(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
透明基板と、カソード極となる導電性基板と、該透明基板と該導電性基板の間に、該透明基板に近接してまたは接触して配置され色素を吸着した多孔質半導体層と、該多孔質半導体層の該透明基板とは反対側に接触して配置されアノード極となる導電性金属層を備え、電解質が封止されてなる色素増感太陽電池であって、
該導電性金属層が貫通孔を有する金属多孔体シートで形成され、該金属多孔体シートの比表面積が0.1m2/g以上であり、空孔率が30〜60体積%であり、かつ空孔直径が1μm〜40μmであり、厚みが100μm以下であり、該金属多孔体シートと該導電性基板の間隔が100μm以下であり、
該金属多孔体シートの多数の孔が等方的に連通していることを特徴とする色素増感太陽電池。
前記金属多孔体シートが、Ti、W、Ni、PtおよびAuからなる群から選ばれる1種または2種以上の金属材料で形成されてなることを特徴とする請求項1記載の色素増感太陽電池。
【背景技術】
【0002】
色素増感太陽電池は、湿式太陽電池あるいはグレッツェル電池等と呼ばれ、シリコン半導体を用いることなくヨウ素溶液に代表される電気化学的なセル構造を持つ点に特徴がある。一般的には、透明な導電性ガラス板(透明導電膜を積層した透明基板)に二酸化チタン粉末等を焼付け、これに色素を吸着させて形成したチタニア層等の多孔質半導体層と導電性ガラス板(導電性基板)からなる対極の間に電解液としてヨウ素溶液等を配置した、簡易な構造を有する。
【0003】
色素増感太陽電池の発電メカニズムは、以下のとおりである。
受光面である透明な導電性ガラス板面から入射した光を、多孔質半導体層に吸着された色素が吸収し、電子励起を引き起こし、その励起した電子が半導体へと移動し、導電性ガラスへと導かれる。ついで、対極に戻った電子はヨウ素などの電解液を介して電子を失った色素へと導かれ、色素が再生される。
【0004】
色素増感太陽電池は、材料が安価であり、作製に大掛かりな設備を必要としないことから、低コストの太陽電池として注目されており、さらなる低コスト化のため、例えば高価な透明導電膜を省略することが検討されている。
【0005】
透明導電膜を省略する方法の一つとして、ガラス表面にある透明導電膜の代わりに導電性金属からなる配線を施すことが挙げられる。しかし、この場合、入射光の一部は金属配線部分に遮られることとなり、効率の低下を伴う。
【0006】
この点を改善するものとして、例えば、光照射側となる透明導電膜を持たない透明基板に色素担持半導体層を形成し、色素担持半導体層のうえに有孔集電電極を配置する光電変換素子が開示されている(特許文献1参照)。有孔集電電極は網目状または格子状の構造であり、多孔質半導体の基板への塗布膜上にこの集電電極を載置して500℃で30分焼成するものとされている。
【0007】
また、例えば、集電電極をライン状、メッシュ状または多孔状とする光電変換装置が開示されている(特許文献2参照)。なお、特許文献2には、集電電極を多孔状とすることについて、具体的な多孔構造およびその多孔構造の作り方等については記載がない。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態(以下、本実施の形態例という。)について、図を参照して、以下に説明する。
【0020】
本実施の形態に係る色素増感太陽電池は、集電電極として透明導電膜を用いる代わりに、多孔質半導体層の透明基板とは反対側に接触して配置されアノード極となる導電性金属層を用いる技術についてのものである。
【0021】
図1に模式的に示すように、本実施の形態に係る色素増感太陽電池10は、透明基板12と、カソード極となる導電性基板14と、透明基板12と導電性基板14の間に、透明基板12に近接してまたは接触して配置され色素を吸着した多孔質半導体層16と、多孔質半導体層16の透明基板12とは反対側に接触して配置されアノード極となる導電性金属層18を備え、電解質(電解液)20が封止されたものである。なお、
図1中、参照符号22は、色素増感太陽電池10を密閉するスペーサを示す。
導電性金属層18は、貫通孔を有する金属多孔体で形成され、金属多孔体の多数の孔が等方的に連通する(図示せず。
図3参照)。ここで、等方的に連通するとは、多数の孔が、従来技術のように導電性金属層の厚み方向にのみ、すなわち異方性を有するように連通して貫通孔を形成するだけではなく、導電性金属層の平面に沿った方向にも、すなわち三次元的にあらゆる方向に等方性を有するように連通することを言う。
【0022】
導電性金属層18が、貫通孔を有する金属多孔体で形成され、金属多孔体の多数の孔が等方的に連通することにより、導電性金属層18を通過する電解質が多孔質半導体層16の各部に均一に浸透する。これに対して、従来の異方性を有するように連通して貫通孔を形成する導電性金属層の場合は、貫通孔の開口近傍の多孔質半導体層の一部のみに電解質20の浸透が制限されるおそれがある。
また、導電性金属層18は、多孔質半導体層16と接触する表面部分においても多数の孔が平面的に等方性をもってかつ連通して分布するため、粒子の凝集体である多孔質半導体層16との接触面積が大きく、かつ、導電性金属層18の表面の孔に多孔質半導体層16の表面の粒子が、いわば噛み合った状態に係合する。これにより、導電性金属層18と多孔質半導体層16の接合力が大きい。これに対して、従来の導電性金属層の場合、貫通孔の開口は、導電性金属層の平面に沿った方向には離散的に配置され、かつ、開口の数にも限界があることが多いため、または、導電性金属層が平滑なシート状に形成されるため、導電性金属層と多孔質半導体層の接合力を大きくとることが難しいことがある。この不具合は、導電性金属層として金網を用いる場合や加工によって貫通孔を形成する場合においてより顕著である。また、このため、従来の導電性金属層の場合、接合力が小さいことにより、例えば500℃程度の加熱による電気的接合工程においてクラックを生じて、導電性金属層と多孔質半導体層が剥離するおそれがある。これに対して、本実施の形態の導電性金属層18では、クラックを生じるおそれが小さい。
【0023】
導電性金属層18の材料は、特に限定するものではないが、Ti、W、Ni、PtおよびAuからなる群から選ばれる1種または2種以上の金属材料またはこれらの化合物であることが好ましい。これにより、電解質20中の電荷輸送イオンとして用いられるヨウ素に対する耐食性の良好な導電性金属層を得ることができる。
導電性金属層18の厚みは、特に限定するものではないが、1μm〜600μm程度とすることが好ましい。導電性金属層18の厚みが、1μm未満の場合には導電性金属層18の電気抵抗が上昇するおそれがある。一方、導電性金属層18の厚みが、600μmを超えると、導電性金属層18の内部を通過する電解質20の流動抵抗が大きすぎて、電解質20の移動が阻害されるおそれがある。なお、導電性金属層18の電気抵抗は、1Ω/□以下であることが好ましい。
【0024】
導電性金属層18を構成する金属多孔体の比表面積は0.1m
2/g以上であることが好ましい。これにより、導電性金属層18と多孔質半導体層16の接合力をより大きくすることができる。
金属多孔体の比表面積の上限値は特に限定するものではないが、例えば10m
2/g程度あれば十分である。
なお、比表面積は、水銀圧入法により測定することができる。水銀圧入法による比表面積の測定は、水銀圧入式細孔分布測定装置(CARLO ERBA INSTRUMENTS社製Pascal 140およびPascal 440 測定可能範囲 比表面積0.1m
2/g〜 細孔分布0.0034〜400μm)を用いて、圧力範囲0.3kPa〜400kPa、および0.1MPa〜400MPaの範囲で、圧入体積を円筒細孔モデルに従って、側面積として計算し積算して測定する。なお、後述する空孔率および空孔直径は、この測定で同時に得られる。
【0025】
導電性金属層18を構成する金属多孔体は、空孔率が30〜60体積%であり、かつ空孔直径が1μm〜40μmであることが好ましい。
空孔率が30体積%未満であると、金属多孔体内部での電解質の拡散が不十分となり、これにより、多孔質半導体層16への均一な浸透が損なわれるおそれがある。一方、空孔率が60体積%を超えると、導電性金属層18と多孔質半導体層16の接合力が損なわれるおそれがある。
また、空孔直径が1μm未満であると、金属多孔体内部での電解質の拡散が不十分となり、また、導電性金属層18の孔と多孔質半導体層16の粒子との噛み合わせが不十分となることで、導電性金属層18と多孔質半導体層16の接合力が損なわれるおそれがある。一方、空孔直径が40μmを超えると、導電性金属層18と多孔質半導体層16の接触面積が小さくなることで、導電性金属層18と多孔質半導体層16の接合力が損なわれるおそれがある。
空孔率および空孔直径は水銀圧入法により測定することができる。
【0026】
導電性金属層18以外の色素増感太陽電池10の構成要素については、通常採用される適宜の材料を用い、適宜の方法で作製することができる。以下に例示する。
透明基板12は、例えば、ガラス板であってもよくあるいはプラスチック板であってもよい。プラスチック板を用いる場合、例えば、PET,PEN、ポリイミド、硬化アクリル樹脂、硬化エポキシ樹脂、硬化シリコーン樹脂、各種エンジニアリングプラスチックス、メタセシス重合で得られる環状ポリマ等が挙げられる。
導電性基板14は、透明基板12と同様の基板を用い、基板の電解質20に向けた面に、例えば、ITO(スズをドープしたインジウム膜)、FTO(フッ素をドープした酸化スズ膜)またはSnO
2膜等の導電膜を積層し、さらに導電膜のうえに例えば白金膜等の触媒膜を設ける。
多孔質半導体層16は、材料として、ZnOやSnO
2等適宜のものを用いることができるが、TiO
2が好ましい。TiO
2等の微粒子形状は特に限定するものではないが、1nm〜100nm程度が好ましい。多孔質半導体層16の厚みは特に限定するものではないが、好ましくは、10μm以上の厚みとする。多孔質半導体層16は、TiO
2のペーストの薄膜を形成した後に例えば300〜550℃の温度で焼成する操作を繰り返して所望の厚膜にすると好ましい。
多孔質半導体を構成する微粒子の表面に、色素を吸着する。色素は、400nm〜1000nmの波長に吸収を持つものであり、例えば、ルテニウム色素、フタロシアニン色素などの金属錯体、シアニン色素などの有機色素を挙げることができる。吸着の方法は特に限定されないが、例えば、色素溶液に多孔質半導体層を形成した多孔質導電性金属層を浸し微粒子表面に色素を化学吸着させるいわゆる含浸法でもよい。
透明基板12と多孔質半導体層16は接触していても、接触していなくてもどちらでもよいが、両者の間隔はなるべく短いほうがよい。導電性金属層18と導電性基板(対極)14を接触しないように配置するため、例えば電解質20に対して耐腐食性を有し、かつ、電解質イオンの拡散を妨げないように十分な空孔を有するガラスペーパーなどのスペーサで絶縁する方法もある。多孔質導電性金属層18と導電性基板14の間隔は100μm以下であることが好ましい。
電解質20は特に限定されないが、ヨウ素、リチウムイオン、イオン液体、t-ブチルピリジン等を含むものであり、例えばヨウ素の場合、ヨウ化物イオンおよびヨウ素の組み合わせからなる酸化還元体を用いることができる。酸化還元体は、これを溶解可能な適宜の溶媒を含む。電解質20の注入方法は特に限定されないが、封止材の一部をシールせずに開口部にしておき、その開口部から電解質20を注入し、開口部をシールすることもできる。また、導電性基板14の一部に予め開口部を設けておき、そこから電解質20を注入した後に開口部をシールすることもできる。
積層後の透明基板12と導電性基板14との間に電解質20を注入して封止するスペーサ22は、硬化後の厚みが100μm以下の半硬化樹脂シートなどを用いることができる。
【0027】
導電性金属層18についても、適宜の製造方法で得ることができ、例えば、適宜の基板のうえに金属微細粉を適宜の溶媒と混合して金属ペーストを調製し、酸素が実質的に存在しない雰囲気条件で、焼成温度に加熱した後に、多孔質半導体層16上に金属ペースト焼成体を転写する方法を採用することができる。この場合、未焼成の多孔質半導体層16の材料のうえに金属ペースト焼成体を転写した状態で全体を多孔質半導体層16の材料の焼成温度で焼成する。また、焼成した多孔質半導体層16のうえに金属ペースト焼成体を転写するときにおいても全体を適宜の温度で再度加熱することが好ましい。また、導電性金属層18として、厚みの厚い金属ペーストを焼成した後、所望の厚みにスライスしたものを多孔質半導体層16のうえに積層してもよい。
また、このとき、後述するように、市販の金属微細粉焼結体シート、例えば、商品名タイポラス(大阪チタニウム製)を導電性金属層18として用いてもよい。
【0028】
本実施の形態に係る色素増感太陽電池10は、導電性金属層18を通過する電解質(電解液)が多孔質半導体層16の各部に均一に浸透するため、電解質イオンが良好に拡散し、高い効率(光電変換効率)を得ることができる。
また、色素増感太陽電池10は、導電性金属層18と多孔質半導体層16の接合力が大きいため、電気的接触が良好であり、また、導電性金属層18と多孔質半導体層16の剥離等による電気的接触不良を生じるおそれが小さいため、高い効率(光電変換効率)を得ることができる。
また、色素増感太陽電池10は、単位発電効率(あるいは単位発電量)あたりのコストを低減することができる。
【0029】
ここで、導電性金属層18の金属多孔体として金属微粒子の焼結体を用いると、本実施の形態に係る色素増感太陽電池10の上記した作用効果を好適に得ることができる。この場合、焼結体の金属微粒子のサイズが直径100μm以下であると、導電性金属層18を通過する電解質(電解液)を多孔質半導体層16の各部に均一に浸透させるうえで、好ましい。金属微粒子の直径の下限値は特に限定するものではないが、導電性金属層18と多孔質半導体層16の接合力を確保する観点からは、直径1μm以上とすることが好ましい。
なお、金属微粒子の直径はSEM(走査型電子顕微鏡)により測定することができる。SEMを用いて得られる観察像から100個の粒子(一次粒子)の粒子径(長径と短径の平均値)を測定し、それらの平均値として得られる値を直径とする。
ここで、導電性金属層18の金属多孔体として、金属微粒子の焼結体に代えて、金属微粒子のスポンジ状凝集体を用いることもできる。
【0030】
つぎに、本実施の形態に係る色素増感太陽電池10の変形例について、
図2を参照して説明する。
【0031】
図2に模式的に示す変形例に係る色素増感太陽電池10aは、色素増感太陽電池10の導電性金属層18に相当する部分の構成が異なり、他の構成は色素増感太陽電池10と同様である。このため、他の構成についての色素増感太陽電池10と重複する説明は省略する。
【0032】
色素増感太陽電池10aは、導電性金属層18aの多孔質半導体層16とは反対側の面に有孔金属箔(有孔金属層)24が接合される。導電性金属層18aの材料その他の条件は、導電性金属層18と同様である。
導電性金属層18aの厚みは、特に限定するものではないが、例えば数十μm程度あればよい。
有孔金属箔24は、適宜の導電性金属、好ましく白金等の高導電性金属で形成する。有孔金属箔24の孔は、例えば機械加工や化学処理等によって形成する。得られる有孔金属箔24の孔構造は、上記した異方性を有する貫通孔である。有孔金属箔24の厚みは、特に限定するものではなく、例えば、一定の剛性を確保する観点からは、導電性金属層18aと有孔金属箔24の合計厚みを導電性金属層18の厚みと同等とすることができる。
なお、有孔金属箔24は、有孔金属層の例示である。有孔金属層として、有孔金属箔24に代えて金属網その他を用いてもよい。
【0033】
変形例に係る色素増感太陽電池10aは、導電性金属層18aが多孔質半導体層16に接触するとともに、有孔金属箔24の内部に流入する電解質20の流れが、導電性金属層18aによっていわば整流されて多孔質半導体層16の各部に均一に浸透するため、本実施の形態に係る色素増感太陽電池10と同様の作用効果を得ることができる。
また、導電性金属層18aの厚みが薄くて済むため、色素増感太陽電池10aを簡易な構造で安価に得ることができる。また、導電性金属層18aを有孔金属箔24のうえに形成するため、導電性金属層18aを容易に作製することができる。さらにまた、導電性金属層18aの厚みを薄くすることにより、多孔質半導体層16の各部への電解質の浸透性をより向上することができる。またさらに、有孔金属箔24と導電性金属層18aがともに金属材料であるため、熱膨張率差が小さく熱処理時にクラックが生じ難い。特に、有孔金属箔24と導電性金属層18aが同じ金属種である場合は、その効果が顕著であり好ましい。
【実施例】
【0034】
以下、本発明の実施例について説明する。本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0035】
(実施例1)
厚み100μmの多孔質Tiシート103(商品名タイポラス、大阪チタニウム社製)の5mm×20mmの範囲にチタニアペースト(商品名NanoxideD、ソーラロニクス社製)を印刷し、乾燥後、400℃で30分空気中で焼成した。焼成後のチタニア上に、さらにチタニアペーストを印刷、焼成する操作を合計6回繰り返し、多孔質Tiシートの片面に17μmの厚みのチタニア層102を形成した。多孔質Tiシート103の細孔径分布等を水銀圧入法で測定したところ、細孔容積=0.159cc/g(空孔率=40.1%)、比表面積=5.6m
2/g、平均細孔直径=8μm(細孔容積の60%が4〜10μm)であった。
なお、
図3に、多孔質TiシートのSEM写真を示す。
図3Aはシートを主面(表面)側から見たものであり、
図3Bはシートを断面側から見たものである。
【0036】
N719色素(ソーラロニクス社製)のアセトニトリルとt-ブチルアルコールの混合溶媒溶液に、作製したチタニア層付き多孔質Tiシート基板を70時間含浸させ、チタニア表面に色素を吸着した。吸着後の基板はアセトニトリルとt-ブチルアルコールの混合溶媒で洗浄した。
【0037】
厚み2mmの石英ガラス板と色素吸着した基板の色素吸着チタニア層側が向き合うように、厚み60μmの半硬化樹脂シート(SX1170-60、ソーラロニクス社製)を挟んで、115℃で接着して積層した。その際、半硬化樹脂シートはチタニア層に接触しないよう、チタニア層を囲むように配置し、また、後に電解液が注入できるように約1mm程度の隙間を2ヶ所設けた。
【0038】
積層板の多孔質Tiシート側と厚み1.1mmのPt膜付きガラス板105のPt側が向き合うように、上記半硬化樹脂シートを挟んで積層し、115℃で接着した。
【0039】
約1mmの隙間からヨウ素、LiIからなるアセトニトリル溶媒の電解液を注入して色素増感太陽電池を作製した。
得られた色素増感太陽電池の光電変換性能を、100mW/cm
2の強度の疑似太陽光(山下電装社製擬似太陽光装置使用)を石英ガラス板側から照射したときのIV曲線を測定して調べた。光電変換効率は7.1%であった。
【0040】
(実施例2)
Ti粒子(粒径20μm以下 大阪チタニウム社製)と、ターピネオール(テルピネオール(Terpineol):α-テルピネオール、β-テルピネオールおよびγ-テルピネオールの混合物)と、エチルセルロースを主成分とするビヒクル(熱可塑性セルロースエーテルを溶剤に溶解したもの 商品名:EC−ビヒクル 日新化成株式会社製 型番: EC-200FTD)を混合し、Ti粒子のペーストを作成した。厚み20μmのTi箔の片面の5mm×20mmの範囲に上記作成したTi粒子ペーストを塗布し、乾燥後、400℃で1時間アルゴン雰囲気下で焼成し、約20μmの厚みの多孔質Ti層をTi箔上に形成した。
多孔質Ti層を形成したTi箔の両面にロールラミネーターでドライフィルムレジストを密着させ、さらにTi箔の多孔質Ti層を形成していない側の面のドライフィルムレジスト上に5mm×20mmの範囲に直径50μmの丸形が100μmピッチで並んだパターンを形成したマスクを配置し、両面から紫外線露光した。ドライフルムレジストを現像した後、Ti箔に対して溶解性のあるエッチング液を用いてTi箔のみに貫通孔を設けた。その後、ドライフィルムレジストを剥離した。このようにして、直径50μmの丸形の貫通孔を有するTi箔の片面に多孔質Ti層を持つ金属電極を得た。
【0041】
金属電極の多孔質Ti層の上の5mm×20mmの範囲にチタニアペースト(商品名NanoxideD、ソーラロニクス社製)を印刷し、乾燥後、400℃で30分空気中で焼成した。焼成後のチタニア上に、さらにチタニアペーストを印刷、焼成する操作を合計4回繰り返し、多孔質Ti層の上に12μmの厚みのチタニア層を形成した。
【0042】
色素の吸着以降は実施例1と同様にして色素増感太陽電池を作製した。光電変換効率は7.6%であった。
【0043】
(比較例1)
厚み600μmの多孔質Tiシートを用いた他は実施例と同様の方法で色素増感太陽電池を作製した。得られた色素増感太陽電池の光電変換効率は3.8%であった。
【0044】
(比較例2)
厚み20μmのTi箔の5mm×20mmの範囲にエッチングの手法で複数の50μm×170μmの貫通孔を設け、開口率58%の有孔Ti箔を作製した。孔はTi箔の膜厚方向にほぼ平行なストレート孔であることを顕微鏡観察で確認した。
貫通孔を設けた5mm×20mmの範囲の片面にチタニアペースト(商品名NanoxideD、ソーラロニクス社製)を印刷する工程以降は、実施例と同様に行い、色素増感太陽電池を作製した。得られた色素増感太陽電池の光電変換効率は3.7%であった。