(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5798774
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】電極体
(51)【国際特許分類】
G01N 27/414 20060101AFI20151001BHJP
【FI】
G01N27/30 301U
【請求項の数】5
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2011-81080(P2011-81080)
(22)【出願日】2011年3月31日
(65)【公開番号】特開2012-215469(P2012-215469A)
(43)【公開日】2012年11月8日
【審査請求日】2014年1月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000155023
【氏名又は名称】株式会社堀場製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100113468
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(72)【発明者】
【氏名】山内 悠
(72)【発明者】
【氏名】大川 浩美
(72)【発明者】
【氏名】上田 康史
【審査官】
櫃本 研太郎
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2005/0072672(US,A1)
【文献】
特開2010−101864(JP,A)
【文献】
米国特許第05833824(US,A)
【文献】
特開2001−235446(JP,A)
【文献】
実開平07−036054(JP,U)
【文献】
特開平09−005287(JP,A)
【文献】
特開2002−228628(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/414
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定軸に沿って延びる棒状のボディと、
表面と裏面との間を貫通する貫通孔が形成されており、前記ボディの先端部に取り付けられる基板と、
前記ボディ及び前記基板の間に設けられ、前記貫通孔から感応部が外部へ露出するように当該基板の裏面に取り付けられる電気化学測定用のセンサチップと、を備え、
前記基板の裏面にはその面上に前記センサチップからの出力信号を取得するための配線が形成されているとともに、前記センサチップが前記配線に直接又は近接させて取り付けられており、
前記基板が前記ボディの所定軸に対して傾けて取り付けられることにより、当該基板の表面が、前記所定軸に対して傾いた先端面を少なくとも一部形成しており、
前記先端面に対して垂直な方向から見た場合に、前記基板の裏面と前記センサチップとの間を接着する充填材が、前記貫通孔内へはみ出ており、
前記基板の裏面と前記センサチップとの間を接続する充填材により、前記貫通孔の裏面側の周縁から中心部へと傾斜が形成されていることを特徴とする電極体。
【請求項2】
前記ボディの先端部が、前記所定軸に沿って当該ボディの先端側へ突出した外周部を有し、
前記基板が、当該基板の裏面外縁部が前記外周部に取り付けられており、
前記ボディの内部に収容され、当該ボディの基端側から先端側へと延びるとともに、前記基板の裏面に接続される中継配線を更に備えた請求項1記載の電極体。
【請求項3】
前記所定軸と垂直に交差する仮想平面と前記先端面とがなす角が30度以下である請求項1又は2記載の電極体。
【請求項4】
前記ボディの内部には内部電極及び内部液が収容される収容部が形成されており、
前記収容部から前記基板の裏面及び表面を貫通して形成された液絡部を更に備えた請求項1、2又は3記載の電極体。
【請求項5】
所定軸に沿って延びる棒状のボディと、
表面と裏面との間を貫通する貫通孔が形成されており、前記ボディの先端部に取り付けられる基板と、
前記ボディ及び前記基板の間に設けられ、前記貫通孔から感応部が外部へ露出するように当該基板の裏面に取り付けられる電気化学測定用のセンサチップと、を備え、
前記基板の裏面にはその面上に前記センサチップからの出力信号を取得するための配線が形成されているとともに、前記センサチップが前記配線に直接又は近接させて取り付けられており、
前記基板が前記ボディの所定軸に対して傾けて取り付けられることにより、当該基板の表面が、前記所定軸に対して傾いた先端面を少なくとも一部形成しており、
前記基板の裏面と前記センサチップとの間を接続する充填材により、前記貫通孔の裏面側の周縁から中心部へと傾斜が形成されていることを特徴とする電極体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学測定用のセンサチップを用いたものであり、pHや各種イオン種、導電率、酸化還元電位等を測定するために用いられる測定電極等、及び電極電位の算出や電気化学測定の基準となる基準電極、前記測定電極を複合した複合電極を含む電極体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
pHセンサにおいては、従来のガラス電極ではなく電気化学測定用のセンサチップの一種であるISFET(Ion Sensitive Field Effect Transistor)チップを用いることにより小型化したものがある。例えば特許文献1に記載されているpHセンサは、概略平直方体形状のボディの幅が広いほうの側面に貫通孔が形成されており、その貫通孔からISFETチップの感応部が露出するように構成されている。このものは、卓上等にpHセンサを横向きに載置し、微小量の試料液を前記貫通孔内にスポイト等により落とすことでpHの測定を行ったり、貫通孔及びISFETチップを液体の測定対象内に浸漬させて使用したりするものである。
【0003】
また、前述したのと同様に卓上等にpHセンサ200Aを載置し、測定対象をISFETチップ3Aの感応部に接触させる構成としたものとしては、特許文献2に記載されたpHセンサ200Aが挙げられる。このものは、皮膚等の固体をISFETチップ3Aの感応部に接触させやすくするとともに、その厚みを薄くするために、
図8の部分断面図に示すよう薄基板2Aの表側を測定対象物Mと接触する面とするとともに、当該薄基板2Aの裏面に感応部が貫通孔から露出するように前記ISFETチップ3Aを取り付けてられている。そして、前記薄基板2Aの裏面には前記ISFETチップ3Aからの出力信号を取り出すための配線が表面実装されている。このような構造は特許文献1記載のpHセンサ200Aにおいても示されている。つまり、基板2Aの裏面に対してISFETチップ3Aを取り付ける構成は、pHセンサ200Aの厚みを薄くしたい、又は、測定対象物Mと接触させやすくしたいという技術的な課題がある場合、特に平板型のpHセンサ200Aを構成する場合に用いられるものであることが分かる。
【0004】
ところで、上述したようなpHセンサ200Aは載置しておき、測定対象物MをpHセンサ200A側へ移動させて測定を行うことが意図されたものではなく、測定者がpHセンサ200Aを移動させて測定対象Mに浸漬させたり、接触させたりすることが主に意図されたプローブ型のpHセンサ200Aでも、ISFETチップ3Aが用いられることがある。
【0005】
さらに、非特許文献1には前述したのと同様の方法で形成されるpHセンサ200Aであって、液体の測定対象部にpHセンサ200Aを浸漬した際に前記ISFETチップ3Aの感応部が気泡に覆われることにより測定が行えなくなるのを防ぐことを意図したpHセンサ200Aが示されている。
図9に示すようにこのpHセンサ200Aは、棒状のボディ1Aの先端部に形成された先端面Sが、当該ボディ1Aの軸方向に対して垂直な仮想平面Vと45度の角をなすように傾けて形成されており、その先端面Sの中央部にISFETチップ3Aが配置されている。より具体的には前記ISFETチップ3Aに接続されるリード線Lが前記ボディ1Aの中心軸近傍の空間に第1封止材61Aにより封止されており、前記先端面Sにおいて載置されているISFETチップ3Aの上部に出るリード線Lを完全に絶縁するために第2封止材62Aを当該ISFETチップ3Aの周囲に盛ることにより前記先端面Sが形成されている。加えて、その周囲の空間に内部液16を収容し、内部液16及び測定対象物Mを電気的に接続する液絡部4Aが前記ボディ1Aの側面部に形成されている。このようにプローブ型pHセンサ200Aでは前述したような平板型のpHセンサ200Aのように薄く構成する必要が無いため、ISFETチップ3Aからの出力をリード線Lにより取り出し、そのリード線Lをエポキシ樹脂等の封止材を盛って絶縁するようにしている。
【0006】
しかしながら、前述したpHセンサ200Aであっても液体浸漬時に前記先端面SにあるISFETチップ3Aの感応部に気泡が貯まるのを防ぐことは難しい。なぜこのような現象が生じてしまうのかについて本願発明者らは鋭意検討を行ったところ、前記ISFETチップ3Aに接続されるリード線Lを測定対象に対して絶縁するために封止材を盛っているので、
図10に示すように先端面Sから前記ISFETチップ3Aの感応部が露出している部分までの穴が深くなってしまっており、先端面Sの傾きにそって逃げていくはずの気泡がこの穴に気泡がたまってしまい、測定を行えなくなってしまうことがあることが初めて見出された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平7−36054号公報
【特許文献2】特開2010―101864号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】W.OelBner et el. , Sensors and Actuators B CHEM(2004), Encapsulation of ISFET sensor chips
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上述したような問題を鑑みるとともに、本願発明者らが初めて見出した知見に基づいてなされたものであり、液体の測定対象中に電極体が浸されている状態でも、従来よりも電気化学測定用のセンサチップの表面に気泡がたまり測定が行えなくなってしまうことをより好適に防ぐことができる電極体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明の電極体は、所定軸に沿って延びる棒状のボディと、表面と裏面との間を貫通する貫通孔が形成されており、前記ボディの先端部に取り付けられる基板と、前記貫通孔から感応部が外部へ露出するように当該基板の裏面に取り付けられるセンサチップと、を備え、前記基板の裏面にはその面上に前記センサチップからの出力信号を取得するための配線が形成されているとともに、前記センサチップが前記配線に直接又は近接させて取り付けられており、前記基板が前記ボディの所定軸に対して傾けて取り付けられることにより、当該基板の表面が、前記所定軸に対して傾いた先端面を少なくとも一部形成していることを特徴とする。
【0011】
ここで、「電極体」とはpHや各種イオン種を測定するために用いられる測定電極等、及び電極電位の算出や電気化学測定の基準となる基準電極、前記測定電極を複合した複合電極を含む概念である。さらに前記基準電極は、例えば参照電極、比較電極等と称されるものであり、これらを含む概念である。また、「前記センサチップが前記配線に直接又は近接させて取り付けられており」とは、前記センサチップと前記配線が直接接触している状態、及び、例えば前記配線と前記センサチップと間にごく小さな隙間を形成して近接して設けられており、はんだ等を介して電気的に接続されている状態も含む概念である。また、前記電気化学測定用のセンサチップとは、イオン濃度測定用、電解質濃度(導電率)測定用、ORP(酸化還元電位)測定用等の各種電気化学測定用のセンサチップを含む概念である。
【0012】
このようなものであれば、前記基板を前記ボディの所定軸に対して傾けて取り付けることにより前記基板の表面が、前記所定軸に対して傾いた先端面を形成するように構成されているので、前記基板の表面を下側にして液体の測定対象に浸したとしても、発生した気泡を前記先端面の傾きに沿って逃がすことができる。さらに、前記基板の裏面にはその面上に前記センサチップからの出力信号を取得するための配線が形成されているとともに、前記センサチップが前記配線に直接又は近接させて取り付けられているので、前記先端面から前記センサチップまでの距離を前記貫通孔の深さ、すなわち、基板の厚さと略等しくすることができる。つまり、前記貫通孔が非常に浅い穴にすることができるので、前記先端面と前記センサチップとを略同一平面状に配置することができ、測定時において前記貫通孔に気泡を貯まりにくくすることができる。別の観点から説明すると、本発明では上述した構成により前記センサチップからの出力信号を取り出すためにリード線を設ける必要が無く、従って従来のようにリード線の絶縁を保つために封止材を盛る必要が無いため、前記センサチップを露出させるための貫通孔の深さを非常に浅いものとすることができる。
【0013】
このように、前記先端面の傾きに沿って気泡を逃がすことができるうえに、前記センサチップを露出させるための貫通孔の深さを非常に浅く形成できることにより、仮に先端面に沿って逃げた気泡が貫通孔内に入ったとしても貫通孔内には非常に捕らえられにくくすることができる。従って、前記センサチップの表面に気泡がたまることがほとんどなく、従来よりも気泡により測定が中断されることを好適に防ぐことができる。
【0014】
前記貫通孔内に気泡が入ったとしても貫通孔の外側へすぐに抜けて行くようにするための好適な構成としては、前記基板の裏面と前記センサチップとの間を接続する充填材により、前記貫通孔の裏面側の周縁から中央部側へと傾斜が形成されているものであればよい。このようなものであれば、前記基板の表面と裏面を単純な貫通孔とした場合に比べて段差を小さくすることができ、前記傾斜にそって貫通孔内に入った気泡を逃がしやすくすることができる。
【0015】
前記貫通孔の深さをできるだけ浅くできるように前記基板の厚さを薄くするとともに、前記ボディと前記基板との間を隙間なく取り付けるのを容易にするための具体的な構成としては、前記ボディの先端部が、前記所定軸に沿って当該ボディの先端側へ突出した外周部を有し、前記基板が、当該基板の裏面外縁部が前記外周部に取り付けられており、前記ボディの内部に収容され、当該ボディの基端側から先端側へと延びるとともに、前記基板の裏面に接続される中継配線を更に備えたものであればよい。このようなものであれば、例えば前記基板と中継配線をフレキシブルプリント基板として一体に成形するのではなく、別体に設けた中継配線を前記基板の裏面に接続してあり、中継配線がボディの外周部と干渉するのを防げるので、基板により前記ボディの先端部を隙間なく蓋をすることができる。
【0016】
前記先端面において気泡をより逃がしやすくするための具体的な実施の態様としては、前記所定軸と垂直に交差する仮想平面と前記先端面とがなす角が30度以下であるものが挙げられる。
【0017】
液体の測定対象だけでなく、例えば固体の測定対象であっても基準電位を簡単に取ることができ、測定を行いやすいようにするには、前記ボディの内部には内部電極及び内部液が収容される収容部が形成されており、前記収容部から前記基板の裏面及び表面を貫通して形成された液絡部を更に備えたものであればよい。例えば、固体の測定対象であっても、寒天やゼラチン等の軟体のものであってもセンサチップの感応部に気泡が貯まることが従来ではあったが、本願発明であれば、このような問題も液体と同様に解決することができる。
【発明の効果】
【0018】
このように本発明の電極体によれば、基板の表面により形成される先端面が前記ボディの軸方向に対して傾けて形成されている上に、リード線を用いずに基板の裏面に形成された配線によりセンサチップからの出力信号を取り出すように構成して、センサチップを先端面に露出させるための貫通孔の深さをできる限り浅くするようことができるので、液体の測定対象に浸した場合でも、センサチップの露出部分に気泡が貯まることにより測定不能になる事態を従来よりも確実に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係るpHセンサの模式的全体斜視図。
【
図2】同実施形態におけるpHセンサの使用状態を示す模式図。
【
図3】同実施形態におけるプローブ部分を拡大した模式図。
【
図4】同実施形態におけるプローブ部分の模式的断面拡大図。
【
図5】同実施形態におけるプローブ先端部分の模式的拡大図。
【
図6】同実施形態におけるプローブ先端部分の模式的分解斜視図。
【
図7】同実施形態のボディと基板との間の接続に関する特徴点を示す模式図。
【
図9】従来のプローブ型pHセンサの別の例を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0021】
本実施形態の電極体は、
図1の斜視図に示されるように複合電極として形成されたたプローブ100であって、本体部101と接続されることによりpHセンサ200を構成するようにしてある。使用される際には、本体部101が使用者により握られ、
図2に示すようにプローブ100の先端を下向きにして測定部である先端面Sを例えば液体の測定対象M中に浸して使用する。
【0022】
以下の説明では、プローブ100にのみ注目して説明する。
【0023】
前記プローブ100は、電極電位の検出の基準となる基準電極と、水素イオン濃度を測定するための測定電極とを兼ね備えた複合電極であって、前記測定電極を構成するために電気化学測定用のセンサチップの一種であるISFETチップ3を用いている。この測定電極を構成するために用いられるISFETチップ3について簡単に説明すると、ゲート絶縁膜上に五酸化タンタル等のイオン感応性膜を形成して感応部が形成してあるものである。このプローブ100の外観形状について説明すると、
図3に示すように基端側が概略太円筒形状にしてあり、中央部から先端側にかけては基端側よりも直径が細くなった概略細円筒形状であるとともに、その先端の一部をプローブ100の延びる方向に対して一部切り落とし、先端面Sが楕円形状となるようにしてある。より詳細には
図3(a)の正面図で視るとプローブ100の先端は長方形から直角三角形を切り取った形状となっており、
図3(b)の右側面図で視ると楕円状に先端面Sが形成してある。この先端面Sには、基準電極において測定対象Mと接触させる部分である液絡部4と、測定電極を構成するISFETチップ3とを露出させることにより、前記先端面Sに測定部が形成してある。
【0024】
次にプローブ100の部品ごとの構成について説明する。
図4に
図3に対応した断面図、
図5にプローブ100先端部の断面拡大図、
図6にプローブ100先端部の分解斜視図を示す。
【0025】
前記プローブ100は、所定軸に沿って延びる棒状のボディ1と、前記ボディ1の先端部にその裏面22が取り付けられる基板2と、前記ボディ1の先端部と前記基板2との間において、前記基板2の裏面22に取り付けられたISFETチップ3とを少なくとも備えたものである。すなわち、前記ボディ1の先端について蓋をするように前記基板2が貼り付けてある。
【0026】
前記ボディ1は、非透水性の樹脂で成形してあり、
図3の外観図に示すように所定軸である中心軸Cに沿って延びる先端側が基端側よりも細い概略二段円筒形状のものであり、その先端部が切断された概略楕円形状となるように切断された形状にしてある。このボディ1は、
図4(a)のA−A線断面図に示すように内部に2つの空洞を形成して第1収容部12と、第2収容部13が形成してあるとともに、その先端部にも
図5に示すように前記ISFETチップ3等が収容される凹部14が中央部に形成してある。また前記ボディ1の基端側には前記本体部101と接続される接続端子11が設けられており、前記ISFETチップ3からの信号を前記本体部101に伝えるようにしてある。
【0027】
前記第1収容部12は、
図4(a)の右側に示される軸方向に延びる空洞であり、その内部には、
図6に示すように前記基板2の裏面22と前記本端部接続端子11との間を中継する中継FPC5(Flexible Print Circuit)が収容してある。なお、中継FPC5が請求項での中継配線に相当するものである。
【0028】
前記第2収容部13は、
図4(a)の左側に示される軸方向に延びる空洞であり、
図4(b)のB−B線断面図からも分かるようにその容積は前記第1収容部12よりも若干大きくしてあり、ボディ1の中心軸Cを若干超えて半径方向に膨出させてある。この第2収容部13は、基準電極を構成するKCl溶液をゲル化した内部液16と、その内部液16に浸漬された銀/塩化銀電極15を収容するものであり、先端部にはセラミックス等の多孔質材からなる液絡部4が形成してある。この液絡部4は、
図6に示すように前記基板2の裏面22から表面21側へと貫通させてあり、前記基板2の表面21と略同じ面を形成するようにしてある。また、前記内部液16の基端側はシリコーンゲル17により蓋がしてあるとともに、さらに基端側のボディ1側面には製造時に第2収容部13に内部液16等を注入するための注入口18が形成してある。この注入口18は完成品では樹脂により完全に封止してある。
【0029】
前記基板2は、概略薄板楕円形状に形成してあるものであり、
図5(a)(b)の拡大図に示すように前記ボディ1の斜めに形成された先端部において前記凹部14の蓋をするように取り付けられるものであり、その表面21によりプローブ100の先端面Sを形成するものである。また、
図1、
図5(b)、
図6に示すようにこの基板2にはISFETチップ3の感応部を外部へ露出させるための第1貫通孔24と、前記液絡部4の一端を外部へ露出させるための第2貫通孔25が中央部において厚み方向に貫通させて形成してある。
図5(b)に示すようにこの基板2の裏面周縁部は前記ボディ1の先端部において前記中心軸方向にと突出している部分である外周部19と気密に接着してあるとともに、前記凹部14と前記基板2の裏面22との間はエポキシ樹脂等からなる第1充填材61で封止してあり、液体の測定対象Mに浸した場合でもボディ1内部に液体が侵入しないようにしてある。この接着方法は例えば、接着剤だけなく超音波接着を用いてもよく、この場合よりボディ1と基板2とを好適に接着することができる。
【0030】
また、前記基板2と前記ボディ1との間には前記ISFETチップ3が配置してあり、前記基板2と裏面22中央部と前記ISFETチップ3の感応部がある面との間を第2充填材62により接着してある。この第2充填材62中には前記ISFETチップ3の導通部と、
図6の斜視図に示すような前記基板2の裏面22に形成された配線23とを接続するためのはんだバンプ63を含むようにして、いわゆるフリップチップ実装により前記ISFETチップ3を前記基板2に実装している。さらに、このフリップチップ実装に用いている第2充填材62によって前記第1貫通孔24の裏面側周縁部から、第1貫通孔24の中心軸側、つまり、前記ISFETチップ3の感応部中心へと傾斜621を形成してある。言い換えると、前記第1貫通孔24により前記基板2の表面21から前記ISFETチップ3の感応部までの切り立った縦穴を形成させるのではなく、基板2表面21からの深さの変化がより連続的に変化するようにしてある。このため、第1貫通孔24内に液中において気泡が侵入したとしても、この傾斜621に沿って容易に出ていくことになり、気泡が前記感応部の周辺で貯まることをより防ぎやすくなる。
【0031】
次に、前記ボディ1の延びる中心軸C方向に対して傾けて前記基板2の表面21により形成してある先端面Sについて説明する。
図5(a)に示すように、この先端面Sは前記ボディ1の中心軸Cと垂直に交わる仮想平面Vに対して所定の角度をなすように構成してある。液体の測定対象Mにこの先端面Sを下向きにして浸している場合に気泡が逃げやすくするには前記先端面Sと前記仮想面のなす角度が30度以下となるようにしておけばよい。本実施形態ではより好ましい角度である20度に設定してある。このように先端面Sをボディ1の軸方向に対して垂直な端面ではなく、傾けて設けてあるので、測定時において気泡が先端面Sに沿って先端面Sから外側へと逃げていきやすくすることができる。
【0032】
最後に、上述したようなISFETチップ3がフリップチップ実装された基板2を前記ボディ1の先端部に対して取り付ける構成に関する特徴点についてさらに詳述する。
【0033】
図7(a)
及び図7(b)に示すよう
に基板2Aに対してISFETチップ3Aをフリップチップ実装した従来の特許文献1に記載された平板型pHセンサ200Aでは、平板状に形成しやすいように、ISFETチップ3Aから出力された信号を本体部101Aまで伝送するための中継配線5Aと、前記中継配線5Aが前記基板2Aの側面で一体となったFPCで形成されたものが用いられている。言い換えると、従来においては、フリップチップ実装を行った場合には、基板2A、ISFETチップ3A、中継配線5Aが一枚のフレキシブル基板上に実装
されたものしかpHセンサ200Aに用いられていない。このため、仮に特許文献1に記載されたISFETチップ3Aがフリップチップ実装されたFPCによって本実施形態のようにボディ1の先端部の蓋をし、先端面Sを形成しようと試みても
図7(c)に示すように、フレキシブル基板のうち中継配線5A部分で曲げが生じるため半径方向に隙間があいてしまう。つまり、ボディ1A内に測定対象Mの液体が侵入してしまうことになり、様々な不具合が生じてしまう。
【0034】
一方、本実施形態では、ISFETチップ3をフリップチップ実装する基板2Aと、本体部101まで出力信号を伝送する中継配線5とを、別体にするとともに、前記中継配線の一端を前記基板2の側面ではなく裏面上の配線23とはんだ等で接続するようにしているので、
図7(d)に示すように基板2でボディ1の先端部を隙間なく無理なく蓋をして取り付けることができる。すなわち、従来一体であったものを、2つの部材に分割したことにより、本実施形態のように基板2Aをできるだけ薄くして第1貫通孔24を浅くするとともに、隙間なく前記ボディに取り付けて先端面Sを形成することができる。
【0035】
このように構成した本実施形態の電極体によれば、プローブ100型のpHセンサ200において、前記先端面Sが前記ボディ1の中心軸Cに対して傾けて形成してあるとともに、前記ISFETからの出力信号をリード線ではなく、前記基板2の裏面22に表面21実装された配線23により中継FPC5、接続端子11、本体部101へと伝達できるようにして、前記第1貫通孔24の深さを非常に浅く形成してあるので、従来のものに比べて気泡が格段に前記ISFETチップ3の感応部周辺に貯まりにくく、測定が中断される等の不具合が生じるのを防ぐことができる。
【0036】
また、前記先端面Sが概略円筒形状のボディ1に対して傾けて形成することにより楕円形状としてあるので、先端面Sの面積を広くすることができる。従って、測定対象Mとの接触面積を大きくしたり、あるいは貫通孔の大きさを調節して逆に小さくしたりすることができ、設計の自由度が高い。加えて先端面Sと前記ボディ1の先端部との間の空間も広く取ることができるので、ISFETチップ3、液絡部4、その他の部品等も配置しやすい。
【0038】
前記実施形態では、基準電極と測定電極を複合した複合電極としていたが、ISFETチップにより測定電極のみを構成してもよい。また、前記基準電極は前記実施形態に限られるものではなく、その他の成分の内部液と内部電極の組み合わせであってもよい。また前記先端面にPt膜等を形成して疑似基準電極を形成して基準電極の代用としてもよい。
【0039】
また、ISFETチップの他の例としては、基材としてSi、プラスチック、MgO、サファイア、PETを使用したもの上に、酸化イリジウム膜を形成したもの等が挙げられる。さらに、ISFETチップ以外の電気化学測定用センサチップの例としては、Ptを用いた導電率測定用のセンサチップが挙げられる。具体的には、このものはPET等の基材の表面上に2本のPt線を平行に形成して、これらのPt線の間に測定対象が入ることによりイオン濃度によって導電率の変化を測定するように構成したものである。また、表面上にPt線を1本だけ形成したORP測定用のセンサチップを用いてもよい。このようなものを用いても、前記実施形態を構成することができる。要するに、測定電極として用いることができるセンサチップであれば、本発明の効果を享受することができる。加えて、上述したように電気化学測定用のセンサチップを適宜選択することにより、本発明は、pHセンサとしてだけでなく、導電率センサ、ORPセンサ、イオン濃度センサ等、各種電気化学測定用のセンサとして構成する事が可能である。
【0040】
前記実施形態の先端面の下部に測定値の温度補正用にサーミスタ等を配置してよい。また先端面に液絡部を露出させなくてもよく、例えば前記ボディの先端部において側面に前記液絡部が露出するものであってもよい。さらに、前記基板の表面で先端面の全てを形成する必要はなく、一部前記ボディの先端部で先端面が形成されていてもよい。要するに前記ISFETチップの感応部を露出させるための第1貫通孔が形成されている周辺は少なくとも基板にしておき、貫通孔の深さが深くなりすぎないようにすればよい。
【0041】
加えて、前記実施形態ではpHセンサを例として挙げているが、前記ISFETチップのゲート絶縁膜上にプロトン以外のイオンを選択する膜を形成し、その他のイオン種の測定を行えるようにしても構わない。
【0042】
前記実施形態では、前記ボディの形状は概略円筒形状であったがその他の形状であっても構わない。例えば角柱形状であってもよいし、中心軸が曲がっていてもよい。要するにボディの先端部において前記ボディの延びる所定軸に対して垂直な仮想面に対して前記先端面が傾いて形成してあるものであればよい。
【0043】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な変形や実施形態の組み合わせを行っても構わない。
【符号の説明】
【0044】
100・・・プローブ(電極体)
1 ・・・ボディ
16 ・・・第2収容部
19 ・・・外周部
2 ・・・基板
21 ・・・表面
22 ・・・裏面
23 ・・・配線
24 ・・・第1貫通孔
3 ・・・ISFETチップ
4 ・・・液絡部
5 ・・・中継配線
62 ・・・第2充填材
621・・・傾斜
C ・・・中心軸(所定軸)
S ・・・先端面
V ・・・仮想平面