特許第5797147号(P5797147)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5797147芳香族ジヒドロキシ化合物、ビニルベンジルエーテル系化合物、及びこれを含有する硬化性組成物
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  • 特許5797147-芳香族ジヒドロキシ化合物、ビニルベンジルエーテル系化合物、及びこれを含有する硬化性組成物 図000013
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5797147
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】芳香族ジヒドロキシ化合物、ビニルベンジルエーテル系化合物、及びこれを含有する硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 12/34 20060101AFI20151001BHJP
   C07C 43/295 20060101ALI20151001BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20151001BHJP
【FI】
   C08F12/34
   C07C43/295 C
   B32B15/08 Z
【請求項の数】9
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2012-81978(P2012-81978)
(22)【出願日】2012年3月30日
(65)【公開番号】特開2013-209571(P2013-209571A)
(43)【公開日】2013年10月10日
【審査請求日】2014年9月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】新日鉄住金化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132230
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100082739
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 勝夫
(74)【代理人】
【識別番号】100087343
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 智廣
(74)【代理人】
【識別番号】100088203
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 英一
(72)【発明者】
【氏名】川辺 正直
【審査官】 繁田 えい子
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−068537(JP,A)
【文献】 米国特許第04707558(US,A)
【文献】 特開2011−084697(JP,A)
【文献】 特開2004−323730(JP,A)
【文献】 特開2005−060635(JP,A)
【文献】 特開昭63−210111(JP,A)
【文献】 特開平02−134340(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC C08L 1/00 − 101/14
C08K 3/00 − 13/08
C08C 19/00 − 19/44
C08F 6/00 − 246/00
C08F 301/00
C08G 65/00 − 67/04
B32B 1/00 − 43/00
DB名 CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されることを特徴とする芳香族ジヒドロキシ化合物。
【化1】
(式(1)中、Ar1は炭素数6〜50の芳香族炭化水素基を表し、nは1〜10の数を表し、Ar2は下記式(2)で示される2価の基を表わす。)
【化2】
(式中、p、qは各々0〜2の整数を表す。)
【請求項2】
下記式(3)で表されることを特徴とするジビニルベンジルエーテル化合物。
【化3】
(式中、Ar1は炭素数6〜50の芳香族炭化水素基を表し、nは1〜10の数を表し、Ar2は下記式(2)で示される2価の基を表わす。)
【化4】
(式中、p、qは各々0〜2の整数を表す。)
【請求項3】
請求項2に記載のジビニルベンジルエーテル化合物と、ラジカル重合開始剤とを含有することを特徴とする硬化性組成物。
【請求項4】
請求項3に記載の硬化性組成物を硬化してなる硬化物。
【請求項5】
請求項3に記載の硬化性組成物をフィルム状に成形してなるフィルム。
【請求項6】
請求項3に記載の硬化性組成物と基材からなる硬化性複合材料であって、基材を5〜90重量%の割合で含有することを特徴とする硬化性複合材料。
【請求項7】
請求項6に記載の硬化性複合材料を硬化して得られたことを特徴とする硬化複合材料。
【請求項8】
請求項6に記載の硬化複合材料の層と金属箔層とを有することを特徴とする積層体。
【請求項9】
請求項3に記載の硬化性組成物から形成された膜を金属箔の片面に有することを特徴とする樹脂付き金属箔。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規な芳香族ジヒドロキシ化合物、ジビニルベンジルエーテル化合物、および該化合物を含有する硬化性組成物に関するものであり、さらに詳しくは、特定の芳香族ジヒドロキシ化合物より誘導され、吸湿後の誘電正接特性と耐熱性に優れるジビニルベンジルエーテル化合物、および該化合物を含有する硬化性組成物に関する。並びに、該化合物を含有する硬化性組成物からなるフィルム、及びこれを硬化して得られる硬化体に関する。更に本発明は、該樹脂組成物と基材からなる硬化性複合材料、その硬化体、硬化体と金属箔からなる積層体、及び樹脂付き銅箔に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の情報通信量の増加にともない高周波数帯域での情報通信が盛んに行われるようになり、より優れた電気特性、なかでも高周波数帯域での伝送損失を低減させるため、低誘電率と低誘電正接を有し、特に吸水後の誘電特性変化の小さい電気絶縁材料が求められている。さらにそれら電気絶縁材料が使われているプリント基板あるいは電子部品は実装時に高温のハンダリフローに曝されるために耐熱性の高い、すなわち高いガラス転移温度を示す材料が望まれている。特に最近は、環境問題から融点の高い鉛フリーのハンダが使われるために、より耐熱性の高い電気絶縁材料の要求が高まってきている。これらの要求に対し、従来より種々の化学構造を持つビニルベンジルエーテル化合物を使用した硬化樹脂が提案されている。
【0003】
このような硬化樹脂としては、例えば、ビスフェノールのジビニルベンジルエーテル、あるいはノボラックのポリビニルベンジルエーテルなどの硬化樹脂が提案されている(特許文献1、特許文献2)。しかし、これらのビニルベンジルエーテルは、吸湿に対する誘電特性の変化が必ずしも小さい硬化樹脂を与えることができず、得られる硬化樹脂は高周波数帯域で安定して使用するには問題があり、さらにビスフェノールのジビニルベンジルエーテルは耐熱性においても十分に高いとはいえないものであった。
【0004】
これら特性を向上させたビニルベンジルエーテルとして、特定構造のポリビニルベンジルエーテルが幾つか提案され、吸湿時の誘電正接を抑える試みや、耐熱性を向上させる試みがなされているが、特性の向上は未だ十分とは言えず、さらなる特性改善が望まれていた(特許文献3、特許文献4)。
【0005】
このように、従来のジビニルベンジルエーテルを含めポリビニルベンジルエーテル化合物は電気絶縁材料用途、特に高周波数対応の電気絶縁材料用途として必要な、吸湿後の低い誘電正接と、鉛フリーのハンダ加工に耐えうる耐熱性とを兼備する硬化物を与えるものではなかった。
【0006】
従来のジビニルベンジルエーテルを含めポリビニルベンジルエーテル化合物の特性を改良したものが、特許文献5に開示され、その吸湿後の誘電特性や耐熱性を向上させる試みがなされているが、特性の向上は十分なものとは言えず、さらなる特性の改善が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭63−68537号公報
【特許文献2】特開昭64−65110号公報
【特許文献3】特表平1−503238号公報
【特許文献4】特開平9−31006号公報
【特許文献5】特開2004−323730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、高温高湿環境下での吸湿後も高度の誘電特性(低誘電率・低誘電正接)を有し、かつ高いガラス転移温度と難燃性を有する硬化物を与えるジビニルベンジルエーテル化合物、及び硬化性組成物を提供することにあり、電気・電子産業、宇宙・航空機産業等の分野において誘電材料、絶縁材料、耐熱材料に用いることができる樹脂組成物、硬化物又はこれを含む材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、特定の芳香族ビスクロロメチル化合物と大きな平面構造と屈曲部位を持つビスフェノールフルオレン系化合物とを反応させてなる下記一般式(1)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物を出発物質として、これに架橋剤として例えば、芳香族ビスハロメチル化合物とを反応させてなる下記式(3)で表されるジビニルベンジルエーテル化合物が上記課題を解決するために有効であることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち本発明は、下記式(1)で表されることを特徴とする芳香族ジヒドロキシ化合物である。
【化1】
【化2】
(式(1)中、Ar1は炭素数6〜50の芳香族炭化水素基を表し、nは1〜10の数を表し、Ar2は式(2)で示される2価の基を表わす。式(2)中、p、qは各々0〜2の整数を表す。)
【0011】
さらに、本発明は、下記式(3)で表されることを特徴とするジビニルベンジルエーテル化合物である。
【化3】
(式中、Ar1、n、Ar2は、式(1)と同意である。)
【0012】
また、本発明は、上記のジビニルベンジルエーテル化合物と、ラジカル重合開始剤とを含有することを特徴とする硬化性組成物であり、また、この硬化性組成物を硬化してなる硬化物である。
【0013】
また、本発明は、上記の硬化性組成物をフィルム状に成形してなるフィルムである。更に、本発明は、上記の硬化性組成物と基材からなる硬化性複合材料であって、基材を5〜90重量%の割合で含有することを特徴とする硬化性複合材料であり、またこの硬化性複合材料を硬化して得られたことを特徴とする硬化複合材料である。更に、この硬化複合材料の層と金属箔層とを有することを特徴とする積層体である。また、本発明は、上記の硬化性組成物から形成された膜を金属箔の片面に有することを特徴とする樹脂付き金属箔である。
【発明の効果】
【0014】
本発明においては、特定の芳香族架橋剤、例えばビスクロロメチル化合物と大きな平面構造と屈曲部位を持つビスフェノールフルオレン系化合物とを反応させて芳香族ジヒドロキシ化合物を得て、これにビニルベンジル基を結合させて得られるジビニルベンジルエーテル化合物を硬化性化合物として使用することにより、分子内には、分子サイズの大きな自由体積を有し、極性基が極めて少ないことから、高度の低誘電率特性の硬化物が得られ、高度の難燃性・耐熱性と吸水後の誘電率及び誘電正接の変化の少ない、環境信頼性の高い誘電特性とを同時に実現できる。
【0015】
本発明のジビニルベンジルエーテル化合物を含有する硬化性組成物は、硬化後において優れた耐薬品性、誘電特性、低吸水性、耐熱性、難燃性、機械特性を示し、電気産業、宇宙・航空機産業等の分野において誘電材料、絶縁材料、耐熱材料、構造材料等に用いることができる。特に片面、両面、多層プリント基板、フレキシブルプリント基板、ビルドアップ基板等として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施例1で得た芳香族ジヒドロキシ化合物と、原料の9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンのGPCチャート
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を更に説明する。
本発明の式(1)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物は、その製法は特に限定されるものではないが、特定の芳香族架橋剤と特定のビスフェノールフルオレン系化合物とを反応させて合成することが望ましい。芳香族架橋剤としては、-CH2-Ar1-CH2-で表わされる架橋基を与える化合物が使用でき、ビスハロメチル化合物、ビスヒドロキシメチル化合物等があるが、ビスハロメチル化合物が好ましい。以下、芳香族架橋剤をビスハロメチル化合物で代表して説明する。
なお、本明細書中で、同一の記号は特に断りがない限り、同一の意味を有する。
【0018】
式(1)中のAr1で表される構造単位は炭素数6〜50の芳香族炭化水素からなる芳香族ビスハロメチル化合物より誘導される構造単位である。Ar1で表される構造単位を与える炭素数6〜50の芳香族炭化水素からなる芳香族ビスハロメチル化合物の内で好適なものとしては、例えば下記一般式(4)で表される芳香族ビスハロメチル化合物を挙げることができるが、これらに限定される訳ではない。
【0019】
【化4】
(式(4)中、Ar1は、式(1)と同意である。)
【0020】
Ar1で表される構造単位は炭素数6〜50の芳香族炭化水素からなる芳香族ビスクロロメチル化合物等の芳香族架橋剤から誘導される。Ar1の具体例としては、−Ph−、−Ph−Ph−、−Np−、−Np−CH2−Np−、−Ph−CH2−Ph−、−Ph−C(CH32−Ph−、−Ph−CH(CH3)−Ph−、−Ph−CH(C65)−Ph−、−Ph−Flu−Ph−、及び−Flu(CH32−からなる群れから選ばれる炭素数6〜50の芳香族炭化水素基であることが好ましい。ここで、Phはフェニレン基(-C64-)を表し、Npはナフチレン基(-C106−)を表し、Fluはフルオレニレン基を表し、Xは塩素、臭素、及びヨウ素から選ばれるハロゲンを表す。
【0021】
式(1)中、nは1〜10の数を表すが、分子量分布を有するときは、平均値(数平均)である。
【0022】
上記一般式(4)で表される芳香族ビスハロメチル化合物をさらに具体的に例示すると、p−ビスクロロメチルベンゼン、m−ビスクロロメチルベンゼン、p−ビスブロモメチルベンゼン、m−ビスブロモメチルベンゼン、4,4’−ビスクロロメチルビフェニル、4,3’−ビスクロロメチルビフェニル、3,3’−ビスクロロメチルビフェニル、2,2’−ビスクロロメチルビフェニル、4,4’−ビスブロモメチルビフェニル、4,3’−ビスブロモメチルビフェニル、3,3’−ビスブロモメチルビフェニル、2,2’−ビスブロモメチルビフェニル、1,4−ビスクロロメチルナフタレン、1,5−ビスクロロメチルナフタレン、1,6−ビスクロロメチルナフタレン、2,3−ビスクロロメチルナフタレン、2,4−ビスクロロメチルナフタレン、2,5−ビスクロロメチルナフタレン、2,6−ビスクロロメチルナフタレン、2,7−ビスクロロメチルナフタレン、1,4−ビスブロモメチルナフタレン、1,5−ビスブロモメチルナフタレン、1,6−ビスブロモメチルナフタレン、2,3−ビスブロモメチルナフタレン、2,4−ビスブロモメチルナフタレン、2,5−ビスブロモメチルナフタレン、2,6−ビスブロモメチルナフタレン、2,7−ビスブロモメチルナフタレン、9,9−ビスクロロメチルフルオレン、9,9−ビスブロモメチルフルオレン、2,7−ビスクロロメチルフルオレン、2,7−ビスクロロメチル−9,9−ジメチルフルオレン、2,7−ビスクロロメチル−9,9−ジエチルフルオレン、2,7−ビスクロロメチル−9,9−ジ−n−プロピルフルオレン、2,7−ビスクロロメチル−9,9−ジイソプロピルフルオレン、2,7−ビスクロロメチル−9,9−ジ−n−ブチルフルオレン、2,7−ビスクロロメチル−9,9−ジイソブチルフルオレン、2,7−ビスクロロメチル−9,9−ジ−sec−ブチルフルオレン、2,7−ビスクロロメチル−9,9−ジ−tert−ブチルフルオレン、2,7−ビスブロモメチルフルオレン、2,7−ビスブロモメチル−9,9−ジメチルフルオレン、2,7−ビスブロモメチル−9,9−ジエチルフルオレン、2,7−ビスブロモメチル−9,9−ジ−n−プロピルフルオレン、2,7−ビスブロモメチル−9,9−ジイソプロピルフルオレン、2,7−ビスブロモメチル−9,9−ジ−n−ブチルフルオレン、2,7−ビスブロモメチル−9,9−ジイソブチルフルオレン、2,7−ビスブロモメチル−9,9−ジ−sec−ブチルフルオレン、2,7−ビスブロモメチル−9,9−ジ−tert−ブチルフルオレン、2,7−ビスヨードメチルフルオレン、2,7−ビスヨードメチル−9,9−ジメチルフルオレン、2,7−ビスヨードメチル−9,9−ジエチルフルオレン、2,7−ビスヨードメチル−9,9−ジ−n−プロピルフルオレン、2,7−ビスヨードメチル−9,9−ジイソプロピルフルオレン、2,7−ビスヨードメチル−9,9−ジ−n−ブチルフルオレン、2,7−ビスヨードメチル−9,9−ジイソブチルフルオレン、2,7−ビスヨードメチル−9,9−ジ−sec−ブチルフルオレン、2,7−ビスヨードメチル−9,9−ジ−tert−ブチルフルオレンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0023】
そして、本発明の芳香族ジヒドロキシ化合物を構成するAr2で表される構造単位は、上記式(2)で表される2価の基(ビスフェノールフルオレン基ともいう)を有する化合物(ビスフェノールフルオレン系化合物ともいう)より誘導される。式(2)中、p、qは各々0〜2の整数を表す。
【0024】
上記ビスフェノールフルオレン系化合物としては、下記一般式(5)で表される化合物が好適であるが、これらに限定される訳ではない。
【化5】
(式(5)中、p、qは式(2)と同じ意味を有する。)
【0025】
上記一般式(5)で表されるビスフェノールフルオレン系化合物をさらに具体的に例示すると、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン;9,9−ビス(4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−ヒドロキシ−6−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(2−ヒドロキシ−4−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(アルキルヒドロキシフェニル)フルオレン;9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−2,6−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(ジアルキルヒドロキシフェニル)フルオレン;9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−シクロヘキシルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(シクロアルキルヒドロキシフェニル)フルオレン;9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(アリールヒドロキシフェニル)フルオレンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0026】
本発明の式(1)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物は、好適には特定の芳香族ビスハロメチル化合物と特定のビスフェノールフルオレン系化合物とを反応させることにより合成できる(工程A)。
【0027】
この工程Aでは、芳香族ビスハロメチル化合物と前記一般式(5)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物との配合割合は、当量比(ハロメチル:OHのモル比)で20:100〜99:100であることが好ましい。当量比が該範囲内であると、仕込んだ芳香族ビスハロメチル化合物の全量に近い量が前記一般式(5)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物と反応し、両末端に芳香族ジヒドロキシ化合物中の水酸基が残ったオリゴマーまたはポリマーとなる。そして、上記当量比を制御することでnの数を制御することができる。このnの値は、1〜10であり更に好ましくは、1〜8、特に好ましくは1〜5である。なお、nは通常、平均値である。本明細書において、平均値の場合は数平均を意味する。
【0028】
この工程Aでは、芳香族ビスハロメチル化合物と前記一般式(5)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物とを反応させるが、この反応を促進させるため、アルカリ金属水酸化物の存在下で反応させることがよい。
【0029】
次に、本発明の式(3)で表されるジビニルベンジルエーテル化合物は、その製法は特に限定されるものではないが、式(1)で表される本発明の芳香族ジヒドロキシ化合物とビニル芳香族ハロメチル化合物とから合成することが望ましい。
【0030】
本発明のジビニルベンジルエーテル化合物の製造において、工程Aで得られた式(1)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物とビニルベンジル基部分を与える化合物を反応させるのが工業的に有利である。この反応工程を工程Bという。なお、式(1)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物は、本発明のジビニルベンジルエーテル化合物の中間体として有用であるので、中間体ともいう。
【0031】
ビニルベンジル基部分を与える化合物としては、ビニルベンジルハライドが好適である。好ましいビニルベンジルハライドとしては、p−ビニルベンジルクロライド、m−ビニルベンジルクロライド、p−ビニルベンジルクロライドとm−ビニルベンジルクロライドとの混合体、p−ビニルベンジルブロマイド、m−ビニルベンジルブロマイド、p−ビニルベンジルブロマイドとm−ビニルベンジルブロマイドとの混合体等を挙げることができる。中でも、p−ビニルベンジルクロライドとm−ビニルベンジルクロライドとの混合体を使用すると、非晶性のジビニルベンジルエーテル化合物が得られ、作業性が良好となるため好ましい。
【0032】
工程Bでの上記中間体の芳香族ジヒドロキシ化合物とビニルベンジルハライドとの反応は、特に制限されるものではないが、例えば芳香族ジヒドロキシ化合物とビニルベンジルハライドを極性溶剤中でアルカリ金属水酸化物を脱ハロゲン化水素剤として用い反応させる方法が挙げられる。
【0033】
芳香族ジヒドロキシ化合物とビニルベンジルハライドとの配合割合は、当量比(OH:ハロメチルのモル比)で100:95〜100:120であることが好ましい。当量比が該範囲内であると、仕込んだ芳香族ジヒドロキシ化合物の全量に近い量がビニルベンジルハライドと反応し、芳香族ジヒドロキシ化合物中の水酸基がビニルベンジルエーテル化され、反応物中にほとんど残存しなくなることにより、後で行う硬化反応が十分に進行し、また、良好な誘電特性を示すこととなるので好ましい。
【0034】
工程Bの反応を行う際には、極性溶剤を使用することがよく、好ましい極性溶剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系溶剤、ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、1,3−ジメトキシプロパン、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル系溶剤類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、ジメチルスルホキシド、アセトニトリルあるいはその混合溶剤が挙げられる。
【0035】
工程Bの反応を行う際には、アルカリ金属水酸化物を反応促進のために使用することがよく、好ましいアルカリ金属水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、およびこれらの混合物が挙げられる。アルカリ金属水酸化物の配合割合は、芳香族ヒドロキシ化合物のヒドロキシ基に対して当量比で1.1〜2.0倍の範囲であることが好ましい。
【0036】
工程Bの反応温度および反応時間は、反応に応じ適宜選択すればよいが、それぞれ30〜100℃、0.5〜20時間の範囲であれば十分に反応が進行する。
【0037】
別の反応方法としては、相関移動触媒、例えば第4級アンモニウム塩の存在下、上記芳香族ジヒドロキシ化合物とビニルベンジルハライドとを、水と有機溶剤の混合液中でアルカリ金属水酸化物を脱水素化ハライド剤として用いて反応させることにより、本発明のジビニルベンジルエーテル化合物が得られる。
【0038】
上記反応により式(3)で表されるジビニルベンジルエーテル化合物を得ることができる。この反応により得られたジビニルベンジルエーテル化合物は、さらに再沈精製あるいは再結晶により精製することにより不純物の含有量を低減できる。
【0039】
次に、本発明の硬化性組成物について説明する。
本発明の硬化性組成物は、ジビニルベンジルエーテル化合物とラジカル重合開始剤(ラジカル重合触媒ともいう。)とを含有する。ラジカル重合開始剤としては、例えば、本発明の樹脂組成物は後述するように加熱等の手段により架橋反応を起こして硬化するが、その際の反応温度を低くしたり、不飽和基の架橋反応を促進する目的でラジカル重合開始剤を含有させて使用してもよい。この目的で用いられるラジカル重合開始剤の量は(A)成分と(B)成分の和を基準として0.1〜10重量%、好ましくは0.1〜8重量%である。ラジカル重合開始剤はラジカル重合触媒であるので、以下ラジカル重合開始剤で代表する。
【0040】
ラジカル重合開始剤の代表的な例を挙げると、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、ジ(トリメチルシリル)パーオキサイド、トリメチルシリルトリフェニルシリルパーオキサイド等の過酸化物があるがこれらに限定されない。また過酸化物ではないが、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンもラジカル重合開始剤(又は重合触媒)として使用できる。しかし、本樹脂組成物の硬化に用いられる触媒、ラジカル重合開始剤はこれらの例に限定されない。
【0041】
ラジカル重合開始剤の配合量は、ジビニルベンジルエーテル化合物100重量部に対し、0.01〜10重量部の範囲であれば、硬化反応を阻害することなく良好に反応が進行する。
【0042】
また、ジビニルベンジルエーテル含有硬化性組成物に、必要に応じて、本発明のジビニルベンジルエーテル化合物と共重合可能な他の重合性モノマーを配合して硬化させてもよい。
【0043】
共重合可能な重合性モノマーとしては、スチレン、スチレンダイマー、アルファメチルスチレン、アルファメチルスチレンダイマー、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、クロロスチレン、ジブロモスチレン、ビニルナフタレン、ビニルビフェニル、アセナフチレン、ジビニルベンジルエーテル、アリルフェニルエーテル等を挙げることができる。
【0044】
また、本発明のジビニルベンジルエーテル化合物を含む硬化性樹脂組成物には、既知の熱硬化性樹脂、例えば、ビニルエステル樹脂、ポリビニルベンジル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、マレイミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリシアナート樹脂、フェノール樹脂等や、既知の熱可塑性樹脂、例えば、ポリスチレン、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルホン、PPS樹脂、ポリシクロペンタジエン樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂等や、あるいは、既知の熱可塑性エラストマー、例えば、スチレン−エチレン−プロピレン共重合体、スチレン−エチレン−ブチレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、水添スチレン−ブタジエン共重合体、水添スチレン−イソプレン共重合体等やあるいはゴム類、例えばポリブタジェン、ポリイソプレンと配合することも可能である。
【0045】
本発明のジビニルベンジルエーテル化合物を含む硬化性樹脂組成物には、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化珪素、窒化アルミ等の無機質充填材、デカブロモジフェニルエタン、臭素化ポリスチレン等の難燃性付与剤を併用することにより、誘電特性や難燃性あるいは耐熱性が要求される電気又は電子部品材料、とりわけ半導体封止材料や回路基板用ワニスとして特に有用に使用できる。
【0046】
前記回路基板材料用ワニスは、本発明のジビニルベンジルエーテル化合物を含む硬化性樹脂組成物をトルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン等の溶剤に溶解させることにより製造することができる。なお、前記回路基板材料は、具体的には、プリント配線基板、プリント回路板、フレキシブルプリント配線板、ビルドアップ配線板等が挙げられる。
【0047】
本発明のジビニルベンジルエーテル化合物を含む硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物は成型物、積層物、注型物、接着剤、塗膜、フィルムとして使用できる。例えば、半導体封止材料の硬化物は注型物又は成型物であり、かかる用途の硬化物を得る方法としては、該化合物を注型、或いはトランスファ−成形機、射出成形機などを用いて成形し、さらに80〜230℃で0.5〜10時間に加熱することにより硬化物を得ることができる。また、回路基板用ワニスの硬化物は積層物であり、この硬化物を得る方法としては、回路基板用ワニスをガラス繊維、カーボン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アルミナ繊維、紙などの基材に含浸させ加熱乾燥してプリプレグを得て、それを単独同士で、あるいは銅箔等の金属箔と積層し熱プレス成形して得ることができる。
【0048】
また、チタン酸バリウム等の無機の高誘電体粉末、あるいはフェライト等の無機磁性体を配合することにより電子部品用材料、特に高周波電子部品材料として有用である。
【0049】
また、本発明の硬化性樹脂組成物は、後述する硬化複合材料と同様、金属箔(金属板を含む意味である。以下、同じ。)と張り合わせて用いることができる。
【0050】
次に、本発明の硬化性樹脂組成物の硬化性複合材料とその硬化体について説明する。本発明の硬化性樹脂組成物による硬化性複合材料には、機械的強度を高め、寸法安定性を増大させるために基材を加える。
【0051】
このような基材としては、ロービングクロス、クロス、チョップドマット、サーフェシングマットなどの各種ガラス布、アスベスト布、金属繊維布及びその他合成若しくは天然の無機繊維布、全芳香族ポリアミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維、ポリベンゾザール繊維等の液晶繊維から得られる織布又は不織布、ポリビニルア ルコール繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維などの合成繊維から得られる織布又は不織布、綿布、麻布、フェルトなどの天然繊維布、カーボン繊維布、クラフト紙、コットン紙、紙ーガラス混繊紙などの天然セルロース系布などの布類、紙類等がそれぞれ単独で、あるいは2種以上併せて用いられる。
【0052】
基材の占める割合は、硬化性複合材料中に5〜90wt%、好ましくは10〜80wt%、更に好ましくは20〜70wt%であることがよい。基材が5wt%より少なくなると複合材料の硬化後の寸法安定性や強度が不十分であり、また基材が90wt%より多くなると複合材料の誘電特性が劣り好ましくない。
本発明の硬化性複合材料には、必要に応じて樹脂と基材の界面における接着性を改善する目的でカップリング剤を用いることができる。カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、ジルコアルミネートカップリング剤等一般のものが使用できる。
【0053】
本発明の硬化性複合材料を製造する方法としては、例えば、本発明の硬化性樹脂組成物と必要に応じて他の成分を前述の芳香族系、ケトン系等の溶媒若しくはその混合溶媒中に均一に溶解又は分散させ、基材に含浸させた後、乾燥する方法が挙げられる。含浸は浸漬(ディッピング)、塗布等によって行われる。含浸は必要に応じて複数回繰り返すことも可能であり、またこの際、組成や濃度の異なる複数の溶液を用いて含浸を繰り返し、最終的に希望とする樹脂組成及び樹脂量に調整することも可能である。
【0054】
本発明の硬化性複合材料を、加熱等の方法により硬化することによって硬化複合材料が得られる。その製造方法は特に限定されるものではなく、例えば硬化性複合材料を複数枚重ね合わせ、加熱加圧下に各層間を接着せしめると同時に熱硬化を行い、所望の厚みの硬化複合材料を得ることができる。また、一度接着硬化させた硬化複合材料と硬化性複合材料を組み合わせて新たな層構成の硬化複合材料を得ることも可能である。積層成形と硬化は、通常熱プレス等を用い同時に行われるが、両者をそれぞれ単独で行ってもよい。すなわち、あらかじめ積層成形して得た未硬化あるいは半硬化の複合材料を、熱処理又は別の方法で処理することによって硬化させることができる。
【0055】
成形及び硬化は、温度:80〜300℃、圧力:0.1〜1000kg/cm2、時間:1分〜10時間の範囲、より好ましくは、温度:150〜250℃、圧力1〜500kg/cm2、時間:1分〜5時間の範囲で行うことができる。
【0056】
本発明の積層体とは、本発明の硬化複合材料の層と金属箔の層より構成されるものである。ここで用いられる金属箔としては、例えば銅箔、アルミニウム箔等が挙げられる。その厚みは特に限定されないが、3〜200μm、より好ましくは3〜105μmの範囲である。
【0057】
本発明の積層体を製造する方法としては、例えば上で説明した本発明の硬化性樹脂組成物と基材から得た硬化性複合材料と、金属箔を目的に応じた層構成で積層し、加熱加圧下に各層間を接着せしめると同時に熱硬化させる方法を挙げることができる。本発明の硬化性樹脂組成物の積層体においては、硬化複合材料と金属箔が任意の層構成で積層される。金属箔は表層としても中間層としても用いることができる。上記の他、積層と硬化を複数回繰り返して多層化することも可能である。
【0058】
金属箔との接着には接着剤を用いることもできる。接着剤としては、エポキシ系、アクリル系、フェノール系、シアノアクリレート系等が挙げられるが、特にこれらに限定されない。上記の積層成形と硬化は、本発明の硬化複合材料の製造と同様の条件で行うことができる。
【0059】
本発明のフィルムとは、本発明の硬化性樹脂組成物をフィルム状に成形したものである。その厚みは特に限定されないが、3〜200μm、より好ましくは5〜105μmの範囲である。
本発明のフィルムを製造する方法としては特に限定されることはなく、例えば硬化性樹脂組成物と必要に応じて他の成分を芳香族系、ケトン系等の溶媒若しくはその混合溶媒中に均一に溶解又は分散させ、PETフィルムなどの樹脂フィルムに塗布した後乾燥する方法などが挙げられる。塗布は必要に応じて複数回繰り返すことも可能であり、またこの際組成や濃度の異なる複数の溶液を用いて塗布を繰り返し、最終的に希望とする樹脂組成及び樹脂量に調整することも可能である。
【0060】
本発明の樹脂付き金属箔とは本発明の硬化性樹脂組成物と金属箔より構成されるものである。ここで用いられる金属箔としては、例えば銅箔、アルミニウム箔等が挙げられる。その厚みは特に限定されないが、3〜200μm、より好ましくは5〜105μmの範囲である。
【0061】
本発明の樹脂付き金属箔を製造する方法としては特に限定されることはなく、例えば硬化性樹脂組成物と必要に応じて他の成分を芳香族系、ケトン系等の溶媒若しくはその混合溶媒中に均一に溶解又は分散させ、金属箔に塗布した後乾燥する方法が挙げられる。塗布は必要に応じて複数回繰り返すことも可能であり、またこの際、組成や濃度の異なる複数の溶液を用いて塗布を繰り返し、最終的に希望とする樹脂組成及び樹脂量に調整することも可能である。
【実施例】
【0062】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらにより制限されるものではない。なお、各例中の部はいずれも重量部である。また、実施例中の測定結果は以下に示す方法により試料調製及び測定を行ったものである。
【0063】
1)芳香族ジヒドロキシ化合物、及びジビニルベンジルエーテル化合物の分子量及び分子量分布
分子量及び分子量分布測定はGPC(東ソー製、HLC−8120GPC)を使用し、溶媒:テトラヒドロフラン(THF)、流量:1.0ml/min、カラム温度:40℃で行った。分子量は単分散ポリスチレンによる検量線を用い、ポリスチレン換算分子量として測定を行った。
2)芳香族ジヒドロキシ化合物、及びジビニルベンジルエーテル化合物の構造
日本電子製JNM−LA600型核磁気共鳴分光装置を用い、13C−NMR及び1H−NMR分析により決定した。溶媒としてクロロホルム−d1を使用した。NMR測定溶媒であるテトラクロロエタン−d2の共鳴線を内部標準として使用した。
【0064】
3)ガラス転移温度(Tg)及び軟化温度測定の試料調製及び測定
硬化性樹脂組成物溶液をガラス基板に乾燥後の厚さが、20μmになるように均一に塗布した後、ホットプレートを用いて、90℃で30分間加熱し、乾燥させた。得られたガラス基板上の樹脂膜はガラス基板と共に、TMA(熱機械分析装置)測定装置にセットし、窒素気流下、昇温速度10℃/分で220℃まで昇温し、更に、220℃で20分間加熱処理することにより、残存する溶媒を除去した。ガラス基板を室温まで放冷した後、TMA測定装置中の試料に分析用プローブを接触させ、窒素気流下、昇温速度10℃/分で30℃から360℃までスキャンさせることにより測定を行い、接線法により軟化温度を求めた。また、線膨張係数の変化する変曲点よりTgを求めた。
加熱プレス成形により得られた硬化物フィルムのTgの測定は動的粘弾性測定装置を使用し、昇温速度2℃/minで測定を行い、損失弾性率のピークより決定した。
4)引張り強度及び伸び率
硬化物フィルムの引張り強度及び伸び率は引張り試験装置を用いて測定を行った。伸び率は引張り試験のチャートから測定した。
5)銅箔引き剥し強さ
積層体から幅20mm、長さ100mmの試験片を切り出し、銅箔面に幅10mmの平行な切り込みを入れた後、面に対して180°の方向に50mm/分の速さで連続的に銅箔を引き剥し、その時の応力を引張り試験機にて測定し、その応力の最低値を示した(JIS C 6481に準拠)。
6)誘電率及び誘電正接
JIS C2565規格に準拠し、株式会社エーイーティー製、空洞共振器法誘電率測定装置により、絶乾後23℃、湿度50%の室内に24時間保管した後の硬化物フィルム、および85℃、相対湿度85%で2週間放置後の硬化物フィルムの2GHzでの誘電率および誘電正接を測定した。
7)成形性
黒化処理を行った銅張り積層板の上に、硬化性樹脂組成物の未硬化フィルムを積層し、真空ラミネーターを用いて、温度:110℃、プレス圧:0.1MPaで真空ラミネートを行い、黒化処理銅箔とフィルムの接着状態により評価を行った。評価は黒化処理銅箔とフィルムの接着状態が良好であったものを「○」、黒化処理銅箔とフィルムとが容易に剥離することができる接着状態のものを「×」として評価した。
【0065】
実施例1
反応容器に9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン231.27g(0.66モル)、4,4’−ビス(クロロメチル)ビフェニル75.3g(0.30モル)、及び、アセトン1200mlを加え攪拌しながら55℃に昇温した。次いで、55℃に保った反応容器にKOH−MeOH(KOH:1.32モル)を30分かけて滴下した。滴下終了後、さらに55℃で4h攪拌を継続した。4h後、室温まで冷却し、トルエン100gを加え、さらに10%HClを加えて中和した。その後、水相を分液することにより分離し、さらに水300mlで3回分液洗浄した。
【0066】
得られた有機相を蒸留することにより濃縮し、メタノールを加えて生成物を再沈殿した。
沈殿を濾過・乾燥し、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンと4,4’−ビス(クロロメチル)ビフェニルとの反応生成物である芳香族ジヒドロキシ化合物A(DBPFZ−DMBP)129.39gを得た。
【0067】
生成物の確認をゲル浸透クロマトグラフ(GPC)、赤外線スペクトル(IR)、1H核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR)で行ったところ、GPCより回収された反応生成物では、原料に由来するピークが消失し、高分子量側に新しいピークが生成していること、IRよりフェノール性水酸基が存在していること、1H−NMRで、4,4’−ビス(クロロメチル)ビフェニルのクロロメチル基に由来するプロトンの共鳴線が消失し、代わりに、5.02ppm付近にベンジルエーテル基に由来するプロトンの共鳴線を有することが確認され、芳香族ジヒドロキシ化合物(DBPFZ−DMBP)が得られていることを確認した。
DBPFZ−DMBP及び原料である9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンのGPCチャート(DBPFZ−DMBPは実線で示し、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンは点線で示す。)を図1に示す。
図1のDBPFZ−DMBPのGPC溶出曲線を見ると、原料である9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンのピークは消失し、高分子量側にシフトしているのがわかった。そして、n=1以上の成分のGPC純度は、下記の通りであった。
n=1成分:47.2%
n=2成分:27.1%
n=3成分:12.9%
n=4成分:5.8%
n=5以上の成分:3.3%
その他の成分(低分子量成分):3.7%
【0068】
合成例1
ビスフェノールフルオレンジビニルベンジルエーテル(FLBPLDVBE)の合成
攪拌機を備えた1L反応容器にビスフェノールフルオレン43.8g(0.25当量)、2,4−ジニトロフェノール(2,4−DNP)0.038g、テトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB)2.4g、m−クロロメチルスチレンとp−クロロメチルスチレンの混合物(重量比50:50)(セイミケミカル株式会社製「CMS−P」)42.7g(0.28当量)およびメチルエチルケトン200gを加え攪拌しながら75℃に昇温した。次いで、75℃に保った反応容器に48%−NaOHaqを20分かけて滴下した。滴下終了後、さらに75℃で4h攪拌を継続した。4h後、室温まで冷却し、トルエン100gを加え、さらに10%HClを加えて中和した。その後、水相を分液することにより分離し、さらに水300mlで3回分液洗浄した。
【0069】
得られた有機相を蒸留することにより濃縮し、メタノールを加えて生成物を再沈殿した。沈殿を濾過・乾燥しビスフェノールフルオレンジビニルベンジルエーテル(FLBPLDVBE)71.7gを得た。このジビニルベンジルエーテルは明確な融点を示さなかった。
【0070】
生成物の確認を赤外線スペクトル(IR)、13C核磁気共鳴スペクトル(13C−NMR)で行ったところ、IRよりフェノール性水酸基が存在しないこと、13C−NMRで138ppm付近にビニルベンジル基結合炭素を示すシグナルを有することが確認され、FLBPLDVBEが得られていることを確認した。
【0071】
実施例2
反応容器に9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンと4,4’−ビス(クロロメチル)ビフェニルとの反応生成物である芳香族ジヒドロキシ化合物(実施例1のDBPFZ−DMBP)13.186g(0.015モル)、m−クロロメチルスチレンとp−クロロメチルスチレンの混合物(重量比50:50)(セイミケミカル株式会社製「CMS−P」)6.7g(0.042モル)及び、アセトン300mlを加え攪拌しながら55℃に昇温した。次いで、55℃に保った反応容器にKOH−MeOH(KOH:0.048モル)を30分かけて滴下した。滴下終了後、さらに55℃で4h攪拌を継続した。4h後、室温まで冷却し、トルエン200gを加え、さらに10%HClを加えて中和した。その後、水相を分液することにより分離し、さらに水300mlで3回分液洗浄した。
【0072】
得られた有機相を蒸留することにより濃縮し、メタノールを加えて生成物を再沈殿した。
沈殿を濾過・乾燥し、DBPFZ−DMBPとクロロメチルスチレンとの反応生成物であるmp−DVB−DBPFZ−DMBP12.45gを得た。
【0073】
生成物の確認をゲル浸透クロマトグラフ(GPC)、赤外線スペクトル(IR)、1H核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR)で行ったところ、GPCより回収された反応生成物では、原料に由来するピークが消失し、高分子量側に新しいピークが生成していること、IRよりフェノール性水酸基が消失していること、1H−NMRで、クロロメチルスチレンに由来するプロトンの共鳴線が消失し、代わりに、5.02ppmと4.97ppm付近にベンジルエーテル基に由来するプロトンの共鳴線を有することが確認され、mp−DVB−DBPFZ−DMBPが得られていることを確認した。mp−DVB−DBPFZ−DMBPは、一般式(1)で表される化合物の両末端がビニルベンジルで置換された化合物であり、一般式(3)で表される化合物である。
【0074】
実施例3
実施例2で得られたmp−DVB−DBPFZ−DMBP 6gと熱可塑性エラストマーとして水添スチレンブタジエンブロック共重合体(旭化成工業(株)製、商品名:タフテックH1052)4gおよび重合開始剤として2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(日本油脂(株)製、商品名:パーヘキサ25B)0.05gをトルエン30gに溶解し硬化性組成物(ワニスA)を得た。
【0075】
調製したワニスAをPETフィルム上に塗布し80℃で溶媒除去し、乾燥後PETフィルム上から塗膜を剥がし取り、単離したキャストフィルムを、180℃、3MPaの条件で1時間真空加圧プレスを行い、熱硬化させ、得られた硬化物フィルムについて諸特性を測定した。また、厚み0.2mmのフィルムプレス硬化物を0.3cm×10cmに切り出して試験片を作成し、2.0GHzの誘電率と誘電正接を測定した。また、85℃、85%相対湿度の高温高湿室中に2週間放置後の誘電率と誘電正接を測定し放置前後の誘電率及び誘電正接の変化率を測定した。さらに、硬化物フィルムより、12.7mm×127mmの短冊試験片を切り出して、燃焼試験を行った。これら測定により得られた結果を表1に示した。
【0076】
比較例1
合成例2で得られたFLBPLDVBE 6gと熱可塑性エラストマーとして水添スチレンブタジエンブロック共重合体(旭化成工業(株)製、商品名:タフテックH1052)4gおよび重合開始剤として2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(日本油脂(株)製、商品名:パーヘキサ25B)0.05gをトルエン70gに溶解し硬化性組成物(ワニスB)を得た。
【0077】
調製したワニスBをPETフィルム上に塗布し80℃で溶媒除去し、乾燥後PETフィルム上から塗膜を剥がし取り、単離したキャストフィルムを、180℃、3MPaの条件で1時間真空加圧プレスを行い、熱硬化させ、得られた硬化物フィルムについて諸特性を測定した。また、厚み0.2mmのフィルムプレス硬化物を0.3cm×10cmに切り出して試験片を作成し、2.0GHzの誘電率と誘電正接を測定した。また、85℃、85%相対湿度の高温高湿室中に2週間放置後の誘電率と誘電正接を測定し放置前後の誘電率及び誘電正接の変化率を測定した。さらに、硬化物フィルムより、12.7mm×127mmの短冊試験片を切り出して、燃焼試験を行った。これら測定により得られた結果を表1に示した。
【0078】
【表1】
【0079】
実施例4
実施例3で得られたワニスAにガラスクロス(Eガラス、目付71g/m2)を浸漬して含浸を行い、50℃のエアーオーブン中で30分間乾燥させた。得られたプリプレグのレジンコンテンツ(R.C)は57%であった。
このプリプレグを使用して、直径0.35mmのスルーホールが5mmピッチで配置されている厚み0.8mmのコア材を張り合わせたところ、樹脂が充填されていないスルーホールは4500穴中0であった。
【0080】
成形後の厚みが約0.6mm〜1.0mmになるように、上記の硬化性複合材料を必要に応じて複数枚重ね合わせ、その両面に厚さ18μmの銅箔を置いてプレス成形機により成形硬化させて積層体を得た。各実施例の硬化条件は、3℃/分で昇温し、180℃で60分間保持することにとした。また、圧力はいずれも30kg/cm2とした。
【0081】
このようにして得られた積層体の諸物性を以下の方法で測定した。
1).耐トリクロロエチレン性:銅箔を除去した積層体を25mm角に切り出し、トリクロロエチレン中で5分間煮沸し、外観の変化を目視により観察した(JIS C6481に準拠)。
2).ハンダ耐熱性:銅箔を除去した積層体を25mm角に切り出し、260℃のハンダ浴中に120秒間浮かべ、外観の変化を目視により観察した(JIS C6481に準拠)。
【0082】
耐トリクロロエチレン性試験では積層体の外観に変化は観察されなかった。ハンダ耐熱性試験では積層体の外観に変化は観察されなかった。
【0083】
実施例5
実施例3で得られたワニスAを18μmの電解銅箔上に塗布し、10分間風乾した後、80℃のエアーオーブン中で10分間乾燥させた。銅箔上の樹脂厚みは50μmであった。本樹脂付き銅箔と実施例3のコア材を重ね180℃で90分間、30kg/cm2の圧力で加熱加圧硬化した。スルーホールを観察したところ、樹脂が充填されていないスルーホールは確認されなかった。
【0084】
実施例6
実施例2で得られたmp−DVB−DBPFZ−DMBP 6gと3,3’-ジビニルビフェニル4gおよび重合開始剤として2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(日本油脂(株)製、商品名:パーヘキサ25B)0.05gを均一に溶解し硬化性組成物(ワニスC)を得た。
【0085】
調製したワニスCを厚さ1.0mmのシリコンゴムのスペーサーを挟んだ2枚のガラス基板のクリアランス部分に注入し、真空下、脱泡した後、65℃で5時間、80℃で15時間、120℃で2時間、150℃で1時間、200℃で1時間加熱し、熱硬化させた後、得られた硬化物平板について諸特性を測定した。また、厚み0.2mmのフィルムプレス硬化物を0.3cm×10cmに切り出して試験片を作成し、2.0GHzの誘電率と誘電正接を測定した。また、85℃、85%相対湿度の高温高湿室中に2週間放置後の誘電率と誘電正接を測定し放置前後の誘電率及び誘電正接の変化率を測定した。さらに、硬化物フィルムより、12.7mm×127mmの短冊試験片を切り出して、燃焼試験を行った。これら測定により得られた結果を表2に示した。
【0086】
合成例2
精製ナフタレン 2.0kgと、Co−Mo/Al23触媒(Mo:15wt%、Co:5wt%)を50g用い、水素圧0.5MPa、反応温度280℃で水添脱硫を行った。水添脱硫によって得られた脱硫ナフタレンは、純度99.3%(GC面積%)、硫黄分95ppmである。
上記脱硫ナフタレン230.7g(1.80mol)、92%パラホルムアルデヒド129.2g(3.96mol)、メチルシクロヘキサン461.4gを、撹拌器、滴下ローとコンデンサーを装着した2Lのジャケットつきセパラブルフラスコに仕込み、80℃で加熱攪拌した。滴下ロートに、80%硫酸485.5gと塩化セチルピリジニウム(CPC)6.71g(0.018mol)の混合物を入れ、塩化水素ガスを連続的に吹き込みながら(吹き込み量=2mol )撹拌し、反応温度80℃を保ちながら2時間かけて滴下した。滴下後、80℃で8時間反応させた。反応物をガスクロマトグラフ法で分析したところ、ナフタレン転化率は100%、ビス(クロロメチル)ナフタレン収率は71.2%であった。ビス(クロロメチル)ナフタレン中の異性体比は1.4-体55.3%、1,5-体44.7%であった。
実施例7
反応容器に9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン231.27g(0.66モル)、合成例2で得られたビス(クロロメチル)ナフタレン(異性体比:1.4-体55.3%、1,5-体44.7%)67.5g(0.30モル)、及び、2−ブタンノン1200mlを加え攪拌しながら55℃に昇温した。次いで、55℃に保った反応容器にKOH−MeOH(KOH:1.32モル)を30分かけて滴下した。滴下終了後、さらに55℃で4h攪拌を継続した。4h後、室温まで冷却し、トルエン100gを加え、さらに10%HClを加えて中和した。その後、水相を分液することにより分離し、さらに水300mlで3回分液洗浄した。
【0087】
得られた有機相を蒸留することにより濃縮し、メタノールを加えて生成物を再沈殿した。沈殿を濾過・乾燥し、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンとビス(クロロメチル)ナフタレンとの反応生成物である芳香族ジヒドロキシ化合物(DBPFZ−DMN)108.7gを得た。
【0088】
生成物の確認をゲル浸透クロマトグラフ(GPC)、赤外線スペクトル(IR)、1H核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR)で行ったところ、GPCより回収された反応生成物では、原料に由来するピークが消失し、高分子量側に新しいピークが生成していること、IRよりフェノール性水酸基が存在していること、1H−NMRで、ビス(クロロメチル)ナフタレンのクロロメチル基に由来するプロトンの共鳴線が消失し、代わりに、ビス(クロロメチル)ナフタレン由来のNp-CH2-O基(Npはナフチル基)に由来するプロトンの共鳴線を有することが確認され、芳香族ジヒドロキシ化合物(DBPFZ−DMN)が得られていることを確認した。DBPFZ−DMNのGPC溶出曲線を見ると、原料であるビス(クロロメチル)ナフタレンの高分子量側に生成した新たなピークに於いて、n=1以上の成分のGPC純度は、下記の通りであった。
n=1成分:51.3%
n=2成分:25.2%
n=3成分:11.2%
n=4成分:6.8%
n=5以上の成分:4.2%
その他の成分:1.3%
【0089】
実施例8
反応容器に9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンとビス(クロロメチル)ナフタレンとの反応生成物である芳香族ジヒドロキシ化合物(実施例7のDBPFZ−DMN)12.795g(0.015モル)、m−クロロメチルスチレンとp−クロロメチルスチレンの混合物(重量比50:50)(セイミケミカル株式会社製「CMS−P」)6.7g(0.042モル)及び、アセトン300mlを加え攪拌しながら55℃に昇温した。次いで、55℃に保った反応容器にKOH−MeOH(KOH:0.048モル)を30分かけて滴下した。滴下終了後、さらに55℃で4h攪拌を継続した。4h後、室温まで冷却し、トルエン200gを加え、さらに10%HClを加えて中和した。その後、水相を分液することにより分離し、さらに水300mlで3回分液洗浄した。
【0090】
得られた有機相を蒸留することにより濃縮し、メタノールを加えて生成物を再沈殿した。沈殿を濾過・乾燥し、DBPFZ−DMNとクロロメチルスチレンとの反応生成物であるmp−DVB−DBPFZ−DMN12.08gを得た。
【0091】
生成物の確認をゲル浸透クロマトグラフ(GPC)、赤外線スペクトル(IR)、1H核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR)で行ったところ、GPCより回収された反応生成物では、原料に由来するピークが消失し、高分子量側に新しいピークが生成していること、IRよりフェノール性水酸基が消失していること、1H−NMRで、クロロメチルスチレンに由来するプロトンの共鳴線が消失し、代わりに、DBPFZ−DMNとクロロメチルスチレンとの反応生成物に見られる、ベンジルエーテル基に由来するプロトンの共鳴線を有することが確認され、mp−DVB−DBPFZ−DMNが得られていることを確認した。
【0092】
実施例9
実施例8で得られたmp−DVB−DBPFZ−DMN 6gと3,3’−ジビニルビフェニル4gおよび重合開始剤として2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(日本油脂(株)製、商品名:パーヘキサ25B)0.05gを均一に溶解し硬化性組成物(ワニスD)を得た。
【0093】
調製したワニスDを厚さ1.0mmのシリコンゴムのスペーサーを挟んだ2枚のガラス基板のクリアランス部分に注入し、真空下、脱泡した後、65℃で5時間、80℃で15時間、120℃で2時間、150℃で1時間、200℃で1時間加熱し、熱硬化させた後、得られた硬化物平板について諸特性を測定した。また、厚み0.2mmのフィルムプレス硬化物を0.3cm×10cmに切り出して試験片を作成し、2.0GHzの誘電率と誘電正接を測定した。また、85℃、85%相対湿度の高温高湿室中に2週間放置後の誘電率と誘電正接を測定し放置前後の誘電率及び誘電正接の変化率を測定した。さらに、硬化物フィルムより、12.7mm×127mmの短冊試験片を切り出して、燃焼試験を行った。
これら測定により得られた結果を表2に示した。
【0094】
【表2】
図1