特許第5798174号(P5798174)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5798174
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】マイクロリソグラフィー投影露光装置
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20151001BHJP
   G02B 7/18 20060101ALI20151001BHJP
【FI】
   G03F7/20 503
   G02B7/18
【請求項の数】10
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-255474(P2013-255474)
(22)【出願日】2013年12月10日
(62)【分割の表示】特願2011-528220(P2011-528220)の分割
【原出願日】2009年9月17日
(65)【公開番号】特開2014-78736(P2014-78736A)
(43)【公開日】2014年5月1日
【審査請求日】2014年1月7日
(31)【優先権主張番号】102008049556.5
(32)【優先日】2008年9月30日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】61/101,281
(32)【優先日】2008年9月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503263355
【氏名又は名称】カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100147692
【弁理士】
【氏名又は名称】下地 健一
(72)【発明者】
【氏名】ザシャ ブライディステル
(72)【発明者】
【氏名】イム ブン パトリック クワン
(72)【発明者】
【氏名】フロリアン バッハ
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ベンツ
(72)【発明者】
【氏名】セヴェリン ヴァルディス
(72)【発明者】
【氏名】アルミン ヴェルベル
【審査官】 新井 重雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−140504(JP,A)
【文献】 特開2003−218023(JP,A)
【文献】 特開2007−335859(JP,A)
【文献】 特開2005−117048(JP,A)
【文献】 特開2002−198305(JP,A)
【文献】 特開2004−029314(JP,A)
【文献】 特開2004−039851(JP,A)
【文献】 特開2008−152238(JP,A)
【文献】 特表2010−518595(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/20
G02B 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体(212;312)および複数のミラーユニット(210;310;610)を有するミラーアレイを備えるマイクロリソグラフィー投影露光装置であって、各ミラーユニットは、
ミラー(214;314;614);および
前記基体に対する前記個々のミラーの配列を変えることのできる制御装置(232;632)
を備え、
前記ミラーユニットは、前記ミラーの軸受に貢献せず、前記ミラー(214;314)に連結され、前記基体(212;312;612)の方向に延在する熱伝導素子(234;340;342;642)であって、熱が前記熱伝導素子(234;340;342;642)から前記基体に伝達されるようにする、該熱伝導素子(234;340;342;642)を有し、
前記熱伝導素子は前記基体(212)に連結され、フレキシブル繊維(234)またはフレキシブルバンドとして設計され、または、
前記熱伝導素子は、本質的に剛体棒(342;642)として設計され、且つ、少なくとも本質的に剛性のカウンター素子(340;640)は、前記基体から突出し、前記ミラー(314;614)の前記配列の変更中であっても、間隙によってのみ前記熱伝導素子(342;642)から分離されることを特徴とする、
マイクロリソグラフィー投影露光装置。
【請求項2】
前記間隙は、前記ミラー(314;614)の反射面の最大寸法の10分の1以下の間隙幅を持つことを特徴とする、請求項1に記載の投影露光装置。
【請求項3】
前記棒(342;642)および前記カウンター素子(340;640)は、前記ミラー(314;614)および前記基体(312;612)上に、それぞれ相互に櫛状に係合するように配置されることを特徴とする、請求項1または2に記載の投影露光装置。
【請求項4】
前記間隙は、流体、具体的には液体で充填されることを特徴とする、請求項1〜3の何れかに記載の投影露光装置。
【請求項5】
前記棒(342;642)および前記カウンター素子(340;640)は、シリンダ−壁セグメントの形状に構成され、同心円状に配置されることを特徴とする、請求項4に記載の投影露光装置。
【請求項6】
前記熱伝導素子(234;342;642)は、シリコン、シリコン化合物、特に炭化ケイ素、炭素または金属、特に銅、銀または金から成ることを特徴とする、請求項1〜5の何れかに記載の投影露光装置。
【請求項7】
前記制御装置は、前記棒が静電駆動を提供するために、静電的に帯電することのできる電源を有することを特徴とする、請求項1〜6の何れかに記載の投影露光装置。
【請求項8】
前記ミラー(14;214;314;414;514;614;714;814;914;1014)は、前記ミラーの反射面内、または少なくともほぼ反射面に位置するスイベル軸の周りを回転することができることを特徴とする、請求項1〜7の何れかに記載の投影露光装置。
【請求項9】
前記ミラーの配列を決めるためのセンサー装置が前記制御装置に割り当てられることを特徴とする、請求項1〜8の何れかに記載の投影露光装置。
【請求項10】
25nmよりも短い、具体的には約13.5nmの波長を持つ光を生成する放射光源を特徴とする、請求項1〜9の何れかに記載の投影露光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロリソグラフィー投影露光装置に関し、具体的にはミラーアレイを備えるマイクロリソグラフィー投影露光装置の、照明系または投影対物光学系に関するものであり、ミラーアレイは基体および複数のミラーを有し、これらのミラーは基体上に配置され、基体に対するそれらの配列を傾ける、すなわち変えることができる。
【背景技術】
【0002】
集積電気回路およびその他の微細構造の構成要素は、従来、例えばシリコンウエハーなどの適切な基板上に複数の構造化層を配置させることによって製造される。これらの層を構造化するために、これらは先ず、例えば、遠紫外線(DUV)または極紫外線(EUV)スペクトル領域の光の、特定の波長範囲の光に敏感なフォトレジストによって被覆される。従来のDUV系の光の波長は現在では248nm、193nm、そして時々157nmであり、EUV投影露光装置は、現在約13.5nmの波長を持つX線光線を使用している。
【0003】
次いでこのようにして被覆されたウエハーは、投影露光装置に露光される。マスク上に配置される構造のパターンは、これによって、投影対物光学系の助けを借りてフォトレジスト上に結像される。結像倍率は一般には1以下なので、このような投影対物光学系は、しばしば縮小対物光学系とも呼ばれる。
【0004】
フォトレジストが現像されると、層がマスクのパターンに従って構成されるように、ウエハーはエッチング工程にかけられる。そのとき依然として残っているフォトレジストは、層の他の部分から取り除かれる。この工程は、全ての層がウエハーに配置されるまで繰り返される。
【0005】
使用する投影露光装置の性能は、投影対物光学系の結像特性ばかりでなく、マスクを照明する照明系によっても決められる。この目的のために、照明系は、例えばパルスモードでレーザー操作される光源(DUV)またはプラズマ源(EUV)、および光源によって生成される光をマスクの像面点で集光して光ビームを生成する、複数の光学素子を含む。個々の光ビームは、一般に、投影対物光学系および結像されるマスクに適応される、特有の性質を持っていなくてはならない。
【0006】
マスクに当たる光ビームの特性またはマスク上の照明される領域の形状をより柔軟に変えることができるように、各々が複数の調整可能なミラーを有する、1つ以上のミラーアレイを照明系で使用することが提案されてきた。このようなミラーの配列は従来、1つか2つのスイベル軸の周りの回転動作によって実行されてきた。このような回転ミラーは、よって、1つか2つの運動自由度を有するサスペンションに取り付けなくてはならない。これは、例えば、固体関節またはユニバーサルサスペンションによって達成することができる。
【0007】
各々が複数の調整可能なミラーを有するミラーアレイもまた、投影対物光学系で使用することができる。例えば、特定の像面に依存しない結像エラーを訂正するために、投影対物光学系の瞳面のアレイを考えることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
調整可能ミラーの支持上に配置される反射層系は、DUV投影露光装置においても、入射光の一部(少しではあるが)を吸収し、EUV投影露光装置において、吸収による損失は約30%である。ミラーによって吸収された光は、反射層系を加熱し、十分な放熱が確実に行われない場合には、反射層系またはミラーユニットのその他の部分の破壊をもたらすことがある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
従って本発明の目的は、ミラーに生成される熱を特に良く放出して、過熱を確実に回避することのできるミラーアレイを有する、投影露光装置を提供することである。
【0010】
(さらに分割される固体関節)
本発明の第1の態様によれば、本目的は、基体と複数のミラーユニットを有するミラーアレイを持つマイクロリソグラフィー投影露光装置によって達成される。各ミラーユニットは、ミラーおよび固体関節を備え、この固体関節は、ミラーを基体に連結させ、曲がり面で曲がることのできる、少なくとも1つの関節部を有している。制御装置により、個々のミラーの基体に対する配列を変えることができる。本発明の第1の態様によれば、関節部は、関節部の曲げ剛性を低減するために、曲がり面で相互に間隔をあけて配置される複数の関節素子に、さらに分割される。
【0011】
関節素子の間の間隔は非常に小さくてもよい。隣接する関節素子の間の小さな間隙には、液体または気体を充填してもよい。これらの間隔はとても小さいので、隣接する関節素子は、相互に僅かに接触することもある。曲がり面は一般に、ミラーがその周囲を回転することのできるスイベル軸に対して垂直に配置される。
【0012】
本発明のこの態様は、固体関節が使用される際に、熱伝導によってミラーから熱を放出することのできる構成要素がすでに利用できるという考えに基づくものである。固体関節を使ってミラーから熱を放出させるのは有利である、というのも、他のタイプの関節とは異なり、固体関節には、熱伝達の妨げとなる、気体または液体の充填された間隙がないからである。固体関節の関節部は、しかしながら、一般にとても繊細な設計でなければならない、というのも、そうでなければ所望される屈曲特性が達成できないからである。
【0013】
本発明によって、関節部を複数の相互に分離されたより小さな関節部へさらに分割することにより、屈曲特性を著しく変えることなく、熱流束に利用できる関節部の全断面積を増やすことができる。これは、曲がり面で、ロッドを相互に間隔をあけて配置される複数の薄いサブロッドにさらに分割することから知られている効果を利用したものである。
ロッドをさらに分割すると、その曲げ強さが低減される。さらに分割した後に曲げ強さを一定に保つことを意図するのであれば、さらに付加的なサブロッドを追加し、全断面積および、従って、熱伝達可能な熱流束を増やす。
【0014】
一実施形態では、関節素子は少なくとも本質的に相互に平行に配置される。しかしながらしばしば、平行からの逸脱は、個々の関節素子に作用する力を相互により良く適応させるために役立つ。
【0015】
別の実施形態では、関節素子は、ロッド状またはプレート状である。ロッドとプレートは明確に定義された屈曲特性を持ち、よって、関節素子として特に適切である。
【0016】
固体関節を構成するために、2つの関節素子を相互に対向させながらミラーに係合することができる。ミラーは、関節素子の係合点によって確立されるスイベル軸の周りを、両方向に回転することができる。
【0017】
基体および複数のミラーユニットを備えるミラーアレイを有する、マイクロリソグラフィー投影露光装置を開発するための、本発明による方法であって、ミラーユニットの各々は、ミラー、該ミラーを基体に連結する、少なくとも1つの関節部を有する固体関節、および基体に対する個々のミラーの配列を変えることのできる制御装置を持ち、
i)関節部が持っていなくてはならない曲げ剛性を確立するステップ;
ii)関節部が持っていなくてはならない熱伝導性を確立するステップ;
iii) ステップii)で確立される熱伝導性を達成するために、関節部が持っていなくてはならない全断面積を確立するステップ;および
iv)全てのセットの関節素子がステップi)で確立される曲げ剛性およびステップiii)で確立される全断面積を持つように、関節部を形成する多数の相互に離れた関節素子を確立するステップ
を含む。
【0018】
(付加的な熱伝導素子)
本発明の別の態様によれば、冒頭部分に述べた目的は、基体および複数のミラーユニットを有するミラーアレイを持つ、マイクロリソグラフィー投影露光装置によって達成される。各ミラーユニットは、ミラーおよび制御装置を備え, 制御装置によって、基体に対する個々のミラーの配列を変えることができる。本発明によれば、これらのミラーユニットは熱伝導素子を有し、これらはミラーの軸受に貢献せず、ミラーに連結され、基体の方向に延在して、熱が熱伝導素子から基体に伝達されるようにする。
【0019】
本発明のこの態様は、ミラーから基体への熱輸送は、関節の一部ではない付加的な熱伝導素子の助けによって向上させることができるという考えに基づいている。
【0020】
最大の熱流束は、熱伝導素子が基体に連結される時に達成される。この場合、熱伝導素子は、無視できるほどに小さな曲げ強さを持つ、従ってミラーの回転動作を妨げない、フレキシブル繊維またはフレキシブルベルトとして使用してもよい。それでも例えば数百という十分な量のこのような熱伝導素子を使うと、全体を熱流束が通ることのできる、かなりの全断面積を提供することができる。
【0021】
しかしながら、熱伝導素子を基体に連結せずに、好適には、流体で充填した、またはそれを通って流体が流れる、最大限に小さな間隙を通って熱を移動させて、基体に到達させるようにすることも可能である。例えば、熱伝導素子を本質的に剛体の棒として使用することが考えられる。少なくとも本質的に剛体のカウンター素子は、よって、基体から突出し、ミラーの配列を変える時でさえも、間隙によってのみ熱伝導素子から分離される。
【0022】
すでに述べた様に、固体は一般に気体よりも熱伝導性が高いので、間隙の幅はできるだけ小さくなくてはならない。これは、EUV投影露光装置特には必要だが、気体圧の大変低い場合に特にあてはまる。これらの場合には、間隙はミラーの反射面の最大寸法の10分の1以下の間隙幅を持っていなくてはならない。
【0023】
別の実施形態では、棒およびカウンター素子は、ミラーおよび基体上にそれぞれ配置され、相互に櫛状に係合される。このような配置は有利である、というのもそれは全体的に、それを通って熱を棒からカウンター素子に伝達することのできる、大きな表面積を提供するからである。
【0024】
棒とカウンター素子がシリンダ壁セグメントの形状に構成され、同心円状に配置される場合には、ミラーが基体に対して回転しても、間隙幅は一定のままであることができる。
【0025】
特にシリコン、シリコン化合物、特に炭化ケイ素、炭素または金属、特に銅、銀または金は、熱伝導素子の材料として考えることができる。これらの材料は特に高い熱伝導性を持ち、精密機器で十分に処理することができる。
【0026】
制御装置が棒を静電的に帯電することのできる電源を持つ場合には、棒を静電駆動を提供するためにも使用することができる。
【0027】
(流体冷却)
本発明の別の態様によれば、冒頭部分に述べた目的は、ミラーアレイを備えるマイクロリソグラフィー投影露光装置によって達成される。ミラーアレイは基体と複数のミラーユニットを有し、ミラーユニットの各々は、ミラーと制御装置を有し、制御装置によって、基体に対する個々のミラーの配列を変えることができる。本発明によれば、ミラーユニットはそれぞれ、ミラーと基体の間の体積部分を密閉的に定める、フレキシブルシール手段を有する。
【0028】
本発明のこの態様は、特にEUV投影露光装置において、ミラーの冷却に大きく貢献することのできるような、ミラーを取り囲む高レベルの気体圧を選択することはできないという考えに基づいている。DUV投影露光装置でさえも、ミラーを液体に浸すのは問題がある。
【0029】
それでも発明的に、フレキシブルシール手段によって密封的に定められる体積部分をミラーと基体の間に提供することにより、この体積部分を気体または液体で充填するか、または、気体または液体を、ミラーの冷却に大きく貢献するように、それを通して流すことができる。
【0030】
最も単純な場合には、体積部分を、一度かまたは長い間、そこに留まっている液体またはガス状流体で充填する。それから、静止流体の中で本質的には熱伝導によって、熱流束が提供される。
【0031】
さらに高い冷却力は、熱輸送が最初に対流によって起こるように、流体が体積部分を循環する場合に達成される。この目的のために、体積部分は入口と出口を有することができる。例えばポンプや熱交換器を含むことのできる循環装置は、体積部分で流体を循環するために、ミラーユニットに割り当てられる。
【0032】
シール手段が、隣接するミラーを相互に連結するフレキシブルシール片を備える場合には、流体密閉の体積部分を、ミラーの下の空間全体および残りのシール手段に延在させてもよい。それを介してミラーが流体に接触し、それによって放熱することのできる領域は、それに応じて大きくなる。
【0033】
流体が気体である場合には、流体は、シール手段の反対側に存在する気体よりも、好適には、体積部分においてより高い圧力を持つ。これは、気体の熱伝導性は圧力が上がると堅調に増大するという事実を利用したものである。気体圧の増加は、対流による熱輸送の場合に、冷却力に好適な効果を持つ。
【0034】
別の実施形態では、シール手段はベローズである。このミラーユニットは、好適には、各自由度に対して2つのベローズを持ち、これらのベローズは相互に対向して配置される。これによって、ミラーを回転させる際には、対称力の状態が提供される。
【0035】
ベローズが最小限の抵抗での回転に対抗できるように、ベローズを連結して流体的につながるようにしてもよい。このような状況においては、例えば、2つのベローズを、ミラーに延在するチャネルで連結することは、実行可能である。
【0036】
ベローズによって囲まれた流体体積を変更するために、制御装置が装置、具体的には置換可能なピストンまたはポンプを有する場合には、基体に対するミラーの配列を変更することのできる作動手段として、ベローズを使用することができる。よって付加的なアクチュエータを取り除くことができる。
【0037】
(滑り軸受)
本発明の別の態様によれば、冒頭部分に述べた目標は、ミラーアレイを備えるマイクロリソグラフィー投影露光装置によって達成される。ミラーアレイは、基体と複数のミラーユニットを有し、ミラーユニットの各々は、ミラーおよび制御装置を持ち、この制御装置によって、基体に対する個々のミラーの配列を変更することができる。本発明によれば、ミラー、基体または基体に連結されるミラー支持体の相互に対向する表面は、滑り軸受の対応する滑り表面として使用される。
【0038】
本発明のこの態様は、滑り表面の間の間隙を通る熱伝達が妨げられても、全体の達成可能な流速が十分なものであるように、滑り軸受で相互に関係する表面は、固体関節と比べると比較的大きいという考えに基づいている。
【0039】
この熱伝達は、少なくとも一つの滑り表面に、潤滑および/または耐摩耗被覆、具体的にはメタライゼーションまたはダイヤモンド被覆が行われている場合に、増やすことができる。このような被覆は、滑り表面の間の接触領域を増やし、これによって熱伝達を向上させる。
【0040】
熱流束の大幅な向上は、ペーストまたは流体、具体的には液体で少なくとも一部が充填された運動間隙が対応する滑り表面の間に形成される場合に、達成することができる。液体またはペーストは、熱流束を制限するかなり大きなガス充填キャビティが運動間隙に形成されないようにする。
【0041】
特定の状況においては、しかしながら、熱流束の増加は、ガスの充填された運動間隙によっても達成することができる。例えば、気体が高圧の場合、その熱伝導性は大幅に増える。本明細書では、高圧とは、それを投影光が通る、装置の空間に広がる標準作動圧の1.5倍以上のあらゆる圧力を意味する。気体の流れが運動間隙を通って供給される場合、それは熱を対流的に放出させることができる。
【0042】
有利な実施形態では、制御装置は、運動間隙の幅の変動調整のために使用される。このようにして、例えば、運動間隙をできるだけ小さく保つことができ、それによって、ミラーの停止時に熱流束が増える。ミラーを回転することを意図する場合には、より良い滑り特性を達成するために、運動間隙の幅を直前に増やす。運動間隙に含まれる流体の種類に応じて、滑り表面の間に広がる適用圧力の変動を調整することによって、同様の効果を達成することもできる。
【0043】
基体またはミラー支持体の滑り表面が、流体がそこから運動間隙の中に流れ込む少なくとも1つの出口開口を持つ場合には、さらなる向上が得られる。運動間隙に流れ込む流体によって、対流によるさらなる放熱が可能となる。
【0044】
流体を再度排出するために、基体またはミラー支持体は、運動間隙内を循環する流体が、そこを通って運動間隙から流出することのできる、流体用の少なくとも1つの入口開口を有することができる。
【0045】
運動間隙に流体を適切に送出することにより、運動間隙内の流体の流れ方向を変えることができる。これは、ミラーにトルクを与え、それによってミラーを回転させるために使用することができる。
【0046】
好適には、この目的のために、基体またはミラー支持体の滑り表面は、相互に直径方向に対向して位置する、少なくとも2つの流体の出口開口を有する。どちらの開口から流体が出てくるかによって、回転運動はどちらかの方向に生じる。
【0047】
流体がミラーに与えることのできるトルクを増やすために、ミラーの滑り表面に、流体に対する抗力を増やす構造を設けてもよい。このような構造は、例えば、流れ方向に対して横方向に延在する棒または溝であってもよい。
【0048】
ミラーとミラー支持体の間に残る間隙から流体が出てくるのを防止するシールを、さらに設けてもよい。
【0049】
基体またはミラー支持体には、ミラーに対して予め応力をかけてもよい。
【0050】
上述の本発明の態様は、相互に非常に実質的に組合せてもよいことを理解されたい。例えば、軸受の種類に関係なく、ミラーから基体に延在する付加的な熱伝導素子を常に設けてもよい。さらに、軸受の種類に関係なく、フレキシブルシール手段を使って、流体冷却を提供してもよい。
【0051】
上述の本発明の全ての態様を有利に使用することのできる、さらなる変形を下記に記載する。
【0052】
このように、制御装置は、例えば、具体的にはピエゾまたは超音波モーターなどの、ミラーに対して可動に配置される、少なくとも1つの運動変換器を備えてもよい。
【0053】
運動変換器は、停止状態でミラー部に平面を有することができる。具体的には、ミラーと運動変換器は、球体キャップセグメントの形状の、対応する接触表面を有することができる。接触表面の球の中心は、ミラーの光学中心のすぐ近く、または少なくともすぐ近くに配置することができる。光学中心とう用語は、装置の操作中に光が実際に当たるミラーの領域のことを言う。従って光学中心は、必ずしも幾何学的な中心と一致しなくてもよい。
【0054】
この場合ミラーは、曲げ弾性およびねじり剛性を持つバネ素子を介して基体に連結することができ、この場合、ネジ素子は具体的には(金属)ベローズとして設計してもよい。ネジ素子には、ミラーの中立設定および偏位設定の両方で、予め弾性的に応力がかけられ、流体、具体的には液体で充填される。
【0055】
また好適には、ミラーは、ミラーの反射面に位置する、または少なくともほぼ位置する、スイベル軸の周りを回転することができる。これにより、ミラーの回転運動の場合においても、ミラーのシャドーイングは確実に最小になる。
【0056】
さらに好適には、ミラーの配列を決めるセンサー装置は、制御装置に割り当てられる。
【0057】
本発明は、25nmよりも短い波長、具体的には約13.5nmの波長を持つ光を生成するために放射光源が適応される場合に、特に有利に使用することができる。これらの波長では、光は非常に低い気体圧の体積のみを通らなくてはならない。気体は低圧ではほんの僅かしか熱を伝導しないので、本発明による解決策は、ミラーの冷却に特に有利な効果を持つ。
【0058】
上述の解決策は、複数のミラーユニットを持つアレイだけではなく、複数の制御ユニット(アクチュエータ)の助けで変形することのできる適応ミラーを含む、マイクロリソグラフィー投影露光装置でも有利に使用することができる。このような適応ミラーは、個々のミラーが反射性材料片によって連結される、複数のミラーのアレイとみなすことができる。ミラーユニットは、本質的には(共通の)ミラーの形状を変えることのできる、制御ユニットから成る。ミラーアレイは、制御ユニットのアレイに対応し、基体および基体に固定される複数の制御ユニットを持ち、制御ユニットは、ミラーに係合し、それによってミラーの形状を変えることができる。
【0059】
さらに、用途の別の可能な分野は、より大きく、そして必ずしも適応的に調整可能でない個々のミラーの配列を変えることのできる投影露光装置を含む。EUV投影対物光学系に関しては、例えば、磁気的に取り付けられ、よって関節なしで、熱伝導によって放熱に貢献することのできるミラーが提案されてきた。上述の解決策のほとんどは、このような「浮いている」、すなわち少なくとも一部が物理的に支持されないミラーにも、有利に使用することができる。請求項では、ミラーアレイは、ミラーおよび基体に対するミラーの配列を変えることのできる制御装置に置き換えられる。
【0060】
本発明のその他の特徴および利点は、下記の図面の助けを借りて、下記の好適な実施形態の説明の中に見つけることができるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0061】
図1】複数のリーフスプリングによって形成され、1つの運動の自由度を持つ、固体関節からぶら下がっている、回転可能なミラーの斜視図である。
図2】複数のリーフスプリングによって形成される固体関節からぶら下がっている、回転可能なミラーの第2の実施形態を示す図である。
図3】熱伝導のための金属フィラメントが割り当てられる、回転可能なミラーの概略図である。
図4】接触コンタクトに設置された、静電駆動を形成する棒を持つミラーの概略断面図である。
図5】フレキシブルシール部材によって連結され、隣接して配置された、角度の調整可能なミラーを示す図である。
図6】球体キャップ状の凹部に、プレストレス装置によって予め応力がかけられた回転可能なミラーを示す図である。
図7】その後部側が気体によって冷却され、おけの形状に設計された容器に保持される、ミラーを示す図である。
図8】ミラーと基体の間に設置された、流体の充填された折り畳みベローズの配置を示す図である。
図9】折り畳みベローズによって形成され、ミラーと基体の間に配置される、流体制御装置を示す図である。
図10】ピエゾモーターによって運ばれる、9つの相互に独立した角度の調整できるミラーを持つ、ミラーアレイを示す図である。
図11図10による、ミラーアレイの断面図である。
図12図10および図11による、ピエゾモーターの斜視図である。
図13】液体で充填される運動間隙を持つ、ミラーユニットの軸断面を示す図である。
図14図13に示すミラーユニットの基体の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0062】
図1は、マイクロリソグラフィー投影露光装置の照明系に含まれる、ミラーユニット10の詳細の斜視図である。示される詳細には、基板12、T字状の支持体16上に保持されるミラー14、および支持体16と基板12に連結され、例えば、スチール、シリコン、炭化ケイ素、銅、銀または金などの熱伝導の高い材料から構成される、2つのグループのリーフスプリング18を有するミラーユニットを示す。支持体16と共に、リーフスプリング18はミラー14の固体関節を形成する。
【0063】
ミラーユニットはさらに、リーフスプリング18の間に配置された2つの磁気コイル22と支持体16の長い方の肢部を有する。もちろん磁気コイルに代えて他のアクチュエータを使用することもできる。ミラーユニットは、図1に示す複数のミラーユニットを備える。例えば、数百または数千のミラーユニットを共通の基板12に配置する。基板12を湾曲させて、互いに隣接して配置されるミラー14も同様に、ミラー14の間の中間の空間によって遮断される、湾曲する共通の鏡面を形成するようにしてもよい。
【0064】
上述の実施形態では、支持体16の2つの側部に配置されるリーフスプリング18はそれぞれ、相互に平行に配列される。他の実施形態では、リーフスプリング18は、1つの線に沿って支持体16の各側部に係合し、リーフスプリング18が相互にほぼ平行に延在する、扇状の配置を提供するようにする。
【0065】
支持体16の一番長い肢部20の長さは、長さ28とリーフスプリング18の角度配列に適応され、図示するように、ミラー14の中立設定または偏位設定(図示せず)の何れかにおいて、支持体16が基板12に接触しないようにする。2つの磁気コイル22の内の少なくとも1つを電気的に駆動することにより、永久磁石として構成される肢部20に力を誘導して、それが曲がるようにすることができる。リーフスプリング18の効果により、力の誘導は、図示するスイベル軸24の周りの支持体16の回転運動を導く。支持体16や基体12へのそれらの連結に関してしっかりと固定されているとみなすことのできる、支持体16の片側に配置されるリーフスプリング18は、それから局部的に湾曲して、弾性的に変形する。反対側では、リーフスプリングは、ほんの僅かに弾性的に変形されながら、引張応力がかけられる、引張素子として本質的に作用する。曲がり面(図示せず)で、リーフスプリング18によって生成される曲げに対する抵抗モーメントは、リーフスプリング18の厚さ26の寸法のために、比較的小さい。曲がり面は、その中でリーフスプリング18が曲がることのできる平面と定義される。従って、曲がり面は、スイベル軸24に垂直に配置される。この曲がり面では、リーフスプリング18は、図1で明らかにわかるように、相互に間隔をあけて配置される。
【0066】
リーフスプリング18の寸法と数は、厚さ26、幅30およびリーフスプリング18の数の積が、全断面積となるように選択し、この全断面積は、固体関節の全断面積よりもかなり大きい。固体関節は、リーフスプリング18の代わりに、一体鋳造であるが、リーフスプリング18と同じ曲げ強さを持つ素子を使用する。より大きな全断面積のため、リーフスプリング18は、基板12の方向にミラー14からより多くの熱を放出することができ、そうすることによって、ミラー14の過熱に対抗する。これまでの固体関節の一体鋳造素子の、複数のリーフスプリング18またはその他の関節素子への細かい分割は、構成要素の曲げ強さは、構成要素が複数の個々の部分にさらに分割されると低減されるが、熱流束はそのままであるという事実を利用したものである。関節素子の断面積を増やすことにより、よって、それが伝達することのできる熱流束を増やすことができるが、複数の関節素子へのさらなる分割によって、曲げ強さは一定に保つことができる。
【0067】
本実施形態および下記に説明する実施形態では、基板12には、ミラーから吸収する熱をより良く放出することができるように、冷却フィンまたは冷却チャネルなどの、付加的な装置を備えることができる。これに加えて、または代わりに、基板を温度シンクに熱的に結合させてもよい。
【0068】
図2によるミラーユニット110の実施形態は、図1に示す参照番号を使用し、機能的
に同等の構成部品に関しては、それぞれ100を足した数字とした。これはまた、さらな
る実施形態にも適用される。
【0069】
図2によるリーフスプリング118は、図1によるリーフスプリング18と比べると、スイベル軸24の方向の幅130が小さい。リーフスプリング118によって形成される固体関節の要求される安定性を保証するために、リーフスプリング118の数は、図1によるリーフスプリング18の数に比べて、大幅に増えている。4つのリーフスプリング118の各々が互いに平行に配列される、5つの隣接して配置されたグループは、スイベル軸24の各側部に延在する。全断面積および、よって、リーフスプリング118の輸送可能な熱流束は、図1に示す実施形態と関連して、さらに増やされるが、それによらずに、曲げ強さは大幅に変えられる。
【0070】
図3は、基板212、立方ミラー214および圧電運動変換器として設計される屈曲素子232を備える、ミラーユニット210を概略的に示す。屈曲素子232の電極(図示せず)に電位を与えることによって、ミラー214の偏位は、中立位置(図示せず)から図3に示す偏位の位置に誘導することができる。屈曲素子232がミラー214のために十分に大きな回転角を誘導できるように、ミラー214の範囲に関する大幅に小さな断面積を有する。この断面積の結果として、ミラー214への放射光の吸収によって放出された熱のほんの一部を、基体212の中に放出することができる。
【0071】
ミラー214の過熱を回避するために、ミラーユニットは、その第1端がミラー214(好適には周囲の近く)に熱伝導的に連結され、その第2端が基板212に熱伝導的に連結された、金属フィラメント234を有する。金属フィラメント234は、ミラー214から基板212への放熱を可能にする。金属フィラメント234の直径は大変小さく、よって高い柔軟性、すなわち無視できるほどの弾性特性を持っている。従って、金属フィラメント234は、小さな抵抗しか持たないミラー214の回転運動に対抗し、これには屈曲素子232によって、容易に打ち勝つことができる。ミラー214および基板212への熱的結合を向上させるために、本実施形態では、金属フィラメント234を金属片235に固定し、これは、ミラー214上の平面と基板212にそれぞれ取り付けられる。
【0072】
銅、銀または金などの金属の代わりに、シリコン、シリコン化合物、具体的には炭化ケイ素、または炭素を、フィラメント状の熱伝導素子として使用することができる。熱伝導素子は、十分な柔軟性が確保できる限り、バンドの形態であったり、または他の断面を有することもできる。
【0073】
図4によるミラーユニット310において、ミラー314は、軸受ブロック338の球体キャップ状のくぼみに保持される、球体セグメントの形状の軸受素子336を介して、回転によって動かすことができるように、取り付けられる。ミラー314を基板312に対して制御する装置として、棒340、342が提供され、これらは、櫛状に相互に係合され、基板312とミラー314にそれぞれ固定され、四分円(図示せず)に分割され、その各々は約90度の角度範囲を有している。回転がたった1つのスイベル軸の周りのみに起こる場合には、棒340、342は、図4に示すシリンダ−壁セグメントの形状であってもよい。回転が2つの直交する軸の周りに起こることのできる場合には、棒340、342は、これらのスイベル軸に関して非常に短いか、または湾曲がないかのどちらかであるとする。
【0074】
棒340、342にはそれぞれ電気絶縁被覆(図示せず)が備えられ、四分円に配置される棒340、342に異なる電位を与えて、静電駆動が形成されるようにする。与える電位を変えることにより、この駆動は、相互に垂直に配列される2つのスイベル軸の周りをミラー314が回転運動できるようにする。棒340、342はまた、ミラー314から基板312へ放射光の吸収によって放出される熱を伝達する機能を持つ。
【0075】
たった1つのスイベル軸の周りで回転が起こる、図4に示す実施形態では、棒340、342は、ミラー314の配列に関係なく接触することができ、それらが熱を直接、すなわち固体の熱伝導を介して、1つの棒340から隣接する棒342へ直接伝達できるようにしてもよい。多数の比較的小さな棒340、342のおかげで、熱伝達に使用することのできる大きな表面積を利用することができる。しかしながら一般に、幅がミラー214の反射面の最大寸法の10分の1以下であってもよい狭い間隙は、棒340と342の間に残る。そして、間隙に含まれる気体分子によって、熱伝達が発生する。間隙の幅が十分に小さいと仮定すると、EUV照明系の場合の様に、気体圧が大変低い場合でも、大きな熱流束が可能である。接触せずに互いに沿うように動く棒の利点は主に、摩耗損失の回避であり、そうでなければ、より大きな制御力およびそれに応じたより複雑な駆動が必要となる。
【0076】
図5に示す様に、2つのミラー414を有するミラーユニット410は、図3に示すミラーユニット210と同様の構造を有する。図3によるミラーユニット210とは対照的に、ミラー414の低い側部の流体冷却が、図5によるミラーユニット410に設けられている。ミラー414上に位置する放射光空間に冷却剤が逃げるのを防ぐために、ミラー414の周辺領域はそれぞれフレキシブルシール素子444に連結され、これらの素子は隣接するミラー414または壁領域446に固定されている。薄肉金属箔で作られるシール素子444は、ミラー414の相互の相対的な運動を可能にし、ミラー414と基板412は一緒に、冷却剤が流れることのできる閉体積部分445を定める。この体積部分は一度冷却剤で充填し、この冷却剤は、そこに永久に、または長い期間残っていてもよい。
【0077】
冷却剤は、液体、例えば水銀、水またはガリウム・インジウム・錫であってもよい。熱伝導性を増やすために、金属粒子を液体に加えてもよい。
【0078】
しかしながら、冷却剤として気体を使うことも考えられる。シール素子444は、体積部分445内に高圧で設置された気体の冷却剤を、シール素子444の反対側の体積を充填する保護ガス(とりわけEUV系では極低圧)から隔離する。しかしながら、ミラー414および、とりわけシール素子444への力が大きくなりすぎないように、シール素子444に隣接する2つの気体の間の圧力差は、大きすぎてはならない。しかも気体の熱伝導性は、低圧ではほぼ直線状に増えるので、圧力を10の1乗または2乗増やせば、熱伝導性を大幅に増やすには十分である。
【0079】
気体の冷却剤の使用は有利である、とうのも、流動気体または静止気体は、液体よりも管理が簡単だからである。さらに、気体の冷却剤は、ミラー414の傾斜の際により小さな摩擦損失を生成する。一方で、液体冷却剤はたいてい、より良い熱伝導特性を持っている。
【0080】
図6によるミラーユニット510は、おけ状に設計され、その中には、相互に平行に配列され、ミラー514の棒状の延在部の表面に係合する、互いに離れて向き合う、2つのピエゾ制御装置550がある、軸受素子548およびミラー514に引張力を与えるために設けられた、フレキシブル金属ベローズ552を備えている。ミラー514の下方および対応する軸受素子548の滑り表面はそれぞれ、シリンダ−セグメントの形状に設計され、図6による図面の平面で、ミラー514は回転することができる。この回転運動は、ピエゾ制御装置550に電位を与えることによって引き起こされ、その長手方向の範囲は、与えられる電位によって、表示される矢印の方向に変えることができ、対応するトルクがミラー514に与えられるようにする。
【0081】
表示するミラー514の中立設定では、金属ベローズ552には軸方向に下向きの応力が予めかけられ、よって、ミラー514を軸受素子548に引き入れる。金属ベローズ552の設計により、それは図6に示す平面で、ミラー514の回転運動を一緒に実行することができ、それによって望ましくない高い復元力が構築されることはない。金属ベローズ552は、金属ベローズ552の予め与えられる応力が中立化され、圧力をミラー514に与えることができるように、液体グランド(図示せず)によって、加圧された流体で充填することができる。これにより、図6のミラー514と軸受素子548の間にはっきりと見える運動間隙554がもたらされる。運動間隙のある中で制御運動を実行する場合には、ミラー514の実質的に摩擦のない調整を行うことができる。制御運動の終わった後に、熱を伝達するようなやり方で、ミラー514が戻って軸受素子548上にくるように、金属ベローズ552の加圧は低減される。
【0082】
運動間隙554は、好適には、例えば、エレクトまたはマグネトレオロジー液、熱伝導ペースト、真空グリースまたはオイルなどの液体またはペースト(図示せず)で充填して、ミラー514と軸受素子548の間の熱伝達を向上させる。液体は、表面の粗さや取付の不一致を補い、これによって、気体を含むことによってのみ熱伝達を発生させることが可能となることを回避する。同じ目的で、ミラー514および軸受素子548の相互に対向する表面は、例えば、インジウム、アルミニウムまたは銅などの柔らかく、しかも熱伝導性の材料で作るか、または、このような材料から構成されるインレーを備えることができる。DLC(ダイヤモンドライクカーボン)での被覆もまた、達成可能な放熱に好適な効果を持つ。
【0083】
図7に示すミラーユニット610は、図4に示すミラーユニット310と同様の構造を持つ。しかしながら、球体のスリーブ状の棒640、642は、ミラー614と基板612の間の熱伝達にのみ使用される。四角形を形成するように配置された、4つの屈曲素子632のアレイは、制御装置として設けられ、この制御装置は、2つの相互に垂直の空間方向へのミラー614の回転運動を可能にする。横の壁領域646は、基板612上に配置され、これは基板612およびミラー614と共に、それを通って冷却剤, 例えば、水素などの冷却ガスまたは水銀、ガリウム・インジウム・錫または水などの液体を供給することのできる、流体空間656を定める。冷却剤の供給と排出のために、連結グランド658が基板612に配置される。吸引グランド660もまた、ミラー614の上の壁領域646に設けられ、これによって、シール間隙654を通って流体空間656から逃げ、ミラー614の近くで光学特性の低下を招く可能性のある冷却剤を吸引することができる。
【0084】
図8によるミラーユニット710では、2つの折り畳みベローズ762が、ミラー714と基板712の間に配置され、これらは液体冷却剤で充填されており、よって、ミラー714と基板712の間の熱伝達を向上させる。ミラー714を回転させるために設けられた屈曲素子732は、2つの折り畳みベローズ762の間で流体の交換を可能にする、貫通孔を備えている。
【0085】
貫通孔764の代わりに、ミラー714を通って延在する図8の点線で示すようなチャネル766を、流体交換のために設けることもできる。別の変形では、冷却剤は折り畳みベローズ762の中を循環し、熱のより良い放出を可能にする。この目的のために、折り畳みベローズ762には、冷却剤用の入口および出口グランド(図示せず)を設ける。
【0086】
図9によるミラーユニット810には、2つの別個の折り畳みベローズ862を設け、これらには、個々に割り当てられた液体グランド866を通して、加圧流体を供給することができる。液体グランド866の各々には、電磁式リニアモーター868が割り当てられ、このリニアモーターは、液体グランド866に直線的に移動できるように保持される永久磁石870と、永久磁石870が同軸上に配置され、電圧を与えることのできるコイル872を備えている。折り畳みベローズ862と個々に割り当てられた液体グランド866内の流体体積は閉じているので、永久磁石870の並進運動は、液体グランド866の体積変化を招き、これは、折り畳みベローズ862の反対の体積変化によって相殺される。折り畳みベローズ862の内の1つの体積変化は、ミラー814の傾斜を招く。
【0087】
図10図12に示すミラーユニット910は、その上に全部で9つの傾斜ドライブ974が配置される基板912を備え、傾斜ドライブによって、割り当てられたミラー914を2つの相互に直交する空間方向に傾斜させることができる。基板912の下には、高熱伝導性の材料で作られた熱シンク976が配置され、これは、冷却剤のためのフローチャネル978を有している。傾斜ドライブ974の各々は、4つの超音波変換器980を有し、これらはそれぞれ四角い断面を持ち、隣接する超音波変換器980の間に残る運動間隙982から離れて、四角い断面を持つアレイを形成するように、グループに分けられる。
【0088】
超音波変換器980の各々は、圧電屈曲素子として設計される。それぞれ対向する超音波変換器980は、共通の曲げ平面984で変形させることができる。隣接する超音波変換器980の曲げ平面は、相互に垂直に配列されている。球体キャップセグメントの形状の凹部986はそれぞれ、超音波変換器980の上側に設けられ、傾斜ドライブ974を形成する4つの超音波変換器980の凹部986は併せて、実質的に半球状の凹部を形成する。超音波変換器980の相互に対向する内面上には、円錐セグメントの形状の凹部がそれぞれ設けられ、これらは超音波変換器980に組み込まれ、円錐セグメントの形状の自由空間を生成する四角形空間を形成する。
【0089】
ミラー914は、軸対称の支持体916に取り付けられる。支持体は、球体セグメントの形状の領域990を持ち、その隣りには、円錐セグメントの形状の領域992がある。球体セグメントの形状の領域990は、図11に詳細を示す様に、超音波変換器980の凹部986の表面に平らに置かれている。円錐セグメントの形状の領域992は、超音波変換器980の凹部988によって形成される自由空間に配置され、支持体916が2つの相互に垂直な空間軸に傾斜できるようにしている。
【0090】
円錐セグメントの形状の領域992の端には、軸対称に設計され、支持体916の反対の端で熱シンク976に固定される、金属ベローズ952が配置される。金属ベローズ952の軸対称の設計により、それには曲げ弾性とねじり剛性が与えられ、支持体916は2つの相互に垂直な空間方向に回転し、長手方向の中間軸994の周りの支持体の回転は、金属ベローズ952のねじり剛性によって止められる。ベローズ952を金属で作ることによって、高い熱伝導率を持つ部分は、ミラー914と熱シンク976の間だけであることが保証される。特に熱伝導率の高いベローズ952が所望される場合には、金属として特にニッケルが考えられる。しかしながら、選択基準として最小の剛性が最優先される場合には、ベローズ952の材料にはチタニウムが適切であろう。
【0091】
ミラー914をミラー表面に位置するスイベル軸の周りに傾斜させるために、相互に対向する超音波変換器980の駆動がそれぞれ提供される。対向して配置される超音波変換器980は、それらが少なくとも本質的に同期して、そして同じ方向に曲がるように駆動される。これによって、支持体916の傾斜運動が引き起こされる。相互に対向する超音波変換器980は、それから、反対方向に僅かに短縮して曲がるように、駆動される。この時、それに応じて駆動される超音波変換器980は支持体916と接触しない。従って、超音波変換器980を適切に駆動することによって、支持体916との新しい接触が確立され、相互に対向する超音波変換器980は、電気エネルギーを再度与えることによって、所望の方向に再度変形させることができる。支持体916及びその上に配置されたミラー914の段階的な傾斜運動は、よって、全体的に発生する。この超音波変換器980の支持体916に対する相対的な動きにより、ミラー914の最大回転角度は、相互に作用する構成要素の設計配置によってのみ制限される。適切な構成では、±15度までの範囲で、ミラー914の傾斜が可能である。
【0092】
図11に示す中立設定では、金属ベローズ952にはすでに軸方向に予め応力がかけられており、よって、支持体916に引張力を与え、後者が超音波変換器980の凹部986に平らに置かれるようにする。ミラー914から熱シンク976方向への放熱を向上させるために、流体、好適には冷却気体は、金属ベローズ952の領域及び支持体916と超音波変換器980の間に設けられる運動空間を通って流れることができる。この場合、超音波変換器980の間の運動間隙982は、そこから流体がミラー914の方向に逃げることのできない、閉流体チャネルを生成するように、弾性シール材料によって閉じることができる。流体はまた、ミラー914と熱シンク976の間の熱伝導をさらに増やすために、金属ベローズ952それ自体を通って流れることもできる。
【0093】
図13及び図14はそれぞれ、ミラーアレイ1010のミラー支持体1012の軸断面と平面を示す、別の実施形態によるミラーユニット1010を示す。複数のミラーユニットを持つ基体に連結された、又はそれに一体形成されるミラー支持体1012は、球体キャップ状のくぼみ1036を有し、このくぼみは球体セグメント状の軸受素子1038に対応し、これはミラー1014に固定されているか、又はそれに一体形成されている。ミラー支持体1012と軸受素子1038の相互に対向する湾曲した表面の間には、投影露光装置の操作中に液体が流れる運動間隙1054(詳細は示さず)が残されている。この目的を達成するために、2つの回転軸の周りで回転が起きることのできる、示される実施形態では、全部で5つの出口チャネル1066と4つの入口チャネル1067が、ミラー支持体1012に組み込まれている。出口チャネル1066は、くぼみ1036の領域で、中心軸開口部1058a及び4つの中心を外れた出口開口部1058bに開口している。4つの入口チャネル1067の入口開口部1059は、本実施形態のくぼみ1036の外に位置している。
【0094】
図13の矢印は、運動間隙1054内の液体の流れ方向を示す。液体は、中心軸開口1058aと中心から外れた出口開口部1058bから流れ、運動間隙1054を均一に充填し、最後くぼみ1036の周縁エッジ上の経路を流れて、入口開口部1059を通って、ミラー支持体1012に再度入る。
【0095】
運動間隙1054に含まれる液体のおかげで、相互に直接スライドする、相互に対応する湾曲した表面を持つ場合に比べて、ミラー1014からミラー支持体1012へのより良い熱伝達が達成される。さらに液体は、ミラー1014から熱を吸収してその熱を入口チャネル1067を通して熱シンク(図示せず)に放出する、熱交換媒体として機能する。液体と周囲条件の適切な選択により、液体の一部を蒸発して、それによってミラー1014を冷却することがさらに可能となる。蒸発した液体は、付加的な吸入開口部(図13および図14には図示せず)の助けを借りて、吸入することができる。これによって、蒸発した液体が、投影光の通る領域から入って、照明系の光学特性を下げることを防ぐ。
【0096】
運動間隙1054内の薄液体膜は、ミラー1014がミラー支持体1012に対して回転する際に、潤滑油と同様のやり方で、摩擦をさらに低減させる。
【0097】
この場合、好適には、ミラー支持体1012に対するミラー114に予め応力を与える。この予め応力を与えることは、例えば、磁力の効果、またはバネまたはベローズなどの弾性素子の助けを借りて、非接触で行ってもよい。
【0098】
このようなベローズは、ミラー1014とミラー支持体1012の間の間隙から出てくる液体を確実に防ぐために、シールとして使用することもできる。好適には、この場合は、ベローズは、液体を運ぶ全ての領域、すなわち、運動間隙1054、入口開口部1059および出口開口部1058a、1058bを密閉的に包囲する。
【0099】
別の実施形態では、入口開口部1059はまた、例えば、その周縁エッジの隣りのくぼみ1036の内部に配置してもよい。液体がくぼみ1036の上部エッジに流れ込むのを防ぐために、くぼみ1036を同心円状に囲むリング状の棒を、ミラー支持体1012の平らな上部側に形成してもよい。この棒は、液体が運動間隙1054から簡単に逃げないように、運動間隙1054の幅を局部的に低減する。
【0100】
しかしながら、液体を広い領域に排出することができるように、好適にはへこみ1036と整合する、環状の入口開口部を設けることが考えられる。
【0101】
運動間隙1054に流れる液体は、ミラー支持体1012に対するミラー1014の回転運動を起こすために使用することもできる。これは、流動液体と軸受素子1038の間の摩擦を利用し、ミラー1014上のトルクとなる。この効果を強化するために、軸受素子1038の表面の抗力を増やすための対策をとってもよい。
【0102】
図15は1014’と示される、図13に示すミラー1014の変形の軸断面を示す。この変形において、ミラー1014’上に形成される軸受素子1038’には、その湾曲表面上の抗力を増やすために、構造物1070が設けられている。構造物1070は、例えば、液体の流れ方向に横方向に延在し、それによって抗力を増やす、細かいリブであってもよい。
【0103】
このようなリブ状の構造1070の目的にかなう配置は、図16に示す、ミラー1014’を下から見た図に示される。液体が中心から外れた開口部1058bの内の1つのみから流れる場合、出てくる液体は構造物1070上をさっと流れ、ミラー1014’上にトルクを発生させ、それによってミラーは回転する。ミラーを再度元の方向に回転するためには、それぞれ直径方向に反対に位置する入口開口部1058bを通って、液体は運動間隙1054(排他的に)に導入される。運動間隙1054の液体の流れ方向を変えることによって、ミラー1014’に力を与えることができ、これによって、所望するスイベル軸の周りを回転することとなる。
【0104】
図12図15に示す実施形態において、液体の代わりに気体を使ってもよいと理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14