【実施例】
【0049】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0050】
(製造例1)
−合歓(
Albizzia julibrissin)の水抽出物の製造−
合歓の花の粉砕物に、質量比で10倍量の水を加え、80℃で2時間加熱し、ろ過した。残渣に同量の水を加え、80℃で2時間加熱し、ろ過した。ろ液を濃縮、凍結乾燥して、合歓の水抽出物(凍結乾燥品)を得た。なお、得られた合歓の水抽出物の抽出率は、31.5%であった。
【0051】
(製造例2)
−合歓(
Albizzia julibrissin)の50質量%エタノール抽出物の製造−
合歓の花の粉砕物に、質量比で10倍量の50質量%エタノールを加え、80℃で2時間加熱し、ろ過した。残渣に同量の50質量%エタノールを加え、80℃で2時間加熱し、ろ過した。ろ液を濃縮、凍結乾燥して、合歓の50質量%エタノール抽出物(凍結乾燥品)を得た。なお、得られた合歓の50質量%エタノール抽出物の抽出率は、29.8%であった。
【0052】
(製造例3)
−合歓(
Albizzia julibrissin)の80質量%エタノール抽出物の製造−
合歓の花の粉砕物に、質量比で10倍量(質量比)の80質量%エタノールを加え、80℃で2時間加熱し、ろ過した。残渣に同量の80質量%エタノールを加え、80℃で2時間加熱し、ろ過した。ろ液を濃縮、凍結乾燥して、合歓の80質量%エタノール抽出物(凍結乾燥品)を得た。なお、得られた合歓の80質量%エタノール抽出物の抽出率は、26.9%であった。
【0053】
(
参考例1:スーパーオキサイド消去作用試験(NBT法))
前記製造例1から3で得られた各合歓の抽出物を被験試料として用い、下記の試験方法によりスーパーオキサイド消去作用を試験した。
【0054】
3mmol/Lのキサンチン、3mmol/LのEDTA、1.5mg/mLの牛血清アルブミン(BSA)溶液、0.75mmol/Lのニトロブルーテトラゾリウム(NBT)各0.1mL、及び0.05mol/LのNa
2CO
3緩衝液(pH10.2)2.4mLを試験管にとり、これに各試料溶液0.1mLを添加し、25℃で10分間放置した。次いで、キサンチンオキシダーゼ溶液を加えて素早く攪拌し、25℃で20分間静置した。その後、6mmol/Lの塩化銅0.1mLを加えて反応を停止させ、波長560nmにおける吸光度を測定した。このとき測定した吸光度を「試料溶液添加、酵素溶液添加時の吸光度」とした。
また、同様の操作と吸光度の測定を、酵素溶液を添加せずに行った。このとき測定した吸光度を「試料溶液添加、酵素溶液無添加時の吸光度」とした。
また、試料溶液を添加せずに蒸留水を添加した場合についても同様の測定を行った。このとき測定した吸光度を「試料溶液無添加、酵素溶液添加時の吸光度」とした。
また、酵素溶液を添加せず、更に試料溶液を添加せずに蒸留水を添加した場合についても同様の測定を行った。このとき測定した吸光度を「試料溶液無添加、酵素溶液無添加時の吸光度」とした。
そして、測定結果から、下記数式1によりスーパーオキサイド消去率を求めた。結果を表1に示す。なお、被験試料は、試料濃度100μg/mL、50μg/mL、25μg/mLで使用した。
<数式1>
スーパーオキサイド消去率(%)={1−(A−B)/(C−D)}×100
A:試料溶液添加、酵素溶液添加時の吸光度
B:試料溶液添加、酵素溶液無添加時の吸光度
C:試料溶液無添加、酵素溶液添加時の吸光度
D:試料溶液無添加、酵素溶液無添加時の吸光度
【0055】
次に、試料濃度を段階的に減少させて上記スーパーオキサイド消去率の測定を行い、スーパーオキサイドの消去率が50%になる試料濃度(以下、「IC
50」と称することがある。)(μg/mL)を内挿法により求めた。結果を表2に示す。
【0056】
【表1】
【表2】
表1から2の結果から、製造例1から3の合歓の抽出物が、中程度のスーパーオキサイド消去作用を有することが確認できた。
【0057】
(
参考例2:DPPHに対するラジカル消去作用試験)
前記製造例1から3で得られた各合歓の抽出物を被験試料として用い、下記の試験方法により非常に安定なラジカルである1,1−diphenyl−2−picrylhydrazyl radical(DPPH)を使用してラジカル消去作用を試験した。
【0058】
1.5×10
−4mol/LのDPPHエタノール溶液3mLに各試料溶液3mLを加え、直ちに容器を密栓して振り混ぜ、30分間静置した後、波長520nmの吸光度を測定した。
コントロールとして、試料溶液の代わりに試料溶液を溶解した溶媒を用いて同様に操作し、波長520nmの吸光度を測定した。また、ブランクとして、エタノールに試料溶液3mLを加えた後、直ちに波長520nmの吸光度を測定した。
そして、測定結果から、下記数式2によりラジカル消去率(%)を求めた。結果を表3に示す。なお、被験試料は、試料濃度200μg/mL、100μg/mL、50μg/mLで使用した。
<数式2>
ラジカル消去率(%)={1−(B−C)/A}×100
A:コントロールの吸光度
B:試料溶液を添加した場合の吸光度
C:ブランクの吸光度
【0059】
次に、試料濃度を段階的に減少させて上記ラジカル消去率の測定を行い、DPPHラジカルの消去率が50%になる試料濃度(以下、「IC
50」と称することがある。)(μg/mL)を内挿法により求めた。結果を表4に示す。
【0060】
【表3】
【表4】
表3から4の結果から、製造例1から3の合歓の抽出物が、DPPHに対するラジカル消去作用を有することが確認できた。
【0061】
参考例1から2の結果から、合歓(
Albizzia julibrissin)の抽出物は、スーパーオキサイド消去作用、及びラジカル消去作用の少なくともいずれかを有することが確認され、合歓(
Albizzia julibrissin)の抽出物が、抗酸化剤、及び抗老化剤の有効成分として、好適に利用可能であることが示唆された。
【0062】
(実施例3:血小板凝集抑制作用試験)
前記製造例1から3で得られた各合歓の抽出物を被験試料として用い、下記の試験方法により血小板凝集抑制作用を試験した。
【0063】
日本薬局方ヘパリンナトリウム注射液を1/10量加えて採血したウサギの血液を遠心分離(180×g、10分間、室温)して血小板浮遊液(P.R.P.)を得た。これを血小板浮遊液とした。血小板浮遊液223μLに200mmol/L塩化カルシウム溶液1μLを加え、37℃で1分間反応した。これに被験試料溶液1μLを加え、さらに2分間反応し、撹拌子を入れて1分間撹拌した後、コラーゲン溶液を25μL添加して37℃で10分間の凝集を血小板凝集測定装置PAM12CL(メバニクス株式会社製)を用いて、凝集率(A)を測定した。別に、試料溶液の代わりに試料溶液の溶媒を添加し、上記と同様に操作し、凝集率(B)を測定し、下記数式3により血小板凝集抑制率を求めた。結果を表5に示す。なお、被験試料は、試料濃度400μg/mL、100μg/mLで試験を行った。
<数式3>
血小板凝集抑制率(%)={(A−B)/A}×100
A:コントロールの血小板凝集率
B:被験試料溶液添加時の血小板凝集率
【0064】
【表5】
表5の結果から、製造例1から3の合歓の抽出物が、血小板凝集抑制作用を有することが確認できた。
【0065】
実施例3の結果から、合歓(
Albizzia julibrissin)の抽出物は、血小板凝集抑制作用を有することが確認され、合歓(
Albizzia julibrissin)の抽出物が、抗炎症剤の有効成分として、好適に利用可能であることが示唆された。
【0066】
(
参考例4:チロシナーゼ活性阻害作用試験)
前記製造例1から3で得られた各合歓の抽出物を被験試料として用い、下記の試験方法によりチロシナーゼ活性阻害作用を試験した。
【0067】
48穴プレートに、Mcllvaine緩衝液(pH6.8)0.2mL、0.3mg/mL チロシン溶液0.06mL、被験試料の25%DMSO溶液0.18mLを加え、37℃で10分間静置した。これに、2,500units/mL チロシナーゼ溶液0.02mLを加え、引き続き37℃で15分間反応した。反応終了後、波長475nmにおける吸光度を測定した。同様の方法で空試験を行い補正した。
チロシナーゼ活性阻害率は、下記数式4により求めた。結果を表6に示す。なお、被験試料は、試料濃度400μg/mLで使用した。
<数式4>
チロシナーゼ活性阻害率(%)={1−(St−Sb)/(Ct−Cb)}×100
St:被験試料溶液の波長475nmにおける吸光度
Sb:被験試料溶液ブランクの波長475nmにおける吸光度
Ct:コントロール溶液の波長475nmにおける吸光度
Cb:コントロール溶液ブランクの波長475nmにおける吸光度
【0068】
【表6】
表6の結果から、製造例1から3の合歓の抽出物が、チロシナーゼ活性阻害作用を有することが確認できた。
【0069】
(実施例5:幹細胞増殖因子(SCF)mRNA発現抑制作用試験)
前記製造例1から3で得られた各合歓の抽出物を被験試料として用い、下記の試験方法により幹細胞増殖因子(SCF)mRNA発現抑制作用を試験した。
【0070】
正常ヒト新生児包皮表皮角化細胞(normal human epidermal keratinocyte;NHEK)を、80cm
2フラスコで正常ヒト表皮角化細胞長期培養用増殖培地(EpiLife−KG2)において、37℃、5%CO
2下で前培養し、トリプシン処理により細胞を集めた。
次に、EpiLife−KG2を用いて35mmシャーレ(FALCON社製)に40×10
4cells/2mL/シャーレずつ播き、37℃、5%CO
2下で一晩培養した。24時間後に培養液を捨て、HEPES緩衝液1mLを加え、UV−B照射(50mJ/cm
2)を行い、その後、EpiLife−KG2で必要濃度に溶解した被験試料を各シャーレに2mLずつ添加し、37℃、5%CO
2下で24時間培養した。培養後、培養液を捨て、TRIzol
(R) Reagent(Invitrogen社製;Cat.no.15596−026)にてtotal RNAを抽出し、それぞれのRNA量を分光光度計にて測定し、200ng/μLになるようにtotal RNAを調製した。
このtotal RNAを鋳型とし、SCF(Stem Cell Factor)、及び内部標準であるGAPDHのmRNAの発現量を測定した。検出はリアルタイムPCR装置(Smart Cycler
(R)、Cepheid社製)を用いて、Takara One Step SYBR
(R) RT−PCR Kit(Perfect Real Time、code No.RR046A)によるリアルタイム One Step RT−PCR反応により行った。
SCFのmRNAの発現量は、「紫外線未照射、被験試料無添加」、「紫外線未照射、被験試料添加」、「紫外線照射、被験試料無添加」、及び「紫外線照射、被験試料添加」でそれぞれ培養した細胞から調製した総RNA標品を基にして、GAPDHの値で補正値を求め、更に「紫外線未照射、被験試料無添加」の補正値を100とした時の「紫外線照射、被験試料無添加」、「紫外線未照射、被験試料添加」、及び「紫外線照射、被験試料添加」の補正値を算出した。
幹細胞増殖因子(SCF)mRNA発現抑制率は、下記数式5により求めた。結果を表7に示す。なお、被験試料は、試料濃度10μg/mL、1μg/mLで使用した。
<数式5>
幹細胞増殖因子(SCF)mRNA発現抑制率(%)={(A−B)−(A−C)}/(A−B)×100
A:紫外線未照射、被験試料無添加時の補正値
B:紫外線照射、被験試料無添加時の補正値
C:紫外線照射、被験試料添加時の補正値
【0071】
【表7】
表7の結果から、製造例1から3の合歓の抽出物が、幹細胞増殖因子(SCF)mRNA発現抑制作用を有することが確認できた。
【0072】
参考例4から
実施例5の結果から、合歓(
Albizzia julibrissin)の抽出物は、チロシナーゼ活性阻害作用、及び幹細胞増殖因子(SCF)mRNA発現抑制作用の少なくともいずれかを有することが確認され、合歓(
Albizzia julibrissin)の抽出物が、美白剤の有効成分として、好適に利用可能であることが示唆された。
【0073】
(実施例6:マトリックスメタロプロテアーゼ−1(MMP−1)活性阻害作用試験)
前記製造例1から3で得られた各合歓の抽出物を被験試料として用い、下記の試験方法によりマトリックスメタロプロテアーゼ−1(MMP−1)活性阻害作用を試験した。この試験方法は、Wunsch and Heidrich法を一部改変したものである。
【0074】
蓋付試験管にて、20mmol/mLの塩化カルシウム含有0.1mol/LのTris−HCl緩衝液(pH7.1)に溶解した各試料溶液50μL、MMP−1溶液50μL、及びPz−peptide溶液400μLを混合し、37℃にて30分間反応させた後、25mmol/Lのクエン酸溶液1mLを加え反応を停止した。その後、酢酸エチル5mLを加え、激しく振とうした。これを遠心(1,600×g、10分)し、酢酸エチル層の波長320nmにおける吸光度を測定した。同様の方法で空試験を行い補正した。
なお、MMP−1としては、COLLAGENASE Type IV from Clostridium histolyticum(シグマ社製)を使用した。
Pz−peptideとしては、Pz−Pro−Leu−Gly−Pro−D−Arg−OH(BACHEM Fenichemikalien AG社製)を使用した。
そして、得られた結果から、下記数式6によりMMP−1活性阻害率を求めた。結果を表8に示す。なお、被験試料は、試料濃度400μg/mL、100μg/mLで使用した。
<数式6>
MMP−1活性阻害率(%)={1−(C−D)/(A−B)}×100
A:試料溶液無添加、酵素添加での波長320nmにおける吸光度
B:試料溶液無添加、酵素無添加での波長320nmにおける吸光度
C:試料溶液添加、酵素添加での波長320nmにおける吸光度
D:試料溶液添加、酵素無添加での波長320nmにおける吸光度
【0075】
【表8】
表8の結果から、製造例1から3の合歓の抽出物が、マトリックスメタロプロテアーゼ−1(MMP−1)活性阻害作用を有することが確認できた。
【0076】
(実施例7:マトリックスメタロプロテアーゼ−14(MMP−14)活性阻害作用試験)
前記製造例1から3で得られた各合歓の抽出物を被験試料として用い、下記の試験方法によりマトリックスメタロプロテアーゼ−14(MMP−14)活性阻害作用を試験した。
【0077】
96穴マイクロプレートにて、50mmol/LのHEPES、10mmol/LのCaCl
2、0.05質量%のBrij−35、1mmol/LのDTNB〔5,5’−dithiobis(2−nitoro−benzoic acid)〕緩衝液(pH7.5)で調製したMMP−14溶液20μL、及び50mmol/LのHEPES、10mmol/LのCaCl
2、0.05質量%のBrij−35、1mmol/LのDTNB〔5,5’−dithiobis(2−nitoro−benzoic acid)〕緩衝液で調製した各試料溶液20μLを混合した。37℃にて45分間反応させた後、10μLの基質溶液を添加し、反応を開始した。基質分解産物のメルカプト基と緩衝液中のDTNBとの反応生成物である2−nitro−5−thiobenzoic acidの量を波長412nmで30分間の吸光度を測定し、1分間当たりの生成量に基づいて30分間の傾斜度の値を求めた。同様の方法で空試験を行い補正した。
MMP−14としては、Enzyme(Human,Recombinant) From:E.coli recombinant human MMP−14 catalytic domain(Biomol社製)を用いた。
基質としては、thiopeptide(Ac−PLG−[2−mercapto−4−methyl−pentanoyl]−LG−OC
2H
5)(Biomol社製)を用いた。
そして、得られた結果から、下記数式7により、MMP−14活性阻害率を求めた。結果を表9に示す。なお、被験試料は、試料濃度400μg/mLで使用した。
<数式7>
MMP−14活性阻害率(%)=(A−B)/A×100
A:試料溶液無添加時の30分間における傾斜度の値
B:試料溶液添加時の30分間における傾斜度の値
【0078】
【表9】
表9の結果から、製造例1から3の合歓の抽出物が、マトリックスメタロプロテアーゼ−14(MMP−14)活性阻害作用を有することが確認できた。
【0079】
(実施例8:エストロゲン様作用試験)
前記製造例1から3で得られた各合歓の抽出物を被験試料として用い、下記の試験方法によりエストロゲン様作用を試験した。
【0080】
ヒト乳癌由来細胞(MCF−7)を10%の牛胎児血清(FBS)、1質量%のNEAA、及び1mmol/Lのピルビン酸ナトリウムを含有するMEMを用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を活性炭処理した10%のFBS、1質量%のNEAA、及び1mmol/Lのピルビン酸ナトリウムを含有するフェノールレッド不含MEM(T−MEM)を用いて3.0×10
4cells/mLの濃度に希釈した後、48穴マイクロプレートに1穴あたり450μLずつ播種し、細胞を定着させるため培養した。6時間後(0日目)にT−MEMで終濃度の10倍に調製した各試料溶液を各穴に50μLずつ添加し、培養を続けた。3日目に培地を抜き、T−MEMで終濃度に調製した試料溶液を各穴に0.5mL添加し、更に培養を続けた。
エストロゲン様作用は、MTTアッセイを用いて測定した。培養終了後、培地を抜き、1質量%のNEAA、1mmol/Lのピルビン酸ナトリウムを含有するMEMに終濃度0.4mg/mLで溶解したMTT〔3−(4,5−Dimethyl−2−thiazolyl)−2,5−diphenyl−2H−tetrazolium Bromide〕を各穴に200μLずつ添加した。2時間培養した後に、細胞内に生成したブルーホルマザンを2−プロパノール200μLで抽出した。抽出後、波長570nmにおける吸光度を測定した。同時に濁度として波長650nmにおける吸光度を測定し、両者の差をもってブルーホルマザン生成量とした。ポジティブコントロールとして、10
−9mol/Lのエストラジオールを使用した。
そして、得られた測定結果から、下記数式8によりエストロゲン様作用(エストロゲン依存性増殖作用)率を求めた。結果を表10に示す。なお、被験試料は、試料濃度3.125μg/mLで使用した。
<数式8>
エストロゲン様作用率(%)=(A/B)×100
A:試料溶液添加の場合の吸光度
B:試料溶液無添加の場合の吸光度
【0081】
【表10】
表10の結果から、製造例1から3の合歓の抽出物が、エストロゲン様作用を有することが確認できた。
【0082】
実施例6から8の結果から、合歓(
Albizzia julibrissin)の抽出物は、マトリックスメタロプロテアーゼ−1(MMP−1)活性阻害作用、マトリックスメタロプロテアーゼ−14(MMP−14)活性阻害作用、及びエストロゲン様作用の少なくともいずれかを有することが確認され、合歓(
Albizzia julibrissin)の抽出物が、抗老化剤の有効成分として、好適に利用可能であることが示唆された。
【0083】
(
参考例9:テストステロン5α−リダクターゼ活性阻害作用試験)
前記製造例1から3で得られた各合歓の抽出物を被験試料として用い、下記の試験方法によりテストステロン5α−リダクターゼ活性阻害作用を試験した。
【0084】
秤量蓋付V底試験管にて、プロピレングリコールで調製した4.2mg/mL テストステロン 20μL、1mg/mL NADPH含有5mmol/L Tris−HCl緩衝液(pH7.13)825μLを混合した。これに、エタノール、50%エタノール、若しくは精製水で調製した被験試料80μL、及び、粗酵素液(S−9)(オリエンタル酵母社製)75μLを加え再び混合し、37℃にて30分反応させた後、塩化メチレン1mLを加え反応を停止した。これを遠心(1,600×g、10分)し、塩化メチレン層を下記の条件でガスクロマトグラフィー分析した。同様の方法で空試験を行った。
予め、3α−アンドロスタンジオール、ジヒドロテストステロン(DHT)、及び、テストステロンの標準品の塩化メチレン溶液を同様にガスクロマトグラフィー分析し、これら3化合物の精秤量とピーク面積よりピーク面積あたりの化合物量を算出しておき、S−9による反応後の3α−アンドロスタンジオール、ジヒドロテストステロン(DHT)、及び、テストステロンそれぞれのピーク面積あたりの濃度を求めた(数式9)。その後、数式10に従い、被験試料の変換率を求めた。
<数式9>
濃度(%)=被験試料のピーク面積×標準品濃度/標準品のピーク面積
<数式10>
変換率(%)=(A+B)/(A+B+C)
A:3α−アンドロスタンジオールの濃度
B:ジヒドロテストステロン(DHT)の濃度
C:テストステロンの濃度
テストステロン5α−リダクターゼ活性阻害率は、上記変換率に基づいて、下記数式11により求めた。
<数式11>
テストステロン5α−リダクターゼ活性阻害率(%)=(1−E/D)×100
D:空試験での変換率
E:被験試料添加での変換率
なお、ガスクロマトグラフィーの条件は、以下のとおりである。
[ガスクロマトグラフィーの条件]
・使用機器:Shimadzu GC−7A(株式会社島津製作所製)
・カラム:DB−1701(直径0.53mm×30m、膜厚:1.0μm)
・カラム温度/注入温度:240℃/300℃
・検出器:FID
・キャリアガス:窒素ガス
【0085】
次に、試料濃度を段階的に減少させて、上記、テストステロン5α−リダクターゼ活性阻害率の測定を行い、テストステロン5α−リダクターゼ活性阻害率が50%になる試料濃度(以下、「IC
50」と称することがある。)(μg/mL)を内挿法により求めた。結果を表11に示す。
【0086】
【表11】
表11の結果から、製造例1から3の合歓の抽出物が、テストステロン5α−リダクターゼ活性阻害作用を有することが確認できた。
【0087】
(
参考例10:アンドロゲン受容体結合阻害作用試験)
前記製造例1から3で得られた各合歓の抽出物を被験試料として用い、下記の試験方法によりアンドロゲン受容体結合阻害作用を試験した。
【0088】
マウス自然発生乳がん(シオノギ癌;SC115)よりクローニングされたSC−3細胞(アンドロゲン依存性マウス乳癌細胞)を、2%DCC−FBS、及び10
8mol/Lテストステロン含有MEM(以下、「MEM/2」と称することがある。)を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。
回収した細胞を1.0×10
5cells/mlの濃度に2%DCC−FBS含有MEMで希釈し、96穴プレートに1穴当たり100μLずつ播種し、37℃、5%CO
2下で一晩培養した。
培養終了後、培地を抜き、10
−9mol/Lのジヒドロテストステロン(DHT)を含む0.5%BSA含有Ham F12+MEM(以下、「HMB」と称することがある。)に溶解した被験試料を100μL添加し、48時間培養した。
その後、終濃度0.4mg/mLで2%DCC−FBS含有MEMに溶解したMTTを各穴に100μL添加し、2時間培養した後に、細胞内に生成したブルーホルマザンを2−プロパノール200μLで抽出した。
抽出後、ブルーホルマザンを含有するイソプロパノールについて、ブルーホルマザンの吸収極大点がある570nmの吸光度を測定した。同時に濁度として、650nmにおける吸光度を測定し、両吸光度の差をもってブルーホルマザンの生成量とした(下記結合阻害率の計算式における吸光度はこの補正済み吸光度である)。
空試験としてHMBのみで培養した細胞を用い、陽性対照として10
−9mol/LのDHTのみを含有したHMBで培養した細胞を用い、同様の方法で試験を行って補正した。
アンドロゲン受容体結合阻害率(%)は、下記数式12により求めた。
<数式12>
アンドロゲン受容体結合阻害率(%)={1−(C−D)/(A−B)}×100
A:DHT添加、被験試料無添加の場合の吸光度
B:DHT無添加、被験試料無添加の場合の吸光度
C:DHT添加、被験試料添加の場合の吸光度
D:DHT無添加、被験試料添加の場合の吸光度
【0089】
次に、試料濃度を段階的に減少させて、上記、アンドロゲン受容体結合阻害率の測定を行い、アンドロゲン受容体結合阻害率が50%になる試料濃度(以下、「IC
50」と称することがある。)(μg/mL)を内挿法により求めた。結果を表12に示す。
【0090】
【表12】
表12の結果から、製造例1から3の合歓の抽出物が、アンドロゲン受容体結合阻害作用を有することが確認できた。
【0091】
参考例9から10の結果から、合歓(
Albizzia julibrissin)の抽出物は、テストステロン5α−リダクターゼ活性阻害作用、及びアンドロゲン受容体結合阻害作用の少なくともいずれかを有することが確認され、合歓(
Albizzia julibrissin)の抽出物が、育毛剤の有効成分として、好適に利用可能であることが示唆された。
【0092】
(
参考例11:サイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用試験)
前記製造例1から3で得られた各合歓の抽出物を被験試料として用い、下記の試験方法によりサイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用を試験した。
【0093】
5mmol/L 塩化マグネシウム含有50mmol/L Tris−HCl緩衝液(pH7.5)0.2mLに、2.5mg/mL ウシ血清アルブミン溶液0.1mL及び0.1mg/mL ホスホジエステラーゼ溶液0.1mL、更に被験試料溶液0.05mLを加え、37℃で5分間予備反応した。これに0.5mg/mL サイクリックAMP(cAMP)溶液0.05mLを加え、37℃で30分間反応した。沸騰水浴上で3分間煮沸することにより反応を停止し、これを遠心(2,260×g、10分、4℃)し、上清中の反応基質であるサイクリックAMPを下記の条件でHPLC分析した。同様の方法で空試験を行い補正した。
[HPLCの条件]
Column:Wakosil C18−ODS 5μm
Mobil phase:1mM TBAP in 25mM KH
2PO
4:CH
3CN=90:10
Flow rate:1.0mL/min
Detector:260nm
次に、サイクリックAMP標準品のピーク面積(A)、試料無添加時におけるサイクリックAMP標準品とサイクリックAMPホスホジエステラーゼとの反応溶液の上清のピーク面積(B1)および試料添加時におけるサイクリックAMP標準品とサイクリックAMPホスホジエステラーゼとの反応溶液の上清のピーク面積(B2)を求めた。得られた結果から、下記式より試料無添加時のサイクリックAMP標準品分解率(C)及び試料添加時のサイクリックAMP標準品の分解率(D)を算出した。
試料無添加時の標準品の分解率(C)(%)=(1−B1/A)×100
試料添加時の標準品の分解率(D)(%)=(1−B2/A)×100
その後、上記式により算出した各分解率(C)及び(D)に基づいて、下記数式13によりサイクリックAMPホスホジエステラーゼ阻害率(%)を算出した。結果を表13に示す。なお、被験試料は、試料濃度200μg/mL、50μg/mLで使用した。
<数式13>
サイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害率(%)=(1−D/C)×100
【0094】
【表13】
表13の結果から、製造例1から3の合歓の抽出物が、サイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用を有することが確認できた。
【0095】
参考例11の結果から、合歓(
Albizzia julibrissin)の抽出物は、サイクリックAMPホスホジエステラーゼ活性阻害作用を有することが確認され、合歓(
Albizzia julibrissin)の抽出物が、抗肥満剤の有効成分として、好適に利用可能であることが示唆された。
【0096】
(配合例1)
−乳液−
下記組成に従い、乳液を常法により製造した。
・合歓(
Albizzia julibrissin)の花の50質量%エタノール抽出物(製造例2)・・・0.10g
・ホホバオイル・・・4.00g
・1,3−ブチレングリコール・・・3.00g
・アルブチン・・・3.00g
・ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.)・・・2.50g
・オリーブオイル・・・2.00g
・スクワラン・・・2.00g
・セタノール・・・2.00g
・モノステアリン酸グリセリル・・・2.00g
・オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)・・・2.00g
・パラオキシ安息香酸メチル・・・0.15g
・グリチルリチン酸ステアリル・・・0.10g
・黄杞エキス・・・0.10g
・グリチルリチン酸ジカリウム・・・0.10g
・イチョウ葉エキス・・・0.10g
・コンキオリン・・・0.10g
・オウバクエキス・・・0.10g
・カミツレエキス・・・0.10g
・香料・・・0.05g
・精製水・・・残部(合計100.00g)
【0097】
(配合例2)
−化粧水−
下記組成に従い、化粧水を常法により製造した。
・合歓(
Albizzia julibrissin)の花の水抽出物(製造例1)・・・0.10g
・グリセリン・・・3.00g
・1,3−ブチレングリコール・・・3.00g
・アスコルビン酸グルコシド・・・2.00g
・オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)・・・2.00g
・パラオキシ安息香酸メチル・・・0.15g
・グリチルリチン酸二カリウム・・・0.10g
・クエン酸・・・0.10g
・クエン酸ソーダ・・・0.10g
・油溶性甘草エキス・・・0.10g
・海藻エキス・・・0.10g
・クジンエキス・・・0.10g
・キシロビオースミクスチャー・・・0.05g
・香料・・・0.05g
・精製水・・・残部(合計:100.00g)
【0098】
(配合例3)
−クリーム−
下記組成に従い、クリームを常法により製造した。
・合歓(
Albizzia julibrissin)の花の80質量%エタノール抽出物(製造例3)・・・0.10g
・スクワラン・・・10.00g
・1,3−ブチレングリコール・・・6.00g
・流動パラフィン・・・5.00g
・サラシミツロウ・・・4.00g
・セタノール・・・3.00g
・モノステアリン酸グリセリル・・・3.00g
・ラノリン・・・2.00g
・オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)・・・1.50g
・パラオキシ安息香酸メチル・・・1.50g
・ステアリン酸・・・1.00g
・アスコルビン酸リン酸マグネシウム・・・0.10g
・グリチルレチン酸・・・0.10g
・酵母抽出液・・・0.10g
・シソ抽出液・・・0.10g
・シナノキ抽出液・・・0.10g
・ジユ抽出液・・・0.10g
・香料・・・0.10g
・精製水・・・残部(合計:100.00g)
【0099】
(配合例4)
−パック−
下記組成に従い、パックを常法により製造した。
・合歓(
Albizzia julibrissin)の花の50質量%エタノール抽出物(製造例2)・・・0.20g
・ポリビニルアルコール・・・15.00g
・エタノール・・・10.00g
・プロピレングリコール・・・7.00g
・ポリエチレングリコール・・・3.00g
・セージ抽出液・・・0.10g
・トウキ抽出液・・・0.10g
・ニンジン抽出液・・・0.10g
・パラオキシ安息香酸エチル・・・0.05g
・香料・・・0.05g
・精製水・・・残部(合計:100.00g)
【0100】
(配合例5)
−ヘアトニック−
下記組成の育毛作用を有するヘアトニックを、常法により製造した。
・塩酸ピリドキシン・・・0.1g
・レゾルシン・・・0.01g
・D−パントテニルアルコール・・・0.1g
・グリチルリチン酸ジカリウム・・・0.1g
・l−メントール・・・0.05g
・1,3−ブチレングリコール・・・4.0g
・センブリエキス・・・0.1g
・ニンジンエキス・・・0.1g
・クジンエキス・・・0.1g
・合歓(
Albizzia julibrissin)の花の水抽出物(製造例1)・・・0.2g
・香料・・・適量
・精製水・・・残部(合計:100.00g)
【0101】
(配合例6)
−シャンプー−
下記組成に従い、シャンプーを常法により製造した。
・ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム・・・30.0g
・ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アンモニウム・・・20.0g
・ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン・・・6.0g
・ヤシ油脂肪酸モジエタノールアミド・・・4.0g
・ジステアリン酸エチレングリコール・・・2.0g
・防腐剤(パラオキシ安息香酸メチル)・・・0.15g
・合歓(
Albizzia julibrissin)の花の80質量%エタノール抽出物(製造例3)・・・0.2g
・ムクロジエキス・・・0.2g
・黄杞エキス・・・0.5g
・オウバクエキス・・・0.3g
・ローズマリーエキス・・・0.5g
・香料・・・0.01g
・1,3−ブチレングリコール・・・3.0g
・精製水・・・残部(合計:100.00g)
【0102】
(配合例7)
−リンス−
下記組成に従い、リンスを常法により製造した。
・塩化ステアリルトリメチルアンモニウム・・・1.5g
・ポリオキシエチレンセチルエーテル・・・1.0g
・セチルアルコール・・・2.0g
・オクチルドデカノール・・・1.0g
・カチオン化セルロース・・・0.5g
・プロピレングリコール・・・5.0g
・合歓(
Albizzia julibrissin)の花の50質量%エタノール抽出物(製造例2)・・・0.2g
・ムクロジエキス・・・0.2g
・黄杞エキス・・・0.5g
・オウバクエキス・・・0.3g
・ローズマリーエキス・・・0.5g
・香料・・・3.0g
・精製水・・・残部(合計:100.00g)
【0103】
(配合例8)
−錠剤状栄養補助食品−
下記の混合物を打錠して、錠剤状栄養補助食品を製造した。
・合歓(
Albizzia julibrissin)の花の50質量%エタノール抽出物(製造例2)・・・30g
・粉糖(ショ糖)・・・178g
・ソルビット・・・10g
・グリセリン脂肪酸エステル・・・12g
【0104】
(配合例9)
−顆粒状栄養補助食品−
下記の混合物を顆粒状に形成して、顆粒状栄養補助食品を製造した。
・合歓(
Albizzia julibrissin)の花の80質量%エタノール抽出物(製造例3)・・・20g
・ビートオリゴ糖・・・1,000g
・ビタミンC・・・167g
・ステビア抽出物・・・10g
【0105】
(配合例10)
−顆粒状栄養補助食品−
下記の混合物を顆粒状に形成して、顆粒状栄養補助食品を製造した。
・合歓(
Albizzia julibrissin)の花の水抽出物(製造例1)・・・20g
・ビートオリゴ糖・・・1,000g
・ビタミンC・・・167g
・ステビア抽出物・・・10g