、図1に示すように、固定側リング板21及び回転側リング板22には、それぞれ三角形のマークが形成されている。これは、それぞれの三角形のマークの位置が一致したときには、ロテータ12が中立位置(つまり中立状態)にあることを示すものである。
【0032】
ステータ11には第1コネクタ41が取り付けられ、ロテータ12には第2コネクタ42が取り付けられる。第2コネクタ42は、ロテータ12の回転に伴って一体的に回転する。これらのコネクタ41,42には、外部の電気回路(例えば、ホーンスイッチ、エアバッグモジュール、電源等)から引き出された図略のケーブルをそれぞれ接続可能に構成されている。
【0033】
第1コネクタ41は固定側リング板21に配置され、第2コネクタ42は回転側リング板22に配置されている。そして、第1コネクタ41と第2コネクタ42とは、ケーブルハウジング13の内部に配置されたフレキシブルフラットケーブル(ケーブル)14によって相互に電気的に接続されている。
【0034】
固定側リング板21と回転側リング板22は、ロテータ12の回転軸の方向で互いに対面するとともに、それぞれが外側筒部31と内側筒部32とを接続するように配置されている。また、内側筒部32は外側筒部31より内側に配置され、外側筒部31と内側筒部32は、径方向で互いに対面するように配置されている。以上の構成で、2つのリング板21,22及び2つの筒部31,32によって囲まれた環状の空間である収容空間15が形成されている。
【0035】
また、ロテータ12にはスリーブ16が固定されている。このスリーブ16には突起58が形成されており、ロテータ12の前記突起58に対応する位置には爪59が形成されている。そして、前記爪59に前記突起58を引っ掛けることにより、スリーブ16がロテータ12に相対回転不能に取り付けられている。
【0036】
収容空間15の内部には、図2等に示すように、リテーナ25と、フレキシブルフラットケーブル14と、が収容されている。
【0037】
フレキシブルフラットケーブル14は、適宜巻かれた状態で収容されている。また、ベースリング26は環状に形成された板状の部材として構成されており、固定側リング板21に近接して配置されている。このベースリング26は、ロテータ12の回転軸を中心にして回転可能に構成されている。回転ローラ27はベースリング26の一面側に周方向に等間隔で並べて配置され、それぞれが、前記ロテータ12の回転軸と平行な軸を中心として回転可能に設けられている。
【0038】
次に、収容空間15内においてフレキシブルフラットケーブル14が収容される構成について図3を参照して説明する。
【0039】
フレキシブルフラットケーブル14は、収容空間15内で、ベースリング26の回転ローラ27が配置されている側の面上に位置しながら周方向に巻かれるようにして収容されている。本実施形態においては、図3に示すように2本のフレキシブルフラットケーブル14が収容されている。2本のフレキシブルフラットケーブル14の第1端部14a,14aは、第1コネクタ41に接続されている。また、第2端部14b,14bは、第2コネクタ42に接続されている。
【0040】
2本のフレキシブルフラットケーブル14は、それぞれ第1コネクタ41から収容空間15へ引き出され、2本が重なるようにして外側筒部31の内周面に沿って時計回りに巻かれる。
【0041】
また、2本のフレキシブルフラットケーブル14のうちの片方は、第1反転部61においてU字状に折り返されて向きを反転する。この第1反転部61の近傍には、1つの回転ローラ27と、ガイド壁63と、が配置されている。回転ローラ27は、フレキシブルフラットケーブル14の第1反転部61に内側から当接して、当該フレキシブルフラットケーブル14を案内する。また、ガイド壁63は、フレキシブルフラットケーブル14の第1反転部61に外側から当接して、当該フレキシブルフラットケーブル14を案内する。以上の構成で、フレキシブルフラットケーブル14は、回転ローラ27とガイド壁63との間を通り、当該回転ローラ27に巻き掛かるようにして向きを反転する。
【0042】
また、もう一方のフレキシブルフラットケーブル14は、第2反転部62においてU字状に折り返されて向きを反転する。この第2反転部62の近傍には、回転ローラ27やガイド壁63は配置されていないが、フレキシブルフラットケーブル14がU字状に向きを反転するために十分なスペースが確保されている。
【0043】
フレキシブルフラットケーブル14が反転部61,62において向きを反転した後は、内側筒部32の外周面に沿うように反時計回りに巻かれる。そして、フレキシブルフラットケーブル14は、最終的には収容空間15から引き出されて第2コネクタ42側に接続される。
【0044】
このように、前記収容空間15の内部においてフレキシブルフラットケーブル14は適宜の長さの弛みを有するように巻かれており、この弛みの長さは、ロテータ12がステータ11に対して回転することにより変化する。本実施形態のステアリングロールコネクタ1では、この弛み長さの変化に追従するようにリテーナ25が適宜回転することにより、フレキシブルフラットケーブル14を収容空間15内で常に整列させた状態で保持することができる。
【0045】
具体的には以下のとおりである。例えばロテータ12が図3で見て時計回りに回転すると、フレキシブルフラットケーブル14の内側筒部32に巻かれている部分も一緒に時計回りに回転する。すると、内側筒部32の外周面からフレキシブルフラットケーブル14が巻き戻される。そして、反転部61,62で巻き方向を反転されたフレキシブルフラットケーブル14は、外側筒部31の内周面に巻きとられていく。このとき、フレキシブルフラットケーブル14の第1反転部61がガイド壁63に力を加え、リテーナ25全体を時計回りに回転させる。これにより、フレキシブルフラットケーブル14が収容空間15内で折れ曲がったりすることがないように、リテーナ25が備える回転ローラ27によって適切にガイドすることができる。以上のようにして、内側筒部32の外周面からフレキシブルフラットケーブル14が全て巻き戻されるまでは、ロテータ12を時計回りに回転させることができる。
【0046】
逆に、ロテータ12が図4で見て反時計回りに回転すると、フレキシブルフラットケーブル14の内側筒部32に巻かれている部分も一緒に反時計回りに回転する。すると、外側筒部31の内周面からフレキシブルフラットケーブル14が巻き戻され、反転部61,62で巻き方向を反転されて、内側筒部32の外周面に巻かれていく。このとき、フレキシブルフラットケーブル14の第1反転部61が回転ローラ27に力を加え、リテーナ25全体を反時計回りに回転させる。以上のようにして、外側筒部31の内周面からフレキシブルフラットケーブル14が全て巻き戻されるまでは、ロテータ12を反時計回りに回転させることができる。
【0047】
以上で説明したように、ロテータ12とリテーナ25は同じ方向に回転するが、このときリテーナ25はロテータ12の回転に比べて減速して回転する。即ち、反転部61,62はロテータ12の回転速度に比べてゆっくりと移動するので、これに対応してリテーナ25もロテータ12よりは遅く回転するのである。
【0048】
次に、図4及び図5を更に参照して、ステアリングロールコネクタ1が中立状態にあることを確認するための構成について説明する。上述のように、ステアリングロールコネクタ1は固定ピン17によって中立状態で固定され、中立状態を保った状態で車体に取り付けられる。
【0049】
しかし、ステアリングロールコネクタ1を修理のために取り外した場合、既に固定ピン17は取り外し済みであるため、再びステアリングロールコネクタ1を中立状態に調整した上で車体に取り付ける必要がある。もちろん、上述の三角形のマークを利用することもできるが、ロテータ12は、ステータ11に対して1回転以上回転することができるので、1周ズレて取り付けられる可能性がある。また、そもそも三角形のマークが付されていないステアリングロールコネクタも存在する。
【0050】
そのため、本実施形態では、フレキシブルフラットケーブル14の第2反転部62がロテータ12の回転に応じて移動することに着目し、この第2反転部62の位置を利用して中立状態を検出する。
【0051】
具体的には、ロテータ12(詳細には回転側リング板22)に視認窓70を形成し、収容空間15に配置されたフレキシブルフラットケーブル14を視認可能な構成としている。また、ステアリングロールコネクタ1が中立状態にあるときに、視認窓70の中央に第2反転部62が表示されるように、視認窓70の位置、及びフレキシブルフラットケーブル14の回転位置等が定められている(図4等を参照)。
【0052】
ここで、収容空間15は、ステータ11とロテータ12とに覆われているため光が入りにくい。更に、視認窓70からはフレキシブルフラットケーブル14の厚みを主として視認するが、フレキシブルフラットケーブル14の厚みは非常に薄い。以上の事情により、図5(d)に示すように従来はフレキシブルフラットケーブル14の視認性が非常に悪かった。
【0053】
この点、本実施形態では、2つの特徴を有することにより、フレキシブルフラットケーブル14の視認性を向上させた。
【0054】
1つ目の特徴は、視認窓70に拡大鏡の機能を持たせたことである。具体的には、視認窓70に、異物混入を防止するための透明板71と、フレキシブルフラットケーブル14を拡大するための球面レンズ72と、を取り付けている。なお、球面レンズ72の焦点は、フレキシブルフラットケーブル14に合わせられている。
【0055】
この構成により、図5(a)に示すようにフレキシブルフラットケーブル14を拡大して表示することができるので、フレキシブルフラットケーブル14の視認性を向上させることができる。
【0056】
なお、透明板71を無くして球面レンズ72のみを視認窓70に取り付けても良い。また、フレキシブルフラットケーブル14を拡大可能であれば球面レンズ72の代わりに適宜の部品を取り付けることができる。例えば、球面レンズ72の代わりに、非球面レンズ73を取り付けても良い(図5(c)を参照)。
【0057】
2つ目の特徴は、視認窓70に加え、図2に示すように、ステータ11(詳細には固定側リング板21)に入光窓75を形成したことである。入光窓75は、外部の光を収容空間15に入れるための部分であり、形成された孔に、異物混入を防止するための透明板が取り付けられている。
【0058】
また、中立状態を確認する場合、通常は中立状態又はそれに近い状態になっていることが多いと考えられる。従って、中立状態における入光窓75の位置が、視認窓70の位置に対応するように設計がされている。
【0059】
なお、入光窓75を形成する位置及び大きさは任意であり、適宜変更することができる。例えば、収容空間15に入れる光を多くするため及び中立状態からズレた場合であっても視認性を向上させるために、視認窓70よりも大きく形成しても良い。また、固定側リング板21ではなく外側筒部31の側面に形成しても良い。
【0060】
また、入光窓75に代えて、該当部分の色を変化させても良い。例えば明度の高い色にすることで、収容空間15を明るくすることができるので、フレキシブルフラットケーブル14の視認性を向上させることができる。
【0061】
更に、この色を、フレキシブルフラットケーブル14の色と異ならせることで、フレキシブルフラットケーブル14の視認性を一層向上させることができる。ただし、フレキシブルフラットケーブル14は一般的に白色であるため、白色以外の色にすることが好ましい。
【0062】
このように、本願はフレキシブルフラットケーブル14を拡大するという特徴と、収容空間15を明るくするという特徴と、を有しているので、従来と比較してフレキシブルフラットケーブル14の視認性を飛躍的に向上させることができる(図5(a)と図5(d)を参照)。
【0063】
以上に説明したように、本実施形態のステアリングロールコネクタ1は、ステータ11と、ロテータ12と、フレキシブルフラットケーブル14と、を備える。ロテータ12は、ステータ11に対し相対回転可能に取り付けられる。フレキシブルフラットケーブル14は、ステータ11とロテータ12の間に形成される環状の収容空間15内に配置され、一方向及び逆方向に巻かれる。ロテータ12には、当該ロテータ12が中立位置にあるときに、フレキシブルフラットケーブル14の回転方向が変化する部分である第2反転部62が視認可能となる視認窓70が形成されている。ロテータ12は、視認窓70から見えるフレキシブルフラットケーブル14を拡大して表示する球面レンズ72を備える。
【0064】
これにより、フレキシブルフラットケーブル14は細いため視認しにくいので、視認窓70に拡大機能を持たせることで、視認性を向上させることができる。従って、ロテータ12が中立位置にあることを確実にチェックすることができる。
【0065】
次に、図6を参照して、上記実施形態の変形例を説明する。なお、本変形例の説明においては、前述の実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0066】
本変形例は、フレキシブルフラットケーブル14の第2反転部62に相当する部分であって、その内側の面に、シート状部材78を貼り付けた構成である。
【0067】
シート状部材78は、長方形状であり、フレキシブルフラットケーブル14の長手方向の両端部のみが固定されている。この構成により、フレキシブルフラットケーブル14をU字状に折り曲げた場合、シート状部材78がフレキシブルフラットケーブル14の内側に突出する。
【0068】
これにより、フレキシブルフラットケーブル14の回転位相が適切な場合、視認窓70から第2反転部62に加え、シート状部材78が視認できるので、フレキシブルフラットケーブル14の回転位相をより確実にチェックすることができる。
【0069】
以上に本発明の好適な実施の形態及び変形例を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0070】
ケーブルハウジング13内でフレキシブルフラットケーブル14が巻かれる方向は、上記実施形態と逆方向にしても良い。また、収容されるフレキシブルフラットケーブル14の数は、必要に応じて1本でも良いし3本以上にしても良い。
【0071】
上記実施形態ではステアリングロールコネクタ1にリテーナ25が配置されているが、リテーナを省略した回転コネクタ装置に変更することもできる。
【0072】
本発明のセンサ組込回転コネクタは、自動車のステアリングに限らず、回転側と固定側とを電気的に接続することを目的として広く利用できる。
【符号の説明】
【0073】
1 ステアリングロールコネクタ(回転コネクタ装置)
11 ステータ(第1ケース)
12 ロテータ(第2ケース)
14 フレキシブルフラットケーブル(ケーブル)
15 収容空間(ケーブル収容空間)
21 固定側リング板
22 回転側リング板
70 視認窓
71 透明板
72 球面レンズ(レンズ)
73 非球面レンズ(レンズ)
75 入光窓
78 シート状部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6