(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5796795
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】液状食品の製造方法及びこれを利用した粉末状食品の製造方法と脱脂粉乳の製造方法並びに液状食品の溶存酸素濃度低減方法
(51)【国際特許分類】
A23L 3/015 20060101AFI20151001BHJP
A23L 1/015 20060101ALI20151001BHJP
A23C 1/00 20060101ALI20151001BHJP
A23C 7/04 20060101ALI20151001BHJP
A23L 3/3418 20060101ALI20151001BHJP
A23L 3/40 20060101ALI20151001BHJP
A23L 2/42 20060101ALN20151001BHJP
【FI】
A23L3/015
A23L1/015
A23C1/00
A23C7/04
A23L3/3418
A23L3/40
!A23L2/00 N
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-69200(P2014-69200)
(22)【出願日】2014年3月28日
(62)【分割の表示】特願2009-550444(P2009-550444)の分割
【原出願日】2008年12月26日
(65)【公開番号】特開2014-138612(P2014-138612A)
(43)【公開日】2014年7月31日
【審査請求日】2014年3月28日
(31)【優先権主張番号】特願2008-10147(P2008-10147)
(32)【優先日】2008年1月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006138
【氏名又は名称】株式会社明治
(74)【代理人】
【識別番号】100108947
【弁理士】
【氏名又は名称】涌井 謙一
(74)【代理人】
【識別番号】100117086
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典弘
(74)【代理人】
【識別番号】100124383
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 一永
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 由式
(72)【発明者】
【氏名】豊田 活
【審査官】
柴原 直司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−042814(JP,A)
【文献】
特開2003−183691(JP,A)
【文献】
特開2007−006885(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 3/00−3/3598
A23C 1/00−23/00
A23L 1/00−1/035
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状食品を減圧容器内に投入するにあたり、当該減圧容器内の減圧雰囲気における当該液状食品の飽和温度以上の温度の前記液状食品を配管から液柱のまま前記減圧容器内に投入し、前記液状食品の溶存酸素濃度を低減させる工程を行い、前記投入前の液状食品に比較して溶存酸素濃度が低減した液状食品の製造方法。
【請求項2】
前記液状食品は、前記減圧容器内の減圧雰囲気における前記液状食品の飽和温度より0.5〜30℃高い温度の状態で前記減圧容器内に投入されることを特徴とする請求項1記載の液状食品の製造方法。
【請求項3】
液状食品を減圧容器内に投入するにあたり、当該減圧容器内を前記液状食品の温度における前記液状食品の飽和蒸気圧以下に減圧して前記液状食品を配管から液柱のまま前記減圧容器内に投入し、前記液状食品の溶存酸素濃度を低減させる工程を行い、前記投入前の液状食品に比較して溶存酸素濃度が低減した液状食品の製造方法。
【請求項4】
前記減圧容器内を前記液状食品の温度における飽和蒸気圧と比べて0.5〜25kPa低く減圧することを特徴とする請求項3記載の液状食品の製造方法。
【請求項5】
前記減圧容器で溶存酸素濃度が低減された前記液状食品を、引き続いて、常圧で、不活性ガス雰囲気中に投入することにより、溶存酸素濃度を更に低減させることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項記載の液状食品の製造方法。
【請求項6】
前記液状食品が脱脂乳であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項記載の液状食品の製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項記載の液状食品の製造方法により溶存酸素濃度を低減させた液状食品を粉末化させることを特徴とする粉末状食品の製造方法。
【請求項8】
前記液状食品が脱脂乳であることを特徴とする請求項7記載の粉末状食品の製造方法。
【請求項9】
生乳を40〜60℃で遠心分離して得た脱脂乳を、殺菌、濃縮、噴霧乾燥して、脱脂粉乳を製造する方法において、生乳を40〜60℃で遠心分離して、脱脂乳を得た後、連続的に、請求項1乃至8のいずれか一項記載の液状食品の製造方法を用いて、溶存酸素濃度を低減させた脱脂乳を製造し、引き続いて、殺菌、濃縮、噴霧乾燥工程を経る、脱脂粉乳の製造方法。
【請求項10】
液状食品を減圧容器内に投入するにあたり、当該減圧容器内の減圧雰囲気における当該液状食品の飽和温度以上の温度の前記液状食品を配管から液柱のまま前記減圧容器内に投入し、前記液状食品の溶存酸素濃度を低減させる工程を行い、前記投入前の液状食品に比較して前記投入後の液状食品の溶存酸素濃度を低減する方法。
【請求項11】
液状食品を減圧容器内に投入するにあたり、当該減圧容器内を前記液状食品の温度における前記液状食品の飽和蒸気圧以下に減圧して前記液状食品を配管から液柱のまま前記減圧容器内に投入し、前記液状食品の溶存酸素濃度を低減させる工程を行い、前記投入前の液状食品に比較して前記投入後の液状食品の溶存酸素濃度を低減する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液状食品の処理方法に関し、特に、起泡性が高く、消泡性が低い液状食品の溶存酸素濃度を効率的かつ効果的に低減することに適した、液状食品の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液状食品について溶存酸素濃度の低減を目的として行う処理に関しては、以前から種々の提案がなされている。
【0003】
例えば、減圧容器に水を供給して加温し、沸騰させて、溶存酸素を効率的に除去する回分式の方法(特許文献1)や、減圧容器に水を供給して加温し、沸騰させて、溶存酸素を効率的に除去する連続式の方法(特許文献2)が提案されている。
【0004】
また、飲料を沸点以下となるように減圧容器へ噴霧し、飲料の表面積を増やして、溶存酸素を低減する方法(特許文献3)や、飲料へ不活性ガスを混合した後に、気泡を減圧の雰囲気で消滅させて、溶存酸素を低減する方法(特許文献4)も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−47351号公報
【特許文献2】特開平9−299709号公報
【特許文献3】特開2005−304390号公報
【特許文献4】特開2005−110527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した特許文献1、2記載の処理方法では、水を処理対象としたものであって、起泡性が高く、消泡性が低い液状食品を処理対象としたものではない。
【0007】
起泡性が高く、消泡性が低い液状食品、例えば、脱脂乳などについて溶存酸素の低減を目的とした処理を行なう場合、特許文献1、2で提案されている減圧容器において加温する方法では、気泡が発生し、溶存酸素濃度を効果的に低減することは困難である。
【0008】
また、特許文献3の方法では、飲料を噴霧するために多数のノズルが必要であり、処理能力に限界があり、洗浄性、メンテナンス性、コスト面などが問題であり、特許文献4の方法では、不活ガスの混合機や減圧容器などの大型の設備が必要であり、コスト面などが問題であった。
【0009】
起泡性が高く、消泡性が低い液状食品として脱脂乳などがあるが、脱脂乳の溶存酸素濃度を低減する際に、脱脂乳へ不活性ガス(窒素など)を混合(バブリング)すると過剰に泡立ってしまい、仮に所定時間で保持するなどしても、気泡は消えずに残存する。このとき、気泡が消えず液体(脱脂乳)に巻き込まれた状態では、ポンプで送液する際などに、流量が一定にならないなどの不具合が生じる。
【0010】
前記のような消泡していない液体を熱交換機(殺菌機)などで加熱処理すると、伝熱効率が低下すると同時に、加熱面で焦げが発生するなどの不具合が生じる。また、消泡していない液体を十字流(クロスフロー)濾過機などで膜分離処理すると、操作圧力が変動すると同時に、透過流束が不安定となるなどの不具合が生じる。
【0011】
一方、脱脂乳のように起泡性が高く、消泡性が低い液状食品について溶存酸素濃度を低減する際に、これを単に減圧(真空)の雰囲気で保持したり、液滴や液膜にしてから減圧の雰囲気へ投入しても、溶存酸素濃度の低下は十分ではなかった。
【0012】
そこで、脱脂乳のように起泡性が高く、消泡性が低い液状食品について、溶存酸素濃度の低減を目的として、減圧(真空)の雰囲気で保持したり、液滴や液膜にしてから減圧の雰囲気へ投入する場合、不活性ガスの混合(バブリング)と減圧(真空)の雰囲気との併用などが必要となり、設備や工程が複雑になったり、設備投資や処理費用が高くなるという問題があった。
【0013】
そこで、この発明は、脱脂乳に例示されるように、起泡性が高く、消泡性が低い液状食品の溶存酸素濃度を効率的かつ効果的に低減することに適した液状食品の処理方法を提案することを目的にしている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願の請求項1に係る発明は、
液状食品を減圧容器内に投入するにあたり、当該減圧容器内の減圧雰囲気における当該液状食品の飽和温度以上の温度の前記液状食品を配管から液柱のまま前記減圧容器内に投入し、前記液状食品の溶存酸素濃度を低減させる工程を行い、前記投入前の液状食品に比較して溶存酸素濃度が低減した液状食品
の製
造方法である。
【0015】
本願の請求項2に係る発明は、
前記液状食品は、前記減圧容器内の減圧雰囲気における前記液状食品の飽和温度より0.5〜30℃高い温度の状態で前記減圧容器内に投入されることを特徴とする請求項1記載の液状食品の製造方法である。
【0016】
本願の請求項3に係る発明は、
液状食品を減圧容器内に投入するにあたり、当該減圧容器内を前記液状食品の温度における前記液状食品の飽和蒸気圧以下に減圧して前記液状食品を配管から液柱のまま前記減圧容器内に投入し、前記液状食品の溶存酸素濃度を低減させる工程を行い、前記投入前の液状食品に比較して溶存酸素濃度が低減した液状食品
の製
造方法である。
【0017】
本願の請求項4に係る発明は、
前記減圧容器内を前記液状食品の温度における飽和蒸気圧と比べて0.5〜25kPa低く減圧することを特徴とする請求項3記載の液状食品の製造方法である。
【0018】
本願の請求項5に係る発明は、
前記減圧容器で溶存酸素濃度が低減された前記液状食品を、引き続いて、常圧で、不活性ガス雰囲気中に投入することにより、溶存酸素濃度を更に低減させることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項記載の液状食品の製造方法である。
【0019】
本願の請求項6に係る発明は、
前記液状食品が脱脂乳であることを特徴とする請求項
1乃至5
のいずれか一項記載の
液状食品の製造方法である。
【0020】
本願の請求項7に係る発明は、
請求項1乃至6のいずれか一項記載の液状食品の製造方法により溶存酸素濃度を低減させた液状食品を粉末化させることを特徴とする粉末状食品の製造方法である。
本願の請求項8に係る発明は、
前記液状食品が脱脂乳であることを特徴とする請求項7記載の粉末状食品の製造方法である。
本願の請求項9に係る発明は、
生乳を40〜60℃で遠心分離して得た脱脂乳を、殺菌、濃縮、噴霧乾燥して、脱脂粉乳を製造する方法において、生乳を40〜60℃で遠心分離して、脱脂乳を得た後、連続的に、請求項1乃至
8のいずれか一項記載の液状食品の製造方法を用いて、溶存酸素濃度を低減させた脱脂乳を製造し、引き続いて、殺菌、濃縮、噴霧乾燥工程を経る、脱脂粉乳の製造方法である。
本願の請求項10に係る発明は、
液状食品を減圧容器内に投入するにあたり、当該減圧容器内の減圧雰囲気における当該液状食品の飽和温度以上の温度の前記液状食品を配管から液柱のまま前記減圧容器内に投入し、前記液状食品の溶存酸素濃度を低減させる工程を行い、前記投入前の液状食品に比較して前記投入後の液状食品の溶存酸素濃度を低減する方法である。
本願の請求項11に係る発明は、
液状食品を減圧容器内に投入するにあたり、当該減圧容器内を前記液状食品の温度における前記液状食品の飽和蒸気圧以下に減圧して前記液状食品を配管から液柱のまま前記減圧容器内に投入し、前記液状食品の溶存酸素濃度を低減させる工程を行い、前記投入前の液状食品に比較して前記投入後の液状食品の溶存酸素濃度を低減する方法である。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、脱脂乳に例示されるように、起泡性が高く、消泡性が低い液状食品の溶存酸素濃度を効率的かつ効果的に低減することに適した、液状食品の処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の液状食品の処理方法が実施されるシステムの一例を説明する概略構成図。
【
図2】(a)、(b)は、本発明の液状食品の処理方法の概略工程を説明するフロー図。
【
図3】(a)、(b)は、本発明の液状食品の処理方法により粉末状食品を製造する概略工程を説明するフロー図。
【
図4】(a)、(b)は、本発明の液状食品の処理方法を利用して脱脂粉乳を製造する概略工程を説明するフロー図。
【
図5】本発明の液状食品の処理方法における処理液溶存酸素濃度と減圧脱気工程に供給される処理液の温度との関係を示すグラフ。
【
図6】本発明の液状食品の処理方法における処理液溶存酸素濃度と減圧脱気工程に供給される処理液の飽和圧力との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0023】
この発明が提案する液状食品の処理方法は、液状食品を減圧容器(減圧タンク、真空容器、真空タンクなど)内に、当該減圧容器内の減圧雰囲気における当該液状食品の飽和温度(沸点)以上に加温している状態で投入する、あるいは、液状食品を減圧容器内に、当該減圧容器内を前記液状食品の温度における液状食品の飽和蒸気圧(飽和圧力)以下に減圧している状態にして投入することにより、液状食品の溶存酸素濃度を低減させるものである。
【0024】
かかる本発明の処理方法によれば、液状食品へ不活性ガスを混合する従来の方法と異なり、気泡が発生しない。そこで、脱脂乳に例示されるように、起泡性が高く、消泡性が低い液状食品の溶存酸素濃度を効率的かつ効果的に低減することに適した処理方法である。また、低温状態や常温状態で減圧脱気する従来の方法と異なり、溶存酸素濃度を画期的に低減することができる。
【0025】
本発明の処理方法では、液状食品を減圧容器内に投入するにあたり、液状食品を液滴や液膜にして表面積を増やしてから、減圧の雰囲気へ投入しても良いが、液状食品を配管(パイプ)などから液柱のままで単に減圧の雰囲気へ投入しても、そのまま短時間で減圧の雰囲気に保持しても良い。このとき、従来の処理方法と異なり、液状食品を配管などから液柱のままで単に減圧の雰囲気へ投入するだけでも、本発明の十分な効果が得られ、洗浄性、メンテナンス性、コスト面などの観点から考えて、液状食品を配管などから液柱のままで単に減圧の雰囲気へ投入する方法が好ましい。
【0026】
発明者等の実験によれば、前述した本発明の処理方法により、溶存酸素濃度:13ppmの液状食品について、2ppm以下にまで溶存酸素濃度を低減させることができた。
【0027】
本発明の処理方法では、液状食品を減圧容器内に投入するにあたり、当該減圧容器内の減圧雰囲気における当該液状食品の飽和温度(沸点)以上に加温している状態で投入する、あるいは、液状食品を減圧容器内に投入するにあたり、当該減圧容器内を前記液状食品の温度における液状食品の飽和蒸気圧以下に減圧している状態にして投入するので、溶存酸素濃度の低減(脱気)は、前記液状食品中における水分を一部蒸発させながら行われる。このとき蒸発する水分の量は、以前から行われていた蒸発濃縮のように、液状食品へ潜熱を連続的に与える方法と異なり、僅かである。
【0028】
なお、本発明の処理温度や処理圧力(減圧容器)は、液状食品の物性や品質への影響や減圧容器の真空度(減圧度)の制御への影響などを勘案しながら適宜、設定すれば良い。例えば、液状食品を高温にしすぎると、タンパク質の変性や風味の悪化などが懸念され、減圧容器を低圧にしすぎると、減圧容器に特別な強度や特殊な減圧設備と制御などが必要となる可能性がある。
【0029】
これらの観点から、具体的に、本発明の処理温度は、好ましくは20〜90℃、より好ましくは30〜80℃、更に好ましくは30〜75℃、特に好ましくは35〜75℃であり、飽和温度と比べて、0.5〜30℃を高くし、好ましくは0.5〜20℃を高くし、より好ましくは1〜15℃を高くし、更に好ましくは1〜10℃を高くする。
【0030】
そして、本発明の処理圧力は、好ましくは1〜50kPa、より好ましくは3〜40kPa、更に好ましくは5〜30kPa、特に好ましくは5〜25kPa、飽和蒸気圧と比べて、0.5〜25kPaを低くし、好ましくは0.5〜20kPaを低くし、より好ましくは1〜15kPaを低くし、更に好ましくは1〜10kPaを低くする。
【0031】
本発明においては、前述したように減圧容器で溶存酸素濃度が低減された前記液状食品を、引き続いて、常圧で、不活性ガス雰囲気(不活性ガス充満容器、不活性ガス充満タンク、窒素容器、窒素充満タンクなど)中に投入することにより、液状食品の溶存酸素濃度を更に低減させることができる。
【0032】
発明者等の実験によれば、前述したように、本発明の処理方法により13ppmから2ppm以下にまで溶存酸素濃度を低減させることができた液状食品について、引き続いて、常圧で、不活性ガス雰囲気中に投入することにより溶存酸素濃度を1.5ppm以下にまで低減することができた。
【0033】
なお、本発明の不活性ガス雰囲気は、コスト面などの観点から考えて、窒素を使用することが好ましく、所定の容器の気相に所定量で窒素を供給するようにしたもの(窒素容器)で実現することが好ましい。そして、本発明の不活性ガス雰囲気は、液状食品の物性や品質への影響や不活性ガス充満タンク(窒素容器)の不活性ガス(窒素)供給量の制御への影響などを勘案しながら適宜、設定すれば良い。例えば、窒素容器の窒素供給量を少量にしすぎると、溶存酸素濃度を十分に低減できないこともあり、窒素供給量を多量にしすぎると、窒素の購入費用の上昇や人体(作業員)への危害などが懸念され、特殊な排気設備と制御などが必要となる可能性がある。
【0034】
これらの観点から、具体的に、本発明の窒素供給量は、供給液(処理液)流量に対して、好ましくは1〜2倍、より好ましくは1.2〜1.8倍、さらに好ましくは1.3〜1.8倍、特に好ましくは1.4〜1.5倍である。
【0035】
本発明においては、前記の液状食品を果汁飲料、珈琲飲料、紅茶飲料、緑茶飲料、乳飲料、加工乳、成分調整牛乳、生乳(全脂乳)、クリームなどとすることができるが、好ましくは脱脂乳とすることができる。脱脂乳のように起泡性が高く、消泡性が低い液状食品について、本発明の処理方法を適用することにより、溶存酸素濃度を効率的かつ効果的に低減することができる。
【0036】
また、本発明の液状食品の処理方法により溶存酸素濃度を低減させた液状食品を、粉末化させることによって、粉末状食品を製造することができる。
【0037】
ここでの粉末化処理は、噴霧乾燥等、従来、この技術分野で使用されている種々の粉末化の方法を採用することができるが、本発明の液状食品の処理方法により溶存酸素濃度を低減させた液状食品を粉末化することにより、この製造した粉末状食品の品質を改良・向上させることもできる。
【0038】
例えば、前記液状食品を脱脂乳とし、本発明の液状食品の処理方法により溶存酸素濃度を低減させた脱脂乳を粉末化させて製造した粉末状食品たる脱脂粉乳は、本発明の液状食品の処理方法が適用されていない場合の脱脂粉乳に比較して優れた品質のものとなる。
【0039】
そこで、本発明の液状食品の処理方法を、従来の脱脂粉乳の製造工程に取り込むことにより、品質が改良された脱脂粉乳を連続的に製造することが可能である。
【0040】
例えば、生乳を40〜60℃で遠心分離して得た脱脂乳を、殺菌、濃縮、噴霧乾燥して、脱脂粉乳を製造する方法において、生乳を40〜60℃で遠心分離して、脱脂乳を得た後、連続的に、本発明の液状食品の処理方法を用いて、当該脱脂乳の溶存酸素濃度を低減させ、引き続いて、殺菌、濃縮、噴霧乾燥工程を経て、脱脂粉乳を製造するものである。このとき、減圧容器には、フラッシュクーラーなどを使用することができる。なお、生乳を遠心分離する温度は、好ましくは45〜55℃、より好ましくは50〜55℃である。
【0041】
この場合、生乳を遠心分離して得た脱脂乳は、あらかじめ加温されているので、熱交換機などで改めて加温せずに、そのまま直ちに、本発明の液状食品の処理方法を用いて、当該脱脂乳の溶存酸素濃度を低減させることができるので、特に熱効率がよい。
【0042】
また、前記のように、減圧容器で溶存酸素濃度が低減された脱脂乳を、引き続いて、常圧で、不活性ガス雰囲気中に投入することにより、液状食品の溶存酸素濃度を更に低減させるという、本発明の液状食品の処理方法を行った後、殺菌、濃縮、噴霧乾燥工程を行うようにすると、常圧で、不活性ガス雰囲気中に減圧容器で溶存酸素濃度が低減された脱脂乳を投入する工程で使用する、不活性ガス充満タンク(常圧)を、殺菌工程の前に設けるバッファータンクとして使用することができる。
【0043】
以下、本発明の好ましい実施例について説明するが、本発明は、前述した好ましい実施形態及び、後述の実施例に限定されることなく、特許請求の範囲の記載から把握される技術的範囲において種々の形態に変更可能である。
【実施例1】
【0044】
この発明の液状食品の処理方法を
図1、
図2を用いて説明する。
図1は、本発明の液状食品の処理方法が実施されるシステムの一例を説明する概略構成図、
図2は、本発明の液状食品の処理方法の概略工程を説明するフロー図である。
【0045】
図2(a)に概略工程が表されているように、処理液タンク2に収容されている処理液1は、熱交換機(加温用)3において所定の温度にまで加温された後、減圧タンク4に投入され、ここで、減圧脱気される。これによって処理液1の溶存酸素濃度を低減させることができる。
【0046】
減圧脱気の方法としては、処理液1を、減圧タンク4内に、減圧タンク4内の減圧雰囲気における処理液1の飽和温度(沸点)以上の温度に熱交換機3によって加温されている状態で投入する方法を採用できる。
【0047】
また、処理液1を、減圧タンク4内に、減圧タンク4内を熱交換機3によって加温されている温度における処理液1の飽和蒸気圧以下に減圧している状態にして投入する方法も採用することができる。
【0048】
図2(b)に概略工程が表されている本発明の処理方法は、減圧タンク4で溶存酸素濃度が低減された処理液1を、引き続いて、常圧で、不活性ガス雰囲気中に投入することにより、処理液1の溶存酸素濃度を更に低減させるものである。
【0049】
処理液1を常圧で、不活性ガス雰囲気中に投入する方法としては、不活性ガス(
図1図示の実施形態では窒素ガス)が充満されていて、大気圧に開放されている不活性ガス充満タンク5に、減圧タンク4から送られてきた処理液1を投入する方法を採用することができる。
【0050】
(実験例1)
起泡性が高く、消泡性が低い液状食品である脱脂乳の替わりに還元脱脂乳(溶存酸素濃度:13ppm)を処理液1として処理液タンク2に準備し、表1、表2に記載されているように、減圧タンク4に供給する処理液1の流量、処理液1の温度(供給液温度)、減圧タンク4の圧力(真空容器圧力)を調整して、処理後の処理液1の溶存酸素濃度を測定した。その結果を表1、表2、
図5、
図6に表す。
【表1】
【表2】
【0051】
表1、表2中、「窒素容器:無」となっているものは、
図2(a)に概略工程が表されている処理方法によるものであって、
図1に図示されている不活性ガス充満タンク5を用いての、常圧での不活性ガス雰囲気中への投入を行わなかったものである。一方、表1、表2中、「窒素容器:有」となっているものは、
図2(b)に概略工程が表されている処理方法によるものであって、
図1に図示されている不活性ガス充満タンク5を用いての、常圧での不活性ガス雰囲気中への投入を行ったものである。
【0052】
処理液1を、減圧タンク4内に、減圧タンク4内の減圧雰囲気における処理液1の沸点(飽和温度)以上の温度に加温している状態で投入することにより、あるいは、処理液1を、減圧タンク4内に、減圧タンク4内を熱交換機3によって加温されている温度における処理液1の飽和蒸気圧以下に減圧している状態にして投入することにより、不活性ガス充満タンク5を用いた処理を行わなくても、極めて効果的に溶存酸素濃度を低減することができた。
【0053】
また、引き続き、不活性ガス充満タンク5を用いて、常圧での不活性ガス雰囲気中への処理液1の投入を行うことにより、溶存酸素濃度を更に低減できることが確認できた。
【実施例2】
【0054】
図3を用いて、本発明の液状食品の処理方法により粉末状食品を製造する方法を説明する。
図3は、本発明の液状食品の処理方法により粉末状食品を製造する概略工程を説明するフロー図である。
【0055】
図3(a)、(b)図示の粉末状食品を製造する方法は、それぞれ、
図2(a)、(b)を用いて説明した本発明の処理方法により、溶存酸素濃度が低減された液状食品(処理液1)とした後、これを噴霧乾燥等、従来、この技術分野で使用されている種々の粉末化の方法を採用して粉末化することにより、粉末状食品を製造するものである。
【0056】
このような処理がされた粉末状食品は、溶存酸素濃度を低減する処理が行なわれていない粉末状食品に比較して品質の優れたものとなる。
【0057】
例えば、処理液1を脱脂乳とし、
図3(a)、(b)図示の本発明の方法によって溶存酸素濃度を低減させた脱脂乳を粉末化させて製造した粉末状食品たる脱脂粉乳は、脱脂乳について溶存酸素濃度を低減する処理が行なわれていない場合の脱脂粉乳に比較して優れた品質のものとなる。
【実施例3】
【0058】
図4を用いて、本発明の液状食品の処理方法を利用して脱脂粉乳を製造する方法を説明する。
図4(a)、(b)は本発明の液状食品の処理方法を利用して脱脂粉乳を製造する概略工程を説明するフロー図である。
【0059】
図4(a)、(b)図示の脱脂粉乳を製造する方法は、それぞれ、
図2(a)、(b)を用いて説明した本発明の処理方法により、溶存酸素濃度が低減された脱脂乳とした後、当該脱脂乳について、通常の要領で、殺菌、濃縮、噴霧乾燥を行うことによって、脱脂粉乳を製造するものである。
【0060】
生乳を40〜60℃で、脱脂乳とクリームに遠心分離する。この得られた40〜60℃の脱脂乳を、そのまま連続的に、
図1図示の減圧タンク4に投入し、ここで、減圧脱気して、脱脂乳の溶存酸素濃度を低減させる(
図4(a))。
【0061】
また、更には、減圧タンク4で溶存酸素濃度が低減された脱脂乳を、引き続いて、不活性ガス(
図1図示の実施形態では窒素ガス)が充満されていて大気圧に開放されている不活性ガス充満タンク5に投入し、更に、脱脂乳の溶存酸素濃度を低減させる(
図4(b))。
【0062】
こうして溶存酸素濃度が低減された脱脂乳について、通常で行われているように殺菌、濃縮、噴霧乾燥を行うことにより、脱脂粉乳を得ることができる。
【0063】
前記実験例1で還元脱脂乳に関して、遠心分離により生乳が脱脂乳とクリームとに分離されたときの温度(40〜60℃)範囲においても効果的に溶存酸素濃度を低減することが可能である。
【0064】
そこで、生乳を遠心分離により脱脂乳とクリームとに分離した後、この分離された脱脂乳を、そのまま直ちに、減圧タンク4に投入して溶存酸素濃度の低減を行うことが可能である。
【0065】
また、
図4(b)図示のように、減圧タンク4で溶存酸素濃度が低減された脱脂乳を、引き続いて、常圧で、不活性ガス雰囲気中に投入することにより、脱脂乳の溶存酸素濃度を更に低減させる場合、不活性ガス充満タンク5を、引き続いて行われる殺菌、濃縮、噴霧乾燥工程の前に設けるバッファータンクとして使用できる。
【符号の説明】
【0066】
1 処理液
2 処理液タンク
3 熱交換機(加温用)
4 減圧タンク
5 不活性ガス充満タンク