【実施例】
【0062】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらにより制限されるものではない。なお、各例中の部はいずれも重量部である。また、実施例中の測定結果は以下に示す方法により試料調製及び測定を行ったものである。
【0063】
1)芳香族ジヒドロキシ化合物、及びジビニルベンジルエーテル化合物の分子量及び分子量分布
分子量及び分子量分布測定はGPC(東ソー製、HLC−8120GPC)を使用し、溶媒:テトラヒドロフラン(THF)、流量:1.0ml/min、カラム温度:40℃で行った。分子量は単分散ポリスチレンによる検量線を用い、ポリスチレン換算分子量として測定を行った。
2)芳香族ジヒドロキシ化合物、及びジビニルベンジルエーテル化合物の構造
日本電子製JNM−LA600型核磁気共鳴分光装置を用い、
13C−NMR及び
1H−NMR分析により決定した。溶媒としてクロロホルム−d
1を使用した。NMR測定溶媒であるテトラクロロエタン−d
2の共鳴線を内部標準として使用した。
【0064】
3)ガラス転移温度(Tg)及び軟化温度測定の試料調製及び測定
硬化性樹脂組成物溶液をガラス基板に乾燥後の厚さが、20μmになるように均一に塗布した後、ホットプレートを用いて、90℃で30分間加熱し、乾燥させた。得られたガラス基板上の樹脂膜はガラス基板と共に、TMA(熱機械分析装置)測定装置にセットし、窒素気流下、昇温速度10℃/分で220℃まで昇温し、更に、220℃で20分間加熱処理することにより、残存する溶媒を除去した。ガラス基板を室温まで放冷した後、TMA測定装置中の試料に分析用プローブを接触させ、窒素気流下、昇温速度10℃/分で30℃から360℃までスキャンさせることにより測定を行い、接線法により軟化温度を求めた。また、線膨張係数の変化する変曲点よりTgを求めた。
加熱プレス成形により得られた硬化物フィルムのTgの測定は動的粘弾性測定装置を使用し、昇温速度2℃/minで測定を行い、損失弾性率のピークより決定した。
4)引張り強度及び伸び率
硬化物フィルムの引張り強度及び伸び率は引張り試験装置を用いて測定を行った。伸び率は引張り試験のチャートから測定した。
5)銅箔引き剥し強さ
積層体から幅20mm、長さ100mmの試験片を切り出し、銅箔面に幅10mmの平行な切り込みを入れた後、面に対して180°の方向に50mm/分の速さで連続的に銅箔を引き剥し、その時の応力を引張り試験機にて測定し、その応力の最低値を示した(JIS C 6481に準拠)。
6)誘電率及び誘電正接
JIS C2565規格に準拠し、株式会社エーイーティー製、空洞共振器法誘電率測定装置により、絶乾後23℃、湿度50%の室内に24時間保管した後の硬化物フィルム、および85℃、相対湿度85%で2週間放置後の硬化物フィルムの2GHzでの誘電率および誘電正接を測定した。
7)成形性
黒化処理を行った銅張り積層板の上に、硬化性樹脂組成物の未硬化フィルムを積層し、真空ラミネーターを用いて、温度:110℃、プレス圧:0.1MPaで真空ラミネートを行い、黒化処理銅箔とフィルムの接着状態により評価を行った。評価は黒化処理銅箔とフィルムの接着状態が良好であったものを「○」、黒化処理銅箔とフィルムとが容易に剥離することができる接着状態のものを「×」として評価した。
【0065】
実施例1
反応容器に9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン231.27g(0.66モル)、4,4’−ビス(クロロメチル)ビフェニル75.3g(0.30モル)、及び、アセトン1200mlを加え攪拌しながら55℃に昇温した。次いで、55℃に保った反応容器にKOH−MeOH(KOH:1.32モル)を30分かけて滴下した。滴下終了後、さらに55℃で4h攪拌を継続した。4h後、室温まで冷却し、トルエン100gを加え、さらに10%HClを加えて中和した。その後、水相を分液することにより分離し、さらに水300mlで3回分液洗浄した。
【0066】
得られた有機相を蒸留することにより濃縮し、メタノールを加えて生成物を再沈殿した。
沈殿を濾過・乾燥し、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンと4,4’−ビス(クロロメチル)ビフェニルとの反応生成物である芳香族ジヒドロキシ化合物A(DBPFZ−DMBP)129.39gを得た。
【0067】
生成物の確認をゲル浸透クロマトグラフ(GPC)、赤外線スペクトル(IR)、1H核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR)で行ったところ、GPCより回収された反応生成物では、原料に由来するピークが消失し、高分子量側に新しいピークが生成していること、IRよりフェノール性水酸基が存在していること、1H−NMRで、4,4’−ビス(クロロメチル)ビフェニルのクロロメチル基に由来するプロトンの共鳴線が消失し、代わりに、5.02ppm付近にベンジルエーテル基に由来するプロトンの共鳴線を有することが確認され、芳香族ジヒドロキシ化合物(DBPFZ−DMBP)が得られていることを確認した。
DBPFZ−DMBP及び原料である9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンのGPCチャート(DBPFZ−DMBPは実線で示し、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンは点線で示す。)を
図1に示す。
図1のDBPFZ−DMBPのGPC溶出曲線を見ると、原料である9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンのピークは消失し、高分子量側にシフトしているのがわかった。そして、n=1以上の成分のGPC純度は、下記の通りであった。
n=1成分:47.2%
n=2成分:27.1%
n=3成分:12.9%
n=4成分:5.8%
n=5以上の成分:3.3%
その他の成分(低分子量成分):3.7%
【0068】
合成例1
ビスフェノールフルオレンジビニルベンジルエーテル(FLBPLDVBE)の合成
攪拌機を備えた1L反応容器にビスフェノールフルオレン43.8g(0.25当量)、2,4−ジニトロフェノール(2,4−DNP)0.038g、テトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB)2.4g、m−クロロメチルスチレンとp−クロロメチルスチレンの混合物(重量比50:50)(セイミケミカル株式会社製「CMS−P」)42.7g(0.28当量)およびメチルエチルケトン200gを加え攪拌しながら75℃に昇温した。次いで、75℃に保った反応容器に48%−NaOHaqを20分かけて滴下した。滴下終了後、さらに75℃で4h攪拌を継続した。4h後、室温まで冷却し、トルエン100gを加え、さらに10%HClを加えて中和した。その後、水相を分液することにより分離し、さらに水300mlで3回分液洗浄した。
【0069】
得られた有機相を蒸留することにより濃縮し、メタノールを加えて生成物を再沈殿した。沈殿を濾過・乾燥しビスフェノールフルオレンジビニルベンジルエーテル(FLBPLDVBE)71.7gを得た。このジビニルベンジルエーテルは明確な融点を示さなかった。
【0070】
生成物の確認を赤外線スペクトル(IR)、13C核磁気共鳴スペクトル(13C−NMR)で行ったところ、IRよりフェノール性水酸基が存在しないこと、13C−NMRで138ppm付近にビニルベンジル基結合炭素を示すシグナルを有することが確認され、FLBPLDVBEが得られていることを確認した。
【0071】
実施例2
反応容器に9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンと4,4’−ビス(クロロメチル)ビフェニルとの反応生成物である芳香族ジヒドロキシ化合物(実施例1のDBPFZ−DMBP)13.186g(0.015モル)、m−クロロメチルスチレンとp−クロロメチルスチレンの混合物(重量比50:50)(セイミケミカル株式会社製「CMS−P」)6.7g(0.042モル)及び、アセトン300mlを加え攪拌しながら55℃に昇温した。次いで、55℃に保った反応容器にKOH−MeOH(KOH:0.048モル)を30分かけて滴下した。滴下終了後、さらに55℃で4h攪拌を継続した。4h後、室温まで冷却し、トルエン200gを加え、さらに10%HClを加えて中和した。その後、水相を分液することにより分離し、さらに水300mlで3回分液洗浄した。
【0072】
得られた有機相を蒸留することにより濃縮し、メタノールを加えて生成物を再沈殿した。
沈殿を濾過・乾燥し、DBPFZ−DMBPとクロロメチルスチレンとの反応生成物であるmp−DVB−DBPFZ−DMBP12.45gを得た。
【0073】
生成物の確認をゲル浸透クロマトグラフ(GPC)、赤外線スペクトル(IR)、1H核磁気共鳴スペクトル(
1H−NMR)で行ったところ、GPCより回収された反応生成物では、原料に由来するピークが消失し、高分子量側に新しいピークが生成していること、IRよりフェノール性水酸基が消失していること、
1H−NMRで、クロロメチルスチレンに由来するプロトンの共鳴線が消失し、代わりに、5.02ppmと4.97ppm付近にベンジルエーテル基に由来するプロトンの共鳴線を有することが確認され、mp−DVB−DBPFZ−DMBPが得られていることを確認した。mp−DVB−DBPFZ−DMBPは、一般式(1)で表される化合物の両末端がビニルベンジルで置換された化合物であり、一般式(3)で表される化合物である。
【0074】
実施例3
実施例2で得られたmp−DVB−DBPFZ−DMBP 6gと熱可塑性エラストマーとして水添スチレンブタジエンブロック共重合体(旭化成工業(株)製、商品名:タフテックH1052)4gおよび重合開始剤として2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(日本油脂(株)製、商品名:パーヘキサ25B)0.05gをトルエン30gに溶解し硬化性組成物(ワニスA)を得た。
【0075】
調製したワニスAをPETフィルム上に塗布し80℃で溶媒除去し、乾燥後PETフィルム上から塗膜を剥がし取り、単離したキャストフィルムを、180℃、3MPaの条件で1時間真空加圧プレスを行い、熱硬化させ、得られた硬化物フィルムについて諸特性を測定した。また、厚み0.2mmのフィルムプレス硬化物を0.3cm×10cmに切り出して試験片を作成し、2.0GHzの誘電率と誘電正接を測定した。また、85℃、85%相対湿度の高温高湿室中に2週間放置後の誘電率と誘電正接を測定し放置前後の誘電率及び誘電正接の変化率を測定した。さらに、硬化物フィルムより、12.7mm×127mmの短冊試験片を切り出して、燃焼試験を行った。これら測定により得られた結果を表1に示した。
【0076】
比較例1
合成例2で得られたFLBPLDVBE 6gと熱可塑性エラストマーとして水添スチレンブタジエンブロック共重合体(旭化成工業(株)製、商品名:タフテックH1052)4gおよび重合開始剤として2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(日本油脂(株)製、商品名:パーヘキサ25B)0.05gをトルエン70gに溶解し硬化性組成物(ワニスB)を得た。
【0077】
調製したワニスBをPETフィルム上に塗布し80℃で溶媒除去し、乾燥後PETフィルム上から塗膜を剥がし取り、単離したキャストフィルムを、180℃、3MPaの条件で1時間真空加圧プレスを行い、熱硬化させ、得られた硬化物フィルムについて諸特性を測定した。また、厚み0.2mmのフィルムプレス硬化物を0.3cm×10cmに切り出して試験片を作成し、2.0GHzの誘電率と誘電正接を測定した。また、85℃、85%相対湿度の高温高湿室中に2週間放置後の誘電率と誘電正接を測定し放置前後の誘電率及び誘電正接の変化率を測定した。さらに、硬化物フィルムより、12.7mm×127mmの短冊試験片を切り出して、燃焼試験を行った。これら測定により得られた結果を表1に示した。
【0078】
【表1】
【0079】
実施例4
実施例3で得られたワニスAにガラスクロス(Eガラス、目付71g/m
2)を浸漬して含浸を行い、50℃のエアーオーブン中で30分間乾燥させた。得られたプリプレグのレジンコンテンツ(R.C)は57%であった。
このプリプレグを使用して、直径0.35mmのスルーホールが5mmピッチで配置されている厚み0.8mmのコア材を張り合わせたところ、樹脂が充填されていないスルーホールは4500穴中0であった。
【0080】
成形後の厚みが約0.6mm〜1.0mmになるように、上記の硬化性複合材料を必要に応じて複数枚重ね合わせ、その両面に厚さ18μmの銅箔を置いてプレス成形機により成形硬化させて積層体を得た。各実施例の硬化条件は、3℃/分で昇温し、180℃で60分間保持することにとした。また、圧力はいずれも30kg/cm
2とした。
【0081】
このようにして得られた積層体の諸物性を以下の方法で測定した。
1).耐トリクロロエチレン性:銅箔を除去した積層体を25mm角に切り出し、トリクロロエチレン中で5分間煮沸し、外観の変化を目視により観察した(JIS C6481に準拠)。
2).ハンダ耐熱性:銅箔を除去した積層体を25mm角に切り出し、260℃のハンダ浴中に120秒間浮かべ、外観の変化を目視により観察した(JIS C6481に準拠)。
【0082】
耐トリクロロエチレン性試験では積層体の外観に変化は観察されなかった。ハンダ耐熱性試験では積層体の外観に変化は観察されなかった。
【0083】
実施例5
実施例3で得られたワニスAを18μmの電解銅箔上に塗布し、10分間風乾した後、80℃のエアーオーブン中で10分間乾燥させた。銅箔上の樹脂厚みは50μmであった。本樹脂付き銅箔と実施例3のコア材を重ね180℃で90分間、30kg/cm
2の圧力で加熱加圧硬化した。スルーホールを観察したところ、樹脂が充填されていないスルーホールは確認されなかった。
【0084】
実施例6
実施例2で得られたmp−DVB−DBPFZ−DMBP 6gと3,3’-ジビニルビフェニル4gおよび重合開始剤として2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(日本油脂(株)製、商品名:パーヘキサ25B)0.05gを均一に溶解し硬化性組成物(ワニスC)を得た。
【0085】
調製したワニスCを厚さ1.0mmのシリコンゴムのスペーサーを挟んだ2枚のガラス基板のクリアランス部分に注入し、真空下、脱泡した後、65℃で5時間、80℃で15時間、120℃で2時間、150℃で1時間、200℃で1時間加熱し、熱硬化させた後、得られた硬化物平板について諸特性を測定した。また、厚み0.2mmのフィルムプレス硬化物を0.3cm×10cmに切り出して試験片を作成し、2.0GHzの誘電率と誘電正接を測定した。また、85℃、85%相対湿度の高温高湿室中に2週間放置後の誘電率と誘電正接を測定し放置前後の誘電率及び誘電正接の変化率を測定した。さらに、硬化物フィルムより、12.7mm×127mmの短冊試験片を切り出して、燃焼試験を行った。これら測定により得られた結果を表2に示した。
【0086】
合成例2
精製ナフタレン 2.0kgと、Co−Mo/Al
2O
3触媒(Mo:15wt%、Co:5wt%)を50g用い、水素圧0.5MPa、反応温度280℃で水添脱硫を行った。水添脱硫によって得られた脱硫ナフタレンは、純度99.3%(GC面積%)、硫黄分95ppmである。
上記脱硫ナフタレン230.7g(1.80mol)、92%パラホルムアルデヒド129.2g(3.96mol)、メチルシクロヘキサン461.4gを、撹拌器、滴下ローとコンデンサーを装着した2Lのジャケットつきセパラブルフラスコに仕込み、80℃で加熱攪拌した。滴下ロートに、80%硫酸485.5gと塩化セチルピリジニウム(CPC)6.71g(0.018mol)の混合物を入れ、塩化水素ガスを連続的に吹き込みながら(吹き込み量=2mol )撹拌し、反応温度80℃を保ちながら2時間かけて滴下した。滴下後、80℃で8時間反応させた。反応物をガスクロマトグラフ法で分析したところ、ナフタレン転化率は100%、ビス(クロロメチル)ナフタレン収率は71.2%であった。ビス(クロロメチル)ナフタレン中の異性体比は1.4-体55.3%、1,5-体44.7%であった。
実施例7
反応容器に9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン231.27g(0.66モル)、合成例2で得られたビス(クロロメチル)ナフタレン(異性体比:1.4-体55.3%、1,5-体44.7%)67.5g(0.30モル)、及び、2−ブタンノン1200mlを加え攪拌しながら55℃に昇温した。次いで、55℃に保った反応容器にKOH−MeOH(KOH:1.32モル)を30分かけて滴下した。滴下終了後、さらに55℃で4h攪拌を継続した。4h後、室温まで冷却し、トルエン100gを加え、さらに10%HClを加えて中和した。その後、水相を分液することにより分離し、さらに水300mlで3回分液洗浄した。
【0087】
得られた有機相を蒸留することにより濃縮し、メタノールを加えて生成物を再沈殿した。沈殿を濾過・乾燥し、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンとビス(クロロメチル)ナフタレンとの反応生成物である芳香族ジヒドロキシ化合物(DBPFZ−DMN)108.7gを得た。
【0088】
生成物の確認をゲル浸透クロマトグラフ(GPC)、赤外線スペクトル(IR)、1H核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR)で行ったところ、GPCより回収された反応生成物では、原料に由来するピークが消失し、高分子量側に新しいピークが生成していること、IRよりフェノール性水酸基が存在していること、1H−NMRで、ビス(クロロメチル)ナフタレンのクロロメチル基に由来するプロトンの共鳴線が消失し、代わりに、ビス(クロロメチル)ナフタレン由来のNp-CH2-O基(Npはナフチル基)に由来するプロトンの共鳴線を有することが確認され、芳香族ジヒドロキシ化合物(DBPFZ−DMN)が得られていることを確認した。DBPFZ−DMNのGPC溶出曲線を見ると、原料であるビス(クロロメチル)ナフタレンの高分子量側に生成した新たなピークに於いて、n=1以上の成分のGPC純度は、下記の通りであった。
n=1成分:51.3%
n=2成分:25.2%
n=3成分:11.2%
n=4成分:6.8%
n=5以上の成分:4.2%
その他の成分:1.3%
【0089】
実施例8
反応容器に9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンとビス(クロロメチル)ナフタレンとの反応生成物である芳香族ジヒドロキシ化合物(実施例7のDBPFZ−DMN)12.795g(0.015モル)、m−クロロメチルスチレンとp−クロロメチルスチレンの混合物(重量比50:50)(セイミケミカル株式会社製「CMS−P」)6.7g(0.042モル)及び、アセトン300mlを加え攪拌しながら55℃に昇温した。次いで、55℃に保った反応容器にKOH−MeOH(KOH:0.048モル)を30分かけて滴下した。滴下終了後、さらに55℃で4h攪拌を継続した。4h後、室温まで冷却し、トルエン200gを加え、さらに10%HClを加えて中和した。その後、水相を分液することにより分離し、さらに水300mlで3回分液洗浄した。
【0090】
得られた有機相を蒸留することにより濃縮し、メタノールを加えて生成物を再沈殿した。沈殿を濾過・乾燥し、DBPFZ−DMNとクロロメチルスチレンとの反応生成物であるmp−DVB−DBPFZ−DMN12.08gを得た。
【0091】
生成物の確認をゲル浸透クロマトグラフ(GPC)、赤外線スペクトル(IR)、
1H核磁気共鳴スペクトル(
1H−NMR)で行ったところ、GPCより回収された反応生成物では、原料に由来するピークが消失し、高分子量側に新しいピークが生成していること、IRよりフェノール性水酸基が消失していること、
1H−NMRで、クロロメチルスチレンに由来するプロトンの共鳴線が消失し、代わりに、DBPFZ−DMNとクロロメチルスチレンとの反応生成物に見られる、ベンジルエーテル基に由来するプロトンの共鳴線を有することが確認され、mp−DVB−DBPFZ−DMNが得られていることを確認した。
【0092】
実施例9
実施例8で得られたmp−DVB−DBPFZ−DMN 6gと3,3’−ジビニルビフェニル4gおよび重合開始剤として2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(日本油脂(株)製、商品名:パーヘキサ25B)0.05gを均一に溶解し硬化性組成物(ワニスD)を得た。
【0093】
調製したワニスDを厚さ1.0mmのシリコンゴムのスペーサーを挟んだ2枚のガラス基板のクリアランス部分に注入し、真空下、脱泡した後、65℃で5時間、80℃で15時間、120℃で2時間、150℃で1時間、200℃で1時間加熱し、熱硬化させた後、得られた硬化物平板について諸特性を測定した。また、厚み0.2mmのフィルムプレス硬化物を0.3cm×10cmに切り出して試験片を作成し、2.0GHzの誘電率と誘電正接を測定した。また、85℃、85%相対湿度の高温高湿室中に2週間放置後の誘電率と誘電正接を測定し放置前後の誘電率及び誘電正接の変化率を測定した。さらに、硬化物フィルムより、12.7mm×127mmの短冊試験片を切り出して、燃焼試験を行った。
これら測定により得られた結果を表2に示した。
【0094】
【表2】