(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5796837
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】光学フィルム用アクリル系共重合体樹脂の製造方法及びこれを用いた光学フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 220/12 20060101AFI20151001BHJP
C08F 6/00 20060101ALI20151001BHJP
C08F 2/18 20060101ALI20151001BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20151001BHJP
G02B 1/04 20060101ALI20151001BHJP
【FI】
C08F220/12
C08F6/00
C08F2/18
C08J5/18CEY
G02B1/04
【請求項の数】30
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-544407(P2013-544407)
(86)(22)【出願日】2012年2月7日
(65)【公表番号】特表2014-501293(P2014-501293A)
(43)【公表日】2014年1月20日
(86)【国際出願番号】KR2012000869
(87)【国際公開番号】WO2012141422
(87)【国際公開日】20121018
【審査請求日】2013年6月14日
(31)【優先権主張番号】10-2011-0034443
(32)【優先日】2011年4月13日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2011-0083999
(32)【優先日】2011年8月23日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】チョイ、エウン−ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ハン、チャン−フン
(72)【発明者】
【氏名】セオ、ジェ−バム
(72)【発明者】
【氏名】キム、ベオム−セオク
(72)【発明者】
【氏名】カン、ビョン−イル
(72)【発明者】
【氏名】リー、ナム−ジェオン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ス−キュン
(72)【発明者】
【氏名】ウム、ジュン−ゲウン
(72)【発明者】
【氏名】スン、ダ−エウン
(72)【発明者】
【氏名】リー、ジュン−フーン
【審査官】
久保田 英樹
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2009/084541(WO,A1)
【文献】
特開昭61−254608(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0009585(US,A1)
【文献】
特開2009−227720(JP,A)
【文献】
米国特許第04789709(US,A)
【文献】
特開2008−101202(JP,A)
【文献】
特開2009−292869(JP,A)
【文献】
特表2011−511101(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/013557(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 12/00−34/04
C08F 2/00− 2/60
C08F 6/00− 6/28
C08J 5/00− 5/24
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベンゼン環を含有したアクリル系単量体、アルキル(メタ)アクリレート系単量体及び(メタ)アクリル酸単量体を懸濁重合してアクリル系共重合体を製造する段階と、
前記アクリル系共重合体を240〜300℃の温度で熱処理する段階と、
を含み、
前記懸濁重合する段階は、初期反応温度60〜90℃で2〜3時間懸濁重合する第1の重合段階と、次に、前記第1の重合段階の温度を基準として5〜20℃昇温して1〜2時間追加重合する第2の重合段階と、を含んで行われ、
前記熱処理する段階は押出段階として行われ、前記押出段階は、二軸押出器を用いて2回〜5回再押出して行われる、
光学フィルム用アクリル系共重合体樹脂の製造方法。
【請求項2】
前記懸濁重合する段階の第2の重合段階は80〜100℃で行われる、請求項1に記載の光学フィルム用アクリル系共重合体樹脂の製造方法。
【請求項3】
前記アクリル系共重合体を製造する段階は、ベンゼン環を含有したアクリル系単量体3〜15重量部、アルキル(メタ)アクリレート系単量体65〜92重量部及び(メタ)アクリル酸単量体5〜20重量部を懸濁重合して行われる、請求項1又は2に記載の光学フィルム用アクリル系共重合体樹脂の製造方法。
【請求項4】
前記アクリル系共重合体を製造する段階は、ベンジルメタクリレート3〜15重量部、メチルメタクリレート単量体65〜92重量部及びメタクリル酸単量体5〜20重量部を懸濁重合して行われる、請求項1又は2に記載の光学フィルム用アクリル系共重合体樹脂の製造方法。
【請求項5】
前記ベンゼン環を含有したアクリル系単量体は、ベンジルメタクリレート、1−フェニルエチルメタクリレート、2−フェノキシエチルメタクリレート、2−フェニルエチルメタクリレート、3−フェニルプロピルメタクリレート、3−フェニルプロピルアクリレート及び2−フェノキシエチルアクリレートからなる群から選択される、請求項1から3の何れか一項に記載の光学フィルム用アクリル系共重合体樹脂の製造方法。
【請求項6】
前記アルキル(メタ)アクリレート系単量体のアルキル基は、炭素数が1〜10である、請求項1から3及び5の何れか一項に記載の光学フィルム用アクリル系共重合体樹脂の製造方法。
【請求項7】
前記アルキル(メタ)アクリレート系単量体は、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、メチルエタクリレート、及びエチルエタクリレートからなる群から選択される、請求項1から3、5及び6の何れか一項に記載の光学フィルム用アクリル系共重合体樹脂の製造方法。
【請求項8】
前記(メタ)アクリル酸単量体は、アクリル酸又はメタクリル酸である、請求項1から3及び5から7の何れか一項に記載の光学フィルム用アクリル系共重合体樹脂の製造方法。
【請求項9】
前記製造方法により得られる光学フィルム用アクリル系共重合体樹脂は、グルタル酸無水物(glutaric anhydride)を含む、請求項1から8の何れか一項に記載の光学フィルム用アクリル系共重合体樹脂の製造方法。
【請求項10】
前記製造方法により得られる光学フィルム用アクリル系共重合体樹脂は、アクリル系共重合体樹脂100重量部当たり、ベンゼン環を含有したアクリル系単位3〜15重量部、アルキル(メタ)アクリレート系単位65〜92重量部、(メタ)アクリル酸単位0〜4重量部及びグルタル酸無水物(glutaric anhydride)単位5〜16重量部を含む、請求項1から9の何れか一項に記載の光学フィルム用アクリル系共重合体樹脂の製造方法。
【請求項11】
前記アクリル系共重合体樹脂のガラス転移温度は120℃以上である、請求項1から10の何れか一項に記載の光学フィルム用アクリル系共重合体樹脂の製造方法。
【請求項12】
前記アクリル系共重合体樹脂のヘイズ(Haze)は0.1〜1%であり、透過度は90%以上である、請求項1から11の何れか一項に記載の光学フィルム用アクリル系共重合体樹脂の製造方法。
【請求項13】
前記押出段階は、40torr未満の真空で行われる、請求項1から12のいずれか1項に記載の光学フィルム用樹脂の製造方法。
【請求項14】
ベンゼン環を含有したアクリル系単量体、アルキル(メタ)アクリレート系単量体及び(メタ)アクリル酸単量体を懸濁重合してアクリル系共重合体を製造する段階と、
前記アクリル系共重合体を240〜300℃の温度で熱処理する段階と、
前記アクリル系共重合体を押出成形してフィルムを製造する押出段階と、
前記フィルムを延伸する段階と、
を含み、
前記懸濁重合する段階は、初期反応温度60〜90℃で2〜3時間懸濁重合する第1の重合段階と、次に、前記第1の重合段階の温度を基準として5〜20℃昇温して1〜2時間追加重合する第2の重合段階と、を含んで行われ、
前記熱処理する段階は押出段階として行われ、前記押出段階は、二軸押出器を用いて2回〜5回再押出して行われる、
光学フィルムの製造方法。
【請求項15】
前記懸濁重合する段階の第2の重合段階は80〜100℃で行われる、請求項14に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項16】
前記アクリル系共重合体を製造する段階は、ベンゼン環を含有したアクリル系単量体3〜15重量部、アルキル(メタ)アクリレート系単量体65〜92重量部及び(メタ)アクリル酸単量体5〜20重量部を懸濁重合して行われる、請求項14又は15に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項17】
前記アクリル系共重合体を製造する段階は、ベンジルメタクリレート3〜15重量部、メチルメタクリレート単量体65〜92重量部及びメタクリル酸単量体5〜20重量部を懸濁重合して行われる、請求項14から16の何れか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項18】
前記ベンゼン環を含有したアクリル系単量体は、ベンジルメタクリレート、1−フェニルエチルメタクリレート、2−フェノキシエチルメタクリレート、2−フェニルエチルメタクリレート、3−フェニルプロピルメタクリレート、3−フェニルプロピルアクリレート及び2−フェノキシエチルアクリレートからなる群から選択される、請求項14から16の何れか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項19】
前記アルキル(メタ)アクリレート系単量体はメチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、メチルエタクリレート、及びエチルエタクリレートからなる群から選択される、請求項14から18の何れか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項20】
前記(メタ)アクリル酸単量体は、アクリル酸又はメタクリル酸である、請求項14から19の何れか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項21】
前記製造方法により得られる光学フィルム用アクリル系共重合体樹脂は、グルタル酸無水物(glutaric anhydride)を含む、請求項14から20の何れか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項22】
前記製造方法により得られる光学フィルム用アクリル系共重合体樹脂は、アクリル系共重合体樹脂100重量部当たり、ベンゼン環を含有したアクリル系単位3〜15重量部、アルキル(メタ)アクリレート系単位65〜92重量部、(メタ)アクリル酸単位0〜4重量部及びグルタル酸無水物(glutaric anhydride)単位5〜16重量部を含む、請求項14から21の何れか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項23】
前記熱処理する段階及び前記押出段階は、単一の段階で行われる、請求項14から22の何れか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項24】
前記押出段階は、二軸押出器を用いて2回再押出して行われる、請求項14から23の何れか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項25】
前記押出段階は、40torr未満の真空で行われる、請求項14から24の何れか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項26】
前記延伸する段階は、縦方向(MD)に2倍、横方向(TD)に3倍2軸延伸して行われる、請求項14から25の何れか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項27】
前記光学フィルムは、下記数学式1で表示される面方向位相差値及び下記数学式2で表示される厚さ方向位相差値がそれぞれ−5〜5nmである、請求項14から26の何れか一項に記載の光学フィルムの製造方法:
[数学式1]
Rin=(nx−ny)×d
[数学式2]
Rth=(nz−ny)×d
前記数学式1及び前記数学式2のうち、nxはフィルムの面方向において屈折率が最も大きい方向の屈折率であり、nyはフィルムの面方向においてnx方向の垂直方向の屈折率であり、nzは厚さ方向の屈折率であり、dはフィルムの厚さである。
【請求項28】
前記光学フィルムは、熱膨張係数(CTE)が70ppm/℃以下である、請求項14から27の何れか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項29】
前記製造方法により得られる光学フィルム用アクリル系共重合体樹脂は、アクリル系共重合体樹脂100重量部当たり、ベンゼン環を含有したアクリル系単位6〜10.1重量部を含む、請求項10に記載の光学フィルム用アクリル系共重合体樹脂の製造方法。
【請求項30】
前記製造方法により得られる光学フィルム用アクリル系共重合体樹脂は、アクリル系共重合体樹脂100重量部当たり、ベンゼン環を含有したアクリル系単位6〜10.1重量部を含む、請求項22に記載の光学フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルム用樹脂の製造方法に関し、より詳細には、耐熱性に優れたアクリル系共重合体樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光学技術の発展を足がかりに従来のブラウン管を代替するプラズマディスプレイパネル(plasma display panel、PDP)、液晶ディスプレイ(liquid crystal display、LCD)などの多様な方式を用いたディスプレイ技術が提案、市販されている。
【0003】
このようなディスプレイのためのポリマー素材は、その要求特性がより一層高度化している。例えば、液晶ディスプレイの場合、薄膜化、軽量化、画面面積の大型化につれ、広視野角化、高コントラスト化、視野角による画像色調変化の抑制及び画面表示の均一化が特に重要な問題となっている。
【0004】
これにより、偏光フィルム、偏光子保護フィルム、位相差フィルム、プラスチック基板、導光板等に多様なポリマーフィルムが用いられており、液晶としてツイステッドネマチック(twisted nematic、TN)、スーパーツイステッドネマチック(super twisted nematic、STN)、垂直整列(vertical alignment、VA)、面内切替(in‐plane switching、IPS)液晶セルなどを用いた多様なモードの液晶表示装置が開発されている。これら液晶セルはすべて固有の液晶配列をしており、固有の光学異方性を有しており、この光学異方性を補償するために多様な種類のポリマーを延伸して位相差機能を付与したフィルムが提案されてきている。
【0005】
偏光板は、通常、偏光子に、保護フィルムとして三酢酸セルロースフィルム(triacetyl celluloseフィルム、以下、「TACフィルム」という)をポリビニルアルコール系水溶液からなる水系接着剤で積層させた構造を有する。しかしながら、偏光子として用いられたポリビニルアルコールフィルムと偏光子用保護フィルムとして用いられたTACフィルムはいずれも耐熱性と耐湿性が十分ではない。したがって、上記フィルムからなる偏光板を高温又は高湿の雰囲気下で長時間用いると、偏光度が低下し、偏光子と保護フィルムが分離されるか光特性が低下するため、用途の面で多くの制約を受けている。
【0006】
また、TACフィルムは、周辺温度及び湿度環境の変化による既存の面内位相差(R
in)と厚さ方向位相差(R
th)の変化がひどく、特に、傾斜方向からの入射光に対する位相差の変化が大きい。このような特性を有するTACフィルムを保護フィルムとして含む偏光板を液晶表示装置に適用すると、周辺温度及び湿度環境の変化に応じて視野角特性が変化して画像品質が低下するという問題がある。
【0007】
また、TACフィルムは、周辺温度及び湿度環境の変化による寸法変化率が大きい上、光弾性係数値も相対的に大きいため、耐熱、耐湿熱環境での耐久性評価後に局部的に位相差特性の変化が発生して画像品質が低下しやすい。このようなTACフィルムの様々な短所を補完するための素材としてアクリル(acryl)系樹脂がよく知られている。しかしながら、アクリル系樹脂は、耐熱度が十分でなく、延伸後に面内及び厚さ方向位相差が発現されるため、保護フィルムに適用するには適していない。
【0008】
上記のような従来技術の問題を解決するために、延伸後にも面内及び厚さ方向位相差がほぼなく、光弾性係数が小さく、耐熱性に優れることから、偏光子保護フィルムに用いられることができるアクリル系共重合体樹脂を製造する方法が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、耐熱度、透明度及び光学物性に優れたアクリル系共重合体樹脂の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態によれば、ベンゼン環を含有したアクリル系単量体、アルキル(メタ)アクリレート系単量体及び(メタ)アクリル酸単量体を懸濁重合してアクリル系共重合体を製造する段階と、上記アクリル系共重合体を240〜300℃の温度で熱処理する段階と、を含む光学フィルム用アクリル系共重合体樹脂の製造方法が提供される。
【0011】
上記懸濁重合する段階は、初期反応温度60〜90℃で2〜3時間懸濁重合する第1の重合段階と、次に、上記第1の重合段階の温度を基準として5〜20℃昇温して1〜2時間追加重合する第2の重合段階と、を含んで行われることが好ましい。
【0012】
上記懸濁重合する段階の第2の重合段階は80〜100℃で行われることが好ましい。
【0013】
上記アクリル系共重合体を製造する段階は、ベンゼン環を含有したアクリル系単量体3〜15重量部、アルキル(メタ)アクリレート系単量体65〜92重量部及び(メタ)アクリル酸単量体5〜20重量部を懸濁重合して行われることが好ましい。
【0014】
上記アクリル系共重合体を製造する段階は、ベンジルメタクリレート3〜15重量部、メチルメタクリレート単量体65〜92重量部及びメタクリル酸単量体5〜20重量部を懸濁重合して行われることが好ましい。
【0015】
上記ベンゼン環を含有したアクリル系単量体は、ベンジルメタクリレート、1−フェニルエチルメタクリレート、2−フェノキシエチルメタクリレート、2−フェニルエチルメタクリレート、3−フェニルプロピルメタクリレート、3−フェニルプロピルアクリレート及び2−フェノキシエチルアクリレートからなる群から選択されることが好ましい。
【0016】
上記アルキル(メタ)アクリレート系単量体のアルキル基は炭素数が1〜10であることが好ましい。
【0017】
上記アルキル(メタ)アクリレート系単量体は、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、メチルエタクリレート、及びエチルエタクリレートからなる群から選択されることが好ましい。
【0018】
上記(メタ)アクリル酸単量体は、アクリル酸、メタクリル酸、メチルアクリル酸、メチルメタクリル酸、エチルアクリル酸、エチルメタクリル酸、ブチルアクリル酸、ブチルメタクリル酸からなる群から選択されることが好ましい。
【0019】
上記製造方法により得られる光学フィルム用アクリル系共重合体樹脂は、グルタル酸無水物(glutaric anhydride)を含む。
【0020】
上記製造方法により得られる光学フィルム用アクリル系共重合体樹脂は、アクリル系共重合体樹脂100重量部当たり、ベンゼン環を含有したアクリル系単位3〜15重量部、アルキル(メタ)アクリレート系単位65〜92重量部、(メタ)アクリル酸単位0〜4重量部及びグルタル酸無水物(glutaric anhydride)単位5〜16重量部を含むことが好ましい。
【0021】
上記アクリル系共重合体樹脂のガラス転移温度は120℃以上であることが好ましい。
【0022】
上記アクリル系共重合体樹脂のヘイズ(Haze)は0.1〜1%であり、透過度は90%以上であることが好ましい。
【0023】
上記熱処理する段階は押出段階として行われることが好ましい。
【0024】
上記押出段階は、二軸押出器を用いて2回〜5回再押出して行われることが好ましい。
【0025】
上記押出段階は、40torr未満の真空で行われることが好ましい。
【0026】
本発明の他の実施形態によれば、ベンゼン環を含有したアクリル系単量体、アルキル(メタ)アクリレート系単量体及び(メタ)アクリル酸単量体を懸濁重合してアクリル系共重合体を製造する段階と、上記アクリル系共重合体を240〜300℃の温度で熱処理する段階と、上記アクリル系共重合体を押出成形してフィルムを製造する段階と、上記フィルムを延伸する段階と、を含む光学フィルムの製造方法が提供される。
【0027】
上記アクリル系共重合体を製造する段階は上述した内容と同様であり、上記熱処理する段階及び押出成形してフィルムを製造する段階は単一の段階で行われることが好ましい。
【0028】
上記押出段階は二軸押出器を用いて2回〜5回再押出して行われることが好ましい。
【0029】
上記延伸する段階は、縦方向(MD)に2倍、横方向(TD)に3倍2軸延伸して行われることが好ましい。
【0030】
上記光学フィルムは、下記数学式1で表示される面方向位相差値及び下記数学式2で表示される厚さ方向位相差値がそれぞれ−5〜5nmであることが好ましい。
【0031】
[数学式1]
R
in=(nx−ny)×d
【0032】
[数学式2]
R
th=(nz−ny)×d
【0033】
上記数学式1及び数学式2のうち、nxはフィルムの面方向において屈折率が最も大きい方向の屈折率であり、nyはフィルムの面方向においてnx方向の垂直方向の屈折率であり、nzは厚さ方向の屈折率であり、dはフィルムの厚さである。
【0034】
上記光学フィルムは、熱膨張係数(CTE)が70ppm/℃以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0035】
本発明のアクリル系共重合体樹脂の製造方法及びこれを用いた光学フィルムの製造方法を用いると、樹脂の分子量調節が容易な懸濁重合を用いてグルタル酸無水物構造の形成を誘導することにより、効率的に熱膨張係数を低くした樹脂及び光学フィルムを生産することができる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明の一実施形態によれば、ベンゼン環を含有したアクリル系単量体、アルキル(メタ)アクリレート系単量体及び(メタ)アクリル酸単量体を懸濁重合して共重合体を製造する段階と、上記共重合体を240〜300℃の温度で熱処理する段階と、を含む光学フィルム用アクリル系共重合体樹脂の製造方法が提供される。
【0037】
上記共重合体は、ブロック共重合体又はランダム共重合体であることができるが、共重合の形態はこれに限定されない。
【0038】
本発明において、上記アクリル系共重合体の製造は、懸濁重合を用いることが好ましい。上記懸濁重合は、当該技術分野で一般的に行われる懸濁重合方法をすべて含み、例えば、原料単量体を水のような非相溶性液体に分散させ、開始剤などを含んで重合する方法で高分子が重合しながら発する熱が非相溶性液体に伝達されて発熱制御が容易であり靭性に関連した分子量調節が容易である。本発明に用いられる非相溶性液体としては水が好ましい。
【0039】
上記懸濁重合する段階は、初期反応温度60〜90℃で2〜3時間懸濁重合する第1の重合段階と、次に、80〜100℃まで昇温して1〜2時間追加重合する第2の重合段階と、を含んで行われることが好ましい。
【0040】
上記初期反応温度で懸濁重合する第1の重合段階は、当該技術分野で用いられる開始剤の条件に合わせて行われ、60℃未満の場合は効率的に重合転換率を確保することができないという問題があり、90℃を超える場合は発熱制御などの初期反応制御に問題が発生する可能性がある。上記第1の重合段階は、開始剤の半減期に合わせて反応温度を設定し、反応時間を2〜3時間に調節することが好ましい。上記反応時間は、効率性と関連があり、適切な重合水準が得られる範囲であれば特に制限されないが、反応時間が短いことが効率的であるため、2〜3時間反応させることが好ましい。
【0041】
その後、温度を昇温して追加重合する第2の重合段階により転換率を向上させることができる。上記第2の重合段階の温度は、初期重合温度を基準として約5℃〜20℃、好ましくは10℃以上昇温することが未反応モノマーの重合を完結させる面で好ましく、より詳細には80〜100℃であることが好ましい。追加重合する段階が80℃未満で行われる場合は重合を完結するにあたり効率性が落ちるという問題があり、100℃を超える場合は昇温などの反応制御が困難になるという問題がある。反応時間は1時間〜2時間内であることが効率性の面で好ましい。
【0042】
本発明は、延伸フィルムの靱性(toughness)を向上させるために、上記のように樹脂の分子量調節が容易な懸濁重合を用いて樹脂を製造し、熱処理段階を含むことにより、樹脂に熱履歴を付与し、グルタル酸無水物の形成を誘導することができる。
【0043】
本発明の熱処理段階において、上記で製造された共重合体は、240〜300℃の温度に加熱され、好ましくは260〜290℃の温度に加熱される。上記熱処理段階の温度が240℃未満の場合はグルタル酸無水物の生成が効率的に行われず、300℃を超える場合は樹脂分解に関連した安定性に問題がある。
【0044】
懸濁重合の場合、水を用いるため、熱を加える工程に用いるのには限界があり、脱水過程を経て樹脂を得るため、上記熱処理段階は、押出段階として行われることが好ましい。即ち、上記懸濁重合の結果によって顆粒状に得られる共重合体を240〜300℃の温度で高温押出成形して製造することが工程上好ましく、二軸押出器を用いて2回〜5回再押出して行われることがより好ましいが、上記再押出回数は温度及び押出器の長さに応じて変わり、5回を超える回数の押出は樹脂の劣化による安定性問題のため好ましくない。
【0045】
特に、スクリューの長さが1m程度の二軸押出器を用いて2回以上再押出することが好ましいが、与えられた温度範囲及び機器に応じて1回で押出することもでき、また、熱伝達及び押出が効率的に行われる条件下では一軸押出器を用いることもできる。
【0046】
一方、上記のような押出工程は、真空で行われることが好ましく、真空度40torr未満で行われることがより好ましい。本発明は、上記のような押出工程によりグルタル酸無水物(glutaric anhydride)を生成するため、転換反応で生成されるメタノールなどを真空で除去する場合、より高い効率が得られる。
【0047】
一般的にアクリル系共重合体樹脂を用いてフィルムを製造した後にTACフィルムなどと貼り合わせて偏光板を製造する場合、両フィルムの間の熱膨張係数の差により偏光板が反ったり歪んだりするカール(curl)現象が発生するという問題があるが、(メタ)アクリル酸単量体を含むアクリル系共重合樹脂に熱処理を施すことにより、グルタル酸無水物生成を誘導して樹脂の熱膨張係数を低くすることができる。
【0048】
上記のように製造された本発明の光学フィルム用アクリル系共重合体樹脂は、ペレット状であることが好ましく、グルタル酸無水物(glutaric anhydride)を含む。
【0049】
上記グルタル酸無水物単位は、共重合体製造の後に熱処理によりアルキル(メタ)アクリレート系単位及び/又はベンゼン環を含有したアクリル系単位と(メタ)アクリル酸単位が反応しながら生成されるものであり、重合時に投入される(メタ)アクリル酸単量体の含量及び熱処理程度を調節することにより、最終的に得られる光学フィルム用アクリル系共重合体樹脂内のグルタル酸無水物単位の含量を調節することができる。本明細書において、「単位」は、単量体が重合されて共重合体を形成する場合に単量体の形で存在しない該当成分を称するためのものである。
【0050】
このように、グルタル酸無水物単位を含む4元共重合体の場合、アルキル(メタ)アクリレート系単量体、ベンゼン環を含有したアクリル系単量体及び(メタ)アクリル酸単量体を含む3元共重合体のように優れた位相差特性を維持し、且つ上記3元共重合体からは見出せなかった熱膨張係数の減少効果が生じた。これは、グルタル酸無水物のバルキーな官能基によって高分子鎖の回転が制限されるためである。
【0051】
上記重合時に添加される単量体の含量は、上記ベンゼン環を含有したアクリル系単量体3〜15重量部、アルキル(メタ)アクリレート系単量体65〜92重量部及び(メタ)アクリル酸単量体5〜20重量部であることが好ましい。
【0052】
上記ベンゼン環を含有したアクリル系単量体が与えられた範囲を外れる場合は、保護フィルムの位相差を調節するのに問題が発生する可能性がある。また、(メタ)アクリル酸単量体が5重量部未満の場合は、生成されるグルタル酸無水物の含量が十分ではないため、樹脂の熱膨張係数を低くするのに効率的ではない可能性があり、20重量部を超える場合は、最終樹脂の耐熱度の上昇によってフィルム製造時にフィルムが脆くなる(brittle)問題が生じる可能性がある。
【0053】
上記ベンゼン環を含有したアクリル系単量体は、本発明によるアクリル系共重合体樹脂が偏光子保護フィルムに適用されるのに適した面内又は厚さ方向位相差を調節する役割をし、炭素数6〜40のアリール基、炭素数6〜40のアリールアルキル基、炭素数6〜40のアリールオキシ基又は炭素数6〜40のアリールオキシアルキル基で置換されることができ、炭素数6〜15のアリールアルキル基、炭素数6〜10のアリールオキシ基又は炭素数6〜15のアリールオキシアルキル基で置換された(メタ)アクリレートであることが透明度の面でより好ましい。
【0054】
上記ベンゼン環を含有したアクリル系単量体は、例えば、ベンジルメタクリレート、1−フェニルエチルメタクリレート、2−フェノキシエチルメタクリレート、2−フェニルエチルメタクリレート、3−フェニルプロピルメタクリレート、3−フェニルプロピルアクリレート及び2−フェノキシエチルアクリレートからなる群から選択されることが好ましく、ベンジルメタクリレートであることが最も好ましい。
【0055】
本明細書において、「アルキル(メタ)アクリレート系単量体」は、「アルキルアクリレート系単量体」及び「アルキルメタクリレート系単量体」をすべて含むものを意味する。光学的透明性、他の樹脂との相溶性、加工性及び生産性を考慮すると、上記アルキル(メタ)アクリレート系単量体のアルキル基は、炭素数1〜10であることが好ましく、1〜4であることがより好ましく、メチル基又はエチル基であることがさらに好ましい。
【0056】
より詳細には、上記アルキル(メタ)アクリレート系単量体の例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、メチルエタクリレート、及びエチルエタクリレートなどが挙げられ、この中で最も好ましい例としては、メチルメタクリレートが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0057】
本明細書において、「(メタ)アクリル酸単量体」は、「アクリル酸単量体」及び「メタクリル酸単量体」をすべて含むものを意味する。上記(メタ)アクリル酸単量体は、本発明によるアクリル系共重合体樹脂が十分な耐熱度を有するようにし、グルタル酸無水物の生成を誘導することにより、樹脂の熱膨張係数を低くする役割をする。
【0058】
上記(メタ)アクリル酸単量体は、炭素数1〜5のアルキル基で置換又は非置換されることができる。上記(メタ)アクリル酸単量体の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、メチルアクリル酸、メチルメタクリル酸、エチルアクリル酸、エチルメタクリル酸、ブチルアクリル酸、ブチルメタクリル酸などが挙げられ、この中でメタクリル酸を用いることが最も経済的である。
【0059】
一方、上記製造方法により得られる光学フィルム用アクリル系共重合体樹脂は、ベンゼン環を含有したアクリル系単位3〜15重量部、アルキル(メタ)アクリレート系単位65〜92重量部、(メタ)アクリル酸単位0〜4重量部及びグルタル酸無水物(glutaric anhydride)単位5〜16重量部を含むことが好ましい。
【0060】
上記グルタル酸無水物(glutaric anhydride)が全共重合体樹脂100重量部当たり5重量部未満の場合は、熱膨張係数を低くするのに効率的ではなく、グルタル酸無水物(glutaric anhydride)の含量が全共重合体樹脂100重量部当たり16重量部を超えるように製造するためには、アクリル酸の含量を増加させなければならず、この場合、耐熱度が高くなりすぎて最終フィルムが脆くなる(brittle)可能性がある。また、重合された後、アクリル酸の多くの比重をグルタル酸無水物に転換させることが熱膨張係数を低くするのに好ましい。
【0061】
上記アクリル系共重合体樹脂の重量平均分子量は、耐熱性、加工性及び生産性の面で5万〜50万の範囲であることが好ましく、5万〜20万の範囲であることがより好ましい。
【0062】
上記アクリル系共重合体樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が、好ましくは120℃以上、より好ましくは125℃以上である。
【0063】
本発明によれば、ベンゼン環を含有したアクリル系単量体、アルキル(メタ)アクリレート系単量体及び(メタ)アクリル酸単量体を懸濁重合してアクリル系共重合体を製造する段階と、上記アクリル系共重合体を240〜300℃の温度で熱処理する段階と、上記アクリル系共重合体を押出成形してフィルムを製造する段階と、上記フィルムを延伸する段階と、を含む光学フィルムの製造方法が提供される。
【0064】
ベンゼン環を含有したアクリル系単量体、アルキル(メタ)アクリレート系単量体及び(メタ)アクリル酸単量体を懸濁重合してアクリル系共重合体を製造する段階と、上記アクリル系共重合体を240〜300℃の温度で熱処理する段階は、上述した内容と同様である。
【0065】
一方、上記熱処理する段階及び押出成形してフィルムを製造する段階は、単一の段階で行われることが好ましい。即ち、上記懸濁重合の結果によって顆粒状に得られる共重合体を240〜300℃の温度で高温押出成形して製造することが工程上好ましい。
【0066】
上記アクリル系共重合体樹脂は、キャスティング法などの当業界によく知られた方法でもフィルムとして製造することができるが、押出法を用いることが経済的であるため好ましい。上記押出段階は、二軸押出器を用いて2回〜5回再押出して行われることが好ましいが、与えられた温度範囲及び機器に応じて1回で押出して行われることもでき、また、熱伝達及び押出が効率的に行われる条件下では一軸押出器を用いることもできる。
【0067】
本発明のアクリル系共重合体樹脂を用いて光学フィルムを製造する場合、フィルムを一軸又は二軸延伸する段階をさらに含むことができる。上記延伸工程は、縦方向(MD)延伸、横方向(TD)延伸をそれぞれ行うこともでき、すべて行うこともできる。縦方向と横方向にすべて延伸する場合はいずれか一方に先に延伸した後、他の方向に延伸することができ、両方向に同時に延伸することもできる。延伸は、一つの段階で行われることもでき、多段階にわたって行われることもできる。縦方向に延伸する場合はロール間の速度差による延伸をすることができ、横方向に延伸する場合はテンターを用いることができる。テンターのレール開始角を通常10度以内にすることにより、横方向延伸時に生じるボーイング(Bowing)現象を抑制し光学軸の角度を規則的に制御する。横方向延伸を多段階にわたって行うことにより、同様のボーイング抑制効果を得ることもできる。上記延伸する段階は、縦方向(MD)に2倍、横方向(TD)に3倍2軸延伸して行われることが好ましい。場合によって、改良剤を添加して製造することもできる。
【0068】
上記延伸は、上記共重合体樹脂のガラス転移温度をTgとするとき、(Tg−20℃)〜(Tg+30℃)の温度で行うことができる。上記ガラス転移温度とは、共重合体樹脂の貯蔵弾性率が低下し始め、これにより、損失弾性率が貯蔵弾性率より大きくなる温度から、高分子鎖の配向が緩和されて消失される温度までの領域を指すものである。ガラス転移温度は、示差走査型熱量計(DSC)で測定されることができる。上記延伸工程時の温度はフィルムのガラス転移温度であることがより好ましい。
【0069】
上記のように製造された光学フィルムは、下記数学式1で表示される面方向位相差値及び下記数学式2で表示される厚さ方向位相差値が−5〜5nmであることが好ましい。
【0070】
[数学式1]
R
in=(n
x−n
y)×d
【0071】
[数学式2]
R
th=(n
z−n
y)×d
【0072】
上記数学式1及び数学式2のうち、n
xはフィルムの面方向において屈折率が最も大きい方向の屈折率であり、n
yはフィルムの面方向においてn
x方向の垂直方向の屈折率であり、n
zは厚さ方向の屈折率であり、dはフィルムの厚さである。
【0073】
また、上記のように製造された光学フィルムの厚さは20〜200μm、好ましくは40〜120μmであり、透明度(ヘイズ)は0.1〜1%であり、透過度は90%以上であることが好ましい。
【0074】
一方、上記光学フィルムは、熱膨張係数(CTE)が70ppm/℃以下であることが好ましく、70ppm/℃を超える場合は偏光板の張り合わせの際にカール(curl)が発生する可能性があるという問題がある。
【0075】
フィルムの厚さ、透明度及び透過度が上述した範囲のとき、本発明による光学フィルムが偏光子の保護フィルムとして用いられると、画像品質が低下しない。
【実施例】
【0076】
以下では、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。しかしながら、以下の実施例は本発明の例示のためのものであり、下記実施例によって本発明の範囲が限定されるものではない。
【0077】
[実施例1]
メチルメタクリレート(MMA)85重量部、ベンジルメタクリレート(BzMA)5重量部、メタクリル酸(MAA)10重量部に対して5%ポリビニルアルコール水溶液0.05重量部、水200重量部、開始剤であるt‐ヘキシルペルオキシ‐2‐エチルヘキサノエート(t‐Hexyl peroxy‐2‐ethylhexanoate)0.08重量部、t‐ドデシルメルカプタン0.2重量部、NaCl0.1重量部を混合した混合物を用意した。
【0078】
用意された混合物を初期反応温度80℃で2時間1次懸濁重合した後、95℃まで昇温して1時間2次重合を進行した後、洗浄、乾燥を経てMMA‐BzMA‐MAAビードを製造した。
【0079】
得られたビードを270℃の同方向二軸押出器により2回再押出してペレット状の樹脂を製造し、この際の真空度(Torr)は20とした。最終樹脂の組成を下記表1に示し、最終樹脂の物性を下記表3に示した。
【0080】
製造されたペレットを乾燥させた後、T‐ダイを含む押出器を用いて厚さ180μmの押出フィルムを製造した。製造されたフィルムをMD方向に2倍、TD方向に3倍2軸延伸して60μmのフィルムを製造し、TAC、PVAを接着して偏光板を製造し、このように製造されたフィルムの物性を下記表5に示した。
【0081】
[実施例2]
押出回数を3回としたことを除き、実施例1と同じ工程により樹脂を製造し、この際の最終樹脂の組成を下記表1に示し、最終樹脂の物性を下記表3に示し、フィルムの物性を下記表5に示した。
【0082】
[実施例3]
メチルメタクリレート(MMA)82重量部、ベンジルメタクリレート(BzMA)10重量部、メタクリル酸(MAA)8重量部を用いたことを除き、実施例1と同じ工程により樹脂を製造し、この際の最終樹脂の組成を下記表1に示し、最終樹脂の物性を下記表3に示し、フィルムの物性を下記表5に示した。
【0083】
[実施例4]
メチルメタクリレート(MMA)82重量部、ベンジルメタクリレート(BzMA)10重量部、メタクリル酸(MAA)8重量部を用い、押出回数を3回としたことを除き、実施例1と同じ工程により樹脂を製造し、この際の最終樹脂の組成を下記表1に示し、最終樹脂の物性を下記表3に示し、フィルムの物性を下記表5に示した。
【0084】
[実施例5]
メチルメタクリレート(MMA)77重量部、ベンジルメタクリレート(BzMA)8重量部、メタクリル酸(MAA)15重量部を用い、反応温度においてはそれぞれ初期反応温度90℃で1次重合し、昇温しない同一温度90℃で2次重合したことを除き、実施例1と同じ工程により樹脂を製造し、この際の最終樹脂の組成を下記表1に示し、最終樹脂の物性を下記表3に示し、フィルムの物性を下記表5に示した。
【0085】
[実施例6]
メチルメタクリレート(MMA)82重量部及びベンジルメタクリレート(BzMA)8重量部を用いたことを除き、実施例1と同じ工程により樹脂を製造し、この際の最終樹脂の組成を下記表1に示し、最終樹脂の物性を下記表3に示し、フィルムの物性を下記表5に示した。
【0086】
[実施例7]
メチルメタクリレート(MMA)78重量部、ベンジルメタクリレート(BzMA)10重量部、メタクリル酸(MAA)12重量部を用い、初期反応温度90℃で1次重合したことを除き、実施例1と同じ工程により樹脂を製造し、この際の最終樹脂の組成を下記表1に示し、最終樹脂の物性を下記表3に示し、フィルムの物性を下記表5に示した。
【0087】
[比較例1]
メチルメタクリレート(MMA)90重量部、ベンジルメタクリレート(BzMA)0重量部及びメタクリル酸(MAA)10重量部を用いたことを除き、実施例1と同じ工程により樹脂を製造し、この際の最終樹脂の組成を下記表2に示し、最終樹脂の物性を下記表4に示し、フィルムの物性を下記表6に示した。
【0088】
[比較例2]
押出段階を行わないことを除き、実施例1と同じ工程により樹脂を製造し、この際の最終樹脂の組成を下記表2に示し、最終樹脂の物性を下記表4に示し、フィルムの物性を下記表6に示した。
【0089】
[比較例3]
押出温度を200℃とし、3回押出したことを除き、実施例1と同じ工程により樹脂を製造し、この際の最終樹脂の組成を下記表2に示し、最終樹脂の物性を下記表4に示し、フィルムの物性を下記表6に示した。
【0090】
[比較例4]
押出温度を250℃とし、1回押出したことを除き、実施例1と同じ工程により樹脂を製造し、この際の最終樹脂の組成を下記表2に示し、最終樹脂の物性を下記表4に示し、フィルムの物性を下記表6に示した。
【0091】
[比較例5]
メチルメタクリレート(MMA)78重量部、ベンジルメタクリレート(BzMA)10重量部、メタクリル酸(MAA)12重量部を用い、反応温度においてはそれぞれ初期反応温度90℃で1次重合し、昇温しない同一温度90℃で2次重合し、押出段階を行わないことを除き、実施例1と同じ工程により樹脂を製造し、この際の最終樹脂の組成を下記表2に示し、最終樹脂の物性を下記表4に示し、フィルムの物性を下記表6に示した。
【0092】
[比較例6]
メチルメタクリレート(MMA)90重量部、ベンジルメタクリレート(BzMA)10重量部、メタクリル酸(MAA)0重量部を用い、反応温度においてはそれぞれ初期反応温度90℃で1次重合し、95℃で2次重合し、押出段階を行わないことを除き、実施例1と同じ工程により樹脂を製造し、この際の最終樹脂の組成を下記表2に示し、最終樹脂の物性を下記表4に示し、フィルムの物性を下記表6に示した。
【0093】
[実験例1:最終樹脂の物性の評価]
本発明において、最終樹脂の組成及び物性評価方法は、下記の通りである。
【0094】
1.重量平均分子量(Mw):製造された樹脂をテトラヒドロフランに溶かしてゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した。
【0095】
2.Tg(ガラス転移温度):Perkin Elmer社のPyris 6 DSCを用いて測定した。
【0096】
3.ヘイズ(Haze)及び光線透過率:ASTM 1003方法により測定した。
【0097】
4.最終樹脂の組成:C
13‐NMRを用いて測定した。
【0098】
【表1】
*BzMA:ベンジルメタクリレート、MMA:メチルメタクリレート、MAA:メタクリル酸、G/A:グルタル酸無水物
【0099】
【表2】
【0100】
【表3】
【0101】
【表4】
【0102】
[実験例2:フィルムの物性の評価]
本発明において、フィルムの物性評価方法は、下記の通りである。
【0103】
1.位相差値(R
in、R
th):Ellipso Tech社のElli‐SEを用いて測定した。
【0104】
2.靭性(toughness):60μmのフィルムを10回手で曲げて切断される状態を測定した。(◎:一回も切断されず、○:1〜3回切断、×:5回以上切断)
【0105】
3.CTE(熱膨張係数):Perkin‐Elmer TMAを用いて測定した。
【0106】
【表5】
【0107】
【表6】
【0108】
上記のように、本発明による単量体含量及び工程を用いてアクリル系共重合体樹脂及びフィルムを製造する場合、熱膨張係数が顕著に減少することが確認できる。比較例1の場合、熱膨張係数が減少するものの、偏光板保護フィルムとして用いられる位相差の範囲を外れる結果をもたらす。
【0109】
即ち、本発明によれば、本発明の特定な組成及び含量範囲内の単量体を用いて重合した後に熱処理工程により位相差のような偏光板保護フィルムの基本条件を満たす条件下で熱膨張係数を低くすることができる。