特許第5796734号(P5796734)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5796734-バックドア用アウターパネル 図000002
  • 特許5796734-バックドア用アウターパネル 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5796734
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】バックドア用アウターパネル
(51)【国際特許分類】
   B60J 1/18 20060101AFI20151001BHJP
   B60J 5/10 20060101ALI20151001BHJP
【FI】
   B60J1/18 Z
   B60J5/10 Z
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-108230(P2011-108230)
(22)【出願日】2011年5月13日
(65)【公開番号】特開2012-236559(P2012-236559A)
(43)【公開日】2012年12月6日
【審査請求日】2014年4月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】日立化成株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岩渕 匡嘉
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 繁生
(72)【発明者】
【氏名】横尾 崇
【審査官】 前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第06378931(US,B1)
【文献】 特開平11−180143(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 1/18
B60J 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス嵌め込み開口と、前記ガラス嵌め込み開口の外周縁に設けられるガイド溝とを備え、前記ガイド溝が、前記外周縁の左右対向辺の各々に沿って複数配置され、全てのガイド溝にて同一深さである浅溝と、全てのガイド溝にて同一深さである深溝とを有し、
前記浅溝はガラスの突出部を一旦受けて前記深溝へと導く部分であり、前記深溝はガラスの突出部を最終的な組付け位置に位置決めして固定する部分であり、前記ガラスの突出部が前記浅溝の中で水平方向に移動して前記深溝に挿入される、バックドア用アウターパネル。
【請求項2】
請求項1において、ガラス嵌め込み開口を閉塞するガラスを有し、前記ガラスが、各ガイド溝に挿入される突出部を備え、前記突出部の高さが、ガイド溝の浅溝の深さと、ガラスに塗布される接着剤層厚みの合計値よりも大きいバックドア用アウターパネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用のバックドアにおけるバックドア用アウターパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、後方視界を広くするために、例えば、バックドア用のガラスを嵌め込むための開口(以下、「ガラス嵌め込み用開口」と言う。)を設けたバックドア用のアウターパネルとインナーパネルとを接合してリアウィンドの窓枠を形成し、その外周縁に沿って環状の内外突出部を形成し、この内外突出部で挟まれた凹部を接着剤溝として接着剤を収容し、バックドア用のガラス(以下、単に「ガラス」と言う。)を接着する方法等がなされている(例えば特許文献1参照)。
また、バックドア用のアウターパネルは、スポイラー部と一体化しており、このスポイラー部は、自動車の屋根の高さから滑らかに下降し、一部がガラスの上部と重なる形状に形成される場合が多い。つまり、自動車を後方から見ると、ガラス嵌め込み用開口の上部の接着貼り合わせ箇所が、スポイラー部に隠れる形状となっている。一方、バックドア用ガラスのアウターパネルとの組付けは、ガラスの内周縁に接着剤を塗布した後、これを水平面に置いたアウターパネルの垂直方向から、ガラス嵌め込み開口の外周部の接着貼り合せ箇所に貼り合せるやり方が、作業の容易さから一般的に行われる。しかし、スポイラー部を有するアウターパネルにおいては、スポイラー部によって、バックドアのガラス嵌め込み開口の上方の接着貼り合わせ箇所が隠れているため、ガラスを水平面に置いたアウターパネルに対して垂直方向から組付けることはできない。そのため、ガラス組付け専用の治具を使用し、スポイラー部を回避しながらガラスを組付けする必要が生じている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−142665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ガラスをアウターパネルの垂直方向からアウターパネルに組付けできることにより、専用の治具を使用する必要がなく、容易にバックドア用ガラスを組付け可能なバックドア用アウターパネルを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は以下の通りである。
(1) ガラス嵌め込み開口と、前記ガラス嵌め込み開口の外周縁に設けられるガイド溝とを備え、前記ガイド溝が、前記外周縁の左右対向辺の各々に沿って複数配置され、全てのガイド溝にて同一深さである浅溝と、全てのガイド溝にて同一深さである深溝とを有し、
前記浅溝はガラスの突出部を一旦受けて前記深溝へと導く部分であり、前記深溝はガラスの突出部を最終的な組付け位置に位置決めして固定する部分であり、前記ガラスの突出部が前記浅溝の中で水平方向に移動して前記深溝に挿入される、バックドア用アウターパネル。
(2) 上記(1)において、ガラス嵌め込み開口を閉塞するガラスを有し、前記ガラスが、各ガイド溝に挿入される突出部を備え、前記突出部の高さが、ガイド溝の浅溝の深さと、ガラスに塗布される接着剤層厚みの合計値よりも大きいバックドア用アウターパネル。

【発明の効果】
【0006】
本発明により、ガラスを、アウターパネルの垂直方向からアウターパネルに組付けできることにより、専用の治具を使用する必要がなく、容易にバックドア用ガラスを組付け可能なバックドア用アウターパネルを提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明のバックドア用アウターパネル平面図を示す模式図である。
図2】本発明のバックドア用アウターパネルを側面方向から見た場合のガラス嵌め込み開口周辺のガイド溝の断面図であり、(a)はガラスを組付ける前、(b)は組付けた後である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のバックドア用アウターパネル(以下、「アウターパネル」と言う。)としては、図1及び図2に示すように、ガラス嵌め込み開口3と、ガラス嵌め込み開口3の外周縁に設けられるガイド溝2とを備え、ガイド溝2が、外周縁の左右対向辺9の各々に沿って複数配置され、全てのガイド溝2にて同一深さである浅溝5と、全てのガイド溝2にて同一深さである深溝4とを有するものが挙げられる。深溝4は、貫通孔であってもよい。
【0009】
本発明のバックドアとは、自動車の後部に配置されたドアをいう。自動車の後部に、ヒンジ等を用いて開閉可能な状態で固定される。ガラス嵌め込み開口を設けたインナーパネルとアウターパネルとを貼り合せた後、接着剤を塗布したガラスの内周縁と、ガラス嵌め込み開口の外周部の接着貼り合せ箇所とを位置合せし、ガラス嵌め込み開口を塞ぐように、ガラスをアウターパネルに組付けることで形成できる。
【0010】
アウターパネルとは、バックドアの構成のなかで自動車の外装となる部材をいい、インナーパネルとは、バックドアの構成のなかで自動車の内装となる部材をいう。例えば、金属板や樹脂材料を、金型を用いてプレス成形することで形成することができる。樹脂材料としては、特に制限はなく、一般に用いられるポリプロピレン樹脂組成物からなる材料を用いることができる。本発明の対象となるアウターパネルとしては、ガラスを組付けるアウターパネルであれば特に限定はないが、例えば、スポイラー部を有しており、スポイラー部の一部がガラス嵌め込み用開口の上部の接着貼り合せ箇所と重なる形状に形成されたものが挙げられる。つまり、自動車を後方から見ると、ガラス嵌め込み用開口の外周の接着貼り合わせ箇所の一部(主に上部)が、スポイラー部に隠れる形状となっている。
【0011】
本発明のガラス嵌め込み開口とは、アウターパネルのガラスを組付ける予定の位置に設けられた開口をいう。アウターパネルのガラス嵌め込み開口の外周縁には、ガイド溝が設けられる。また、ガイド溝の外側となるガラス嵌め込み開口の外周部には、接着貼り合せ箇所が設けられる。接着貼り合せ箇所とは、アウターパネルに設けられ、ガラスの内周縁に塗布された接着剤を介して、ガラスとアウターパネルとが貼り合わされる部分をいう。
【0012】
本発明のガラスとは、バックドア用のガラスをいい、ガラス嵌め込み開口を閉塞するものである。ガラスの内周縁に塗布した接着剤を介して、アウターパネルのガラス嵌め込み開口の外周部に設けられた接着張り合わせ箇所に組付けられる。ガラスは、ガイドピン等の突出部を備えており、この突出部の材質は、ガラスと同一でもよく、また、金属や樹脂等の異なる材料を用いてもよい。樹脂としては、特に制限は無いが、一般的に用いられるポリプロピレン樹脂組成物からなる材料を用いることができる。また、突出部は、例えば、接着剤等を用いて接着したり、また熱を加え融着することで、ガラスに固定することができる。
【0013】
ガイド溝とは、ガラスの突出部が挿入されるように、アウターパネルのガラス嵌め込み開口の外周縁に設けられる凹部をいう。ガイド溝は、例えば、アウターパネルをプレス成形する際に同時に形成したり、また、ルータ等を使用して後から形成することができる。ガイド溝は、少なくとも2段階の深さを有するように形成され、比較的浅い部分(以下、「浅溝」という。)と比較的深い部分(以下、「深溝」という。)とを有する。
【0014】
浅溝は、ガラスの突出部を一旦受けて深溝へと導く部分であり、突出部が挿入された状態でも、突出部が浅溝の中で水平方向に可動とされる。深溝は、ガラスの突出部を最終的な組付け位置に位置決めして固定する部分であり、突出部が挿入された状態では、突出部の水平方向の動きが固定される。これにより、ガラスをアウターパネルのガラス嵌め込み開口の外周部に固定する際には、ガラスの突出部を、一旦、アウターパネルの浅溝に挿入させ、次に、水平方向に移動させて深溝に達した時点で、深溝に挿入することでガラスをアウターパネルの所定の位置に組付けできる。このため、スポイラー部等が邪魔になって、所定の組付け位置(ガラス嵌め込み用開口の外周部の接着貼り合せ箇所)への組付けが、アウターパネルの垂直方向からできない場合でも、ガラスを、一旦、アウターパネルのスポイラー部が邪魔にならない位置の浅溝に垂直方向から挿入させ、次に、水平方向にスライドさせて深溝に挿入させることで所定の組付け位置に固定することができる。したがって、ガラスをアウターパネルに対して垂直方向からアウターパネルに組付けできることにより、専用の治具を使用する必要がなく、容易にバックドア用ガラスを組付けすることが可能となる。
【0015】
ガイド溝の浅溝と深溝の配置は、組付けの方法に応じて、上下左右又は斜め方向いずれでもよいが、下部が浅溝で上部が深溝であるのが望ましい。ここでいう上部とは、一つのガイド溝のなかで、アウターパネルを自動車に取り付けた際に、上方向となる部分をいう。また、下部とは、一つのガイド溝のなかで、下方向となる部分をいう。これにより、スポイラー部によって、バックドアのガラス嵌め込み開口の上方の接着貼り合わせ箇所が隠れていても、水平方向に置いたアウターパネルの垂直方向から、一旦、ガラスの突出部をガラス嵌め込み開口の下方の浅溝に挿入させ、次に、ガラスを上方にスライドして深溝に挿入させることで、スポイラー部で隠された所定の組付け位置に、ガラスを固定することが可能になる。
【0016】
ガイド溝は、ガラス嵌め込み開口の外周縁の左右対向辺の各々に沿って複数配置され、全てのガイド溝にて同一深さである浅溝と、全てのガイド溝にて同一深さである深溝又は貫通孔とを有する。つまり、浅溝と深溝は、ぞれぞれ、全てのガイド溝にて同一深さとされる。これにより、アウターパネルのガイド溝に対応して、ガラスに設けられる複数の突出部の高さを同一にすることで、ガラスの突出部をアウターパネルのガイド溝の浅溝に挿入させた際には、アウターパネルに対してガラスを平行に保つことができるので、ガラスに不均一な力が加わるのを抑制でき、また、ガラスがガイド溝に対して斜めにならないので、水平方向への移動も容易となる。また、突出部を深溝に挿入させた際には、アウターパネルに対してガラスを平行に保つことができる。
【0017】
ガラスに設けられる突出部の高さは、ガイド溝の浅溝の深さと、ガラスに塗布される接着剤層厚みの合計値よりも大きいのが望ましい。これにより、ガラスの突出部をアウターパネルのガイド溝の浅溝に挿入させた際には、ガラスの内周縁に塗布した接着剤とアウターパネルとの距離を保つことができるので、不要な箇所に接着剤が付着するのを抑制できる。また、突出部を深溝に挿入させた際には、アウターパネルとガラスが確実に密着するので、組付け時の浮き等の問題を抑制できる。
【0018】
以下、本発明のバックドア用アウターパネルの一例を、図面を用い説明する。図1に示すように、本発明のバックドア用アウターパネル1は、ガラス嵌め込み開口3の一対の左右対向辺の各々に沿って、ガイド溝2が複数配置されている。ガイド溝2の長さや幅は特に限定しないが、長手方向で50〜100mm、短手方向で10〜15mmが好ましい。ガイド溝2は、全て同一深さである浅溝と、全て同一深さである深溝又は貫通孔を有しているが、浅溝の深さとしては5〜15mm、深溝の深さとしては6〜25mmが好ましい。また、ガイド溝2は開口3の左右に各々複数配置されているが、各々2〜5個が好ましく、各々2〜3個がより好ましい。ガイド溝2における、浅溝と深溝の割合(寸法比)は、長手方向において、浅溝/深溝=80/20〜50/50であることが好ましい。
【0019】
図2に示すのは、本発明のバックドア用アウターパネル1によるガラス嵌め込み開口周辺のガイド溝の断面図であり、図2(a)に示すように、ガイドピン(突出部)6を浅溝5に嵌め込み後、深溝4方向にスライドすることにより、(b)に示すように、ガイドピン(突出部)6が深溝4に入り、ガラス8とアウターパネル1が、接着剤7により所定位置に接着される。また、ガイドピン(突出部)6の高さは、ガイド溝の浅溝の深さとガラスに塗布された接着剤厚みの合計値よりも大きいことが好ましい。さらに、ガイド溝の深溝の深さより小さいことが好ましい。よって、接着剤厚みが、通常、4〜5mm程度であるから、ガイドピン(突出部)6の高さは、10〜20mmが好ましい。
【実施例】
【0020】
以下、本発明の好適な実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0021】
長さ500mm、幅1200mmのガラス嵌め込み開口を有するバックドア用アウターパネルを準備した。前記ガラス嵌め込み開口の外周縁には、左右対向辺の各々に沿って各々ガイド溝が2個配置されており、ガイド溝は幅15mm、長さ100mm(長手方向)であり、ガイド溝は浅溝と深溝を有しており、浅溝は幅15mm、長さ80mm、深さ5mmであり、深溝は幅15mm、長さ20mm、深さ20mmであり、前記ガラス嵌め込み開口の外周縁の左右対向辺の各々に配置された複数のガイド溝は、その長手方向において、全てが平行に配置され、そして、浅溝はガイド溝の下部に位置している。
【0022】
前記バックドア用アウターパネルのガイド溝に嵌め込まれる位置に4本のガイドピンを有するガラスの所定の位置に接着剤(横浜ゴム株式会社製、1液型ウレタン系接着剤)を7mmの厚さで塗布した。なお、前記ガイドピンの高さは15mmであり、直径は8mmである。接着剤を塗布した長さ510mm、幅1210mmのガラスを、手前から挿入し、ガイドピンを浅溝に嵌め込み後、深溝方向にスライドさせ、ガイドピンが深溝に嵌め込まれ、ガラスとバックドア用アウターパネルは、常温(25℃)で、接着剤により所定位置に垂直に貼り付けされた。なお、貼り付け後の接着剤層の厚みは4mmであった。
【符号の説明】
【0023】
1:アウターパネル、2:ガイド溝、3:ガラス嵌め込み開口、4:深溝、5:浅溝、6:ガイドピン(突出部)、7:接着剤、8:ガラス、9:左右対向辺、10:接着貼り合わせ箇所、11:スポイラー部。
図1
図2