特許第5798102号(P5798102)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5798102ケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物及びパターン形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5798102
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】ケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物及びパターン形成方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/11 20060101AFI20151001BHJP
   C08G 79/08 20060101ALI20151001BHJP
【FI】
   G03F7/11 503
   G03F7/11 502
   C08G79/08
【請求項の数】9
【全頁数】48
(21)【出願番号】特願2012-239017(P2012-239017)
(22)【出願日】2012年10月30日
(65)【公開番号】特開2013-137512(P2013-137512A)
(43)【公開日】2013年7月11日
【審査請求日】2014年10月23日
(31)【優先権主張番号】特願2011-260294(P2011-260294)
(32)【優先日】2011年11月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】荻原 勤
(72)【発明者】
【氏名】上田 貴史
(72)【発明者】
【氏名】種田 義則
【審査官】 石附 直弥
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−126940(JP,A)
【文献】 特開2002−265609(JP,A)
【文献】 特表2011−513551(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F7/004−7/18
C09D1/00−10/00
C09D101/00−201/10
C08G79/00−79/14
C01G25/00−47/00
C01G49/10−99/00
CAPlus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、下記一般式(1)で示される有機ホウ素化合物及びその縮合物からなる群から選ばれる化合物(A)一種以上と、下記一般式(2)で示されるケイ素化合物(B)一種以上とを含む混合物の縮合物及び/又は加水分解縮合物を含有するものであることを特徴とするケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物。
m0B(OH)m1(OR)(3−m0−m1) (1)
(式中、Rは炭素数1〜6の有機基であり、2個のORが結合して環状有機基を形成してもよく、Rメチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、及び下記に示される基から選ばれる有機基であり、2個のRが結合して環状有機基を形成してもよい。m0は1又は2、m1は0、1又は2であり、1≦m0+m1≦3である。)
【化1】
10m1011m1112m12Si(OR13(4−m10−m11−m12) (2)
(式中、R13は炭素数1〜6の有機基であり、R10、R11、R12はそれぞれ水素原子、又は炭素数1〜30の1価の有機基であり、m10、m11、m12は0又は1であり、0≦m10+m11+m12≦3である。)
【請求項2】
前記ケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物が、前記化合物(A)、前記化合物(B)、及び下記一般式(3)で示される化合物(C)を含む混合物の縮合物及び/又は加水分解縮合物を含有するものであることを特徴とする請求項1に記載のケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物。
U(ORm2(ORm3(O)m4 (3)
(式中、R、Rは水素原子、炭素数1〜30の有機基であり、m2+m3+m4はUの種類により決まる価数であり、m2、m3、m4は0以上の整数、Uは周期律表のIII族、IV族、又はV族の元素で炭素及びケイ素を除くものである。)
【請求項3】
前記一般式(3)中のUが、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、ゲルマニウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、ビスマス、スズ、リン、バナジウム、ヒ素、アンチモン、ニオブ、及びタンタルのいずれかであることを特徴とする請求項2に記載のケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物。
【請求項4】
沸点が180度以上の溶媒を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物。
【請求項5】
被加工体上に塗布型有機下層膜材料を用いて有機下層膜を形成し、該有機下層膜の上に請求項1〜4のいずれか1項に記載のケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物を用いてケイ素含有レジスト下層膜を形成し、該ケイ素含有レジスト下層膜上に化学増幅型レジスト組成物を用いてフォトレジスト膜を形成し、加熱処理後に高エネルギー線で前記フォトレジスト膜を露光し、アルカリ現像液を用いて前記フォトレジスト膜の露光部を溶解させることによりポジ型パターンを形成し、該パターンが形成されたレジスト膜をマスクにして前記ケイ素含有レジスト下層膜にドライエッチングでパターン転写し、該パターンが転写されたケイ素含有レジスト下層膜をマスクにして前記有機下層膜をドライエッチングでパターン転写し、さらに該パターンが転写された有機下層膜をマスクにして前記被加工体にドライエッチングでパターンを転写することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項6】
被加工体上に炭素を主成分とする有機ハードマスクをCVD法で形成し、該有機ハードマスクの上に請求項1〜4のいずれか1項に記載のケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物を用いてケイ素含有レジスト下層膜を形成し、該ケイ素含有レジスト下層膜上に化学増幅型レジスト組成物を用いてフォトレジスト膜を形成し、加熱処理後に高エネルギー線で前記フォトレジスト膜を露光し、アルカリ現像液を用いて前記フォトレジスト膜の露光部を溶解させることによりポジ型パターンを形成し、該パターンが形成されたレジスト膜をマスクにして前記ケイ素含有レジスト下層膜にドライエッチングでパターン転写し、該パターンが転写されたケイ素含有レジスト下層膜をマスクにして前記有機ハードマスクをドライエッチングでパターン転写し、さらに該パターンが転写された有機ハードマスクをマスクにして前記被加工体にドライエッチングでパターンを転写することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項7】
前記被加工体として、半導体装置基板、又は該半導体装置基板に金属膜、金属炭化膜、金属酸化膜、金属窒化膜、金属酸化炭化膜、及び金属酸化窒化膜のいずれかが成膜されたものを用いることを特徴とする請求項5又は6に記載のパターン形成方法。
【請求項8】
前記被加工体を構成する金属がケイ素、チタン、タングステン、ハフニウム、ジルコニウム、クロム、ゲルマニウム、銅、アルミニウム、及び鉄のいずれか、あるいはこれらの合金であることを特徴とする請求項7に記載のパターン形成方法。
【請求項9】
レジストパターンの形成において、波長が300nm以下の光もしくはEUV光を用いたフォトリソグラフィー法、又は電子線描画を用いることを特徴とする請求項5〜8のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物及びこれを用いたパターン形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
LSIの高集積化と高速度化に伴い、パターン寸法の微細化が急速に進んでいる。リソグラフィー技術は、この微細化に併せ、光源の短波長化とそれに対するレジスト組成物の適切な選択により、微細パターンの形成を達成してきた。この流れに沿って、フォトレジスト組成物に使用する樹脂は、露光波長における光吸収の小さな樹脂が求められたため、i線、KrF、ArFへの変化に対し、ノボラック樹脂、ポリヒドロキシスチレン、脂肪族多環状骨格を持った樹脂へと変化してきている。このような解像性の高い最近のフォトレジスト組成物はエッチング耐性が低くなる傾向にあり、これに伴い、ドライエッチング条件におけるエッチング選択性が低くなり、レジストパターンを正確に被加工基板に転写することが困難になりつつある。
【0003】
更に、同じ光源で微細化する場合においても、使用するフォトレジスト膜の膜厚をそのままで微細化、即ちパターン幅をより小さくした場合、現像後のフォトレジストパターンのアスペクト比が大きくなり、結果としてパターン崩壊が発生する。このため、フォトレジストパターンのアスペクト比が適切な範囲に収まるように、フォトレジスト膜厚は微細化に伴い薄膜化されてきた。この薄膜化の流れもドライエッチング条件におけるレジストパターンの被加工基板への転写に不利な条件となる。
【0004】
このような問題点を解決する方法の一つとして、多層レジスト法がある。この方法は、フォトレジスト膜(即ちレジスト上層膜)とエッチング選択性が異なる下層膜をレジスト上層膜と被加工基板の間に介在させ、レジスト上層膜にパターンを得た後、上層レジストパターンをドライエッチングマスクとして、ドライエッチングにより下層膜にパターンを転写し、更に下層膜をドライエッチングマスクとして、ドライエッチングにより被加工基板にパターンを転写する方法である。
【0005】
この多層レジスト法として、単層レジスト法で使用されている一般的なレジスト組成物を用いて行うことができる3層レジスト法がある。例えば、被加工基板上にノボラック等による有機膜を有機下層膜として成膜し、その上にケイ素含有膜をケイ素含有レジスト下層膜として成膜し、その上に通常の有機系フォトレジスト膜をレジスト上層膜として形成する。フッ素系ガスプラズマによるドライエッチングに対しては、有機系のレジスト上層膜は、ケイ素含有レジスト下層膜に対して良好なエッチング選択比が取れるため、レジストパターンはフッ素系ガスプラズマによるドライエッチングを用いることで、ケイ素含有レジスト下層膜に転写される。この方法によれば、直接被加工基板を加工するための十分な膜厚を持ったパターンは形成することが難しいレジスト組成物や、基板を加工するためにはドライエッチング耐性が十分でないレジスト組成物を用いても、加工に十分なドライエッチング耐性を持つノボラック膜のパターンを得ることができる。
【0006】
この様な多層レジスト法で使用されるケイ素含有レジスト下層膜としては、CVDによるケイ素含有無機膜、例えばSiO膜(例えば、特許文献1等)やSiON膜(例えば、特許文献2等)、回転塗布により膜を得られるものとしては、SOG(スピンオンガラス)膜(例えば、特許文献3等)や架橋性シルセスキオキサン膜(例えば、特許文献4等)等が使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−183194号公報
【特許文献2】特開平7−181688号公報
【特許文献3】特許4716044号公報
【特許文献4】特表2005−520354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来のケイ素含有レジスト下層膜は、有機膜上に形成された当該ケイ素含有レジスト下層膜の上にフォトレジスト膜を形成し、続いてレジストパターンを形成した際、密着性が良好なパターン形成、及びフォトレジスト膜と有機膜との間での良好なドライエッチングマスクとしての使用を両立させることは難しく、また、ケイ素含有膜をドライエッチングしている最中に上層のフォトレジスト膜パターンが変形するという問題もあった。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、(1)密着性が良好なパターン形成が可能であり、(2)ケイ素含有膜の上層であるフォトレジスト膜、下層である有機膜との間で良好なドライエッチングマスクとして使用できるケイ素含有膜を形成でき、(3)ケイ素含有膜をドライエッチングしている最中の上層レジストの変形を抑えることができるケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物及びパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は、少なくとも、下記一般式(1)で示される有機ホウ素化合物及びその縮合物からなる群から選ばれる化合物(A)一種以上と、下記一般式(2)で示されるケイ素化合物(B)一種以上とを含む混合物の縮合物及び/又は加水分解縮合物を含有するものであることを特徴とするケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物を提供する。
m0B(OH)m1(OR)(3−m0−m1) (1)
(式中、Rは炭素数1〜6の有機基であり、2個のORが結合して環状有機基を形成してもよく、Rは炭素数1〜30の有機基であり、2個のRが結合して環状有機基を形成してもよい。m0は1又は2、m1は0、1又は2であり、1≦m0+m1≦3である。)
10m1011m1112m12Si(OR13(4−m10−m11−m12) (2)
(式中、R13は炭素数1〜6の有機基であり、R10、R11、R12はそれぞれ水素原子、又は炭素数1〜30の1価の有機基であり、m10、m11、m12は0又は1であり、0≦m10+m11+m12≦3である。)
【0011】
このような本発明は、ケイ素含有膜にホウ素原子を導入することにより、ドライエッチングガスに対する反応性が高くなり、従来知られているケイ素含有材料より、上層フォトレジストに対して高いエッチング選択比を得ることができる。
【0012】
また、前記ケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物が、前記化合物(A)、前記化合物(B)、及び下記一般式(3)で示される化合物(C)を含む混合物の縮合物及び/又は加水分解縮合物を含有するものであってもよい。
U(ORm2(ORm3(O)m4 (3)
(式中、R、Rは水素原子、炭素数1〜30の有機基であり、m2+m3+m4はUの種類により決まる価数であり、m2、m3、m4は0以上の整数、Uは周期律表のIII族、IV族、又はV族の元素で炭素及びケイ素を除くものである。)
【0013】
本発明では、更に前記化合物(C)を含む混合物の縮合物及び/又は加水分解縮合物を含有することにより、レジストパターンとの密着性が良好で保存安定性がよいケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物を得ることができる。
【0014】
前記一般式(3)中のUが、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、ゲルマニウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、ビスマス、スズ、リン、バナジウム、ヒ素、アンチモン、ニオブ、及びタンタルのいずれかであることが好ましい。
【0015】
上記のUとして示されている金属が含まれているケイ素含有レジスト下層膜は、Uが含まれていないケイ素含有レジスト下層膜に比べてエッチング速度がより速く、薄膜化されたフォトレジストをエッチングマスクとして用いても、パターン転写が可能なケイ素含有レジスト下層膜を形成することができる。
【0016】
また、前記ケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物には、沸点が180度以上の溶媒を含有することもできる。
【0017】
沸点が180度以上の高沸点溶剤を含有することにより、上層レジストパターンとの密着性が良好なケイ素含有レジスト下層膜を形成することができる。
【0018】
また本発明は、被加工体上に塗布型有機下層膜材料を用いて有機下層膜を形成し、該有機下層膜の上に前記ケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物を用いてケイ素含有レジスト下層膜を形成し、該ケイ素含有レジスト下層膜上に化学増幅型レジスト組成物を用いてフォトレジスト膜を形成し、加熱処理後に高エネルギー線で前記フォトレジスト膜を露光し、アルカリ現像液を用いて前記フォトレジスト膜の露光部を溶解させることによりポジ型パターンを形成し、該パターンが形成されたレジスト膜をマスクにして前記ケイ素含有レジスト下層膜にドライエッチングでパターン転写し、該パターンが転写されたケイ素含有レジスト下層膜をマスクにして前記有機下層膜をドライエッチングでパターン転写し、さらに該パターンが転写された有機下層膜をマスクにして前記被加工体にドライエッチングでパターンを転写することを特徴とするパターン形成方法を提供する。
【0019】
また本発明は、被加工体上に炭素を主成分とする有機ハードマスクをCVD法で形成し、該有機ハードマスクの上に前記ケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物を用いてケイ素含有レジスト下層膜を形成し、該ケイ素含有レジスト下層膜上に化学増幅型レジスト組成物を用いてフォトレジスト膜を形成し、加熱処理後に高エネルギー線で前記フォトレジスト膜を露光し、アルカリ現像液を用いて前記フォトレジスト膜の露光部を溶解させることによりポジ型パターンを形成し、該パターンが形成されたレジスト膜をマスクにして前記ケイ素含有レジスト下層膜にドライエッチングでパターン転写し、該パターンが転写されたケイ素含有レジスト下層膜をマスクにして前記有機ハードマスクをドライエッチングでパターン転写し、さらに該パターンが転写された有機ハードマスクをマスクにして前記被加工体にドライエッチングでパターンを転写することを特徴とするパターン形成方法を提供する。
【0020】
このような本発明のパターン形成方法は、CVD膜や有機下層膜の組み合わせを最適化することで、サイズ変換差を生じさせることなく、被加工体上に微細なパターンを高精度で形成することができる。
【0021】
また、前記被加工体として、半導体装置基板、又は該半導体装置基板に金属膜、金属炭化膜、金属酸化膜、金属窒化膜、金属酸化炭化膜、及び金属酸化窒化膜のいずれかが成膜されたものを用いることができる。
この場合、前記被加工体を構成する金属がケイ素、チタン、タングステン、ハフニウム、ジルコニウム、クロム、ゲルマニウム、銅、アルミニウム、及び鉄のいずれか、あるいはこれらの合金であることが好ましい。
【0022】
このように、本発明のパターン形成方法を用いると、上記のような被加工体を加工してパターンを形成することができる。
【0023】
また、本発明のレジストパターンの形成においては、波長が300nm以下の光もしくはEUV光を用いたフォトリソグラフィー法、又は電子線描画を用いることが好ましい。
【0024】
本発明では、波長が300nm以下の光、特にArFエキシマレーザー、液浸ArFエキシマレーザー、EUVを用いるリソグラフィーや電子線描画によりパターンを形成すると、微細なパターンを高精度で形成することができる。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように、本発明のケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物を用いて形成されたケイ素含有レジスト下層膜を用いることで、その直上部に形成されたフォトレジスト膜は、密着性がよく良好なパターンを持ち、上層レジストとのエッチング選択比が良好なパターン形成が可能である。また、有機材料との間で高いエッチング選択性が得られることから、形成されたフォトレジストパターンを、ケイ素含有レジスト下層膜、有機下層膜と順にドライエッチングプロセスを用いて転写可能である。特に、半導体プロセスの微細化が進んでいくと、フォトレジストの膜厚が薄くなるので、従来のケイ素含有レジスト下層膜へのパターン転写が困難になっていくが、本発明のケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物を用いて形成されたケイ素含有レジスト下層膜では、薄膜化されたフォトレジストをエッチングマスクとして使用しても、ドライエッチング中のフォトレジストパターンの変形を抑え、このパターンを基板に高い精度で転写することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明につきさらに詳しく説明する。
上述のように、従来のケイ素含有レジスト下層膜は、密着性が良好なパターン形成、及び良好なドライエッチングマスクとしての使用を両立させることは難しく、また、ケイ素含有膜をドライエッチングしている最中に上層のフォトレジスト膜パターンが変形するという問題もあった。
【0027】
本発明者らは、ケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物のリソグラフィー特性や安定性について鋭意検討したところ、ホウ素化合物とケイ素化合物の縮合物は、レジストパターンとの密着性が良好なだけでなく、ドライエッチングマスクとして十分なエッチング選択比が得られるレジスト下層膜が得られること、特に上層レジストと下層膜とのエッチング選択比が改善できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0028】
即ち、本発明は、少なくとも、下記一般式(1)で示される有機ホウ素化合物及びその縮合物からなる群から選ばれる化合物(A)一種以上と、下記一般式(2)で示されるケイ素化合物(B)一種以上とを含む混合物の縮合物及び/又は加水分解縮合物を含有するものであることを特徴とするケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物を提供する。
m0B(OH)m1(OR)(3−m0−m1) (1)
(式中、Rは炭素数1〜6の有機基であり、2個のORが結合して環状有機基を形成してもよく、Rは炭素数1〜30の有機基であり、2個のRが結合して環状有機基を形成してもよい。m0は1又は2、m1は0、1又は2であり、1≦m0+m1≦3である。)
10m1011m1112m12Si(OR13(4−m10−m11−m12) (2)
(式中、R13は炭素数1〜6の有機基であり、R10、R11、R12はそれぞれ水素原子、又は炭素数1〜30の1価の有機基であり、m10、m11、m12は0又は1であり、0≦m10+m11+m12≦3である。)
【0029】
本発明は、特許文献3等で既に知られているエッチング選択比の高いケイ素含有膜にホウ素原子を導入することにより、ドライエッチングガスに対する反応性が高くなり、従来知られているケイ素含有材料より、上層フォトレジストに対して高いエッチング選択比を得ることができる。
【0030】
本発明のケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物において、本発明で使用される化合物(A)は、下記一般式(1)で示される有機ホウ素化合物及びその縮合物からなる群から選ばれる化合物である。
【0031】
m0B(OH)m1(OR)(3−m0−m1) (1)
(式中、Rは炭素数1〜6の有機基であり、2個のORが結合して環状有機基を形成してもよく、Rは炭素数1〜30の有機基であり、2個のRが結合して環状有機基を形成してもよい。m0は1又は2、m1は0、1又は2であり、1≦m0+m1≦3である。)
【0032】
ここで、Rは炭素数1〜6の有機基であり、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基等を例示できる。
また、2個のORが結合した環状有機基としては、例えば以下のものを挙げることができる((B)はBとの結合箇所を示す(以下同様))。
【化1】
【0033】
尚、本発明において有機基とは、炭素を含む基の意味であり、更に水素を含み、また窒素、酸素、硫黄、ケイ素等を含んでもよい。
【0034】
は炭素数1〜30の有機基であり、2個のRが結合して環状有機基を形成してもよく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基や、下記に示す基等を挙げることができる。
【化2】
【0035】
上記一般式(1)で示される化合物として、以下のものを挙げることができる。
【化3】
【0036】
【化4】
【0037】
【化5】
【0038】
【化6】
【0039】
【化7】
【0040】
【化8】
【0041】
【化9】
【0042】
本発明のケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物において使用される化合物(B)は、下記一般式(2)で示されるケイ素化合物である。
10m1011m1112m12Si(OR13(4−m10−m11−m12) (2)
(式中、R13は炭素数1〜6の有機基であり、R10、R11、R12はそれぞれ水素原子、又は炭素数1〜30の1価の有機基であり、m10、m11、m12は0又は1であり、0≦m10+m11+m12≦3である。)
【0043】
10、R11、R12の有機基としては、直鎖状、分岐状、環状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基等の非置換の1価炭化水素基、及びこれらの基の水素原子の1個又はそれ以上がエポキシ基、アルコキシ基、ヒドロキシ基等で置換された基や、−O−,−CO−,−OCO−,−COO−,−OCOO−が介在された基等の後述する一般式(4)で示される基、ケイ素−ケイ素結合を含む有機基等を挙げることができる。
【0044】
上記一般式(2)で示される化合物として、以下のものを挙げることができる。
m10=0、m11=0、m12=0であるテトラアルコキシシランとして、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−iso−プロポキシシラン等を例示できる。
【0045】
m10+m11+m12=1であるトリアルコキシシランとして、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリ−n−プロポキシシラン、トリ−iso−プロポキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ−n−プロポキシシラン、メチルトリ−iso−プロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリ−n−プロポキシシラン、エチルトリ−iso−プロポキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ−n−プロポキシシラン、ビニルトリ−iso−プロポキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−プロピルトリ−n−プロポキシシラン、n−プロピルトリ−iso−プロポキシシラン、i−プロピルトリメトキシシラン、i−プロピルトリエトキシシラン、i−プロピルトリ−n−プロポキシシラン、i−プロピルトリ−iso−プロポキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ブチルトリ−nプロポキシシラン、n−ブチルトリ−iso−プロポキシシラン、sec−ブチルトリメトキシシラン、sec−ブチル−トリエトキシシラン、sec−ブチル−トリ−n−プロポキシシラン、sec−ブチル−トリ−iso−プロポキシシラン、t−ブチルトリメトキシシラン、t−ブチルトリエトキシシラン、t−ブチルトリ−nプロポキシシラン、t−ブチルトリ−iso−プロポキシシラン、シクロプロピルトリメトキシシラン、シクロプロピルトリエトキシシラン、シクロプロピル−トリ−n−プロポキシシラン、シクロプロピル−トリ−iso−プロポキシシラン、シクロブチルトリメトキシシラン、シクロブチルトリエトキシシラン、シクロブチル−トリ−n−プロポキシシラン、シクロブチル−トリ−iso−プロポキシシラン、シクロペンチルトリメトキシシラン、シクロペンチルトリエトキシシラン、シクロペンチル−トリ−n−プロポキシシラン、シクロペンチル−トリ−iso−プロポキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、シクロヘキシル−トリ−n−プロポキシシラン、シクロヘキシル−トリ−iso−プロポキシシラン、シクロヘキセニルトリメトキシシラン、シクロヘキセニルトリエトキシシラン、シクロヘキセニル−トリ−n−プロポキシシラン、シクロヘキセニル−トリ−iso−プロポキシシラン、シクロヘキセニルエチルトリメトキシシラン、シクロヘキセニルエチルトリエトキシシラン、シクロヘキセニルエチル−トリ−n−プロポキシシラン、シクロヘキセニルエチルトリ−iso−プロポキシシラン、シクロオクタニルトリメトキシシラン、シクロオクタニルトリエトキシシラン、シクロオクタニル−トリ−n−プロポキシシラン、シクロオクタニル−トリ−iso−プロポキシシラン、シクロペンタジエニルプロピルトリメトキシシラン、シクロペンタジエニルプロピルトリエトキシシラン、シクロペンタジエニルプロピル−トリ−n−プロポキシシラン、シクロペンタジエニルプロピル−トリ−iso−プロポキシシラン、ビシクロヘプテニルトリメトキシシラン、ビシクロヘプテニルトリエトキシシラン、ビシクロヘプテニル−トリ−n−プロポキシシラン、ビシクロヘプテニル−トリ−iso−プロポキシシラン、ビシクロヘプチルトリメトキシシラン、ビシクロヘプチルトリエトキシシラン、ビシクロヘプチル−トリ−n−プロポキシシラン、ビシクロヘプチル−トリ−iso−プロポキシシラン、アダマンチルトリメトキシシラン、アダマンチルトリエトキシシラン、アダマンチル−トリ−n−プロポキシシラン、アダマンチル−トリ−iso−プロポキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリ−n−プロポキシシラン、フェニルトリ−iso−プロポキシシラン、ベンジルトリメトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、ベンジルトリ−n−プロポキシシラン、ベンジルトリ−iso−プロポキシシラン、トリルトリメトキシシラン、トリルトリエトキシシラン、トリルトリ−n−プロポキシシラン、トリルトリ−iso−プロポキシシラン、フェネチルトリメトキシシラン、フェネチルトリエトキシシラン、フェネチルトリ−n−プロポキシシラン、フェネチルトリ−iso−プロポキシシラン、ナフチルトリメトキシシラン、ナフチルトリエトキシシラン、ナフチルトリ−n−プロポキシシラン、ナフチルトリ−iso−プロポキシシラン等を例示できる。
【0046】
m10+m11+m12=2であるジアルコキシシランとして、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルエチルジメトキシシラン、メチルエチルジエトキシシラン、ジメチル−ジ−n−プロポキシシラン、ジメチル−ジ−iso−プロポキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチル−ジ−n−プロポキシシラン、ジエチル−ジ−iso−プロポキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジエトキシシラン、ジ−n−プロピル−ジ−n−プロポキシシラン、ジ−n−プロピル−ジ−iso−プロポキシシラン、ジ−iso−プロピルジメトキシシラン、ジ−iso−プロピルジエトキシシラン、ジiso−プロピル−ジ−n−プロポキシシラン、ジ−iso−プロピル−ジ−iso−プロポキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジエトキシシラン、ジ−n−ブチルジ−n−プロポキシシラン、ジ−n−ブチル−ジ−iso−プロポキシシラン、ジ−sec−ブチルジメトキシシラン、ジ−sec−ブチルジエトキシシラン、ジ−sec−ブチル−ジ−n−プロポキシシラン、ジ−sec−ブチル−ジ−iso−プロポキシシラン、ジ−t−ブチルジメトキシシラン、ジ−t−ブチルジエトキシシラン、ジt−ブチル−ジ−n−プロポキシシラン、ジ−t−ブチル−ジ−iso−プロポキシシラン、ジ−シクロプロピルジメトキシシラン、ジ−シクロプロピルジエトキシシラン、ジ−シクロプロピル−ジ−n−プロポキシシラン、ジ−シクロプロピル−ジ−iso−プロポキシシラン、ジ−シクロブチルジメトキシシラン、ジ−シクロブチルジエトキシシラン、ジ−シクロブチル−ジ−n−プロポキシシラン、ジ−シクロブチル−ジ−iso−プロポキシシラン、ジ−シクロペンチルジメトキシシラン、ジ−シクロペンチルジエトキシシラン、ジ−シクロペンチル−ジ−n−プロポキシシラン、ジ−シクロペンチル−ジ−iso−プロポキシシラン、ジ−シクロヘキシルジメトキシシラン、ジ−シクロヘキシルジエトキシシラン、ジ−シクロヘキシル−ジ−n−プロポキシシラン、ジ−シクロヘキシル−ジ−iso−プロポキシシラン、ジ−シクロヘキセニルジメトキシシラン、ジ−シクロヘキセニルジエトキシシラン、ジシクロヘキセニル−ジ−n−プロポキシシラン、ジ−シクロヘキセニル−ジ−iso−プロポキシシラン、ジ−シクロヘキセニルエチルジメトキシシラン、ジ−シクロヘキセニルエチルジエトキシシラン、ジ−シクロヘキセニルエチル−ジ−n−プロポキシシラン、ジ−シクロヘキセニルエチル−ジ−iso−プロポキシシラン、ジ−シクロオクタニルジメトキシシラン、ジ−シクロオクタニルジエトキシシラン、ジシクロオクタニル−ジ−n−プロポキシシラン、ジ−シクロオクタニル−ジ−iso−プロポキシシラン、ジ−シクロペンタジエニルプロピルジメトキシシラン、ジ−シクロペンタジエニルプロピルジエトキシシラン、ジ−シクロペンタジエニルプロピル−ジ−n−プロポキシシラン、ジ−シクロペンタジエニルプロピル−ジ−iso−プロポキシシラン、ビス−ビシクロヘプテニルジメトキシシラン、ビス−ビシクロヘプテニルジエトキシシラン、ビス−ビシクロヘプテニル−ジ−n−プロポキシシラン、ビス−ビシクロヘプテニル−ジ−iso−プロポキシシラン、ビス−ビシクロヘプチルジメトキシシラン、ビス−ビシクロヘプチルジエトキシシラン、ビス−ビシクロヘプチル−ジ−n−プロポキシシラン、ビス−ビシクロヘプチル−ジ−iso−プロポキシシラン、ビス−アダマンチルジメトキシシラン、ビス−アダマンチルジエトキシシラン、ビス−アダマンチル−ジ−n−プロポキシシラン、ビス−アダマンチル−ジ−iso−プロポキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニル−ジ−エトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、ジフェニル−ジ−nプロポキシシラン、ジフェニル−ジ−iso−プロポキシシラン等を例示できる。
【0047】
m10=1、m11=1、m12=1であるモノアルコキシシランとして、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルエチルメトキシシラン、ジメチルエチルエトキシシラン、ジメチルフェニルメトキシシラン、ジメチルフェニルエトキシシラン、ジメチルベンジルメトキシシラン、ジメチルベンジルエトキシシラン、ジメチルフェネチルメトキシシラン、ジメチルフェネチルエトキシシラン等を例示できる。
【0048】
好ましくは、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、iso−プロピルトリメトキシシラン、iso−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、iso−ブチルトリメトキシシラン、iso−ブチルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、シクロペンチルトリメトキシシラン、シクロペンチルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、シクロヘキセニルトリメトキシシラン、シクロヘキセニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ベンジルトリメトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、フェネチルトリメトキシシラン、フェネチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、メチルエチルジメトキシシラン、メチルエチルジエトキシシラン、ジ−n−プロピル−ジ−メトキシシラン、ジ−n−ブチルジ−メトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、ジメチルエチルメトキシシラン、ジメチルフェニルメトキシシラン、ジメチルベンジルメトキシシラン、ジメチルフェネチルメトキシシラン等を例示できる。
【0049】
上記R10、R11、R12で表される有機基の別の例として、炭素−酸素単結合又は炭素−酸素二重結合を1以上有する有機基を挙げることができる。具体的には、エポキシ基、エステル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基からなる群から選択される1以上の基を有する有機基である。上記一般式(2)中の炭素−酸素単結合、炭素−酸素二重結合の1以上を有する有機基は、例として次の一般式(4)で示されるものを挙げることができる。
【0050】
(P−Q−(Sv1−Q−)−(T)v2−Q−(Sv3−Q− (4)
(上記式中、Pは水素原子、ヒドロキシル基、
【化10】
炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキルカルボニルオキシ基、又は炭素数1〜6のアルキルカルボニル基であり、QとQとQとQは各々独立して−C(2q−p)−(式中、Pは上記と同様であり、pは0〜3の整数であり、qは0〜10の整数(但し、q=0は単結合であることを示す。)である。)、uは0〜3の整数であり、SとSは各々独立して−O−、−CO−、−OCO−、−COO−又は−OCOO−を表す。v1、v2、v3は、各々独立して0又は1を表す。これらとともに、Tはヘテロ原子を含んでもよい脂環又は芳香環からなる2価の基であり、Tの酸素原子等のヘテロ原子を含んでもよい脂環又は芳香環の例を以下に示す。TにおいてQとQと結合する位置は、特に限定されないが、立体的な要因による反応性や反応に用いる市販試薬の入手性等を考慮して適宜選択できる。)
【0051】
【化11】
【0052】
上記一般式(2)中の炭素−酸素単結合又は炭素−酸素二重結合を1以上有する有機基の好ましい例として、以下のものが挙げられる。尚、下記式中において、(Si)はSiとの結合箇所を示すために記載した。
【0053】
【化12】
【0054】
【化13】
【0055】
【化14】
【0056】
また、R10、R11、R12の有機基の例として、ケイ素−ケイ素結合を含む有機基を用いることもできる。具体的には下記のものを挙げることができる。
【0057】
【化15】
【0058】
本発明のケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物は、前記化合物(A)、前記化合物(B)、及び下記一般式(3)で示される化合物(C)を含む混合物の縮合物及び/又は加水分解縮合物を含有してもよい。
U(ORm2(ORm3(O)m4 (3)
(式中、R、Rは水素原子、炭素数1〜30の有機基であり、m2+m3+m4はUの種類により決まる価数であり、m2、m3、m4は0以上の整数、Uは周期律表のIII族、IV族、又はV族の元素で炭素及びケイ素を除くものである。)
【0059】
上記一般式(3)で表す化合物として以下のような化合物を例示できるが、これに限られるものではない。
例えば、Uがホウ素の場合、上記一般式(3)で示される化合物として、ボロンメトキシド、ボロンエトキシド、ボロンプロポキシド、ボロンブトキシド、ボロンアミロキシド、ボロンヘキシロキシド、ボロンシクロペントキシド、ボロンシクロヘキシロキシド、ボロンアリロキシド、ボロンフェノキシド、ボロンメトキシエトキシド、ホウ酸、酸化ホウ素等をモノマーとして例示できる。
【0060】
Uがアルミニウムの場合、上記一般式(3)で示される化合物として、アルミニウムメトキシド、アルミニウムエトキシド、アルミニウムプロポキシド、アルミニウムブトキシド、アルミニウムアミロキシド、アルミニウムヘキシロキシド、アルミニウムシクロペントキシド、アルミニウムシクロヘキシロキシド、アルミニウムアリロキシド、アルミニウムフェノキシド、アルミニウムメトキシエトキシド、アルミニウムエトキシエトキシド、アルミニウムジプロポキシエチルアセトアセテート、アルミニウムジブトキシエチルアセトアセテート、アルミニウムプロポキシビスエチルアセトアセテート、アルミニウムブトキシビスエチルアセトアセテート、アルミニウム2,4−ペンタンジオネート、アルミニウム2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート等をモノマーとして例示できる。
【0061】
Uがガリウムの場合、上記一般式(3)で示される化合物として、ガリウムメトキシド、ガリウムエトキシド、ガリウムプロポキシド、ガリウムブトキシド、ガリウムアミロキシド、ガリウムヘキシロキシド、ガリウムシクロペントキシド、ガリウムシクロヘキシロキシド、ガリウムアリロキシド、ガリウムフェノキシド、ガリウムメトキシエトキシド、ガリウムエトキシエトキシド、ガリウムジプロポキシエチルアセトアセテート、ガリウムジブトキシエチルアセトアセテート、ガリウムプロポキシビスエチルアセトアセテート、ガリウムブトキシビスエチルアセトアセテート、ガリウム2、4−ペンタンジオネート、ガリウム2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート等をモノマーとして例示できる。
【0062】
Uがイットリウムの場合、上記一般式(3)で示される化合物として、イットリウムメトキシド、イットリウムエトキシド、イットリウムプロポキシド、イットリウムブトキシド、イットリウムアミロキシド、イットリウムヘキシロキシド、イットリウムシクロペントキシド、イットリウムシクロヘキシロキシド、イットリウムアリロキシド、イットリウムフェノキシド、イットリウムメトキシエトキシド、イットリウムエトキシエトキシド、イットリウムジプロポキシエチルアセトアセテート、イットリウムジブトキシエチルアセトアセテート、イットリウムプロポキシビスエチルアセトアセテート、イットリウムブトキシビスエチルアセトアセテート、イットリウム2、4−ペンタンジオネート、イットリウム2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート等をモノマーとして例示できる。
【0063】
Uがゲルマニウムの場合、上記一般式(3)で示される化合物として、ゲルマニウムメトキシド、ゲルマニウムエトキシド、ゲルマニウムプロポキシド、ゲルマニウムブトキシド、ゲルマニウムアミロキシド、ゲルマニウムヘキシロキシド、ゲルマニウムシクロペントキシド、ゲルマニウムシクロヘキシロキシド、ゲルマニウムアリロキシド、ゲルマニウムフェノキシド、ゲルマニウムメトキシエトキシド、ゲルマニウムエトキシエトキシド等をモノマーとして例示できる。
【0064】
Uがチタンの場合、上記一般式(3)で示される化合物として、チタンメトキシド、チタンエトキシド、チタンプロポキシド、チタンブトキシド、チタンアミロキシド、チタンヘキシロキシド、チタンシクロペントキシド、チタンシクロヘキシロキシド、チタンアリロキシド、チタンフェノキシド、チタンメトキシエトキシド、チタンエトキシエトキシド、チタンジプロポキシビスエチルアセトアセテート、チタンジブトキシビスエチルアセトアセテート、チタンジプロポキシビス2、4−ペンタンジオネート、チタンジブトキシビス2、4−ペンタンジオネート等をモノマーとして例示できる。
【0065】
Uがジルコニウムの場合、上記一般式(3)で示される化合物として、メトキシジルコニウム、エトキシジルコニウム、プロポキシジルコニウム、ブトキシジルコニウム、フェノキシジルコニウム、ジルコニウムジブトキシドビス(2,4−ペンタンジオネート)、ジルコニウムジプロポキシドビス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート)等をモノマーとして例示できる。
【0066】
Uがハフニウムの場合、上記一般式(3)で示される化合物として、ハフニウムメトキシド、ハフニウムエトキシド、ハフニウムプロポキシド、ハフニウムブトキシド、ハフニウムアミロキシド、ハフニウムヘキシロキシド、ハフニウムシクロペントキシド、ハフニウムシクロヘキシロキシド、ハフニウムアリロキシド、ハフニウムフェノキシド、ハフニウムメトキシエトキシド、ハフニウムエトキシエトキシド、ハフニウムジプロポキシビスエチルアセトアセテート、ハフニウムジブトキシビスエチルアセトアセテート、ハフニウムジプロポキシビス2、4−ペンタンジオネート、ハフニウムジブトキシビス2、4−ペンタンジオネート等をモノマーとして例示できる。
【0067】
Uがビスマスの場合、上記一般式(3)で示される化合物として、メトキシビスマス、エトキシビスマス、プロポキシビスマス、ブトキシビスマス、フェノキシビスマス等をモノマーとして例示できる。
【0068】
Uがスズの場合、上記一般式(3)で示される化合物として、メトキシスズ、エトキシスズ、プロポキシスズ、ブトキシスズ、フェノキシスズ、メトキシエトキシスズ、エトキシエトキシスズ、スズ2、4−ペンタンジオネート、スズ2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート等をモノマーとして例示できる。
【0069】
Uがリンの場合、上記一般式(3)で示される化合物として、トリメチルフォスファイト、トリエチルフォスファイト、トリプロピルフォスファイト、トリメチルフォスフェイト、トリエチルフォスフェイト、トリプロピルフォスフェイト、五酸化二リン等をモノマーとして例示できる。
【0070】
Uがバナジウムの場合、上記一般式(3)で示される化合物として、バナジウムオキシドビス(2,4−ペンタンジオネート)、バナジウム2,4−ペンタンジオネート、バナジウムトリブトキシドオキシド、バナジウムトリプロポキシドオキシド等をモノマーとして例示できる。
【0071】
Uがヒ素の場合、上記一般式(3)で示される化合物として、メトキシヒ素、エトキシヒ素、プロポキシヒ素、ブトキシヒ素、フェノキシヒ素等をモノマーとして例示できる。
【0072】
Uがアンチモンの場合、上記一般式(3)で示される化合物として、メトキシアンチモン、エトキシアンチモン、プロポキシアンチモン、ブトキシアンチモン、フェノキシアンチモン、酢酸アンチモン、プロピオン酸アンチモン等をモノマーとして例示できる。
【0073】
Uがニオブの場合、上記一般式(3)で示される化合物として、メトキシニオブ、エトキシニオブ、プロポキシニオブ、ブトキシニオブ、フェノキシニオブ等をモノマーとして例示できる。
【0074】
Uがタンタルの場合、上記一般式(3)で示される化合物として、メトキシタンタル、エトキシタンタル、プロポキシタンタル、ブトキシタンタル、フェノキシタンタル等をモノマーとして例示できる。
【0075】
本発明のケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物は、上記一般式(1)で示される化合物(A)を一種以上、上記一般式(2)で示される化合物(B)を一種以上、更に、必要に応じて上記一般式(3)で示される化合物(C)を一種以上選択して、反応前又は反応中に混合した混合物(以下、「モノマー混合物」ということもある)を、縮合物及び/又は加水分解縮合物(以下、「ケイ素含有化合物」ということもある)を形成する反応原料とすることができる。
【0076】
〔ケイ素含有化合物の合成方法〕
(合成方法1:縮合物の合成)
モノマー混合物から縮合物を製造することができる。
操作方法として、下記の合成方法に記載されている酸触媒、塩基触媒を用いて、あるいは無触媒で、モノマー混合物を室温から反応混合物が還流する間の温度で加熱しその後熟成させる方法により得ることができる。この方法は、特に(A)成分でm1が1又は2の場合に好ましい。
【0077】
このとき、必要であれば有機溶媒を足してもよい。例えば、アルコール系の溶媒としてメタノール、エタノール、ブタノール等、エーテル系としてテトラヒドロフラン、ブチルエーテル等、エステル系としてプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ケトン系としてメチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン等、炭化水素系としてヘキサン、トルエン等を例示することができる。
【0078】
縮合が進んでくると、アルコールが副生してくるので、これによっても反応の進行を確認することができる。反応が適当に進行したところで室温に戻すことにより、反応を停止することができる。
【0079】
反応終了後、必要であれば、反応に使用した有機溶媒や、副生したアルコールを適切な温度圧力条件下で除去し、縮合物を得る。当該縮合物は、そのままケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物の成分(ベースポリマー)として使用してもよい。また、反応に使用した有機溶媒や副生アルコールを除去せずに、次の操作に適用してもよい。
更に、以下に示されているように、酸触媒又は塩基触媒による加水分解縮合した後、レジスト下層膜形成用組成物の成分として使用してもよい。
【0080】
(合成方法2:酸触媒を用いた加水分解縮合物の合成)
本発明の加水分解縮合物は、モノマー混合物、前記縮合物、又は前記縮合物に更に別のモノマーを添加した混合物を、有機酸、無機酸等から選ばれる一種以上の化合物を酸触媒として用いて、加水分解縮合を行うことで製造することができる。
【0081】
このとき使用される酸触媒は、ギ酸、酢酸、シュウ酸、マレイン酸、トリフロオロ酢酸、フッ酸、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、リン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸等を挙げることができる。触媒の使用量は、モノマー混合物等1モルに対して1×10−6〜10モル、好ましくは1×10−5〜5モル、より好ましくは1×10−4〜1モルである。
【0082】
これらのモノマー混合物等から加水分解縮合により加水分解縮合物を得るときの水の量は、モノマー混合物等に結合している加水分解性置換基1モル当たり0.01〜100モル、より好ましくは0.05〜50モル、更に好ましくは0.1〜30モルを添加することが好ましい。100モル以下であれば、反応に使用する装置が小さくなり経済的になる。
【0083】
操作方法として、触媒水溶液にモノマー混合物等を添加して加水分解縮合反応を開始させる。このとき、触媒水溶液に有機溶剤を加えてもよいし、モノマー混合物等を有機溶剤で希釈しておいてもよいし、両方行ってもよい。反応温度は0〜100℃、好ましくは5〜80℃である。モノマー混合物等の滴下時に5〜80℃に温度を保ち、その後20〜80℃で熟成させる方法が好ましい。
【0084】
酸触媒水溶液に加えることのできる、又はモノマー混合物等を希釈することのできる有機溶剤としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、アセトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、トルエン、ヘキサン、酢酸エチル、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン、ブタンジオールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ブタンジオールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸t−ブチル、プロピオン酸t−ブチル、プロピレングリコールモノt−ブチルエーテルアセテート、ガンマブチロラクトン及びこれらの混合物等が好ましい。
【0085】
これらの溶剤の中で好ましいものは水溶性のものである。例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール等の多価アルコール、ブタンジオールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ブタンジオールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ブタンジオールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル等の多価アルコール縮合物誘導体、アセトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン等を挙げることができる。この中で特に好ましいのは、沸点が100℃以下のものである。
【0086】
尚、有機溶剤の使用量は、モノマー混合物等1モルに対して0〜1,000ml、特に0〜500mlが好ましい。有機溶剤の使用量が少ない方が反応容器が小さくなり経済的である。
【0087】
その後、必要であれば触媒の中和反応を行い、加水分解縮合物水溶液を得る。このとき、中和に使用することのできるアルカリ性物質の量は、触媒で使用された酸に対して0.1〜2当量が好ましい。このアルカリ性物質は水中でアルカリ性を示すものであれば、任意の物質でよい。
【0088】
続いて、加水分解縮合物水溶液から加水分解縮合反応で生成したアルコール等の副生物を減圧除去等で取り除くことが好ましい。このとき加水分解縮合物水溶液を加熱する温度は、添加した有機溶剤と反応で発生したアルコール等の種類によるが、好ましくは0〜100℃、より好ましくは10〜90℃、更に好ましくは15〜80℃である。またこのときの減圧度は、除去すべき有機溶剤及びアルコール等の種類、排気装置、凝縮装置及び加熱温度により異なるが、好ましくは大気圧以下、より好ましくは絶対圧で80kPa以下、更に好ましくは絶対圧で50kPa以下である。この際除去されるアルコール量を正確に知ることは難しいが、生成したアルコール等のおよそ80質量%以上が除かれることが望ましい。
【0089】
次に、加水分解縮合物から加水分解縮合に使用した酸触媒を除去してもよい。酸触媒を除去する方法として、水と加水分解縮合物を混合し、加水分解縮合物を有機溶剤で抽出する。このとき使用する有機溶剤としては、加水分解縮合物を溶解でき、水と混合させると2層分離するものが好ましい。例えばメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、アセトン、テトラヒドロフラン、トルエン、ヘキサン、酢酸エチル、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン、ブタンジオールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ブタンジオールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ブタンジオールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸t−ブチル、プロピオン酸t−ブチル、プロピレングリコールモノt−ブチルエーテルアセテート、ガンマブチロラクトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンチルメチルエーテル等及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0090】
更に、水溶性有機溶剤と水難溶性有機溶剤の混合物を使用することも可能である。例えばメタノール−酢酸エチル混合物、エタノール−酢酸エチル混合物、1−プロパノール−酢酸エチル混合物、2−プロパノール−酢酸エチル混合物、ブタンジオールモノメチルエーテル−酢酸エチル混合物、プロピレングリコールモノメチルエーテル−酢酸エチル混合物、エチレングリコールモノメチルエーテル−酢酸エチル混合物、ブタンジオールモノエチルエーテル−酢酸エチル混合物、プロピレングリコールモノエチルエーテル−酢酸エチル混合物、エチレングリコールモノエチルエーテル−酢酸エチル混合物、ブタンジオールモノプロピルエーテル−酢酸エチル混合物、プロピレングリコールモノプロピルエーテル−酢酸エチル混合物、エチレングリコールモノプロピルエーテル−酢酸エチル混合物、メタノール−メチルイソブチルケトン混合物、エタノール−メチルイソブチルケトン混合物、1−プロパノール−メチルイソブチルケトン混合物、2−プロパノール−メチルイソブチルケトン混合物、プロピレングリコールモノメチルエーテル−メチルイソブチルケトン混合物、エチレングリコールモノメチルエーテル−メチルイソブチルケトン混合物、プロピレングリコールモノエチルエーテル−メチルイソブチルケトン混合物、エチレングリコールモノエチルエーテル−メチルイソブチルケトン混合物、プロピレングリコールモノプロピルエーテル−メチルイソブチルケトン混合物、エチレングリコールモノプロピルエーテル−メチルイソブチルケトン混合物、メタノール−シクロペンチルメチルエーテル混合物、エタノール−シクロペンチルメチルエーテル混合物、1−プロパノール−シクロペンチルメチルエーテル混合物、2−プロパノール−シクロペンチルメチルエーテル混合物、プロピレングリコールモノメチルエーテル−シクロペンチルメチルエーテル混合物、エチレングリコールモノメチルエーテル−シクロペンチルメチルエーテル混合物、プロピレングリコールモノエチルエーテル−シクロペンチルメチルエーテル混合物、エチレングリコールモノエチルエーテル−シクロペンチルメチルエーテル混合物、プロピレングリコールモノプロピルエーテル−シクロペンチルメチルエーテル混合物、エチレングリコールモノプロピルエーテル−シクロペンチルメチルエーテル混合物、メタノール−プロピレングリコールメチルエーテルアセテート混合物、エタノール−プロピレングリコールメチルエーテルアセテート混合物、1−プロパノール−プロピレングリコールメチルエーテルアセテート混合物、2−プロパノール−プロピレングリコールメチルエーテルアセテート混合物、プロピレングリコールモノメチルエーテル−プロピレングリコールメチルエーテルアセテート混合物、エチレングリコールモノメチルエーテル−プロピレングリコールメチルエーテルアセテート混合物、プロピレングリコールモノエチルエーテル−プロピレングリコールメチルエーテルアセテート混合物、エチレングリコールモノエチルエーテル−プロピレングリコールメチルエーテルアセテート混合物、プロピレングリコールモノプロピルエーテル−プロピレングリコールメチルエーテルアセテート混合物、エチレングリコールモノプロピルエーテル−プロピレングリコールメチルエーテルアセテート混合物等が好ましいが、組み合わせはこれらに限定されることはない。
【0091】
尚、水溶性有機溶剤と水難溶性有機溶剤との混合割合は、適宜選定されるが、水難溶性有機溶剤100質量部に対して、水溶性有機溶剤0.1〜1,000質量部、好ましくは1〜500質量部、更に好ましくは2〜100質量部である。
【0092】
続いて、中性水で洗浄してもよい。この水は、通常脱イオン水や超純水と呼ばれているものを使用すればよい。この水の量は、加水分解縮合物溶液1Lに対して、0.01〜100L、好ましくは0.05〜50L、より好ましくは0.1〜5Lである。この洗浄の方法は、両方を同一の容器にいれ掻き混ぜた後、静置して水層を分離すればよい。洗浄回数は、1回以上あればよいが、10回以上洗浄しても洗浄しただけの効果は得られないため、好ましくは1〜5回程度である。
【0093】
その他に酸触媒を除去する方法として、イオン交換樹脂による方法や、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のエポキシ化合物で中和したのち除去する方法を挙げることができる。これらの方法は、反応に使用された酸触媒に合わせて適宜選択することができる。
【0094】
このときの水洗操作により、ケイ素含有化合物の一部が水層に逃げ、実質的に分画操作と同等の効果が得られている場合があるため、水洗回数や洗浄水の量は触媒除去効果と分画効果を鑑みて適宜選択すればよい。
【0095】
酸触媒が残留している加水分解縮合物水溶液及び酸触媒が除去された加水分解縮合物溶液、いずれの場合においても、最終的な溶剤を加え、減圧で溶剤交換することで所望の加水分解縮合物溶液を得る。このときの溶剤交換の温度は、除去すべき反応溶剤や抽出溶剤の種類によるが、好ましくは0〜100℃、より好ましくは10〜90℃、更に好ましくは15〜80℃である。またこのときの減圧度は、除去すべき抽出溶剤の種類、排気装置、凝縮装置及び加熱温度により異なるが、好ましくは大気圧以下、より好ましくは絶対圧で80kPa以下、更に好ましくは絶対圧で50kPa以下である。
【0096】
このとき、溶剤が変わることにより加水分解縮合物が不安定になる場合がある。これは最終的な溶剤と加水分解縮合物との相性により発生するが、これを防止するため、安定剤として、特開2009−126940号公報(0180)〜(0184)段落に記載されている環状エーテルを置換基として有する1価又は2価以上のアルコールを加えてもよい。加える量としては溶剤交換前の溶液中の加水分解縮合物100質量部に対して0〜25質量部、好ましくは0〜15質量部、より好ましくは0〜5質量部であるが、添加する場合は0.5質量部以上が好ましい。溶剤交換前の溶液に必要であれば、環状エーテルを置換基として有する1価又は2価以上のアルコールを添加して溶剤交換操作を行えばよい。
【0097】
加水分解縮合物は、ある濃度以上に濃縮すると更に縮合反応が進行し、有機溶剤に対して再溶解不可能な状態に変化してしまう恐れがあるため、適度な濃度の溶液状態にしておくことが好ましい。また、あまり薄すぎると、溶剤の量が過大となるため、適度な濃度の溶液状態にしておくことが経済的で好ましい。このときの濃度としては、0.1〜20質量%が好ましい。
【0098】
加水分解縮合物溶液に加える最終的な溶剤として好ましいものはアルコール系溶剤であり、特に好ましいものはエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール等のモノアルキルエーテル誘導体である。具体的には、ブタンジオールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ブタンジオールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ブタンジオールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル等が好ましい。
【0099】
これらの溶剤が主成分であれば、補助溶剤として、非アルコール系溶剤を添加する事も可能である。この補助溶剤としては、アセトン、テトラヒドロフラン、トルエン、ヘキサン、酢酸エチル、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸t−ブチル、プロピオン酸t−ブチル、プロピレングリコールモノt−ブチルエーテルアセテート、ガンマブチロラクトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンチルメチルエーテル等を例示できる。
【0100】
更に沸点が180度以上、好ましくは180度以上300度以下、の高沸点溶剤を添加する事も可能である。この高沸点溶剤としては、1−オクタノール、2−エチルヘキサノール、1−ノナノール、1−デカノール、1−ウンデカノール、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,4−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2,4−ヘプタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、グリセリン、酢酸n−ノニル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、1,2−ジアセトキシエタン、1−アセトキシ−2−メトキシエタン、1,2−ジアセトキシプロパン、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノプロピルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノブチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノエチルエーテル等を例示できる。
【0101】
また、酸触媒を用いた別の反応操作としては、モノマー混合物等又はモノマー混合物等の有機溶液に、水又は含水有機溶剤を添加し、加水分解反応を開始させる。このとき触媒はモノマー混合物等又はモノマー混合物等の有機溶液に添加してもよいし、水又は含水有機溶剤に添加しておいてもよい。反応温度は0〜100℃、好ましくは10〜80℃である。水の滴下時に10〜50℃に加熱し、その後20〜80℃に昇温させて熟成させる方法が好ましい。
【0102】
有機溶剤を使用する場合は、水溶性のものが好ましく、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、アセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ブタンジオールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ブタンジオールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ブタンジオールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート等の多価アルコール縮合物誘導体及びこれらの混合物等を挙げることができる。
【0103】
有機溶剤の使用量は、モノマー混合物等1モルに対して0〜1,000ml、特に0〜500mlが好ましい。有機溶剤の使用量が少ない方が反応容器が小さくなり経済的である。得られた反応混合物の後処理は、前記の方法と同様で後処理し、ベースポリマーを得ることができる。
【0104】
(合成方法3:塩基触媒を用いた加水分解縮合物の合成)
また、加水分解縮合物は、モノマー混合物等を塩基触媒の存在下、加水分解縮合を行うことで製造することができる。このとき使用される塩基触媒は、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、エチルメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルモノエタノールアミン、モノメチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジアザビシクロオクタン、ジアザビシクロシクロノネン、ジアザビシクロウンデセン、ヘキサメチレンテトラミン、アニリン、N,N−ジメチルアニリン、ピリジン、N,N−ジメチルアミノピリジン、ピロール、ピペラジン、ピロリジン、ピペリジン、ピコリン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、コリンハイドロオキサイド、テトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラブチルアンモニウムハイドロオキサイド、アンモニア、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム等を挙げることができる。触媒の使用量は、モノマー混合物等1モルに対して1×10−6モル〜10モル、好ましくは1×10−5モル〜5モル、より好ましくは1×10−4モル〜1モルである。
【0105】
上記のモノマー混合物等から加水分解縮合により加水分解縮合物を得るときの水の量は、モノマー混合物等に結合している加水分解性置換基1モル当たり0.1〜50モルを添加することが好ましい。50モル以下であれば、反応に使用する装置が小さくなり経済的になる。
【0106】
操作方法として、触媒水溶液にモノマー混合物等を添加して加水分解縮合反応を開始させる。このとき、触媒水溶液に有機溶媒を加えてもよいし、モノマー混合物等を有機溶媒で希釈しておいてもよいし、両方行っても良い。反応温度は0〜100℃、好ましくは5〜80℃である。モノマー混合物等の滴下時に5〜80℃に温度を保ち、その後20〜80℃で熟成させる方法が好ましい。
【0107】
塩基触媒水溶液に加えることのできる、又はモノマー混合物等を希釈することのできる有機溶媒としては、酸触媒水溶液に加えることのできるものとして例示した有機溶剤と同様のものが好ましく用いられる。尚、有機溶媒の使用量は、経済的に反応を行えるため、モノマー混合物等1モルに対して0〜1,000mlが好ましい。
【0108】
その後、必要であれば触媒の中和反応を行い、加水分解縮合物水溶液を得る。このとき、中和に使用することのできる酸性物質の量は、触媒で使用された塩基性物質に対して0.1〜2当量が好ましい。この酸性物質は水中で酸性を示すものであれば、任意の物質でよい。
【0109】
続いて、加水分解縮合物水溶液から加水分解縮合反応で生成したアルコール等の副生物を減圧除去等で取り除くことが好ましい。このとき加水分解縮合物水溶液を加熱する温度は、添加した有機溶媒と反応で発生したアルコールの種類に依るが、好ましくは0〜100℃、より好ましくは10〜90℃、更に好ましくは15〜80℃である。またこのときの減圧度は、除去すべき有機溶剤及びアルコールの種類、排気装置、凝縮装置及び加熱温度により異なるが、好ましくは大気圧以下、より好ましくは絶対圧で80kPa以下、更に好ましくは絶対圧で50kPa以下である。この際除去されるアルコール量を正確に知ることは難しいが、生成したアルコールのおよそ80質量%以上が除かれることが望ましい。
【0110】
次に加水分解縮合に使用した塩基触媒を除去するため、加水分解縮合物を有機溶剤で抽出する。このとき使用する有機溶剤としては、加水分解縮合物を溶解でき、水と混合させると2層分離するものが好ましい。更に、水溶性有機溶剤と水難溶性有機溶剤の混合物を使用することも可能である。
【0111】
塩基触媒を除去する際に用いられる有機溶剤の具体例は、酸触媒を除去する際に用いられるものとして具体的に例示した上述の有機溶剤や、水溶性有機溶剤と水難性有機溶剤の混合物と同様のものを用いることができる。
【0112】
続いて、中性水で洗浄する。この水は、通常脱イオン水や超純水と呼ばれているものを使用すればよい。この水の量は、加水分解縮合物溶液1Lに対して、0.01〜100L、好ましくは0.05〜50L、より好ましくは0.1〜5Lである。この洗浄の方法は、両方を同一の容器にいれ掻き混ぜた後、静置して水層を分離すればよい。洗浄回数は、1回以上あればよいが、10回以上洗浄しても洗浄しただけの効果は得られないため、好ましくは1〜5回程度である。
【0113】
洗浄済みの加水分解縮合物溶液に最終的な溶媒を加え、減圧で溶媒交換することで所望の加水分解縮合物溶液を得る。このときの溶媒交換の温度は、除去すべき抽出溶剤の種類に依るが、好ましくは0〜100℃、より好ましくは10〜90℃、更に好ましくは15〜80℃である。またこのときの減圧度は、除去すべき抽出溶剤の種類、排気装置、凝縮装置及び加熱温度により異なるが、好ましくは大気圧以下、より好ましくは絶対圧で80kPa以下、更に好ましくは絶対圧で50kPa以下である。
【0114】
加水分解縮合物溶液に加える最終的な溶媒として好ましいものはアルコール系溶媒であり、特に好ましいものはエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のモノアルキルエーテル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等のモノアルキルエーテルである。具体的には、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル等が好ましい。
【0115】
これらの溶剤が主成分であれば、補助溶剤として、非アルコール系溶剤を添加する事も可能である。更に沸点が180度以上、好ましくは180度以上300度以下、の高沸点溶剤を添加する事も可能である。
この補助溶剤や高沸点溶剤の具体例は、(合成方法2)で具体的に例示した上述の補助溶剤や、高沸点溶剤と同様のものを用いることができる。
【0116】
また、塩基触媒を用いた別の反応操作としては、モノマー混合物等又はモノマー混合物等の有機溶液に、水又は含水有機溶媒を添加し、加水分解反応を開始させる。このとき触媒はモノマー混合物等又はモノマー混合物等の有機溶液に添加しても良いし、水又は含水有機溶媒に添加しておいてもよい。反応温度は0〜100℃、好ましくは10〜80℃である。水の滴下時に10〜50℃に加熱し、その後20〜80℃に昇温させて熟成させる方法が好ましい。
【0117】
モノマー混合物等の有機溶液又は含水有機溶媒として使用できる有機溶媒としては、水溶性のものが好ましく、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、アセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート等の多価アルコール縮合物誘導体及びこれらの混合物等を挙げることができる。
【0118】
有機溶剤の使用量は、モノマー混合物等1モルに対して0〜1,000ml、特に0〜500mlが好ましい。有機溶剤の使用量が少ない方が反応容器が小さくなり経済的である。得られた反応混合物の後処理は、前記の方法と同様で後処理し、ベースポリマーを得ることができる。
【0119】
上記合成方法1〜3等により得られるケイ素含有化合物の分子量は、モノマー混合物等の選択だけでなく、縮合時の反応条件制御により調整することができるが、重量平均分子量が100,000を超えるものを用いると、ケースによっては異物の発生や塗布斑が生じることがあり、100,000以下、より好ましくは200〜50,000、更には300〜30,000のものを用いることが好ましい。尚、上記重量平均分子量に関するデータは、検出器としてRI、溶離溶剤としてテトラヒドロフランを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、標準物質としてポリスチレンを用いて、ポリスチレン換算で分子量を表したものである。
【0120】
〔その他の成分〕
(熱架橋促進剤)
本発明においては、熱架橋促進剤をケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物に配合してもよい。配合可能な熱架橋促進剤として、下記一般式(5)又は(6)で示される化合物を挙げることができる。具体的には、特開2007−302873号公報に記載されている材料を添加することができる。
X (5)
(式中、Lはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、及びセシウムのいずれか、Xは水酸基又は炭素数1〜30の1価もしくは2価以上の有機酸基であり、aは1以上の整数、bは0又は1以上の整数で、a+bは水酸基又は有機酸基の価数である。)
MY (6)
(式中、Mはスルホニウム、ヨードニウム、及びアンモニウムのいずれかであり、Yは非求核性対向イオンである。)
【0121】
尚、上記熱架橋促進剤は一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。熱架橋促進剤の添加量は、ベースポリマー(上記合成方法で得られたケイ素含有化合物)100質量部に対して、好ましくは0.01〜50質量部、より好ましくは0.1〜40質量部である。
【0122】
(有機酸)
本発明のケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物の安定性を向上させるため、炭素数が1〜30の1価又は2価以上の有機酸を添加することが好ましい。このとき添加する酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、オレイン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、サリチル酸、トリフルオロ酢酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、シュウ酸、マロン酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸、プロピルマロン酸、ブチルマロン酸、ジメチルマロン酸、ジエチルマロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、クエン酸等を例示することができる。特にシュウ酸、マレイン酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、クエン酸等が好ましい。また、安定性を保つため、二種以上の酸を混合して使用してもよい。添加量は組成物に含まれるケイ素100質量部に対して0.001〜25質量部、好ましくは0.01〜15質量部、より好ましくは0.1〜5質量部である。
【0123】
あるいは、上記有機酸を組成物のpHに換算して、好ましくは0≦pH≦7、より好ましくは0.3≦pH≦6.5、更に好ましくは0.5≦pH≦6となるように配合することがよい。
【0124】
(水)
本発明では組成物に水を添加してもよい。水を添加すると、ケイ素含有化合物が水和されるため、リソグラフィー性能が向上する。組成物の溶剤成分における水の含有率は0質量%を超え50質量%未満であり、特に好ましくは0.3〜30質量%、更に好ましくは0.5〜20質量%である。それぞれの成分は、添加量が多すぎると、ケイ素含有レジスト下層膜の均一性が悪くなり、最悪の場合はじきが発生してしまう恐れがある。一方、添加量が少ないとリソグラフィー性能が低下する恐れがある。
【0125】
水を含む全溶剤の使用量は、ベースポリマー100質量部に対して100〜100,000質量部、特に200〜50,000質量部が好適である。
【0126】
(光酸発生剤)
本発明では組成物に光酸発生剤を添加してもよい。本発明で使用される光酸発生剤として、具体的には、特開2009−126940号公報(0160)〜(0179)段落に記載されている材料を添加することができる。
【0127】
(安定剤)
更に、本発明では組成物に安定剤を添加することができる。安定剤として環状エーテルを置換基として有する1価又は2価以上のアルコールを添加することができる。特に特開2009−126940号公報(0181)〜(0182)段落に記載されている安定剤を添加するとケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物の安定性を向上させることができる。
【0128】
(界面活性剤)
更に、本発明では必要に応じて組成物に界面活性剤を配合することが可能である。このようなものとして、具体的には、特開2009−126940号公報(0185)段落に記載されている材料を添加することができる。
【0129】
本発明のケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物は、2層レジスト法や3層レジスト法等の所謂多層レジスト法に好適に使用することができる。本発明の多層レジスト法としては、例えば以下の方法を挙げることができる。
【0130】
(パターン形成方法1)
本発明では、被加工体上に塗布型有機下層膜材料を用いて有機下層膜を形成し、該有機下層膜の上に前記ケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物を用いてケイ素含有レジスト下層膜を形成し、該ケイ素含有レジスト下層膜上に化学増幅型レジスト組成物を用いてフォトレジスト膜を形成し、加熱処理後に高エネルギー線で前記フォトレジスト膜を露光し、アルカリ現像液を用いて前記フォトレジスト膜の露光部を溶解させることによりポジ型パターンを形成し、該パターンが形成されたレジスト膜をマスクにして前記ケイ素含有レジスト下層膜にドライエッチングでパターン転写し、該パターンが転写されたケイ素含有レジスト下層膜をマスクにして前記有機下層膜をドライエッチングでパターン転写し、さらに該パターンが転写された有機下層膜をマスクにして前記被加工体にドライエッチングでパターンを転写することを特徴とするパターン形成方法を提供することができる。
【0131】
(パターン形成方法2)
また、本発明では、被加工体上に炭素を主成分とする有機ハードマスクをCVD法で形成し、該有機ハードマスクの上に前記ケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物を用いてケイ素含有レジスト下層膜を形成し、該ケイ素含有レジスト下層膜上に化学増幅型レジスト組成物を用いてフォトレジスト膜を形成し、加熱処理後に高エネルギー線で前記フォトレジスト膜を露光し、アルカリ現像液を用いて前記フォトレジスト膜の露光部を溶解させることによりポジ型パターンを形成し、該パターンが形成されたレジスト膜をマスクにして前記ケイ素含有レジスト下層膜にドライエッチングでパターン転写し、該パターンが転写されたケイ素含有レジスト下層膜をマスクにして前記有機ハードマスクをドライエッチングでパターン転写し、さらに該パターンが転写された有機ハードマスクをマスクにして前記被加工体にドライエッチングでパターンを転写することを特徴とするパターン形成方法を提供することができる。
【0132】
本発明のケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物を用いて形成したケイ素含有レジスト下層膜を使用してポジ現像でパターンを形成すると、上記のように、CVD膜や有機下層膜の組み合わせを最適化することで、サイズ変換差を生じさせることなくフォトレジストで形成されたパターンを基板上に形成できる。
【0133】
この場合、芳香族骨格を有する有機膜を用いると、リソグラフィー工程における反射防止効果があるだけでなく、基板をエッチング加工するときに十分なエッチング耐性を持つ有機膜となり、エッチング加工が可能となる。
【0134】
本発明のパターンの形成方法に使用されるケイ素含有レジスト下層膜は、本発明のケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物からフォトレジスト膜と同様にスピンコート法等で被加工体上に作製することが可能である。スピンコート後、溶剤を蒸発させ、フォトレジスト膜とのミキシング防止のため、架橋反応を促進させるためにベークをすることが望ましい。ベーク温度は50〜500℃の範囲内で、ベーク時間は10〜300秒の範囲内が好ましく用いられる。特に好ましい温度範囲は、製造されるデバイスの構造にもよるが、デバイスへの熱ダメージを少なくするため、400℃以下が好ましい。
【0135】
ここで、被加工体は、半導体装置基板、又は、半導体装置基板に被加工層(被加工部分)として、金属膜、金属炭化膜、金属酸化膜、金属窒化膜、金属酸化炭化膜、及び金属酸化窒化膜のいずれかが成膜されたもの等を用いることができる。
【0136】
半導体装置基板としては、シリコン基板が一般的に用いられるが、特に限定されるものではなく、Si、アモルファスシリコン(α−Si)、p−Si、SiO、SiN、SiON、W、TiN、Al等で被加工層と異なる材質のものが用いられてもよい。
【0137】
被加工体を構成する金属としては、ケイ素、チタン、タングステン、ハフニウム、ジルコニウム、クロム、ゲルマニウム、銅、アルミニウム、及び鉄のいずれか、あるいはこれらの合金であるものを用いることができる。このような金属を含む被加工層としては、例えば、Si、SiO、SiN、SiON、SiOC、p−Si、α−Si、TiN、WSi、BPSG、SOG、Cr、CrO、CrON、MoSi、W、W−Si、Al、Cu、Al−Si等及び種々の低誘電膜及びそのエッチングストッパー膜が用いられ、通常1〜10,000nm、特に5〜5,000nmの厚さに形成し得る。
【0138】
本発明では、レジストパターンの形成において、波長が300nm以下、好ましくは15nm以上300nm以下の光もしくはEUV光を用いたフォトリソグラフィー法、又は電子線描画を用いることが好ましい。
【0139】
例えば、本発明における露光工程を、ArFエキシマレーザー光による露光プロセスとする場合、フォトレジスト膜としては、通常のArFエキシマレーザー光用レジスト組成物をいずれも使用可能である。
【0140】
このようなArFエキシマレーザー光用レジスト組成物は多数の候補がすでに公知であり、すでに公知の樹脂を大別すると、ポリ(メタ)アクリル系、COMA(Cyclo Olefin Maleic Anhydride)系、COMA−(メタ)アクリルハイブリッド系、ROMP(Ring Opening Methathesis Polymerization)系、ポリノルボルネン系等があるが、このうち、ポリ(メタ)アクリル系樹脂を使用したレジスト組成物は、側鎖に脂環式骨格を導入することでエッチング耐性を確保しているため、解像性能は、他の樹脂系に比較して優れる。
【0141】
パターン形成方法では、ケイ素含有レジスト下層膜を形成した後、その上にフォトレジスト組成物溶液を用いてフォトレジスト膜を形成するが、ケイ素含有レジスト下層膜と同様にスピンコート法が好ましく用いられる。フォトレジスト組成物をスピンコート後、プリベークを行うが、温度は80〜180℃の範囲で、時間は10〜300秒の範囲が好ましい。その後露光を行い、アルカリ現像を行い、レジストパターンを得る。また、露光後にポストエクスポジュアーベーク(PEB)を行うことが好ましい。
【0142】
本発明のパターン形成方法において、ケイ素含有レジスト下層膜をエッチングする場合、フロン系ガス等のフッ素を含有したガスを主成分としたガスを使ってエッチングを行う。フォトレジスト膜の膜減りを小さくするため、ケイ素含有レジスト下層膜は前記ガスに対するエッチング速度が速いことが好ましい。
【0143】
このような多層レジスト法において、上述のように、ケイ素含有レジスト下層膜と被加工体との間に有機下層膜を設けて、有機下層膜を被加工体のエッチングマスクとする場合には、有機下層膜は芳香族骨格を有する有機膜であることが好ましいが、有機下層膜が犠牲膜である場合等は、ケイ素含量が15質量%以下のものであればケイ素含有有機下層膜であってもよい。
【0144】
このような有機下層膜としては、既に3層レジスト法用、あるいはシリコンレジスト組成物を使用した2層レジスト法用の下層膜として公知のもの、特開2005−128509号公報記載の4,4’−(9−フルオレニリデン)ビスフェノールノボラック樹脂(分子量11,000)の他、ノボラック樹脂をはじめとする多数の樹脂であって、2層レジスト法や3層レジスト法の有機下層膜材料として公知のもの等を使用することができる。また、通常のノボラックよりも耐熱性を上げたい場合には、6,6’−(9−フルオレニリデン)−ジ(2−ナフトール)ノボラック樹脂のような多環式骨格を入れることもでき、更にポリイミド系樹脂を選択することもできる(例えば、特開2004−153125号公報)。
【0145】
上記有機下層膜は、組成物溶液を用い、フォトレジスト組成物と同様にスピンコート法等で被加工体上に形成することが可能である。スピンコート法等で有機下層膜を形成した後、有機溶剤を蒸発させるためベークをすることが望ましい。ベーク温度は80〜300℃の範囲内で、ベーク時間は10〜300秒の範囲内が好ましく用いられる。
【0146】
尚、特に限定されるものではなく、エッチング加工条件により異なるが、有機下層膜の厚さは5nm以上、特に20nm以上であり、50,000nm以下であることが好ましく、本発明に係るケイ素含有レジスト下層膜の厚さは1nm以上500nm以下であることが好ましく、より好ましくは300nm以下、更に好ましくは200nm以下である。また、フォトレジスト膜の厚さは1nm以上200nm以下であることが好ましい。
【実施例】
【0147】
以下、合成例及び実施例と比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの記載によって限定されるものではない。尚、下記例で%は質量%を示し、分子量測定はGPCによった。
【0148】
ベースポリマーの合成
[合成例A−1]
フェニルトリメトキシシラン(モノマー100)5.0g、メチルトリメトキシシラン(モノマー101)17.0g、テトラエトキシシラン(モノマー103)52.2g及びエチルボロン酸(モノマー120)7.4gのモノマー混合物を窒素雰囲気中100℃で3時間加熱し、GPCでエチルボロン酸の消失を確認し、ホウ素含有シラン混合物を得た。この混合物を室温に冷却し、メタノール120g、メタンスルホン酸1g及び脱イオン水60gの混合物に室温下、30分かけて添加し、添加終了後12時間、40℃に保持し、加水分解縮合させた。反応終了後、プロピレングリコールエチルエーテル(PGEE)100gを加え、副生アルコールを減圧で留去した。そこに、酢酸エチル1000ml及びPGEE200gを加え、水層を分液した。残った有機層に、イオン交換水100mlを加えて撹拌、静置、分液した。これを3回繰り返した。残った有機層を減圧で濃縮してホウ素を含むケイ素含有化合物A−1のPGEE溶液250g(ポリマー濃度8.7%)を得た。得られた溶液をイオンクロマトグラフでメタンスルホン酸イオンを分析したが、検出されなかった。このもののポリスチレン換算分子量を測定したところMw=3,300であった。
【0149】
[合成例A−1]と同様の条件で表1に示してあるモノマーを使用して[合成例A−2]から[合成例A−13]まで行い、それぞれ目的物を得た。
【0150】
[合成例A−14]
フェニルトリメトキシシラン(モノマー100)9.9g、メチルトリメトキシシラン(モノマー101)20.4g、テトラメトキシシラン(モノマー102)38.1g及び2−チオフェンボロン酸(モノマー133)7.8gのモノマー混合物を、メタノール120g、メタンスルホン酸1g及び脱イオン水60gの混合物に室温下、30分かけて添加し、添加終了後12時間、40℃に保持し、加水分解縮合させた。反応終了後、プロピレングリコールエチルエーテル(PGEE)100gを加え、副生アルコールを減圧で留去した。そこに、酢酸エチル1000ml及びPGEE200gを加え、水層を分液した。残った有機層に、イオン交換水100mlを加えて撹拌、静置、分液した。これを3回繰り返した。残った有機層を減圧で濃縮してホウ素を含むケイ素含有化合物A−14のPGEE溶液250g(ポリマー濃度12.9%)を得た。得られた溶液をイオンクロマトグラフでメタンスルホン酸イオンを分析したが、検出されなかった。このもののポリスチレン換算分子量を測定したところMw=2,100であった。
【0151】
[合成例A−14]と同様の条件で表1に示してあるモノマーを使用して[合成例A−15]から[合成例A−39]まで行い、それぞれ目的物を得た。
【0152】
【表1】
【0153】
【表2】
【0154】
[実施例、比較例]
上記合成例で得られたケイ素含有化合物(A−1)〜(A−39)、酸、熱架橋促進剤、溶剤、その他添加剤等を表3−1、3−2に示す割合で混合し、0.2μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによって、ケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物溶液をそれぞれ調製し、それぞれSol.1〜51とした。
【0155】
【表3-1】
【0156】
【表3-2】
【0157】
TPSOH :水酸化トリフェニルスルホニウム
TPSHCO :炭酸モノ(トリフェニルスルホニウム)
TPSOx :シュウ酸モノ(トリフェニルスルホニウム)
TPSTFA :トリフルオロ酢酸トリフェニルスルホニウム
TPSOCOPh :安息香酸トリフェニルスルホニウム
TPSHPO :リン酸モノ(トリフェニルスルホニウム)
TPSMA :マレイン酸モノ(トリフェニルスルホニウム)
TPSNf :ノナフルオロブタンスルホン酸トリフェニルスルホニウム
QMAMA :マレイン酸モノ(テトラメチルアンモニウム)
QMATFA :トリフルオロ酢酸テトラメチルアンモニウム
QBANO :硝酸テトラブチルアンモニウム
PhICl :塩化ジフェニルヨードニウム
PGMEA :酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル
GBL :ガンマブチロラクトン
【0158】
次に、上記組成物溶液Sol.1〜51をシリコンウエハー上に回転塗布し、240℃で1分間加熱成膜して、膜厚35nmのケイ素含有レジスト下層膜Film1〜51を形成した。これらの膜と、後述するスピンオンカーボン膜及びフォトレジスト膜(それぞれシリコンウエハー上に回転塗布したもの)を東京エレクトロン(株)製ドライエッチング装置Telius SPを用いて、下記のエッチング条件(1)及び(2)でエッチング試験を実施した。その結果を表4−1、4−2に示す。
【0159】
(1)CHF/CF系ガスでのエッチング試験
エッチング条件(1):
チャンバー圧力 10Pa
Upper/Lower RFパワー 500W/300W
CHFガス流量 50ml/min
CFガス流量 150ml/min
Arガス流量 100ml/min
処理時間 10sec
【0160】
(2)CO/N系ガスでのエッチング試験
エッチング条件(2):
チャンバー圧力 2Pa
Upper/Lower RFパワー 1000W/300W
COガス流量 300ml/min
ガス流量 100ml/min
Arガス流量 100ml/min
処理時間 15sec
【0161】
【表4-1】
【0162】
【表4-2】
【0163】
パターンエッチング試験
まず、シリコンウエハー上に、信越化学工業(株)製スピンオンカーボン膜ODL−50(カーボン含有量80質量%)をUL−1(有機下層膜)として膜厚200nmで形成した。
【0164】
次に、ケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物溶液Sol.1〜51を塗布し、240℃で60秒間ベークして膜厚35nmのケイ素含有レジスト下層膜を形成した。更にその上に表5記載のArFレジスト溶液を塗布し、110℃で60秒間ベークして膜厚100nmのフォトレジスト膜を形成した。
【0165】
次いで、ArF液浸露光装置((株)ニコン製;NSR−S610C,NA1.30、σ0.98/0.65、35度ダイポールs偏光照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク)で露光し、100℃で60秒間ベーク(PEB)し、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液で30秒間現像し、43nm 1:1のポジ型のラインアンドスペースパターンを得た。
【0166】
【表5】
【0167】
【化16】
【0168】
次いで、レジストパターンをマスクにしてケイ素含有レジスト下層膜の加工を東京エレクトロン(株)製ドライエッチング装置Telius SPを用いて条件(3)でドライエッチングし、パターンの断面形状を(株)日立製作所製電子顕微鏡(S−4700)で、エッチング加工後のパターンラフネスを(株)日立ハイテクノロジーズ製電子顕微鏡(CG4000)でそれぞれ形状を比較し、表6−1、6−2にまとめた。
【0169】
(3)CHF/CF系ガスでのパターンエッチング試験
エッチング条件(3):
チャンバー圧力 10Pa
Upper/Lower RFパワー 500W/300W
CHFガス流量 50ml/min
CFガス流量 150ml/min
Arガス流量 100ml/min
処理時間 40sec
【0170】
【表6-1】
【0171】
【表6-2】
【0172】
表4−1、4−2に示すように、本発明の組成物を用いて形成したケイ素含有膜のCHF/CFガスエッチングの速度は、B原子を導入したのでArFレジストよりもエッチング速度は十分に速い。一方、CO/Nガスエッチング速度は、有機下層膜より十分に遅く、B原子を導入しても影響はない。表6−1、6−2に示すように現像後のレジスト形状、ケイ素含有レジスト下層膜加工エッチング後の断面形状及びパターンラフネスも本発明は良好であることが認められた。
【0173】
また、比較例では、B原子が導入されていない場合、ケイ素含有レジスト下層膜をエッチングしている際に上層レジストとのエッチング選択性の差がわずかにしか見られず、それによりエッチング後にパターンラフネスの劣化として観察された。
【0174】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。