特許第5796581号(P5796581)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5796581化学強化用ガラス、化学強化ガラスおよびディスプレイ装置用ガラス板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5796581
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】化学強化用ガラス、化学強化ガラスおよびディスプレイ装置用ガラス板
(51)【国際特許分類】
   C03C 3/085 20060101AFI20151001BHJP
   C03C 21/00 20060101ALI20151001BHJP
   G02F 1/1333 20060101ALI20151001BHJP
【FI】
   C03C3/085
   C03C21/00 101
   G02F1/1333 500
   G02F1/1333
【請求項の数】28
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-536440(P2012-536440)
(86)(22)【出願日】2011年9月26日
(86)【国際出願番号】JP2011071901
(87)【国際公開番号】WO2012043482
(87)【国際公開日】20120405
【審査請求日】2014年3月6日
(31)【優先権主張番号】特願2010-288255(P2010-288255)
(32)【優先日】2010年12月24日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2010-215982(P2010-215982)
(32)【優先日】2010年9月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】旭硝子株式会社
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 淳
(72)【発明者】
【氏名】秋葉 周作
(72)【発明者】
【氏名】小野 和孝
(72)【発明者】
【氏名】中島 哲也
【審査官】 増山 淳子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2002−507538(JP,A)
【文献】 特開2004−043295(JP,A)
【文献】 特開2010−168252(JP,A)
【文献】 特開2005−051116(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2009−0124973(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 1/00 − 14/00
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化物基準のモル百分率表示で、SiOを62〜68%、Al〜12%、MgOを7〜13%、NaOを9〜17%、KOを0〜7%含有し、NaOおよびKOの含有量の合計からAl含有量を減じた差が9%以下であり、ZrOを含有する場合その含有量が0.8%以下である化学強化用ガラス。
【請求項2】
SiOを64〜67%、Al〜7.5%含有し、SiOおよびAlの含有量の合計が69〜73%である請求項1の化学強化用ガラス。
【請求項3】
酸化物基準のモル百分率表示で、SiOを62〜66%、Al〜12%、MgOを7〜13%、NaOを9〜17%、KOを0〜7%含有し、NaOおよびKOの含有量の合計からAl含有量を減じた差が9%以下であり、ZrOを含有する場合その含有量が0.8%以下である化学強化用ガラス。
【請求項4】
SiOおよびAlの含有量の合計が72%超である請求項3の化学強化用ガラス。
【請求項5】
NaOおよびKOの含有量の合計が14〜22%である請求項1〜4のいずれかの化学強化用ガラス。
【請求項6】
酸化物基準のモル百分率表示で、SiOを64〜68%、Al〜11%、MgOを7〜12%、NaOを12〜17%、KOを0〜6%含有し、NaOおよびKOの含有量の合計からAl含有量を減じた差が9%以下であり、ZrOを含有する場合その含有量が0.8%以下である化学強化用ガラス。
【請求項7】
SiOを65〜68%、Alを7〜10%、KOを0〜2.5%含有し、SiOおよびAlの含有量の合計が73.5〜76%である請求項6の化学強化用ガラス。
【請求項8】
SiO含有量が66%以下である請求項6または7の化学強化用ガラス。
【請求項9】
NaOおよびMgOの含有量の合計が21〜25%である請求項6〜8のいずれかの化学強化用ガラス。
【請求項10】
NaOおよびKOの含有量の合計が18%以下である請求項6〜9のいずれかの化学強化用ガラス。
【請求項11】
NaO、KOおよびMgOの含有量の合計が24〜28%である請求項1〜10のいずれかの化学強化用ガラス。
【請求項12】
O含有量が0.5%以上である請求項1〜11のいずれかの化学強化用ガラス。
【請求項13】
SiO、Al、MgO、NaOおよびKOの含有量の合計が98%以上である請求項1〜12のいずれかの化学強化用ガラス。
【請求項14】
ガラス転移点が600℃以上である請求項1〜13のいずれかの化学強化用ガラス。
【請求項15】
粘度が10dPa・sとなる温度が1650℃以下である請求項1〜14のいずれかの化学強化用ガラス。
【請求項16】
化学強化してガラス表面に形成された圧縮応力層の厚みtが30μm以上、表面圧縮応力Sが550MPa以上であるガラスを得るために用いられる請求項1〜15のいずれかの化学強化用ガラス。
【請求項17】
請求項16の化学強化用ガラスであって、当該化学強化用ガラスからなる厚みが1mm、大きさが5mm×40mmであるガラス板を化学強化して得られたtが30μm以上、Sが550MPa以上である化学強化ガラス板の曲げ強度をF0とし、その化学強化ガラス板に9.8Nの力でビッカース圧子を打ち込んだものの曲げ強度をF1として、F1/F0を0.9以上とすることができる化学強化用ガラス。
【請求項18】
請求項16または17の化学強化用ガラスであって、当該化学強化用ガラスからなる厚みが1mm、大きさが5mm×40mmであるガラス板を化学強化して得られたtが30μm以上、Sが550MPa以上である化学強化ガラス板の曲げ強度をF0とし、その化学強化ガラス板に19.6Nの力でビッカース圧子を打ち込んだものの曲げ強度をF2として、F2/F0を0.7以上とすることができる化学強化用ガラス。
【請求項19】
請求項17または18に記載の化学強化用ガラスであって、前記tが45〜55μm、前記Sが750〜850MPaである化学強化用ガラス。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれかの化学強化用ガラスを化学強化して得られた化学強化ガラス。
【請求項21】
ガラス表面に形成された圧縮応力層の厚みtが30μm以上、表面圧縮応力Sが550MPa以上である請求項20の化学強化ガラス。
【請求項22】
請求項21の化学強化ガラスであり厚みが0.4〜1.2mmであるガラス板であって、その曲げ強度をF0とし、そのガラス板に9.8Nの力でビッカース圧子を打ち込んだものの曲げ強度F1として、F1/F0が0.9以上である化学強化ガラス板。
【請求項23】
請求項22の化学強化ガラスであり厚みが0.4〜1.2mmであるガラス板であって、その曲げ強度をF0とし、そのガラス板に19.6Nの力でビッカース圧子を打ち込んだものの曲げ強度F2として、F2/F0が0.7以上である化学強化ガラス板。
【請求項24】
請求項20もしくは21の化学強化ガラス、または請求項22もしくは23の化学強化ガラス板からなるディスプレイ装置用ガラス板。
【請求項25】
請求項24のディスプレイ装置用ガラス板からなるカバーガラスを有するディスプレイ装置。
【請求項26】
請求項24のディスプレイ装置用ガラス板からなるカバーガラスを有するモバイル機器。
【請求項27】
請求項24のディスプレイ装置用ガラス板からなるカバーガラスを有するタッチパネル。
【請求項28】
請求項24のディスプレイ装置用ガラス板からなるカバーガラスを有する大きさが20インチ以上の薄型テレビ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話、携帯情報端末(PDA)等のモバイル機器、大型液晶テレビ、大型プラズマテレビなどの大型薄型テレビおよびタッチパネル等のディスプレイ装置、ディスプレイ装置のカバーガラス等に好適なディスプレイ装置用ガラス板、およびそのようなディスプレイ装置用ガラス板に好適な化学強化ガラスおよび化学強化用ガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、モバイル機器、液晶テレビやタッチパネルなどのディスプレイ装置に対しては、ディスプレイの保護ならびに美観を高めるためのカバーガラス(保護ガラス)が用いられることが多くなっている。
このようなディスプレイ装置に対しては、薄型デザインによる差異化や移動のための負担の減少のため、軽量・薄型化が要求されている。そのため、ディスプレイ保護用に使用されるカバーガラスも薄くすることが要求されている。しかし、カバーガラスの厚さを薄くしていくと強度が低下し、据え置き型の場合には物体の飛来や落下による衝撃などにより、携帯機器の場合には使用中の落下などによりカバーガラス自身が割れてしまい、ディスプレイ装置を保護するという本来の役割を果たすことができなくなるという問題があった。
【0003】
上記問題を解決するためには、カバーガラスの強度を高めることが考えられ、その方法としてガラス表面に圧縮応力層を形成させる手法が一般的に知られている。
ガラス表面に圧縮応力層を形成させる手法としては、軟化点付近まで加熱したガラス板表面を風冷などにより急速に冷却する風冷強化法(物理強化法)と、ガラス転移点以下の温度でイオン交換によりガラス板表面のイオン半径が小さなアルカリ金属イオン(典型的にはLiイオン、Naイオン)をイオン半径のより大きいアルカリイオン(典型的にはKイオン)に交換する化学強化法が代表的である。
【0004】
前述したようにカバーガラスの厚さは薄いことが要求されている。しかしながら、カバーガラスとして要求される、厚みが2mmを下回るような薄いガラス板に対して風冷強化法を適用すると、表面と内部の温度差がつきにくいために圧縮応力層を形成することが困難であり、目的の高強度という特性を得ることができない。そのため、後者の化学強化法によって強化されたカバーガラスが通常用いられている。
このようなカバーガラスとしてはソーダライムガラスを化学強化したものが広く用いられている(たとえば特許文献1参照)。
【0005】

ソーダライムガラスは安価であり、また化学強化によってガラス表面に形成した圧縮応力層の表面圧縮応力Sを550MPa以上にできるという特徴があるが、圧縮応力層の厚みtを30μm以上にすることが容易ではないという問題があった。
そこで、ソーダライムガラスとは異なるSiO−Al−NaO系ガラスを化学強化したものが、このようなカバーガラスとして提案されている(たとえば特許文献2参照)。
前記SiO−Al−NaO系ガラスには前記Sを550MPa以上にできるだけでなく、前記tを30μm以上にすることも可能であるという特徴がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】日本国特開2007−11210号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2009/0298669号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
モバイル機器は、手やポケットやカバンから落としてしまいそのカバーガラスに傷(圧痕)がつく機会が多く、また、落としたモバイル機器を踏んだりモバイル機器をポケットに入れたままその上に座ってしまうこともあるので、カバーガラスに大きな負荷がかかる機会も多い。
液晶テレビ、プラズマテレビなどの薄型テレビ、特に大きさが20インチ以上の大型の薄型テレビにおいてもそのカバーガラスの面積が大きいので傷がつく機会が多く、また、画面が大きいのでその傷を破壊起点として破壊する可能性が高くなる。さらに、薄型テレビが壁掛けタイプで使用されると落下する可能性もあり、その場合カバーガラスに大きな負荷がかかる。
【0008】
タッチパネルはその使用時にスクラッチなどの傷がつく機会が多い。
このような大小のディスプレイ装置がより広く利用されるようになってくると、あまり利用されていなかったときに比べてカバーガラスが破壊する事象数そのものが増大する。
ところが特許文献2に記載されているガラスを化学強化したカバーガラスでは、モバイル機器などの使用時にカバーガラスに圧痕が付くと強度が低下しやすいため、カバーガラスに衝撃や静荷重などの負荷がかかると割れやすい問題があった。なお、本発明においては「圧痕が付く」と「傷がつく」とは同じ意味で用いられ、クラック発生が認められない場合も含む。
本発明は従来のものより圧痕がついても強度が低下しにくい化学強化ガラスおよびそれに用いられるガラスの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、酸化物基準のモル百分率表示で、SiOを62〜68%、Al〜12%、MgOを7〜13%、NaOを9〜17%、KOを0〜7%含有し、NaOおよびKOの含有量の合計ROからAl含有量を減じた差(RO−Al)が9%以下であり、ZrOを含有する場合、その含有量が0.8%以下である化学強化用ガラスを提供する。なお、たとえば「62〜68%」とは62%以上68%以下の意味である。
また、SiOを64〜67%、Alを6〜7.5%含有し、SiOおよびAlの含有量の合計が69〜73%である前記化学強化用ガラスを提供する。
また、酸化物基準のモル百分率表示で、SiOを62〜66%、Al〜12%、MgOを7〜13%、NaOを9〜17%、KOを0〜7%含有し、(RO−Al)が9%以下であり、ZrOを含有する場合、その含有量が0.8%以下である化学強化用ガラス(以下、この化学強化用ガラスをガラスAということがある。)を提供する。
【0010】
また、酸化物基準のモル百分率表示で、SiOを64〜68%、Al〜11%、MgOを7〜12%、NaOを12〜17%、KOを0〜6%含有し、(RO−Al)が9%以下であり、ZrOを含有する場合その含有量が0.8%以下である化学強化用ガラス(以下、この化学強化用ガラスをガラスBということがある。)を提供する。
また、SiOを65〜68%、Alを7〜10%、KOを0〜2.5%含有し、SiOおよびAlの含有量の合計が73.5〜76%である前記化学強化用ガラスを提供する。
また、SiO含有量が66%以下である前記化学強化用ガラスを提供する。
また、化学強化してガラス表面に形成された圧縮応力層の厚みtが30μm以上、表面圧縮応力Sが550MPa以上であるガラスを得るために用いられる前記化学強化用ガラスを提供する。
【0011】
また、前記化学強化用ガラスであって、当該化学強化用ガラスからなる厚みが1mm、大きさが5mm×40mmであるガラス板を化学強化して得られたtが30μm以上、Sが550MPa以上である化学強化ガラス板の曲げ強度をF0とし、その化学強化ガラス板に9.8Nの力でビッカース圧子を打ち込んだものの曲げ強度をF1として、F1/F0を0.9以上とすることができる化学強化用ガラスを提供する。なお、典型的には前記tは45〜55μm、Sは750〜850MPaである。
また、前記化学強化用ガラスであって、当該化学強化用ガラスからなる厚みが1mm、大きさが5mm×40mmであるガラス板を化学強化して得られたtが30μm以上、Sが550MPa以上である化学強化ガラス板の曲げ強度をF0とし、その化学強化ガラス板に19.6Nの力でビッカース圧子を打ち込んだものの曲げ強度をF2として、F2/F0を0.7以上とすることができる化学強化用ガラスを提供する。なお、典型的には前記tは45〜55μm、Sは750〜850MPaである。
【0012】
また、前記化学強化用ガラスを化学強化して得られた化学強化ガラスを提供する。
また、前記化学強化ガラスであり、厚みが0.4〜1.2mmであるガラス板であって、その曲げ強度をF0とし、そのガラス板に9.8Nの力でビッカース圧子を打ち込んだものの曲げ強度F1として、F1/F0が0.9以上である化学強化ガラス板を提供する。
また、前記化学強化ガラスであり厚みが0.4〜1.2mmであるガラス板であって、その曲げ強度をF0とし、そのガラス板に19.6Nの力でビッカース圧子を打ち込んだものの曲げ強度F2として、F2/F0が0.7以上である化学強化ガラス板を提供する。
また、前記化学強化ガラスまたは前記化学強化ガラス板からなるディスプレイ装置用ガラス板を提供する。
【0013】
また、前記ディスプレイ装置用ガラス板からなるカバーガラスを有するディスプレイ装置を提供する。
また、ディスプレイ装置がモバイル機器、タッチパネル、または大きさが20インチ以上の薄型テレビである前記ディスプレイ装置を提供する。
本発明者はガラスが化学強化されていてもそれに圧痕が付いた場合に起こる強度の低下をガラス中のSiOおよびAlが抑制し、ZrOが逆に前記強度の低下を大きくすること、および前記強度の低下を抑制するためにZrOを減らそうとするとガラス転移点Tgが低下し応力緩和が起こりやすくなるという問題が起こる。しかし、その場合でも前記(RO−Al)を10%未満とすることによりTgの低下を抑制できることを見出し、本発明に至ったものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、化学強化ガラスの使用時にそのガラスに圧痕が付いたとしても、ガラスの強度が低下しにくいため、ガラスに衝撃や静荷重などの負荷がかかっても割れにくい化学強化ガラスおよびそのような化学強化ガラスに好適な化学強化用ガラスが得られる。
また、そのような化学強化ガラスをカバーガラスなどのディスプレイ装置用ガラス板として使用した、モバイル機器、タッチパネル、薄型テレビなどのディスプレイ装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】ガラス組成から計算して求めたRと、溶融カリウム塩中のNa濃度増加による表面圧縮応力の低下割合rとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の化学強化ガラス、化学強化ガラス板およびディスプレイ装置用ガラス板はいずれも本発明の化学強化用ガラス(以下、本発明のガラスという。)を化学強化して得られるものであり、以下、これらを本発明の強化ガラスとも称する。
本発明の強化ガラスの前記Sは550MPa以上であることが好ましく、より好ましくは700MPa超である。また、典型的にはSは1200MPa以下である。
本発明の強化ガラスの前記tは30μm以上であることが好ましく、より好ましくは40μm超である。また、典型的にはtは70μm以下である。
本発明の強化ガラスを得るための化学強化処理の方法としては、ガラス表層のNaOと溶融塩中のKOとをイオン交換できるものであれば特に限定されないが、たとえば加熱された硝酸カリウム(KNO)溶融塩にガラスを浸漬する方法が挙げられる。このKNO溶融塩はKNO以外にたとえばNaNOを5%程度以下含有するものであってもよい。
【0017】
ガラスに所望の表面圧縮応力を有する化学強化層(圧縮応力層)を形成するための化学強化処理条件はガラス板であればその厚みなどによっても異なるが、350〜550℃のKNO溶融塩に2〜20時間、ガラス基板を浸漬させることが典型的である。経済的な観点からは350〜500℃、2〜16時間の条件で浸漬させることが好ましく、より好ましい浸漬時間は2〜10時間である。
厚みが0.4〜1.2mmであり、本発明のガラスからなるガラス板を化学強化したガラス板は、その曲げ強度をF0とし、そのガラス板に9.8Nの力でビッカース圧子を打ち込んだものの曲げ強度をF1として、F1/F0が0.9以上であるものであることが好ましい。F1/F0が0.9以上でないと、9.8Nの力でガラス板表面に圧痕が形成されたときにガラス板が割れやすくなる。より好ましくはF1/F0は0.95以上である。
厚みが0.4〜1.2mmであり、本発明のガラスからなるガラス板を化学強化したガラス板は、その曲げ強度をF0とし、そのガラス板に19.6Nの力でビッカース圧子を打ち込んだものの曲げ強度をF2として、F2/F0が0.7以上であるものであることが好ましい。F2/F0が0.7以上でないと、19.8Nの力でガラス板表面に圧痕が形成されたときにガラス板が割れやすくなる。より好ましくはF2/F0は0.8以上、特に好ましくは0.9以上である。
【0018】
これら厚みが0.4〜1.2mmであり、本発明のガラスからなるガラス板を化学強化したガラス板の圧縮応力層の厚みtは30μm以上、表面圧縮応力Sは550MPa以上であることが好ましく、典型的にはtは40〜60μm、Sは650〜820MPaである。
本発明のディスプレイ装置用ガラス板は、通常、本発明のガラスからなるガラス板について切断、穴あけ、研磨などの加工をして得られたガラス板を化学強化して得られる。
本発明のディスプレイ装置用ガラス板の厚みは、典型的には0.3〜2mmであり、通常は0.4〜1.2mmである。
本発明のディスプレイ装置用ガラス板は典型的にはカバーガラスである。
前記本発明のガラスからなるガラス板の製造方法は特に限定されないが、たとえば種々の原料を適量調合し、約1400〜1700℃に加熱し溶融した後、脱泡、攪拌などにより均質化し、周知のフロート法、ダウンドロー法、プレス法などによって板状に成形し、徐冷後所望のサイズに切断して製造される。
【0019】
本発明のガラスのガラス転移点Tgは400℃以上であることが好ましい。400℃未満ではイオン交換時に表面圧縮応力が緩和してしまい、十分な応力を得られないおそれがあり、典型的には570℃以上、好ましくは600℃以上である。
本発明のガラスの粘度が10dPa・sとなる温度T2は、1650℃以下であることが好ましい。T2が1650℃超ではガラスの溶融が困難になるおそれがある。
本発明のガラスの粘度が10dPa・sとなる温度T4は、1250℃以下であることが好ましい。T4が1250℃超ではガラスの成形が困難になるおそれがある。
本発明のガラスの比重dは2.60以下であることが好ましく、2.55以下であることがより好ましい。
T2またはT4を低下させ、ガラスの溶解または成形を容易にしたい場合には、本発明のガラスはガラスAであることが好ましい。
圧痕がついても強度がより低下しにくいものにしたい場合には、本発明のガラスはガラスBであることが好ましい。
【0020】
次に、本発明のガラスの組成について、特に断らない限りモル百分率表示含有量を用いて説明する。
SiOはガラスの骨格を構成する成分であり必須である。SiOが62%未満では、圧痕が付いた時に強度の低下が起こりやすくなる、ガラス表面に傷がついた時にクラックが発生しやすくなる、耐候性が低下する、比重が大きくなる、または液相温度が上昇しガラスが不安定になる。SiOは好ましくは63%以上であり、ガラスBにおいては64%以上、好ましくは65%以上である。SiOが68%超ではT2またはT4が上昇しガラスの溶解または成形が困難となる。SiOは好ましくは66%以下、より好ましくは65.5%以下であり、ガラスAにおいては66%以下である。ガラスAにおいてガラス表面に圧痕が付いた時の強度の低下をより抑制したい場合のSiOは典型的には63〜65%であり、またSiOの質量百分率表示含有量は典型的には64%未満である。
【0021】
Alはイオン交換性能および耐候性を向上させる成分であり必須である。6%未満では圧痕が付いた時に強度の低下が起こりやすくなる、またはイオン交換により所望の表面圧縮応力S、応力層厚みtが得られなくなる。Alは好ましくは6.5%以上、より好ましくは7%以上、特に好ましくは7.5%以上である。Alが12%超ではT2もしくはT4が上昇しガラスの溶解もしくは成形が困難となる、または液相温度が高くなり失透しやすくなり、好ましくは11.5%以下であり、ガラスBにおいては好ましくは10%以下である。
SiOおよびAlの含有量の合計は、好ましくは71%以上である。同合計が71%未満では圧痕が付いた時に強度の低下が起こりやすくなるおそれがあり、典型的には72%超である。ガラスBにおいて同合計は、典型的には73.5〜76%である。
MgOはイオン交換速度を低下させる可能性のある成分であるが、クラックの発生を抑制し、または溶融性を向上させる成分であり、必須である。MgOが7%未満ではT2またはT4が上昇しガラスの溶解または成形が困難となり、好ましくは7.5%以上、より好ましくは8%以上である。MgOが13%超では液相温度が上昇し失透しやすくなり、または圧痕が付いた時に強度の低下が起こりやすくなり、好ましくは12.5%以下、より好ましくは12%以下であり、ガラスBにおいては12%以下とされる。ガラス表面に圧痕が付いた時の強度の低下をより抑制したい場合のMgOは、典型的には8〜11%である。
【0022】
NaOはイオン交換により表面圧縮応力層を形成させ、またはガラスの溶融性を向上させる成分であり、必須である。NaOが9%未満ではイオン交換により所望の表面圧縮応力層を形成することが困難となり、好ましくは9.5%以上、より好ましくは10%以上、特に好ましくは10.5%以上であり、ガラスBにおいては12%以上とされる。NaOが17%超では耐候性が低下する、または圧痕からクラックが発生しやすくなる。好ましくは16%以下である。
NaOおよびMgOの含有量の合計は21〜25%であることが好ましい。同合計が21%未満ではT2またはT4が上昇しガラスの溶解または成形が困難となるおそれがあり、25%超では圧痕からクラックが発生しやすくなる、または圧痕が付いた時に強度の低下が起こりやすくなるおそれがある。
【0023】
Oは必須ではないがイオン交換速度を増大させる成分であり、7%まで含有してもよい。KOが7%超では圧痕が付いた時に強度の低下が起こりやすくなり、または圧痕からクラックが発生しやすくなり、好ましくは6.5%以下、より好ましくは6%以下であり、ガラスBにおいては6%以下とされ、好ましくは2.5%以下である。KOを含有する場合、その含有量は好ましくは0.5%以上である。
Oを含有する場合、NaOおよびKOの含有量の合計ROは22%以下であることが好ましい。ROが22%超では耐候性が低下する、または圧痕からクラックが発生しやすくなり、好ましくは21%以下、より好ましくは20%以下であり、ガラスBにおいては18%以下であることが好ましい。また、ROは好ましくは14%以上、典型的には15%以上である。
【0024】
本発明のガラス、特にガラスBにおいてはNaO、KOおよびMgOの含有量の合計は24〜28%であることが好ましい。同合計が24%未満ではT2またはT4が上昇しガラスの溶解または成形が困難となるおそれがあり、28%超では圧痕からクラックが発生しやすくなる、または圧痕が付いた時に強度の低下が起こりやすくなるおそれがあり、典型的には27%以下である。
ガラス表面に圧痕が付いた時の強度の低下をより抑制したい場合、典型的にはNaOは11〜16%または12〜16%、KOは0〜5%、ROは15〜17%であり、KO含有量が3%未満の場合にはNaOは13.5〜16%が典型的である。
Tgを高くしたい場合などは、ROからAl含有量を減じた差(RO−Al)が10%未満であることが好ましい。同差が10%以上であるとTgが低下する、または化学強化時に応力緩和が起こりやすくなる。
【0025】
ZrOは必須成分ではないが、高温での粘性を低下させる、または表面圧縮応力を大きくする等のため、0.8%までの範囲であれば含有してもよい。ZrOが0.8%超では圧痕が付いた時に強度の低下が起こりやすくなる、またはチッピングが起こりやすくなる。好ましくは0.7%以下、より好ましくは0.6%以下、特に好ましくは0.55%以下であり、ガラスBにおいては0.5%以下であることが好ましい。
本発明のガラスは、SiO、Al、MgO、CaO、ZrO、NaOおよびKOの各成分のモル百分率表示含有量を用いて下記式により算出されるRが0.66以上であることが好ましい。
R=0.029×SiO+0.021×Al+0.016×MgO−0.004×CaO+0.016×ZrO+0.029×NaO+0×KO−2.002
以下にRを0.66以上とすることの技術的意義を説明する。
【0026】
通常、化学強化のためのイオン交換処理はナトリウム(Na)を含有するガラスを溶融カリウム塩に浸漬して行われ、当該カリウム塩としては硝酸カリウムまたは硝酸カリウムと硝酸ナトリウムの混合塩が使用される。
イオン交換処理ではガラス中のNaと溶融塩中のカリウム(K)のイオン交換が行われるので、同じ溶融塩を使用し続けながらイオン交換処理を繰り返すと溶融塩中のNa濃度が上昇する。
溶融塩中のNa濃度が高くなると化学強化されたガラスの表面圧縮応力Sが低下するので、化学強化ガラスのSが所望の値を下回らないように溶融塩中のNa濃度を厳しく管理し、また溶融塩の交換を頻繁に行う必要があるという問題があった。
このような溶融塩の交換の頻度は少しでも減らすことが求められており、ガラスBにおいてRが0.66以上であるものはこのような問題の解決に好適な本発明の態様の一つである。
【0027】
本発明者は、溶融カリウム塩にNa含有ガラスを浸漬して化学強化ガラスとするイオン交換を何度も繰り返すことにより溶融カリウム塩中のNa濃度が上昇し、それとともに化学強化ガラスの表面圧縮応力が小さくなっていく現象とNa含有ガラスの組成との間に関係があるのではないかと考え、次のような実験を行った。
まず、表1〜3にモル百分率表示で示す組成を有し、厚みが1.5mm、大きさが20mm×20mmであり、両面が酸化セリウムで鏡面研磨された29種のガラス板を用意した。これらガラスのガラス転移点Tg(単位:℃)を同表に示す。なお、*を付しているものは組成から計算して求めたものである。
これら29種のガラス板を、KNOの含有割合が100%であり温度が400℃である溶融カリウム塩に10時間浸漬するイオン交換を行って化学強化ガラス板とし、その表面圧縮応力CS1(単位:MPa)を測定した。なお、ガラスA27はモバイル機器のカバーガラスに使用されているガラスである。
また、これら29種のガラス板を、KNOの含有割合が95%、NaNOの含有割合が5%であり温度が400℃である溶融カリウム塩に10時間浸漬するイオン交換を行って化学強化ガラス板とし、その表面圧縮応力CS2(単位:MPa)を測定した。
CS1、CS2をそれらの比r=CS2/CS1とともに表1〜3の該当欄に示す。なお、従来のカバーガラスA27のrは0.65である。
【0028】
【表1】
【0029】
【表2】
【0030】
【表3】
【0031】
これらの結果から、前記式で算出したR(表1〜3の最下段に記載する。)と前記rとの間に高い相関があることを見出した。図1は、この点を明らかにするために横軸をR、縦軸をrとして作成した散布図であり、同図中の直線はr=1.027×R−0.0017、相関係数は0.97である。
本発明者が見出した前記相関から、次のようなことがわかる。すなわち、溶融塩の交換頻度を少しでも減らすためには溶融塩中のNa濃度増加によるSの低下割合が小さいガラス、すなわち前記rが大きいガラスを用いればよいが、そのためにはガラスの前記Rを大きくすればよいことがわかる。
Rを0.66以上とすることにより前記rを0.66以上とすることが可能になり、その結果従来よりも溶融塩中のNa濃度の管理を緩めることが可能になる、または溶融塩の交換頻度を低減することが可能になる。Rは好ましくは0.68以上である。
【0032】
本発明のガラスは本質的に以上で説明した成分からなるが、本発明の目的を損なわない範囲でその他の成分を含有してもよい。そのような成分を含有する場合、それら成分の含有量の合計は5%以下であることが好ましく、典型的には3%以下である。SiO、Al、MgO、NaOおよびKOの含有量の合計が98%以上であることが特に好ましい。以下、上記その他成分について例示的に説明する。
CaO、SrOおよびBaOは高温での溶融性を向上させる、または失透を起こりにくくするために含有してもよいが、イオン交換速度またはクラック発生に対する耐性が低下するおそれがある。CaO、SrOおよびBaOのいずれか1以上を含有する場合、各成分の含有量は、好ましくは1%以下、より好ましくは0.5%以下である。また、この場合これら3成分の含有量の合計は1%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5%以下である。
【0033】
ZnOはガラスの高温での溶融性を向上するために含有してもよい場合があるが、その場合における含有量は好ましくは1%以下である。フロート法で製造する場合にはZnOは0.5%以下にすることが好ましい。ZnOが0.5%超ではフロート成型時に還元し製品欠点となるおそれがある。典型的にはZnOは含有しない。
は高温での溶融性またはガラス強度の向上のために、たとえば1%未満の範囲で含有してもよい場合がある。Bが1%以上では均質なガラスを得にくくなり、ガラスの成型が困難になるおそれがある、またはチッピング耐性が低下するおそれがある。典型的にはBは含有しない。
TiOはガラス中に存在するFeイオンと共存することにより、可視光透過率を低下させ、ガラスを褐色に着色するおそれがあるので、含有するとしても1%以下であることが好ましく、典型的には含有しない。
LiOは歪点を低くして応力緩和を起こりやすくし、その結果安定した表面圧縮応力層を得られなくする成分であるので含有しないことが好ましく、含有する場合であってもその含有量は1%未満であることが好ましく、より好ましくは0.05%以下、特に好ましくは0.01%未満である。
【0034】
ガラスの溶融の際の清澄剤として、SO、塩化物、フッ化物などを適宜含有してもよい。ただし、タッチパネルなどディスプレイ装置の視認性を上げるためには、可視域に吸収をもつFe、NiO、Crなど原料中の不純物として混入するような成分はできるだけ減らすことが好ましく、各々質量百分率表示で0.15%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1%以下、特に好ましくは0.05%以下である。
本発明のガラスにおいてはRO−Alは10%未満とされるが、次のようなガラスCにおいても本発明の課題を解決でき、しかも先に述べたrを大きくすることが可能である。なお、ガラスCについては本発明のガラスに係る説明を、RO−Alを10%未満とすることを除きそのまま適用でき、ガラスCにおいてはRO−Alを10%未満とすることが好ましい。
ガラスC:酸化物基準のモル百分率表示で、SiOを63〜66%、Alを7〜10%、MgOを8〜12%、NaOを12〜17%、KOを0〜3%含有し、ZrOを含有する場合その含有量が0.5%以下、CaOを含有する場合、その含有量が1%以下であり、SiO、Al、MgO、CaO、ZrO、NaOおよびKOの各成分の含有量を用いて下記式により算出されるRが0.66以上である化学強化用ガラス。
R=0.029×SiO+0.021×Al+0.016×MgO−0.004×CaO+0.016×ZrO+0.029×NaO+0×KO−2.002
【実施例】
【0035】
表4〜6の例1〜9は実施例、例10〜21は比較例であり、このうち例11のガラスは前記特許文献2の実施例19に類似するもの、例20、13、21のガラスはそれぞれ同文献の実施例1、実施例14、比較例54と同じものである。なお、表4〜6のガラス組成はモル百分率表示組成であるが、表7〜9に例1〜21のガラスの質量百分率表示組成を示す。
例1〜8、10〜14のガラスについては、各成分の原料を表のSiOからBaOまでの欄にモル%表示で示した組成となるように調合し、白金るつぼを用いて1550〜1650℃の温度で3〜5時間溶解した。溶解にあたっては、白金スターラを溶融ガラス中に挿入し、2時間撹拌してガラスを均質化した。次いで溶融ガラスを流し出して板状に成形し、毎分1℃の冷却速度で室温まで徐冷した。ROはNaOおよびKOの各含有量(単位:モル%)の合計を示している。
【0036】
これらガラスの比重d、50〜350℃における平均線膨張係数α(単位:−7/℃)、ガラス転移点Tg(単位:℃)、粘度が10dPa・sとなる温度T2(単位:℃)、粘度が10dPa・sとなる温度T4(単位:℃)を表に示す。なお、これらの測定は次のようにして行った。
d:泡のないガラス20〜50gを用い、アルキメデス法にて測定した。
α:示差熱膨張計を用いて、石英ガラスを参照試料として室温から5℃/分の割合で昇温した際のガラスの伸び率をガラスが軟化してもはや伸びが観測されなくなる温度すなわち屈伏点まで測定し、得られた熱膨張曲線から50〜350℃における平均線膨張係数を算出した。
Tg:示差熱膨張計を用いて、石英ガラスを参照試料として室温から5℃/分の割合で昇温した際のガラスの伸び率を屈伏点まで測定し、得られた熱膨張曲線における屈曲点に相当する温度をガラス転移点とした。
T2、T4:回転粘度計により測定した。
【0037】
先に述べたようにして得られた例1〜8、10〜14の厚みが1mm、大きさが5mm×40mmの各ガラス板の両面を酸化セリウムで鏡面研磨し、次のような化学強化処理を行った。すなわち、これらガラス板を450℃の溶融カリウム塩に例1、2、7は270分間、例3は120分間、例4は300分間、例5は180分間、例6は320分間、例8は210分間、例10は195分間、例11は330分間、例12は300分間、例13は450分間、例14は1380分間それぞれ浸漬する化学強化処理を行い化学強化ガラス板とした。なお、溶融カリウム塩のKNO含有割合は95〜100%、NaNO含有割合は0〜5%である。具体的なKNO含有割合は、例1、2、11が99%、例3、10、13が100%、例4、5、14が95%、例6が99.3%、例7、8が97%、例12が99.5%である。
【0038】
これら化学強化ガラス板について、折原製作所社製表面応力計FSM−6000にて表面圧縮応力S(単位:MPa)および圧縮応力層深さt(単位:μm)を測定した。結果を表の該当欄に示す。
これら13種の化学強化ガラス板各20枚について曲げ強度を測定し、曲げ強度平均値F0(単位:MPa)を求めた。なお、曲げ強度の測定精度は±30MPaであり、また、曲げ強度の測定はスパン30mm、クロスヘッドスピード0.5mm/分の条件で3点曲げ試験の方法で行った。
また、これら13種の化学強化ガラス板各20枚について、各ガラス板の中心に温度20〜28℃、湿度40〜60%の条件で、ビッカース硬度計を用いて1kgf=9.8Nの力でビッカース圧子を打ち込み圧痕を形成した。このように1kgfの力で形成された圧痕を有する4種の化学強化ガラス板各20枚について曲げ強度を測定し、曲げ強度平均値F1(単位:MPa)を求めた。
【0039】
また、これら13種の化学強化ガラス板各20枚について、各ガラス板の中心に温度20〜28℃、湿度40〜60%の条件で、ビッカース硬度計を用いて2kgf=19.6Nの力でビッカース圧子を打ち込み圧痕を形成した。このように2kgfの力で形成された圧痕を有する4種の化学強化ガラス板各20枚について曲げ強度を測定し、曲げ強度平均値F2(単位:MPa)を求めた。F0、F1、F2をF1/F0、F2/F0とともに表の該当欄に示す。なお、例1、例2のF1/F0が1を超えているがこれはF0またはF1の測定誤差によるものである。
例11〜14のガラスを化学強化したものではF1がF0よりも低下しているのに対し、例1〜8のガラスを化学強化したものではF1はF0と同じまたはほぼ同じ値であった。また、例11〜14のガラスを化学強化したものよりも、例1〜8のガラスを化学強化したものの方が、F0とF2の差が小さい。例4、8のガラスを化学強化したものではF2もF0と同じまたはほぼ同じ値であり、本発明の効果が特に高い。なお、例10のガラスを化学強化したものではF1はF0とほぼ同じ値であるがTgが低い。
例9、例15〜21についてはSが800MPa、tが50μmである化学強化ガラス板についてそのF0、F1、F2をガラス組成から推定して求めた。
【0040】
【表4】
【0041】
【表5】
【0042】
【表6】
【0043】
【表7】
【0044】
【表8】
【0045】
【表9】
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、ディスプレイ装置のカバーガラスなどに利用できる。また、太陽電池基板や航空機用窓ガラスなどにも利用することができる。
なお、2010年9月27日に出願された日本特許出願2010−215982号、および2010年12月24日に出願された日本特許出願2010−288255号の明細書、特許請求の範囲、図面及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の開示として取り入れるものである。
図1