特許第5798252号(P5798252)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5798252バッテリのバッテリセルの充電状態を平衡化する方法、及び、本方法を実施するためのバッテリ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5798252
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】バッテリのバッテリセルの充電状態を平衡化する方法、及び、本方法を実施するためのバッテリ
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/02 20060101AFI20151001BHJP
【FI】
   H02J7/02 H
【請求項の数】12
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-530144(P2014-530144)
(86)(22)【出願日】2012年8月28日
(65)【公表番号】特表2014-531888(P2014-531888A)
(43)【公表日】2014年11月27日
(86)【国際出願番号】EP2012066659
(87)【国際公開番号】WO2013041330
(87)【国際公開日】20130328
【審査請求日】2014年3月18日
(31)【優先権主張番号】102011082973.3
(32)【優先日】2011年9月19日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501125231
【氏名又は名称】ローベルト ボッシュ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(73)【特許権者】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung SDI Co.,Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】110000981
【氏名又は名称】アイ・ピー・ディー国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】シュミット、ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】ブッツマン、シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】フィンク、ホルガー
【審査官】 馬場 慎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−244680(JP,A)
【文献】 J. F. REYNAUD,ACTIVE BALANCING CIRCUIT FOR ADVANCED LITHIUM-ION BATTERIES USED IN PHOTOVOLTAIC APPLICATION,INTERNATIONAL CONFERENCE ON RENEWABLE ENERGIES AND POWER QUALITY [ONLINE],2010年 4月13日,P1-6,URL,http://www.icrepq.com/icrepq'11/682-reynaud.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00 − 7/12
H02J 7/34 − 7/36
B60L 1/00 − 3/12
B60L 7/00 − 13/00
B60L 15/00 − 15/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列接続された複数のバッテリモジュール(40−1、・・・、40−n)を有する少なくとも1つのバッテリモジュール線(50)を備えるバッテリ(10)のバッテリセルの充電状態を平衡化する方法であって、
各バッテリモジュール(40−1、40−2)は、
少なくとも1つのバッテリセル(41)と、
少なくとも1つの結合ユニット(30、70)と、
第1の端子(42)と、
第2の端子(43)と、
を有し、前記結合ユニット(30、70)の制御に従って、少なくとも2つの接続状態のうちの1つの状態を取るよう構成され、様々な接続状態は、前記バッテリモジュール(40−1、40−2)の前記第1の端子(42)と前記第2の端子(43)との間の様々な電圧値に対応する、前記方法において、
前記方法は、
i.前記バッテリモジュール線(50)の前記バッテリモジュール(40−1、40−2)の適切な制御によって、前記バッテリモジュール線(50)の第1の出力電圧(+U)を提供し、第1の時間間隔の間に、インダクタ(L)に前記第1の出力電圧(+U)を印加する工程であって、その結果前記インダクタ(L)を流れる電流が増大する、前記第1の出力電圧(+U)を提供し印加する工程と、
ii.前記バッテリモジュール線(50)の前記バッテリモジュール(40−1、40−2)の適切な制御によって、前記バッテリモジュール線(50)の第2の出力電圧(−U)を提供し、第2の時間間隔の間に、前記インダクタ(L)に前記第2の出力電圧(−U)を印加する工程であって、前記第2の出力電圧(−U)は、前記第1の出力電圧(+U)とは反対の極性を有し、前記第2の出力電圧(−U)の前記提供には、前記第1の出力電圧(+U)の提供に関与するのと同じのバッテリモジュール(40−1、40−2)のみが関与するわけではない、前記第2の出力電圧(−U)を提供し印加する工程と、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記第1の出力電圧(+U)の提供には、前記第2の出力電圧(−U)の前記提供に関与する前記バッテリモジュール(40−2)よりも高い充電状態を有する前記バッテリモジュール(40−1)が関与する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2の時間間隔は、前記第1の時間間隔の直後に続く、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記方法は周期的に繰り返される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つのバッテリモジュール(40−1、40−2)は、前記結合ユニット(70)の制御に従って、選択的に、少なくとも3つの接続状態のうちの1つの状態を取るよう構成され、第1の接続状態において、前記バッテリモジュール(40−1、40−2)の前記第1の端子(42)と前記第2の端子(43)とが接続され、第2の接続状態において、前記少なくとも1つのバッテリセル(41)が、前記第1の端子(42)と前記第2の端子(43)との間に、第1の極性を有して接続され、第3の接続状態において、前記少なくとも1つのバッテリセル(41)が、前記第1の端子(4)と前記第2の端子(43)との間に、前記第1の極性とは反対の極性を有して接続される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記バッテリモジュール線(50)は少なくとも、第1のバッテリモジュール(40−1)及び第2のバッテリモジュール(40−2)を含み、前記第1のバッテリモジュール(40−1)は、前記第2のバッテリモジュール(40−2)よりも高い充電状態を有し、前記第1の時間間隔の間には、前記第1のバッテリモジュール(40−1)は前記第2の接続状態にあり、前記第2のバッテリモジュール(40−2)は前記1の接続状態にあり、前記第2の時間間隔の間には、前記第1のバッテリモジュール(40−1)は前記第1の接続状態にあり、前記第2のバッテリモジュール(40−2)は前記第3の接続状態にある、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
インダクタ(L)として、前記バッテリ(10)に接続された電動機(13)の少なくとも1つのインダクタが利用される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記電動機(13)の運動は、前記方法が実施される間阻止される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記電動機(13)が動く間、前記第1の時間間隔及び/又は前記第2の時間間隔は、前記第1の時間間隔内及び/又は前記第2の時間間隔内に前記電動機(13)の前記インダクタを通って流れる電流が、前記電動機(13)のトルクに寄与しないように選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
直列接続された複数のバッテリモジュール(40−1、40−2)を有する少なくとも1つのバッテリモジュール線(50)を備えるバッテリ(10)であって、
各バッテリモジュール(40−1、40−2)は、
少なくとも1つのバッテリセル(41)と、
少なくとも1つの結合ユニット(30、70)と、
第1の端子(42)と、
第2の端子(43)と、
を有し、前記結合ユニット(30、70)の制御に従って、少なくとも2つの接続状態のうちの1つの状態を取るよう構成され、様々な接続状態は、前記バッテリモジュール(40−1、40−2)の前記第1の端子(42)と前記第2の端子(43)との間の様々な電圧値に対応する、前記バッテリ(10)において、
前記バッテリ(10)は、インダクタ(L)に接続可能であり、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法を実施するよう構成される、バッテリ(10)。
【請求項11】
前記バッテリ(10)は、電動機(13)のインダクタ(L)に接続可能である、請求項10に記載のバッテリ(10)。
【請求項12】
車両であって、
前記車両を駆動するための電動機(13)と、
前記電動機(13)のインダクタ(L)と接続された請求項10又は11に記載のバッテリと、
を備えた車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのバッテリモジュール線を有するバッテリのバッテリセルの充電状態を平衡化する方法であって、バッテリモジュール線内のバッテリモジュールは結合ユニットを備える、上記平衡化する方法と、本発明に係る方法が実施可能なバッテリと、に関する。
【背景技術】
【0002】
将来的に、定置型の利用においても、およびハイブリッド車または電気自動車のような車両においても、バッテリシステムがますます使用されることが明らかである。電圧と、提供される電力と、に対する各用途について与えられる要請を満たしうるために、数多くのバッテリセルが直列に接続される。このようなバッテリによって提供される電流は全てのバッテリセルを通って流れる必要があり、1つのバッテリセルは限られた電流のみ通しうるため、最大電流を上げるために、追加的にバッテリセルが並列に接続されることが多い。このことは、バッテリセルハウジング内の複数のセルコイルの敷設によって、または、バッテリセルの外部接続によって行われうる。しかしながら、その際に、セル容量及びセル電圧が正確には同じでないことにより、並列接続されたバッテリセル間で均等化電流が必要になる事態になりうることは問題である。
【0003】
例えば電気自動車およびハイブリッド車において、または、風力発電所の動翼調整の場合のような定置型の利用においても使用される一般的な電気駆動ユニットの原理的な回路図が、図1に示されている。バッテリ10は、中間回路コンデンサ11により蓄電される直流電圧中間回路に接続される。直流電圧中間回路は、パルスインバータ12に接続されており、このパルスインバータ12は、3つのタップ14−1、14−2、14−3の、各2つの切り替え可能な半導体バルブと、2つのダイオードと、を介して、互いに位相がずらされた正弦波電圧を、電動機13の駆動のために提供する。中間回路コンデンサ11の容量は、切り替え可能な半導体バルブのうちの1つに電流が流される間、直流中間回路内の電圧を安定させるために十分な大きさである必要がある。電気自動車のような実際の適用では、mF(ミリファラド)の範囲内の大きな静電容量が発生する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図1で示した構成の欠点は、バッテリ10内の最も弱いバッテリセルがレンジを決定し、個々のバッテリの故障が、既に、車両全体が立ち往生することに繋がることである。さらに、パルスインバータ12内での高電圧の変調は、高いスイッチング損失に繋がり、更に、高電圧のために典型的にIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)スイッチを使用する必要があるため、高い伝導損失にも繋がる。
【0005】
さらに、システム内に含まれるバッテリセル又はバッテリモジュールに同じ電流が流れ、バッテリセル又はバッテリモジュールを個別に制御出来ないことは不都合である。したがって、個々のバッテリセルの様々な状態に対して影響を与えることが出来ない。
【0006】
さらに従来技術では、個々のバッテリセル間、又は個々のバッテリセルを含むモジュール間で様々な充電状態(SOC:State of charge)を平衡化する方法が公知である。本方法は、バッテリセルと、接続された負荷と、の間でエネルギー交換が行われることを前提とすることが多い。電気自動車が静止している際に、即ち、エネルギーが負荷に伝達されず又は負荷から受け取られない間は、この方法で様々な充電状態を平衡化することは可能ではない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、本発明に基づいて、バッテリのバッテリセルの充電状態を平衡化する方法が提供される。バッテリは、直列接続された複数のバッテリモジュールを有する少なくとも1つのバッテリモジュール線を備える。直列接続された各バッテリモジュールは、少なくとも1つのバッテリセル、少なくとも1つの結合ユニット、第1の端子、及び、第2の端子を有し、結合ユニットの制御に従って、少なくとも2つの接続状態のうちの1つの状態を取るよう構成される。この場合、様々な接続状態は、バッテリモジュールの第1の端子と第2の端子との間の様々な電圧値に対応する。したがって、各接続状態において、バッテリモジュールの第1の端子と第2の端子との間の他の電圧値を測定することが可能である。
【0008】
本発明に係る方法は以下の工程を含み、即ち、第1の処理ステップにおいて、バッテリモジュール線の第1の(必ずしも一定ではない)出力電圧が、バッテリモジュール線のバッテリモジュールの適切な制御によって提供され、第1の時間間隔の間にインダクタに印加され、その結果、インダクタを流れる電流が増大する。これにより、磁場エネルギーが、W=0.5L*Iに従ってインダクタに蓄えられ、但し、Lは、インダクタの自己インダクタンスであり、Iは、第1の時間間隔の終りに流れる電流のインダクタンスである。
【0009】
第2の処理ステップにおいて、バッテリモジュール線の第2の(必ずしも一定ではない)出力電圧が、バッテリモジュール線のバッテリモジュールの適切な制御に従って提供され、第2の時間間隔の間にインダクタに印加される。その際に、第2の出力電圧は、第1の出力電圧とは反対の極性を有する。第2の出力電圧の提供には、第1の出力電圧の提供に関与するのと同じバッテリモジュールのみが関与するわけではない。
【0010】
第1の処理ステップの間にインダクタ内に蓄えられた磁場エネルギーは、第2の処理ステップの間に、第2の出力電圧の提供に関与するバッテリモジュール内での電荷の分離のために利用され、従って、第2の出力電圧の提供に関与するバッテリモジュールは、第2の時間間隔の経過後に、以前よりも高い電荷状態を有する。
【0011】
第1の出力電圧の提供に、好適に、第2の出力電圧の提供に関与するバッテリモジュールよりも高い充電状態を有するバッテリモジュールが関与することによって、より高い充電状態を有するバッテリモジュールから、より低い充電状態を有するバッテリモジュールと、エネルギーを移動させることが達成される。
【0012】
典型的に、第2の時間間隔は第1の時間間隔の直後に続き、本方法は周期的に繰り返される。
【0013】
少なくとも1つのバッテリモジュールは、結合ユニットの制御に従って、選択的に、バッテリモジュールの第1の端子と第2の端子とを接続し、又は、第1の端子と第2の端子との間に少なくとも1つのバッテリセルを接続するよう構成されうる。これにより、2つの異なる接続状態が定められる。さらに、少なくとも1つのバッテリモジュールは、第1の端子と第2の端子との間に少なくとも1つのバッテリセルを接続するよう構成され、その際に、第1の端子と第2の端子との間で印加される電圧の極性は、結合ユニットの制御に従って選択可能である。これにより、先に挙げた2つの構成を組み合わせた場合には、同様に2つの接続状態、又は3つの接続状態が発生する。
【0014】
本発明の好適な実施形態において、少なくとも1つのバッテリモジュールは、先に挙げた3つの接続状態を有し、第1の接続状態において、バッテリモジュールの第1の端子と第2の端子とが接続され、第2の接続状態において、第1の端子と第2の端子との間に、少なくとも1つのバッテリセルが、第1の極性(一の例では正の極性)を有して接続され、第3の接続状態において、第1の端子と第2の端子との間に、少なくとも1つのバッテリセルが、第1の極とは反対の極性(同例では負の極性)を有して接続される。
【0015】
さらに、好適に、バッテリモジュール線は少なくとも、上記3つの接続状態を有する第1のバッテリモジュールと、第2のバッテリモジュールと、を含み、第1のバッテリモジュールは、第2のバッテリモジュールよりも高い充電状態を有する。本発明に係る方法は、第1の時間間隔の間には、第1のバッテリモジュールは第2の接続状態にあり、第2のバッテリモジュールは第1の接続状態にあり、第2の時間間隔の間には、第1のバッテリモジュールは第1の接続状態にあり、第2のバッテリモジュールは第3の接続状態にあることによって実施される。
【0016】
本発明の更なる別の好適な実施形態において、インダクタとして、バッテリに接続された電動機の少なくとも1つのインダクタが利用される。その際に、電動機の運動は本方法が実施される間阻止され、又は、電動機が動く間、第1の時間間隔及び/又は第2の時間間隔は、当該第1の時間間隔内及び/又は第2の時間間隔内に電動機のインダクタを通って流れる電流が、電動機のトルクに寄与しないように選択され、これにより、インダクタに蓄えられた磁場エネルギーが、運動エネルギーに変換されるのではなく、電荷分離のためにのみ利用されることが達成される。したがって本発明によって、電動機が駆動している間、及び、電動機により駆動されるシステムが静止している(即ち、エネルギーの流れが無い)間にも実行可能な方法が提供される。
【0017】
本発明の更なる別の観点は、先に記載した特性を有する少なくとも2つのバッテリモジュール線を備えるバッテリに関する。バッテリは、インダクタに接続可能であり、本発明に係る方法を実施するよう構成される。さらに、バッテリは、電動機のインダクタに接続可能であってもよい。本方法を完全に実施するためにさらに必要な制御装置は、バッテリの一部であってもよいが、このことは必須ではない。バッテリは、好適にはリチウムイオンバッテリである。
【0018】
さらに、車両を駆動するための電動機と、電動機と接続された本発明に係るバッテリと、を備えた車両が示される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本発明の実施例が、図面と以下の明細書の記載によって詳細に解説され、その際に、同じ符号は、同一又は機能的に同種の構成要素を示す。
図1】従来技術に係る電気駆動ユニットを示す。
図2】本発明に係る方法で利用可能な結合ユニットを示す。
図3】第1の実施形態の結合ユニットを示す。
図4】第2の実施形態の結合ユニットを示す。
図5】簡素な半導体内にある第2の実施形態の結合ユニットを示す。
図6】バッテリモジュール内の結合ユニットの1の構成を示す。
図7】バッテリモジュール内の結合ユニットの他の構成を示す。
図8図6で示した構成内にある図5で示した結合ユニットを示す。
図9】3つのバッテリモジュール線を有する電気駆動ユニットを示す。
図10】制御装置による、図9で示した電気駆動ユニットの制御を示す。
図11】バッテリモジュールの間の端子間に、極性が選択可能な電圧を印加することを可能にする結合ユニットの一実施形態を示す。
図12図11で示した結合ユニットを有するバッテリモジュールの一実施形態を示す。
図13】第1の時間間隔Δt及び第2の時間間隔Δtの間の本発明に係る方法を概略的に示す。
図14】第1の時間間隔Δt及び第2の時間間隔Δtの間の本発明に係る方法を概略的に示す。
図15図13及び図14で示したインダクタLに印加される電圧の時間的推移を示す。
図16】インダクタLを通って流れる電流の対応する推移を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図2は、本発明に係る方法において利用可能な結合ユニット30を示している。結合ユニット30は、2つの入力口31及び32、並びに、1つの出力口33を有し、入力口31又は32の一方を出力口33と接続して他方の入力口を分離するよう構成される。結合ユニットの特定の実施形態において、結合ユニットはさらに、2つの入力口31、32を出力口33から分離するよう構成されうる。しかしながら、入力口31及び入力口32を、出力口33と接続することは構想されない。
【0021】
図3は、第1の実施形態の結合ユニット30を示し、この結合ユニット30は、原則的に2つの入力口31、32の一方のみを出力口33と接続可能なパルスインバータ34を有し、一方、各他方の入力口31、32は出力口33から分離される。パルスインバータ34は、特に簡単に電気機械的なスイッチとして実現されてもよい。
【0022】
図4は、第2の実施形態の結合ユニット30を示し、この結合ユニット30では、第1のスイッチ35、及び、第2のスイッチ36が設けられている。各スイッチは、入力口31又は32の一方と、出力口33と、の間に接続される。図3の実施形態に対して、本実施形態は、両方の入力口31、32を出力口33から分離することも可能であり、したがって出力口33が高インピーダンス状態(hochohmig)になるという利点がある。さらに、スイッチ35、36は、例えば、酸化金属半導体電界効果トランジスタ(MOSFET:Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)スイッチ、又は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)スイッチのような半導体スイッチとして簡素に実現されてもよい。半導体スイッチには、価格が安価で切り替え速度が速いという利点があり、従って、結合ユニット30は、短時間で、制御信号又は制御信号の変化に対して反応することが可能であり、高い切り替えレートが実現可能である。
【0023】
図5は、簡素な半導体回路内にある第2の実施形態の結合ユニットを示し、ここでは、各スイッチ35、36は、作動及び停止可能な半導体バルブと、当該半導体バルブに対して逆並列に接続されるダイオードと、で構成される。
【0024】
図6及び図7は、バッテリモジュール40内の結合ユニット30の2つの構成を示している。複数のバッテリセル41が、結合ユニット30の入力口間に直列に接続されている。しかしながら、本発明は、このような直列接続のバッテリセルに限定されず、バッテリセルが1つだけ設けられてもよく、又は、並列接続のバッテリセル、若しくは、直列接続と並列接続が混ざったバッテリセルでもよい。図6の例では、結合ユニット30の出力口は、第1の端子42と接続され、バッテリセル41の陰極は、第2の端子43と接続されている。しかしながら、図7のような、バッテリセル41の陽極が第1の端子42と接続され、結合ユニット30の出力口が第2の端子43と接続された逆の構成が可能である。
【0025】
図8は、図6で示した構成内にある、図5で示した結合ユニット30を示す。結合ユニット30の制御及び診断は、図示されない制御装置と接続された信号線44を介して行われる。全体で、バッテリモジュール40の端子42と43との間に、0ボルト又は電圧Umodを設定することが可能である。
【0026】
図9は、電動機13と接続された電気駆動ユニットを示しており、電動機13の3つの位相は、バッテリモジュール線50−1、50−2、50−3と接続されている。3つのモジュール線50−1、50−2、50−3のそれぞれは、直列接続された複数のバッテリモジュール40−1、…、40−nであって、結合ユニット30をそれぞれが有し図6又は図7に示すように構成された上記複数のバッテリモジュール40−1、…、40−nで構成される。バッテリモジュール40−1、…、40−nを、バッテリ線50−1、50−2、50−3のうちの1つへと組み立てる場合に、バッテリモジュール40−1、…、40−nの第1の端子42は、隣接するバッテリモジュール40−1、…、40−nの第2の端子43と接続される。このようにして、3つのバッテリモジュール線50−1、50−2、50−3のそれぞれで、段階的な出力電圧が形成可能である。
【0027】
図10に示される制御装置60は、m個のバッテリモジュール線50−1、50−2、…、50−m内の可変的な数のバッテリモジュール40−1、…、40−nに対して、データバス61を介して第1の制御信号を出力するよう構成され、この第1の制御信号によって、このように制御されるバッテリモジュール40−1、…、40−nの結合ユニット30は、バッテリセル(又は複数のバッテリセル)41を、各バッテリモジュール40−1、…、40−nの第1の端子42と第2の端子43との間に接続する。同時に、制御装置60は、残りのバッテリモジュール40−1、…、40−nに対して第2の制御信号を出力し、この第2の制御信号によって、当該残りのバッテリモジュール40−1、…、40−nの結合ユニット30は、各バッテリモジュール40−1、…、40−nの第1の端子42と第2の端子43とを接続し、これにより、各バッテリモジュール40−1、…、40−nのバッテリセル41にバイバスが付けられる。
【0028】
従って、m個のバッテリモジュール線50−1、50−2、…、50−m内の複数のバッテリモジュール40−1、…、40−nの適切な制御によって、m個の正弦波形状の出力電圧が形成可能であり、このm個の出力電圧は、所望の形態で、追加的なパルスインバータを使用することなく電動機13を制御する。
【0029】
更なる別の実施形態において、m個のバッテリモジュール線50−1、50−2、…、50−m内で利用されるバッテリモジュール40−1、…、40−nは、第1の端子42と第2の端子43と間に印加される電圧の極性が結合ユニットの制御に従って選択可能であるように、自身のバッテリセル41を第1の端子42と第2の端子43との間に接続するよう構成される。
【0030】
図11は、このことを可能にする第1の実施形態の結合ユニット70を示し、この結合ユニットでは、第1のスイッチ75、第2のスイッチ76、第3のスイッチ77、及び、第4のスイッチ78が設けられている。第1のスイッチ75は、第1の入力口71と第1の出力口73との間に接続され、第2のスイッチ76は、第2の入力口72と第2の出力口74との間に接続され、第3のスイッチ77は、第1の入力口71と第2の出力口74との間に接続され、第4のスイッチは、第2の入力口72と第1の出力口73との間に接続される。
【0031】
図12は、図11に示した結合ユニットを備えたバッテリモジュール40の一実施形態を示している。結合ユニット70の第1の出力口は、バッテリモジュール40の第1の端子42と接続され、結合ユニット70の第2の出力口は、バッテリモジュール40の第2の端子43と接続される。このように構成されたバッテリモジュール40は、バッテリモジュール41が結合ユニット70によって、選択可能な極性により端子42、43と接続可能であり、従って、符号が異なる出力電圧が形成されうるという利点を有する。さらに、例えば、スイッチ76及び78の閉鎖、並びに、これと同時のスイッチ75及び77の開放によって(又は、スイッチ76及び78の開放、並びに、スイッチ75及び77の閉鎖によって)、端子42と43とを互いに伝導的に接続し、0Vの出力電圧を形成することが可能であってもよい。従って全体として、バッテリモジュール40の端子42と43との間に、0ボルト、電圧Umod、又は電圧−Umodを設定することが可能である。
【0032】
以下では、図13図16を用いて、バッテリのバッテリセルの充電状態を平衡化するための本発明に係る方法が記載される。本方法は、上記の特性を有するバッテリモジュール40を備えたバッテリセル線50を利用して実施される。このために、特に、図6図8で示したバッテリモジュール40を利用することが可能である。しかしながら、好適に、本発明に係る方法は、図12に示すように実現され、図11に示す結合ユニット70を備えた、直列接続された複数のバッテリモジュール40を含むバッテリモジュール線50を利用して実施される。
【0033】
本実施形態によるバッテリモジュール40は、先に記載したように、結合ユニットの制御に従って、選択的に、少なくとも3つの接続状態のうちの1つの状態を取るよう構成される。第1の接続状態において、バッテリモジュール40の第1の端子42と第2の端子43とが接続される。第2の接続状態において、複数のバッテリセル41が、第1の端子42と第2の端子43との間に、正の極性を有して接続される。最後に、第3の接続状態において、複数のバッテリセル41が、第1の端子42と第2の端子43との間に、負の極性を有して接続される。
【0034】
図13及び図14は、第1の時間間隔Δt及び第2の時間間隔Δtの間の本発明に係る方法を概略的に示している。
【0035】
図13及び図14に示すバッテリモジュール線50は、2つのバッテリモジュール40−1、40−2を含み、その際、2つのバッテリモジュール40−1、4−2は、先に記載した好適な3つの接続状態を有する。バッテリモジュール線50は、その2つの端子がインダクタLに接続され、これにより、インダクタLに対して、バッテリモジュール線50により提供された出力電圧が印加される。
【0036】
本発明に係る方法の開始前には、電流はインダクタLを通って流れていない。第1のバッテリモジュール40−1は、第2のバッテリモジュール40−2よりも高い充電状態を有する。
【0037】
図13に示すように、第1の時間間隔Δtの間に、第1の出力電圧+Uが提供される。第1の出力電圧+Uは、第1のバッテリモジュール40−1が第2の接続状態にあり、これにより電圧Uが生成され、第2のバッテリモジュール40−2が第1の接続状態にあり、これにより第2のバッテリモジュール40−2は第1の出力電圧に寄与しないことにより提供される。これにより、電流がインダクタLを通って流れ始め、この電流は直線的に増大し、インダクタLが磁場エネルギーを蓄えるようになる。
【0038】
第2の時間間隔Δtの間に、第1のバッテリモジュール40−1は、図14に示すように、第1の接続状態にあり、第2のバッテリモジュール40−2は、第3の接続状態にある。従って、第1のバッテリモジュール40−1は電圧を伝達せず、第2のバッテリモジュール40−2は、第2の出力電圧への電圧−Uを伝達する。反対の極性を有する電圧がインダクタLに印加されるにもかかわらず、図13及び図14に矢印で示すとおりに、第2の時間間隔Δtの間にさらに、第1の時間間隔と同じ方向に電流が流れるが、直線的に減少する。これにより、インダクタLに蓄えられた磁場エネルギーが減少し、第2のバッテリモジュール40−2内で電荷が分離されることになる。
【0039】
従って、第2の時間間隔Δtの終りに、第1のバッテリモジュール40−1は、本方法の開始時よりも低い充電状態を有し、第2のバッテリモジュール40−2は、本方法の開始時よりも高い充電状態を有する。
【0040】
本発明に係る方法は、バッテリモジュール線50がより大きな数のバッテリモジュール40を含む場合にも、問題なく適用することが可能である。その際に、第1の時間間隔Δtの間の第1の出力電圧の提供には、好適に、第2の出力電圧の提供に関与するバッテリモジュールよりも高い充電状態を有するバッテリモジュールが関与する。これにより、全体として、異なるバッテリモジュールのバッテリセル間の電荷交換が行われ、さらに、バッテリモジュールの様々な充電状態の平衡化が行われる。
【0041】
図15は、第1の時間間隔Δt及び第2の時間間隔Δtの間にインダクタLに電荷される電圧の推移を示している。図15に示すように、本発明に係る方法は周期的に繰り返すことが可能であり、これにより、様々なモジュールの間での緩やかで継続的な電荷移動が可能である。
【0042】
図16は、インダクタLを通って流れる電流の対応する推移を示している。完全なインダクタLについては、電流の推移は直線的であり、時間間隔Δt及びΔtを適切が選択された際には、電流の符号は一度も変わらない。示されない実施例において、中程度の電流が設定され、この中程度の電流にはリプル成分が重畳する。
【0043】
図15及び図16に示したプロセスは、損失も無く理想化された前提の下で推移している。現実には、当然のことながら、バッテリモジュール40内でスイッチとして使用される半導体構成要素も、インダクタLも、損失がある。従って、バッテリモジュール40−1から取り出されるエネルギーの全てが、バッテリモジュール40−2に蓄えられるわけではない。
【0044】
本発明の詳細には示されない実施例において、インダクタLとして、バッテリ10に接続された電動機13、例えば、永久励起型同期電動機のインダクタが利用される。実際には、利用される全ての電動機の大部分が三相式で実現されるため、この場合は、図9に示した構成が関わっている。但し、本発明に係る方法はn相式のシステムでも適用可能である。バッテリ10に接続された電動機13のインダクタを利用した場合の利点は、本発明に係る方法を実施するために必要な構成要素が、既に全体システムに含まれていることである。
【0045】
インダクタLに蓄えられた磁場エネルギーが運動エネルギーに変換されるのではなく、電荷分離のためのみに利用されることを保証するために、駆動システムは静止状態であるべきであろう。より詳細には、駆動システムを停止させる必要があり、即ち、本発明に係る方法を実施する間に発生するトルクは、電動機を動かすために必要な静摩擦トルクを超えてはならない。非同期機の場合は、本発明の実施中にトルクが発生しないため危険はない。
【0046】
その一方で、本発明に係る方法は、駆動システムが動いている際にも実施することが可能である。同期機又は非同期機の記述の際には、回転座標系を利用するのが一般的である。この座標系の軸はd−qで示され、磁場の速度により回転し、その際に、d軸は、定義によれば、磁場の方向に向けられている。同期機の場合、d方向に通る電流はトルク形成に寄与しない。従って、このd方向の電流の生成及び低減により、先に記載した方法を実施することが可能である。対応するバッテリモジュールの選択の際には、電流空間ベクトルの回転のみ考慮すればよい。所与のバッテリモジュールのために、電流を生成しうる特定の角度範囲のみ提供される。同様に、それを用いて電流を再び低減するバッテリモジュールについても同様に、特定の角度範囲のみが提供される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16