【文献】
Peter J. de Groot,Grating interferometer for flatness testing,Optics Letters,米国,Optical Society of America,1996年 2月 1日,Vol. 21, No. 3,pp. 228-230
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、目標形状からの光学面のずれを測定する方法および装置において、測定精度を改善した方法および装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、目標形状からの光学試験面のずれを測定する方法を提供する。この方法は、波長λを有する電磁光線の入射ビームを光学試験面に向け、光学試験面と相互作用した測定ビームを生成するステップと、参照ビームを測定ビームに重畳し、参照ビームからの測定ビームの波面ずれを決定することによって、干渉計によって有効な測定を行うステップとを含む。光学試験面は、波面ずれが最小化されるように光学試験面と干渉計の光学構成部材とを整列した最適な整列状態で干渉法的な測定を行った場合に、10×λよりも大きい波面ずれが得られるように構成されている。有効測定中に測定ビームによって干渉計に蓄積された収差は、最適の整列状態で得られる波面ずれがλより小さくなるように光学試験面が構成されている場合に測定ビームによって蓄積されたであろう架空の収差とは異なる。蓄積された収差、すなわち、有効測定中に測定ビームによって蓄積された収差と架空の収差との差は、波面ずれの追跡エラーを引き起こす。さらにこの方法は、追跡エラーを決定するステップと、有効測定の波面ずれから追跡エラーを除去することによって、有効測定の波面ずれを補正するステップとを含む。
【0011】
本発明は、目標形状からの光学試験面のずれを測定するための装置も提供する。この装置は、測定アームを有する干渉計を備え、この測定アームは、電磁光線の入射ビームを光学試験面に向け、光学試験面と相互作用した測定ビームを生成するように構成されている。干渉計は参照ビームを測定ビームに重畳し、参照ビームからの測定ビームの波面ずれを決定することにより、干渉法による有効測定を行うように構成されている。さらに測定装置は評価装置を備え、この評価装置は、追跡エラーを決定し、測定された波面ずれから追跡エラーを除去することによって、測定された波面ずれを補正するように構成されている。追跡エラーは、最適な整列状態で干渉法的測定を行った場合に10×λよりも大きい波面ずれが得られるように光学試験面が構成されている場合に生じる。最適な整列状態では、光学試験面と干渉計の光学構成部材とは、波面ずれが最小化されるように整列される。有効測定中に測定ビームによって干渉計に蓄積された収差は、最適の整列状態で得られる波面ずれがλより小さくなるように光学試験面が構成されている場合に測定ビームによって蓄積されたであろう架空の収差とは異なる。蓄積された収差における差は、波面ずれの追跡エラーを引き起こす。
【0012】
通常は、干渉計は作動前に回転対称的な較正面を用いて較正される。この較正中に、入射ビームの全ての単一光線は較正面に実質的に垂直方向に入射する。較正中の光線の経路は、最適な配列状態で得られる波面ずれが波長λより小さくなるように光学試験面が較正されている場合には、測定ビームを構成する光線の経路に実質的に対応する。
【0013】
しかしながら、上記の較正は光学試験面の測定のために完全に正確ではなく、光学試験面は、干渉計および光学試験面が最適に整列されている場合でさえも、測定の結果、測定光線の波長λの10倍よりも大きい波面ずれが生じるように構成されている。最適に整列されていない場合、波面ずれはさらに大きいであろう。光学試験面のこのような構成により、測定ビームの少なくとも1本の光線は、較正測定中の経路と比較してそれた経路を移動させる。これにより、測定された波面ずれの追跡エラーが生じる。これらの追跡エラーは測定値から除去され、結果として光学試験面の形状の測定精度が改善される。測定光線は、モノクロの波長スペクトルを有していてもよい。この場合、波長λは、モノクロの波長スペクトルの平均波長であってもよい。測定光線が多重線スペクトルを含む場合、波長λは最大強度を有するスペクトル線の波長であってもよい。
【0014】
本発明の例示的な実施形態は、回転対照的な目標形状に適合された入射ビームを有する干渉計を用いて、以下により詳細に説明するように、目標形状が回転対称とは異なっていることを特徴とするいわゆるナノ自由形状面の測定を可能にする。この場合、測定ビームの光線は著しくそれた経路を移動し、大きい追跡エラーをもたらす。追跡エラーの補正により、このようなナノ自由形状面の高精度の形状測定が可能となる。本発明の例示的な実施形態では、さらに回転平均技術の使用が可能となる。この技術では、関連する回転対称的な形状の対称軸に対していくつかの回転位置に光学試験面を配置し、それぞれの回転位置について測定を行う。
【0015】
本発明によるいくつかの例示的な実施形態では、干渉計は、入射ビームの全ての単一光線が較正面に垂直方向に入射するように構成された回転対称的な較正面を用いて較正される。この較正では、それていない経路を移動する光線によって蓄積された収差を決定する。しかしながら、追跡エラーにより、この較正データは正確ではない。追跡エラーの除去による波面ずれの補正は、較正データの「調整」とみなすことができる。一変化態様によれば、較正面は非球面形状を有する。代替的に、較正面は球面形状または平面形状を有していてもよい。
【0016】
本発明による特定の例示的な実施形態では、目標形状は、較正面の対称軸線の方向に回転対称的な較正面からのずれzを有し、
∂z/∂x
i<0.5・N・λ/D
が成り立ち、x
iは、対称軸線に垂直な任意の寸法であり、Nは、参照ビーム、および対称軸線に対して垂直な直径Dを有する光学試験面と相互作用した測定ビームによって生成されたインターフェログラムを記録するために利用できる干渉計のカメラの寸法に沿ったピクセル数であり、λは、電磁光線の波長である。このような目標形状を有する光学試験面は、既に上述のように、本明細書ではナノ自由形状面と呼ぶ。ナノ自由形状面は、回転対称からのずれが、上述のように干渉計の測定力学によって規定されたレベルを超過しない面であると考えられる。パラメータNおよびλのための標準値は、500≦N≦2000、10mm≦D≦600mmである。波長λのための例は、632.8nmおよび532nmである。従って、本発明の例示的な実施形態によれば、∂z/∂x
iは、一変化態様では0.06未満、特に0.03未満、または0.0002未満である。従って、光学試験面に入射する入射ビームの光線は、一実施形態では3°未満だけ、別の実施形態では1°未満だけ、さらに別の実施形態では0.01°だけ、90°とは異なる角度で光学試験面に入射する。
【0017】
本発明によるいくつかの例示的な実施形態では、目標形状は、較正面の対称軸線の方向に回転対称的な較正面からのずれzを有し、
∂z/∂x
i>0.002・N・λ/D
が成り立ち、x
iは、対称軸線に垂直な任意の寸法であり、Nは、参照ビーム、および対称軸線に対して垂直な直径Dを有する光学試験面と相互作用した測定ビームによって生成されたインターフェログラムを記録するために利用できる干渉計のカメラの寸法に沿ったピクセル数であり、λは、電磁光線の波長である。例示的な一実施形態によれば、∂z/∂x
iは0.002より大きく、別の実施形態では0.0001より大きく、8・10
-7より大きい。従って、光学試験面に入射する入射ビームの光線は、例示的な一実施形態では0.01°より大きく、別の実施形態では0.007°より大きく、さらに別の実施形態では0.00005°より大きく90°から逸脱した角度で光学試験面に入射する。
【0018】
本発明によるいくつかの例示的な実施形態では、目標形状は、較正面の対称軸線の方向に回転対称的な較正面からのずれzを有し、勾配差g
xおよびg
yは以下のように定義される:
g
x=max(∂z/∂x)
j−min(∂z/∂x)
j および
g
y=max(∂z/∂y)
j−min(∂z/∂y)
j
xおよびyは、対称軸線に対して垂直な直交方向の寸法であり、jは、目標形状におけるピクセルを示し、光学試験面の目標形状は以下の条件を満たす:
g
x<0.5・N・λ/D および g
y<0.5・N・λ/D
そしてさらに、
g
x>0.002・N・λ/D および/または g
y>0.002・N・λ/D
が成り立ち、Nは、参照ビーム、および対称軸線に対して垂直な直径Dを有する光学試験面と相互作用した測定ビームによって生成されたインターフェログラムを記録するために利用できる干渉計のカメラの寸法に沿ったピクセル数であり、λは、電磁光線の波長である。すなわち、g
xおよびg
yはそれぞれ0.5・N・λ/D未満であり、g
xもしくはg
yは、0.002・N・λ/Dより大きいか、またはg
xおよびg
yはいずれも0.002・N・λ/Dより大きい。例示的な一実施形態によれば、g
xおよびg
yはそれぞれ0.03未満であり、g
xおよびg
yの少なくとも一方は0.0001より大きい。
【0019】
本発明によるいくつかの例示的な実施形態では、較正面に向けられた入射ビームおよび結果として生じた波面ずれが、較正面の2つの異なる傾斜位置それぞれについて干渉計によって測定され、干渉計の長距離追跡パラメータGが次の式:
G=ΔW/Δε
から得られ、ΔWは、2つの異なる傾斜位置について測定した波面ずれの間の差であり、Δεは、2つの異なる傾斜位置の間の傾斜角であり、追跡エラーは、長距離追跡パラメータGと、光線が光学試験面と相互作用した位置における光学試験面の局所的傾斜とを掛け算することによって決定される。局所的傾斜は、光学試験面について測定した波面ずれの対応した局所的フリンジ密度から決定される。上記の長距離追跡パラメータGにより追跡エラーの決定が可能となる。これらの追跡エラーは、主にいわゆる長距離追跡エラーから生じる。
【0020】
本発明によるいくつかの例示的な実施形態では、測定ビームの少なくとも1本の光線は、それた経路で干渉計を通過する。この経路は、最適な整列状態で得られる波面ずれがλより小さくなるように構成されている場合に光線がとる経路からそれている。光学試験面について測定した波面ずれは、測定ビームの伝搬方向に対して垂直な平面における波面ずれの2次元分布であり、測定ビームは、干渉計のいくつかの光学面と相互作用する。それぞれの光学面は、光線によって蓄積された収差を増大させる。それた経路で干渉計を移動する光線が光学干渉計のいずれかの面に入射する位置と、それていないそれぞれの経路を移動した場合に光線が入射する位置との間の距離は、それぞれの干渉計の面に関して、2次元の波面ずれ分布における追跡エラーの最小空間周期より小さい。最小空間周期は、波面ずれ分布にフーリエ変換を実施し、著しい強度を有する最大周波数に対応する波長を選択することにより決定することができる。この関連では、著しい強度とは1%より大きい強度、特に最大強度の5%よりも大きい強度である。上記の特徴を満たす追跡エラーは長距離追跡エラーとみなされる。上述のように、このような長距離追跡エラーは、微分商によって表すことができる。長距離追跡エラーは、特に1mmから光学試験面の直径Dまでの範囲の空間周期の追跡エラーである。
【0021】
本発明によるいくつかの例示的な実施形態では、測定ビームは干渉計のN個の光学面と相互作用し、それぞれの光学面は、測定ビームによって蓄積された収差を増大させる。光学試験面はM個の異なる傾斜位置に連続して配置され、M>Nであり、結果として生じる波面分布を各傾斜位置について測定し、追跡エラーに対する単一光学面のそれぞれの寄与度を算出する。それぞれの寄与度から総追跡エラーを算出することができる。上記アルゴリズムにより、主にいわゆる短距離追跡エラーからなる追跡エラーの決定が可能となる。
【0022】
本発明によるいくつかの例示的な実施形態では、測定ビームの少なくとも1本の光線は、それた経路で干渉計を通過する。この経路は、光学面が最適な整列状態で得られる波面ずれがλより小さくなるように構成されている場合に光線がとる経路からずれている。光学試験面について測定した波面ずれは、測定ビームの伝搬方向に対して垂直な平面における波面ずれの2次元分布である。それた経路で干渉計を移動する光線が光学干渉計のいずれかの面に入射する位置と、それていないそれぞれの経路を移動した場合に光線が入射する位置との間の距離は、それぞれの干渉計の面に関して、2次元の波面ずれ分布における追跡エラーの最小空間周期より大きい。上記の特徴を満たす追跡エラーは、短距離追跡エラーとみなされる。上述のように、このような短距離追跡エラーは、微分商によって表すことはできず、干渉計における単一光学面の寄与度についての情報を必要とする。短距離追跡エラーの主な原因は、干渉計の光学面における微細な面構造、例えばスクラッチ、面欠陥および塵埃粒子などである。短距離追跡エラーは、特に1mm以下、特に500μm以下または100μm以下、および1μm以上、特に5μm以上または10μm以上の空間周期の追跡エラーである。この関連で追跡エラーの空間周期は、上記の意味で著しい強度を有する「波長」である。このような「波長」は、波面ずれ分布にフーリエ変換を実施することによって得られる。短距離追跡エラーは、変化の大きい追跡エラーと呼ぶこともできる。
【0023】
本発明によるいくつかの例示的な実施形態では、追跡エラーは、1mm未満の空間周期、特に500μm未満または100μm未満の空間周期を有する。一変化態様によれば、追跡エラーは、5μm〜1mmの範囲、特に5μm〜500μmの範囲にのみ空間周期を有する。上述のように、このような追跡エラーは、干渉計の内部における光学構成部材の不整合または干渉計に対する光学試験面の不整合または干渉計構成部材の不完全な設計によって生じる場合のあるいわゆる長距離追跡エラーとは対照的に、干渉計の光学面上の微細な面構造によって生じる。
【0024】
本発明によるいくつかの例示的な実施形態では、参照ビームは干渉計で入射ビームから分割され、入射ビームの残りの部分は、干渉計の測定アームを通って移動し、光学試験面と相互作用し、測定ビームは、干渉計の測定アームを通って入射ビームの光路を戻り、干渉計の参照ビームと同じ光路を移動して干渉計カメラでインターフェログラムを形成する。
【0025】
本発明によるいくつかの例示的な実施形態では、光学試験面は、特にマイクロリソグラフィで用いるレンズ面またはミラー面である。一変化形態によれば、光学試験面は、マイクロリソグラフィ用の投影露光装置における投影対物レンズで用いる光学素子の光学面である。本発明の例示的な実施形態による方法および装置は、レンズ系、ミラー系、またはレンズ素子およびミラー素子を含む複合系を測定するために適している。
【0026】
本発明によるいくつかの例示的な実施形態では、目標形状からの光学試験面のずれを1nm未満の精度で、すなわち、1nmよりも良好な精度で測定する。一実施形態によれば、0.5nm未満または0.1nm未満の精度でずれが測定される。このような高水準の精度は、本発明の例示的な実施形態による追跡エラーの補正によって得られる。
【0027】
さらに本発明の例示的な実施形態によれば、上記測定方法を用いて、目標形状に極めて近い形状に作製された光学面を有する光学素子が得られる。従って、本発明の方法を用いて目標形状からの光学面のずれを決定し、決定されたずれを除去するために光学面を機械的に処理する。
【0028】
さらに本発明の例示的な実施形態によれば、光学面を有する光学素子が提供される。光学面は自由形状面として構成され、回転対称的な関数によっては記述することができない目標形状を有する。目標形状は、最適に適合する回転対称面、特に最適に適合する非球面とは異なり、自由形状面において光線、特に結像光線を案内するように構成された使用領域の、自由形状面素子とも呼ばれるそれぞれの目標形状素子における垂線と、非球面のそれぞれの対応した非球面素子における垂線とは最大で70μradの角度をなす。光学面は、1nm未満、特に0.5nm未満または0.1nm未満だけ目標形状とは異なっている。いくつかの例示的な実施形態によれば、垂線と垂線との間の最大角度ずれは、50μrad未満、35μrad未満、またはさらに小さい。
【0029】
このような光学素子は、本発明の例示的な実施形態による測定方法を実施することによって作製することができ、波面ずれは、波面ずれから追跡エラーを除去し、決定されたずれを除去するために光学素子の光学面を機械的に処理することによって補正される。続いて、得られた面を再び測定し、機械的な処理の質を評価する。機械的処理および測定は、目標形状に関して所望の精度を有する光学面を得るために必要なだけ繰り返すことができる。
【0030】
本発明によるいくつかの例示的な実施形態では、光学素子はミラーとして構成されており、光学面はミラーの反射面である。例えば、反射面は、EUV波長領域の光線を反射するように構成してもよい。代替的な例示的実施態様では、光学素子は、レンズとして構成してもよい。
【0031】
本発明によるいくつかの例示的な実施形態では、目標形状は、最適に適合する回転対称面、特に最適に適合する非球面から、光学素子のための光線、特に結像光線の波長よりも大きく逸脱している。
【0032】
本発明によるいくつかの例示的な実施形態では、光学素子は、マイクロリソグラフィ用投影露光装置、特に特にマイクロリソグラフィの投影対物レンズで使用するために構成されている。別の変化態様では、光学素子は、望遠鏡で用いるために構成することができる。
【0033】
さらに本発明の例示的な実施形態によれば、上記光学素子を備える結像光学系が設けられており、結像光学系はマイクロリソグラフィ用の投影対物レンズとして構成される。一変化形態では、光学素子の光学面は、静的な自由形状面として構成されている。静的な自由形状面とは、投影対物レンズにおける投影操作中に能動的に変更されない自由形状面である。
【0034】
さらに本発明の例示的な実施形態によれば、マイクロリソグラフィ用投影露光装置が提供される。投影露光装置は、上記結像光学系、光線、特に結像光線を生成するための光線源、および結像光学系の物体視野に光線を案内するための照明系を備える。
【0035】
さらに本発明の例示的な実施形態によれば、干渉計を使用して、光学試験対象物の光学的有効領域にわたって光学特性の局所的分布を測定する方法が提供される。この方法は、電磁光線の入射ビームを光学試験対象物に向け、光学試験対象物と相互作用した測定ビームを生成するステップを含む。光学試験対象物との相互作用は、ビームの横断面強度分布を変化させる。さらにこの方法は、参照ビームに測定ビームを重畳することにより干渉法的測定を行い、参照ビームからの測定ビームの波面ずれを決定するステップを含む。干渉計を通って移動した測定ビームによって蓄積された収差は、光学試験対象物との相互作用によって断面強度分布が不変のままであった場合に測定ビームによって蓄積されたであろう架空収差とは異なり、蓄積された収差における差は波面ずれのエラーを引き起こす。この方法によれば、さらにエラーが決定され、エラーを考慮に入れて、光学試験対象物の光学有効領域にわたって光学特性の局所的分布が決定される。測定された波面ずれから追跡エラーを除去する方法に関する例示的な実施形態に含まれる特徴をこの方法に適用することができる。
【0036】
このコンテクストで光学有効領域にわたる光学特性の局所的分布は、目標形状からの光学試験面のずれを含まない。従って、光学試験対象物の光学特性の局所的分布を測定する方法は、目標形状から光学試験対象物の光学面のずれを測定するようには構成されていない。
【0037】
本発明の例示的な実施形態によれば、光学試験対象物の光学有効領域にわたる光学特性の局所的分布を測定するための別の装置が提供される。この装置は、電磁光線の入射ビームを光学試験対象物に向け、光学試験対象物と相互作用した測定ビームを生成するように構成された測定アームを有する干渉計を備え、この干渉計は、参照ビームに測定ビームを重畳することにより干渉法的測定を行い、参照ビームからの測定ビームの波面ずれを決定するように構成されている。さらに干渉計は、波面ずれにおけるエラーを決定するように構成された評価装置を備える。エラーは、光学試験対象物と相互作用した場合に、入射ビームの横断面強度分布が変更されることにより生じる。これにより、干渉計を通って移動した測定ビームによって蓄積された収差は、入射ビームと光学試験対象物との相互作用時に横断面強度分布が不変のままであった場合に測定ビームによって蓄積されたであろう架空収差とは異なる。蓄積された収差の差によって波面ずれにエラーが生じる。さらに評価装置は、エラーを考慮に入れて、光学試験対象物の光学有効領域にわたる光学特性の局所的分布を決定するように構成されている。
【0038】
例示的な実施形態によれば、光学特性は、光学試験対象物の屈折率である。別の例示的な実施形態によれば、光学特性は、光学試験対象物の透過または反射特性である。測定された光学特性の局所的分布を評価することによって光学試験対象物の面における面欠陥、かき傷および/または汚れ部分を特定することができる。さらに光学特性は、光学試験対象物の面の偏光特性であってもよい。
【0039】
本発明の例示的な実施形態によれば、目標形状からの光学試験面のずれを測定する別の方法が提供される。この方法は、次のステップ:光学試験面に電磁光線の入射ビーム向け、反射した測定ビームを生成するステップと、参照ビームに測定ビームを重畳することによって干渉法を用いた測定を行い、参照ビームからの測定ビームの波面ずれを決定するステップと、光学試験面と干渉計の光学構成部材とを整列させた状態で測定ビームによって蓄積された収差と、測定ビームが光学試験面における入射ビームの反射によって光学試験面に生成された場合に測定ビームによって干渉計に蓄積された収差との差によって生じる、波面ずれの追跡エラーを決定するステップと、干渉法的測定の波面ずれを、波面ずれから追跡エラーを除去することによって補正するステップとを含む。上記コンテクストにおいて光学試験面と干渉計の光学構成部材との整列は、光学試験面と光学構成部材とが干渉法的測定のための最適に整列しているような整列を含んでいてもよい。この最適な配列状態では、波面ずれは最小化される。さらに、参照ビームの波面形状を有する光学試験面を測定する場合に得られる波面ずれが電磁光線の波長λよりも小さくなるように、特に0.1λよりも小さくなるように整列を行ってもよい。換言すれば、干渉計および/または光学試験面の不整合によって生じる波面ずれは、λまたは0.1λより小さい。この測定方法の他の例示的な実施形態は、上記の測定方法および測定装置の特徴を含んでいてもよい。
【0040】
本発明による方法の上記の例示的な実施態様に含まれる特徴を本発明による装置に適用することができ、またその逆もいえる。従って、結果として得られる装置の例示的な実施形態は、本発明の開示内容によって明確にカバーされる。
【0041】
本発明の上記態様ならびに他の態様は、概略的な図面を参照した本発明の例示的な実施形態の以下の詳細な説明によりさらに明らかとなる。
【発明の効果】
【0042】
目標形状からの光学面のずれを測定する方法および装置において、特に光学試験面の目標形状が回転対称から逸脱している場合に十分なずれ測定の精度が得られる方法および装置が提案される。
【発明を実施するための形態】
【0044】
後述する本発明の例示的な実施形態において、機能および構造が類似した構成部材には、できるだけ同じ、または類似した参照番号を付す。従って、特定の例示的な実施態様における個々の構成部材の特徴を理解するために、本発明の他の例示的な実施形態または発明の概要の説明を参照されたい。
【0045】
図1は、本発明による例示的な実施形態の干渉法的な測定装置10を示す。測定装置10は、光学試験対象物38の目標形状からの光学試験面36のずれを決定するために適している。光学試験対象物38は、例えばマイクロリソグラフィ用投影露光装置の投影対物レンズに用いる光学レンズまたはミラーの形態であってもよい。光学試験対象物38は、図示しないホルダーによって取り付けられる。
【0046】
干渉法的な測定装置10は、光線源12、干渉計22および評価装置48を備える。光線源12は、電磁光線14を生成し、このために、レーザー、例えばレーザビームを生成するためのヘリウム・ネオン・レーザーを備える。電磁光線14は、干渉法的測定を行うために十分に干渉性の光線を備える。ヘリウム・ネオン・レーザーの場合、電磁光線14の波長は、約633nmである。しかしながら光線14の波長は、可視および非可視の波長領域の他の波長を有していてもよい。
【0047】
電磁光線14のレーザビームはレーザー-ファイバーインタフェース16に向けられ、このレーザー-ファイバーインタフェース16により、光線14は単一モードの光ファイバー18に供給される。ファイバー出口20は、干渉計22のコリメータ24の焦点に配置される。以下では入射ビーム28と呼ぶ、ファイバー18を出た光線14は、コリメータによって平面波に変換される。平面波として構成された入射ビーム28は、平面的な目標形状を有する光学試験面36を測定するために適している。しかしながら、平面形状は、本発明の例示的な実施形態によって試験すべき目標形状の一実施例にすぎない。もちろん他の目標形状も試験することができる。これには、例えば、光学試験面36と相互作用する前に、ビームを形成する適宜な光学素子を、入射ビーム28のビーム経路に挿入することによって、入射ビーム28の波面をそれぞれの目標形状に対応して適合させる必要がある。このようなビームを形成する光学素子は、例えば球面状波面を形成するためのレンズであってもよい。光学試験対象物との相互作用は、光学試験対象物38の面36における入射ビーム28の反射の形態であってもよいし、または光学試験対象物38における入射ビーム28の透過の形態であってもよい。後者の場合、反射器を光学試験対象物38の後方に配置することができ、これにより、ビームを反射させて光学試験対象物38に戻し、反対方向に透過させる。結果として生じる測定ビーム34は、この場合、2回、光学試験面36と相互作用したことになる。
【0048】
入射ビーム28は、ビームスプリッタ26によって、フィゾー面32aを有するフィゾー素子32に向けられる。入射ビーム28の光線の一部は、参照ビーム30としてフィゾー面32aで反射される。フィゾー素子36を通過した入射ビーム28の光線は、干渉計22の測定アーム33で干渉計22の光軸23に沿ってさらに伝搬し、光学試験面36に入射する。光軸23は、
図1の座標系のz-方向に延在する。
【0049】
上記のように、平坦ではない目標形状を有する光学試験面36を、図示の実施例のように本発明の例示的な実施形態により調査することもできる。目標形状の実施例は、球面形状および非球面形状を含む。非球面状の目標形状が、以下で言及する、球面からのナノ自由形状面のずれを超過する場合、例えば、対応して構成した図示しない回折素子をフィゾー素子32と光学試験対象物38との間に配置することによって入射ビーム28の波面を目標形状に適合させることができる。このような回折素子は、コンピュータにより生成したホログラム(CGH)の形態であってもよい。
【0050】
入射ビーム28は、自動コリメーションで光学試験面36に入射する。光学試験面36と相互作用した後に、入射ビーム28は測定ビーム34と呼ばれ、この測定ビーム34は測定アーム33で入射ビーム28とは反対方向に伝搬し、さらに参照ビーム30と同じ光路でビームスプリッタ26、コリメータ40、開口42および接眼レンズ44を通過し、接眼レンズ44にはCCDカメラの形態の干渉計カメラ46が続く。測定ビーム34および参照ビーム30は、干渉計カメラ46の検出面で、インターフェログラムとも呼ばれる干渉パターンを生成する。検出面は、
図1の座標系によるx-y面に延在する。インターフェログラムは評価装置48によって評価され、測定ビーム34と参照ビーム30との間の波面ずれを計算する。波面ずれは、光軸23に対して垂直な平面における波面ずれの2次元分布である。目標形状からの光学試験面36のずれは、波面ずれから推論することができる。
【0051】
測定装置10の作動前に、干渉計22は、
図1による光学試験対象物38の代わりに配置された回転対称的な較正面を使用して較正される。回転対称的な較正面は、入射ビーム28の全ての単一光線が較正面に垂直に入射するように構成される。測定すべき目標形状に応じて、較正面は、平面状、球面状または非球面状の形状を有することができる。この較正手順では、対応する波面ずれは、干渉計によって生じたエラーに起因すると考えられる。この「較正波面ずれ」は評価手段48に記憶され、それぞれの光学試験対象物38のために続いて測定された波面ずれから減算される。
【0052】
光学試験面の目標形状は回転対称的な較正面からそれており、波面ずれが最小化されるように光学試験面と干渉計の光学較正部材が整列した最適な配列状態で干渉法的測定を行った場合に10×λより大きい波面ずれが得られる。これらの必要条件を満たしている目標形状の実施例は、以下に詳述するように、いわゆるナノ自由形状面である。測定ビーム34の単一光線は、較正測定時の対応した光線と比較して、それた経路で干渉計22を移動する。それた経路を移動するこれらの光線の1本を
図1に示し、入射ビーム28の光線である場合には参照符号28aを付し、測定ビーム34の対応した光線である場合には参照符号34aを付している。
【0053】
光線28aは、面垂線37から傾斜角εだけそれた角度で光学試験面36に入射する。換言すれば、光線28aの伝搬方向は、光学試験面36と相互作用する位置で傾斜角εだけそれている。
図1に示した実施例では、光線28aは光学試験面36で反射され、34aで示した反射された光線はそれた経路で干渉計を通過する。それた経路は、実質的に90°で光学試験面36に入射した場合に光線がとる経路に対してずれている。この光線は、いわば、それていない経路をとるであろう。これは、最適な整列状態で得られる波面ずれがλよりも小さくなるように光学試験面が構成された場合である。この場合、光線28aは、本質的にそれ自体に反射される。従って、光線34aのそれていない仮想の経路は、干渉計22の測定アーム33における光線28aの経路に反対方向と、これに続く参照ビーム30のそれぞれの光線30aの経路に対応する。
【0054】
図1に図示したように、それた経路を通る光線34aは、多数の干渉計の面S
1〜S
9を通過する。S
1およびS
2はフィゾー素子32の前面および後面であり、S
3,S
4,S
5はビームスプリッタの面であり、S
6およびS
7はコリメータの前面および後面であり、S
8およびS
9は、接眼レンズ44の前面および後面である。干渉計のそれぞれの面S
1〜S
9で、光線34aは収差を蓄積する。しかしながら、光線34aはそれた経路を移動するので、光線34aは、それていない経路を移動した場合に光線が通過したであろう位置と比較して異なった位置で干渉計の面S
1〜S
9を通過する(参照光線30aの経路と比較のこと)。干渉計の面S
1〜S
9における収差は横断面にわたって変化するので、それた経路を移動した光線34aによって蓄積された収差は、それていない経路を移動した場合に光線34aによって蓄積された収差とは異なる。
【0055】
従って、光線34aの蓄積された収差によって引き起こされる測定された波面ずれのエラーは、それていない経路を移動した場合に光線により蓄積された収差によって引き起こされるエラーとは異なる。しかしながら、干渉計22は、それていない経路を移動した光線によって蓄積された収差によって生じた波面エラーに対して較正される。従って、較正は限られた有効性しか有していない。
【0056】
このエラーずれを追跡エラーΔW
R(x,y)と呼ぶ。
装置をわずかに歪めるために追跡エラーΔW
R(x,y)を次のように近似することができ:
W
i(x,y)は、波面ずれに対する干渉計の面S
iの寄与分であり、ε
xおよびε
yは、光学試験面36の傾斜角をそれぞれの座標xおよびyにおいてxおよびyで表し、K
iは干渉面S
iにおける光線シフトについての剪断係数(傾斜角εにつき光線34aの側向シフトを規定する)であり、例えばK
i・ε
yは、干渉系の面S
7の例として
図1に示したように、y方向の光線30aと比較した光線34aのシフトΔ
yを表す。
【0057】
光学試験面36がいわゆるナノ自由形状面の場合には、追跡エラーは特に大きい。ナノ自由形状面の目標形状は、回転対称的な形状に近づけられる。しかしながら、目標形状は、対応する回転対称的な形状に較正された干渉計を用いて実際の面形状を測定することがまだ可能である程度に、回転対称とは異なっている。従って、回転対称からのナノ自由形状面のずれは、干渉計の測定力学によって規定されるレベルに制限されている。
【0058】
詳細には、ナノ自由形状面の形態の光学試験面36の目標形状は、干渉計22の光軸23の方向に回転対称的な較正面からのずれzを有し、勾配∂z/∂x
iは0.5・N・λ/Dより小さく、0.002・N・λ/Dより大きい。この場合、x
iはxまたはyであり、Nは直径Dを有する光学試験面によって生成されるインターフェログラムを記録するための干渉計カメラ46の寸法に沿って利用できるピクセル数であり、λは電磁光線14の波長である。パラメータNおよびλのための標準値は、500≦N≦2000、10mm≦D≦600mmである。波長λの例は、632.8nmおよび532nmである。例示的な一実施形態によれば、∂z/∂x
iは0.0002より大きく、別の例示的な実施形態によれば、0.0001より大きく、8・10
−7より大きい。従って、入射ビームの光線は、例示的な一実施形態では0.01°よりも大きく、別の例示的な実施形態では、0.007°よりも大きく、さらに別の例示的な実施形態では、0.00005°よりも大きく90°からずれた角度で光学試験面に入射する。
【0059】
本発明によるいくつかの例示的な実施形態では、目標形状は、光軸23の方向に回転対称的な較正面からのずれzを有し、勾配差g
xおよびg
yは以下のように規定される:
g
x=max(∂z/∂x)
j−min(∂z/∂x)
j および
g
y=max(∂z/∂y)
j−min(∂z/∂y)
j (2)
xおよびyは、
図1に示す座標系による寸法であり、jは、目標形状におけるピクセルを示し、光学試験面の目標形状は以下の条件:
g
x<0.5・N・λ/D および
g
y<0.5・N・λ/D (3)
そしてさらに、
g
x>0.002・N・λ/D および/または
g
y>0.002・N・λ/D (4)
を満たし、Nは、干渉計カメラ46の寸法および対称軸線に対して垂直な直径Dを有する光学試験面と相互作用した測定ビームに沿ったピクセル数であり、λは、電磁光線の波長である。すなわち、g
xおよびg
yはそれぞれ0.5・N・λ/D未満であり、g
xおよびg
yの何れか一方は、0.002・N・λ/Dより大きいか、またはg
xおよびg
yの双方はいずれも0.002・N・λより大きい。例示的な実施形態によれば、g
xおよびg
yはそれぞれ0.03未満であり、g
xおよびg
yの少なくとも一方は0.0001より大きい。
【0060】
本発明の例示的な実施形態によれば、波面ずれにおける追跡エラーΔW
R(x,y)は、光学試験面36、特にナノ自由形状面の測定時に決定される。さらに、測定された波面ずれは、波面ずれから追跡エラーを除去することによって補正される。これにより、干渉計22の較正が干渉計22の測定ビーム34の実際の光路分布に合わせて調整されるので、光学試験面の形状をより正確に測定し、作製することが可能となる。本発明の例示的な実施形態による追跡エラーの補正により、回転対称的な較正面に対して較正された干渉計を用いて、既に詳述したナノ自由形状面のような非回転対称的な目標形状を有する物体の作製が可能となる。このように、回転平均技術を用いて非回転対称的な光学試験面36を測定することができる。この技術では、光学試験面36は干渉計の光軸23に対していくつかの回転位置に配置され、これらの回転位置それぞれについて測定を行う。回転平均技術により、測定精度のさらなる改善が可能となる。
【0061】
本発明の例示的な実施形態によれば、追跡エラーの決定は、追跡エラーが長距離追跡エラーであるか、または短距離エラーであるかに応じて異なるように行う。長距離追跡エラーは、それた経路で干渉計22を移動する測定ビームの光線34aが干渉計の面S
1〜S
9のいずれかに入射する位置と、対応した参照ビームの光線30aがそれぞれの干渉計の面に入射する位置との間の距離が、それぞれの干渉計の面S
1〜S
9について、干渉計カメラ46によって記録した波面ずれ分布における追跡エラーの最小空間周期よりも小さい場合に生じる。追跡エラーの最小空間周期は、2次元の波面ずれ分布にフーリエ変換を行い、周波数分布を得ることによって決定される。周波数分布における最大周波数に対応する波長は、追跡エラーの最小空間周期である。
図2は、長距離追跡エラーを含む波面ずれ分布の例を示す。長距離追跡エラーは、特に1mmから光学試験面の直径Dまでの範囲の空間周期の追跡エラーである。このような長距離追跡エラーは、例えば干渉計22の内部における光学較正部材26,32,40および44の不整合または干渉計22に対する光学試験面36の不整合によって生じる場合がある。
【0062】
短距離追跡エラーは、それた経路で干渉計22を移動する測定ビームの光線34aが干渉計の面S
1〜S
9のいずれかに入射する位置と、対応した参照ビームの光線30aが干渉計のそれぞれの面に入射する位置との間の距離が、それぞれの干渉系の面S
1〜S
9について、干渉計カメラ46によって記録された波面ずれ分布における追跡エラーの最小空間周期よりも大きい場合に生じる。短距離追跡エラーを含む波面ずれ分布の例を
図4に示す。
【0063】
短距離追跡エラーの主な原因は、干渉計22の光学面S1〜S9の微細な面構造、例えばスクラッチ、面欠陥および粉塵粒子などである。短距離追跡エラーは、特に1mm以下、特に500μm以下または100μm以下、および1μm以上、特に5μm以上または10μm以上の空間周期の追跡エラーである。
【0064】
長距離追跡エラーは、後述するように長距離追跡パラメータを微分商とすることによって決定することができる。長距離追跡エラーは線形挙動を示し、光学干渉計の面S
1〜S
9それぞれに必ずしも再び関連づけられる必要はない。長距離追跡エラーを決定するためには、まず上記の長距離追跡パラメータGが決定される。これは、光学試験面36または好ましくは回転対称面であってよい較正面を、
図1の光学試験面36において、傾斜していない1つの位置および2つの傾斜位置に続いて配置することによって行われる。回転対称面を使用した場合、較正面は傾斜していない位置では追跡エラーを全く生じさせない。傾斜位置は、x傾斜位置とも呼ぶ第1傾斜位置、およびy傾斜位置とも呼ぶ第2傾斜位置を含む。x傾斜位置では、較正面は、傾斜していない位置に対してx方向に傾斜角Δε
xだけ傾斜している。すなわち、較正面は、y軸を中心として傾斜角Δε
xだけ回動される。y傾斜位置では、較正面は、傾斜していない位置に対してy方向に傾斜角Δε
yだけ傾斜している。すなわち、較正面は、x軸を中心として傾斜角Δε
yだけ回動される。
【0065】
結果として生じた波面ずれは、3つの位置それぞれについて干渉計22によって測定される。続いて、傾斜していない位置およびx傾斜位置についてのそれぞれの波面ずれ間の差ΔW
x(x,y)、ならびに傾斜していない位置およびy傾斜位置についてのそれぞれの波面ずれ間の差ΔW
y(x,y)を計算する。そこから、追跡微分商とも呼ぶ長距離追跡パラメータGのxおよびy成分G
xおよびG
yを次の式により計算する:
G
x(x,y)=ΔW
x(x,y)/Δε
x (5)
G
y(x,y)=ΔW
y(x,y)/Δε
y (6)
長距離追跡パラメータGの構成成分G
xおよびG
yは、較正データセットとしての評価手段48に保存される。
【0066】
図1による測定装置10を使用して所定の光学試験面36の形状を測定する場合に、まず、干渉計カメラ46によって記録したインターフェログラムを分析する。ナノ自由形状面について記録したこのようなインターフェログラムの例を
図3に示す。これにより、インターフェログラムにおける局所的なフリンジ密度から光学試験面36の局所的傾斜ε
x(x,y)およびε
y(x,y)を決定する。これは、対応した波面ずれ分布から∂W(x,y)/∂xおよび∂W(x,y)/∂yを決定し、ε
x(x,y)およびε
y(x,y)を次のように計算することによって行う:
mは干渉計22の倍率であり、あらかじめ決定される。
【0067】
続いて局所的な追跡エラーΔW
R(x,y)を次のように計算する:
ΔW
R(x,y)=G
x(x,y)ε
x(x,y)+G
y(x,y)ε
y(x,y)(9)
【0068】
次いで所定の光学試験面36について測定した波面ずれ分布から追跡エラーΔW
R(x,y)を減算する。これにより、追跡エラーが除去された状態で補正された波面ずれ分布が得られる。
【0069】
測定した波面ずれに短距離追跡エラーが生じた場合、以下の補正アルゴリズムを実行する。上述のように、この場合、k
i・εは、光学干渉計の面S
1〜S
9それぞれについてのエラー波長よりも大きい。全体的な追跡エラーは非線形挙動を示すが、単一の干渉計の面の寄与は線形である。短距離追跡エラーを示す波面ずれ分布の実施例を
図4に示す。
【0070】
N個の干渉計の面における短距離追跡エラー寄与を決定するために、M個の波面測定を行う。M>Nである。M個の波面測定それぞれについて、光学試験面36はx方向またはy方向に異なる傾斜で配置されている。
測定j=1…Mでは、方程式(1)は、方程式(10)となる:
【0071】
例えばビーム計算プログラムを用いた事前の計算によって、またはΔWR
(j)の分析によって、それぞれの面について剪断係数k
iがわかっている場合、異なる傾斜を有する一連のM個の測定について、単一の干渉計の面S
iの追跡エラー寄与度W
i(x,y)を決定することができる。寄与度W
i(x,y)を決定するための2つの例示的な実施形態を以下に説明する。
【0072】
第1の例示的な実施形態によれば、寄与度は反復式に決定される。第1の例示的な実施形態は、ΔW
R(j)波面エラーが剪断量
だけ変位され、M個のエラー全ての平均値を計算した場合に、寄与度W
i(x,y)のみが積極的に加算され、r≠iの場合、寄与度W
r(x,y)はほとんど相殺するという認識に基づいている。
これにより、W
i(x,y)のための近似値が得られる。
これにより、次の反復的な挙動を推測することができる:
開始時:i=1…nについて:W
i(0)(x,y)≡0
反復規則(n)→(n+1):
がもはや小さくならない場合には反復は停止される。
【0073】
寄与度W
i(x,y)を決定するための第2の例示的な実施形態により、対応した方程式系を解く。
ここで積分
を全てのW
i(x,y)を変化させて最小化した場合、一次方程式系が生じ、その解は寄与度W
i(x,y)となる。
【0074】
本発明の例示的な実施形態によれば、測定装置10は、自由形状面として構成された光学素子を作製するために用いられ、この光学素子の目標関数は回転対称的な関数によって記述することができない。このような光学素子の実施例は、
図6に示す投影対物レンズ107の第1ミラーM1であり、以下に詳細に説明する。このような光学素子を作製するために、面が目標形状にほぼ適合するように光学素子を作製する。その後、上記の本発明の方法を実施する測定装置10によって、目標形状からの光学面のずれを決定する。その後、光学面を機械的に処理し、決定されたずれを除去する。次いで、得られた面を再び測定し、機械処理の質を評価する。機械的処理および測定は、目標形状に関して所望の精度を有する光学面を得るために必要なだけ繰り返すことができる。
【0075】
図5は、上記の本発明の例示的な実施形態による測定方法によって作製した少なくとも1つの光学素子を含むマイクロリソグラフィ用の投影露光装置100を示す。投影露光装置100は、光線103を生成するための光線源102を備えている。光線源102は100nm以下の波長範囲、特に5nm〜20nmの波長範囲、特に5nm〜10nmの波長範囲の光線を生成するEUV光線源である。光線源102は、特に13.5nmの波長または6.9nmの波長を生成する光線源であってもよい。他のEUV波長も可能である。一般に、任意の波長、例えばマイクロリソグラフィで使用され、適切なレーザー光源および/またはLED-光源を利用できる可視波長またはその他の波長(例えば365nm、248nm、193nm、157nm、129nm、109nm)も、投影露光装置100の内部で照明光線を案内することができる。照明光線103のビーム経路を
図5に極めて概略的に示す。
【0076】
光線源102から物体視野104(
図10参照)に照明光線103を案内するために、物体平面105に照明光学系106が設けられている。物体視野104は、結像光学系とも呼ぶ投影対物レンズ107によってあらかじめ規定された縮小率で像平面109の像視野108に結像される(
図6参照)。投影対物レンズ107は、例示的な一実施形態では
図6の示すように構成されている。
図6に示した投影対物レンズ107は、係数4で物体視野104を縮小する。
【0077】
他の縮小率、例えば5x、6xまたは8xならびに8xより大きい縮小率または4xより小さい縮小率、例えば2xまたは1xも可能である。像平面109は、
図6に示す例示的な実施形態では物体平面105に平行して配置されている。ここでは、レチクルとも呼ばれる反射マスク110において、物体視野104に一致する領域が結像される。
【0078】
投影対物レンズ107による結像は、基板ホルダー112によって保持されたウェーハの形態の基板111の表面で行う。
図5は、反射マスク110と投影対物レンズ107との間の照明光線103の光線束113を概略的に示す。光線束113は投影対物レンズ107に入射している。さらに
図5は、投影対物レンズ107と基板111との間の照明光線103の光線束114を示す。光線束114は投影対物レンズ107から出射している。投影対物レンズ107によって結像された照明光線103は、結像光線とも呼ばれる。
図6に示した例示的な実施態様における投影対物レンズ107の像視野サイズ開口数は、0.36である。これは、
図5に尺度で示されていない。
【0079】
投影露光装置100ならびに投影対物レンズ107の例示的な実施形態の説明を容易にするために、図面に示した構成部材のそれぞれの位置関係を規定することができるデカルトのxyz座標系を図面に示す。
図5では、x-方向は図平面に対して垂直方向に延在している。y-方向は、右側に、z-方向は下方に延在している。
【0080】
投影露光装置100は、スキャナ・タイプのものである。反射マスク110および基板111は、投影露光装置100の作動時にy-方向にスキャンされる。基板111の露光間に反射マスク110および基板111をy-方向に段階的に変位させるステッパー・タイプの投影露光装置100も可能である。
【0081】
図6は、投影対物レンズ107の例示的な実施形態の光学設計を示す。ここでは3本の単一光線115それぞれのビーム経路を、
図6に示すy-方向に相互に離間させた3つの物体視野点について示す。これら3つの物体視野点のうちの1つに関連した3本の単一光線115は、3つの物体視野点のための3つの異なる照明方向に関連している。主ビーム116は、投影対物レンズ107の瞳平面117,118の瞳の中心を通過する。物体平面105からスタートして、これら主ビーム116は、まず収束性に伝搬する。これは、以下では投影対物レンズ107の入射瞳の正の後側焦点距離とも称する。
図6よる投影対物レンズ107の瞳平面117における入射瞳は、投影対物レンズ107の範囲内に位置する。
【0082】
図6に示す投影対物レンズ107は全部で6つのミラーを備える。これらのミラーには、物体視野104からスタートして、単一光線115の結像ビーム経路の順序でM1〜M6の符号を付す。
図6には、ミラーM1〜M6の計算による反射面を示す。ミラーM1〜M6は、実際に使用される反射面よりも概して大きい。
【0083】
ミラーM1,M2,M4およびM6は、凹面鏡として構成されている。ミラーM3およびM5は、凸面鏡として構成されている。
【0084】
一方のミラーM1とM4、および他方のミラーM3とM6とは、反射面の配向に関して、背中合わせに配置されている。
【0085】
入射瞳面117は、
図5に示す投影対物レンズ107のためのミラーM2の領域に位置する。ミラーM4とM5との間には、中間像面119が位置する。射出瞳面118は、ミラーM5とM6との間の結像ビーム経路に配置されている。
【0086】
図6に示す投影対物レンズ107の光学データを以下の表に示す。この表は幾つかの下位の表に分割される。
【0087】
ミラーM1〜M6の単一反射面の正確な形状は、基本非球面とも呼ぶ回転対称的な参照非球面およびXY-多項式の形の自由形状の項の合計から生じる。値Yは、それぞれのミラーM1〜M6の位置に応じて、第2の下位表の最後に挙げた偏心値Dy0だけ変化する。
【0088】
自由形状面からのずれが最小限となるように回転対称的な参照非球面を選択することができる。この場合、参照非球面は、同時に、自由形状面の最適に適合した非球面である。回転対称的な参照非球面はこれとは異なるように選択することもでき、従って最適に適合した非球面と同一である必要はない。基本非球面は、次の非球面方程式によって算出される:
xおよびyは、基本非球面の利用領域の外部に位置していてもよい座標原点から始まる基本非球面上の座標である。Zは基本非球面の矢印高さであり、RDYは基本非球面の半径、従って、座標原点における面曲率の逆数であり、CCYは円錐パラメータである。
【0089】
以下の第1の下位テーブルにおける値「間隔」は、それぞれの次の構成部材までの間隔を示す。第2の下位テーブルにおいて、値「係数」は、基本非球面方程式(14)の係数c
kのための指数kを示す。
【0090】
次の自由形状の項が加算される:
z
Fは、参照非球面に対する自由形状の項の矢印高さを表す。自由形状の項のy-座標は、参照非球面のy-座標に対して偏心値Dy0だけ変位される。
【0091】
図6に示す投影対物レンズ107の例示的な実施形態は、折り畳まれていない結像ビーム経路で示されている。投影露光装置にそれぞれの投影対物レンズ107を配置するために必要な空間条件に応じて、ミラーM1〜M6の間のビーム経路に付加的な折り畳みミラーを配置することができることを理解されたい。
【0092】
上記表から明らかなように、投影対物レンズ107の6つのミラーM1〜M6は全て、回転対称関数によって記述できない自由形状面として構成されている。ミラーM1〜M6の少なくとも1つのミラー、特に全てのミラーは、追跡エラーを補正する上記測定方法を用いて作製される。投影対物レンズ107の他の例示的な実施形態も可能であり、ミラーM1〜M6の少なくとも1つのミラーは、このような自由形状反射面を備える。これにより、少なくとも1つの反射面は、回転対称関数によって記述できない静的な自由形状面として構成されている。このコンテクストでは、静的とは、投影露光装置100の作動中または作動中断時に自由形状面の形状を意図的に変更できないという事実をいう。
【0093】
図7は、例えば結像光線103を案内するように構成されたミラーM1の自由形状面において利用領域の自由形状面素子120を、ずれに関して著しく誇張して極めて概略的に示す。さらに
図7は非球面121を示す。この非球面は自由形状面の最適に適合する非球面である。最適に適合する非球面21は、回転対称的な関数によって、例えば、既に述べた非球面方程式によって表すことができる。
【0094】
さらに
図7は、図示の自由形状面素子120の座標x
0,y
0の周囲の非球面素子122の領域における最適に適合する非球面121の垂線FNBを示す。従って、非球面素子122の垂線FNBは自由形状面120に対応する。矢印高さzに関して同じ座標x
0,y
0からスタートして、しかしながら、自由形状面素子120からスタートして、
図7は、自由形状面素子120の垂線FNをも示す。2つの垂線FNBおよびFNは、最大で70μradの角度αをなす。
【0095】
この最大ずれは自由形状面素子と非球面素子とのそれぞれの対についてあてはまり、ミラーM1〜M6の自由形状面の利用領域全体にわたってこれに対応している。これらの利用領域は、使用可能面とも呼ばれる。全てのミラーM1〜M6の光学的に利用領域は、結像光線103を通過させる開口を有しておらず、従って、覆い隠されていない。
【0096】
図8は、ミラーM1の自由形状面における利用領域123の矢印高さ-ずれΔzを示す。領域123は、ほぼ豆または腎臓の基本形状を備える。従って、それぞれのy,x-点において実際に利用された自由形状面のz-値からの基本非球面のz-値のずれが描写される。
【0097】
従って、利用領域123の収縮部124の領域では、利用領域123の最小のy-値、および中間のx-値で、最適に適合した非球面からの自由形状面の矢印高さ-ずれは、約0.5μmの値で最大となる。他の至るところで、利用領域123のエラー高さずれはより小さく、収縮部124の周辺でアーチ形状に延在する広い領域125ではゼロに近い。
【0098】
500nm未満の波長が結像光線103のために使用される場合には、自由形状面は、最適に適合する非球面から最大で照明または結像光線103の波長よりも大きくそれている。
【0099】
図9は、ミラーM1の利用領域123のためにも、2本の垂線FN,FNBの相互の最大角度ずれを示す。この角度ずれは、約15μradの値で利用領域123の反対側に配置された2つの境界領域126,127における最大および最小のx-値で最大となる。他の至るところで、垂線FN,FNB間の角度、すなわち、最適に適合する非球面からの自由形状面のずれの最大勾配は、これよりも小さい。収縮部124の領域ならびに収縮部124の周辺における、
図8のアーチ形状の領域125に比べて幾分小さく広がっているアーチ形状の領域128では、最適に適合する非球面からの自由形状面のずれの最大勾配は再びゼロに近くなる。
【0100】
図10は、投影対物レンズ107の物体視野104の例示的な形状を拡大して示す。像視野108は、縮小されていること以外には正確に同じ形状を有する。視野104は、2つの円弧129,130によって制限されたアーチ状の視野形状を有する。2つの円弧のうち内側の円弧、すなわち円弧129は半径Rを有する。さらに物体視野104は、円弧129,130の2つの端部をそれぞれ接続し、y-軸線および垂線133に平行に延在する2本の境界線131,132によって制限される。2本の境界線131、132は、距離XS、いわゆるスキャン・スリット幅だけ相互に離間されている。2つの円弧129、130は、距離YS、いわゆるスキャン・スリット長さだけ相互に離間されている。
【0101】
図6に示す投影対物レンズ107の像視野108は、XS=26mm(スキャン・スリット幅)、およびYS=2mm(スキャン・スリット長さ)の寸法を有する。
【0102】
図1に示す測定装置10は、目標形状から光学試験面36のずれを測定する代わりに、またはこれに加えて、さらに光学試験対象物38の光学有効領域にわたって光学特性の局所的分布を測定するように構成されていてもよい。測定すべき光学特性は、光学試験対象物の屈折率、透過特性または反射特性であってもよい。測定装置10は、光学特性の測定された局所的分布を評価することによって光学試験対象物38の光学試験面36における面欠陥、かき傷および/または汚れ部分を特定するように構成されていてもよい。さらに、電磁光線14として偏光光を使用する場合には、光学特性は光学試験対象物38の光学試験面36の偏光特性であってもよい。
【0103】
光学特性の局所的分布を測定するために測定装置10を作動する場合、入射ビーム28は光学試験対象物38に向けられ、光学試験対象物38と相互作用した測定ビーム34を生成する。光学試験対象物との相互作用は、光学試験対象物38の光学試験面36における入射ビーム28の反射の形態で、または光学試験対象物38における入射ビーム28の透過の形態であってよい。
後者の場合、反射器を光学試験対象物38の後方に配置し、ビームを反射させて光学試験対象物38に戻し、再び反対方向に光学試験対象物38を透過させてもよい。この場合、結果として生じる測定ビーム34は、光学試験対象物38と2回相互作用したことになる。
【0104】
光学試験対象物38との相互作用は、いずれにせよビームの横断面強度分布を変更させる。ビームの測定によって光学干渉計の面S
1〜S
9で蓄積された収差は、光学試験対象物との相互作用によって横断面強度分布が不変のままであった場合に測定ビームによって蓄積されたであろう仮想収差とは異なる。干渉計の面S
2〜S
9で蓄積された仮想収差は、参照ビーム30によって蓄積された収差に対応する。測定ビームによって実際に蓄積された収差と仮想収差との間の差によって波面ずれにエラーが生じる。
【0105】
このエラーは、追跡エラーの決定に関して上述したアルゴリズムに類似して決定される。決定したエラーから、光学試験対象物の光学有効領域にわたる光学特性の局所的分布を決定する。光学試験対象物の光学有効域にわたる屈折率、透過または反射特性の局所的分布をこのようにして決定する。そこから光学試験対象物の面における面欠陥、かき傷および/または汚れ部分を特定することができる。偏光された光線14を使用する場合、光学試験面の偏光特性の局所的分布を決定することができる。
【0106】
さらなる例示的な実施形態では、測定された波面ずれ分布は、上記のエラーを除去し、補正された波面ずれから、目標形状からの光学試験面のずれを決定することによって補正される。
【0107】
例示的な実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明はこれらの例示的な実施形態に制限されない。当業者は、添付の請求項に記載の本発明の特許請求の範囲およびこれと等価のものから逸脱することなしに、変化態様および改良に想到するであろう。