(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5795999
(24)【登録日】2015年8月21日
(45)【発行日】2015年10月14日
(54)【発明の名称】自動分析装置
(51)【国際特許分類】
G01N 35/00 20060101AFI20150928BHJP
G01N 35/02 20060101ALI20150928BHJP
【FI】
G01N35/00 C
G01N35/02 C
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-203847(P2012-203847)
(22)【出願日】2012年9月18日
(62)【分割の表示】特願2007-37310(P2007-37310)の分割
【原出願日】2007年2月19日
(65)【公開番号】特開2013-11619(P2013-11619A)
(43)【公開日】2013年1月17日
【審査請求日】2012年9月18日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100100310
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 学
(72)【発明者】
【氏名】山口 卓也
(72)【発明者】
【氏名】高木 由充
(72)【発明者】
【氏名】峯村 祐輔
【審査官】
福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】
特開平02−118454(JP,A)
【文献】
特開2005−010115(JP,A)
【文献】
特開2006−277524(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3124943(JP,U)
【文献】
登録実用新案第3127156(JP,U)
【文献】
特開平07−151766(JP,A)
【文献】
特開2005−017177(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00〜35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試薬容器を円周上に複数保持する試薬容器保持手段と、
非接触で試薬情報の書き込みを行う情報タグの情報の書き込みを行う試薬情報管理手段と、
前記試薬容器の試薬を分注する分注ノズルと、
前記試薬容器の試薬を前記分注ノズルにより吸引するための開口部を備えた前記試薬容器保持手段を覆う蓋と、を備え、
前記試薬容器保持手段に前記試薬容器が保持されたときに、前記情報タグは、前記試薬容器の側面のうち隣接する試薬容器の側面と対向する平面に貼り付けられ、
前記開口部へ移動した前記試薬容器の前記情報タグと、当該試薬容器に隣接する前記試薬容器の前記情報タグとの間の直上の前記蓋に、前記開口部へ移動した前記試薬容器に付された前記情報タグへの情報の書き込みが行えるよう角度を付けて前記試薬情報管理手段のアンテナは備えられ、
前記試薬情報管理手段による前記情報タグへの情報の書き込みを行う前記試薬容器の位置は、前記分注ノズルによる試薬の吸引をするために前記開口部へ移動した前記試薬容器の位置と同じ位置であり、
前記試薬容器保持手段は前記試薬容器を前記開口部に移動し、前記情報タグが貼り付けられた前記試薬容器の試薬を前記分注ノズルで分注するごとに、前記試薬情報管理手段は、分注した試薬量に応じて前記情報タグに書き込まれている試薬残量を前記同じ位置で更新することを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
請求項1に記載の自動分析装置において、
前記試薬情報管理手段は、前記蓋に設けられていることを特徴とする自動分析装置。
【請求項3】
請求項2に記載の自動分析装置において、
前記試薬情報管理手段は、前記情報タグの情報の読み出しを行い、前記情報タグの情報の読み出しを行うための前記アンテナの指向性が最も強い向きが垂直方向に対し傾いて設けられていることを特徴とする自動分析装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の自動分析装置において、
前記情報タグを含む、前記試薬容器内に入っている試薬情報を視認するラベルが、前記試薬容器の側面に設けられていることを特徴とする自動分析装置。
【請求項5】
請求項1〜4いずれかに記載の自動分析装置において、
前記試薬容器保持手段は、同心円状に試薬容器を配置可能であることを特徴とする自動分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液,尿等の生体サンプルの定性・定量分析を行う自動分析装置に係り、特に複数の試薬容器を保管する試薬保管庫を備えた自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
血液,尿等の生体サンプルに含まれる特定成分の定性・定量分析の項目数は試薬メーカの研究開発の成果により増加しており、分析に使用する試薬の種類が非常に多くなっている。試薬の管理は、従来は装置オペレータが手入力で試薬の種類を登録することでも対応できていたが、このように試薬の種類が増加すると手入力での対応は、登録の間違いの発生を考慮すると難しく、試薬容器に貼り付けされた試薬IDをID識別装置が読み取って自動的に管理する方法が今後は主流になると予想される。
【0003】
現在の試薬IDはバーコードが主流である。試薬情報タグにバーコードラベルを使用する場合、バーコードリーダはバーコード上に照射された光が反射し、その反射光を受光,解析してバーコード情報を得るためバーコードリーダとバーコードラベルの間の空間に障害物がある場合にはバーコードラベルの情報を読み取ることができない。
【0004】
バーコードリーダを試薬容器の上側に配置した場合、バーコードラベルは試薬容器の上側に貼り付けることになる。試薬容器の上側には試薬吸引用の開口部があるため、大きなバーコードラベルを貼り付けることができない。
【0005】
試薬容器には容器内部の試薬情報を視認するため、試薬情報を印字したラベルを試薬容器の側面に貼り付けている。試薬容器の上側にもバーコードラベルを貼り付ける場合、ラベルの貼り付け作業の回数が増え、コストアップとなってしまう。
【0006】
バーコードに1次元バーコードを使用する場合、試薬情報を多くするとバーコードラベルが大きくなってしまい、試薬容器に貼り付けることができなくなってしまう。2次元バーコードを使用する場合は、バーコードラベルは小さくなるがバーコードリーダが高価になり製造コストが増加してしまう。
【0007】
このような問題に対処するため、特許文献1では試薬IDの記録媒体として非接触で情報の読取が可能な無線タグを試薬容器の上面に貼り付けし、上側から試薬情報を読み取ることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−10115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1記載の技術では、
試薬容器に付された記憶媒体への試薬残量の更新タイミングについては考慮されていない。
【0010】
本発明の目的は、
試薬残量の情報タグへの更新タイミングを工夫することで試薬残量の更新を効率的に行うことができる自動分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を解決するための本発明の構成は以下の通りである。
【0012】
試薬容器を円周上に複数保持する試薬容器保持手段と、非接触で試薬情報の書き込みを行う情報タグの情報の書き込みを行う試薬情報管理手段と、前記試薬容器の試薬を分注する分注ノズルと、前記試薬容器の試薬を前記分注ノズルにより吸引するための開口部を備えた前記試薬容器保持手段を覆う蓋と、を備え、前記試薬情報管理手段による前記情報タグへの情報の書き込みを行う前記試薬容器の位置は、前記分注ノズルによる試薬の吸引をするために前記開口部へ移動した前記試薬容器の位置と同じ位置であり、前記試薬容器保持手段は前記試薬容器を前記開口部に移動し、前記情報タグが貼り付けられた前記試薬容器の試薬を前記分注ノズルで分注するごとに、前記試薬情報管理手段は、分注した試薬量に応じて前記情報タグに書き込まれている試薬残量を
前記同じ位置で更新する自動分析装置である。なお、試薬容器を複数保持する試薬容器保持手段と、前記試薬容器保持手段の開口部を覆うカバーと、前記試薬容器保持手段に保持された試薬容器の側面に設けられた、非接触で情報の読み出しを行う情報タグと、前記カバーに設けられた前記試薬容器の情報タグの情報の読み出しを行う試薬情報管理手段と、を備えた自動分析装置であっても良い。
【0013】
試薬容器には試薬以外に洗浄液,生理的食塩水,希釈液など試薬以外のものが収容されていても良い。試薬容器保持手段は、一般的に保冷機能を備えているものを想定しているが、保冷機能が無くても良い。カバーは冷気を逃がさない密封構造のものが望ましいが、単なるカバーであっても良い。試薬容器の側面とは、上面または下面以外の面であって、一般的に垂直方向に伸びた面のことを意味する。しかし、容器形状が複雑な場合は、垂直方向に伸びた面でない場合もあるが、その場合でも上面または下面以外の面であれば側面に含まれる。非接触で情報の読み出しできる情報タグとは、例えば電磁波を介して情報の送信/受信ができるもので、ICタグなどとも称されるものである。高周波を利用して通信を行うためRF−IDと称されるものもこの一種である。上記では情報の読み出しを行うと記載しているが、合わせて情報の書き込みをも行うものも含まれるのは当然である。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、
情報タグへの試薬残量の更新を効率的に行える自動分析装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】自動分析装置の構成を示した本発明の一実施例を示した図。
【
図2】試薬情報タグの読み出し書き込みを行う装置と試薬容器の位置を示した図。
【
図3】試薬情報タグの読み出し書き込みを行う装置と試薬容器の位置を示した図。
【
図4】試薬情報タグの読み出し書き込みを行う装置と試薬容器の位置を示した図。
【
図6】試薬情報タグの読み出し書き込みを行う装置と試薬容器の位置を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、
前述の目的を、情報タグが貼り付けられた試薬容器の試薬を分注ノズルで分注するごとに、試薬情報管理手段は、分注した試薬量に応じて情報タグに書き込まれている試薬残量を更新することで実現したことを特徴とする。
【実施例1】
【0017】
以下図面を用いて本発明の実施例を説明する。
【0018】
保冷庫内に設置した試薬容器を試薬容器に貼り付けられた試薬情報タグの情報を読み取りおよび書き込みする位置に移動する機構は
図1のような分析装置に用いられている。操作部ユーザインターフェース1から指示により、試薬容器を試薬情報タグの情報を読み取りおよび書き込みする位置に移動し、試薬保冷庫の蓋に設置された試薬情報取得部により試薬容器ごとの個別情報を取得する。試料の入った試料容器2を架設した搬送ラック3が分析部に搬送する。分析部に搬送された試料は操作部1から指示された分析を行うため、試料容器2内の測定用液体を、試料分注機構4を用いて吸引し、反応ディスク5に架設した反応容器6に注入する。また、試薬保冷庫7内に架設した試薬容器8を、あらかじめ取得した試薬容器の情報に基づき、所定の試薬を吸引するため、蓋の開口部の位置に移動し、試薬容器8内の試薬を試薬分注機構9により吸引し、反応ディスク5に乗った反応容器6に注入する。反応容器6に注入された試料と試薬は攪拌機構10により撹袢する。これによる化学反応の発色を光源ランプ,分光用回折格子,光検知器により構成される光度計11で測光し分析を行う。分析後は次の試料を分析するため、反応容器6を洗浄機構12により洗浄する。分析を行うための試料を吸引後、試料容器2を架設した搬送ラック3は分析部から搬出される。
図1は試薬保冷庫7の蓋の一部を断面表示し、保冷されている複数の試薬容器8の一部が見えるようにしてある。保冷庫7は試薬を充填した円周上に配置された複数の試薬容器8を保冷し、試薬容器8から試薬を吸引するための少なくとも1つの開口部13がある。
【0019】
図2に示したように、試薬保冷庫内に設置した試薬容器の側面には、試薬容器内に入っている試薬情報を視認するラベルに電波または電磁波を利用して読み出しまたは書き込みを行う試薬情報タグを埋め込んだラベルを貼り付けてある。この試薬情報タグのアンテナは垂直方向に電波または電磁波の指向性を有している。試薬保冷庫の上の蓋に内蔵されている試薬情報タグの読み出しまたは書き込みを行う装置の下に試薬容器を移動させ、アンテナの下に移動した試薬容器に貼り付けてある試薬情報タグの情報を読み出しすることにより、試薬メーカ,試薬名,使用期限などの試薬情報を取得する。試料を分析する際には取得した試薬情報と、分析する試料の情報により、所定の試薬容器を試薬保冷庫の開口部に移動し、分注する。試薬容器に貼り付けるラベルは1枚だけ試薬容器の側面に貼り付けるだけでよく、試薬の製造コストを低減することができる。試薬保冷庫の材質をプラスチック系にすることで、試薬情報タグを読み出しまたは書き込みを行う電波または電磁波は蓋の材質を透過することができるため、バーコードリーダを使用する場合のような窓を開けなくてもよいため、蓋の製造コストを低減することができる。窓が無いため、雰囲気温度と試薬保冷庫内の温度差によって生じる窓に付着する結露を防止するためのヒータが必要なくなり、製造コストが低減できる。また、試薬情報タグを読み出しまたは書き込みを行う電波または電磁波に水分を透過できる電波または電磁波を使用することにより、試薬保冷庫の蓋や試薬情報ラベル上に結露が生じても試薬情報タグの読み出しまたは書き込みを行うことができる。
図3に示したように、試薬情報タグを埋め込むのは試薬容器のどの面であってもあらかじめ取り決められた試薬情報タグを読み出しまたは書き込みを行う装置の位置に合わせて貼り付けられていれば同様の効果を得ることができる。
【0020】
図4に示したように、斜め方向に電波または電磁波の指向性を有する試薬情報タグを使用する場合、試薬情報タグの読み出しまたは書き込みを行う装置をその指向性の向きに角度を付けて取り付ける。プラスチック製の試薬容器や試薬容器内の試薬を透過する電波または電磁波を使用することにより、試薬情報タグと試薬情報タグの読み出しまたは書き込みを行う装置の間に障害物があっても試薬情報タグの情報を読み出しまたは書き込みを行うことができる。
【0021】
試薬容器内の試薬量の管理を試薬分注機構が試薬内に分注ノズルを下降し、試薬液面を検出し、試薬の高さから換算して行う場合、試薬情報タグを読み出しまたは書き込みを行うために試薬容器の移動した位置と試薬を分注するための試薬保冷庫の開口部の位置を同じ位置にすることで、試薬情報タグの読み出しまたは書き込みの処理と試薬容器内の試薬量の更新を同時に行うことができ、装置の処理能力を向上させることができる。また、分析時に試薬容器を試薬情報タグの読み出しまたは書き込みを行う位置と分注する位置が同じであるため、試薬を分注するごとに、使用した試薬量に応じて試薬情報タグに書き込まれている試薬残量を更新することができる。
【0022】
図5,
図6に示したように、同心円状に試薬容器を配置している場合、試薬情報タグを読み出しまたは書き込みを行うための装置を内周側と外周側に移動する機構を取り付けることにより、試薬情報タグを読み出しまたは書き込みを行うための装置を減らすことができ、製造コストを低減することができる。
【符号の説明】
【0023】
1 操作部ユーザインターフェース
2 試料容器
3 搬送ラック
4 試料分注機構
5 反応ディスク
6 反応容器
7 試薬保冷庫
8,17 試薬容器
9 試薬分注機構
10 攪拌機構
11 光度計
12 洗浄機構
13 保冷庫の開口部
14 試薬情報タグの読み出し書き込みを行う装置
15 試薬情報タグの読み出し書き込みを行う装置のアンテナ
16 試薬保管庫の蓋
18 試薬容器のラベル
19 試薬容器のラベルに埋め込まれた試薬情報タグ
20 試薬のメーカ名
21 試薬の項目名
22 試薬の有効期限
23 試薬分注ノズル
24 試薬保管庫の開口部
25 試薬保持部
26 外周側の試薬容器
27 内周側の試薬容器