(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エポキシ樹脂(A)と、重合性不飽和基を有するモノカルボン酸(B)と酸無水物(C)とを、エポキシ樹脂(A)のエポキシ基の当量数(a)、重合性不飽和基を有するモノカルボン酸(B)のカルボキシル基の当量数(b)、及び酸無水物(C)の酸無水物基の当量数(c)の当量比[(a)/((b)+(c))]が0.8〜1.2であって、かつ、
当量比[(b)/(a)]が0.65〜0.95となる比率で反応させて得られるものである請求項1記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、
ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)と、重合性不飽和基を有するモノカルボン酸(B)と
、二塩基酸無水物(C)
を混合し、脂肪族第3級アミンの存在下、反応させて得られる活性エネルギー線硬化型樹脂組成物であって、酸価5mgKOH/g以下、かつ水酸基価180mgKOH/g以下であることを特徴としている。本発明では、このように活性エネルギー線硬化型樹脂組成物(不揮発分である樹脂成分)中の水酸基量およびカルボキシル基の含有量を低減させることにより、印刷インキに用いた場合の乳化特性を飛躍的に改善できる。また、該活性エネルギー線硬化型樹脂組成物中の水酸基量とカルボキシル基との含有率を低減させる結果として、樹脂自体の分岐度が高まり、分子当たりの重合性不飽和基濃度を上げられることから、硬化性に優れた活性エネルギー線硬化型樹脂組成物となる。
【0014】
ここで、水酸基価は、KOHアルカリ溶液による滴定にて測定することができる。具体的には、フラスコに試料に採取し、質量比(無水酢酸:ピリジン溶液)が1:9の無水酢酸−ピリジン溶液を10mL加え、よく振とうした後、還流冷却器をジョイントし、100℃の加熱浴中に入れ、1時間処理をした後、冷却し、純粋10mLを加えた。室温冷却後、フラスコの壁面を洗う様に、n−ブタノール10mLを加える(試料が溶けない場合、透明になるまで、ピリジンを適当量加えて溶解する。)その後、フェノールフタレインを約10滴加え、0.5mol・LのKOHアルカリ溶液で滴定を行うことにより測定できる。
【0015】
一方、酸価もKOHアルカリ溶液による滴定にて測定することができる。具体的には、試料を中性溶剤(メタノール/トルエンの質量費が3/7)15mLにて溶解し、フェノールフタレインを指示薬として、数滴加えて、0.1mol/LのKOHアルコール溶液にて滴定して、微紅色が消えなくなったところを終点として測定を行うことができる。
【0016】
上記した水酸基価及び酸価は、更に、乳化特性が最適化され、かつ、耐ミスト性が良好となる点から、水酸基価が100〜180mgKOH/gの範囲であって、かつ、酸価が
5mgKOH/g以下の範囲であることが好ましい。
【0017】
ここで、本発明における
ビスフェノール型エポキシ樹脂(A)(以下、「エポキシ樹脂(A)」と略記する。)は、特に限定されるものではないが、一分子中にエポキシ基を2個以上有する化合物であることが好ましく、具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールS型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂
などが挙げられる。また、前記エポキシ樹脂は単独で用いてもよく、2種以上を混合してもよい。また、上記、記載のエポキシ樹脂を一部変性したものを用いても構わない。
【0018】
これらのなかでも
、エポキシ当量170〜500g/eqの範囲にあるビスフェノール型エポキシ樹脂、とりわけビスフェノールA型エポキシ樹脂であることが乳化特性に優れ、印刷インキとして用いた場合に優れた印刷適性が得られる点から好ましい。
【0019】
一方、上記エポキシ樹脂(A)と反応させる、重合性不飽和基を有するモノカルボン酸(B)は、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸が挙げられるが、特に印刷適性の点からアクリル酸、メタクリル酸が好ましく、とりわけアクリル酸が好ましい。
【0020】
次いで、前記した
二塩基酸無水物(C)(以下、これを「酸無水物(C)」と略記する。)は、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水ナジック酸、無水メチルナジック酸、クロレンド酸無水物、等の環状二塩基酸無水物;無水マレイン酸、無水コハク酸、アルケニル無水コハク酸等非環状脂肪族2塩基酸無水物
等が挙げられる。
【0021】
これらの酸無水物(C)は、単独あるいは複数の酸無水物を併用してもよい。これらの中でも
、とりわけ、得られる樹脂成分の疎水性をより高めることができる点から無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸などのフタル酸系二塩基酸無水物が好ましい
【0022】
本発明で用いる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂(A)と、重合性不飽和基を有するモノカルボン酸(B)と酸無水物(C)を反応させて得られるものであるが、前記エポキシ樹脂(A)中のエポキシ基と、重合性不飽和基を有するモノカルボン酸(B)中の酸基、又は酸無水物(C)中の酸無水物基との反応において、2級水酸基やカルボキシル基の出現を抑制するように反応させて、得られる重合性不飽和基含有樹脂中の水酸基価および酸価を低減させたものである。
【0023】
このように2級水酸基やカルボキシル基の出現を抑制させる反応は、具体的には、以下の反応1〜4が挙げられる。
【0024】
反応1:エポキシ樹脂(A)と、重合性不飽和基を有するモノカルボン酸(B)が縮合反応して生成した2級の水酸基に、酸無水物(C)が反応し、次いで該反応によって生成するカルボキシル基と、他のエポキシ樹脂(A)中のエポキシ基とが反応し、更に該エポキシ樹脂(A)中のエポキシ基と重合性不飽和基を有するモノカルボン酸(B)が縮合する反応。
例えば、エポキシ樹脂(A)として、2官能型エポキシ樹脂を、重合性不飽和基を有するモノカルボン酸(B)として、(メタ)アクリル酸を用いた場合には、以下の反応となる。
【0025】
【化1】
(ここで、Aは2官能型エポキシ樹脂中のグリシジルオキシ基を除く構造部位であり、Yは酸無水物残基であり、Rはメチル基又は水素原子であり、破線部は他のエポキシ樹脂(A)の残基との結合を示す。)
【0026】
反応2:エポキシ樹脂(A)と、重合性不飽和基を有するモノカルボン酸(B)が縮合反応する際に生成する末端α−グリコール基及びエポキシ樹脂(A)中に存在する末端α−グリコール基と無水フタル酸が縮合する反応。同様に、エポキシ樹脂(A)として、2官能型エポキシ樹脂を、重合性不飽和基を有するモノカルボン酸(B)として、アクリル酸を用いた場合には、以下の反応となる。
【0027】
【化2】
(ここで、Aは2官能型エポキシ樹脂中のグリシジルオキシ基を除く構造部位であり、Yは酸無水物残基であり、Rはメチル基又は水素原子であり、破線部は他の構造部位との結合を示す。)
【0028】
反応3:エポキシ樹脂(A)中の2級の水酸基、例えば、2官能型エポキシ樹脂中に存在する2級水酸基に酸無水物(C)が反応し、更に、他のエポキシ樹脂(A)中のエポキシ基と重合性不飽和基を有するモノカルボン酸(B)とが縮合する反応。
同様に、エポキシ樹脂(A)として、2官能型エポキシ樹脂を、重合性不飽和基を有するモノカルボン酸(B)として、アクリル酸を用いた場合には、以下の反応となる。
【0029】
【化3】
(ここで、Aは2官能型エポキシ樹脂中のグリシジルオキシ基を除く構造部位であり、Yは酸無水物残基であり、Rはメチル基又は水素原子である。また、破線で示した線分は、水素原子と共有結合を形成しているか、或いは、酸無水物(C)が開環したカルボニル炭素原子と共有結合を形成している結合手を表し、破線部は他の構造部位との結合を示す。)
【0030】
反応4:エポキシ樹脂(A)中のエポキシ基と酸無水物(C)が、触媒存在下で反応し、次いで、生成する反応活性点が、他のエポキシ樹脂(A)中のエポキシ基と反応し、これを順次繰り返し、次いで、生成物中に残存するエポキシ基と重合性不飽和基を有するモノカルボン酸(B)とが縮合する反応。
同様に、エポキシ樹脂(A)として、2官能型エポキシ樹脂を、重合性不飽和基を有するモノカルボン酸(B)として、(メタ)アクリル酸を用いた場合には、以下の反応となる。
【0031】
【化4】
(ここで、Aは2官能型エポキシ樹脂中のグリシジルオキシ基を除く構造部位であり、Yは酸無水物残基であり、Rはメチル基又は水素原子であり、CATは触媒が酸無水物に結合した場合における該触媒由来の構造部位である。また、破線で示した線分は、水素原子と共有結合を形成しているか、或いは、酸無水物(C)が開環したカルボニル炭素原子と共有結合を形成している結合手を表す。)
【0032】
上記した反応1〜4は、それぞれが個別に生じてもよいが、同一分内に同時に生じてもよい。故に、前記反応1〜4は任意の分子間にてランダムに発生してもよい。従って、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(不揮発分としての樹脂成分)は、例えば、反応1〜4が複合的に生じた場合の構造式としては下記一般式1で表すことができる。
【0033】
【化5】
ここで、前記一般式1中、Aは2官能型エポキシ樹脂中のグリシジルオキシ基を除く構造部位であり、Yは酸無水物残基であり、Zは(メタ)アクリロイル基又は水素原子である。nは繰り返し単位で0〜3の整数、mは繰り返し単位で0〜100の整数である。また、前記一般式1中、破線にて示した線分は、水素原子と共有結合を形成しているか、或いは、下記一般式2における「*」で示した炭素原子と共有結合を形成しているものである。更に、一般式1中のXは水素原子、下記一般式2における「*」で示した炭素原子と共有結合を形成する構造単位、或いは、下記一般式3であらわれる構造部位である。ここで、一般式2中のA、Y、Z、及び破線にて示した線分は、一般式1と同義であり、一般式3中のYは酸無水物残基、破線で示した線分は結合手であり、CATは触媒が酸無水物に結合した場合における該触媒由来の構造部位である。
【0036】
以上詳述した本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、前記一般式1及び一般式2に代表的される、種々の分子量体の混合物である。上記した通り、エポキシ樹脂(A)と重合性不飽和モノカルボン酸(B)との反応によって生じた2級の水酸基、末端α−グリコール基、エポキシ樹脂(A)中の2級の水酸基、及びエポキシ樹脂(A)中のエポキシ基と酸無水物(C)との縮合反応等により、親水性のOH基やカルボキシル基量を低減させることができて、乳化特性および印刷適正が飛躍的に向上する。更に、親水性のOH基やカルボキシル基量が低減する結果として、上記一般式1及び一般式2に示したとおり、多分岐、多官能化することから、結果として、印刷インキとして使用した場合の硬化性を向上させることが可能となる。
【0037】
本発明で用いる活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、前記した通り、エポキシ樹脂(A)と重合性不飽和基を有するモノカルボン酸(B)と酸無水物(C)とを反応させることにより製造することができるが、具体的には、窒素含有塩基性触媒の存在下にて反応させることが、反応時に副生する親水性の末端構造であるαグリコール体を低減し易い点、水酸基が発生しないエポキシ基と酸無水物の逐次交互反応(エステル結合)による水酸基低減ができる点から好ましい。
【0038】
ここで用いる前記窒素含有塩基性触媒は、窒素原子を有する塩基性化合物である。この窒素含有塩基性触媒としては、例えば、n−ブチルアミン、アミルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、オクチルアミン、ベンジルアミンなどの第1級アミン、
ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、などの直鎖状2級アミン、アジリジン、アゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、アゼパン、アゾカンなどの環状2級アミンおよびこれらのアルキル置換体のような第2級アミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリエチレンジアミン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、キヌクリジンおよび、3−キヌクリジノールのような脂肪族第3級アミン、ジメチルアニリンなどの芳香族第3級アミン、およびイソキノリン、ピリジン、コリジン、ベータピコリンなどの複素環第3級アミン、テトラメチルアンモニウムクロライドなどの4級アンモニウム塩、イミダゾール、プリン、トリアゾール、グアニジンなどの2級アミジン、ピリミジン、トリアジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)及び1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン(DBN)などの3級アミジン等の窒素原子含有塩基性触媒が挙げられる。これらの窒素原子含有塩基性触媒は、単独で用いることも2種以上併用してもよい。
【0039】
これらの窒素原子含有塩基性触媒の中でも、脂肪族第3級アミン、とりわけトリエチルアミンが、生成する樹脂成分中のαグリコール由来の水酸基量をより低減し易い点から好ましい。
【0040】
ここで、前記窒素原子含有塩基性触媒の使用量は、原料成分総質量100質量部に対して0.01〜0.6質量部、特に0.03〜0.5質量部、とりわけ0.05〜0.3質量部の割合となる範囲であることが、生成する重合性不飽和基含有樹脂中のαグリコール量が低減され、乳化特性が良好となる点から好ましい。
【0041】
また、上記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を製造する方法は、エポキシ樹脂(A)と重合性不飽和基を有するカルボン酸(B)と酸無水物(C)を、触媒存在下で、反応温度80〜125℃の範囲、好ましくは90〜110℃の範囲にて、エポキシ当量が8000g/eq以上または酸価が5.0KOH/g以下、好ましくは2.0mgKOH/g以下になるまで反応させる方法が、最終的に得られる活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を使用した印刷インキの乳化適正を得る上で好ましい。
【0042】
ここで、エポキシ当量8000g/eq.以上、酸価2以下にするためには、エポキシ樹脂(A)のエポキシ基の当量数(a)と、重合性不飽和基を有するモノカルボン酸の当量数(b)と、酸無水物(C)中の酸無水物基の当量数(c)の割合((a):{(b)+(c)})が0.8〜1.2で反応する必要があり、好ましくは、0.9〜1.1の範囲が安定的に合成できるので好ましい。
【0043】
更に、酸無水物(C)を使用することにより、反応時に分岐構造が発生することから、ゲル化を抑制するために、エポキシ基の当量数(a)と、重合性不飽和基を有するモノカルボン酸の当量数(b)との割合が、(b):(a)=0.65〜0.95の範囲であり、なかでも、0.7〜0.9が、安定的に合成することができる点から好ましい。
【0044】
更に、上記したエポキシ樹脂(A)と重合性不飽和基を有するモノカルボン酸(B)と酸無水物(C)の反応は、カルボキシル基及びエポキシ基と反応する部位を含有しないラジカル重合性単量体を反応溶媒として用い、該反応溶媒中で行ってもよい。
【0045】
ここで用いる、前記カルボキシル基とエポキシ基と反応する部位を含有しないラジカル重合性単量体としては、例えば、N−ビニルピロリドン、アクリロイルモルホリン、ジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ビスフェノールFのモノ(メタ)アクリレート、アルキレンオキサイド付加ビスフェノールFのモノ(メタ)アクリレート等のモノ(メタ)アクリレート;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、アルキレンオキサイド付加1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFのジ(メタ)アクリレート、アルキレンオキサイド付加ビスフェノールAのジ(メタ)アクリレート、アルキレンオキサイド付加ビスフェノールFのジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート; トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アルキレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等のトリ(メタ)アクリレート; ジペンタエリスリトールのヘキサアクリレート等が挙げられる。
【0046】
この様にして得られる活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、前記した通り、該組成物中の樹脂成分の酸価が5mgKOH/g以下、好ましくは、2mgKOH/g以下の範囲にあるが、更に、エポキシ当量が8000g/eq以上となる範囲であることが印刷インキとしての安定性が良好となる点から好ましい。
【0047】
また、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、樹脂成分を酢酸ブチルに溶解させた場合の不揮発分80質量%溶液での溶液粘度が0.5〜30Pa・sの範囲であることが印刷インキにした場合、粘度調整が容易であるほか、印刷インキにした場合の耐ミスチング性とロール転移性に優れる点から好ましく、特に、1.0〜10.0Pa・sの範囲にあるものが、これらの効果が顕著なものとなる点から好ましい。
【0048】
また、本発明では、エポキシ樹脂(A)と重合性不飽和基を有するモノカルボン酸(B)と酸無水物(C)との反応を窒素原子含有触媒、特にトリエチルアミン又はテトラメチルアンモニウムクロライドの存在下に反応させた場合、樹脂末端においてα−グリコール由来の水酸基量を著しく低減でき、これにより更に乳化特性と硬化性とを高いレベルで兼備させることができる。具体的には、最終的な活性エネルギー線硬化型樹脂組成物中の樹脂成分の末端構造、具体的には、下記構造式(i)〜(vi)
【0050】
で表される構造部位のうち、構造式(v)で表されるα−グリコール由来の末端構造の含有率を5モル%以下の低減させることができる。前記した乳化特性と硬化性とを更に高めるためにはこの含有率は3モル%以下であることが好ましい。
【0051】
なお、本発明では、樹脂成分中に上記各種末端構造(前記構造式(i)〜(vi))を全て含んでいる必要はなく、これらの中から選択される末端構造の総数を基準に前記αグリコール構造部位の含有率が5モル%以下であればよい。
【0052】
ここで、前記構造式(i)〜(vi)の存在割合は、
13C−NMRにて測定することができ、具体的には、下記に*にて示した炭素原子の各ピークの面積比率によって導出できる。なお、各ピークが、他の構造中の他の炭素原子と重複する場合は、当該他の炭素原子による面積分を除いて、比率を求めればよい。
【0053】
次に、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、重合開始剤を使用してもよい。ここで用いる重合開始剤は、分子内開裂型光重合開始剤及び水素引き抜き型光重合開始剤が挙げられる。分子内開裂型光重合開始剤としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2,2−ジエトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン等のアセトフェノン系化合物;1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)等のオキシム系化合物、3,6−ビス(2−メチル−2−モルフォリノプロパノニル)−9−ブチルカルバゾール等のカルバゾール系化合物、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾイン系化合物;
【0054】
2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オン、2−(ジメチルアミノ)−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オン、2−メチル−2−モルホリノ((4−メチルチオ)フェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン等のアミノアルキルフェノン系化合物;ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキシド系化合物;ベンジル、メチルフェニルグリオキシエステル等が挙げられる。
【0055】
一方、水素引き抜き型光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル−4−フェニルベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、
ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルサルファイド、
アクリル化ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン等のチオキサントン系化合物;4,4’−ビスジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン等のアミノベンゾフェノン系化合物;その他10−ブチル−2−クロロアクリドン、2−エチルアンスラキノン、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン等が挙げられる。これらの光重合開始剤は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0056】
これらのなかでも特に硬化性に優れる点からアミノアルキルフェノン系化合物が好ましく、また、特に発光ピーク波長が350〜420nmの範囲の紫外線を発生するUV−LED光源を活性エネルギー線源として用いた場合には、アミノアルキルフェノン系化合物、アシルホスフィンオキシド系化合物、及びアミノベンゾフェノン系化合物を併用することが硬化性に優れる点から好ましい。
【0057】
これらの重合開始剤の使用量は、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物中の樹脂成分100質量部に対し、その合計使用量として1〜20質量部となる範囲であることが好ましい。即ち、重合開始剤の合計使用量が1質量部以上の場合は良好な硬化性を得ることができ、また20質量部以下の場合は、未反応の重合開始剤が硬化物中に残存することによるマイグレーション、耐溶剤性、耐候性等の物性低下といった問題を回避できる。これらの性能バランスがより良好なものとなる点から、特に、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物中の不揮発成分100質量部に対し、その合計使用量が3〜15質量部となる範囲であることがより好ましい。
【0058】
また、活性エネルギー線として紫外線を照射して硬化塗膜とする場合には、前記した重合開始剤の他に、光増感剤を利用することで硬化性を一層向上させることが可能である。斯かる光増感剤は、例えば、脂肪族アミン等のアミン化合物、o−トリルチオ尿素等の尿素類、ナトリウムジエチルジチオホスフェート、s−ベンジルイソチウロニウム−p−トルエンスルホネート等の硫黄化合物などが挙げられる。これら光増感剤の使用量は、硬化性向上の効果が良好なものとなる点から本発明の活性エネルギー線硬化性組成物中の不揮発成分100質量部に対し、その合計使用量として1〜20質量部となる範囲であることが好ましい。
【0059】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、更に、ラジカル重合性単量体を併用することができる。斯かるラジカル重合性単量体は、例えば、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール、ビニルピリジン、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、アクリルアミド、アクリロイルモルホリン、7−アミノ−3,7−ジメチルオクチル(メタ)アクリレート、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、t−オクチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、エチルジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、テトラクロロフェニル(メタ)アクリレート、2−テトラクロロフェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、テトラブロモフェニル(メタ)アクリレート、2−テトラブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−トリクロロフェノキシエチル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、2−トリブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ペンタクロロフェニル(メタ)アクリレート、ペンタブロモフェニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、メチルトリエチレンジグリコール(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ビスフェノールFのモノ(メタ)アクリレート、アルキレンオキサイド付加ビスフェノールFのモノ(メタ)アクリレート;モノ{2−(メタ)アクリロイルオキシエチル}アシッドホスフェート等の各種燐酸基含有ビニル系単量体;ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、2−メチルアリルスルホン酸、4−ビニルベンゼンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエタンスルホン酸、3−(メタ)アクリロイルオキシプロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等の各種スルホン酸基含有ビニル系単量体; CH
2=CHCOO(CH
2)
3[Si(CH
3)
2O]nSi(CH
3)
3、CH2=C(CH
3)COOC
6H
4〔Si(CH
3)
2O)nSi(CH
3)
3、CH
2=C(CH
3)COO(CH
2)
3[Si(CH
3)
2O]nSi(CH
3)
3、CH
2=C(CH
3)COO(CH2)
3[Si(CH
3)(C
6H
5)○]nSi(CH
3)
3、あるいはCH
2=C(CH
3)COO(CH
2)
3[Si(C
6H
5)
2O]nSi(CH
3)
3(ただし、各式中のnは0または1〜130なる整数であるものとする。)等のような一般式を以て示される、各種のポリシロキサン結合含有単量体;γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリイソプロペニルオキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニル(トリス−β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリクロルシランまたはN−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランおよびその塩酸塩;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル、および、これら単量体のε−カプロラクトン反応物;2−ジメチルアミノエチルビニルエーテル、2−ジエチルアミノエチルビニルエーテル、4−ジメチルアミノブチルビニルエーテル、4−ジエチルアミノブチルビニルエーテル、6−ジメチルアミノヘキシルビニルエーテル等の3級アミンを有する各種ビニルエーテル;2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル等の各種水酸基を有するビニルエーテル;または2−ヒドロキシエトキシアリルエーテル、4−ヒドロキシブトキシアリルエーテル、トリメチロールプロパンのモノ−、あるいはジ−アリルエーテル、ペンタエリスリトールのモノ−、あるいはジ−アリルエーテル等の水酸基を有するアリルエーテル、および、これら単量体のε−カプロラクトン反応物;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、iso−ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロペンチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等のビニルエーテル;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジ(メ夕)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAまたはFのジ(メタ)アクリレート、アルキレンオキサイド付加ビスフェノールAまたはFのジ(メタ)アクリレート;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等の各種不飽和二塩基酸類等の各種2価カルボン酸のジビニルエステル類等の2官能単量体:トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アルキレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、アルキレンオキサイド付加ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、アルキレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート;ジペンタエリスリトールのペンタ(メタ)アクリレート、アルキレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールのペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのヘキサ(メタ)アクリレート、アルキレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールのヘキサ(メタ)アクリレート等、および、これら単量体のε−カプロラクトン反応物が挙げられる。
【0060】
これらのなかでも、特に印刷インキとしての硬化性に優れる点からジペンタエリスリトールのペンタ(メタ)アクリレート、アルキレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールのペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのヘキサ(メタ)アクリレート、又は
アルキレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールのヘキサ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0061】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、活性エネルギー線硬化性印刷インキとしてとりわけ有用であり、その場合、上記した各成分の他の配合物として、顔料、染料、体質顔料、有機又は無機フィラー、有機溶剤、帯電防止剤、消泡剤、粘度調整剤、耐光安定剤、耐候安定剤、耐熱安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、レベリング剤、顔料分散剤、ワックス等の添加剤を使用することができる。
【0062】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、とりわけ活性エネルギー線硬化性印刷インキは、基材に印刷後、活性エネルギー線を照射することで硬化塗膜とすることができる。この活性エネルギー線とは、紫外線、電子線、α線、β線、γ線等の電離放射線が挙げられる。これらのなかでも特に、硬化性の点から紫外線が好ましい。
【0063】
本発明の活性エネルギー線硬化性塗料を硬化させる活性エネルギー線としては、上記の通り、紫外線、電子線、α線、β線、γ線のような電離放射線であるが、具体的なエネルギー源又は硬化装置としては、例えば、殺菌灯、紫外線用蛍光灯、UV−LED、カーボンアーク、キセノンランプ、複写用高圧水銀灯、中圧又は高圧水銀灯、超高圧水銀灯、無電極ランプ、メタルハライドランプ、自然光等を光源とする紫外線、又は走査型、カーテン型電子線加速器による電子線等が挙げられる。
【0064】
また、本発明の活性エネルギー線硬化性印刷インキに用いる顔料としては、公知公用の着色用有機顔料を挙げることができ、例えば「有機顔料ハンドブック(著者:橋本勲、発行所:カラーオフィス、2006年初版)」に掲載される印刷インキ用有機顔料等が挙げられ、溶性アゾ顔料、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、金属フタロシアニン顔料、無金属フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、イソインドリノン顔料、イソインドリン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、アンスラキノン系顔料、キノフタロン顔料、金属錯体顔料、ジケトピロロピロール顔料、カーボンブラック顔料、その他多環式顔料等が使用可能である。
【0065】
また、本発明の活性エネルギー線硬化性印刷インキには、体質顔料として無機微粒子を用いてもよい。無機微粒子としては、酸化チタン、クラファイト、亜鉛華等の無機着色顔料;炭酸石灰粉、沈降性炭酸カルシウム、石膏、クレー(ChinaClay)、シリカ粉、珪藻土、タルク、カオリン、アルミナホワイト、硫酸バリウム、ステアリン酸アルミニウム、炭酸マグネシウム、バライト粉、砥の粉等の無機体質顔料; 等の無機顔料や、シリコーン、ガラスビーズなどがあげられる。これら無機微粒子は、インキ中に0.1〜20質量部の範囲で使用することにより、インキの流動性調整、ミスチング防止、紙等の印刷基材への浸透防止といった効果を得ることが可能である。
【0066】
また、本発明の活性エネルギー線硬化性印刷インキに適する印刷基材としては、カタログ、ポスター、チラシ、CDジャケット、ダイレクトメール、パンフレット、化粧品や飲料、医薬品、おもちゃ、機器等のパッケージ等に用いる紙基材;ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等の各種食品包装用資材に用いられるフィルム、アルミニウムフォイル、合成紙、その他従来から印刷基材として使用されている各種基材を挙げることが出来る。
【0067】
また、本発明の活性エネルギー線硬化性印刷インキの印刷方法としては、例えば、平版オフセット印刷、凸版印刷、グラビア印刷、グラビアオフセット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷等が挙げられる。
【0068】
本発明は、インキの乳化特性が向上する点において、特に版面に水を連続的に供給する平版オフセット印刷において好適に利用することができる。水を連続供給するオフセット印刷機は多数の印刷機メーカーによって製造販売されており、一例としてハイデルベルグ社、小森コーポレーション社、三菱重工印刷紙工機械社、マンローランド社、リョービ社、KBA社等を挙げることができ、またシート形態の印刷用紙を用いる枚葉オフセット印刷機、リール形態の印刷用紙を用いるオフセット輪転印刷機、いずれの用紙供給方式においても本発明を好適に利用することが可能である。更に具体的には、ハイデルベルグ社製スピードマスターシリーズ、小森コーポレーション社製リスロンシリーズ、三菱重工印刷紙工機械社製ダイヤモンドシリーズ等のオフセット印刷機を挙げることができる。
【実施例】
【0069】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、水酸基価及び酸価は以下の方法にて測定した。
[水酸基価]
フラスコに試料に採取し、質量比(無水酢酸:ピリジン溶液)が1:9の無水酢酸−ピリジン溶液を10mL加え、よく振とうした後、還流冷却器をジョイントし、100℃の加熱浴中に入れ、1時間処理をした後、冷却し、純粋10mLを加えた。室温冷却後、フラスコの壁面を洗う様に、n−ブタノール10mLを加え(試料が溶けない場合、透明になるまで、ピリジンを適当量加えて溶解した。)、その後、フェノールフタレインを約10滴加え、0.5mol・LのKOHアルカリ溶液で滴定を行うことにより測定した。
【0070】
[酸価]
試料を中性溶剤(メタノール/トルエン=3/7)15mLにて溶解し、フェノールフタレインを指示薬として、数滴加えて、0.1mol/LのKOHアルコール溶液にて滴定して、微紅色が消えなくなったところを終点として測定を行った。
【0071】
実施例1
攪拌機、温度計及び冷却管を備えた4つ口のフラスコに、液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC株式会社製「エピクロン850、エポキシ当量188g/eq.;以下、「液状BPA型エポキシ樹脂」と略記する。)376質量部、アクリル酸108質量部、無水フタル酸74質量部及びメトキノン(重合禁止剤;以下、「MQ」と略記する。)0.1質量部を仕込み、100℃に昇温した後、トリエチルアミン(触媒;以下、「TEA」と略記する。)1.1質量部を加えた。更に、反応時の粘度を低下させる目的で、
多官能アクリレートモノマーであるジトリメチロールプロパンテトラアクリレートを140質量部を加えて、100℃で15時間反応を行い、エポキシ当量が22,400g/eq.、酸価が0.6mgKOH/g、溶液粘度(酢酸ブチル不揮発分80%質量溶液)5.0Pas、水酸基価が133mgKOH/gである重合性不飽和基含有樹脂(1)を得た。
【0072】
実施例2
無水フタル酸74質量部をテトラヒドロ無水フタル酸76質量部に変えた以外は、実施例1に準拠して合成を行い、エポキシ当量が23,070g/eq.、酸価が0.7mgKOH/g、溶液粘度(酢酸ブチル不揮発分80%質量溶液)4.2Pas、水酸基価が130mgKOH/gである重合性不飽和基含有樹脂(2)を得た。
【0073】
実施例3
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂を564質量部、アクリル酸を180質量部、無水フタル酸を74質量部、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレートを91質量部に変えた以外は、実施例1に準拠して合成を行い、エポキシ当量が30,820g/eq.、酸価が0.8mgKOH/g、溶液粘度(酢酸ブチル不揮発分80%質量溶液)8.6Pas、水酸基価が158mgKOH/gである重合性不飽和基含有樹脂(3)を得た。
【0074】
実施例4
攪拌機、温度計及び冷却管を備えた4つ口のフラスコに、液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC株式会社製「エピクロン850、エポキシ当量188g/eq.;以下、「液状BPA型エポキシ樹脂」と略記する。)376質量部、無水フタル酸37質量部
を仕込み、100℃に昇温した後、トリエチルアミン(触媒;以下、「TEA」と略記する。)1.1質量部を加え、100℃にて3時間反応を行った。その後、更にアクリル酸126質量部、及びメトキノン(重合禁止剤;以下、「MQ」と略記する。)0.1質量部を仕込み、100℃にて15時間反応を行い、エポキシ当量が20,300g/eq.、酸価が0.65mgKOH/g、溶液粘度(酢酸ブチル不揮発分80%質量溶液)5.9Pas、水酸基価が170mgKOH/gである重合性不飽和基含有樹脂(3)を得た。
【0075】
比較例1
攪拌機、温度計及び冷却管を備えた4つ口のフラスコに、液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC株式会社製「エピクロン850、エポキシ当量188g/eq.;以下、「液状BPA型エポキシ樹脂」と略記する。)435質量部、アクリル酸164質量部、及びメトキノン(重合禁止剤;以下、「MQ」と略記する。)0.1質量部を仕込み、100℃に昇温した後、トリフェニルホスフィン(触媒;以下、「TPP」と略記する。)1.2質量部を加えた。100℃で15時間反応を行うことで、エポキシ当量が20,000g/eq.であり、酸価が0.5mgKOH/g、溶液粘度(酢酸ブチル不揮発分80%質量溶液)1.8Pas、水酸基価が200mgKOH/gである重合性不飽和基含有樹脂(R1)を得た。
【0076】
比較例2
アクリル酸92質量部、無水フタル酸111質量部に変えた以外は、実施例1に準拠して合成を行ったところ、反応途中でゲル化した。
【0077】
[乳化適性評価用の活性エネルギー線硬化性バインダーの調製]
本発明における乳化適性向上の効果をより明確に示す目的で、上記重合性不飽和基含有樹脂(1)〜(4)および(R1)に活性エネルギー線重合性アクリレートモノマーとしてジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(サートマー社製「SR355NS」)をラレー粘度計(L型粘度計(25℃))で測定した粘度が41〜48Pa・sの範囲となるように添加し混合することにより、乳化適性評価用の活性エネルギー線硬化性バインダー(T1)〜(T4)および(TR1)を得た。
【0078】
[活性エネルギー線硬化性バインダーの乳化性の評価方法]
調整した活性エネルギー線硬化性バインダー(T1)〜(T4)および(TR1)の乳化適性評価は、ダクテット試験機(川村理研製)を用いて実施した。
ダクテット試験機の断面図を
図1に示す。外筒3は内部がくりぬかれた、底面を有する円筒状の金属であり、内部に評価バインダー7を投入できる構造となっている。バインダー7(5グラム)投入後に円柱棒状の金属である内筒2を
図1に示す通り、外筒3の底面から1ミリメートルの距離に近接するまで差し込む。その後内筒を2000rpmで時計回りに、外筒も60rpmで時計回りに回転させ、速度差をつけることでバインダー7にシェアーがかかり撹拌される。撹拌後3分間が経過した時点で、撹拌を継続しながら蒸留水を0.5(グラム/分)の速度でバインダー7の直上に滴下することで、バインダー7と滴下された蒸留水は即時に撹拌混合される(乳化)。蒸留水の滴下は10分間継続され、蒸留水の滴下量が合計5グラムに達した時点で終了される。
ダクテット試験機は、外筒3は外筒用駆動モーター5によって回転し、内筒2は内筒用駆動モーター1によって回転する構造を有し、また外筒3内部のバインダー7の温度が一定となるよう、恒温水槽4を備え水道水6の温度は常に30℃に保たれている。
バインダー7(5グラム)と蒸留水(5グラム)の撹拌混合が終了した後、内筒2内部にある余剰蒸留水(バインダー中に取り込まれずに余った水)の重量(グラム)を秤量する。これにより、バインダー7中に取り込まれた蒸留水の総重量Yは
【0079】
Y(グラム)=全投入蒸留水(5グラム)−余剰蒸留水の重量
で示され、バインダー7の乳化率Zは、
【0080】
Z(%)=Y÷(バインダー7(5グラム)+Y)×100
で示される。
(ここで、例えば、投入した蒸留水5グラム全てがバインダー中に取り込まれ、余剰蒸留水が0グラムであった場合には、Y=5(グラム)、Z=50(%)と計算される。)
【0081】
バインダー乳化率Z(%)の数値が低いほど、乳化水分を適切に排除する特性に優れており、下記に述べるインキのオフセット印刷適性にも優れ、過乳化やこれに起因する濃度低下等の印刷トラブルが発生しにくい。下記の基準に従って乳化適性を評価した。
3:乳化率Z(%)が25%未満であり、乳化適性は良好である。
2:乳化率Z(%)が25%以上〜35%未満であり、乳化適性は中位である。
1:乳化率Z(%)が35%以上であり、乳化適性が劣っている。
【0082】
[活性エネルギー線硬化性印刷インキの調製]
上記実施例1で得られた重合性不飽和基含有樹脂(1)34.5質量部、青色顔料(BASF社製「HELIOGEN BLUE D7079」、Pigment Blue15:3)19質量部、活性エネルギー線硬化性アクリレートモノマーとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(サートマー社製「DPHA」)10質量部、およびジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(サートマー社製「SR355NS」)26.95質量部、、体質顔料として、(松村産業社製「ハイフィラー #5000PJ」含水ケイ酸マグネシウム)2.5質量部、ワックスとして(シャムロック社製「S−381−N1」ポリオレフィンワックス)1質量部、光重合開始剤として(BASF社製「Irgacure907」2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モノフォリノプロパン−1−オン)3.5質量部、光開始剤として(大同化成工業社製「EAB―SS」4,4′−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン)2.5質量部、重合禁止剤として(和光純薬社製「Q1301」N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム)0.05質量部、全ての原料(合計100質量部)を配合した状態でミキサー(単軸ディゾルバー)を用いて撹拌し、その後3本ロールミルを用いて練肉することで活性エネルギー線硬化性インキ(I1)を得た。
以下、同様にしてその他の重合性不飽和基含有樹脂(2)〜(4)および(R1)、(R2)についても、同一質量部の上記原料を用い、同様に製造することで活性エネルギー線硬化性インキ(I2)〜(I4)および(IR1)を得た。
【0083】
[硬化性および耐溶剤性の評価用展色物の製造方法]
この様にして得た活性エネルギー線硬化性インキ(I1)〜(I4)およびを(IR1)を、簡易展色機(RIテスター、豊栄精工社製)を用い、インキ0.10mlを使用して、RIテスターのゴムロール及び金属ロール上に均一に引き伸ばし、コート紙(王子製紙社製「OKトップコートプラス57.5kg、A判」)の表面に、およそ200cm2の面積にわたって藍濃度1.6(X−Rite社製SpectroEye濃度計で計測)で均一に塗布されるように展色し、展色物を作製した。なおRIテスターとは、紙やフィルムにインキを展色する試験機であり、インキの転移量や印圧を調整することが可能である。
【0084】
[UVランプ光源による硬化方法]
インキ塗布後の展色物に紫外線(UV)照射を行い、インキ皮膜を硬化させた。水冷メタルハライドランプ(出力100W/cm1灯)およびベルトコンベアを搭載したUV照射装置(アイグラフィックス社製、コールドミラー付属)を使用し、展色物をコンベア上に載せ、ランプ直下(照射距離11cm)を以下に述べる所定条件で通過させた。各条件における紫外線照射量は紫外線積算光量系(ウシオ電機社製UNIMETER UIT−150−A/受光機UVD−C365)を用いて測定した。
【0085】
[活性エネルギー線硬化性インキの評価方法:硬化性]
硬化性は、照射直後に爪スクラッチ法にて展色物表面の傷付きの有無を確認した。前記UV照射装置のコンベア速度(m/分)を変化させながら展色物に紫外線を照射し、硬化後に爪で強く擦っても傷付きが無い最速のコンベア速度(m/分)を記載した。従ってコンベア速度の数値が大きいほどインキの硬化性が良好である。
【0086】
[活性エネルギー線硬化性インキの評価方法:耐溶剤性]
耐溶剤性は、照射直後に溶剤ラビング法にて印刷物表面の傷付きの有無を確認した。前記UV照射装置のコンベア速度50(m/分)にて展色物に紫外線を照射し、インキを硬化させた。硬化後にエタノールを含ませた綿棒で、評価用インキ硬化塗膜の表面を30往復擦った後の状態変化を目視で観察して、下記の基準に従って耐溶剤性を評価した。
3:変化なし
2:擦れ痕が残る
1:インキ硬化塗膜が消失し、基材(用紙)が確認できる
【0087】
[活性エネルギー線硬化性インキの評価方法:耐ミスト性]
インコメーター((株)東洋精機製作所社製)に、オフセット印刷インキを1.31mLのせ、32℃において1200rpmで3分間回転させ、ロール下に置いた定型紙への飛散量を目視で観察した。飛散量の評価は次の3段階で行った。
1:ミスチングが多い
2:少しミスチングする
3:わずかしかミスチングしない
【0088】
[活性エネルギー線硬化性インキのオフセット印刷方法]
製造された活性エネルギー線硬化性インキ(I1)〜(I4)および(IR1)について、オフセット印刷適性を評価した。紫外線照射装置としてアイグラフィックス社製水冷メタルハライドランプ(出力160W/cm、3灯使用)を搭載したマンローランド社製オフセット印刷機(ローランドR700印刷機、幅40インチ機)を用いて、毎時9000枚の印刷速度にてオフセット印刷を実施した。印刷用紙には王子製紙社製OKトップコートプラス(57.5kg、A判)を使用した。版面に供給される湿し水は、水道水98質量部とエッチ液(FST−700、DIC社製)2質量部を混合した水溶液を用いた。
【0089】
[活性エネルギー線硬化性インキの評価方法:印刷適性]
オフセットインキ印刷適性の評価方法としては、まず印刷機の水供給ダイヤルを40(標準水量)にセットし、印刷物濃度が標準プロセス藍濃度1.6(X−Rite社製SpectroEye濃度計で計測)となるようインキ供給キーを操作し、濃度が安定した時点でインキ供給キーを固定した。
その後インキ供給キーを固定したままの条件で、水供給ダイヤルを40から55に変更し水供給量を増やした条件で300枚印刷し、300枚後の印刷物の藍濃度を測定した。水供給量を増やした状態においても印刷物の濃度低下が少ないほど、乳化適性に優れ、印刷適性に優れたインキと評価できる。下記の基準に従って活性エネルギー線硬化性インキの印刷適性を評価した。
3:印刷物の藍濃度が1.5以上である
2:印刷物の藍濃度が1.4以上〜1.5未満である
1:印刷物の藍濃度が1.4未満である
【0090】
【表1】
【0091】
【表2】