(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、感光性樹脂組成物として有用であるポリヒドロキシイミドは、ポリアミック酸から製造する際、化学イミド化法では脱水縮合剤や閉環触媒によって塩が生じる(ヒドロキシ基が失活する)こととなり、また、一連の工程処理時間も長く製造に長時間を要するという問題があった。
一方、熱イミド化法においても、製造時に180℃という高温を必要とすること、共沸脱水操作が必要になること、また直接ポリヒドロキシイミドを製造する方法においても、通常のポリイミドの製造と比べて塩基や共沸脱水溶媒の添加を要することなど、工業的製造方法という観点からみると不利な点が多かった。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、従来の化学イミド化法又は熱イミド化法における問題点の解決を図った、工業的製造方法の観点からも優位なポリヒドロキシイミドの簡易な製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、テトラカルボン酸及びその誘導体から選ばれる成分と、一つ以上のヒドロキシ基を有するジアミン成分とを反応させて得られるポリヒドロキシアミック酸
を、特定のエステル系溶媒
中において加熱することにより、酸・塩基の使用や共沸脱水操作を必要とすることなく、中性条件下でポリヒドロキシイミドの製造が可能となることを見出した。
【0010】
すなわち、本発明は第1観点として、式(1)
【化1】
(式中、
Xは、4価の脂肪族基又は芳香族基を表し、
Yは、少なくとも1つのOH基で置換された芳香族基を含む有機基を表し、
nは、1以上の整数を表す。)
で表される繰り返し構造を含むポリヒドロキシイミド前駆体に、少なくとも、式(2)もしくは式(3)
【化2】
(式中、
R
1乃至R
3は、それぞれ独立して、水素原子、酸素原子で中断されていてもよい炭素原子数1乃至10のアルキル基、炭素原子数1乃至10のハロアルキル基、炭素原子数1乃至10のアルコキシ基、Wで置換されていてもよいアリールオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、Wで置換されていてもよいフェニル基、Wで置換されていてもよいナフチル基、Wで置換されていてもよいチエニル基又はWで置換されていてもよいフリル基を表し、
R
4は、水素原子、炭素原子数1乃至10のアルキル基、炭素原子数1乃至10のハロアルキル基、Wで置換されていてもよいフェニル基、Wで置換されていてもよいナフチル基、Wで置換されていてもよいチエニル基又はWで置換されていてもよいフリル基を表し、
Wは、炭素原子数1乃至10のアルキル基、炭素原子数1乃至10のハロアルキル基、炭素原子数1乃至10のアルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、ホルミル基、シアノ基、カルボキシル基、ホスホ基又はスルホ基を表す。)
【化3】
(式中、
mは自然数を表し、
R
5乃至R
8は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1乃至10のアルキル基、炭素原子数1乃至10のハロアルキル基、炭素原子数1乃至10のアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、Wで置換されていてもよいフェニル基、Wで置換されていてもよいナフチル基、Wで置換されていてもよいチエニル基又はWで置換されていてもよいフリル基を表し、
Wは、炭素原子数1乃至10のアルキル基、炭素原子数1乃至10のハロアルキル基、炭素原子数1乃至10のアルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、ホルミル基、シアノ基、カルボキシル基、ホスホ基又はスルホ基を表す。)
で表される化合物又は双方の化合物を添加し、50℃以上の温度で加熱することにより、
式(4)
【化4】
(式中、X、Y及びnは、前記と同じ意味を表す。)
で表される繰り返し構造を含み、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)のポリスチレン換算による重量平均分子量が5,000乃至100,000であるポリイミドを得ることを特徴とする、ポリヒドロキシイミドの製造方法に関する。
【0011】
第2観点として、前記Yが、少なくとも1つのOH基で置換されたベンゼン環を含む有機基を表す、第1観点に記載のポリヒドロキシイミドの製造方法に関する。
第3観点として、前記Yが、下記式(5)乃至式(7)で表される構造から選ばれる少なくとも1種の構造を含む、第2観点に記載のポリヒドロキシイミドの製造方法に関する。
【化5】
(式中、
R
9乃至R
35は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1乃至10のアルキル基、炭素原子数1乃至10のハロアルキル基、炭素原子数1乃至10のアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、ホルミル基、シアノ基、カルボキシル基、ホスホ基、スルホ基、Wで置換されていてもよいフェニル基、Wで置換されていてもよいナフチル基、Wで置換されていてもよいチエニル基又はWで置換されていてもよいフリル基を表し、
Wは、炭素原子数1乃至10のアルキル基、炭素原子数1乃至10のハロアルキル基、炭素原子数1乃至10のアルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、ホルミル基、シアノ基、カルボキシル基、ホスホ基又はスルホ基を表し、
Z
1乃至Z
6は、単結合、W
1で置換されていてもよい炭素原子数1乃至10のアルキレン基、−C(O)O−、−C(O)NH−、−O−、−S−、−S(O)
2−又は−C(O)−を表し、
W
1は、炭素原子数1乃至10のアルキル基、炭素原子数1乃至10のハロアルキル基又は炭素原子数1乃至10のアルコキシ基を表し、
p乃至xは、1以上の整数を表し、かつ、2≧p+q≧1、2≧r+s+t≧1、2≧u+v+w+x≧1である。)
【0012】
第4観点として、前記Z
1乃至Z
6が、単結合、−CH
2−、−C(CH
3)
2−、−C(CF
3)
2−、−C(O)NH−、−O−、−S(O)
2−又は−C(O)−を表す、第3観点に記載のポリヒドロキシイミドの製造方法に関する。
第5観点として、前記式(2)中、R
4がメチル基又はエチル基を表す、第1観点乃至第4観点のうちいずれか一項に記載のポリヒドロキシイミドの製造方法に関する。
第6観点として、前記式(2)中、R
1及びR
2がメチル基を表す、第1観点乃至第5観点のうちいずれか一項に記載のポリヒドロキシイミドの製造方法に関する。
第7観点として、前記式(2)中、R
1乃至R
3のうちいずれか一つがヒドロキシ基、アルコキシ基、又はヒドロキシ基を有するフェニル基、ナフチル基、チエニル基もしくはフリル基を表す、第1観点乃至第6観点のうちいずれか一項に記載のポリヒドロキシイミドの製造方法に関する。
第8観点として、前記式(2)で表される化合物は70℃以上200℃未満の沸点を有する化合物である、第1観点乃至第7観点のうちいずれか一項に記載のポリヒドロキシイミドの製造方法に関する。
第9観点として、前記式(3)で表される化合物がγ−ブチロラクトンである、第1観点乃至第4観点のうちいずれか一項に記載のポリヒドロキシイミドの製造方法に関する。
第10観点として、前記式(2)もしくは(3)で表される化合物又は双方の化合物を、前記式(1)で表される繰り返し構造を含むポリヒドロキシイミド前駆体100質量部に対して50質量部以上添加する、第1観点乃至第9観点のうちいずれか一項に記載のポリヒドロキシイミドの製造方法に関する。
第11観点として、加熱温度が50℃乃至120℃である、第1観点乃至第10観点のうちいずれか一項に記載のポリヒドロキシイミドの製造方法に関する。
第12観点として、第1観点乃至第11観点に記載の方法に従い製造される、ポリヒドロキシイミドに関する。
第13観点として、第12観点に記載のポリヒドロキシイミドを含むワニスに関する。
第14観点として、第13観点に記載のワニスからなる塗膜に関する。
第15観点として、第12観点に記載のポリヒドロキシイミドと、該ポリヒドロキシイミド100質量部に対して、0.01乃至100質量部の光酸発生剤を含有する、ポジ型感光性樹脂組成物に関する。
第16観点として、更に前記ポリヒドロキシイミド100質量部に対して、200質量部以下の架橋剤を含有する、第15観点に記載のポジ型感光性樹脂組成物に関する。
【0013】
本発明者は更に研究を進めたところ、上記ポリヒドロキシイミドの製造方法を応用することにより、すなわち同様の手順及び条件に従うことによりヒドロキシイミドが製造できることも見出した。
すなわち、本発明は第17観点として、式(8)
【化6】
(式中、
Uは、2価の脂肪族基又は芳香族基を表し、
Vは、少なくとも1つのOH基で置換された芳香族基を含む有機基を表し、
aは1又は2の整数を表す。)
で表されるヒドロキシイミド前駆体に、少なくとも、第1観点に記載の式(2)もしくは式(3)で表される化合物又は双方の化合物を添加し、50℃以上の温度で加熱することにより、
式(9)
【化7】
(式中、U、V及びaは、前記と同じ意味を表す。)
で表されるイミドを得ることを特徴とする、ヒドロキシイミドの製造方法に関する。
【0014】
第18観点として、前記Vが、少なくとも1つのOH基で置換されたベンゼン環を含む有機基を表す、第17観点に記載のヒドロキシイミドの製造方法に関する。
第19観点として、前記Vが、下記式(10)又は(11)で表される構造から選ばれる少なくとも1種の構造を含む、第18観点に記載のヒドロキシイミドの製造方法に関する。
【化8】
(式中、
R
36乃至R
38、R
40乃至R
45は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1乃至10のアルキル基、炭素原子数1乃至10のハロアルキル基、炭素原子数1乃至10のアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、ホルミル基、シアノ基、カルボキシル基、ホスホ基、スルホ基、Wで置換されていてもよいフェニル基、Wで置換されていてもよいナフチル基、Wで置換されていてもよいチエニル基又はWで置換されていてもよいフリル基を表し、
R
39及びR
46は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1乃至10のアルキル基、炭素原子数1乃至10のハロアルキル基、炭素原子数1乃至10のアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、ホルミル基、シアノ基、カルボキシル基、ホスホ基、スルホ基、Wで置換されていてもよいフェニル基、Wで置換されていてもよいナフチル基、Wで置換されていてもよいチエニル基又はWで置換されていてもよいフリル基を表し、
Wは、前記と同じ意味を表し、
Z
7は、前記Z
1と同じ意味を表し、
b乃至dは、1以上の整数を表し、かつ、2≧b≧1、2≧c+d≧1である。)
【0015】
第20観点として、前記Z
7が、単結合、−CH
2−、−C(CH
3)
2−、−C(CF
3)
2−、−C(O)NH−、−O−、−S(O)
2−又は−C(O)−を表す、第19観点に記載のヒドロキシイミドの製造方法に関する。
第21観点として、前記式(2)中、R
4がメチル基又はエチル基を表す、第17観点乃至第20観点のうちいずれか一項に記載のヒドロキシイミドの製造方法に関する。
第22観点として、前記式(2)中、R
1及びR
2がメチル基を表す、第17観点乃至第21観点のうちいずれか一項に記載のヒドロキシイミドの製造方法に関する。
第23観点として、前記式(2)中、R
1乃至R
3のうちいずれか一つがヒドロキシ基、アルコキシ基、又はヒドロキシ基を有するフェニル基、ナフチル基、チエニル基もしくはフリル基を表す、第17観点乃至第22観点のうちいずれか一項に記載のヒドロキシイミドの製造方法に関する。
第24観点として、前記式(2)で表される化合物は70℃以上200℃未満の沸点を有する化合物である、第17観点乃至第23観点のうちいずれか一項に記載のヒドロキシイミドの製造方法に関する。
第25観点として、前記式(3)で表される化合物がγ−ブチロラクトンである、第17観点乃至第20観点のうちいずれか一項に記載のポリヒドロキシイミドの製造方法に関する。
第26観点として、加熱温度が50℃乃至120℃である、第17観点乃至第25観点のうちいずれか一項に記載のヒドロキシイミドの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の製造方法により、これまでポリヒドロキシイミドの製造時に必要とされた高温加熱操作、共沸脱水操作、そして無水酢酸等の脱水縮合剤やピリジン等の開環触媒、共沸脱水溶媒の添加等を必要とすることなく、ポリヒドロキシアミック酸からポリヒドロキシイミドを簡易に製造することができる。特にポリヒドロキシイミドの製造においては、上記添加剤の使用によって側鎖のフェノール性ヒドロキシ基がアセトキシ基に変換されるため、再度ヒドロキシ基への変換操作が必要となることから、一段階の反応でポリヒドロキシイミドが得られる本発明の方法は非常に有用な製造方法である。
【0017】
本発明の製造方法は、中性条件下で反応の進行が可能であり、またポリイミド化に要する添加剤としては従来ポリアミック酸の溶媒として用いることができるエステル系溶媒を用いるため、ポリイミド製造後の単離精製が容易であり、実用性の高い工業的製造方法となる。
また、上述の製造工程の簡略化及びプロセス数低減により、低コスト化等も実現できる。
さらに、本発明の方法に従うと、ポリヒドロキシイミドだけでなく、ヒドロキシイミドもヒドロキシアミック酸から中性条件下で簡易に製造することができる。
【0018】
本発明のワニスから得られる塗膜は、ポジ型のパターンを作製することができ、また現像後の膜厚変化が小さい。
【発明を実施するための形態】
【0019】
上述したように、ポリヒドロキシイミドの従来の製造方法は、副反応が起こったり、合成方法が煩雑であったりする等の問題点があった。すなわち、化学イミド化法(無水酢酸及び塩基の使用)においては、ヒドロキシ基がアセトキシ基に変化し、熱イミド化法においては、200℃近い高温を要するため量産に向かず、また共沸操作等の工程が必要になるという問題があった。したがって、ポリヒドロキシイミドの従来の製造方法は、上記ポリヒドロキシイミドを感光性樹脂組成物に適用する際の工業的製造方法としては不向きであるという問題があった。
【0020】
本発明は、例えばγ−ブチロラクトン等のエステル系溶媒を用いて前述の製造方法における問題点の改善を図った点に特徴があり、すなわち、上記式(1)で表される繰り返し構造を含むポリヒドロキシイミド前駆体に、上記式(2)又は式(3)で表される少なくとも一種類の特定のエステル系溶媒を添加し、50℃以上の温度で加熱することにより、上記式(4)で表される繰り返し構造を含み、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)のポリスチレン換算による重量平均分子量が5,000乃至100,000であるポリヒドロキシイミドを得ることを特徴とする、ポリヒドロキシイミドの製造方法に関する。
以下、詳細を説明する。
【0021】
<ポリヒドロキシイミド前駆体>
本発明に用いるポリヒドロキシイミド前駆体は、下記式(1)で表される繰り返し構造を含む。
【化9】
(式中、
Xは、4価の脂肪族基又は芳香族基を表し、
Yは、少なくとも1つのOH基で置換された芳香族基を含む有機基を表し、
nは1以上の整数を表す。)
【0022】
前記式(1)において、Yは少なくとも1つのOH基で置換されたベンゼン環を含む有機基であることが好ましく、特に、少なくとも1つのOH基で置換されたベンゼン環を2つ以上含む有機基であることがより好ましい。
【0023】
前記Yの例としては、下記式(5)乃至(7)で表される構造を有する基が挙げられる。
【化10】
(式中、
R
9乃至R
35は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1乃至10のアルキル基、炭素原子数1乃至10のハロアルキル基、炭素原子数1乃至10のアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、ホルミル基、シアノ基、カルボキシル基、ホスホ基、スルホ基、Wで置換されていてもよいフェニル基、Wで置換されていてもよいナフチル基、Wで置換されていてもよいチエニル基又はWで置換されていてもよいフリル基を表し、
Wは、炭素原子数1乃至10のアルキル基、炭素原子数1乃至10のハロアルキル基、炭素原子数1乃至10のアルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、ホルミル基、シアノ基、カルボキシル基、ホスホ基又はスルホ基を表し、
Z
1乃至Z
6は、単結合、W
1で置換されていてもよい炭素原子数1乃至10のアルキレン基、−C(O)O−、−C(O)NH−、−O−、−S−、−S(O)
2−又は−C(O)−を表し、
W
1は、炭素原子数1乃至10のアルキル基、炭素原子数1乃至10のハロアルキル基又は炭素原子数1乃至10のアルコキシ基を表し、
p乃至xは、1以上の整数を表し、かつ、2≧p+q≧1、2≧r+s+t≧1、2≧u+v+w+x≧1である。)
【0024】
前記式(5)乃至(7)において、前記Z
1乃至Z
6が、単結合、−CH
2−、−C(CH
3)
2−、−C(CF
3)
2−、−C(O)NH−、−O−、−S(O)
2−又は−C(O)−であることが好ましい。
【0025】
前記Yは、前記式(5)乃至(7)の中でも、隣接する−NH基に対してo−位にOH基を有する基であることが特に好ましい。
【0026】
本発明に用いる上記式(1)で表される繰り返し構造を含むポリヒドロキシイミド前駆体(ポリヒドロキシアミック酸)は、例えばテトラカルボン酸成分とジアミン成分を反応させて得ることができる。
なお、本発明に用いる上記テトラカルボン酸成分及びジアミン成分は特に限定されないが、得られるポリヒドロキシイミド前駆体の有機溶媒への溶解性等の観点から、該テトラカルボン酸成分及びジアミン成分の少なくとも一方が、その少なくとも一部において、フッ素、又は、スルホニル基を有する有機基を持つ成分を含有することが好ましい。該テトラカルボン酸成分又はジアミン成分中のフッ素を有する有機基は、特に限定されないが、ベンゼン環に直接結合した、フルオロ基やフルオロアルキル基などが好ましい。中でも溶媒への溶解性等の観点から、トリフルオロメチル基やヘキサフルオロイソプロピリデン基を有する該テトラカルボン酸成分又はジアミン成分が好ましい。また、これらの有機基には、フッ素原子が単数結合していても複数個結合していても構わない。
【0027】
[テトラカルボン酸成分]
本発明の製造方法に用いる上記式(1)で表される繰り返し構造を含むポリヒドロキシイミド前駆体(ポリヒドロキシアミック酸)を構成する単量体成分として用いられ得るテトラカルボン酸成分は、テトラカルボン酸、その酸二無水物及びそれから誘導される化合物であれば特に限定されない。これらの具体例を以下に挙げる。
【0028】
例えば、ピロメリット酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸の様な芳香族テトラカルボン酸、それらの二無水物及びその誘導体等や、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸、1,2−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−テトラメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、2,3,5−トリカルボキシ−2−シクロペンタン酢酸、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸、3,5,6−トリカルボキシ−2−ノルボルナン酢酸の様な脂環式テトラカルボン酸、それらの二無水物及びその誘導体等や、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸の様な脂肪族テトラカルボン酸、その二無水物及びその誘導体等の化合物を挙げることができる。さらに、上述のフッ素を有する有機基を持つテトラカルボン酸成分としては、トリフルオロメチル基やヘキサフルオロイソプロピリデン基を有する、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロイソプロピリデン、4,4’−ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸、またはスルホニル基を有する有機基を持つテトラカルボン酸成分としては、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、それらの二無水物及びその誘導体等の化合物が挙げられるが、これら化合物に限定されるものではない。
また、前記テトラカルボン酸成分としては、テトラカルボン酸、その酸二無水物及びその誘導体から1種又は2種以上の化合物を組み合わせて用いることができる。
【0029】
[ジアミン成分]
本発明の製造方法に用いる上記式(1)で表される繰り返し構造を含むポリヒドロキシイミド前駆体(ポリヒドロキシアミック酸)を構成する単量体成分のジアミン成分は、少なくとも1つのOH基で置換された芳香族基を含むジアミンである。
【0030】
少なくとも1つのOH基で置換された芳香族基を含むジアミンは特に限定されず、例えば3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル(4BP)、3,3’−ジアミノ−2,2’−ジヒドロキシビフェニル(2BP)、2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(BAHF)、2,2−ビス(4−アミノ−3,5−ジヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)メタン(BAPF)、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン(AHPK)、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシ−フェニルエーテル(AHPE)、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシ−チオフェニルエーテル、2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン(BAPA)、(3−アミノ−4−ヒドロキシ)フェニル(3−アミノ−4−ヒドロキシ)アニリド(AHPA)、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン(BSDA)、ビス−N,N’−(p−アミノベンゾイル)−ヘキサフルオロ−2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(BABHBPA)、[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,4−ジアミノフェノール、3,5−ジアミノフェノール、2,5−ジアミノフェノール、4,6−ジアミノレゾルシノール、2,5−ジアミノハイドロキノン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)チオエーテル、ビス(4−アミノ−3,5−ジヒドロキシフェニル)チオエーテル、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−アミノ−3,5−ジヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−アミノ−3,5−ジヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−アミノ−3,5−ジヒドロキシフェニル)スルホン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシビフェニル(3BP)、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシ−5,5’−ジメチルビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシ−5,5’−ジメトキシビフェニル、1,4−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、ビス[4−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]プロパン、又は、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0031】
前記ジアミン成分のうち、好ましくは3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル(4BP)、3,3’−ジアミノ−2,2’−ジヒドロキシビフェニル(2BP)、2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(BAHF)、2,2−ビス(4−アミノ−3,5−ジヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)メタン(BAPF)、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン(AHPK)、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシ−フェニルエーテル(AHPE)、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシ−チオフェニルエーテル、2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン(BAPA)、(3−アミノ−4−ヒドロキシ)フェニル(3−アミノ−4−ヒドロキシ)アニリド(AHPA)、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン(BSDA)、ビス−N,N’−(p−アミノベンゾイル)−ヘキサフルオロ−2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(BABHBPA)、[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,4−ジアミノフェノール、2,5−ジアミノフェノール、4,6−ジアミノレゾルシノール、2,5−ジアミノハイドロキノン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)チオエーテル、ビス(4−アミノ−3,5−ジヒドロキシフェニル)チオエーテル、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシビフェニル(3BP)、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシ−5,5’−ジメチルビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシ−5,5’−ジメトキシビフェニル、1,4−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、ビス[4−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]プロパン、又は、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼンが挙げられる。
【0032】
特に好適なものとして、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)メタン(BAPF)、2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン(BAPA)、2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(BAHF)、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシ−フェニルエーテル(AHPE)、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン(AHPK)、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン(BSDA)、(3−アミノ−4−ヒドロキシ)フェニル(3−アミノ−4−ヒドロキシ)アニリド(AHPA)、ビス−N,N’−(p−アミノベンゾイル)−ヘキサフルオロ−2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(BABHBPA)等が挙げられる。
【0033】
さらに、本発明の製造方法に用いるポリヒドロキシイミド前駆体(ポリヒドロキシアミック酸)を構成する単量体成分のジアミン成分である上記の少なくとも1つのOH基で置換された芳香族基を含むジアミンに加えて、シロキサン含有ジアミンも使用することができる。シロキサン含有ジアミンを組み合わせて用いることにより、得られるポリヒドロキシイミド前駆体を含む塗膜の基板への密着性を向上させることができる。
該シロキサン含有ジアミンとして特に好適な例は、下記式(12)
【化11】
(式中、
R
47は2価の有機基を表し、
R
48はそれぞれ独立に1価の有機基を表し、
kは1以上の整数を表す。)
で表されるシロキサン含有ジアミンが好ましく、中でも、ビス(3−アミノプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(APDS)がより好ましい。
【0034】
本発明の製造方法に用いるポリヒドロキシイミド前駆体(ポリヒドロキシアミック酸)を構成する単量体成分であるジアミン成分として、上記の少なくとも1つのOH基で置換された芳香族基を含むジアミン、並びに前記式(12)で表されるシロキサン含有ジアミンに加えて、その他のジアミンも使用することができる。
その他のジアミン成分としては特に限定されないが、好ましくは芳香族基を含むジアミン、特にベンゼン環を1つ又はそれ以上含むジアミンであることがより好ましい。
【0035】
前記その他のジアミンとして、芳香族基を含むジアミンとしては、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2,4,6−トリメチル−1,3−フェニレンジアミン、2,3,5,6−テトラメチル−1,4−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4−メチレン−ビス(2−メチルアニリン)、4,4’−メチレン−ビス(2,6−ジメチルアニリン)、4,4−メチレン−ビス(2,6−ジエチルアニリン)、4,4’−メチレン−ビス(2−イソプロピル−6−メチルアニリン)、4,4’−メチレン−ビス(2,6−ジイソプロピルアニリン)、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、ベンジジン、o−トリジン、m−トリジン、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(DA4P)、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン又は2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパンが挙げられる。
この中でも、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)や1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(DA4P)を特に好適なものとして挙げられる。
【0036】
[ポリヒドロキシイミド前駆体の製造方法]
本発明の製造方法に用いるポリヒドロキシイミド前駆体(ポリヒドロキシアミック酸)は、上記テトラカルボン酸成分とジアミン成分(少なくとも1つのOH基で置換された芳香族基を含むジアミン、さらに所望によりその他のジアミン成分及び/又はシロキサン含有ジアミン)を有機溶媒中で重合反応させることにより得られる。
【0037】
前記重合反応に用いられる有機溶媒は、生成したポリヒドロキシイミド前駆体が溶解するものであれば特に限定されないが、あえてその具体例を挙げるならば、γ−ブチロラクトン、ジグライム等の極性溶媒を挙げることができる。また、後述するポリイミド製造時に用いる式(2)もしくは式(3)で表される化合物又は双方の化合物(エステル系溶媒)を用いてもよく、この場合、ポリヒドロキシイミド前駆体溶液をそのまま、ポリヒドロキシイミドの製造に用いることができる。これら溶媒は単独でも、また二種以上を混合して使用してもよい。さらに、ポリヒドロキシイミド前駆体を溶解させない溶媒であっても、生成したポリヒドロキシイミド前駆体が析出しない範囲で、前記溶媒に混合してもよい。
【0038】
またテトラカルボン酸成分とジアミン成分の反応温度範囲の下限は通常−20℃以上、好ましくは−5℃以上であり、またその温度範囲の上限は通常150℃以下、好ましくは100℃以下であり、その上限と下限の範囲の中から任意の温度を選択することができる。好ましくは室温にて、テトラカルボン酸成分とジアミン成分を反応させることが望ましい。
反応温度を高温に設定すると重合反応は迅速に進行し完了するが、高すぎると高分子量のポリヒドロキシイミド前駆体が得られない場合がある。
【0039】
また、有機溶媒中で行う反応において、溶媒中の両成分(テトラカルボン酸無水物成分及びジアミン成分)の固形分濃度は特に限定されないが、濃度が低すぎると高分子量のポリヒドロキシイミド前駆体を得ることが難しくなり、濃度が高すぎると反応液の粘度が高くなり過ぎて均一な攪拌が困難となるので、各成分それぞれ、好ましくは1乃至50質量%、より好ましくは5乃至30質量%である。重合反応初期は高濃度で行い、重合体(ポリヒドロキシイミド前駆体)の精製と共に、その後、有機溶媒を追加することも可能である。
このようにして得られたポリヒドロキシイミド前駆体を含む溶液は、後述するポリヒドロキシイミドの調製にそのまま用いることができる。また、ポリヒドロキシイミド前駆体を水、メタノール、エタノール等の貧溶媒に沈殿単離させて回収して用いることもできる。
【0040】
[エステル系溶媒]
本発明に用いるエステル系溶媒は下記式(2)又は式(3)で表される構造を有する化合物である。
【化12】
{式(2)中、
R
1乃至R
3は、それぞれ独立して、水素原子、酸素原子で中断されていてもよい炭素原子数1乃至10のアルキル基、炭素原子数1乃至10のハロアルキル基、炭素原子数1乃至10のアルコキシ基、Wで置換されていてもよいアリールオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、Wで置換されていてもよいフェニル基、Wで置換されていてもよいナフチル基、Wで置換されていてもよいチエニル基又はWで置換されていてもよいフリル基を表し、
R
4は、水素原子、炭素原子数1乃至10のアルキル基、炭素原子数1乃至10のハロアルキル基、Wで置換されていてもよいフェニル基、Wで置換されていてもよいナフチル基、Wで置換されていてもよいチエニル基又はWで置換されていてもよいフリル基を表す。
Wは、炭素原子数1乃至10のアルキル基、炭素原子数1乃至10のハロアルキル基、炭素原子数1乃至10のアルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、ホルミル基、シアノ基、カルボキシル基、ホスホ基又はスルホ基を表す。
式(3)中、
mは自然数を表し、
R
5乃至R
8は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1乃至10のアルキル基、炭素原子数1乃至10のハロアルキル基、炭素原子数1乃至10のアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、Wで置換されていてもよいフェニル基、Wで置換されていてもよいナフチル基、Wで置換されていてもよいチエニル基又はWで置換されていてもよいフリル基を表し、
Wは、前記と同じ意味を表す。}
【0041】
前記式(2)において、好ましくはR
4がメチル基又はエチル基であり、より好ましくは、R
1及びR
2がメチル基であり、また、R
1乃至R
3のうちいずれか一つがヒドロキシ基、アルコキシ基又はヒドロキシ基を有するフェニル基、ナフチル基、チエニル基もしくはフリル基であることが好ましい。そして前記式(2)で表される化合物は、70℃以上200℃未満の沸点を有するエステル系溶媒であることが好ましい。
【0042】
前記式(2)で表される化合物の具体例としては、酢酸エチル、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシイソ酪酸メチル、2−ヒドロキシイソ酪酸エチル、2−(4−クロロフェノキシ)イソ酪酸メチル、グリコール酸メチル、乳酸メチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等が挙げられる。
【0043】
また、前記式(3)において、好ましくはR
5乃至R
8が水素原子、メチル基、ヒドロキシ基である。
このような式(3)で表される化合物の具体例としては、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、γ−オクタラクトン、3,5−ジヒドロキシ−3−メチルバレン酸 δ−ラクトン、δ−メチル−δ−バレロラクトン、β−プロピロラクトン、β−ブチロラクトン、3−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトン、α−エチル−γ−ブチロラクトン、α−プロピル−γ−ブチロラクトン、α−ヘキシル−γ−ブチロラクトン、α−ヘプチル−γ−ブチロラクトンが挙げられる。これらの中でも、生産性の観点から、γ−ブチロラクトンがより好ましい。
【0044】
また、前記式(2)又は式(3)で表される化合物は、上記式(1)で表される繰り返し構造を含むポリヒドロキシイミド前駆体の100質量部に対して50質量部以上添加することが好ましく、100質量部以上添加することがより好ましい。
【0045】
<ポリヒドロキシイミドの製造方法>
本発明のポリヒドロキシイミドの製造方法は、詳細には、上記式(1)で表される繰り返し構造を含むポリヒドロキシイミド前駆体を前記式(2)もしくは式(3)で表される化合物又は双方の化合物(エステル系溶媒)中において、50℃以上の温度で加熱することにより、反応させて上記式(4)で表される繰り返し構造を含み、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)のポリスチレン換算による重量平均分子量が5,000乃至100,000のポリヒドロキシイミドを得るものである。
【0046】
前記加熱温度は、50℃以上120℃以下が好ましく、70℃以上120℃以下がより好ましい。
前記温度で18時間乃至48時間加熱することにより、ポリイミド化反応を進行させる。
なお、例えば上記テトラカルボン酸成分とジアミン成分を上記式(2)もしくは式(3)で表される化合物又は双方の化合物(エステル系溶媒)に混合した系を50℃以上の温度で加熱することにより、前述のポリヒドロキシイミドの前駆体の製造に引き続いてポリヒドロキシイミド化反応を進行させることもできる。
【0047】
こうして得られたポリヒドロキシイミドの回収は、攪拌させている貧溶媒に反応液を投入してポリヒドロキシイミドを沈殿させ、これを濾過する方法が簡便である。
この際に用いる貧溶媒としては特に限定されないが、メタノール、ヘキサン、ヘプタン、エタノール、トルエン、塩化メチレン、水などが例示できる。沈殿を濾過して回収した後は、前記貧溶媒で洗浄することが好ましい。
回収したポリヒドロキシイミドは常圧あるいは減圧下で、常温あるいは加熱乾燥してポリヒドロキシイミド粉末とすることができる。
【0048】
このポリヒドロキシイミド粉末をさらに良溶媒に溶解させて、貧溶媒に再沈殿させる操作を2乃至10回繰り返すと、ポリマー中の不純物を更に少なくすることもできる。
このとき用いる良溶媒としては、ポリヒドロキシイミドを溶解させることができれば特に限定はされないが、その例としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、N−メチルカプロラクタム、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ピリジン、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。
また、再沈殿に用いる貧溶媒としては、例えばアルコール類、ケトン類、炭化水素など3種類以上の貧溶媒を用いると、より一層精製の効率が上がる。
【0049】
[ポリヒドロキシイミドを含むワニス]
本発明の製造方法で得られたポリヒドロキシイミドは、溶媒に溶解させてワニスの形態と為すことができる。
前記ワニスの形態において使用する溶媒としては、例えば、ジエチルオキサラート、エチルアセトアセタート、酢酸エチル、酢酸イソブチル、酪酸エチル、乳酸エチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシイソ酪酸エチル、2−ヒドロキシイソ酪酸メチル、4−ブチロラクトン等のエステル系溶媒;エチルメチルケトン、イソブチルメチルケトン、2−ヘキサノン、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン等のケトン系溶媒;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート等のプロピレングリコール系溶媒;メチルセロソルブ、メチルセロソルブアセタート等のセロソルブ系溶媒;ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒;エタノール、イソプロパノール、イソペンチルアルコール等のアルコール系溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエチレン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、メトキシ−N−イソプロピル−プロピオンアミド、エトキシ−N−イソプロピル−プロピオンアミド、プロポキシ−N−イソプロピル−プロピオンアミド、ブトキシ−N−イソプロピル−プロピオンアミド、メトキシ−N−プロピル−プロピオンアミド、エトキシ−N−プロピル−プロピオンアミド、プロポキシ−N−プロピル−プロピオンアミド、ブトキシ−N−プロピル−プロピオンアミド、メトキシ−N,N’−ジプロピル−プロピオンアミド、エトキシ−N,N’−ジプロピル−プロピオンアミド、プロポキシ−N,N’−ジプロピル−プロピオンアミド、ブトキシ−N,N’−ジプロピル−プロピオンアミド等のアミド系溶媒などが挙げられる。これらの溶媒は単独で用いても良いし、必要に応じて2種以上の混合溶媒として用いても良い。
また、反応終了後の溶液をそのまま(ポリヒドロキシイミドを単離することなく)ワニスとしても良い。その際、前記溶媒を添加することも可能である。
【0050】
さらに、前記溶媒に溶解させる濃度は任意であるが、ポリヒドロキシイミドの濃度は溶媒1質量部に対して、0.01乃至40質量部、好ましくは0.1乃至30質量部である。ポリヒドロキシイミドの量が0.01質量部を下回る場合は低粘度のため、一方、40質量部を超える場合は、高粘度のため、ポリヒドロキイミドの取り扱いが困難となるからである。
【0051】
本発明のワニスは、さらに光酸発生剤及び架橋剤を加えても良い。これらは単独で用いても良いし、必要に応じて2種以上を混合して用いても良い。
光酸発生剤は、露光等に使用される光の照射によって直接的又は間接的に酸を発生し、光照射部分のアルカリ現像液への溶解性を高める機能を有するものであれば特にその種類及び構造などは限定されない。また光酸発生剤は1種又は2種以上を組み合わせて使うこともできる。
前記光酸発生剤としては、従来公知の光酸発生剤のいずれも適用することができ、その具体例としてはo−キノンジアジド化合物、アリルジアゾニウム塩、ジアリルヨードニウム塩、トリアリルスルホニウム塩、o−ニトロベンジルエステル、p−ニトロベンジルエステル、トリハロメチル基置換s−トリアジン誘導体、又はイミドスルホネート誘導体等を挙げることができる。
また必要に応じて、光酸発生剤と共に増感剤を併用することができる。そのような増感剤としては、例えばペリレン、アントラセン、チオキサントン、ミヒラーケトン、ベンゾフェノン又はフルオレンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0052】
前記光酸発生剤の中でも、ポジ型感光性樹脂組成物を用いて得られる塗膜において高感度と高い解像度が得られる点から、o−キノンジアジド化合物が望ましい。
o−キノンジアジド化合物は、通常、o−キノンジアジドスルホニルクロリドと、ヒドロキシ基及びアミノ基から選ばれる少なくとも一方の基を有する化合物とを、塩基性触媒の存在下で縮合反応させることにより、o−キノンジアジドスルホン酸エステルもしくはo−キノンジアジドスルホンアミドとして得られる。
【0053】
前記o−キノンジアジドスルホニルクロリドを構成するo−キノンジアジドスルホン酸成分としては、例えば、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルホン酸、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホン酸、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−6−スルホン酸などを挙げることができる。
【0054】
前記ヒドロキシ基を有する化合物の具体例としては、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、ヒドロキノン、レゾルシノール、カテコール、o−メトキシフェノール、4,4−イソプロピリデンジフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシフェニルスルホン、4,4−ヘキサフルオロイソプロピリデンジフェノール、4,4’,4’’−トリヒドロキシトリフェニルメタン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、4,4’−[1−[4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール、3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸メチル、3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸プロピル、3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸イソアミルエステル、3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸−2−エチルブチルエステル、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,2’,4’−ペンタヒドロキシベンゾフェノン等のフェノール化合物;エタノール、2−プロパノール、4−ブタノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、2−メトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、2−メトキシプロパノール、2−ブトキシプロパノール、乳酸エチル、乳酸ブチルなどの脂肪族アルコール類が挙げられる。
【0055】
また、前記アミノ基を有する化合物としては、例えば、アニリン、o−トルイジン、m−トルイジン、p−トルイジン、4−アミノジフェニルメタン、4−アミノジフェニル、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルなどのアニリン類、アミノシクロヘキサンなどを挙げることができる。
【0056】
さらに、ヒドロキシ基とアミノ基の両方を有する化合物の具体例としては、o−アミノフェノール、m−アミノフェノール、p−アミノフェノール、4−アミノレゾルシノール、2,3−ジアミノフェノール、2,4−ジアミノフェノール、4,4’−ジアミノ−4’’−ヒドロキシトリフェニルメタン、4−アミノ−4’,4’’−ジヒドロキシトリフェニルメタン、ビス(4−アミノ−3−カルボキシ−5−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−アミノ−3−カルボキシ−5−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−アミノ−3−カルボキシ−5−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,2−ビス(4−アミノ−3−カルボキシ−5−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノ−3−カルボキシ−5−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンなどのアミノフェノール類;2−アミノエタノール、3−アミノプロパノール、4−アミノシクロヘキサノールなどのアルカノールアミン類を挙げることができる。
【0057】
o−キノンジアジドスルホニルクロリドと、ヒドロキシ基及びアミノ基から選ばれる少なくとも一方を有する化合物とを縮合反応させると、その化合物のヒドロキシ基又はアミノ基の一部又は全部がo−キノンジアジドスルホニルクロリドのo−キノンジアジドスルホニル基で置換された2置換体、3置換体、4置換体又は5置換体のo−キノンジアジド化合物が得られる。斯かるo−キノンジアジド化合物をポジ型感光性樹脂組成物の一成分として用いる場合、前記多置換体のo−キノンジアジド化合物を単独で、又は前記多置換体から選ばれる2種以上の多置換体の混合物として用いるのが一般的である。
【0058】
上記o−キノンジアジド化合物の中でも、ポジ型感光性樹脂組成物を用いて得られる塗膜において露光部と未露光部の現像溶解度差のバランスが良好であり、且つ現像時におけるパターン底部の現像残渣(パターンエッジ部の残渣)が無いという観点から、p−クレゾールのo−キノンジアジドスルホン酸エステル、4,4’−[1−[4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノールのo−キノンジアジドスルホン酸エステル、3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸メチルのo−キノンジアジドスルホン酸エステル、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノンのo−キノンジアジドスルホン酸エステル、又は2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンのo−キノンジアジドスルホン酸エステルなどが望ましく、これら化合物をそれぞれ単独で用いても、又、これら化合物から任意に選ばれる二種以上のものを混合して用いてもよい。
【0059】
本発明に用いられる光酸発生剤の含有量は、ポリヒドキシイミド100質量部に基づいて0.01乃至100質量部である。本発明のポジ型感光性樹脂組成物から得られる塗膜において、露光部と未露光部の現像液溶解度差のバランスが良好となる点、さらには、該塗膜の感度並びに該塗膜から得られる硬化膜の機械特性の観点から、光酸発生剤の含有量は特に70質量部以下が望ましく、50質量部以下であることがより望ましい。
【0060】
一方、前記架橋剤としては、例えば、2,2−ビス(3−アミノ−4−マレイミド)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジマレイミドジフェニルエーテル、3,4’−ジマレイミドジフェニルエーテル、3,3’−ジマレイミドジフェニルエーテル、4,4’−ジマレイミドジフェニルスルフィド、4,4’−ジマレイミドジフェニルメタン、3,4’−ジマレイミドジフェニルメタン、3,3’−ジマレイミドジフェニルメタン、4,4−メチレン−ビス(2−メチルマレイミド)、4,4’−ジマレイミドジフェニルスルホン、3,3’−ジマレイミドジフェニルスルホン、1,4’−ビス(4−マレイミドフェノキシ)ベンゼン、1,3’−ビス(4−マレイミドフェノキシ)ベンゼン、1,3’−ビス(4−マレイミドフェノキシ)ベンゼン、ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[3−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[3−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2’−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン等のマレイミド化合物;エポリードGT−401、エポリードGT−403、エポリードGT−301、エポリードGT−302、セロキサイド2021、セロキサイド3000(ダイセル化学工業(株)製)等のシクロヘキセン構造を有するエポキシ化合物;エピコート1001、エピコート1002、エピコート1003、エピコート1004、エピコート1007、エピコート1009、エピコート1010、エピコート828(ジャパンエポキシレジン(株)製)等のビスフェノールA型エポキシ化合物;エピコート807(ジャパンエポキシレジン(株)製)等のビスフェノールF型エポキシ化合物;エピコート152、エピコート154(ジャパンエポキシレジン(株)製)、EPPN201、EPPN202(日本化薬(株)製)等のフェノールノボラック型エポキシ化合物;ECON−102、ECON−103S、ECON−104S、ECON−1020、ECON−1025、ECON−1027(日本化薬(株)製)、エピコート180S75(ジャパンエポキシレジン(株)製)等のクレゾールノボラック型エポキシ化合物;デナコールEX−252(ナガセケムテックス(株)製)、CY175、CY177、CY179、アラルダイトCY−182、アラルダイトCY−192、アラルダイトCY−184(CIBA−GEIGY A.G製)、エピクロン200、エピクロン400(DIC(株)(旧大日本インキ化学工業(株))、エピコート871、エピコート872(ジャパンエポキシレジン(株)製)、ED−5661、ED−5662(セラニーズコーティング(株)製)等の脂環式エポキシ化合物;デナコールEX−611、デナコールEX−612、デナコールEX−614、デナコールEX−622、デナコールEX−411、デナコールEX−512、デナコールEX−522、デナコールEX−421、デナコールEX−313、デナコールEX−314、デナコールEX−312(ナガセケムテックス(株)製)等の脂肪族ポリグリシジルエーテル化合物が挙げられる。
【0061】
また、前記架橋剤としては、例えば、トリアジン環1個当たりメトキシメチル基が平均3.7個置換されているMX−750、トリアジン環1個当たりメトキシメチル基が平均5.8個置換されているMW−30((株)三和ケミカル製);サイメル300、サイメル301、サイメル303、サイメル350、サイメル370、サイメル771、サイメル325、サイメル327、サイメル703、サイメル712等のメトキシメチル化メラミン;サイメル235、サイメル236、サイメル238、サイメル212、サイメル253、サイメル254等のメトキシメチル化ブトキシメチル化メラミン;サイメル506、サイメル508等のブトキシメチル化メラミン、サイメル1141のようなカルボキシル基含有メトキシメチル化イソブトキシメチル化メラミン;サイメル1123のようなメトキシメチル化エトキシメチル化ベンゾグアナミン;サイメル1123−10のようなメトキシメチル化ブトキシメチル化ベンゾグアナミン;サイメル1128のようなブトキシメチル化ベンゾグアナミン;サイメル1125−80のようなカルボキシル基含有メトキシメチル化エトキシメチル化ベンゾグアナミン(日本サイテックインダストリーズ(株)(旧:三井サイアナミド)製);サイメル1170のようなブトキシメチル化グリコールウリル、サイメル1172のようなメチロール化グリコールウリル等が挙げられる。
【0062】
本発明に用いる架橋剤の含有量は、特に限定されないが、得られる塗膜の機械特性の観点から、ポリヒドキシイミド100質量部に基づいて架橋剤の含有量は特に200質量部以下が望ましく、保存安定性の観点から、100質量部以下であることがより望ましい。
【0063】
さらに、本発明のワニスは、界面活性剤を含むことができる。界面活性剤は、基板に対する当該ワニスの塗布性をさらに向上させることができる。
前記界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類;ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類;ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレート等のソルビタン脂肪族酸エステル類;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等のノニオン系界面活性剤;エフトップEF301、同EF303、同EF352(三菱マテリアル電子化成(株)(旧(株)ジェムコ)製);メガファックF171、同F173、同F176、同F189、同R30(DIC(株)(旧大日本インキ化学工業(株))製);フロラードFC430、同FC431(住友スリーエム(株)製);アサヒガードAG710、サーフロンS382、同SC101、同SC102、同SC103、同SC104、同SC105、同SC106(旭硝子(株)製)等のフッ素系界面活性剤;オルガノシロキサンポリマーKP−341(信越化学工業(株)製);フタージェント206D、同212D、同218D、同220P((株)ネオス製)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらの界面活性剤は、単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
界面活性剤の濃度は、溶媒1質量部に対して、通常1質量部以下であり、好ましくは0.1質量部以下であり、より好ましくは0.01質量部以下である。
【0064】
[ポリヒドロキシイミドを含むワニスからなる塗膜]
本発明のワニスを用いて薄膜を形成する具体的な方法としては、まず、本発明の製造方法によって得られたポリヒドロキシイミドを前記溶媒に溶解させてワニスの形態(膜形成材料)とし、該ワニスを基板上にロールコート法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、フローコート法、バーコート法、スプレーコート法、ダイコート法、スピンコート法、ディップコート法、ドクターブレード法、ラングミュア−ブロジェット法等によって塗布し、その後必要に応じて乾燥することで得ることができる。
前記基板としては、例えば、ポリカーボネート、ポリメタクリレート、ポリスチレン、ポリエステル、ポリオレフィン、エポキシ、アクリル、メラミン、トリアセチルセルロース、ABS、AS、ノルボルネン系樹脂等のプラスチック;金属;ガラス;シリコン等が挙げられる。
また、塗布方法としては、特に限定されるものではなく、前記方法の中から、生産性、膜厚コントロール性、歩留まり等のバランスを考慮して、最適な塗布法を決定することができる。
さらに、乾燥温度は、40乃至300℃であることが好ましい。これらの温度の中から、溶媒種、溶媒量、生産性等を考慮して、最適な乾燥温度を決定することができる。
このようにして得られたポリヒドロキシイミドからなる塗膜は、ポジ型のパターン作製が可能となる。
【0065】
塗膜の形成後、例えば紫外線等により、所定のパターンを有するマスクを用いて塗膜を露光し、アルカリ現像液で現像することにより、露光部が洗浄除去され、これにより端面がシャープ(鮮明)なレリーフパターンが基板上に形成される。
ここで用いられるアルカリ現像液としては、アルカリ性水溶液であれば特に限定されず、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液;水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、コリンなどの水酸化四級アンモニウムの水溶液;エタノールアミン、プロピルアミン、エチレンジアミンなどのアミン水溶液などが挙げられる。
【0066】
前記アルカリ現像液の濃度は一般に10質量%以下であり、工業的には0.1乃至3.0質量%のアルカリ性水溶液が使用される。また、アルカリ現像液は、アルコール類又は界面活性剤などを含有することもでき、これらはそれぞれ、0.05乃至10質量%程度含有することが望ましい。
現像工程においては、アルカリ現像液の温度を任意に選択することができるが、本発明のポジ型感光性樹脂組成物を用いる場合は、露光部の溶解性が高いため、室温で容易にアルカリ現像液による現像を行うことができる。
かくして得られたレリーフパターンを有する基板を温度180℃乃至400℃で熱処理(焼成)することにより、吸水性が低く、故に電気特性に優れ、且つ耐熱性及び耐薬品性も良好である、レリーフパターンを有する硬化膜を得ることができる。
【0067】
また、前記ポリヒドロキシイミドの製造方法は、ヒドロキシイミドの製造にも応用できる。すなわち、前記ポリヒドロキシイミドの製造方法におけるポリヒドロキシアミック酸をヒドロキシアミック酸に代えて、前記製造方法と同じ溶媒を用い、同じ温度で、同じ操作によりヒドロキシイミドが得られる。また、前記ポリアミック酸を得る方法として用いたテトラカルボン酸成分及びジアミン成分を、ジカルボン酸成分及びアミン又はジアミン成分に代えて、前記方法と同じ溶媒を用い、同じ温度で、同じ操作によりアミック酸が得られる。
以下に、ヒドロキシイミドの製造方法について説明する。
【0068】
<ヒドロキシイミド前駆体>
本発明に用いるヒドロキシイミド前駆体は、下記式(8)で表される。
【化13】
(式中、
Uは、2価の脂肪族基又は芳香族基を表し、
Vは、少なくとも1つのOH基で置換された芳香族基を含む有機基を表し、
aは1又は2の整数を表す。)
【0069】
前記式(8)において、Vは少なくとも1つのOH基で置換されたベンゼン環を含む有機基であることが好ましい。
【0070】
前記Vの例としては、下記式(10)又は式(11)で表される構造を有する基が挙げられる。
【化14】
(式中、
R
36乃至R
38、R
40乃至R
45はそれぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1乃至10のアルキル基、炭素原子数1乃至10のハロアルキル基、炭素原子数1乃至10のアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、ホルミル基、シアノ基、カルボキシル基、ホスホ基、スルホ基、Wで置換されていてもよいフェニル基、Wで置換されていてもよいナフチル基、Wで置換されていてもよいチエニル基又はWで置換されていてもよいフリル基を表し、
R
39及びR
46は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1乃至10のアルキル基、炭素原子数1乃至10のハロアルキル基、炭素原子数1乃至10のアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、ホルミル基、シアノ基、カルボキシル基、ホスホ基、スルホ基、Wで置換されていてもよいフェニル基、Wで置換されていてもよいナフチル基、Wで置換されていてもよいチエニル基又はWで置換されていてもよいフリル基を表し、
Wは前記と同じ意味を表し、
Z
7は前記Z
1と同じ意味を表し、
b乃至dは、1以上の整数を表し、かつ、2≧b≧1、2≧c+d≧1である。)
【0071】
前記式(11)において、前記Z
7が、単結合、−CH
2−、−C(CH
3)
2−、−C(CF
3)
2−、−C(O)NH−、−O−、−S(O)
2−又は−C(O)−であることが好ましい。
【0072】
上記Vは、前記式(10)又は(11)の中でも、隣接する−NH基に対してo−位にOH基を有する基であることが特に好ましい。
【0073】
本発明に用いる上記式(8)で表されるヒドロキシイミド前駆体(ヒドロキシアミック酸)は、例えばジカルボン酸成分とアミン又はジアミン成分を反応させて得ることができる。
なお、本発明に用いる前記ジカルボン酸成分及びアミン又はジアミン成分は特に限定されないが、得られるヒドロキシイミド前駆体の有機溶媒への溶解性等の観点から、該ジカルボン酸成分及びアミン又はジアミン成分の少なくとも一方が、その少なくとも一部において、フッ素を有する有機基を持つ成分を含有することが好ましい。該ジカルボン酸成分又はアミン若しくはジアミン成分中のフッ素を有する有機基は、特に限定されないが、ベンゼン環に直接結合した、フルオロ基やフルオロアルキル基などが好ましい。中でも溶媒への溶解性等の観点から、トリフルオロメチル基やヘキサフルオロイソプロピリデン基を有する該ジカルボン酸成分又はアミン若しくはジアミン成分が好ましい。また、これらの有機基には、フッ素原子が単数結合していても複数個結合していても構わない。
【0074】
[ジカルボン酸成分]
本発明の製造方法に用いる上記式(8)で表されるヒドロキシイミド前駆体(ヒドロキシアミック酸)を構成し得るジカルボン酸成分は、ジカルボン酸、その酸無水物及びそれから誘導される化合物であれば特に限定されない。これらの具体例を以下に挙げる。
【0075】
例えば、コハク酸、フタル酸、マレイン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸、シクロプロパン−1,2−ジカルボン酸、シクロブタン−1,2−ジカルボン酸、それらの酸無水物及びそれらの誘導体等の化合物が挙げられるが、これら化合物に限定されるものではない。
また、前記ジカルボン酸成分としては、ジカルボン酸、それらの酸無水物及びその誘導体から1種又は2種以上の化合物を組み合わせて用いることができる。
【0076】
[アミン成分]
本発明の製造方法に用いる上記式(8)で表されるヒドロキシイミド前駆体(ヒドロキシアミック酸)を構成するアミン成分は、少なくとも1つのOH基で置換された芳香族基を含むアミンである。
【0077】
少なくとも1つのOH基で置換された芳香族基を含むアミンは特に限定されず、例えば、2−アミノフェノール、2−アミノ−4−メチルフェノール、2−アミノ−5−メチルフェノール、2−アミノ−6−メチルフェノール、及び2−アミノ−4フェニルフェノール等のアミンが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0078】
[ジアミン成分]
本発明の製造方法に用いる上記式(8)で表されるヒドロキシイミド前駆体(ヒドロキシアミック酸)を構成するジアミン成分は、少なくとも1つのOH基で置換された芳香族基を含むジアミンである。
【0079】
少なくとも1つのOH基で置換された芳香族基を含むジアミンは特に限定されず、例えば、2,6−ジアミノフェノール及び前記ポリヒドロキシイミド前駆体(ヒドロキシアミック酸)を構成するジアミン成分と同じジアミン成分が挙げられる。
【0080】
[ヒドロキシイミド前駆体の製造方法]
本発明の製造方法に用いるヒドロキシイミド前駆体(ヒドロキシアミック酸)は、前記ジカルボン酸成分とアミン又はジアミン成分(少なくとも1つのOH基で置換された芳香族基を含むアミン又はジアミン)、さらに所望によりその他のアミン又はジアミン成分を有機溶媒中で反応させることにより得られる。
【0081】
前記合成反応において、用いられる有機溶媒及び反応温度は上記ポリヒドロキシイミド前駆体の製造に用いた溶媒及び反応温度と同様である。
【0082】
このようにして得られたヒドロキシイミド前駆体を含む溶液は、後述するヒドロキシイミドの調製にそのまま用いることができる。また、ヒドロキシイミド前駆体を水、メタノール、エタノール等の貧溶媒に沈殿単離させて回収して用いることもできる。
【0083】
<ヒドロキシイミドの製造方法>
本発明のヒドロキシイミドの製造方法は、詳細には、上記式(8)で表されるヒドロキシイミド前駆体を上記式(2)もしくは式(3)で表される化合物又は双方の化合物(エステル系溶媒)中において、50℃以上の温度で加熱することにより、反応させて上記式(9)で表されるヒドロキシイミドを得るものである。
【0084】
前記加熱温度、反応時間、ヒドロキシイミド前駆体を製造する操作、並びに生成したヒドロキシイミドの回収及び精製する操作は、上記ポリヒドロキシイミドの製造方法と同様である。
【実施例】
【0085】
以下に実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0086】
<実施例で用いる略記号>
以下の実施例で用いる略記号の意味は、次のとおりである。
[酸無水物]
DSDA:3,3’−4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物
CYC1:岩谷瓦斯(株)製 PMDA−HH(商品名)(化合物名:シクロへキサンテトラカルボン酸無水物)
CYC2:岩谷瓦斯(株)製 PMDA−Hs(商品名)(化合物名:シクロへキサンテトラカルボン酸無水物)
PA:フタル酸無水物
1,2−CyHxA:シクロヘキサンジカルボン酸無水物
1,2,3,6−TPA:1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物
[アミン類]
BAHF:2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン
BAPF:ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)メタン
AHPE:3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシ−フェニルエーテル
BAPA:2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン
BSDA:ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン
3−BP:4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシビフェニル
BABHBPA:ビス−N,N’−(p−アミノベンゾイル)−ヘキサフルオロ−2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン
APDS:ビス(3−アミノプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン
[溶媒]
NMP:N−メチル−2−ピロリドン
HBM:2−ヒドロキシイソ酪酸メチル
HBE:2−ヒドロキシイソ酪酸エチル
MAM:メトキシ酢酸メチル
4PhHBM:2−(4−クロロフェノキシ)イソ酪酸メチル
GlyME:グリコール酸メチル
EL:エチルラクテート
GBL:γ−ブチロラクトン
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
[光酸発生剤]
P200:東洋合成工業(株)製 P−200(商品名)(4,4’−[1−[4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール1モルと1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニルクロリド2モルとの縮合反応によって合成される感光剤)
[架橋剤]
BMI−80:ケイ・アイ化成(株)製 BMI−80(商品名)(化合物名:2,2’−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン)
NCO1:デグサAG製 VESTAGON(登録商標)B 1065(商品名)
EPO1:ダイセル化学製 セロキサイド201P(商品名)
[現像液]
NMD:テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液
【0087】
<数平均分子量及び重量平均分子量の測定>
ポリマーの重量平均分子量(以下、Mwと略す)と分子量分布は、日本分光(株)製GPC装置(Shodex(登録商標)カラムKF803L及びKF805L)を用い、溶出溶媒としてジメチルホルムアミドを流量1ml/分、カラム温度50℃の条件で測定した。なお、Mwはポリスチレン換算値とした。
【0088】
<イミド化率の測定>
イミド化率は、H−NMR(JNM−LAシリーズ、日本電子(株)製)を測定し、ポリマー骨格の芳香族のプロトン比、ポリアミック酸又はアミック酸のNH部位のプロトン比、及びヒドロキシ基のプロトン比から算出した。なお、重溶媒にジメチルスルホキシドを用いた。また、積算回数を64回とし、イミド化率を2回測定した後、平均値として算出した。
【0089】
[実施例1:ポリヒドロキシイミドの合成]
BAHF 30.3g(0.083モル)を溶解させたHBM 240gにDSDA 29.7g(0.083モル)を加え、室温で48時間反応させて、ポリアミド酸溶液を合成した。この溶液を90℃で24時間加熱した。その後、塩化メチレン 2000gに沈殿させてポリマーを得、ろ過後、真空オーブン(60℃、18時間)で乾燥させた。
得られたポリマーの収量は、58.8g(収率98.0%)であった。また、このときのイミド化率は98%であり、重量平均分子量は、27,000であった。また、H−NMRから水酸基が確認された。
【0090】
[実施例2乃至実施例19:ポリヒドロキシイミドの合成]
実施例1と同様な方法でポリアミド酸を合成した後、表1に示す温度及び時間にて加熱し、ポリヒドロキシイミドを合成し、実施例1と同様の手順でポリヒドロキシイミドを回収した。
使用した酸二無水物、アミン、溶媒の種類と添加量、並びに加熱温度、加熱時間、そして得られたポリヒドロキシイミドの収率、分子量、イミド化率の結果を表1に示す。
【0091】
【表1】
【0092】
[実施例20:ポリヒドロキシイミドの合成]
BAHF 30.3g(0.083モル)を溶解させたHBM 240gを50℃に加熱し、DSDA 29.7g(0.083モル)を加えた。その後、この溶液を50℃で24時間加熱した。その後、塩化メチレン 2000gに沈殿させてポリマーを得、ろ過後、真空オーブン(40℃、18時間)で乾燥させた。
得られたポリマーの収量は、58.8g(収率98.0%)であった。
また、このときのイミド化率は93%であり、重量平均分子量は、8,000であった。また、H−NMRから水酸基が確認された。
【0093】
[比較合成例1]
BAHF 9.31g(0.025モル)とAPDS 0.702g(0.003モル)を溶解させたNMP 70gにCBDA 4.98g(0.025モル)を加え、室温で24時間反応させて、ポリヒドロキシアミック酸溶液を合成した。この溶液を80℃で20時間加熱した。その後、50wt%メタノール水溶液 200gに沈殿させてポリマーを得、ろ過後、真空オーブン(60℃、18時間)で乾燥させた。
イミド化率を測定した結果、イミド化率は3%であった。
【0094】
[比較合成例2]
BAHF 14.6g(0.040モル)とAPDS 1.10g(0.004モル)を溶解させたNMP 70gにDSDA 14.2g(0.040モル)を加え、室温で24時間反応させて、ポリヒドロキシアミック酸溶液を合成した。この溶液にNMPを200g加え、更に無水酢酸45.2g(0.440モル)及びピリジン21.0g(0.254モル)を添加し、40℃で4時間加熱した。その後、50wt%メタノール水溶液 2100gに沈殿させてポリマーを得、ろ過後、真空オーブン(40℃、18時間)で乾燥させた。
NMRを測定した結果、イミド化率は92%であったが、ヒドロキシ基は全てアセトキシ化されていた。
【0095】
[比較合成例3]
BAHF 3.03g(0.008モル)を溶解させたHBM 24gにDSDA 2.97g(0.008モル)を加え、室温で48時間反応させて、ポリヒドロキシアミック酸溶液を合成した。この溶液を40℃で24時間加熱した。その後、塩化メチレン 2000gに沈殿させてポリマーを得、ろ過後、真空オーブン(60℃、18時間)で乾燥させた。
イミド化率を測定した結果、イミド化率は2%であった。
【0096】
上述のように、実施例1乃至実施例20においては、エステル系溶媒を使用した中性条件下という穏やかな製造条件の下、90%以上の高いイミド化率を有するポリヒドロキシイミドを合成することができた。
一方、エステル系溶媒を用いなかった比較合成例1、並びに、実施例よりも低温下(40℃)の条件でイミド化を行った比較合成例3は、ほとんどイミド化しなかった。さらに、従来の無水酢酸と塩基性溶媒を用いたイミド化手法を用いた比較合成例2においては、イミド化率は高かったものの、ヒドロキシ基がアセトキシ化するという結果となった。
【0097】
[実施例21乃至実施例29:感光性特性評価]
<ポジ型の感光性樹組成物(ワニス)の調整>
上記で得られたポリマー粉末を用いて調製したポリマー溶液、架橋剤、感光剤、及びフッ素系界面活性剤(DIC(株)(旧大日本インキ化学工業(株))製、メガファックR−30(商品名))0.0002gを加え、室温で3時間以上攪拌し、ポジ型の感光性樹脂組成物(ワニス)を調整した。なお、比較例2については、沈殿精製を行ったポリマーパウダーを使用した。
調製した各ポジ型の感光性樹組成物(ワニス)の組成を表2に示す。
【0098】
【表2】
【0099】
<感光性特性評価>
表2で得られたポジ型の感光性樹脂組成物から形成される塗膜について、塗布膜厚、現像後膜厚、線幅、及び現像性を次の手法で評価した。なお、評価結果は表3に示す。
[塗布膜厚]
ポジ型感光性樹脂組成物を段差25mm×25mmITO基板(山容真空工業(株)製)上にスピンコーターを用いて塗布した後、温度110度で120秒間ホットプレート上においてプリベークを行い、塗膜を形成した。膜厚は接触式膜厚測定器((株)ULVAC製Dektak 3ST)を使用した。
[現像後膜厚]
得られた塗膜にライン/スペースのマスクを通してキャノン製紫外線照射装置PLA−501により、紫外光を照射した。露光後、23度のNMD現像液に浸漬して現像を行うことで現像後の膜厚を測定した。
[線幅]
現像後の塗膜を光学顕微鏡で観察し、目的のライン/スペースのマスクのパターンが形成される最小線幅を確認した。
[現像性]
各実施例及び比較例の現像性を下記の様に判断した。
◎:2.4wt%NMD現像液でパターン作製が可能で、現像後の膜厚変化が少ない。
○:2.4wt%NMD現像液でパターン作製が可能だが現像後の膜厚変化が大きい。
△:0.4wt%NMD現像液を用いることで、パターンを作製することは可能。
×:パターン作製が全く出来ない。
【0100】
【表3】
【0101】
実施例21乃至実施例29のポジ型の感光性樹脂組成物(ワニス)から形成された塗膜はいずれもポジ型のパターンを得ることが出来た。しかし、比較例1乃至比較例3のポジ型の感光性樹脂組成物(ワニス)から形成された塗膜は、未現像、もしくは、すべて溶解した。
【0102】
[実施例30:ヒドロキシイミドの合成]
2−AF 3.19g(0.029モル)を溶解させたGBL 28.0gにPA 4.30g(0.029モル)を加え、室温で2時間反応させて、アミック酸溶液を合成した。この溶液にHBM 14.0gを添加し、80℃で24時間加熱した。反応溶液をNMRで測定した結果、定量的にイミド化した。次に、得られた溶液を塩化メチレン 500gに添加し、得られた析出物を濾過後、減圧乾燥し、イミド化合物を得た。
得られたイミド化合物の収量は7.38g(収率99%)であった。
【0103】
[実施例31乃至実施例34:ヒドロキシイミドの合成]
表4に示す酸無水物及びアミン化合物、並びに溶媒を用いて、実施例30と同様の方法でアミック酸を合成した後、表4に示す温度及び時間にて加熱し、ヒドロキシイミドを合成し、実施例30と同様の手順でヒドロキシイミドを回収した。
使用した酸無水物、アミン、溶媒の種類と添加量、及び加熱温度、加熱時間、そして得られたヒドロキシイミドの収率を表4に示す。
【0104】
【表4】
【0105】
[比較合成例4]
2−AF 3.19g(0.029モル)を溶解させたNMP 42gにPA 4.30g(0.029モル)を加え、室温で2時間反応させて、アミック酸溶液を合成した。この溶液を80℃で24時間加熱した。反応溶液をNMRで測定した結果、イミド化率は75%であった。
【0106】
[比較合成例5]
アニリン2.82g(0.031モル)を溶解させたGBL 28gにPA 4.60g(0.031モル)を加え、室温で2時間反応させて、アミック酸溶液を合成した。この溶液にHBM 12gを添加し、80℃で24時間加熱した。反応溶液をNMRで測定した結果、イミド化率は80%であった。
【0107】
上述のように、実施例30乃至実施例34においてはエステル系溶媒を使用した中性条件下という穏やかな製造条件の下、定量的にイミド化したヒドロキシイミドを合成することができた。
一方、エステル系用溶媒を用いなかった比較合成例4、並びにヒドロキシ基を有さないアミンを使用した比較合成例5は実施例30乃至実施例34と比較して低いイミド化率を示した。