(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ポリオール(A)において、ビスフェノール化合物がビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、および2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンからなる群から選ばれる1種以上である、請求項1記載の硬質発泡合成樹脂の製造方法。
前記ポリオール(B)において、前記フェノール類の1モルに対して、前記アルデヒド類の割合が0.3モル以上3.0モル以下、前記アルデヒド類の1モルに対して前記アルカノールアミン類の割合が0.7モル以上12.0モル以下である、請求項1または2に記載の硬質発泡合成樹脂の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明における「ポリオールシステム液」とは、ポリイソシアネート化合物と反応させる相手の液であり、ポリオールのほかに発泡剤、整泡剤、触媒、難燃剤等、必要に応じた配合剤を含む液である。
本発明における「硬質発泡合成樹脂」とは、硬質ポリウレタンフォームおよび硬質ポリイソシアヌレートフォームの総称である。以下、硬質フォームということもある。
本発明における「マンニッヒ縮合物」とは、フェノール類、アルデヒド類、およびアルカノールアミン類を反応させて得られる化合物である。
本発明における「ポリマー分散ポリオール」とは、ポリエーテルポリオールまたはポリエステルポリオール等のベースポリオール(W’)中で、重合性不飽和結合を有するモノマーを重合させてポリマー粒子を形成することによって得られるもので、該ベースポリオール(W’)中に該ポリマー粒子を分散させたポリオール(W)である。
【0013】
[ポリオール混合物(P)]
本発明におけるポリオール混合物(P)は、ポリエーテルポリオールから構成され、ポリオール(A)およびポリオール(B)を含む。本発明においては、ポリオールシステム液の貯蔵安定性の点からポリエステルポリオールは用いない。
【0014】
[ポリオール(A)]
ポリオール(A)はビスフェノール化合物を開始剤として、アルキレンオキシドを開環付加重合させて得られるポリエーテルポリオールである。
開始剤であるビスフェノール化合物としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、および2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンからなる群から選ばれる1種以上が用いられる。より好ましいものは、入手が容易であるという点で、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等である。
【0015】
開始剤であるビスフェノール化合物に付加するアルキレンオキシドの付加量は、ビスフェノール化合物の1モルに対して4〜40モルが好ましく、6〜30モルがより好ましい。アルキレンオキシドの付加量が上記範囲の下限値以上であると、ポリオール(A)の粘度が低くなりやすい。アルキレンオキシドの付加量が上記範囲の上限値以下であると、得られるポリオール(A)を硬質フォームの製造に使用する場合、良好な強度が得られやすく、硬質フォームの収縮を抑えやすい。
【0016】
開始剤に開環付加重合させるアルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、およびブチレンオキシドからなる群から選ばれる1種以上が好ましい。
ポリオール(A)の粘度がより低くなりやすいという点で、該アルキレンオキシドがエチレンオキシド(以下、EOということもある。)を含むことが好ましく、EOのみ、またはEOとプロピレンオキシド(以下、POということもある。)との組み合わせがより好ましい。
【0017】
開環付加重合反応に使用する全アルキレンオキシドを100質量%とする時、そのうちのEOの比率が50質量%を超えて100質量%以下であることが好ましい。80〜100質量%がより好ましく、100質量%が最も好ましい。50質量%を超えるとポリオール(A)の粘度が低くなりやすく、ポリオール混合物(P)の液粘度を低くするうえで好ましい。ポリオール混合物(P)が低粘度であると、ポリオールシステム液の粘度が低くなり、被着体との濡れ性が良くなることで接着性が向上し、難燃性も向上する。
またEOはポリオール(A)の親水性の向上に寄与する。ポリオール(A)の親水性が高いと、発泡剤として水を含むポリオールシステム液における水との相溶性およびポリオールの溶解性が向上する。
なお、ポリオール(A)として、複数種のポリオールを組み合わせて用いる場合、該EOの比率は、ポリオール(A)全体としての値である。
【0018】
EOとPOを併用する場合、開環付加重合はブロック重合およびランダム重合のいずれの重合法を用いてもよい。さらに、ポリオール(A)は、ブロック重合とランダム重合の両者を組み合わせて製造することもできる。ブロック重合の場合、アルキレンオキシドを開環付加重合させる順序は、プロピレンオキシド、エチレンオキシドの順で付加するか、先にエチレンオキシドを付加し、プロピレンオキシド、エチレンオキシドの順に付加することが好ましい。この順番で開環付加重合することで、ポリオール(A)の水酸基の多くは一級水酸基となり、ポリオール(A)とポリイソシアネート化合物(I)との反応性が高くなる。その結果、得られる硬質フォームの外観が良好になりやすく好ましい。得られる硬質フォームの接着性の向上にも効果がある。また反応性が高いことが要求されるスプレー法による硬質発泡合成樹脂の製造にも好ましく適用できる。
【0019】
ポリオール(A)はビスフェノール化合物からなる開始剤に、公知の方法でアルキレンオキシドを開環付加重合させる方法で製造できる。
ポリオール(A)の水酸基価は56〜250mgKOH/gである。56mgKOH/g以上であると、硬質フォームの良好な強度が得られ、収縮が抑えられやすい。250mgKOH/g以下であると、ポリオール(A)の粘度が低くなりやすい。該水酸基価のより好ましい範囲は100〜200mgKOH/gである。この範囲であると、ポリオールシステム液がより低粘度となりやすく、かつ硬質フォームの優れた強度が得られやすいため、スプレー法による硬質フォームの製造方法において特に好適である。
ポリオール(A)として、複数種のポリオールを組み合わせて用いる場合は、各ポリオールの水酸基価が、それぞれ上記の範囲内であればよい。
【0020】
[ポリオール(B)]
ポリオール(B)は、フェノール類、アルデヒド類、およびアルカノールアミン類を反応させて得られるマンニッヒ縮合物を開始剤として、アルキレンオキシドを開環付加重合させて得られるポリエーテルポリオールである。
【0021】
フェノール類は、フェノール、およびフェノールの水酸基に対して少なくとも1か所のオルト位に水素原子を有するフェノール誘導体からなる群から選ばれる1種以上である。
すなわち、フェノールの水酸基に対して少なくとも1か所のオルト位に水素原子を有していればよく、フェノールであってもよく、フェノール誘導体であってもよい。
フェノール誘導体としては、フェノールの水酸基に対して少なくとも1か所のオルト位に水素原子を有し、それ以外の水素原子の1個以上が炭素数1〜15の直鎖状、または分岐状のアルキル基で置換されたアルキルフェノールが好ましい。アルキル基の置換位置はオルト位、メタ位、パラ位のいずれでもよい。アルキルフェノールの1分子中、アルキル基で置換された水素原子の数は1〜5個であり、1〜2個が好ましく、1個が最も好ましい。
アルキルフェノールにおけるアルキル基の炭素数は、好ましくは1〜10である。該アルキルフェノールとして、ノニルフェノール、クレゾールが好ましく用いられる。特にノニルフェノールは、ポリオール(B)とポリイソシアネート化合物(I)との相溶性を向上させ、セル外観を向上させる点で好ましい。
【0022】
アルデヒド類としては、ホルムアルデヒドおよびアセトアルデヒドの一方または両方の混合物が用いられる。これらのうちで、ホルムアルデヒドが硬質フォームの接着性を向上させる点で好ましい。ホルムアルデヒドはどのような形で使用してもよく、ホルマリン水溶液、メタノール溶液、またはパラホルムアルデヒドとして使用できる。パラホルムアルデヒドとして使用する場合は、パラホルムアルデヒドを加熱してホルムアルデヒドを生成させ、該ホルムアルデヒドを本工程の反応に用いてもよい。なお、使用量は、ホルムアルデヒド換算のモル数で計算する。
【0023】
アルカノールアミン類は、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンおよび1−アミノ−2−プロパノールからなる群から選ばれる1種以上である。これらのうちで、ジエタノールアミンが、得られる硬質フォームの強度向上とポリオール(B)の粘度低減のバランスをとるうえでより好ましい。
【0024】
開始剤として用いるマンニッヒ縮合物は、上記フェノール類、アルデヒド類およびアルカノールアミン類を反応(以下、マンニッヒ縮合反応ということもある)させて得られる反応生成物である。該反応生成物には、反応後に残存する未反応物も含まれるものとする。マンニッヒ縮合反応は公知の方法で実施できる。
マンニッヒ縮合反応に用いる原料において、フェノール類の1モルに対する、アルデヒド類の割合は0.3モル以上3.0モル以下が好ましい。該アルデヒド類の割合が0.3モル以上であると、硬質フォームの良好な寸法安定性が得られやすい。3.0モル以下であると低粘度のポリオール(B)を得やすくなる。また、ポリオール(B)の粘度がより低くなりやすい点では、0.3モル以上0.9モル未満が好ましく、得られる硬質フォームの強度の点からは0.9モル以上1.35モル以下がより好ましい。
マンニッヒ縮合反応に用いる原料において、アルデヒド類の1モルに対する、アルカノールアミン類の割合は0.7モル以上12.0モル以下が好ましい。該アルカノールアミン類の割合が0.7モル以上であると、良好な強度の硬質フォームが得られる。12.0モル以下であると良好な難燃性の硬質フォームが得られる。また、得られる硬質フォームの難燃性の点からは、0.7モル以上5.0モル以下が好ましい。低粘度のポリオール(B)を得る点からは、0.7モル以上5.0モル以下が好ましく、0.7モル以上3.5モル以下がより好ましい。
特に、低粘度のポリオール(B)を得ることを優先させる場合は、フェノール類の1モルに対してアルデヒド類を0.3〜0.9モル、かつアルデヒド類の1モルに対してアルカノールアミン類0.7〜5.0モル使用することが好ましい。かかる比率でマンニッヒ縮合反応させて得られるマンニッヒ縮合物は、マンニッヒ縮合物の縮合度を抑えられるため、低粘度のポリオール(B)が得られる。
また得られる硬質フォームの難燃性を優先させる場合は、フェノール類の1モルに対してアルデヒド類を0.9〜2.5モル、かつアルデヒド類の1モルに対してアルカノールアミン類を0.7〜5.0モル使用することが好ましい。かかる比率でマンニッヒ縮合反応させて得られるマンニッヒ縮合物は、未反応のアルカノールアミン類が殆ど残らず、アルキレンオキシドを開環付加重合して得られるポリオール(B)が脂肪族ポリオールを殆ど含まないため、硬質フォームの難燃性に優れる。
【0025】
ポリオール(B)は、マンニッヒ縮合反応により得られた反応生成物を開始剤とし、これに公知の方法でアルキレンオキシドを開環付加重合して得られる。
開始剤に付加するアルキレンオキシドの付加量は、マンニッヒ縮合反応に使用するフェノール類1モルに対して2〜30モルが好ましく、4〜20モルがより好ましい。アルキレンオキシドの付加量が2モル以上であると、生成するポリオール(B)の水酸基価および粘度が低くなりやすい。アルキレンオキシドの付加量が30モル以下であると、得られるポリオール(B)を硬質フォームの製造に使用する場合、硬質フォームの収縮を抑えやすい。
【0026】
開始剤であるマンニッヒ縮合物に開環付加重合させるアルキレンオキシドは、EO、PO、およびブチレンオキシドからなる群から選ばれる1種以上が好ましい。ポリオール(B)の粘度が低くなりやすいという点で、該アルキレンオキシドがEOを含むことが好ましく、EOのみ、またはEOとPOとの組み合わせがより好ましい。
開環付加重合反応に使用する全アルキレンオキシドを100質量%とする時、そのうちのEOの比率が10〜100質量%であることが好ましく、20〜100質量%がより好ましい。上記範囲の下限値以上であるとポリオール(B)の粘度が低くなりやすく、ポリオール混合物(P)の粘度およびポリオールシステム液の粘度を低くするうえで好ましい。
またEOはポリオール(B)の親水性の向上に寄与する。ポリオール(B)の親水性が高いと、発泡剤として水を含むポリオールシステム液における水との相溶性およびポリオールの溶解性が向上する。
加えて、ポリオール(A)の末端がEO由来の一級水酸基である場合(例えば、EOの比率が全アルキレンオキシド100質量%のうち100質量%の場合)、ポリオール(B)とポリイソシアネート化合物(I)との反応性が高くなる。その結果、得られる硬質フォームの外観が良好になりやすく好ましい。得られる硬質フォームの接着性の向上にも効果がある。また反応性が高いことが要求されるスプレー法による硬質発泡合成樹脂の製造にも好ましく適用できる。
なお、ポリオール(B)として、複数種のポリオールを組み合わせて用いる場合、該EOの比率は、ポリオール(B)全体としての値である。
【0027】
ポリオール(B)の水酸基価は100〜800mgKOH/gであり、200〜550mgKOH/gがより好ましく、250〜450mgKOH/gがさらに好ましい。ポリオール(B)として、複数種のポリオールを組み合わせて用いる場合は、各ポリオール(B)の水酸基価が、それぞれ上記の範囲内であればよい。
ポリオールの水酸基価が上記範囲の下限値以上であると、得られる硬質フォームの強度が確保し易く、良好な寸法安定性が得られやすいため好ましい。一方、該水酸基価が上限値以下であると、ポリオール(B)中に存在するアルキレンオキシド由来のオキシアルキレン鎖の量が増え、ポリオール(B)の粘度が下がりやすく好ましい。また、製造される硬質フォームの脆さが抑制され接着性が出やすい。
【0028】
ポリオール混合物(P)に含まれる、ポリオール(A)とポリオール(B)の質量比(A)/(B)は、10/90〜90/10であり、25/75〜90/10が好ましく、30/70〜85/15がより好ましい。
この範囲であれば、得られる硬質フォームの良好な強度および良好な難燃性が得られやすい。またスプレー法により硬質フォームを製造する場合の施工性が良好であり、壁面に吹き付ける場合の硬質フォームの横方向への発泡が抑制される。横方向への発泡が抑制されることにより、吹き付け面を平滑に施工しやすくなる。さらに多層吹き付けを行う場合のフォーム層同士の良好な接着性が得られやすい。
本発明の所期の効果を充分に得るうえで、ポリオール混合物(P)の全体に対して、ポリオール(A)とポリオール(B)の合計量が、70質量%以上であることが好ましく、85質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。ポリオール(A)とポリオール(B)の合計量は、100質量%でもよい。
ポリオール混合物(P)全体の平均水酸基価は、100〜800mgKOH/gが好ましく、150〜400mgKOH/gがより好ましい。該平均水酸基価が上記範囲の下限値以上であると、得られる硬質フォームの強度が確保しやすく、良好な寸法安定性が得られやすい。上記範囲の上限値以下であると製造される硬質フォームの脆さが少なくなり接着性が出やすい。
【0029】
[ポリオール(C)]
ポリオール混合物(P)は、ポリオール(A)およびポリオール(B)以外の、ポリオール(C)を含んでもよい。ポリオール(C)はポリマー粒子を含まない。
ポリオール(C)としては、例えば多価アルコール、多価フェノール等のポリヒドロキシ化合物やアミン類等の開始剤に、アルキレンオキシドを開環付加重合させて得られるものを使用することができる。開始剤の官能基数は2〜4が好ましい。
【0030】
ポリオール(C)の開始剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール;ピペラジン、アニリン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、イソプロパノールアミン、アミノエチルエタノールアミン、アンモニア、アミノメチルピペラジン、アミノエチルピペラジン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリレンジアミン、キシリレンジアミン等のアミノ化合物;またはこれらのアルキレオキシド付加物が挙げられる。
【0031】
開始剤に開環付加重合するアルキレンオキシドとしては、PO、EO、ブチレンオキシドからなる群から選ばれる1種以上が好ましく、少なくともEOを含むことが好ましい。EOのみを使用するか、またはPOとEOを併用することが好ましい。特に、POを開環付加重合した後、EOを開環付加重合して得られる、末端にEO由来の一級水酸基を有するポリオール(C)が好ましい。
開環付加重合反応に使用する全アルキレンオキシドを100質量%とする時、そのうちのEOの比率は0〜100質量%であり、10〜100質量%が好ましく、20〜100質量%がより好ましい。
ポリオール(C)の水酸基価は56〜200mgKOH/gであり、80〜170mgKOH/gが好ましく、80〜150mgKOH/gがより好ましい。水酸基価が56〜200mgKOH/gの範囲内であると基材との接着性が向上しやすい。
本発明においてポリオール(C)は必須成分ではないが、ポリオール混合物(P)がポリオール(C)を含む場合、ポリオール混合物(P)中の含有量は0質量%超、30質量%以下が好ましく、5〜20質量%がより好ましい。
【0032】
本発明において、ポリオール(C)として、開始剤が脂肪族多価アルコールであるポリオールを用いると、ポリオールシステム液とポリイソシアネート化合物との混合物である発泡原液組成物と、基材との濡れ性が向上しやすく、硬質フォームと基材とのより良好な接着性が得られやすい。
ポリオール(C)として、アミノ化合物からなる開始剤にEOのみを開環付加重合させたポリオールを用いると、発泡初期の泡化性が向上し、特にスプレー法による硬質フォームの製造において吹付け時の硬質フォーム立ち上がり(泡立ちを始めるまでの時間)が短くなり、向上する。
ポリオール(C)として、開始剤がアミノ化合物であるポリオールを用いると、得られる硬質フォームの強度がより向上しやすい。
【0033】
[ポリマー分散ポリオール(W)]
ポリオール混合物(P)中にポリマー粒子を含有させてもよい。ここで、ポリマー粒子は、重合性不飽和結合を有するモノマーを重合して得られるものである。上記モノマーとしては、通常、重合性不飽和結合を1個有するモノマーが使用されるが、これに限らない。該モノマーとしては、スチレン系モノマー、アクリル系モノマー、ビニルエステル系モノマー、ジエン系モノマー、ハロゲン化ビニル、ハロゲン化ビニリデン、ハロゲン化オレフィン等が挙げられる。これらのモノマーの詳細については後述する。該ポリマー粒子はポリオール混合物(P)中に分散されていることが好ましく、具体的には、ベースポリオール(W’)中にポリマー粒子が分散しているポリマー分散ポリオール(W)を調製し、該ポリマー分散ポリオール(W)をポリオール混合物(P)に含有させることが好ましい。
ポリマー分散ポリオール(W)は1種でもよく、2種以上を併用してもよい。ポリマー粒子は外径が10μm以下であることが好ましい。なお、本明細書におけるポリマー粒子の外径は、日機装社製のマイクロトラック超微粒子粒度分析計(UPA−EX150)で測定して得られる値である。
ポリオール混合物(P)全体におけるポリマー粒子の含有量は、0.002〜10質量%が好ましく、0.02〜10質量%がより好ましく、0.5〜7質量%が特に好ましい。上記範囲内であると、断熱性能を維持しながら得られる硬質フォームの収縮を効果的に抑制できる。
【0034】
ポリマー分散ポリオール(W)の水酸基価は100〜800mgKOH/gが好ましく、150〜800mgKOH/gがより好ましい。本明細書におけるポリマー分散ポリオール(W)の水酸基価とは、ベースポリオール(W’)中にポリマー粒子が分散しているポリオールについて水酸基価を測定して得られる値である。
ポリマー分散ポリオール(W)の水酸基価が上記範囲の下限値以上であると、他のポリオールとの相溶性が良好であり、上記範囲の上限値以下であると、ポリマー粒子の分散安定性が良好である。
【0035】
ポリマー分散ポリオール(W)は、必要に応じて溶媒の存在下、ベースポリオール(W’)中で重合性不飽和結合を有するモノマーを重合させてポリマー粒子を析出させる方法で製造される。
ポリマー粒子の形成に用いられる、重合性不飽和結合を有するモノマーとしては、前述の通り、通常、重合性不飽和結合を1個有するモノマーが使用されるが、これに限らない。
該モノマーの具体例としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、2,4−ジシアノブテン−1等のシアノ基含有モノマー;スチレン、α−メチルスチレン、ハロゲン化スチレン等のスチレン系モノマー;アクリル酸、メタクリル酸またはそれらのアルキルエステルやアクリルアミド、メタクリルアミド等のアクリル系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル系モノマー;イソプレン、ブタジエン、その他のジエン系モノマー;マレイン酸ジエステル、イタコン酸ジエステル等の不飽和脂肪酸エステル類;塩化ビニル、臭化ビニル、フッ化ビニル等のハロゲン化ビニル;塩化ビニリデン、臭化ビニリデン、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル等のビニルエーテル系モノマー;これら以外のオレフィン、およびハロゲン化オレフィンなどがある。
使用するモノマーとして好ましくは、アクリロニトリル20〜90質量%と他のモノマー10〜80質量%の組み合わせである。他のモノマーとして好ましいのは、スチレン、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、酢酸ビニル等である。これら他のモノマーは2種以上併用してもよい。
【0036】
また、上記に挙げたモノマーのほかに、該重合性不飽和基を有するモノマーの一部または全部として、含フッ素アクリレートまたは含フッ素メタクリレート(以下、「含フッ素モノマー」ということがある。)を用いることも好ましい。該含フッ素モノマーを用いることにより、ベースポリオール(W’)中でのポリマー粒子の分散安定性がより良好となる。また、ポリマー分散ポリオール(W)と他のポリオールとの相溶性が高まって、硬質フォームにおける寸法安定性の向上、および断熱性能の向上が期待できる。
含フッ素モノマーの好適なものとしては、下記式(1)で表されるモノマーが挙げられる。
【0038】
式(1)中において、R
fは、炭素数1〜18の直鎖状、または分岐状のポリフルオロアルキル基である。R
fにおいて、炭素数は1〜18であり、1〜10が好ましく、3〜8がより好ましい。
R
fは、アルキル基中のフッ素原子の割合(アルキル基中の水素原子がフッ素原子に置換されている個数の割合)が、80%以上であることが好ましく、全部の水素原子がフッ素原子で置換されていることが特に好ましい。炭素数が18以下であると、硬質フォーム製造における発泡時、フォームの安定性が良好となり好ましい。
Rは、水素原子またはメチル基である。
Zは、フッ素原子を含まない2価の連結基であり、炭化水素基が好ましく、たとえばアルキレン基、アリーレン基が挙げられ、アルキレン基がより好ましい。該アルキレン基は、炭素数1〜10のアルキレン基が好ましく、炭素数1〜5のアルキレン基が特に好ましく、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。なお、式(1)におけるZとR
fは、R
fの炭素数がZの炭素数より少なくなるように区切る。
前記式(1)で表されるモノマーの具体例として、下記式(1−1)〜(1−3)で表される化合物が挙げられる。
【0042】
前記含フッ素モノマーは、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
含フッ素モノマーを用いる場合、その使用量は、重合性不飽和基を有する全モノマーに対し、10〜100質量%であることが好ましく、30〜80質量%であることがより好ましい。
特に、前記式(1)で表されるモノマーを用いる場合は、重合性不飽和基を有する全モノマー中において20〜100質量%であることが好ましく、30〜60質量%であることがより好ましく、40〜60質量%であることが最も好ましい。
該式(1)で表されるモノマーの割合が、20質量%以上、特に30質量%以上であると、形成される硬質フォームにおいて、良好な断熱性能が得られやすい。
【0043】
含フッ素モノマーを用いる場合、上記に挙げた重合性不飽和結合を有するモノマーのほかに、マクロモノマーを併用してもよい。「マクロモノマー」とは、片末端にラジカル重合性不飽和基を有する低分子量のポリマーまたはオリゴマーのことをいう。
【0044】
ポリマー粒子の形成に用いられる、重合性不飽和結合を有するモノマーの合計の使用量は特に限定されないが、ポリマー分散ポリオール(W)中におけるポリマー粒子の含有量が1〜50質量%、より好ましくは2〜45質量%、さらに好ましくは10〜30質量%となる量であることが好ましい。
重合性不飽和結合を有するモノマーの重合は、遊離基を生成して重合を開始させるタイプの重合開始剤が好適に用いられる。重合開始剤の具体例としては2,2’−アゾビス−イソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル(AMBN)、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、ベンゾイルペルオキシド、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、アセチルペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、過硫酸塩等が挙げられる。特にAMBNが好ましい。
【0045】
ベースポリオール(W’)としては、ポリエーテルポリオール、末端に水酸基を有する炭化水素系ポリマー等が挙げられる。特にポリエーテルポリオールのみからなるか、またはポリエーテルポリオールを主成分として、少量の、末端に水酸基を有する炭化水素系ポリマー等を併用することが好ましい。
該ポリエーテルポリオールとしては、例えば多価アルコール、多価フェノール等のポリヒドロキシ化合物やアミン類等の開始剤に、アルキレンオキシド等の環状エーテルを付加して得られるポリエーテルポリオールが挙げられる。ベースポリオール(W’)として用いるポリエーテルポリオールは、前記ポリオール(A)、ポリオール(B)、およびポリオール(C)と同じであってもよい。
【0046】
ベースポリオール(W’)のうちの5質量%以上が、下記ポリエーテルポリオール(X)であることが好ましい。該ポリエーテルポリオール(X)は、水酸基価が84mgKOH/g以下であり、かつポリエーテルポリオール(X)全体に対するオキシエチレン基含量が40質量%以上であるものをいう。
ポリエーテルポリオール(X)は、開始剤として多価アルコールを使用し、EOまたはEOと他の環状エーテルを付加して得られるものが好ましい。
多価アルコールとしてはグリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオール等が好ましい。他の環状エーテルとしてはPO、ブチレンオキシドが好ましく、POが特に好ましい。
ポリエーテルポリオール(X)において、水酸基価が84mgKOH/g以下であるとポリマー粒子が安定に分散したポリマー分散ポリオール(W)が得られやすい。該ポリエーテルポリオール(X)の水酸基価は、67mgKOH/g以下が好ましく、60mgKOH/g以下が特に好ましい。ポリエーテルポリオール(X)の水酸基価の下限は、ポリマー粒子の分散安定性の点から、5mgKOH/gが好ましく、8mgKOH/gが好ましく、20mgKOH/gが特に好ましく、30mgKOH/gが最も好ましい。
【0047】
ポリエーテルポリオール(X)において、ポリエーテルポリオール(X)全体に対するオキシエチレン基含量が40質量%以上であると、ポリマー分散ポリオール(W)におけるポリマー粒子の分散が安定しやすい。該オキシエチレン基含量は50質量%以上がより好ましく、55質量%以上がさらに好ましい。該オキシエチレン基含量の上限は約100質量%、すなわち、開始剤にエチレンオキシドのみを付加させたポリエーテルポリオール(X)であってもよい。ポリマー粒子の分散安定性の点からは、該オキシエチレン基含量が90質量%以下であることがより好ましい。
ベースポリオール(W’)のうちのポリエーテルポリオール(X)の含有量が5質量%以上であると、分散性のよいポリマー分散ポリオール(W)が得られやすい。該ポリエーテルポリオール(X)の含有量は、10質量%以上がより好ましい。該ポリエーテルポリオール(X)の含有量の上限は特にないが、ポリマー分散ポリオール(W)全体の水酸基価が、上記の好ましい範囲となるように設定することが好ましい。
【0048】
ベースポリオール(W’)は、上記ポリエーテルポリオール(X)の5〜90質量%と、水酸基価が400〜850mgKOH/gであるポリオール(Z)の10〜95質量%との混合物であることが好ましく、ポリエーテルポリオール(X)の30〜80質量%と、前記ポリオール(Z)の20〜70質量%との混合物であることがより好ましい。
ポリオール(Z)の水酸基価は400〜800mgKOH/gがより好ましい。
【0049】
ポリエーテルポリオール(Z)は、上記ベースポリオール(W’)に含まれるポリエーテルポリオールのうち、水酸基価が上記の範囲であるものを用いることができる。そのうち、開始剤として多価アルコールまたはアミン類を用い、プロピレンオキシドを付加して得られるものが好ましい。
【0050】
ポリオール混合物(P)にポリマー分散ポリオール(W)を含有させる場合、その含有量は、ポリオール混合物(P)全体におけるポリマー粒子の含有量が、上記の好ましい範囲となるように設定される。例えばポリオール混合物(P)全体におけるポリマー分散ポリオール(W)の含有量は、0.2〜20質量%の範囲内が好ましく、0.8〜20質量%がより好ましい。
【0051】
[ポリイソシアネート化合物(I)]
ポリイソシアネート化合物(I)としては、イソシアネート基を2以上有する芳香族系、脂環族系、脂肪族系等のポリイソシアネート;前記ポリイソシアネートの2種類以上の混合物;これらを変性して得られる変性ポリイソシアネート等が挙げられる。
具体例としては、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(通称:クルードMDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)等のポリイソシアネートまたはこれらのプレポリマー型変性体、イソシアヌレート変性体、ウレア変性体、カルボジイミド変性体等が挙げられる。このうち、クルードMDI、またはその変性体が好ましく、クルードMDIの変性体が特に好ましい。
【0052】
ポリイソシアネート化合物(I)の25℃における粘度は、50〜300mPa・sが好ましく、50〜150mPa・sがより好ましい。この粘度範囲であれば、得られる硬質フォームに収縮が発生しにくい。また、スプレー法による吹き付け施工時の操作性が良好となり、得られる硬質フォームの外観を良好に保つことができる。
【0053】
ポリイソシアネート化合物(I)の使用量は、ポリオール混合物(P)およびその他の活性水素化合物の活性水素の合計数に対するイソシアネート基の数の100倍で表して(以下、この100倍で表した数値を「イソシアネート指数」という。)、100〜300が好ましく、100〜200がより好ましい。
硬質発泡合成樹脂を製造する時の触媒として、ウレタン化触媒を主に用いるウレタン処方の場合、ポリイソシアネート化合物(I)の使用量は、前記イソシアネート指数で100〜170が好ましく、100〜150がより好ましい。
硬質発泡合成樹脂を製造する時の触媒として、イソシアネート基の三量化反応を促進させる三量化反応促進触媒を主に用いるイソシアヌレート処方の場合、ポリイソシアネート化合物(I)の使用量は、前記イソシアネート指数で100〜300が好ましく、100〜250がより好ましい。本発明においてはイソシアヌレート処方を採用することが好ましい。
【0054】
[触媒]
触媒は、ウレタン化触媒としては第3級アミンが好ましく、三量化反応促進触媒としては金属塩および/または第4級アンモニウム塩が好ましい。イソシアヌレート処方の場合、ウレタン化触媒と三量化反応促進触媒の併用が好ましく、第3級アミンと、金属塩および/または第4級アンモニウム塩とを併用することがより好ましい。
第3級アミンとしては、例えばN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルプロピレンジアミン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチル−(3−アミノプロピル)エチレンジアミン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジプロピレントリアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルグアニジン、1,3,5−トリス(N,N−ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ−s−トリアジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、トリエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N,N’−ジメチルピペラジン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、1−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−イソブチル−2−メチルイミダゾール、1−ジメチルアミノプロピルイミダゾール、N−メチル−N−(N,N−ジメチルアミノエチル)エタノールアミン等が挙げられる。これらのうち、触媒活性に優れ、臭気が少ない等の点から1,3,5−トリス(N,N−ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ−s−トリアジン、N−メチル−N−(N,N−ジメチルアミノエチル)エタノールアミン、またはビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテルが好ましい。
【0055】
金属塩としては、錫塩、鉛塩および水銀塩を除く金属塩が用いられる。例えば酢酸カリウム、2−エチルヘキサン酸カリウム、2−エチルヘキサン酸ビスマス等のカルボン酸金属塩等が好ましい。スプレー法による発泡において、環境汚染、価格、および触媒活性の点から、2−エチルヘキサン酸カリウムがより好ましい。
【0056】
第4級アンモニウム塩としては、例えば、テトラメチルアンモニウムクロライド等のテトラアルキルアンモニウムハロゲン化物;水酸化テトラメチルアンモニウム塩等のテトラアルキルアンモニウム水酸化物;テトラメチルアンモニウム2−エチルヘキサン酸塩、2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムギ酸塩、2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム2−エチルヘキサン酸塩等のテトラアルキルアンモニウム有機酸塩類;N,N,N’N’−テトラメチルエチレンジアミン等の第3級アミンと炭酸ジエステル類とを反応して得られる4級アンモニウム炭酸塩を、2−エチルヘキサン酸とアニオン交換反応させることで得られる4級アンモニウム化合物等が挙げられる。
【0057】
触媒の使用量は、ポリオール混合物(P)の100質量部に対して、0.1〜20質量部が好ましく、1〜18質量部がより好ましい。触媒の使用量によって、ポリオール混合物(P)とポリイソシアネート化合物(I)との反応性を制御できる。すなわち、これらの混合開始時から、目視で発泡が終了するまでの時間(ライズタイム)を調整することができる。
【0058】
[発泡剤]
本発明においては、発泡剤として少なくとも水を使用する。水のみでもよく、水以外の発泡剤を併用してもよい。水以外の発泡剤としては、例えばHFC類、炭化水素化合物、汎用のガス等を併用することができる。環境への配慮からは、発泡剤として水のみを用いることがより好ましい。
HFC類の例としては、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365mfc)、1,1,2,2−テトラフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(HFE−236pc)、1,1,2,2−テトラフルオロエチルメチルエーテル(HFE−254pc)、1,1,1,2,2,3,3−ヘプタフルオロプロピルメチルエーテル(HFE−347mcc)等が挙げられる。
炭化水素化合物の例としては、ブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン等が挙げられる。
汎用のガスの例としては、空気、窒素、炭酸ガス等が挙げられる。中でも、炭酸ガスが好ましい。不活性ガスの添加状態は、液状態、超臨界状態、亜臨界状態のいずれでも構わない。
水以外の発泡剤を用いる場合、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0059】
発泡剤として水のみを用いる場合の水の使用量は、ポリオール混合物(P)の100質量部に対し0.5〜10質量部が好ましく、0.5〜7質量部が特に好ましい。
また、発泡剤としてペンタン(ノルマルペンタン、イソペンタン、および/またはシクロペンタン)のみを用いる場合のペンタン(ノルマルペンタン、イソペンタン、および/またはシクロペンタン)の使用量は、ポリオール混合物(P)の100質量部に対し0.5〜40質量部が好ましく、0.5〜30質量部が特に好ましい。
【0060】
[整泡剤]
整泡剤としては例えば、シリコーン系整泡剤、含フッ素化合物系整泡剤等が挙げられる。本発明においては、良好な気泡を形成するためシリコーン系整泡剤を用いることが好ましい。
シリコーン系整泡剤としては、ジメチルポリシロキサンと、ポリエーテルとのブロックコポリマーを含む化合物が挙げられる。具体的には、東レ・ダウコーニング社製のSZ−1671、SZ−1718、SH−193、SZ−1642等、モメンティブ社製のL−6884、L−5440、L−5420等、エボニック社製のB8443、B8490、B8460等が挙げられる。
整泡剤の使用量は、適宜選定できるが、ポリオール混合物(P)の100質量部に対して0.1〜10質量部が好ましく、0.3〜5質量部がより好ましい。
【0061】
[難燃剤]
本発明に用いられる難燃剤としては、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリスクロロエチルホスフェート、トリスクロロプロピルホスフェート(略称TCPP)、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、ポリリン酸等のリン酸エステル、亜リン酸エステル等のリン酸化合物、塩素化パラフィン等が挙げられる。
難燃剤の使用量は、得られる硬質フォームにおいて、優れた機械物性と難燃性をともに確実に具備する点から、ポリオール混合物(P)の100質量部に対して10〜60質量部が好ましく、20〜40質量部がより好ましい。
【0062】
[その他の配合剤]
本発明では、ポリオール混合物(P)、ポリイソシアネート化合物(I)、触媒、発泡剤、整泡剤、難燃剤の他に、任意の配合剤を使用できる。配合剤としては、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の充填剤;酸化防止剤、紫外線吸収剤等の老化防止剤;可塑剤、着色剤、抗カビ剤、破泡剤、分散剤、変色防止剤等が挙げられる。
【0063】
[硬質発泡合成樹脂の製造方法]
本発明は、ポリオール混合物(P)とポリイソシアネート化合物(I)とを、触媒、発泡剤、整泡剤および難燃剤の存在下で反応させて硬質発泡合成樹脂を製造する方法である。
具体的には、予め、ポリオール混合物(P)を調製し、該ポリオール混合物(P)と、ポリイソシアネート化合物(I)以外の成分の一部または全部とを混合して、ポリオールシステム液を調製しておく。その後、ポリオールシステム液と、ポリイソシアネート化合物(I)と残りの成分を混合して発泡原液組成物とし、これを発泡硬化させる方法が好ましい。
発泡剤は、ポリオールシステム液に予め配合しておいてもよく、ポリオールシステム液とポリイソシアネート化合物(I)を混合した後に配合してもよい。好ましくは、ポリオールシステム液に予め配合しておく。
整泡剤、触媒、および難燃剤は、ポリオールシステム液と、ポリイソシアネート化合物(I)を含む液のどちらに含有させてもよい。添加した整泡剤、触媒および難燃剤の分離、失活を防ぐ点から、すなわち安定的な性能を発揮させる点からは、ポリオールシステム液に含有させることが好ましい。
【0064】
本発明における硬質ポリウレタンフォームの製造方法は、各種の成形法に適用できる。
成形法としては、たとえば注入法、連続ボード成形法、スプレー法が挙げられる。
注入法とは、金型等の枠内に硬質フォーム原料を注入し、発泡させる方法である。
連続ボード成形法とは、2枚の面材間に硬質フォーム原料を供給して発泡させることにより、これらの面材の間に硬質フォームが挟まれた積層体を製造する方法であり、建築用途の断熱材の製造等に用いられる。
スプレー法とは、硬質フォームをスプレーで吹き付け施工する方法である。
【0065】
本発明によれば、ポリオール混合物(P)として、ビスフェノール化合物を開始剤とする水酸基価56〜250mgKOH/gのポリオール(A)と、マンニッヒ縮合物を開始剤とする水酸基価100〜800mgKOH/gのポリオール(B)を用いることにより、後述の実施例に示されるように、発泡剤として水を多量に含んでも、ポリオールシステム液が低粘度となる。
これにはポリオール(A)が低水酸基価であることが寄与していると考えられる。すなわち、ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加体を用いた前記特許文献2の段落[0016]には、開始剤であるビスフェノールAの1モルに対してアルキレンオキシドを3モルを超えて付加させると(水酸基価が小さくなると)、得られる硬質フォームの強度が不充分で、成形直後または経時により、硬質フォームが収縮変形する旨の記載がある。一方、本発明では、マンニッヒ縮合物を開始剤とするポリオール(B)が硬質フォームの強度の向上に寄与するため、ポリオール(A)が低水酸基価であっても収縮変形しない良好な強度の硬質フォームが得られる。したがって、硬質フォームの強度の低下を抑えつつ、ポリオールシステム液の低粘度化が達成できる。
【0066】
また、本発明によれば、ポリオール混合物(P)として、上記のようなポリオール(A)とポリオール(B)を用いることにより、後述の実施例に示されるように、ポリエステルポリオールを用いなくても、良好な接着性および難燃性が得られ、ポリエステルポリオールを含まないため、ポリオールシステム液の良好な貯蔵安定性が得られる。
これは、ポリオール(A)が難燃性の向上に寄与するとともに、ポリオール(B)が難燃性および接着性の向上に寄与するためと考えられる。前記特許文献2の段落[0017]には、ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加体の使用量が、ポリオール成分全体の20質量%を超えると、面材との接着性が悪くなる旨が記載されている。一方、本発明では、マンニッヒ縮合物を開始剤とするポリオール(B)が接着性の向上に寄与するため、ポリオール(A)を比較的多く含有させても良好な接着性が得られ、優れた難燃性を達成できると考えられる。
良好な接着性とは、面材との剥離角度45°における剥離強度が0.20kgf/cm
3以上であることが好ましい。
また、本発明によれば、ポリオールシステム液とポリイソシアネート化合物(I)との反応性が良好であり、後述の実施例に示されるように、スプレー法により、優れた物性を有する硬質発泡合成樹脂を製造できる。すなわち、本発明は、スプレー法により硬質発泡合成樹脂を製造する方法に好適である。
【実施例】
【0067】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。用いた原料は、以下のとおりである。
【0068】
難燃剤A:トリスクロロプロピルホスフェート(商品名:ファイロールPCF、スプレスタジャパン社製)。
・発泡剤A:水
整泡剤A:シリコーン系整泡剤(商品名:SH−193、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)。
触媒A:反応型泡化触媒(ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテルの70質量%DPG(ジプロピレングリコール)溶液、商品名:TOYOCAT RX−7、東ソー社製)。
触媒B:トリアジン系泡化触媒(商品名:POLYCAT 41、エアプロダクツ社製)。
触媒C:第4級アンモニウム塩とエチレングリコールの混合物(商品名:TOYOCAT−TRX、東ソー社製)。
ポリイソシアネートA:ポリメリックMDI((MDIとクルードMDIの混合物、商品名:コロネート1130、日本ポリウレタン工業社製、25℃における粘度:130mPa・s、イソシアネート基含有率:31質量%)。
【0069】
<ポリオール(A)>
[ポリオールA−1]
開始剤としてビスフェノールAを用い、開始剤の1モルに対しEOの8モルを開環付加重合させた、水酸基価が200mgKOH/gのポリエーテルポリオール。25℃における粘度は1,800mPa・s。
[ポリオールA−2]
開始剤としてビスフェノールAを用い、開始剤の1モルに対しEOの12モルを開環付加重合させた、水酸基価が150mgKOH/gのポリエーテルポリオール。25℃における粘度は1,200mPa・s。
[ポリオールA−3]
開始剤としてビスフェノールAを用い、開始剤の1モルに対しEOの20モルを開環付加重合させた、水酸基価が100mgKOH/gのポリエーテルポリオール。25℃における粘度は850mPa・s。
[ポリオールA−4]
開始剤としてビスフェノールAを用い、開始剤の1モルに対しEOの4モルを開環付加重合させた、水酸基価が270mgKOH/gのポリエーテルポリオール。25℃における粘度は11,000mPa・s。
【0070】
<ポリオール(B)>
[ポリオールB−1]
ノニルフェノールの1モルに対し、ホルムアルデヒドの0.75モルおよびジエタノールアミンの2.2モルを反応させて得られた反応生成物を開始剤として、EO、PO、EOをこの順序で開環付加重合させて得られた、水酸基価300mgKOH/gのポリエーテルポリオール。アルキレンオキシドの付加量は、ノニルフェノールの1モルに対し16.7モルである。付加させたPOとEOの合計量に対するEOの割合は、75質量%である。25℃における粘度は470mPa・s。
[ポリオールB−2]
ノニルフェノールの1モルに対し、ホルムアルデヒドの1.5モルおよびジエタノールアミンの2.2モルを反応させて得られた反応生成物を開始剤として、PO、EOをこの順で開環付加重合させて得られた、水酸基価300mgKOH/gのポリエーテルポリオール。アルキレンオキシドの付加量は、ノニルフェノールの1モルに対し15.4モルである。付加させたPOとEOの合計量に対するEOの割合は58質量%である。25℃における粘度は1,000mPa・s。
[ポリオールB−3]
ノニルフェノールの1モルに対し、ホルムアルデヒドの1.5モルおよびエタノールアミンの2.2モルを反応させて得られた反応生成物を開始剤として、PO、EOをこの順で開環付加重合させて得られた、水酸基価350mgKOH/gのポリエーテルポリオール。アルキレンオキシドの付加量は、ノニルフェノールの1モルに対し11.2モルである。付加させたPOとEOの合計量に対するEOの割合は58質量%である。25℃における粘度は1,500mPa・s。
[ポリオールB−4]
ノニルフェノールの1モルに対し、ホルムアルデヒドの2.2モルおよびジエタノールアミンの2.2モルを反応させて得られた反応生成物を開始剤として、PO、EOをこの順で開環付加重合させて得られた、水酸基価430mgKOH/gのポリエーテルポリオール。アルキレンオキシドの付加量は、ノニルフェノールの1モルに対し6.3モルである。付加させたPOとEOの合計量に対するEOの割合は23質量%である。25℃における粘度は6,000mPa・s。
[ポリオールB−5]
ノニルフェノールの1モルに対し、ホルムアルデヒドの1.5モルおよびジエタノールアミンの2.2モルを反応させて得られた反応生成物を開始剤として、EOのみを開環付加重合させて得られた、水酸基価590mgKOH/gのポリエーテルポリオール。アルキレンオキシドの付加量は、ノニルフェノールの1モルに対し2.6モルである。25℃における粘度は33,000mPa・s。
【0071】
<ポリオール(C)>
[ポリオールC−1]
開始剤としてグリセリンを用い、PO、EOをこの順序で開環付加重合させて得られた、水酸基価112mgKOH/gのポリエーテルポリオール。アルキレンオキシドの付加量は、グリセリンの1モルに対し27.8モルである。付加させたPOとEOの合計量に対するEOの割合は40質量%である。25℃における粘度は320mPa・s。
[ポリオールC−2]
開始剤としてグリセリンを用い、PO、EOをこの順序で開環付加重合させて得られた、水酸基価112mgKOH/gのポリエーテルポリオール。アルキレンオキシドの付加量は、グリセリンの1モルに対し26.7モルである。付加させたPOとEOの合計量に対するEOの割合は33質量%である。25℃における粘度は320mPa・s。
[ポリオールC−3]
開始剤としてジプロピレングリコールを用い、POとEOとの混合物を開環付加重合させて得られた、水酸基価112mgKOH/gのポリエーテルポリオール。アルキレンオキシドの付加量は、ジプロピレングリコールの1モルに対し18.8モルである。付加させたPOとEOの合計量に対するEOの割合は80質量%である。25℃における粘度は200mPa・s。
[ポリオールC−4]
開始剤としてジプロピレングリコールを用い、POとEOとの混合物を開環付加重合させて得られた、水酸基価56mgKOH/gのポリエーテルポリオール。アルキレンオキシドの付加量は、ジプロピレングリコールの1モルに対し40.6モルである。付加させたPOとEOの合計量に対するEOの割合は80質量%である。25℃における粘度は460mPa・s。
[ポリオールC−5]
開始剤としてN−(2−アミノエチル)ピペラジンを用い、開始剤にEOのみを開環付加重合させた、水酸基価が350mgKOH/gのポリエーテルポリオール。アルキレンオキシドの付加量は、N−(2−アミノエチル)ピペラジンの1モルに対し8.0モルである。25℃における粘度は700mPa・s。
[ポリオールC−6]
開始剤としてエチレンジアミンを用い、開始剤にPO、EOをこの順序で開環付加重合させて得られた、水酸基価450mgKOH/gのポリエーテルポリオール。アルキレンオキシドの付加量は、ジプロピレングリコールの1モルに対し8.7モルである。付加させたPOとEOの合計量に対するEOの割合は41質量%である。25℃における粘度は1,200mPa・s。
[ポリオールC−7]
開始剤としてトリレンジアミンを用い、開始剤にEO、PO、EOをこの順序で開環付加重合させた、水酸基価が350mgKOH/gのポリエーテルポリオール。アルキレンオキシドの付加量は、トリレンジアミンの1モルに対し9.9モルである。付加させたEOとPOとの合計に対するEOの割合が33質量%のポリエーテルポリオール。25℃における粘度は7,000mPa・s。
【0072】
<ポリオール(D−1)>
p−フタル酸ベースのポリエステルポリオール(商品名:PL305、日立化成社製、水酸基価:315mgKOH/g、粘度:2600mPa・s(25℃))。
<ポリオール(D−2)>
p−フタル酸ベースのポリエステルポリオール(商品名:PL272、日立化成社製、水酸基価:230mgKOH/g、粘度:2100mPa・s(25℃))。
<ポリオール(D−3)>
p−フタル酸ベースのポリエステルポリオール(商品名:SV165、日立化成社製、水酸基価:200mgKOH/g、粘度:820mPa・s(25℃))。
なお、ポリオール(D−1)〜(D−3)はポリエステルポリオールであり、本発明のポリオール(A)〜(C)とは異なる。
【0073】
<ポリマー分散ポリオール(W)>
ポリマー分散ポリオール(W)として、下記表1に示す配合で、下記製造例の方法により製造したポリマー分散ポリオールW1〜W6を用いた。表1における配合比の単位は「質量部」である。
[重合性不飽和結合を有するモノマー]
ポリマー粒子を形成するための重合性不飽和結合を有するモノマーとしては、アクリロニトリル(AN)、酢酸ビニル(Vac)、メタクリル酸メチル(MMA)、および前記式(1−1)で表わされるポリフルオロアルキルメタクリレート(FMA)を用いた。
【0074】
[マクロモノマー]
マクロモノマーとして以下の2種を用いた。
マクロモノマーM1:下記のポリオールE、トリレンジイソシアネート(商品名:T−80、日本ポリウレタン工業社製)および2−ヒドロキシエチルメタクリレート(純正化学社製)を、ポリオールE/トリレンジイソシアネート/2−ヒドロキシエチルメタクリレート=1/1/1のモル比率となるように仕込み、60℃で1時間反応させた後、さらに80℃で6時間反応させることで得られた、水酸基価40mgKOH/gの重合性不飽和基を有するマクロモノマー。
マクロモノマーM2:下記のポリオールF、トリレンジイソシアネート(商品名:T−80、日本ポリウレタン工業社製)および2−ヒドロキシエチルメタクリレート(純正化学社製)を、ポリオールF/トリレンジイソシアネート/2−ヒドロキシエチルメタクリレート=1/1/1のモル比率となるように仕込み、60℃で1時間反応させた後、さらに80℃で6時間反応させることで得られた、水酸基価21mgKOH/gの重合性不飽和基を有するマクロモノマー。
ポリオールE:開始剤としてグリセリンを用い、該グリセリンに、EOを開環付加重合した後、POとEOとの混合物[PO/EO=46.2/53.8(質量比)]を開環付加重合させて得られた、ポリオールD中のオキシエチレン基含有量65質量%、水酸基価が48mgKOH/gのポリオキシアルキレンポリオール。
ポリオールF:開始剤としてグリセリンを用い、該グリセリンに、EOを開環付加重合した後、POとEOとの混合物[PO/EO=48.0/52.0(質量比)]を開環付加重合させて得られた、ポリオール中のオキシエチレン基含有量60質量%、水酸基価が28mgKOH/gのポリオキシアルキレンポリオール。
【0075】
[ベースポリオール(W’)]
ベースポリオール(W’)としては、下記のポリオールX1、Z1、およびZ2を用いた。
(ポリオールX1)
グリセリンを開始剤として、EOとPOとをランダムに開環付加重合させて得られた、水酸基価50mgKOH/gのポリエーテルポリオール。付加させたPOとEOの合計量に対するEOの割合は70質量%である。ポリオールX1の全体におけるEO基の含有量は68質量%である。
(ポリオールZ1)
グリセリンを開始剤として、POを開環付加重合させて得られた、水酸基価650mgKOH/gのポリエーテルポリオール。
(ポリオールZ2)
エチレンジアミンを開始剤として、POを開環付加重合させて得られた、水酸基価が760mgKOH/gのポリエーテルポリオール。
【0076】
[製造例1:ポリマー分散ポリオール(W1)の製造]
5L(リットル)加圧反応槽に、表1に示した配合でベースポリオール(W’)、モノマー、および重合開始剤としてのAMBNを全て仕込んだ後、撹拌しながら昇温を開始し、反応液を80℃に保ちながら10時間反応させた。モノマーの反応率は80%以上を示した。反応終了後、110℃、20Paで2時間加熱減圧脱気して未反応モノマーを除去し、ポリマー分散ポリオールW1を得た。
得られたポリマー分散ポリオールW1の水酸基価、25℃における粘度、およびポリマー分散ポリオールW1中のポリマー粒子の含有量を表1に示す(以下、同様。)。
【0077】
[製造例2、および3:ポリマー分散ポリオール(W2)、および(W3)の製造]
5L加圧反応槽に、表1に示したベースポリオール(W’)の混合物のうちの70質量%を仕込み、120℃に保ちながら、残りのベースポリオール(W’)の混合物とモノマーと重合開始剤(AMBN)との混合物を撹拌しながら2時間かけてフィード(feed)し、混合物の全てのフィード終了後、同温度(120℃)で約0.5時間撹拌を続けた。製造例2、および3のいずれにおいても、モノマーの反応率は80%以上を示した。反応終了後、未反応モノマーを120℃、20Paで2時間加熱減圧脱気にて除去し、ポリマー分散ポリオールW2およびW3を得た。
【0078】
[製造例4〜6:ポリマー分散ポリオール(W4)、(W5)、および(W6)の製造]
5L加圧反応槽に、表1に示した配合で、ポリオールX、ポリオールZ1、およびマクロモノマーを仕込み、120℃に保ちつつ、モノマーおよび重合開始剤(AMBN)の混合物を、撹拌しながら2時間かけてフィードし、混合物の全てのフィード終了後、同温度(120℃)で約0.5時間撹拌を続けた。その後、未反応モノマーの除去を減圧下、120℃で3時間行ない、ポリマー分散ポリオールW4、W5およびW6を得た。
【0079】
【表1】
【0080】
<実施例1〜26:硬質フォームの製造(簡易発泡)>
表2〜5に示す配合で調製したポリオールシステム液と、ポリイソシアネート化合物(I)を用いて硬質フォームを製造し、下記の方法で評価した。表に示す配合比の単位は「質量部」である(以下、同様)。
ポリオールシステム液は、ポリオール混合物(P)、発泡剤としての水、触媒、整泡剤、および難燃剤を添加、混合して調製した。発泡剤としては水のみを用いた。表には、ポリオール混合物(P)全体の平均水酸基価(単位:mgKOH/g)、ポリオールシステム液の25℃における粘度(単位:mPa・s、表では「システム液粘度」という。)を示す。
硬質フォームの製造に用いるポリオールシステム液と、ポリイソシアネート化合物(I)の使用量は、体績比で1/1とした。表中、ポリイソシアネート化合物(I)の使用量は、イソシアネート指数で示す。
【0081】
[簡易発泡試験]
ポリオールシステム液とポリイソシアネート化合物とを10℃に調整し、ポリエチレン製カップ中に手早く投入し、毎分3,000回転で3秒間撹拌し、1Lカップ中で発泡させた。
硬質フォームの反応性、得られた硬質フォームの密度(カップフリー密度)および寸法変化率(寸法安定性)を以下の方法で評価した。評価結果を表に示す。
【0082】
[反応性(クリームタイム(cream time)、およびライズタイム(rise time))]
ポリオールシステム液とポリイソシアネート化合物との混合開始時刻を0秒とし、発泡原液組成物が泡立ちを始めるまでの時間をクリームタイム(秒)とし、さらに発泡原液組成物が発泡し始め、硬質フォームの上昇が停止する時間をライズタイム(秒)とした。
クリームタイムおよびライズタイムが短いほど反応性が良いことを示す。
[密度(カップフリー密度)]
得られた硬質フォームのコア部を、縦70mm×横70mm×厚み70mmの立方体に切断し、重量と体積から密度(単位:kg/m
3)を算出した。
【0083】
[寸法変化率(高温での寸法安定性)]
70mm×70mm×70mmの立方体に切り出した硬質フォームを、高温条件(高温外観収縮)では、70℃で相対湿度0%の雰囲気中、湿熱条件(湿熱外観収縮)では、70℃で相対湿度95%の雰囲気中に、試験片を24時間の環境下に保持し、24時間経過後に、増加した長さ(厚さ)を、保持前の長さ(厚さ)に対する寸法変化率(単位:%)で表した。すなわち、2条件(高温条件および湿熱条件)のそれぞれにおいて、3方向(X、Y、Z)の寸法変化率をそれぞれ測定した。寸法変化率において、負の数値は収縮を意味し、絶対値が大きいことは、寸法変化が大きいことを意味する。
寸法変化率の測定結果より、下記評価基準にもとづいて寸法安定性を評価した。
(評価基準)
○(良):3方向の寸法変化率の中の絶対値の最大値が1%未満であった。
×(不可):3方向の寸法変化率の中の絶対値の最大値が1%以上であった。
【0084】
【表2】
【0085】
【表3】
【0086】
【表4】
【0087】
【表5】
【0088】
<実施例27〜34および比較例1〜3:貯蔵安定性試験>
実施例27〜34、および比較例1〜3においては、表6、および7に示す配合で、実施例1と同様にしてポリオールシステム液を調製し、ポリイソシアネート化合物(I)とを混合したときの反応性(クリームタイム、およびライズタイム)を、実施例1と同様の簡易発泡にて調べた(クリームタイム、およびライズタイムの測定)。調製直後(初期)および貯蔵後のポリオールシステム液をそれぞれ用いた場合の反応性の変化に基づいて貯蔵安定性を評価した。評価結果を表に示す。
なお、実施例28〜29は、実施例20〜21とそれぞれ同じ配合であり、実施例31〜34は、実施例23〜26とそれぞれ同じ配合である。
【0089】
すなわち、調製直後(初期)のポリオールシステム液を用いて反応性の測定を行った。
また、該ポリオールシステム液を40℃の雰囲気中にて静置して、1週間後および2週間後にそれぞれ反応性の測定を行った。下記の評価基準に基づいて反応性変化を評価した。該反応性変化が小さいほどポリオールシステム液の貯蔵安定性が良いことを示す。
(評価基準)
○(良):初期の反応性に対し、ライズタイムの増加およびクリームタイムの増加が、両方とも+1秒以下であった。
×(不可):初期の反応性に対し、ライズタイムの増加またはクリームタイムの増加の少なくとも一方が+1秒以上であった。
【0090】
【表6】
【0091】
【表7】
【0092】
<実施例41〜62および比較例4、5:硬質フォームの製造(スプレー発泡)>
表8〜10に示す配合で、実施例1と同様にして調製したポリオールシステム液と、ポリイソシアネート化合物(I)とを用い、スプレー法で硬質フォームを製造し、下記の方法で評価した。
[スプレー施工試験]
ポリオールシステム液と、ポリイソシアネート化合物(I)を、ガスマー社製のスプレー発泡機(商品名:FF−1600)を用いて、液温40℃、および室温20℃の条件下で、発泡し、反応させて硬質フォームを製造した。
施工する基材は、縦が600mm、横が600mm、厚さが5mmのフレキシブル板を用い、これに対して、吹き付け施工を行った。吹き付けは、厚さ1mmの下吹き層を施工した後に、一層の厚さが25〜30mmとなるように2層吹き付け施工し、合計で3層積層した。
スプレー施工における施工性、成形性、混合性、得られた硬質フォームの密度(コア密度)、圧縮強さ、寸法安定性、熱伝導率、接着性、および難燃性を以下の方法で評価した。評価結果を表に示す。
【0093】
[密度(コア密度)]
硬質フォームのコア密度を、JIS A 9526に準拠する方法で測定した。
[熱伝導率]
熱伝導率(単位:mW/m・K)は、JIS A1412−2に準拠し、熱伝導率測定装置(製品名:オートラムダHC−074型、英弘精機社製)を用いて、平均温度20℃で測定した。
[圧縮強さ]
硬質フォームの圧縮強さを、JIS K 7220に準拠する方法で測定した。
表中の「//」は発泡の方向に対して平行方向に荷重を加えた時の圧縮応力を示し、「⊥」は発泡の方向に対して垂直方向に荷重を加えた時の圧縮応力を示す。
[寸法変化率(高温での寸法安定性)]
150mm×100mm×50mmの直方体に切り出した硬質フォームについて、上記ハンド発泡試験における高温での寸法安定性の評価方法と同じ方法で評価した。
【0094】
[接着性]
50mm×100mmに切り出したアルミクラフト紙上に硬質フォームを発泡させた。端部を剥離したアルミクラフト紙を、プッシュプルゲージにて剥離角度45°で引っ張り、その時の剥離強度(kgf/cm
3)を測定した。
○(良):剥離強度が、0.20kgf/cm
3以上。
×(不可):剥離強度が、0.20kgf/cm
3未満。
[混合性]
吹きつけ直後の硬質フォーム外観を観察し、セルの大きさと色相の均一性を目視にて確認した。評価は以下の基準で、3段階評価とした。
○(良):セルの大きさおよび色相が均一で、混合斑がない状態。
△(可):セルの大きさが不均一、色相が不均一、または混合斑の存在のうちのいずれか1つが確認される状態。
×(不可):セルの大きさの不均一、色相の不均一、または混合斑の存在のうち2つ以上が確認される状態。
【0095】
[スプレー施工性]
スプレーミストの広がり具合を目視にて確認し、以下の3段階で評価した。
○(良):充分にミストの開きが広角となり、平滑な吹き付けが可能である状態。
△(可):ミストの開きがやや不充分であり、平滑な吹き付けがやや困難な状態。
×(不可):ミストの開きが不充分であり、平滑な吹き付けが困難な状態。
[成形性(硬質フォーム内部の状態)]
施工した硬質フォームの端部を切断し、断面の状態を確認し、以下の基準で評価した。
○(良):硬質フォーム内部にスコーチ等による着色や割れやセル不均一などがない。
×(不可):硬質フォーム内部にスコーチ等による着色や割れがある、および/またはセル不均一などの不良部分がある。
【0096】
[難燃性(コーンカロリー試験)]
難燃性試験として、前記スプレー施工試験で得られたサンプルをフレキシブル板も含め、厚み20mmとなるようカットし、ISO5660に準拠したコーンカロリーメーターによる発熱性試験(コーンカロリー試験)を実施した。
最大発熱速度の測定結果を表に示すとともに、コーンカロリー試験結果として、最大発熱速度が200kW/m
2以下の場合を○(良)、200kW/m
2を超える場合を×(不可)として表に示す。
【0097】
【表8】
【0098】
【表9】
【0099】
【表10】
【0100】
表2〜5の結果より、実施例1〜26において、ポリオールシステム液の粘度が低く、簡易発泡により低密度で寸法安定性が良好な硬質フォームが得られた。また、表6に示される実施例27〜34における貯蔵安定性試験において、ポリオールシステム液の反応性の低下は全く見られなかった。
これに対して、ポリオール(A)を用いず、その代わりにポリエステルポリオールであるポリオール(D)を用いた比較例1〜3(表7)では、貯蔵安定性試験において、初期のポリオールシステム液の反応性に対し、1週間後または2週間後のポリオールシステム液の反応性が著しく悪化した。すなわちポリオールシステム液の貯蔵安定性が不充分であった。
【0101】
表8〜10の結果より、実施例41〜62において、ポリオールシステム液の粘度が低く、スプレー法での混合性、施工性、および成形性が良好であった。得られた硬質フォームは低密度でありながら、寸法安定性が良好であり、接着性および難燃性にも優れていた。
これに対して、ビスフェノール化合物を開始剤として、アルキレンオキシドを開環付加重合させて得られた水酸基価270mgKOH/gのポリオール(A―4)を用いた比較例4〜5(表10)では、ポリオールシステム液の粘度が比較的高く、混合性、およびスプレー施工性が悪く、成形性が不十分であった。得られた硬質フォームは、基材との接着性が不充分であり、硬質フォームの収縮が確認された。
【0102】
また、実施例9〜11、実施例12〜14、および実施例16〜19のライズタイムは、付加させたPOとEOの合計量に対するEOの割合が高いほど短くなっている。この結果は、ポリオール(B)において、全アルキレンオキシドのうちのEOの比率が高いほど反応性が高いことを示している。
さらに、実施例56〜59は、それぞれ脂肪族のポリオールC−1、C−2、C−3、またはC−4を用いた例であり、基材との濡れ性が向上したことにより、より優れた接着性が得られた。実施例60は、アミン含有量の高いポリオールC−5を用いた例であり、反応性が向上したことにより、スプレーミストの開き具合がより改善され、良好な施工性が得られた。実施例61〜62は、脂肪族アミンポリオールであるポリオールC−6または、芳香族アミンポリオールであるポリオールC−7を用いた例であり、架橋密度の向上により、硬質フォームの強度の向上が確認された。また、いずれのポリオールの組み合わせにおいても難燃性の悪化は見られなかった。