特許第5796076号(P5796076)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5796076
(24)【登録日】2015年8月21日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】高導電性静電チャック
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20151001BHJP
   H02N 13/00 20060101ALI20151001BHJP
   B23Q 3/15 20060101ALI20151001BHJP
【FI】
   H01L21/68 R
   H02N13/00 D
   B23Q3/15 D
【請求項の数】26
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-528285(P2013-528285)
(86)(22)【出願日】2011年9月8日
(65)【公表番号】特表2013-542590(P2013-542590A)
(43)【公表日】2013年11月21日
(86)【国際出願番号】US2011050841
(87)【国際公開番号】WO2012033922
(87)【国際公開日】20120315
【審査請求日】2014年8月20日
(31)【優先権主張番号】61/509,970
(32)【優先日】2011年7月20日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/380,970
(32)【優先日】2010年9月8日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505307471
【氏名又は名称】インテグリス・インコーポレーテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】500324750
【氏名又は名称】バリアン・セミコンダクター・エクイップメント・アソシエイツ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スローネン,デイビツド
(72)【発明者】
【氏名】ストーン,リユドミーラ
(72)【発明者】
【氏名】ブレイク,ジユリアン
(72)【発明者】
【氏名】ストーン,デール・ケイ
(72)【発明者】
【氏名】クツク,リチヤード・エイ
(72)【発明者】
【氏名】ドンネル,ステイーブン
(72)【発明者】
【氏名】ベンカトラマン,チヤンドラ
【審査官】 平野 崇
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0284894(US,A1)
【文献】 特開平05−063063(JP,A)
【文献】 特開平08−316298(JP,A)
【文献】 特開2008−135736(JP,A)
【文献】 特開2006−040993(JP,A)
【文献】 特開2008−251737(JP,A)
【文献】 特開2008−210913(JP,A)
【文献】 特開2004−349663(JP,A)
【文献】 実開平02−015735(JP,U)
【文献】 国際公開第2009/031566(WO,A1)
【文献】 特開2004−022888(JP,A)
【文献】 特表2009−539240(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
B23Q 3/15
H02N 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電チャックであって、
前記静電チャックのガス封止リングの工作物接触表面の少なくとも一部分をカバーする導電性経路であって、前記静電チャックの外側エッジの少なくとも一部分をカバーする被覆を有すると共に接地に対する電気的経路の少なくとも一部分を有する導電性経路を有し前記導電性経路が、10Ω/sq〜10Ω/sqの範囲内の表面抵抗率を有し、前記静電チャックがさらに、
〜112Ω/sqの範囲内の表面抵抗率を有する前記静電チャックの工作物接触表面の主フィールドエリアをし、前記主フィールドエリアが、前記主フィールドエリアの周囲部分の上方に延在する少なくとも1つのエンボスと、前記少なくとも1つのエンボスの工作物接触表面上に導電性被覆とを有する静電チャック。
【請求項2】
前記導電性経路、ダイアモンド様炭素を有する請求項1に記載の静電チャック。
【請求項3】
前記導電性経路、ドーピングされたダイアモンド様炭素を有する請求項に記載の静電チャック。
【請求項4】
前記導電性経路、窒素がドーピングされた水素化炭素を有する請求項に記載の静電チャック。
【請求項5】
前記導電性経路が、1ミクロン未満の厚さの被覆を有する請求項1に記載の静電チャック。
【請求項6】
前記導電性経路が、前記静電チャックの絶縁体層の下部を包む請求項1に記載の静電チャック。
【請求項7】
前記主フィールドエリア、炭化珪素を有する請求項1に記載の静電チャック。
【請求項8】
前記主フィールドエリアが、1011Ω/sqの範囲内の表面抵抗率を有する請求項に記載の静電チャック。
【請求項9】
前記静電チャックが、導電性接地層を有し、前記導電性接地層の少なくとも一部分が、前記静電チャックの絶縁体層の下部に位置し、前記導電性接地層が、前記導電性経路に電気的に接触している請求項1に記載の静電チャック。
【請求項10】
前記導電性接地層の外側エッジの少なくとも一部分、前記導電性経路によってカバーされる請求項に記載の静電チャック。
【請求項11】
前記導電性接地層、前記静電チャックの接地ピンに電気的に接触している請求項に記載の静電チャック。
【請求項12】
前記導電性接地層の少なくとも一部分の下部に位置した導電性エポキシ層を更に有する請求項に記載の静電チャック。
【請求項13】
前記静電チャックの前記導電性経路及び前記少なくとも1つのエンボスの前記工作物接触表面上の前記導電性被覆、それぞれ、ダイアモンド様炭素被覆を有する請求項に記載の静電チャック。
【請求項14】
前記静電チャック、導電性接地層を有し、前記導電性接地層の少なくとも一部分、前記静電チャックの絶縁体層の下部に位置し、前記導電性接地層、前記導電性経路に電気的に接触している請求項に記載の静電チャック。
【請求項15】
前記静電チャックの基部、前記基部の1つ又は複数のエッジ上に、面取りされたエリアを有する請求項に記載の静電チャック。
【請求項16】
前記導電性経路、前記面取りされたエリア内の導電性エポキシを通じて前記基部に電気的に接触している請求項15に記載の静電チャック。
【請求項17】
前記導電性経路、前記静電チャックの外側エッジの少なくとも一部分をカバーする被覆を有し、前記導電性経路は、前記静電チャックの絶縁体層の下部を包む請求項16に記載の静電チャック。
【請求項18】
前記静電チャックの前記工作物接触表面上に少なくとも1つの導電性パターンを更に有し、前記少なくとも1つの導電性パターン、前記導電性経路に電気的に接触している請求項1に記載の静電チャック。
【請求項19】
前記少なくとも1つの導電性パターン、導電性被覆によって被覆された金属を有する請求項18に記載の静電チャック。
【請求項20】
前記少なくとも1つの導電性パターン、前記静電チャックの中心に向かって延在するスポーク、前記静電チャックのガス孔の周りのリング、及び前記静電チャックの前記工作物接触表面上の少なくとも1つのエンボスの間のトレースのうちの少なくとも1つを有する請求項18に記載の静電チャック。
【請求項21】
前記静電チャックの前記主フィールドエリア、ポリマーを有する請求項1に記載の静電チャック。
【請求項22】
前記主フィールドエリア、前記主フィールドエリアの周囲部分の上方に延在する少なくとも1つのエンボスを有し、前記少なくとも1つのエンボス、ポリマーを有する請求項21に記載の静電チャック。
【請求項23】
前記主フィールドエリアが、1〜110Ω/sqの範囲内の表面抵抗率を有する請求項21に記載の静電チャック。
【請求項24】
前記導電性経路、導電性被覆を有し、前記導電性被覆、前記主フィールドエリアの少なくとも一部分をもカバーする請求項21に記載の静電チャック。
【請求項25】
主フィールドエリアが、カーボンナノチューブを有する請求項1に記載の静電チャック
【請求項26】
前記ポリマー、カーボンナノチューブが充填されたポリエーテルイミド、カーボンナノチューブが充填されたポリエーテルエーテルケトン、及びカーボンナノチューブが充填されたポリイミドのうちの少なくとも1つを有する請求項25に記載の静電チャック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2010年9月8日付けで出願された米国仮特許出願第61/380,970号及び2011年7月20日付けで出願された米国仮特許出願第61/509,970号の利益を主張する。これら特許出願の教示内容は、引用により、その全体が本明細書に包含される。
【0002】
プラテンとも呼ばれる静電チャックは、加工の際に工作物を固定及び支持するために使用される。工作物上に、且つ、工作物を支持するプラテン表面上にも、静電荷が蓄積する場合がある。工作物上に蓄積した電荷が、プラテン表面に移動する可能性もあり、且つ、プラテン表面上に蓄積された電荷が工作物に移動する可能性もある。
【背景技術】
【0003】
電荷の蓄積は、工作物の「吸着」問題を引き起こす可能性がある。一例においては、通常のアンクランプ力によって工作物を解放することができないほどに、電荷の蓄積が大きくなる可能性が存在している。通常のアンクランプ力は、例えば、リフトピンを上昇させて工作物の裏面に接触させることによって提供してもよい。別の例においては、残りの部分が工作物と接触した状態において、工作物の一部分をリフトピンによって上昇させるようにしてもよい。工作物が円板形状の半導体ウエハである際には、ウエハが「傾斜」した状態となり、プラテンのエッジに吸着しているように見える場合がある。関連するロボットアームがウエハの回収を試みた際に、ロボットアームがウエハに適切に係合せず、且つ、場合によっては、プラテンから離れるようにウエハを押し出することにより、ウエハの損傷及び加工の中断の発生をもたらす場合もある。別の工作物の「吸着」問題は、「プラテンの周りにおけるダンス」と呼称してもよい。この例においては、工作物は、加工の際に、又は装填位置において、プラテンに対してクランプされてもよい。半導体ウエハなどのいくつかの円形の又は円板形状の工作物の場合には、ウエハが、プラテンの外周に沿って全体的な振動歳差運動を開始することにより、ウエハが落下するリスクを増大させる場合がある。その他のケースにおいては、「ウエハウォーク」が発生する場合もある。「ウエハウォーク」は、持上げの際のプラテンに対するウエハエッジの部分的な吸着によって生じうるが、この結果、リフトピン上におけるウエハのぐらつき及びピン上におけるミスアライメントが発生し、これらがウエハのハンドリング問題をもたらすことになる。
【0004】
電荷の蓄積は、工作物の「吸着」問題を生成しない場合にも、工作物上に形成されている装置の損傷をもたらす場合がある。又、工作物がプラズマと同一のチャンバ内に位置するプラズマドーピングイオン注入装置においては、過剰な電荷の蓄積が、ドーピングの不均一性、マイクロローディング、及びアーキングをもたらす可能性がある。従って、過剰な電荷の蓄積を回避するために、いくつかの状況においては、プラズマドーピングイオン注入装置のスループットを意図的に制限している場合がある。
【0005】
電荷の蓄積の制御に対する従来の解決策の1つは、工作物がクランプ位置にある際に接地に対する経路を提供するべく、工作物の裏面に接触する3つのスプリング付勢された接地ピンを使用している。この解決策の1つの欠点は、スプリング付勢された接地ピンが3つのピンに制限されているという点にある。この結果、この接地構成の過剰な電荷の蓄積を放散させる有効性は、限られている。この解決策の別の欠点は、スプリング付勢された接地ピンの接触点が、工作物の裏面に対する損傷を生成しうる鋭いエッジを有しているという点にある。工作物の裏面に対する損傷は、望ましくない粒子(汚染)を生成する可能性をも有しており、粒子を、いくつかの加工用途においては、制限することが非常に重要であろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、静電チャックの性能を改善するという継続的なニーズが存在している。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態によれば、静電チャックのガス封止リングの工作物接触表面の少なくとも一部分をカバーする導電性経路であって、接地に対する電気的経路の少なくとも一部分を有する導電性経路と、約10〜約1012Ω/sqの範囲内の表面抵抗率を有する静電チャックの工作物接触表面の主フィールドエリアと、を有する静電チャックが提供される。
【0008】
更なる関連する実施形態においては、導電性経路は、約10Ω/sq〜約10Ω/sqの範囲内の表面抵抗率などの約10Ω/sq未満の表面抵抗率を有してもよい。導電性経路は、例えば、窒素がドーピングされた水素化炭素のようなドーピングされたダイアモンド様炭素などのダイアモンド様炭素を有してもよい。導電性経路は、約1ミクロン未満の厚さの被覆を有してもよい。導電性経路は、静電チャックの外側エッジの少なくとも一部分をカバーする被覆を有してもよい。導電性経路は、静電チャックの絶縁体層の下部を包んでもよい。主フィールドエリアは、炭化珪素を有してもよく、且つ、約10〜約1011Ω/sqの範囲内の表面抵抗率を有してもよい。
【0009】
その他の関係する実施形態においては、静電チャックは、導電性接地層を有してもよく、導電性接地層の少なくとも一部分は、静電チャックの絶縁体層の下部に位置し、導電性接地層は、導電性経路に電気的に接触している。導電性接地層は、約10Ω/sq未満の表面抵抗率を有してもよく、且つ、アルミニウムを有してもよい。導電性接地層の外側エッジの少なくとも一部分は、導電性経路によってカバーされてもよい。導電性接地層は、静電チャックの接地ピンに電気的に接触してもよい。静電チャックは、導電性接地層の少なくとも一部分の下部に位置した導電性エポキシ層を更に有してもよい。
【0010】
更なる関係する実施形態においては、主フィールドエリアは、主フィールドエリアの周囲部分の上方に延在する少なくとも1つのエンボスを有してもよい。静電チャックは、少なくとも1つのエンボスの工作物接触表面上に導電性被覆を更に有してもよい。静電チャックの導電性経路及び少なくとも1つのエンボスの工作物接触表面上の導電性被覆は、それぞれ、ダイアモンド様炭素被覆を有してもよい。少なくとも1つのエンボスを有する静電チャックは、導電性接地層を有してもよく、導電性接地層の少なくとも一部分は、静電チャックの絶縁体層の下部に位置し、導電性接地層は、導電性経路に電気的に接触している。静電チャックの基部は、基部の1つ又は複数のエッジ上に、面取りされたエリアを有してもよい。導電性経路は、グラファイト導電性エポキシなどの面取りされたエリア内の導電性エポキシを通じて基部に電気的に接触してもよい。導電性経路は、静電チャックの外側エッジの少なくとも一部分をカバーする被覆を有してもよく、導電性経路は、静電チャックの絶縁体層の下部を包んでもよい。
【0011】
その他の関係する実施形態においては、静電チャックは、静電チャックの工作物接触表面上に導電性パターンを更に有してもよく、少なくとも1つの導電性パターンは、導電性経路に電気的に接触している。少なくとも1つの導電性パターンは、ダイアモンド様炭素によって被覆されたアルミニウムなどの導電性被覆によって被覆された金属を有してもよい。少なくとも1つの導電性パターンは、静電チャックの中心に向かって延在するスポーク、静電チャックのガス孔の周りのリング、及び静電チャックの工作物接触表面上の少なくとも1つのエンボスの間のトレースのうちの少なくとも1つを有してもよい。
【0012】
更なる関係する実施形態においては、静電チャックの主フィールドエリアは、ポリマーを有してもよい。主フィールドエリアは、主フィールドエリアの周囲部分の上方に延在する少なくとも1つのエンボスを有してもよく、少なくとも1つのエンボスは、ポリマーを有する。主フィールドエリアは、約10〜約1010Ω/sqの範囲内の表面抵抗率を有してもよい。ポリマーは、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、及びポリイミドのうちの少なくとも1つを有してもよい。ポリマーの主フィールドエリアを有する静電チャックの導電性経路は、静電チャックの外側エッジの少なくとも一部分上にダイアモンド様炭素被覆を有し、且つ、静電チャックは、静電チャックの絶縁層の少なくとも一部分の下部にアルミニウム接地被覆を更に有してもよく、アルミニウム被覆は、導電性経路に電気的に接触している。ポリマーの主フィールドエリアを有する静電チャックの導電性経路は、主フィールドエリアの少なくとも一部分をカバーする導電性被覆を有してもよい。例えば、導電性被覆は、主フィールドエリアの少なくとも一部分及びガス封止リングの少なくとも一部分をカバーするダイアモンド様炭素を有してもよく、且つ、静電チャックは、静電チャックの絶縁層の少なくとも一部分の下部にアルミニウム接地被覆を更に有してもよく、アルミニウム被覆は、導電性経路に電気的に接触している。導電性経路は、ドーピングされた炭化珪素を有してもよい。
【0013】
本発明による別の実施形態においては、静電チャックの工作物接触表面の少なくとも一部分に電気的接続された導電性経路であって、接地に対する電気的経路の少なくとも一部分を有する導電性経路と、約10〜約1010Ω/sqの範囲内の表面抵抗率を有する静電チャックの工作物接触表面の主フィールドエリアであって、カーボンナノチューブを有するポリマーを有する主フィールドエリアと、を有する静電チャックが提供される。例えば、ポリマーは、カーボンナノチューブが充填されたポリエーテルイミド、カーボンナノチューブが充填されたポリエーテルエーテルケトン、及びカーボンナノチューブが充填されたポリイミドのうちの少なくとも1つを有してもよい。
【0014】
本発明の一実施形態によれば、静電チャックのガス封止リングの工作物接触表面の少なくとも一部分をカバーする導電性経路は、接地に対する電気的経路の少なくとも一部分を有する一方で、ガス封止リングのガス封止特性の維持もしている。
【0015】
上述の内容については、添付図面に示されている本発明の例示用の実施形態に関する以下の更に具体的な説明から明らかとなろう。添付図面においては、異なる図を通じて同一の参照符号は同一の部分を示している。添付図面は、必ずしも縮尺が正確ではなく、その代わりに、本発明の実施形態を例示することに重点が置かれている。更には、図面を参照した本明細書における説明の文脈から明らかとなるように、コンポーネントが互いに隣接した状態で示されている場合において、図面には、明瞭性を目的として、それらのコンポーネントの間になんらかのわずかな量の空間が介在するように示されている場合にも、それらのコンポーネントは、互いに電気的接触を実現してもよいことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態による静電チャックの図である。
図2】本発明の一実施形態による、1つ又は複数のエンボスの工作物接触表面上に導電性被覆を含む静電チャックの図である。
図3】本発明の一実施形態による、導電性接地層が静電チャックのエッジに沿って導電性経路の外側に配置されている図2の静電チャックの代替バージョンの図である。
図4】本発明の一実施形態による、導電性エポキシを使用して電気的接続を形成している静電チャックの図である。
図5】本発明の一実施形態による、静電チャックの工作物接触表面上に導電性パターンを含む静電チャックの図である。
図6】本発明の一実施形態による電荷のための接地に対する経路を提供するポリマー表面を有する静電チャックの図であり、ここでは、表面が、カーボンナノチューブが充填されたポリマーを含む。
図7】本発明の一実施形態による電荷のための接地に対する経路を提供するポリマー表面を有する静電チャックの図であり、ここでは、接地に対する経路が、ガス封止接触を伴う導電性被覆ブランケット薄膜によって提供されている。
図8】本発明の一実施形態による電荷のための接地に対する経路を提供するポリマー表面を有する静電チャックの図であり、ここでは、接地に対する経路が、ガス封止接触を伴う導電性被覆によって提供されている。
図9】本発明の一実施形態による静電チャックの図であり、ここでは、下部に位置した導電性層が使用されている。
図10】本発明の一実施形態による静電チャックの図であり、ここでは、ブランケット層が使用されている。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の例示用の実施形態について説明する。
【0018】
いくつかの従来の静電チャックにおいては、工作物をクランプする多数回のサイクルの後に、上部表面が破壊される場合があり、その結果、「アイランド」が生成される。これらの「アイランド」の間においては、材料の断面積が減少し、これにより、上部ドーピング層の全体にわたる電荷の分散が制限されることになる。次いで、この結果、数ミリメートルにわたる電荷極性の逆転を観察することができる「電荷のアイランド」が生成される。4〜6ミリメートルの距離における+/−400V以上の電荷は、珍しくない。この局部的な表面電荷は、外部電圧が存在しない状況においても、意図しないウエハのクランプ動作をもたらす場合がある。
【0019】
従って、静電チャック内の電荷の蓄積を制御するための改善されたプラテンに対するニーズが存在している。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態による静電チャック100の図である。静電チャック100は、接地に対する導電性経路101を特徴としており、この導電性経路101は、過剰な表面電荷の接地に対する放電を許容することにより、表面電荷の収集に起因したウエハの吸着を低減する。図1の実施形態の利益は、慎重に選択された表面抵抗率及び本明細書に記述されている接地経路を使用することにより、クランプ力に悪影響を与えることなしに、表面電荷を中和させることができるという点にある。導電性経路101は、例えば、ダイアモンド様炭素(Diamond−Like Carbon:DLC)から製造してもよく、ダイアモンド様炭素には、適切な表面抵抗率を実現するためにドーピングしてもよい。例えば、導電性被覆101は、約10Ω/sq〜約10Ω/sqの表面抵抗率などのように、DLC被覆と接地の間において102によって示されているように計測される約10Ω/sq未満の表面抵抗率を有してもよい。例えば、導電性経路101は、約1ミクロンの厚さを有する窒素がドーピングされた水素化炭素の薄膜から製造してもよい。導電性経路101は、チャックのエッジに沿ったガス封止リング103上をカバーすると共に104によって示されているようにチャックの側部を下方に包みこむ導電性被覆であってよい。更には、アルミニウム又はその他の金属のスパッタリング層などの導電性接地層105をチャックのセラミック層106の下部に配置し、且つ、チャックのエッジに沿って導電性経路101によってカバーしてもよい。例えば、DLC被覆であってもよい導電性経路101によってカバーすることにより、導電性接地層105が基材(又は、その他の工作物)に接触することを妨げてもよい。導電性接地層105は、例えば、接地ピン107及び/又は導電性エポキシからなる下部に位置した層108を使用することにより、接地に接触している。導電性接地層105は、例えば、厚さが約0.5ミクロンのアルミニウム層であってもよい。チャック表面の主フィールドエリア109は、主フィールドエリア109の周囲エリアの上方に延在するエンボス110を有する炭化珪素表面であってよい。主フィールドエリア109と接地の間の表面抵抗率は、例えば、1010Ω/sq程度などのように、約10〜約1012Ω/sqの範囲内であってもよく、導電性経路101と接地の間の表面抵抗率は、約10Ω/sqである。導電性経路101と接地の間の小さな表面抵抗率は、導電性経路101が静電チャックの工作物接触表面上に短い距離にわたってのみ延在している限り、恐らくは、有害ではない。又、静電チャック100は、例えば、アルミニウムから製造された基部111をも含む。DLC被覆などの導電性経路101は、ガス封止リング103をカバーしてもよく、且つ、104によって示されているように、プラテンのエッジに沿って延在することにより、セラミック組立体の側部をカバーしてもよい。静電チャック100の外側エッジ内において導電性グラファイトエポキシを使用することにより、更なる電気的接触を実現してもよい。ガス封止リング103(導電性経路101の内側)から接地まで、約5×10Ω/sqという表面抵抗率を使用してもよい。静電チャックは、ガス孔、リフトピン、及びその他の標準的なコンポーネント(図示せず)を更に含んでもよい。
【0021】
図1の実施形態によれば、ガス封止リング103上の半導体ウエハなどの工作物との接触を実現するために、ダイアモンド様炭素の被覆などの導電性経路101は、静電チャック100のエッジに又はその近傍に位置してもよい。静電チャック100の中心から接地までの表面抵抗率は、可能な限り大きな電荷移動度を実現するために、約1011Ω/sq未満であってもよい。静電チャックの中心からエッジまでの良好な電荷移動度を実現するために、炭化珪素などの低表面抵抗率の材料を主フィールドエリア109に使用してもよい。導電性経路101を有する図1の実施形態は、静電チャックのガス漏洩又はクランプ力に対する最小限の影響しか有しておらず、且つ、良好な損耗抵抗力及び堅牢性を有する。
【0022】
図2は、本発明の一実施形態による1つ又は複数のエンボス210の工作物接触表面上に導電性被覆212を含む静電チャックの図である。この実施形態においては、エンボス210上部のダイアモンド様炭素などの導電性被覆212は、例えば、基材の正確なアライメントのために基材がチャックの表面上において所定の位置に摺動することが必要とされるソーラーパネル又はその他の基材と共にチャックが使用される際に、損耗抵抗力を得るのに有用である。このような場合には、ダイアモンド様炭素などの導電性被覆212は、基材との関係において小さな摩擦係数を有することにより、有用性を確保してもよい。図2の実施形態は、ダイアモンド様炭素212などの導電性被覆によってカバーされた炭化珪素などの主フィールドエリア209の材料から二重被覆(即ち、上下に配置された2つの材料からなる被覆)を製造し、次いで、材料をエッチングによって除去して被覆されたエンボス210/212を形成することにより、製造してもよい。
【0023】
図2の実施形態によれば、静電チャックは、静電チャック表面上の二重被覆構造210/212と、裏面の導電性接地層205と、を含む。主フィールドエリア209は、例えば、静電チャックよりも約1.5ミクロンだけ薄いがそれ以外の部分においては類似している、約2×1010Ω/sqの表面抵抗を有する炭化珪素から製造するなどにより、二重被覆を有していない、静電チャックよりも薄いがそれ以外の部分においては類似している材料から形成してもよい。図1の実施形態に類似した方式により、例えば、約1.5ミクロンの厚さと、約10Ω/sqの表面抵抗率と、を有するダイアモンド様炭素から製造された導電性経路201を使用してもよい。約10Ω/sqというわずかに大きな表面抵抗率も、静電チャックのクランプ力に影響を及ぼすことなしに、良好に機能することができる。この静電チャックは、静電チャックの基部内において接地ピン207を使用することにより、接地してもよい。本明細書において使用されている接地ピンの代わりに、接地ねじ又はその他の類似の接地構造を使用してもよいことを理解されたい。
【0024】
図3は、本発明の一実施形態による図2の静電チャックの代替バージョンの図であり、ここでは、導電性接地層305が、静電チャックのエッジに沿って導電性経路301の外側に配置されている。このような構成は、図2のものと比較した場合に、プラテンのエッジを通じた表面抵抗率を低減することができる。或いは、この代わりに、工作物上における金属汚染を低減するためには、導電性接地層が導電性経路の内側に配置されている図2の構成が好ましいであろう。導電性接地層305が延在する静電チャックのエッジ上における距離を決定する際には、相対的に短い導電性接地層305の使用を促す工作物の金属汚染を抑制するという目標と、相対的に長い導電性接地層305の使用を促す経路301の導電性を改善するという所望と、の間に、バランスが存在する。本明細書のその他の実施形態と同様に、図3の実施形態においても、約10〜約1011Ω/sqという表面抵抗率を主フィールドエリア309に、約10〜約10Ω/sqをダイアモンド様炭素被覆などの導電性経路301に、そして、約10Ω/sq未満をアルミニウム層などの導電性接地層305に、使用してもよい。
【0025】
図4は、本発明の一実施形態による静電チャックの図であり、この図では、導電性エポキシを使用して電気的接続を形成している。この実施形態においては、基部411が1つ又は複数のエッジ413において面取りされていると共に面取りされたエリア414内においてグラファイト導電性エポキシなどの導電性エポキシを使用して電気的接続が実現されているという点を除いて、図2のものに類似した技法を使用してもよい。更には、ダイアモンド様炭素被覆などの導電性経路401は、415によって示されているように、セラミック絶縁体層406の下部において静電チャックの背面を包んでもよい。更には、接地ねじ、接地ピン、又はその他の類似の接地構造を使用してもよい。
【0026】
図5は、本発明の一実施形態による静電チャックの工作物接触表面上に導電性パターンを含む静電チャックの図である。導電性パターンは、導電性経路101に電気的に接触してもよく(図1を参照されたい)、且つ、例えば、静電チャックの面の中心からチャックのエッジまでの高導電性スポーク516を含んでもよい。このような導電性パターンは、接地に対する高導電性経路を提供することができ、且つ、チャックの表面上における且つ接地に対する電荷移動度を促進することができる。例えば、スポーク516は、DLC、アルミニウム、又はその他の高導電性材料などの導電性被覆から製造してもよい。例えば、導電性パターンは、工作物に対する金属汚染を回避するために、DLCなどの導電性被覆によって被覆されたアルミニウムなどの金属から製造してもよい。更には、導電性パターンは、炭化珪素などの主フィールドエリア(図1の109を参照されたい)の残りの部分に使用される材料によって被覆された金属から形成してもよい。一実施形態においては、導電性パターンは、窒素がドーピングされた水素化炭素によって被覆された1000Åの厚さに堆積されたアルミニウムから形成してもよい。又、導電性パターンは、例えば、静電チャックのガス孔の周りに、且つ、ガス封止リング503上に、リング517を含んでもよい。スポーク516などの導電性パターンは、静電チャックの表面上のエンボスなどの要素を回避するために、湾曲した経路を辿ってもよい。更なる実施形態においては、エンボスの上部において高導電性材料を使用することにより、静電チャックのエンボスの間を延在すると共に最終的には接地にまで延在する高導電性材料の小さなトレース様の経路を形成してもよい。導電性パターンは、このような経路の寄生効果によって生成されるクランプ力の損失を極小化するために、合計経路面積を極小化させるように設計してもよい。
【0027】
図6は、本発明の一実施形態による電荷のための接地に対する経路を提供するポリマー表面を有する静電チャックの図であり、ここでは、表面が、カーボンナノチューブが充填されたポリマーを含んでいる。ポリマー表面を有する静電チャックは、ポリマー表面と工作物の間の優れた接触を有することにより、優れた粒子生成性能を提供することができる。本発明の一実施形態によれば、このようなポリマー表面を有する静電チャックには、ポリマー/工作物の接触を維持し、金属汚染の問題を回避し、且つ、静電チャックの表面の改修を許容しつつ、電荷をチャック表面及び工作物から接地に移動させるための能力が提供されている。本発明の一実施形態によれば、ポリマー表面を有する静電チャックには、チャック表面の主フィールドエリア内においては、約10〜約1010Ω/sqの表面抵抗率が、そして、ガス封止エリアにおいては、約10〜約10Ω/sqの表面抵抗率が提供されており、且つ、チャックのエッジから接地までの高導電性経路には、例えば、約10Ω未満が提供されている。
【0028】
図6の実施形態においては、静電チャックの表面は、カーボンナノチューブが充填されたポリマーを含んでおり、このポリマーが、ブランケット層609及びエンボス610を形成している。ポリマー表面609/610は、導電性経路601によって接地されており、導電性経路601は、ブランケット層609の真下から、静電チャックのエッジに沿って、且つ、アルミナ絶縁体層606の下部にまで、延在してもよい。導電性経路601は、例えば、物理蒸着(PVD)によって形成されたアルミニウム被覆から、或いは、例えば、窒素がドーピングされた水素化炭素のようなダイアモンド様炭素などの別の導電性被覆から、形成してもよい。接地ねじ607によって導電性経路601をアルミニウムの基部/冷却構造611に電気的に接続してもよい。又、静電チャックは、ガス封止リング603、導電性エポキシ層608、接着剤被覆618、アルミナ誘電体619、金属電極620、フッ素化ポリマーボンド621(パーフルオロアルコキシ(PFA)ボンドなど)、導電性エポキシボンド622、及び電極ピン623をも含む。接着剤被覆層は、例えば、窒化物、酸化物、炭化物、並びに、これらの非化学量論的バージョンを含む珪素のうちの少なくとも1つを有してもよいが、SiO、窒化珪素、酸化珪素、又は炭化珪素に限定されるものではない。又、接着剤被覆層は、炭素又は炭素の窒化化合物を有してもよく、且つ、ダイアモンド様炭素を有してもよい。ポリマー表面609/610は、例えば、カーボンナノチューブが充填されたポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、又はポリイミドなどのカーボンナノチューブが充填されたポリマーであってよい。カーボンナノチューブ表面609/610の表面抵抗率は、例えば、約10〜約1010Ω/sqの範囲内であってよい。カーボンナノチューブ表面609/610は、例えば、「Electrostatic Chuck with Polymer Protrusions」という名称のEntegris, Inc.の国際公開第2010/132640A2号パンフレットに記述されているものに類似した方式による、反応性イオンエッチングによるラミネーション及びパターン化によって形成してもよく、この特許出願公開公報の開示内容は、本引用により、そのすべてが本明細書に包含される。図6の実施形態のカーボンナノチューブが充填されたポリマー表面の利点は、抵抗率が材料の全体を通じて均一であり、且つ、時間と共に又は洗浄によって磨り減ったり或いは損耗したりしないという点にありうる。
【0029】
図7は、本発明の一実施形態による電荷のための接地に対する経路を提供するポリマー表面を有する静電チャックの図であり、ここでは、接地に対する経路が、ガス封止接触を伴う導電性被覆ブランケット薄膜によって提供されている。図7の実施形態においては、静電チャックの表面は、ポリマーを含んでおり、このポリマーが、ブランケット層709及びエンボス710を形成している。ポリマー表面709/710は、導電性経路701によって接地されており、導電性経路701は、エンボス710の間のフィールドエリア内に、ガス封止リング703上に、静電チャックのエッジに沿って、且つ、アルミナ絶縁体層706の下部に、存在してもよい。例えば、導電性経路701は、例えば、窒素がドーピングされた水素化炭素のようなダイアモンド様炭素などの導電性被覆から形成してもよい。更には、導電性経路701は、物理蒸着(PVD)によって形成されたアルミニウム被覆などの更なる被覆経路724によって接地に電気的に接続してもよい。接地ねじ707によって被覆経路724をアルミニウムの基部/冷却構造711に電気的に接続してもよい。又、静電チャックは、ガス封止リング703、アルミナ絶縁体層706、導電性エポキシ層708、接着剤被覆718、アルミナ誘電体719、金属電極720、セラミック間ボンド721、導電性エポキシボンド722、及び電極ピン723をも含む。接着剤被覆層は、図6の実施形態の材料に類似した材料を有してもよい。ポリマー表面709/710は、例えば、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、又はポリイミドなどのポリマーであってもよい。ポリマー表面709/710の表面抵抗率は、例えば、約10〜約1010Ω/sqの範囲内であってよい。ポリマー表面709/710は、例えば、「Electrostatic Chuck with Polymer Protrusions」という名称のEntegris, Inc.の国際公開第2010/132640A2号パンフレットに記述されているものに類似した方式による、反応性イオンエッチングによるラミネーション及びパターン化によって形成してもよく、この特許出願公開公報の開示内容は、本引用により、そのすべてが本明細書に包含される。
【0030】
図7の実施形態の利点は、ポリマー/工作物の接触がエンボス710上において維持され、工作物が接触しないフィールドエリアを使用することにより、チャックの中央部の電荷のために、接地に対する導電性経路が提供されており、且つ、丈夫な被覆が洗浄動作に耐えるという点にありうる。
【0031】
図8は、本発明の一実施形態による電荷のための接地に対する経路を提供するポリマー表面を有する静電チャックの図であり、ここでは、接地に対する経路が、ガス封止接触を伴う導電性被覆によって提供されている。図8の実施形態においては、図7のものに類似した方式により、静電チャックの表面がポリマーを含んでおり、このポリマーがブランケット層809及びエンボス810を形成している。ポリマー表面809/810は、導電性経路801によって接地されており、導電性経路801は、ガス封止リング803上に、静電チャックのエッジに沿って、且つ、アルミナ絶縁体層806の下部に、延在している。例えば、導電性経路801は、例えば、窒素がドーピングされた水素化炭素のようなダイアモンド様炭素などの導電性被覆から形成してもよい。更には、導電性経路801は、物理蒸着(PVD)によって形成されたアルミニウム被覆などの更なる被覆経路824によって接地に電気的に接続してもよい。接地ねじ807によって被覆経路824をアルミニウムの基部/冷却構造811に電気的に接続してもよい。静電チャックは又、ガス封止リング803、アルミナ絶縁体層806、導電性エポキシ層808、接着剤被覆818、アルミナ誘電体819、金属電極820、フッ素化ポリマーボンド821(パーフルオロアルコキシ(PFA)ボンドなど)、導電性エポキシボンド822、及び電極ピン823も含む。接着剤被覆層は、図7の実施形態において付与されているものに類似した材料を有してもよい。ポリマー表面809/810は、例えば、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、又はポリイミドなどのポリマーであってよい。ポリマー表面809/810の表面抵抗率は、例えば、約10〜約1010Ω/sqの範囲内であってよい。ポリマー表面809/810は、例えば、「Electrostatic Chuck with Polymer Protrusions」という名称のEntegris, Inc.社の国際公開第2010/132640A2号パンフレットに記述されているものに類似した方式による反応性イオンエッチングによるラミネーション及びパターン化によって形成してもよく、この特許出願公開公報の開示内容は、本引用により、そのすべてが本明細書に包含される。
【0032】
図8の実施形態の利点は、ポリマー/工作物の接触がエンボス810上において維持されており、被覆がエンボスを取り囲むエリア内に追加されないことから、製造プロセスが図7の実施形態のものよりも単純であり、接地に対する導電性経路がチャックのエッジから提供されており、且つ、丈夫な被覆が洗浄動作に耐えるという点にありうる。
【0033】
図9は、本発明の一実施形態による静電チャック900の図であり、ここでは、下部に位置した導電性層925が使用されている。導電性層925は、これらに限定はされないが、ダイアモンド様炭素(DLC)又はアルミニウムを含んでもよい導電性材料から製造してもよい。導電性層925の表面抵抗率は、約10〜約1011Ω/sqの範囲内であってよい。導電性層925の大きな表面面積(96〜98%)により、電気ビアを通じて、又はプラテンの接地された基部に対してプラテンの側部に沿って導電性層を巻き付けることにより、電荷放散のための十分な経路が提供される。
【0034】
プラテン表面上に蓄積されることになる静電荷は、工作物の「吸着」問題の原因となる大きな要因になりうる。プラテン表面上のこのような静電荷は、導電性層925によって制御及び放散することができる。導電性層925は又、工作物と接地の間における電荷の移動をも促進することもできる。更には、導電性層925は、クランプ位置において工作物の裏面に接触しないため、接触摩擦に起因した導電性層925の損耗を回避することができる。
【0035】
図10は、本発明の一実施形態による静電チャック1000の図であり、ここでは、ブランケット層1025が使用されている。図9の実施形態と比べて、導電性層1025は、ガス封止リング及びエンボス上に「ブランケット」層として堆積されている。接地に対する電気的接続は、図9のものに類似したものであってよい。又、導電性層1025の表面抵抗率も、約10〜約1011Ω/sqの範囲内であってよい。エンボスの上部表面が導電性であることにより、電荷を工作物の全体にわたってエンボスの間の一般領域内に移動させ、且つ、接地に放散させることができる。更には、例えば、チャネルなどの低抵抗経路をプラテン構造内に内蔵することにより、プラテンの基部を介したウエハの電荷及びプラテン表面の電荷の接地に対する排出を制御してもよい。導電性経路は、接地に装着された導電性ビア又はチャネルを使用することにより、静電コンポーネントの厚さを貫通するように製造してもよい。
【0036】
接地に対する高導電性経路を提供することにより、本発明による一実施形態は、基材が静電チャックによって処理される速度に鑑み、十分に短い時間内において電荷が静電チャックから排出されることを許容することにより、ウエハの吸着又はその他のウエハのハンドリング問題を防止又は軽減している。この観点から、本発明の一実施形態による接地に対する導電性経路の表面抵抗率は、静電チャックが使用されているプロセスが許容する時間内に接地に電荷を供給するのに十分なものであることを要するという点に留意されたい。例えば、10秒/工作物の処理時間対1秒/工作物の処理時間は、要求されている時間量以内において電荷を接地に供給するために、表面抵抗率における1桁の差を必要とすることになる。インプラントプロセスの場合には、10分の数秒のサイクルタイムは、本明細書に記述されている表面抵抗率を必要とするが、必要に応じて、その他の表面抵抗率を使用してもよい。
【0037】
本発明の一実施形態によれば、接地に対する導電性経路が静電チャックに提供されており、この導電性経路は、接地に対する電荷の排出を許容しつつ、導電性経路自体が静電チャックのクランプ力を低減しうる過剰な寄生効果をも回避している。多少の寄生効果が生じることにはなろうが、例えば、DLC被覆などの導電性経路がチャックのエッジにのみ存在している場合には、そのような寄生効果によってクランプ力が大幅に低減されるとは考えられない。
【0038】
本明細書において使用されている「工作物接触表面」という用語は、静電チャックの使用の際に静電チャックによってクランプされる工作物と接触する表面を意味している。
【0039】
本発明による一実施形態は、Coulombicチャック及びJohnsen−Rahbekチャックと共に使用してもよい。さらに、本明細書で導電性被覆が記述されているところでは、様々な異なる可能な導電性材料を使用してもよく、例えば、ドーピングされた炭化珪素、アルミニウムなどの金属、又はその他の材料をダイアモンド様炭素の代わりに使用してもよいことを理解されたい。研磨を使用して導電性経路の有効表面抵抗率を低減してもよい。一実施形態においては、導電性経路のための高度にドーピングされた炭化珪素と組み合わせることにより、静電チャックの主フィールドエリアのために、炭化珪素から二重構造を形成してもよい。本発明の一実施形態による静電チャックは、例えば、反応性イオンエッチングプロセスを使用して改修してもよい。更には、本発明による一実施形態は、これらに限定はされないが、ビームラインイオン注入装置、プラズマドーピングイオン注入装置、プラズマ浸漬イオン注入システム、フラッドイオン注入装置、合焦プラズマシステム、プラズマシースを変調するシステム、エッチングシステム、光学に基づいた加工システム、及び化学蒸着システムを含む様々なシステムにおいて使用してもよい。
【0040】
すべての特許、公開された用途、及び本明細書に引用されている参考文献の教示内容は、引用により、その全体が本明細書に包含される。
【0041】
以上、その例示用の実施形態を参照し、本発明について具体的に図示及び説明したが、当業者は、添付の請求項に包含されている本発明の範囲を逸脱することなしに、形態及び詳細を様々に変更してもよいことを理解するであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10