【実施例】
【0048】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明は本実施例により何等限定されるものではない。なお以下の実施例において、ポリマーの分子量分布、繊維化工程性(紡糸性)評価、繊維強度、繊維伸度、乾熱収縮率、限界酸素指数および染色性は、下記の方法により測定した。
【0049】
[重量平均分子量]
試料の重量平均分子量(Mw)は、Waters社製のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)、1500ALC/GPC(ポリスチレン換算)を用いて測定した。ジメチルフォルムアミド(DMF)を溶媒として、0.2質量%になるように試料を溶解したのち、ろ過して測定に供した。得られた重量分子量分布曲線のピークトップを重量平均分子量(Mw)して採用した。
【0050】
[繊維化工程性(紡糸性)評価]
100kgの繊維を紡糸する際に何回断糸するかによって、次のように評価した。
〇:3回以内/100kg、△:4回〜7回/100kg、×:8回以上/100kg
【0051】
[繊維強度 cN/dtex]
JIS L1013試験法に準拠して、予め調湿されたヤーンを試長20cm、初荷重0.25cN/dtex及び引張速度50%/分の条件で測定し、n=20の平均値を採用した。また繊維繊度(dtex)は質量法により求めた。
【0052】
[繊維伸度 %]
上記繊維強度の測定時に切断時の糸長を求め、元の糸長を基準にして下記により伸度を算出した(n=20の平均値)。
伸度(%)=ΔL/L×100
(式中のLは元の糸長(cm)、ΔLは伸びた長さ(cm)である。)
【0053】
[乾熱収縮率 %]
10cmに切り出した繊維、あるいは10cm角に切り出した該繊維からなる布帛を、末端フリーの状態で220℃に保たれた空気恒温槽中で10分間保持した後の繊維長、あるいは布帛長(Xcm)から、次式を用いて算出した。
乾熱収縮率(%)=<
10−X/10>×100
【0054】
[限界酸素指数値(LOI値)]
JIS K7201試験法に準拠して、繊維を三つ編みにした試長18cmの試料を作り、試料の上端に着火したとき、試料の燃焼時間が3分以上継続して燃焼するか、又は着火後の燃焼長さが5cm以上燃えつづけるのに必要な最低の酸素濃度を測定し、n=3の平均値を採用した。
【0055】
[染色性]
繊維を筒編みにして、分散染料浴(Dianix Blue TA−N 2%owf、Disper TL 1g/L、ウルトラMTレベル 1g/L)中で130℃、30分間染色を行った。その後、還元洗浄浴(Na
2CO
3 1g/L、ハイドロサルファイト 1g/L、アミラジンD 1g/L)中で80℃、20分間還元洗浄を行って乾燥した。得られた試料について、日立分光光度計(C−2000S型日立カラ―アナライザー)にてb
*値の測定を行い、下記の基準で染色性を評価した。
○: b
* < −20
△: b
* = −20〜0
×: b
* > 0
【0056】
[布帛厚み μm]
JIS L1913試験法に準じて厚みを測定し、n=3の平均値を採用した。ただし、比較例4のみは、測定時に一定荷重をかけると厚みが潰れ、正確な数値が測れないため、見かけの厚みを測定し、n=3の平均値を採用した。
【0057】
[布帛目付 g/m
2]
JIS L1913試験法に準じて測定し、n=3の平均値を採用した。
【0058】
[布帛の引張強力 kg/15mm]
JIS L1913に準じ、幅5cm、長さ15cmの試験片をつかみ間隔10cmで把持し、定速伸長型引張試験機を用いて引張速度20cm/分で伸長し、切断時の荷重値を引張強力とし、n=3の平均値を採用した。
【0059】
[ポアサイズ測定μm]
PMI社製パームポロメータを用いて、ASTM F316−86に準拠して測定した。得られたポアサイズ分布から最大頻度を示す値を平均ポアサイズとした。
【0060】
[炭化長 cm]
JIS A1322試験法に準拠して、45℃に配置した試料の下端に対して、試料の下端から50mm離れたメッケルバーナーで10秒間加熱したときの炭化長を測定し、n=3の平均値を採用した。
【0061】
[実施例1〜5][比較例1〜3]
(1)重量平均分子量が34000〜35000である非晶性PEI系ポリマー(サービックイノベイティブプラスチックス社製「ULTEM1040」)を150℃で12時間真空乾燥した。
(2)主鎖型液晶ポリエステルとして、ポリプラスチックス社製「A920RX」(p−ヒドロキシ安息香酸73モル%と6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸27モル%とからなる共重合体)を120℃で12時間熱風乾燥した。
(3)上記の(1)、(2)で乾燥した樹脂を所定の比率でチップブレンドを行い、これをヘッド温度360〜310℃で丸孔ノズルより吐出し、800m/分の速度で引取り、167dtex/50fのマルチフィラメントを得た。得られた繊維の性能評価結果を表1に示す。
【0062】
[実施例6]
実施例1〜5のベクトラA920に替えて、ベクトラB950(ヒドロキシナフトエ酸/p−アミノフェノール/テレフタル酸=60/20/20)を用い、非昌性PEI系ポリマー(サービックイノベイティブプラスチックス社製「ULTEM1040」)と1対1の重量比でチップブレンドを行って、これをヘッド温度360〜310℃で丸孔ノズルより吐出し、800m/分の速度で引取り、167dtex/50fのマルチフィラメントを得た。得られた繊維の性能評価結果を表1に示す。
【0063】
[比較例4]
(4)上記(1)記載の乾燥樹脂が鞘成分となり、上記(2)記載の乾燥樹脂が芯成分となるように(鞘成分と芯成分との比率:50/50)、複合繊維作成用ノズルより吐出し、紡糸速度を1800m/分にして、167dtex/50fのマルチフィラメントを得た。得られた繊維の性能評価結果を表1に示す。
【0064】
[実施例7〜9]
実施例1で得られたブレンド繊維を集束し、カット長幅10mmにカットした後、これにポリエステル系バインダー繊維((株)クラレ製「EP101」、繊度1.45dtex、カット長5mm)を重量%で20〜50%となるように加えて、タッピー式角型抄紙機を用いて目付79〜80g/m
2の紙を抄紙し、110℃で1分乾燥後、210℃でカレンダー処理し、厚さ67〜70μmの紙を得た。性能評価結果を表2に示す。
【0065】
[実施例10]
実施例7で得られたカット糸をリファイナーにて叩解、粉砕してパルプ状を得た。これにポリエステル系バインダー繊維((株)クラレ製「EP101」、繊度1.45dtex、カット長5mm)を重量%で20%となるように加えて、タッピー式角型抄紙機を用いて目付76g/m
2の紙を抄紙し、110℃で1分乾燥後、210℃でカレンダー処理し、厚さ67μmの紙を得た。性能評価結果を表2に示す。
【0066】
[比較例5]
比較例1で得られたPEI単独繊維集束し、幅10mmでカットした後、これにポリエステル系バインダー繊維((株)クラレ製「EP101」)を重量%で20〜50%となるように加えて、タッピー式角型抄紙機を用いて目付79g/m
2の紙を抄紙し、110℃で1分乾燥後、210℃でカレンダー処理し、厚さ68μmの紙を得た。性能評価結果を表2に示す。
【0067】
【表1】
【0068】
【表2】
【0069】
表1から明らかなように、PEI系ポリマーのみから形成された繊維(比較例1)では、低強度で耐熱性が乏しく、また、主鎖型液晶ポリエステルのみから形成された繊維(比較例3)では、染色性が全くないが、本発明の耐熱性ブレンド繊維は、力学的物性、耐熱性および染色性に優れている。また、PEI系ポリマー80重量%と主鎖型液晶ポリエステル20重量%とからなる組成物を紡糸した場合には(比較例2)、紡糸性が不十分であった。ポリエーテルイミド繊維(鞘部)と主鎖型液晶ポリエステル(芯部)からなる複合繊維(比較例4)の場合にも、紡糸性に劣るという問題があった。
【0070】
また、表1から明らかなように、主鎖型液晶ポリエステルのみから形成された繊維(比較例3)と比較して、実施例1〜6に示される本発明の耐熱性ブレンド繊維では、いずれの場合も、伸度が大きくなっており、このことから、繊維中において主鎖型液晶ポリエステルまたはポリエステルアミドは繊維軸方向にフィブリル状(ミクロな繊維状)になって配列して存在しながらも連続していないものと推定される。
一方、PEI系ポリマーのみから形成された繊維(比較例1)と比較して、実施例1〜6に示される本発明の耐熱性ブレンド繊維では、いずれの場合も、伸度および乾熱収縮率が顕著に低下していることから、ポリエーテルイミドは主鎖型液晶樹脂のフィブリル間の空隙を埋めるように存在し、主鎖型液晶樹脂と同様に連続していないものと推定される。
【0071】
表2から明らかなように、本発明のブレンド繊維を主成分として構成された紙は、炭火長が短く、高い難燃性を示す。
また、ブレンド繊維をリファイナーで叩解、粉砕したパルプ状物を用いた紙とした場合においては、叩解、粉砕する前の繊維を用いた場合と比較してポアサイズを低減させることが可能であり、例えば電気部材の一部である絶縁紙やペーパーハニカムとして用いられる場合において、良好な性能を発揮することができる。
さらに、本発明のブレンド繊維は、220℃における乾熱収縮率が3%以下であり、それらからなる紙においても極めて寸法安定性に優れていることが分かる。
【0072】
実施例2で得られた本発明の耐熱性ブレンド繊維について、引張り試験後に得られた繊維の断面の電顕写真を
図1及び
図2に示した。本発明のブレンド繊維において、ポリマーがフィブリル状(ミクロな繊維状)になって配列して存在していることは、
図1および
図2の電顕写真から容易に想像される。