(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一般式(1)におけるWが、ビニル基、炭素数1〜10のアルキル基で置換された置換ビニル基、エポキシ基、炭素数1〜10のアルキル基で置換された置換エポキシ基、オキセタン基及び炭素数1〜10のアルキル基で置換された置換オキセタン基から選ばれる少なくとも1つの基であることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子用重合体。
一般式(1)におけるWが、ビニル基、イソプロペニル基、エポキシ基、オキセタン基及び置換オキセタン基から選ばれる少なくとも1つの基であることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子用重合体。
基板上に積層された陽極層及び陰極層の間に有機層を有する有機電界発光素子であって、該有機層の少なくとも一層に請求項7に記載の硬化物を含有することを特徴とする有機電界発光素子。
【背景技術】
【0002】
一般的に電界発光素子には、発光素子に無機化合物を用いる無機電界発光素子と、有機化合物を用いる有機電界発光素子があり、近年、低電圧で且つ高輝度の発光が得られるという特徴から有機電界発光素子の実用化研究が積極的に行われている。
【0003】
有機電界発光素子の構造は、インジウム-スズ酸化物(ITO)等の陽極材料の薄膜を蒸着したガラス板上に正孔注入層、更に発光層等の有機薄膜層を形成し、さらにその上に陰極材料の薄膜を形成して作られるものが基本であり、この基本構造に正孔輸送層や電子輸送層が適宜設けられた素子がある。有機電界発光素子の層構成は、例えば、陽極/正孔注入層/発光層/電子輸送層/陰極や、陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極などである。
【0004】
近年、発光層と陽極の間に正孔注入層及び正孔輸送層等の電荷輸送層を組み込むことにより、発光層への正孔注入性が改善されること、電荷のバランスを最適化する緩衝層として作用し、素子の発光効率や寿命が大きく改善されることがわかっている。
【0005】
有機電界発光素子の正孔輸送層に用いられる正孔輸送材料には、大きく分類すると低分子系正孔輸送材料と高分子系正孔輸送材料がある。
【0006】
低分子系正孔輸送材料を用いた正孔輸送層の成膜方法としては、主に真空蒸着法が用いられており、その特徴として、異なる機能を持った種々の材料を容易に多層化でき、高性能な有機電界発光素子を形成できる反面、パネルの大画面化、高精細化に伴う膜厚の均一制御や塗り分けが難しく、さらには大掛かりな真空装置を必要とするため、製造コストが高くなるという問題がある。
【0007】
また、低分子系正孔輸送材料を用いた正孔輸送層の成膜方法として、低分子系正孔輸送材料の溶液塗布による成膜法についても実用化研究がなされているが、この手法では低分子化合物の結晶化に伴う偏析や相分離が観察され、実用化には改善が必要である。
【0008】
一方、高分子系正孔輸送材料の成膜方法としては、真空蒸着法では蒸着できない材料が殆どであるため、スピンコート法、印刷法やインクジェット法等の溶液塗布法が用いられる。この方法は、大画面化が容易であり、量産化に優れている反面、層間の混合が生じやすく、積層による各層間の界面での機能分離が出来ない事や、溶剤への溶解性等乾式とは異なる必要特性が加わるため、湿式法に使用可能な電荷注入材料、電荷輸送材料が限られるといった問題点がある。
【0009】
このような要求特性を発現させるための試みとして、例えば、特許文献1では、アクリル化合物又はその硬化物が、特許文献2では、オキセタン基を有する電荷輸送物質および/または発光性物質を三次元的に架橋重合させた重合体を有機発光素子へ用いた例が報告されている。また、特許文献3ではビニル基を有するNPDを用いた硬化物が報告されている。しかしながら、これらの化合物を用いた有機電界発光素子では、積層による機能分離は出来ているものの、電子耐性や電荷輸送性能が十分ではなく、十分な特性を得るに至っていない。
【0010】
また、有機電界発光素子の発光効率を高める手法として、π共役高分子の主鎖に電子耐性や電荷輸送性能に優れたインドロカルバゾール単位が組み込まれた高分子材料及び発光素子が開示されている。すなわち、特許文献4ではインドロカルバゾールの6,12位で結合した共役系高分子が、また特許文献5ではN位置換のインドロカルバゾールを主骨格とした共役系高分子が開示されている。しかし、これらの高分子は、電子耐性や電荷輸送性はよくなるものの、インドロカルバゾール骨格を主鎖に含有するπ共役高分子は有機溶剤に対する溶解性が低く成膜が困難であり、たとえ成膜出来たとしても、他の塗布可能な高分子と同様に薄膜自体が溶剤耐性を持たないため、成膜後発光層材料等その他の材料をその上に塗布法で成膜する事が出来ないという問題点がある。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
本発明の重合体は、前記一般式(1)で表されるオリゴマー又は高分子である。本発明の重合体は、有機電界発光素子の有機層に使用される有機電界発光素子用の材料として有用であるが、この硬化物を有機電界発光素子の有機層に使用すればより効果的である。硬化物を使用する場合は、本発明の重合体はその前駆体ということができる。
【0023】
本発明の重合体は、優れた電荷輸送能力、特に正孔輸送能力を付与できるインドロカルバゾール骨格と重合性基を、主鎖を構成する単位中にペンダント(側鎖)として有している。ここでインドロカルバゾール骨格とは異なる電荷輸送性基を同時に主鎖に組み込むことにより、電荷の移動度(正孔輸送性基の場合は正孔移動度、電子輸送性基の場合は電子移動度)等を調整することが容易になり、素子特性制御が有利になる。ここで、主鎖を構成する単位は繰り返し単位を意味するが、この繰り返し単位は1種だけでなく、2種以上であってもよい。
【0024】
一般式(1)において、m及びnは存在モル比を表わし、全繰り返し単位を100モル%としたとき、mは1〜95モル%、nは5〜99モル%である。mは好ましくは10〜90モル%、より好ましくは50〜80モル%である。nは好ましくは10〜90モル%、より好ましくは20〜50モル%である。lは繰り返し数を表わし、重量平均分子量によって定まるが、平均(数平均)の繰り返し数としては2〜10000、好ましくは5〜1000である。
【0025】
前記一般式(1)中のRは水素原子又は1価の有機基である。1価の有機基としては、C
1〜C
20のアルキル基、C
1〜C
20のアルコキシ基、C
6〜C
30のアリール基、C
6〜C
30のアリールオキシ基、C
7〜C
36のアリールアルキル基、C
7〜C
36のアリールアルキルオキシ基、C
3〜C
30のヘテロアリール基、C
3〜C
30のヘテロアリールオキシ基、C
4〜C
36のヘテロアリールアルキル基、C
4〜C
36のヘテロアリールアルキルオキシ基又はC
3〜C
30のシクロアルキル基であり、同一であっても異なっていてもよい。これらの基に炭化水素鎖が含まれる場合は、直鎖であっても分岐鎖であってもよく、Cl、F等のハロゲンが置換していても構わない。好ましくは、Rは水素原子、C
1〜C
12のアルキル基、C
1〜C
12のアルコキシ基、C
6〜C
24のアリール基、C
6〜C
24のアリールオキシ基、C
7〜C
28のアリールアルキル基、C
7〜C
28のアリールアルキルオキシ基、C
3〜C
24のヘテロアリール基、C
3〜C
24のヘテロアリールオキシ基、C
4〜C
25のヘテロアリールアルキル基、C
4〜C
25のヘテロアリールアルキルオキシ基又はC
3〜C
24のシクロアルキル基である。また、一般式(1)中の2種の繰り返し単位中には、それぞれの3つのRがあるが、その2つ又は3つのRが水素原子であることが好ましく、更には3つが水素原子であることがより好ましい。
また、これらの基は置換基を有していても良く、置換基を有する場合、前記炭素数は置換基も含めて計算するものとする。その置換基としては、性能を阻害するものでなければ特に限定するものではないが、C
1〜C
4のアルキル基、フェニル基、ピリジル基、カルバゾリル基であることが好ましい。
【0026】
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基が挙げられ、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、又はオクチル基等の炭素数1〜8のアルキル基が挙げられる。上記アルキル鎖は直鎖であっても、分岐していても構わない。
【0027】
アルコキシ基の具体例としては、メチルオキシ基、エチルオキシ基、プロピルオキシ基、ブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基が挙げられ、好ましくはメチルオキシ基、エチルオキシ基、プロピルオキシ基、ブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、又はオクチルオキシ基等の炭素数1〜8のアルキルオキシ基が挙げられる。上記アルキル鎖は直鎖であっても、分岐していても構わない。
【0028】
アリール基、ヘテロアリール基の具体例としては、ベンゼン、ペンタレン、インデン、ナフタレン、アズレン、ヘプタレン、オクタレン、インダセン、アセナフチレン、フェナレン、フェナンスレン、アントラセン、トリンデン、フルオランテン、アセフェナントリレン、アセアントリレン、トリフェニレン、ピレン、クリセン、テトラフェン、テトラセン、プレイアデン、ピセン、ペリレン、ペンタフェン、ペンタセン、テトラフェニレン、コラントリレン、ヘリセン、ヘキサフェン、ルビセン、コロネン、トリナフチレン、ヘプタフェン、ピラントレン、オバレン、コラヌレン、フルミネン、アンタントレン、ゼトレン、テリレン、ナフタセノナフタセン、トルキセン、フラン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、キサンテン、オキサトレン、ジベンゾフラン、ペリキサンテノキサンテン、チオフェン、チオキサンテン、チアントレン、フェノキサチイン、チオナフテン、イソチアナフテン、チオフテン、チオファントレン、ジベンゾチオフェン、ピロール、ピラゾール、テルラゾール、セレナゾール、チアゾール、イソチアゾール、オキサゾール、フラザン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、インドリジン、インドール、イソインドール、インダゾール、プリン、キノリジン、イソキノリン、カルバゾール、インドロカルバゾール、イミダゾール、ナフチリジン、フタラジン、キナゾリン、ベンゾジアゼピン、キノキサリン、シンノリン、キノリン、プテリジン、フェナントリジン、アクリジン、ペリミジン、フェナントロリン、フェナジン、カルボリン、フェノテルラジン、フェノセレナジン、フェノチアジン、フェノキサジン、アンチリジン、テベニジン、キンドリン、キニンドリン、アクリンドリン、フタロペリン、トリフェノジチアジン、トリフェノジオキサジン、フェナントラジン、アントラジン、ベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、ベンゾイソチアゾール又はこれら芳香環が複数連結された芳香族化合物から水素を除いて生じる基が挙げられる。
【0029】
なお、芳香環が複数連結された芳香族化合物から生じる基である場合、連結される数は2〜10が好ましく、より好ましくは2〜7であり、連結される芳香環は同一であっても異なっていても良い。その場合、結合手の位置は限定されず、連結された芳香環の末端部の環であっても中央部の環であってもよい。ここで、芳香環は芳香族炭化水素環及び芳香族複素環を総称する意味である。また、連結された芳香環に少なくとも1つの複素環が含まれる場合はヘテロアリール基に含める。
【0030】
ここで、芳香環が複数連結された芳香族化合物から水素を除いて生じる1価の基は、例えば、下記式で表わされる。
【0031】
(式中、Ar
3〜Ar
8は、置換又は無置換の芳香環を示す。)
【0032】
アリールアルキル基、ヘテロアリールアルキル基の具体例としては、前記アリール基、ヘテロアリール基に前記アルキル基が連結した基が挙げられる。
【0033】
アリールオキシ基、アリールアルキルオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、ヘテロアリールアルキルオキシ基の具体例としては、前記アリール基、アリールアルキル基、ヘテロアリール基、ヘテロアリールアルキル基にオキシ基が連結した基が挙げられる。
【0034】
シクロアルキル基の具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、又はメチルシクロヘキシル基が挙げられ、好ましくはシクロペンチル基、シクロヘキシル基又はメチルシクロヘキシル基が挙げられる。
【0035】
一般式(1)中のYは、主鎖と重合性基W又はインドロカルバゾリル基を連結するための2価の連結基である。重合体の主鎖に目的の官能基をペンダントとして持たせる場合に採用される2価の基又は単結合であることができる。Yは単結合、C
1〜C
20のアルキレン基、R
2-Ar
1-R
2、OR
2-Ar
1、Ar
1-R
2O、OR
2-Ar
1-R
2O、O-Ar
1、Ar
1-O、O-Ar
1-O、R
2-O-R
2、CO、又はCOOであり、好ましくは単結合、C
6〜C
30のアリーレン基、C
3〜C
30のヘテロアリーレン基である。
ここで、R
2は独立に単結合又はC
1〜C
10のアルキレン基であり、Ar
1はC
6〜C
30のアリーレン基又はC
3〜C
30のヘテロアリーレン基である。また、R
2が単結合である場合は、R
2-Ar
1-R
2はAr
1を意味し、R
2-O-R
2はOを意味し、これらのR
2の一方が単結合である場合は、前者はAr
1-R
2を意味し、後者はO-R
2を意味する。その他の基も同様である。なお、アルキレン基、アリーレン基又はヘテロアリーレン基等、Rの説明でしたと同じ基は、炭素数が相違する場合があるとしても、同様な基が好ましく挙げられる。
これらの基に炭化水素鎖が含まれる場合は、直鎖であっても分岐鎖であってもよく、Cl、F等のハロゲンが置換していても構わない。また、これらの基は置換基を有していても良く、前記Rで説明した置換基と同様である。Yは連結基が長くなるほど繰り返し単位中の電荷輸送能力が低下すると共に熱的にも不安定性になるため、連結基は短い方がより好ましい。
【0036】
アルキレン基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基が挙げられ、好ましくはメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基等の炭素数1〜8のアルキレン基が挙げられる。上記アルキレン鎖は直鎖であっても、分岐していても構わない。
【0037】
アリーレン基、ヘテロアリーレン基の具体例としては、前記Rのアリール基、ヘテロアリール基で例示した芳香環又はこれら芳香環が複数連結された芳香族化合物から2つの水素を除いて生じる基が挙げられる。
【0038】
R及びYは、W又はZと同じ機能を有することは望ましくないので、5環以上の複素環構造や、オレフィン性二重結合等の重合性基をその内部に有しない。
【0039】
前記一般式(1)中のZは、N位置換のインドロカルバゾリル基である。このインドロカルバゾリル基は、インドール環とカルバゾール環が縮合した5環の縮合環化合物からN位のHを1つとって生じる基である。このインドロカルバゾリル基は、インドール環とカルバゾール環との縮合可能な位置が複数存在するため、下記式(A)〜(F)の6種類の構造異性体の基をとり得るが、いずれの構造異性体であってもよい。また、インドロカルバゾリル基は、主鎖と結合していない他方のN位に6員環芳香族基を有することが好ましい。また、インドロカルバゾール基(前記他方のN位に置換する6員環芳香族基を含む)は、本発明の効果を阻害しない範囲で、置換基を有することができる。
【0041】
前記一般式(1)中のZで表されるN位置換のインドロカルバゾリル基としては、前記式(2)〜(7)に示す構造からなる群より選択されるいずれか1つ、もしくは2つ以上のインドロカルバゾリル基がある。2つ以上である場合は、一般式(1)中のZは、2つ以上の種類のインドロカルバゾリル基からなることになる。
【0042】
前記式(2)〜(7)において、R
1は前記一般式(1)のRと同様な意味を有する。
【0043】
前記式(2)〜(7)において、Xは、各々独立にN又はC−Lの何れかである。ここで、Lは独立に水素原子、C
6〜C
30のアリール基、C
3〜C
30のヘテロアリール基、又はC
12〜C
60のジアリールアミノ基であり、水素原子、C
6〜C
24のアリール基、C
3〜C
24のヘテロアリール基、又はC
12〜C
36のジアリールアミノ基であることが好ましい。
【0044】
ここで、好ましいアリール基、ヘテロアリール基ジアリールアミノ基のアリール基の具体例としては、前記一般式(1)のRで説明したアリール基、ヘテロアリール基で例示したものが挙げられ、より好ましくはベンゼン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、インドール、カルバゾール又はこれら芳香環が複数連結された芳香族化合物から水素を除いて生じる基、ジフェニルアミノ基、ジナフチルアミノ基が挙げられる。なお、芳香環が複数連結された芳香族化合物から生じる基である場合、連結される数は2〜10が好ましく、より好ましくは2〜5であり、連結される芳香環は同一であっても異なっていても良い。
【0045】
また、前記アリール基、ヘテロアリール基、又はジアリールアミノ基のアリール基は、置換基を有していてもよく、置換基を有する場合、置換基の総数は1〜10、好ましくは1〜6であり、より好ましくは1〜4である。なお、芳香環が複数連結された芳香族化合物から生じる基も同様に置換基を有することができる。置換基は限定されるものではないが、好ましい置換基としては炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数1〜20のアルキル置換アミノ基、炭素数2〜20のアシル基、炭素数12〜24のジアリールアミノ基等が挙げられる。より好ましくはメチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、フェニル基、ピリジル基、ジフェニルアミノ基、カルバゾリル基があげられる。置換基を2つ以上有する場合は、同一であっても異なっていても良い。
【0046】
前記一般式(1)中のWは、光、熱、触媒等により重合可能な重合性基である。この重合性基の好ましい例としては、ラジカル重合性基、カチオン重合性基等が挙げられる。ラジカル重合性基としては、ビニル基、炭素数1〜10のアルキル基で置換された置換ビニル基が好ましく、より好ましくはビニル基、イソプロペニル基である。カチオン重合性基としては、エポキシ基、オキセタン基、炭素数1〜10のアルキル基で置換された置換エポキシ基、炭素数1〜10のアルキル基で置換された置換オキセタン基などの環状エーテル基が好ましく、重合の速度を制御しやすい点でオキセタン基、炭素数1〜10のアルキル基で置換された置換オキセタン基が特に好ましい。
【0047】
一般式(1)において、主鎖を形成する繰り返し単位は、特に限定するものではないが、重合の容易さ、素子性能向上の観点から、インドロカルバゾリル基または架橋基が置換したビニル化合物を重合または重合してなるエチレン鎖やスチレン鎖を繰り返し単位とする重合体であることが好ましい。
【0048】
また、主鎖を形成する繰り返し単位には、ZやWを有しないその他の単位を含むことができる。その他の単位を含む場合は50モル%以下であることが好ましい。その他の単位としては、一般式(1)において、Y-W又はY-Zが水素原子である単位がある。
【0049】
次に、一般式(1)で表わされる重合体の製造方法について説明する。製造方法については、特に制限はないが、インドロカルバゾール骨格を有するビニル化合物と、重合性基を有するビニル化合物を共重合する方法がある。ここで、ビニル化合物のビニル基はメタクリル基、イソプロペニル基のようなビニル基のHの1〜4個を置換した置換ビニル基であることができる。この置換基は一般式(1)中のRに対応する。
その他の繰り返し単位を少量存在させる場合は、例えば、メタアクリル酸エステルやスチレンを併用することがよい。
【0050】
上記インドロカルバゾール骨格を有するビニル化合物について、以下に例示するが、なんらこれらに限定されるものではない。また、ここでインドロカルバゾール骨格を有するビニル化合物は必要に応じて1種又は2種以上を混合して使用してもよい。
【0055】
また、上記重合性基を有するビニル化合物については、例えば以下の一般式に示すような架橋基を有するビニル化合物が挙げられるが、なんらこれらに限定されるものではない。また、ここで重合性基を有するビニル化合物は必要に応じて1種又は2種以上を混合して使用してもよい。これらの重合性基を有するビニル化合物を使用して一般式(1)の重合体を合成する際には、該ビニル化合物のビニル基部分が反応して重合するが、2種のビニル基が含まれる場合は、一方のビニル基は重合性基として未反応のまま残る。
【0058】
本発明のインドロカルバゾール骨格と重合性基を有する重合体は、前記のインドロカルバゾール骨格を有するビニル化合物と重合性基を有するビニル化合物を公知の方法でビニル基を重合して容易に製造することができる。例えば、以下の反応式により製造することができる。重合方法は、Wとなる重合性基の重合反応又は架橋反応が起こらないような重合方法であれば、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合、付加重合のいずれでもよい。例えば、上記重合性基がカチオン重合性のオキセタン基の場合は、ラジカル重合、アニオン重合を用いる事が出来、特に汎用的な観点からラジカル重合が望ましい。
【0060】
本発明の重合体の重量平均分子量Mwは、1,000〜1,000,000であり、好ましくは5,000〜300,000である。Mwが1,000未満であると均一な膜を形成することが困難となり、1,000,000より大きくなると有機溶剤に対する溶解性が極端に悪くなり溶液塗布が困難となる。
【0061】
以下に、本発明のインドロカルバゾール骨格と重合性基を有する重合体の一例を示すが、これらに限定されるものではない。
【0066】
上記式で例示した重合体は、ブロックに重合した形式となっているが、重合形式はランダムであっても、ブロック等であっても差し支えない。
【0067】
また、本発明の重合体の重合性基を架橋反応させて硬化物を得る方法としては、光、熱、触媒等による重合反応が挙げられるが、有機EL素子にとって触媒を添加する系で素子性能に悪影響を及ぼす場合は、光、熱のみによる重合が望ましい。
【0068】
本発明の重合体又は硬化物を、有機EL素子の有機層に含有させることにより、優れた有機電界発光素子を与える。好ましくは、発光層、正孔輸送層、電子輸送層及び正孔阻止素子層から選ばれる少なくとも一つの有機層に含有させることがよい。更に好ましくは、正孔輸送層の材料として含有させることがよい。
【0069】
特に限定するものではないが、本発明の重合体を溶融し又は溶媒に溶解し、スピンコート法、インクジェット法、印刷法、スプレーコート法、ディスペンサー法等の塗布法で成膜し、そのまま若しくは乾燥し、熱、光、触媒等により架橋硬化させた硬化物を有機EL素子の有機層に含有させることが良い。
【0070】
以下、本発明の重合体を硬化させるための条件について説明する。なおこれらの条件は、いずれの重合性基を架橋反応させる際にも適用可能である。
本発明の重合体を硬化させるために加熱する場合は、加熱条件は重合性基の種類によって変化する。
加熱の手法は特に限定されないが、加熱の条件としては通常120℃以上、好ましくは400℃以下に本発明の重合体を用いて形成された層を加熱する。加熱時間としては、通常1分以上、好ましくは24時間以下である。加熱手段としては特に限定されないが、形成された層を有する積層体をホットプレート上に載せたり、オーブン内で加熱するなどの手段が用いられる。例えば、ホットプレート上で120℃以上、1分間以上加熱する等の条件を用いることができる。
【0071】
光などの活性エネルギー照射による場合には、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、赤外ランプ等の紫外・可視・赤外光源を直接用いて照射する方法、あるいは前述の光源を内蔵するマスクアライナ、コンベア型光照射装置を用いて照射する方法などが挙げられる。光以外の活性エネルギー照射では、例えばマグネトロンにより発生させたマイクロ波を照射する装置、いわゆる電子レンジを用いて照射する方法が挙げられる。
【0072】
照射時間としては、膜の溶解性を低下させるために必要な条件を設定することが好ましいが、通常、0.1秒以上、好ましくは10時間以下照射される。加熱および光などの活性エネルギー照射は、それぞれ単独、あるいは組み合わせて行ってもよい。組み合わせる場合、実施する順序は特に限定されない。
【0073】
加熱および光を含む活性エネルギー照射は、層に含有する水分および/または表面に吸着する水分の量を低減するために、窒素ガス雰囲気等の水分を含まない雰囲気で行うことが好ましい。同様の目的で、加熱および/または光などの活性エネルギー照射を組み合わせて行う場合には、少なくとも有機発光層の形成直前の工程を窒素ガス雰囲気等の水分を含まない雰囲気で行うことが特に好ましい。
【0074】
溶剤に溶解する場合は、本発明の重合体を通常0.1重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1重量%以上、また、通常50重量%以下、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下含有する。
【0075】
次いで、本発明の重合体の硬化物を用いた有機電界発光素子について説明する。
【0076】
本発明の重合体の硬化物を用いた有機電界発光素子は、一対の陽極と陰極の間に複数の有機層を持ち、特に正孔輸送層/発光層兼電子輸送層、正孔輸送層兼発光層/電子輸送層、または正孔輸送層/発光層/電子輸送層からなることが好ましい。特に好ましくは、正孔輸送層/発光層/電子輸送層の層構造である。また、本発明の有機電界発光素子は、また各有機層を形成した後、それぞれに保護層を設けることもできる。更に、素子全体を水分や酸素から保護するために保護膜を設けてもよい。
【0077】
発光層は、発光材料を含有する層であり、蛍光であっても燐光であってもよい。また、発光材料をドーパントとして用い、ホスト材料を併用してもよい。
【0078】
発光層における発光材料が、蛍光発光材料である場合、蛍光発光材料としては以下に示すような化合物が使用可能であるが、何らこれらに限定されるものではない。
【0080】
一方、発光材料が、燐光発光材料である場合、燐光発光材料としては、ホスト材料とゲスト材料との組み合わせがある。そして、ゲスト材料としてはルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金及び金から選ばれる少なくとも一つの金属を含む有機金属錯体を含有するものがよい。かかる有機金属錯体は、前記特許文献等で公知であり、これらが選択されて使用可能である。
【0081】
高い発光効率を得るための燐光発光材料としては、Ir等の貴金属元素を中心金属として有するIr(ppy)
3等の錯体類、Ir(bt)
2・acac
3等の錯体類、PtOEt
3等の錯体類が挙げられる。以下に、燐光発光材料を具体的に例示するが、これらに限定されるものではない。
【0083】
発光材料の種類を変えることによって様々な発光波長を持つ有機電界発光素子とすることができる。
【0084】
前記発光材料をドーパントとして使用する場合、発光層中に含有される量は、0.1〜50重量%の範囲にあることが好ましい。より好ましくは1〜30重量%である。
【0085】
発光層におけるホスト材料としては、公知のホスト材料等が使用可能で有り、本発明の重合体をホスト材料として用いることもできる。また、本発明の重合体をホスト材料としてもよく、この場合は本発明の重合体と他のホスト材料を併用してもよい。
【0086】
使用できるホスト化合物としては、正孔輸送能、電子輸送能を有し、かつ発光の長波長化を防ぎ、なおかつ高いガラス転移温度を有する化合物であることが好ましい。
【0087】
このようなホスト材料は、多数の特許文献等により知られているので、それらから選択することができる。ホスト材料の具体例としては、特に限定されるものではないが、インドール誘導体、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリデン系化合物、ポルフィリン系化合物、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8―キノリノール誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾール誘導体の金属錯体に代表される各種金属錯体、ポリシラン系化合物、ポリ(N-ビニルカルバゾール)誘導体、アニリン系重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体等の高分子化合物等が挙げられる。
【0088】
正孔輸送層を形成する正孔輸送性化合物としては、多数の特許文献等により知られているので、それらから選択することができるが、本発明の重合体の硬化物が有利に使用される。この場合は、必要に応じて、第3級アミンのトリフェニルアミン誘導体、カルバゾール誘導体などの他の正孔輸送性化合物を併用することができる。例えば、本発明の重合体の硬化物と、低分子正孔輸送性化合物などを添加剤として1種又は2種以上配合し、組成物として用いてもよい。以下に、正孔輸送性化合物を具体的に例示するが、これらに限定されるものではない。
【0090】
電子輸送層を形成する電子輸送性化合物としては、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、トリアゾール誘導体などが例示される。必要に応じて、これらを1種又は2種以上配合し、組成物として用いてもよい。以下に、電子輸送性化合物を具体的に例示するが、これらに限定されるものではない。
【0092】
また、陽極からの正孔注入効率を向上させるために陽極と正孔輸送層又は発光層の間に正孔注入層を入れてもよい。正孔注入層を形成する正孔注入材料としては、ポリチオフェン誘導体、ポリピロール誘導体などの導電性高分子が使用できる。中でも、ポリチオフェン誘導体のポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS)が正孔注入効率の点から好ましい。正孔注入層を使用する場合、その厚さは好ましくは200nm以下、より好ましくは100nm以下である。
【0093】
陽極は、正孔注入層、正孔輸送層または発光層などに正孔を供給するものであり、一般的にガラス基板上に形成される。本発明に用いられる陽極材料は特に限定されないが、具体的にはインジウム-スズ酸化物(ITO)、スズ酸化物などの導電性金属酸化物や金、銀、白金などの金属が挙げられる。また、市販のITO付ガラスを使用することもできる。市販のITO付ガラスは、通常、洗浄剤水溶液、溶剤洗浄後、UVオゾン照射装置又はプラズマ照射装置により清浄して使用される。
【0094】
陰極は、電子輸送層または発光層に電子を供給するものであり、本発明に用いられる陽極材料は特に限定されないが、具体的にはLi、Mg、Ca、Alなどの金属やそれらの合金、例えばMg−Ag合金、Mg−Al合金などが挙げられる。
【0095】
陰極及び陽極は公知の方法、つまり真空蒸着法やスパッタリング法によって形成できる。陰極の厚さは、好ましくは300nm以下、より好ましくは200nm以下であり、一方、陽極の厚さは、好ましくは200nm以下、より好ましくは100nm以下である。
【0096】
高分子発光材料、正孔輸送層用高分子材料又は電子輸送層用高分子材料などの高分子層の成膜法としては、一般的にスピンコート法が用いられており、その他にも大面積の有機高分子層を成膜する手法として、インクジェット法、印刷法、スプレーコート法、ディスペンサー法などが挙げられるが、何らこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0097】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0098】
合成例及び実施例で合成した化合物は、
1H−NMR(溶媒:重クロロホルム)、FD−MS、GPC、TGA、DSC、UV及びIR分析から選ばれる1種類以上の分析法により同定した。
【0099】
実施例1
化合物(1−1)の合成
下記スキーム(S1)に従い重合体(1−1)を合成する。
【0100】
窒素雰囲気下、化合物(A−1)54.7mmolと化合物(A−2)109.3mmolをDMI(ジメチルイミダゾリジノン)180gに挿入し、Cu
2O13.6mmol(0.25eq)、K
2CO
382.0mmol(1.5eq)を添加して、190℃、20hr反応させた。反応液をセライトに通すことにより触媒等をろ別し、トルエン、飽和NaCl水溶液を加えて油水分離させた。有機層にMgSO
4を加えてろ別し溶媒を減圧留去した。これをMeOHを加えて砕きながらリスラリーすることにより粗生成物18.5gを得た。この後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し化合物(A−3)6.8gを得た。
【0101】
窒素雰囲気下、化合物(A−3)32.6mmolをTHF(テトラヒドロフラン)380ml中、メチルトリフェニルホスホニウムブロミド34.2mmol(1.05eq)の存在下、tBuOK35.8mmol(1.1eq)/THF30ml溶液を室温で20minかけて滴下し、さらに100min反応させた。この反応液にH
2O400mlを加えた後、THFを留去しCH
2Cl
2(塩化メチレン)200mlを加えて油水分離した。有機層から得た粗生成物(回収量:26.3g)を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物(A―4)7.2gを得た。化合物(A−4)の1H−NMR及びFD-MSスペクトルを以下に示す。
1H−NMR(400MHz、CDCl3):δ(ppm);8.171(1H、d、8Hz)、8.152(1H、dd、8、1Hz)、7.54−7.72(6H、m)、7.51−7.54(2H、m)、7.16−7.35(1H、7H、m)、6.807(1H、dd、17、11)、6.803(1H、dt、1、8Hz)、6.056(1H、d、8Hz)、5.811(1H、d、17Hz)、5.329(1H、d、11Hz)
FD−MSスペクトル:434(M+、base)
【0102】
化合物(A−4)とオキセタン基含有モノマー(OXMA:3−エチル−3−メタクリロキシメチルオキセタン:宇部興産製)を重合させて、化合物(A−4):OXMA=1:1の重合体(1−1)を合成した。具体的には化合物(A−4)0.69mmolとOXMA0.69mmolをエチルベンゼン0.3gに溶解し、窒素置換後125℃、15時間反応させた。その後溶媒としてアセトニトリルを用いて、再沈殿精製及びリスラリーを繰り返すことにより、未反応モノマーを除去した。その後、ソックスレーによる還流精製を実施し、重合体(1−1)を0.37g得た。得られた重合体は、GPC、1H−NMRで同定した。Mwは、GPC(テトラヒドロフラン)のポリスチレン換算で30,400、分子量分布2.29であった。重合体(1−1)について、化合物(A−4)及びOXMA由来の繰り返し単位の比を1H−NMRで測定したところ、(A−4)/OXMA=45/55(mol/mol)であった。化合物(A−5)は、OXMAである。
【0103】
実施例2
溶媒洗浄、UVオゾン処理した膜厚150nmからなるITO付ガラス基板に、正孔注入層としてポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS):(エイチ・シー・シュタルク株式会社製、商品名:クレビオスPCH8000)を膜厚25nmで成膜した。次に、合成した重合体(1−1)をTHFに溶解して1wt%溶液に調製し、スピンコート法により正孔輸送層20nmを成膜した。次に、嫌気条件下150℃、1時間ホットプレートで加熱、硬化を行った。その後、真空蒸着装置を用いて、発光層ドーパントとしてトリス(2−(p−トリル)ピリジン)イリジウム(III)を、発光層ホストとして4,4’−ビス(9H−カルバゾル−9−イル)ビフェニルを用い、ドーパント濃度が0.6wt%となるように共蒸着し、40nm発光層を成膜した。その後、真空蒸着装置を用いて、Alq
3を35nm、陰極としてLiF/Alを膜厚170nmで成膜し、この素子をグローブボックス内で封止することにより有機電界発光素子を作製した。
【0104】
こうして得られた有機電界発光素子に外部電源を接続し、直流電圧を印加したところ、表1のような発光特性を有することが確認された。表1に示す輝度は、20mA/cm
2での値である。なお、素子発光スペクトルの極大波長は550nmであり、イリジウム錯体由来の緑色発光が観測された。
【0105】
実施例3
溶媒洗浄、UVオゾン処理した膜厚150nmからなるITO付ガラス基板に、正孔注入層としてポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS):(エイチ・シー・シュタルク株式会社製、商品名:クレビオスPCH8000)を膜厚25nmで成膜した。次に、重合体(1−1)を実施例2と同一条件で成膜した。そして発光層ドーパントとしてトリス(2−(p−トリル)ピリジン)イリジウム(III)を、発光層ホストとして4,4’−ビス(9H−カルバゾル−9−イル)ビフェニルを用い、ドーパント濃度が0.6wt%となるようにトルエンに溶解させ、1wt%溶液を調製し、スピンコート法により発光層として40nmを成膜した。このとき、正孔輸送層と発光層の混和は見られなかった。その後、真空蒸着装置を用いて、Alq
3を35nm、陰極としてLiF/Alを膜厚170nmで成膜し、この素子をグローブボックス内で封止することにより有機電界発光素子を作製した。素子評価は、実施例2と同様に行った。
【0106】
実施例4
実施例1と同様に、化合物(A−4):OXMA=7:3の重合体(1−2)を合成した。具体的には化合物(A−4)0.69mmolとOXMA0.30mmolをエチルベンゼン0.3gに溶解し、窒素置換後125℃、15時間反応させた。その後溶媒としてアセトニトリルを用いて、再沈殿精製及びリスラリーを繰り返すことにより、未反応モノマーを除去した。その後、ソックスレーによる還流精製を実施し、重合体(1−2)を0.27g得た。得られた重合体は、GPC、1H−NMRで同定した。Mwは、GPC(テトラヒドロフラン)のポリスチレン換算で18,100、分子量分布2.24であった。重合体(1−2)について、化合物(A−4)及びOXMA由来の繰り返し単位の比を1H−NMRで測定したところ、(A−4)/OXMA=71/29(mol/mol)であった。
【0107】
実施例5
正孔輸送層として重合体(1−1)の代わりに重合体(1−2)を用いた以外は実施例2と同様にして有機電界発光素子を作製した。
【0108】
実施例6
正孔輸送層として重合体(1−1)の代わりに重合体(1−2)を用いた以外は実施例3と同様にして有機電界発光素子を作製した。
【0109】
比較例1
実施例2において、重合体(1−1)を使用しなかった以外は、同様にして素子を作製した。
【0110】
比較例2
実施例3において、特許文献3に記載の下記化合物(B−1)を用いて正孔輸送層を形成し、又正孔輸送層を形成した後に交流電源方式の紫外線照射装置を用いて紫外線を90秒間照射し、光重合を行った以外は同様にして有機電界発光素子を作製した。
【0111】
比較例3
特許文献4に記載の下記化合物(B−2)を特許文献4に記載の方法で合成し、これを正孔輸送層に用いた以外は実施例3と同様にして有機電界発光素子を作製した。
【0112】
【0113】
実施例7
下記スキーム(S2)に従い重合体(2−1)を合成する。
【0114】
【0115】
窒素雰囲気下、100mlナスフラスコに、化合物(A−1)を2.00g(6.02mmol)に1,2−ジクロロエタン30.0gを加え、バス温50℃にて攪拌した。臭化テトラブチルアンモニウム0.76g(2.36mmol)と水酸化カリウム17.56g(314mmol)、炭酸カリウム15.8g(114mmol)を4回に分けて投入しながら、バス温50℃で101時間攪拌した。室温まで降温後、固形分をろ別し、ろ液を減圧留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して白色粉末の化合物(A−6)を1.93g(収率81%)得た。
【0116】
窒素雰囲気下、ジムロートを具備した300mlナスフラスコに、化合物(A−6)を2.59g(6.56mmol)、イソプロピルアルコール125.0g、テトラヒドロフラン50.0g、ヒドロキノン36mg(0.33mmol)、水酸化カリウム12.5g(223mmol)を投入し、23時間、バス温90℃にて加熱還流した。室温まで降温後、蒸留水200gを装入し、イソプロピルアルコールおよびテトラヒドロフランを減圧留去した。この溶液を、ジクロロメタン250gで4回抽出し、抽出液を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。固形物を吸引ろ過後、溶剤を減圧留去し、粗生成物5.48gを得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製後、ジクロロメタン/イソプロピルアルコールにて2回再結晶を行い、化合物(A−7)を2.10g(収率89%)得た。1H−NMR(400MHz、CDCl
3):δ(ppm);8.725(1H、d、8Hz)、8.083(1H、br d、8Hz)、8.066(1H、d、8Hz)、7.861(1H、dd、10、16Hz)、7.832(1H、br d、8Hz)、7.657(2H、t、8Hz)、7.598(2H、d、8Hz)、7.542(1H、t、8Hz)、7.448(1H、t、8Hz)、7.398(2H、m)、7.315(3H、m)、5.671(1H、d、16Hz)、5.664(1H、d、10Hz)
FD−MSスペクトル:358(M+、base)
【0117】
化合物(A−10)については、Journal of the American Chemical Society; vol. 132; nb.43; (2010); p. 15096-15098 に記載の方法により、合成した。
1H−NMR(400MHz、CDCl
3):δ(ppm);7.398(2H,d,J=8),7.309(2H,d,J=8),6.713(1H,dd,J=11,18),5.748(1H,dd,J=1,18),5.243(1H,dd,J=1, 11)
4.603(1H,1H,d,J=12),4.546(1H,d,J=12),3.765(1H,dd,J=3,12),3.431(1H,dd,J=6,12)
3.189(1H,m),2.805(1H,dd,J=4,5),2.621(1H,dd,J=3,5)
【0118】
化合物(A−7)と化合物(A−10)を共重合させて、重合体(2−1)を合成した。具体的には化合物(A−7)0.69mmolと化合物(A−10)0.69mmolをエチルベンゼン0.3gに溶解し、窒素置換後125℃、15時間反応させた。その後溶媒としてアセトニトリルを用いて、再沈殿精製及びリスラリーを繰り返すことにより、未反応モノマーを除去した。その後、ソックスレーによる還流精製を実施し、重合体(2−1)を0.45g得た。得られた共重合体は、GPC、1H−NMRで同定した。Mwは、GPC(テトラヒドロフラン)のポリスチレン換算で25,900、分子量分布2.31であった。重合体(2−1)について、化合物(A−7)及び化合物(A−10)由来の繰り返し単位の比を1H−NMRで測定したところ、(A−7)/(A−10)=52/48(mol/mol)であった。
【0119】
実施例8
正孔輸送層として重合体(1−1)の代わりに重合体(2−1)を用いた以外は実施例2と同様にして有機電界発光素子を作製した。
【0120】
実施例9
正孔輸送層として重合体(1−1)の代わりに重合体(2−1)を用いた以外は実施例3と同様にして有機電界発光素子を作製した。
【0121】
実施例10
下記スキーム(S3)に従い重合体(3−1)を合成する。
【0122】
窒素雰囲気下、化合物(A−11)27.8g(108mmo1)と3−ヨードベンズアルデヒド25.0g(108mmol)を用いて化合物(A−12)を合成し、次いでヨードベンゼン48.7g(239mmol)を反応させる以外は、実施例1と同様に反応、後処理を行うことにより、白色粉末の化合物(A―14)を7.3g(収率64%)を得た。化合物(A―14)の1H−NMR及びFD−MSスペクトルを以下に示す。
1H―NMR(400MHz、CDC13)、デルタ(ppm);8.171(1H、d、9Hz)、8.149(1H、dd、8、2Hz)、7.55―7.66(8H、m)、7.469(1H、dt、8、2H z)、7.28―7.38(5H、m)、7.222(1H、ddd、8、7、1Hz)、6.808(1H、dd、11,18Hz)、6.789(ddd、8、7、1Hz)5.940(1H、dd、8、1Hz)、5.831(1H、dd、18、1Hz)、5.355(1H、d、11Hz)
FD−MSスペクトル434(M+、base)
【0123】
化合物(A−14)を用いる以外は実施例1と同様にオキセタン基含有モノマー(OXMA:3−エチル−3−メタクリロキシメチルオキセタン:宇部興産製)を共重合させて、化合物(A−14):OXMA=1:1の重合体(3−1)を合成した。得られた重合体は、GPC、1H−NMRで同定した。Mwは、GPC(テトラヒドロフラン)のポリスチレン換算で16,200、分子量分布2.16であった。重合体(3−1)について、化合物(A−14)及びOXMA由来の繰り返し単位の比を1H−NMRで測定したところ、(A−14)/OXMA=47/53(mol/mol)であった。
【0124】
実施例11
正孔輸送層として重合体(1−1)の代わりに重合体(3−1)を用いた以外は実施例2と同様にして有機電界発光素子を作製した。
【0125】
実施例12
正孔輸送層として重合体(1−1)の代わりに重合体(3−1)を用いた以外は実施例3と同様にして有機電界発光素子を作製した。
【0126】
素子評価は、いずれも実施例2と同様に行った。正孔輸送層(HTL)に使用した使用した重合体又は化合物、発光層製膜方式と、評価結果を表1に示す。
【0127】
【表1】
【0128】
本発明の重合体の硬化物を有機電界発光素子の有機層に用いる事により、正孔注入性や電子耐性、電荷輸送性が改善され発光効率に優れる。また、その他の材料を含有する有機層を上層に塗布により積層可能であることから、大面積素子が容易に作製可能となる。この重合体の硬化物を使用した有機電界発光素子は発光効率に優れるため、照明装置、画像表示装置、表示装置用バックライト等に用いられる有機電界発光素子への応用が考えられ、その技術的価値は大きいものである。