特許第5798688号(P5798688)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5798688-無アルカリガラス及びその製造方法 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5798688
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】無アルカリガラス及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03C 3/091 20060101AFI20151001BHJP
   G02F 1/1333 20060101ALI20151001BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20151001BHJP
   H01L 51/50 20060101ALN20151001BHJP
【FI】
   C03C3/091
   G02F1/1333 500
   H05B33/02
   !H05B33/14 A
【請求項の数】16
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-528291(P2014-528291)
(86)(22)【出願日】2012年8月31日
(65)【公表番号】特表2014-527018(P2014-527018A)
(43)【公表日】2014年10月9日
(86)【国際出願番号】KR2012007014
(87)【国際公開番号】WO2013032290
(87)【国際公開日】20130307
【審査請求日】2014年4月25日
(31)【優先権主張番号】10-2011-0089112
(32)【優先日】2011年9月2日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2012-0096357
(32)【優先日】2012年8月31日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】サン−コク・キム
(72)【発明者】
【氏名】ウォン−ベ・リム
(72)【発明者】
【氏名】ドゥ−スン・ファン
(72)【発明者】
【氏名】ドン−クウォン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ス−ファン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ダ−ジョン・キム
【審査官】 増山 淳子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−106546(JP,A)
【文献】 特開平04−325435(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/001555(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 1/00 − 14/00
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化物重量基準で、
SiOを61〜73重量%、
を0.5〜3.9重量%、
Al重量%、
MgOを10.1〜13重量%、
CaOを1〜8重量%、及び
SrOを4〜10重量%を含み、前記酸化物以外の酸化物及びアルカリ金属酸化物を含まず、
粘度が10dPasになる温度が1600℃未満であり、粘度が10dPasになる温度が1250℃未満であることを特徴とする無アルカリガラス。
【請求項2】
酸化物重量基準で、
SiOを64〜72重量%、
を1〜3.9重量%
MgOを10.1〜12重量%、
CaOを4〜8重量%、及び
SrOを4〜8重量%を含むことを特徴とする請求項1に記載の無アルカリガラス。
【請求項3】
酸化物重量基準で、MgO+CaO+SrOを15〜26重量%含むことを特徴とする請求項1に記載の無アルカリガラス。
【請求項4】
酸化物重量基準で、MgO+CaO+SrOを17〜24重量%含むことを特徴とする請求項1に記載の無アルカリガラス。
【請求項5】
酸化物重量基準で、SiO+Alを72〜79重量%含むことを特徴とする請求項1に記載の無アルカリガラス。
【請求項6】
密度が2.55g/cm未満であり、熱膨張係数が3.0×10−6/K〜4.5×10−6/Kであることを特徴とする請求項1に記載の無アルカリガラス。
【請求項7】
粘度が10dPasになる温度が1550℃未満であり、粘度が10dPasになる温度が1240℃未満であることを特徴とする請求項1に記載の無アルカリガラス。
【請求項8】
請求項1からのいずれか1項に記載の無アルカリガラスを含むディスプレイ装置。
【請求項9】
前記ディスプレイ装置が、液晶ディスプレイ装置であることを特徴とする請求項に記載のディスプレイ装置。
【請求項10】
酸化物重量基準で、
SiOを61〜73重量%、
を0.5〜3.9重量%、
Al重量%、
MgOを10.1〜13重量%、
CaOを1〜8重量%、及び
SrOを4〜10重量%を含み、前記酸化物以外の酸化物及びアルカリ金属酸化物を含まないようにガラス原料を組合わせるステップを含み、
製造されたガラスの粘度が10dPasになる温度が1600℃未満であり、製造されたガラスの粘度が10dPasになる温度が1250℃未満であることを特徴とする無アルカリガラスの製造方法。
【請求項11】
前記ガラス原料を組合せるステップでは、酸化物重量基準で、
SiOを64〜72重量%、
を1〜3.9重量%
MgOを10.1〜12重量%、
CaOを4〜8重量%、及び
SrOを4〜8重量%を含むようにすることを特徴とする請求項10に記載の無アルカリガラスの製造方法。
【請求項12】
前記ガラス原料を組合せるステップでは、酸化物重量基準で、MgO+CaO+SrOを15〜26重量%含むようにすることを特徴とする請求項10に記載の無アルカリガラスの製造方法。
【請求項13】
前記ガラス原料を組合せるステップでは、酸化物重量基準で、MgO+CaO+SrOを17〜24重量%含むようにすることを特徴とする請求項10に記載の無アルカリガラスの製造方法。
【請求項14】
前記ガラス原料を組合せるステップでは、酸化物重量基準で、SiO+Alを72〜79重量%含むようにすることを特徴とする請求項10に記載の無アルカリガラスの製造方法。
【請求項15】
製造されたガラスの密度が2.55g/cm未満であり、製造されたガラスの熱膨張係数が3.0×10−6/K〜4.5×10−6/Kであることを特徴とする請求項10に記載の無アルカリガラスの製造方法。
【請求項16】
製造されたガラスの粘度が10dPasになる温度が1550℃未満であり、製造されたガラスの粘度が10dPasになる温度が1240℃未満であることを特徴とする請求項10に記載の無アルカリガラスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス製造技術に関し、より詳しくは、アルカリ金属酸化物が含まれていない無アルカリガラス組成物及びその製造方法に関する。
[関連出願の相互参照]
本出願は、2011年9月2日出願の韓国特許第10−2011−0089112号公報及び2012年8月31日出願の韓国特許第10−2012−0096357号公報に基づく優先権を主張し、上記出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に援用される。
【背景技術】
【0002】
ガラス、その中でも平板ガラス(flat glass)は窓ガラス、車両のウィンドースクリーン、鏡などのように多様な分野で使用されており、その種類も用途に合わせて非常に多様に開発され用いられている。
【0003】
特に、LCD(Liquid Crystal Display)やPDP(Plasma display panel)、有機EL(Organic Electroluminescence)のような平板ディスプレイ装置には無アルカリガラス基板が広く使用される。アルカリ金属酸化物の成分が含有されたアルカリガラス基板の場合、ガラス基板中のアルカリ金属イオンが薄膜内に拡散し、膜特性を劣化させる恐れがあるため、ディスプレイ用としてはアルカリガラスより無アルカリガラスが広く使用されている。
【0004】
ところが、このような平板ディスプレイ基板用ガラスの場合、多様な製品特性が求められている。
【0005】
例えば、平板ディスプレイ用ガラスの場合、軽量化が確保されなければならない。特に、近年、テレビやモニターなどのようなディスプレイ装置が益々大型化し、そこに使用される基板ガラスの面積も大きくなっている。この場合、基板ガラス自体の荷重による基板ガラスの反り現象が一層酷くなり得るため、それを防止するために基板ガラスはより軽く製造される必要がある。それだけでなく、このような基板ガラスは携帯電話やPDP、ノートパソコンのような小型携帯用ディスプレイ装置にも使用されるが、この場合にも携帯性を高めるために基板ガラスの軽量化が求められる。
【0006】
また、平板ディスプレイ基板用ガラスは、適切な溶融性(融解性)が確保されなければならない。ガラスの溶融性が低下すれば、ガラスの溶融に必要となるエネルギー及び時間が増加することはもちろん、ガラス中に気泡や異物のような欠陥が生じやすい。また、このようなガラス中の気泡や異物は光の透過を妨害するため、ディスプレイ装置用ガラスとしての品質が大きく低下することになる。
【0007】
さらに、平板ディスプレイ基板用ガラスは、耐熱性が確保されなければならない。例えば、TFT−LCDのような平板ディスプレイ装置の製造工程では多様な熱処理が行われるが、その過程で、ガラス基板は急加熱と急冷却環境に晒され得る。もし、このような状況で、ガラスに耐熱性が確保されていない場合、ガラスの変形や反り現象などが生じ、熱による引張応力によってガラス基板が割れることもある。さらに、TFT−LCD用ガラスの場合、耐熱性が低ければ、TFT材料と熱膨張差が生じてTFTの画素ピッチがずれる恐れがあり、それにより表示不良が発生し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、軽くて溶融性に優れ、加工が容易な無アルカリガラス及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
本発明の他の目的及び長所は、下記の説明によって理解でき、本発明の実施形態によってより明らかに分かるであろう。また、本発明の目的及び長所は、特許請求の範囲に示される手段及びその組合せによって実現することができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を達成するため、本発明によるガラスは、無アルカリガラスであって、酸化物重量基準で、SiOを61〜73重量%、Bを0.5〜3.9重量%、Alを3.5〜13.5重量%、MgOを9〜13重量%、CaOを1〜8重量%、及びSrOを4〜10重量%含み、アルカリ金属酸化物を実質的に含まない。
【0011】
望ましくは、前記無アルカリガラスは、BaOを実質的に含まない。
【0012】
また、望ましくは、前記無アルカリガラスは、密度が2.55g/cm未満であり、熱膨張係数が3.0×10−6/K〜4.5×10−6/Kであり、粘度が10dPasになる温度が1600℃未満であり、及び/または粘度が10dPasになる温度が1250℃未満である。
【0013】
また、上記の課題を達成するため、本発明によるディスプレイ装置は、上述したガラスを含む。
【0014】
望ましくは、前記ディスプレイ装置は、液晶ディスプレイ装置である。
【0015】
また、上記の課題を達成するため、本発明によるガラスの製造方法は、無アルカリガラスの製造方法であって、酸化物重量基準で、SiOを61〜73重量%、Bを0.5〜3.9重量%、Alを3.5〜13.5重量%、MgOを9〜13重量%、CaOを1〜8重量%、及びSrOを4〜10重量%含み、アルカリ金属酸化物を実質的に含まないようにガラス原料を組み合わせる段階を含む。
【0016】
望ましくは、前記ガラス原料組合せ段階は、BaOを実質的に含まないようにガラス原料を組み合わせる。
【0017】
また、望ましくは、前記ガラスの製造方法によって製造された無アルカリガラスは、密度が2.55g/cm未満であり、熱膨張係数が3.0×10−6/K〜4.5×10−6/Kであり、粘度が10dPasになる温度が1600℃未満であり、及び/または粘度が10dPasになる温度が1250℃未満である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、アルカリ金属酸化物の成分が実質的に含まれていない無アルカリガラスが提供される。
【0019】
特に、本発明によれば、低密度の無アルカリガラスを提供することができる。したがって、面積の広いガラス基板であっても自重による反り現象を減少でき、テレビやモニターのようなディスプレイ装置の大型化趨勢に応えることができる。それだけでなく、ガラス基板が使用される携帯電話やノートパソコンなどのような小型携帯用装置の場合にもその重量を減少でき、携帯性を向上させることができる。
【0020】
また、本発明によれば、粘度が10dPasになる温度(T)が低いため、ガラスの溶融性が良くなり、粘度が10dPasになる温度(T)が低いため、ガラスの加工温度を低下させることで、ガラスの加工が容易になる。また、このようにガラスの溶融温度及び加工温度を低下させることができるため、ガラスの溶融及び加工に必要となるエネルギーや時間などを節減することができる。
【0021】
また、本発明によれば、熱膨張係数が低い無アルカリガラスを提供することができる。したがって、TFT−LCDのような平板ディスプレイ装置の製造工程中、ガラスが多様な熱処理環境に晒されても、熱収縮や変形、反り、割れなどの現象の発生を防止することができる。また、このような無アルカリガラスの熱膨張係数はTFT材料の熱膨張係数と類似するため、画素ピッチずれによって発生する表示不良などを効果的に防止することができる。
【0022】
したがって、本発明による無アルカリガラスは、LCDやPDP、有機ELディスプレイのような平板ディスプレイ用基板により望ましく使用することができる。
【0023】
本明細書に添付される次の図面は、本発明の望ましい実施形態を例示するものであり、発明の詳細な説明とともに本発明の技術的な思想をさらに理解させる役割をするため、本発明は図面に記載された事項だけに限定されて解釈されてはならない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態による無アルカリガラスの製造方法を概略的に示したフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付された図面を参照して本発明の望ましい実施形態を詳しく説明する。これに先立ち、本明細書及び特許請求の範囲に使われた用語や単語は通常的や辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応ずる意味及び概念で解釈されねばならない。
【0026】
したがって、本明細書に記載された実施形態及び図面に示された構成は、本発明の最も望ましい一実施形態に過ぎず、本発明の技術的な思想のすべてを代弁するものではないため、本出願の時点においてこれらに代替できる多様な均等物及び変形例があり得ることを理解せねばならない。
【0027】
本発明によるガラスは、アルカリ金属酸化物を実質的に含まない無アルカリガラスである。ここで、アルカリ金属酸化物を実質的に含まないとは、ガラス中にアルカリ金属酸化物が全く含まれていないか、又は、一部含まれていても他の成分に比べてその含有量が極めて少なくガラスの組成成分として無視できるほどの量を含む場合などを意味する。例えば、LiO、NaO及びKOのようなアルカリ金属酸化物がガラス組成成分として0.2重量%以下含まれた場合、アルカリ金属酸化物が実質的に含まれていないと言える。
【0028】
本発明による無アルカリガラスは、SiO、B、Al、MgO、CaO及びSrOを組成成分として含む。
【0029】
特に、本発明による無アルカリガラスは、酸化物重量基準でSiOを61〜73重量%含むことができる。SiOはガラスを形成するネットワーク構造生成体酸化物であって、ガラスの化学的耐性を増加させ、適切な熱膨張率を持たせることに寄与することができる。しかし、SiOの含有量が多過ぎる場合、熱膨張係数があまりにも低くなり、ガラスの失透特性が悪くなる恐れがある。一方、SiOの含有量が少な過ぎる場合、化学的耐性が減少して密度が高くなり、熱膨張係数が大きくなり、変形点が低下する恐れがある。したがって、本発明による無アルカリガラスは、61〜73重量%のSiOを含み、64〜72重量%のSiOを含むことが望ましく、66〜71重量%のSiOを含むことがさらに望ましい。
【0030】
また、本発明による無アルカリガラスは、酸化物重量基準でBを0.5〜3.9重量%含むことができる。Bはガラスのネットワーク構造生成体酸化物であって、ガラスの溶解反応性を改善し、熱膨張係数を小さくし、失透性を改善させ、耐BHF性のような化学的耐性を改善し、密度を下げることに寄与することができる。しかし、Bの含有量が多過ぎる場合、ガラスの耐酸性が低下し、密度が高くなって変形点が低くなり、耐熱性が劣化する恐れがある。一方、Bの含有量が少な過ぎる場合、添加効果を十分達成し難い。したがって、本発明による無アルカリガラスは、0.5〜3.9重量%のBを含み、1〜3.9重量%のBを含むことが望ましく、3〜3.9重量%のBを含むことがさらに望ましい。
【0031】
また、本発明による無アルカリガラスは、酸化物重量基準でAlを3.5〜13.5重量%含むことができる。Alはガラスの高温粘度、化学安定性、耐熱衝撃性などを増加させ、変形点及びヤング率などを高めることに寄与することができる。しかし、Alの含有量が多過ぎる場合、失透特性、耐塩酸性及び耐BHF性を低下させ、粘度を高める恐れがある。一方、Alの含有量が少な過ぎる場合、その添加効果を十分達成し難く、弾性係数が低くなり得る。したがって、本発明による無アルカリガラスは、3.5〜13.5重量%のAlを含み、4〜12重量%のAlを含むことが望ましく、4〜9重量%のAlを含むことがさらに望ましい。
【0032】
ここで、本発明による無アルカリガラスは、SiO及びAlを合計含有量(SiO+Al)で72〜79重量%含むことが望ましい。このような濃度範囲でSiO及びAlの含有効果がより向上でき、熱膨張係数及び失透特性などの低下を防止できるためである。
【0033】
また、本発明による無アルカリガラスは、酸化物重量基準でMgOを9〜13重量%含むことができる。MgOはアルカリ土類金属酸化物であって、熱膨張係数を高めず、変形点をあまり低下させず、溶融性の向上に寄与することができる。特に、MgOはガラスの密度を下げ、ガラスの軽量化に多大に寄与することができる。しかし、MgOの含有量が多過ぎる場合、ガラスの失透特性が低下し、耐酸性及び耐BHF性が低下する恐れがある。一方、MgOの含有量が少な過ぎる場合、上述したMgO添加効果を達成し難い。したがって、本発明による無アルカリガラスは9〜13重量%のMgOを含み、9.5〜12重量%のMgOを含むことが望ましく、10〜11重量%のMgOを含むことがさらに望ましい。
【0034】
また、本発明による無アルカリガラスは、酸化物重量基準でCaOを1〜8重量%含むことができる。CaOは、MgOと同様に、アルカリ土類金属酸化物であって、密度と熱膨張係数を低め、変形点をあまり低下させず、溶融性の向上に寄与することができる。しかし、CaOの含有量が多過ぎる場合、密度及び熱膨張係数が大きくなり、耐BHF性のような耐化学性を低下させる恐れがある。一方、CaOの含有量が少な過ぎる場合、上述したCaOの添加による特性向上効果を十分達成し難い。したがって、本発明による無アルカリガラスは1〜8重量%のCaOを含み、4〜8重量%のCaOを含むことが望ましく、5〜7.5のCaOを含むことがさらに望ましい。
【0035】
また、本発明による無アルカリガラスは、酸化物重量基準でSrOを4〜10重量%含むことができる。SrOはアルカリ土類金属酸化物であって、ガラスの失透特性及び耐酸性の向上に寄与することができる。しかし、SrOの含有量が多過ぎる場合、熱膨張係数や密度が上昇し、失透特性が悪化する恐れがある。一方、SrOの含有量が少な過ぎる場合、上述したSrOの添加効果を十分達成し難い。したがって、本発明による無アルカリガラスは4〜10重量%のSrOを含み、4〜8重量%のSrOを含むことが望ましく、4〜6重量%のSrOを含むことがさらに望ましい。
【0036】
ここで、本発明による無アルカリガラスは、MgO、CaO及びSrOを合計含有量(MgO+CaO+SrO)で15〜26重量%含むことが望ましい。このような濃度範囲でアルカリ土類金属酸化物の含有効果が向上でき、失透特性も低下しないからである。前記MgO+CaO+SrOは17〜24重量%であることがさらに望ましく、19〜22重量%であることが最も望ましい。
【0037】
望ましくは、本発明による無アルカリガラスは、BaOを実質的に含まない。BaOは耐薬品性や失透特性を向上させる役割を果たすが、ガラスの密度を高め、環境にやさしくない。本発明の一実施形態による無アルカリガラスの場合、このようなBaOを含まないため、ガラスの密度を下げ、環境によりやさしいガラスを製造することができる。
【0038】
また、望ましくは、本発明による無アルカリガラスの密度が2.55g/cm未満であり得る。このような実施形態によれば、ガラスの密度が低くてガラス製品の軽量化を容易に達成することができる。特に、ガラスが適用される装置の大型化に伴ってガラスの面積が益々広がっていく状況下で、ガラスの密度が低くなれば、ガラスの自重による反り現象を減らし、ガラスが適用された装置の重さを減らすことができる。また、小型携帯用機器や装置に適用されたガラス自体の重さを低減でき、携帯性を向上させることができる。
【0039】
また、望ましくは、本発明による無アルカリガラスは、熱膨張係数(CTE:Coefficinet of Thermal Expansion)が3.0×10−6/K〜4.5×10−6/Kであり得る。このような実施形態によれば、熱膨張係数が低くて耐熱衝撃性に優れる。したがって、ガラス基板に多様な熱処理工程が繰り返して行われても、熱収縮や反り、変形のような問題の発生を防止することができる。さらに、このような熱膨張係数はTFT材料の熱膨張係数と類似するため、本発明によるガラスを用いてTFT−LCDを製造するとき、TFT材料との熱膨張差による表示不良などの発生を防止することができる。
【0040】
また、望ましくは、本発明による無アルカリガラスは、粘度が10dPasになる温度(T)が1600℃未満であり得る。また、本発明による無アルカリガラスは、粘度が10dPasになる温度(T)が1550℃未満であることがさらに望ましい。このような実施形態によれば、ガラスの溶融(融解)に関わるTが低いため、ガラスの溶融性が改善でき、ガラスの溶融に必要なエネルギー及び時間を低減させることができる。したがって、ガラス製品の生産性を向上させ、製造コストの低下に寄与することができる。
【0041】
また、望ましくは、本発明による無アルカリガラスは、粘度が10dPasになる温度(T)が1250℃未満であり得る。また、本発明による無アルカリガラスは、粘度が10dPasになる温度(T)が1240℃未満であることがさらに望ましい。このような実施形態によれば、ガラスの加工温度に関わるTが低いため、ガラスの加工が容易になり、ガラスの加工に必要なエネルギー及び時間を節減することができる。
【0042】
本発明によるディスプレイ装置は、上述した無アルカリガラスを含むことができる。すなわち、本発明によるディスプレイ装置は、ガラス基板を含み、このようなガラス基板は無アルカリガラス基板であって、酸化物重量基準で、SiOを61〜73重量%、Bを0.5〜3.9重量%、Alを3.5〜13.5重量%、MgOを9〜13重量%、CaOを1〜8重量%、及びSrOを4〜10重量%含み、アルカリ金属酸化物を実質的に含まない。さらに、このような無アルカリガラス基板は、BaOを実質的に含まず、密度は2.55g/cm未満であり、熱膨張係数は3.0〜4.5[×10−6/K]であり得る。また、このような無アルカリガラス基板は、Tが1600℃未満であり、Tが1250℃未満であり得る。
【0043】
特に、本発明によるディスプレイ装置は、LCD装置であることが望ましい。すなわち、TFT−LCDのような液晶ディスプレイ装置は、ガラス基板(パネル)を含み、このようなガラス基板は上述した組成及び物性を有し得る。また、本発明によるディスプレイ装置はLCD装置の外にも、PDP装置のような多様なディスプレイ装置を含み得る。
【0044】
以下、本発明の望ましい実施形態によって無アルカリガラスを製造する方法を説明する。
【0045】
図1は、本発明の一実施形態による無アルカリガラスの製造方法を概略的に示したフロー図である。
【0046】
図1を参照すれば、まず、ガラスに含有される各成分の原料を目標組成になるように組み合わせる(S110)。このとき、S110段階では、アルカリ金属酸化物の成分が実質的に含まれず、酸化物重量基準でSiOが61〜73重量%、Bが0.5〜3.9重量%、Alが3.5〜13.5重量%、MgOが9〜13重量%、CaOが1〜8重量%、及びSrOが4〜10重量%含まれるように原料成分を組み合わせる。望ましくは、前記S110段階において、SiOが64〜72重量%、Bが1〜3.9重量%、Alが4〜12重量%、MgOが9.5〜12重量%、CaOが4〜8重量%、及びSrOが4〜8重量%含まれるように原料成分を組み合わせる。より望ましくは、前記S110段階において、SiOが66〜71重量%、Bが3〜3.9重量%、Alが4〜9重量%、MgOが10〜11重量%、CaOが5〜7.5重量%、及びSrOが4〜6重量%含まれるように原料成分を組み合わせる。また、前記S110段階では、MgO+CaO+SrOが15〜26重量%含まれるように原料成分を組み合わせることができ、17〜24重量%含まれるように原料成分を組み合わせることがより望ましく、19〜22重量%含まれるように原料成分を組み合わせることが最も望ましい。
【0047】
一方、このようなガラス原料成分は、BaOを実質的に含まないことが良い。
【0048】
次いで、このように組み合わせたガラス原料を所定温度に、すなわち1500〜1600℃に加熱してガラス原料を溶融し(S120)、溶融したガラスを成形する(S130)。このとき、S130段階は、フロート槽(float bath)を用いるフロート法で行うことができるが、本発明がこのような成形方式によって限定されることはない。例えば、前記S130段階、すなわちガラスの成形段階はダウンドロー(down draw)法やフュージョン(fusion)法で行うこともできる。
【0049】
このようにS130段階でガラスが成形されれば、成形されたガラスは徐冷炉に移送されて徐冷される(S140)。その後、徐冷されたガラスは所望の大きさに切断され、研磨などの加工がさらに行われる。このような一連の過程を通じてガラス製品として製造される。
【0050】
上述したように、本発明の一実施形態によるガラスの製造方法によって製造された無アルカリガラスは、その密度が2.55g/cm未満であり得る。また、製造された無アルカリガラスの熱膨張係数は3.0〜4.5[×10−6/K]であり得る。また、このように製造された無アルカリガラスはTが1600℃未満であって、Tが1250℃未満であり得る。より望ましくは、本発明によるガラスの製造方法によって製造された無アルカリガラスは、Tが1550℃未満であって、Tが1240℃未満であり得る。
【0051】
[実施例]
以下、本発明を具体的な実施例及び比較例を挙げて説明する。しかし、本発明による実施例は多くの他の形態に変形されることができ、本発明の範囲が後述する実施例に限定されると解釈されてはならない。本発明の実施例は当業者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0052】
表1には本発明による実施例のガラス組成及び物性が示され、表2はこのような実施例と比べるための比較例のガラス組成及び物性が示されている。
【0053】
各成分の原料を表1に示されたような組成(重量%基準)になるように組み合わせ、白金るつぼを使用して1600℃の温度で3時間加熱して溶融した。溶融工程では、白金撹拌棒を使用して1時間撹拌することでガラスを均質化した。次いで、溶融ガラスを730℃で徐冷して各実施例のガラスを得た。一方、得られたガラスに対しては、蛍光X線分析を通じてその組成を確認した。
【0054】
また、各実施例のガラスに対する物性として、密度、熱膨張係数、T及びTを次のような方法で測定し、その結果を表1に示した。
【0055】
<密度>
各実施例のガラスに対し、アルキメデスの原理を用いて密度を測定した。
【0056】
<熱膨張係数(CTE)>
各実施例のガラスに対し、膨張計(dilatometer)を使用して平均熱膨張係数を測定した。
【0057】
<T
各実施例のガラスに対し、高温粘度計を使用して粘度を測定し、粘度が10dPasになるときの温度Tを測定した。温度が1600℃以上の場合には、Vogel−Fulcher−Tammann式により計算して求めた。
【0058】
<T
各実施例のガラスに対し、高温粘度計を使用して粘度を測定し、粘度が10dPasになるときの温度Tを測定した。
【0059】
<比較例>
各成分の原料を表2に示されたような組成(重量%基準)になるように組み合わせ、白金るつぼを使用して1600〜1800℃の温度で3時間加熱して溶融した。溶融工程では、白金撹拌棒を使用して1時間撹拌することでガラスを均質化した。次いで、溶融ガラスを730℃で徐冷して各比較例のガラスを得た。
【0060】
また、各比較例のガラスに対する物性として、実施例と同じ方式で密度、熱膨張係数、T及びTを測定し、その結果を表2に示した。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
表1及び表2に示されたように、実施例(実施例1〜10)のガラスは、密度が2.55g/cm未満であり、平均熱膨張係数(CTE)が3.0〜4.5(×10−6/K)であることが確認された。また、実施例のガラスの場合、Tが1600℃未満であり、Tが1250℃未満であることが確認された。
【0064】
一方、比較例(比較例1〜11)のガラスは、実施例に比べて、密度、平均熱膨張係数、T及び/またはTが高いことが測定された。
【0065】
したがって、このような実施例と比較例との比較結果から、本発明によれば、特性の優れたガラス、特にディスプレイ用基板ガラスとしての特性に優れたガラスが得られることが分かる。また、本発明によるガラスはT及びTが低くガラスの溶融性に優れ、ガラスの加工が容易になるだけでなく、加工や溶融工程に必要となるエネルギー及び時間などを節減できることが分かる。
【0066】
以上のように、本発明を限定された実施形態と図面によって説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、当業者によって本発明の技術思想と特許請求の範囲の均等範囲内で多様な修正及び変形が可能であることは言うまでもない。
図1