特許第5798801号(P5798801)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5798801クレーンの運転室とそれを搭載したクレーン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5798801
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】クレーンの運転室とそれを搭載したクレーン
(51)【国際特許分類】
   B66C 13/52 20060101AFI20151001BHJP
【FI】
   B66C13/52 C
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2011-122376(P2011-122376)
(22)【出願日】2011年5月31日
(65)【公開番号】特開2012-250789(P2012-250789A)
(43)【公開日】2012年12月20日
【審査請求日】2014年3月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005902
【氏名又は名称】三井造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100066865
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 信一
(74)【代理人】
【識別番号】100066854
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 賢照
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100117938
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 謙二
(74)【代理人】
【識別番号】100138287
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 功
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(74)【代理人】
【識別番号】100068685
【弁理士】
【氏名又は名称】斎下 和彦
(72)【発明者】
【氏名】二宮 幸男
(72)【発明者】
【氏名】香本 正二
(72)【発明者】
【氏名】立石 広範
【審査官】 葛原 怜士郎
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭61−189084(JP,U)
【文献】 実開平04−122181(JP,U)
【文献】 特開2008−190297(JP,A)
【文献】 特開平02−213577(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/52−13/54
E06B 3/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレーンの運転室の床面に形成された開口部この開口部に沿って設置される外枠この外枠内に配置される床窓とを備え前記床窓が上辺とその向かいの下辺とこれらを結ぶ一対の縦辺とで構成される窓枠と、この窓枠の内側に配置される透過部とからなるクレーンの運転室において、
前記の延設方向の両端からこの延設方向に突設されてこの下辺の延設方向の両端と対向する前記外枠の部分に向かう一対の開閉軸部と、前記縦辺と対向する前記外枠に設置されて前記開閉軸部をこの外枠に沿って案内するレールと、一対の前記縦辺とこの縦辺に対向する外枠とを連結する反転支持部とを備え、
前記レールが前記外枠に沿って案内された前記開閉軸部を制動する制動部を備え、
前記反転支持部が、前記縦辺から前記外枠に向かって突設される床窓用接合部と、この外枠から前記縦辺に向かって突設される外枠用接合部と、前記床窓用接合部に回動可能に連結される支持部と、この支持部から延設され他端を前記外枠用接合部に回動可能に連結される腕部とを備え、
前記床窓の前記上辺を前記運転室の室内側に引いて前記床窓をく際に前記支持部が前記床窓用接合部と前記外枠用接合部との間の距離の変化を吸収しつつ前記床窓用接合部を軸にして前記床窓を反転させて、前記開閉軸部が前記レールに沿って移動して前記制動部で制止され、閉止時の前記床窓の面方向に対して開口時の前記床窓の面方向のなす角が鈍角になったとき、前記反転支持部の長さが最も長くなって、前記床窓が前記運転室内に配置される運転室コンソールおよび運転席にぶつからない状態にする構成にしたことを特徴とするクレーンの運転室。
【請求項2】
前記支持部前記床窓を開方向へ回動するときに長さを伸ばし、方向へ回動するときに長さを縮める伸縮自在である請求項1に記載のクレーンの運転室。
【請求項3】
前記支持部が前記床窓用接合部を案内する刳り抜かれたレールを有する、または前記支持部が伸縮自在なダンパーで構成される請求項1に記載のクレーンの運転室。
【請求項4】
開口時の前記床窓が、平面視において前記外枠から外の領域にはみ出ることがない請求項1〜3のいずれかに記載のクレーンの運転室。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか1項に記載のクレーンの運転室を備えたクレーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
コンテナ用岸壁クレーン及びコンテ用ヤードクレーンなどの運転室に備え、高所作業中に下方を確認する床窓を室内から清掃するため、床窓を反転させるクレーンの運転室とそれを搭載したクレーンとその床窓の反転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶からコンテナを積み込み又は積み卸しするコンテナクレーン、及びコンテナターミナル内におけるコンテナ移送を行うクレーンには作業を制御するために運転室を設置している。従来のコンテナクレーンの運転室はクレーン上部に設置され、荷を運搬するトロリと共にガーダ上を移動する(例えば特許文献1〔図2〕参照)。
【0003】
クレーン上部に設置されている運転室から作業を目視で確認するために、運転室には窓が設置されている。そのうちの一つに下方の作業を確認できるように床に設けられた床窓がある。この床窓が汚れてしまうと、コンテナの積み込み又は積み卸し作業などが確認しづらくなる。そうなると作業の効率性や安全性が損なわれるため、床窓の清掃は欠かせない。
【0004】
そこで床窓を清掃する方法として、図9に示す、ガーダ63とトロリ62と、さらにトロリ62に運転室61とスプレッダ64を備えたクレーン100に、床窓60を清掃するための専用踊り場65を設けた清掃方法が提案されている。この方法は運転室61の床窓60を清掃するためにガーダ63の後方に設けた専用踊り場65に運転室61を移動させ、運転室61から専用踊り場65に出て、清掃作業を行う方法である。しかし、この方法では運転室61の外に出て清掃作業を行わなければならないという問題がある。地上40〜50メートルという高さに設置されている運転室61の外に出て、作業を行うことは、転落などの危険性を伴う。
【0005】
また、運転室61の外で作業をするために専用踊り場65を設置しなければならず、窓拭き作業のために設置される専用踊り場65はコストに見合わないという問題もある。さらに、床窓60の清掃をするために、ガーダ63の後方の専用踊り場65まで運転室61を移動しなければならない問題や、専用踊り場65に設置されている安全用の手摺りを運転室61が移動した際に、運転室61から延びているケーブルなどにぶつからないように取り外さなければならないという問題もある。
【0006】
そこで、図10に示すように、運転室61の底部に専用踊り場66を設け、床窓の清掃のために運転室61を移動せずに床窓60を清掃する方法も提案されている。しかし、この方法でも、運転室61の外に出なければ床窓60の清掃作業はできず、安全性の問題は解決されていない。また、運転室61の下部に専用踊り場66を設けたために、下方の見通しが悪くなるという新たな問題が発生している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−1868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の問題を鑑みてなされたものであり、その目的は、高所から下方を確認する床窓を、運転室や室内の外に出ずに清掃作業ができるため、作業性や安全性に優れ、
また、窓拭きのための専用踊り場が不要となり、コスト低減を実現することができるクレーンの運転室とそれを備えたクレーンとその床窓の反転方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するための本発明に係るクレーンの運転室は、クレーンの運転室の床面に形成された開口部この開口部に沿って設置される外枠この外枠内に配置される床窓とを備え前記床窓が上辺とその向かいの下辺とこれらを結ぶ一対の縦辺とで構成される窓枠と、この窓枠の内側に配置される透過部とからなるクレーンの運転室において、前記の延設方向の両端からこの延設方向に突設されてこの下辺の延設方向の両端と対向する前記外枠の部分に向かう一対の開閉軸部と、前記縦辺と対向する前記外枠に設置されて前記開閉軸部をこの外枠に沿って案内するレールと、一対の前記縦辺とこの縦辺に対向する外枠とを連結する反転支持部とを備え、前記レールが前記外枠に沿って案内された前記開閉軸部を制動する制動部を備え、前記反転支持部が、前記縦辺から前記外枠に向かって突設される床窓用接合部と、この外枠から前記縦辺に向かって突設される外枠用接合部と、前記床窓用接合部に回動可能に連結される支持部と、この支持部から延設され他端を前記外枠用接合部に回動可能に連結される腕部とを備え、前記床窓の前記上辺を前記運転室の室内側に引いて前記床窓をく際に前記支持部が前記床窓用接合部と前記外枠用接合部との間の距離の変化を吸収しつつ前記床窓用接合部を軸にして前記床窓を反転させて、前記開閉軸部が前記レールに沿って移動して前記制動部で制止され、閉止時の前記床窓の面方向に対して開口時の前記床窓の面方向のなす角が鈍角になったとき、前記反転支持部の長さが最も長くなって、前記床窓が前記運転室内に配置される運転室コンソールおよび運転席にぶつからない状態にする構成にしたことを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、クレーンの運転室などの高所から下方を確認するように設けられ、外側の面を清掃することが困難な床窓が、開閉軸部によって軸支された下辺を開閉軸として開閉回動をし、さらに床窓を外枠に支持する反転支持部によって、開閉回動とは別の反転回動を行う。本来であれば、床窓は反転支持部によって外枠に支持されているため、一定以上開口しない。そこで、床窓の下辺を、開閉軸部を介してレールに沿って移動させることで、反転支持部に設けた床窓用接合部を回動軸として、床窓は反転回動することができる。
【0011】
床窓が反転するため、クレーンの運転室内から見て外側の面を室内に向けることができる。その結果、床窓の外側の面を運転室内から清掃できるようになるため、運転室外での作業が減少し、安全性を向上させることができる。
【0012】
また、従来であれば清掃用に設けられていた専用踊り場を必要とせず、専用踊り場の設置費用を削減することができる。さらに、従来であれば、専用踊り場により遮られていた視界も、遮られることがなくなり、作業の見通しをよくすることができる。
【0013】
加えて、床窓の下辺が開閉軸部を介して移動し、床窓が反転するため、床窓の開口状態を平面投影したとき、床窓の上辺は外枠から大きくはみ出すことがなく、室内にある計器類、操作パネルなどと接触することもなく、床窓を反転させることができる。
【0014】
さらに、開閉軸部がレールによって支持されるため床窓が開閉動作を行うときに開閉軸部が外枠から外れてしまうことを防ぐことができる。レールの形状は開閉軸部を上下から狭持するものが好ましいが、開閉軸部がレール内を移動でき、また、レールから開閉軸部が外れることがなければどのような形状でもよい。レールの形状に開閉軸部の形状を合わせてもよい。制動部を備える構成により、床窓を開けたときに、移動部を設けた開閉軸部の外枠に沿った移動が、レールによって止まる。そのため、床窓が必要以上に開くことがなく、安全に床窓の開閉作業を行うことができる。制動部はレールと同一に形成されてもよい。
【0015】
持部、床窓を開方向へ回動するときに長さを伸ばし、方向へ回動するときに長さを縮める伸縮自在である構成にすることができる。
【0016】
この伸縮自在の支持部には油圧ダンパーやモータ式ダンパーを用いることができる。ダンパーを用いることで開閉時の作業が楽に行うことができ、また、床窓をダンパーが付勢するため、安定した開閉動作をおこなうことができる。
【0017】
一方、伸縮自在の支持部を床窓用接合部、又は外枠用接合部のどちらかの軸を移動することができるレール状に形成することもできる。
【0018】
上記の構成により、床窓が反転した際に反転支持部が倒れ止め防止対策として機能することができる。
【0019】
支持部が床窓用接合部を案内する刳り抜かれたレールを有する、または支持部を伸縮自在なダンパーで構成することができる。
【0020】
開口時の床窓が、平面視において外枠から外の領域にはみ出ることがない構成にすることができる。
【0021】
上記の目的を達成するためのクレーンは、上記のクレーンの運転室を備えて構成される。この構成によれば、上記の作用効果と同様の効果を得ることができる。
【0022】
レーン運転室内の床窓の下辺に開閉の回動の軸になるように開閉軸部と、前記下辺と接する両辺それぞれに反転支持部を備え、該反転支持部が前記床窓を回動自在に軸支する床窓用接合部と伸縮自在の支持部と該支持部を回動自在に外枠に軸支する外枠用接合部とを備え、前記床窓を前記運転室内に開くとき、前記床窓が前記開閉軸部を軸として内開きに回動し、連動して前記反転支持部が伸縮しながら回動することで前記床窓を前記外枠に支持し、前記開閉軸部が床窓の内開きの回動を維持しながら前記外枠に沿って移動することで、前記床窓が前記床窓用接合部を軸として回動し、前記床窓の外側の面を前記運転室内に向けるように反転する方法で床窓を反転することができる。
【0023】
この方法により、まず床窓は開口時に開閉回動により運転室の内側に開く。この時の開閉回動の回動動作角度は鋭角になる。反転支持部はその開閉回動に連動して、外枠用接合部を回動軸に床窓の開閉回動と逆向きに回動すると共に、支持部の長さを伸ばす。次に反転支持部の長さが最大となったところで、開閉軸部が開閉回動を維持しながら外枠に沿って移動する。その開閉軸部の移動に連動して、反転支持部の床窓用接合部により床窓が反転回動を行う。この反転回動により開閉回動の最終的な回動動作角度は鈍角になり、クレーンの運転室からみて外側の全面を運転室内に向けることができる。
【0024】
もし反転支持部を備えず、且つ開閉軸部が外枠に沿って移動できないならば、開閉軸部の回動動作角度が鈍角になると床窓はちょうど扉を開いたときのように外枠からはみ出してしまう。しかし、上記の床窓は開閉軸部による開閉回動の回動動作角度が鈍角になっても、開閉軸部が外枠に沿って移動し、反転支持部の支持により反転回動を行うことにより、床窓の反転動作中や反転した時の状態であっても平面視で外枠から床窓がはみ出ることがない。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、クレーンの運転室などの高所に設けられ、下方の作業などを確認するための床窓の外側の面を室内に向けて開くことができるため、床窓の清掃を室内から行うことができる。その結果、室外での清掃作業がなくなり、安全に作業を行うことができる。また、専用踊り場を外すことができ、専用踊り場の製造、設置コストを削減できる。さらに、下方の視界の邪魔になっていた専用踊り場をなくすことが可能であり、視界が妨げられることなくクレーンの積み荷作業などを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明に係る第1の実施の形態のクレーンの運転室の床窓の反転機構を示した平面図である。
図2】本発明に係る第1の実施の形態のクレーンの運転室の床窓の反転機構を示した正面図である。
図3図2のIIIを拡大した断面図である。
図4】本発明に係る第1の実施の形態のクレーンの運転室の床窓の閉口状態を示した側面図である。
図5】本発明に係る第1の実施の形態のクレーンの運転室の床窓の開口途中を示した側面図である。
図6】本発明に係る第1の実施の形態のクレーンの運転室の床窓の開口状態を示した側面図である。
図7】本発明に係る第2の実施の形態のクレーンの運転室の床窓の開口状態を示した側面図である。
図8】本発明に係る第1の実施の形態の床窓反転機構を運転室に設置した状態を示した図である。
図9】従来技術のクレーン運転室と専用踊り場を示した図である。
図10】従来技術のクレーン運転室とその下部に設置された専用踊り場を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る第1の実施の形態のクレーン100について、図面を参照しながら説明する。なお、このクレーン100は岸壁クレーン、門型のヤードクレーン、ゴライアスクレーン、ジブクレーン、タワークレーン、アンローダークレーン、及び天井クレーンなどのクレーンに適用可能である。また、高所での床窓が必要な設備、例えば高層建築物の展望台などに適用することができる。ここでは、図9で示したクレーン100の運転室61に床窓反転機構10を設けた場合を説明する。
【0028】
図1で示すように、運転室61の床面11には開口部11aを設ける。開口部11aに床窓反転機構10を設け、床窓反転機構10は外枠11bと床窓12と、開閉軸部20と反転支持部30とレール40とからなる。
【0029】
床窓12は、透過部13と窓枠14からなり、それぞれ辺を上辺14aと、その向かいの下辺14bと、両側の縦辺14c、14dとで構成する。透過部13はクレーン100の運転室61から下方の作業を確認するため、透明の硝子や樹脂などを板状に形成したものである。
【0030】
窓枠14は格子状に形成したものでもよく、透過部13を嵌め込めるようになっている。図2及び図3に示すように、窓枠14は透過部13を上辺14a、下辺14b、縦辺14c、14dによって囲み、嵌め込んでいる。また、窓枠14は運転室内側と運転室外側とで、縦辺14c、14dの広さが異なる形状に形成すると、床窓12を閉めたときに、開閉軸部20と反転支持部30などを室内に露呈させないようにすることもできる。さらに、窓枠14と外枠11bとの接触箇所にゴムパッキンなどを設け、密閉性を高めることが好ましい。
【0031】
床窓12が取り付けられる外枠11bは運転室61と一体に設置されており、運転室61に傾斜を付けて設けられている。傾斜の角度は運転室61から下方を見渡すのにちょうどいい角度であればよく、実施の形態では傾斜を水平から9度〜15度に設定した。床窓12を通して下方の作業が十分に確認することができれば、傾斜を設ける必要はない。また、外枠は図3に示すように、床窓12が下に落ちないように段を設け、床窓12を支えている。さらに、床窓12が閉口状態にあるとき、床窓12を固定するために、床窓12の上辺14aや、下辺14bに開閉用ストッパを設けることが好ましい。この開閉用ストッパはボルトなどで形成され、床窓12と床面11をしっかりと止めることができるようにする。
【0032】
開閉軸部20は床窓12の下辺14bの両端の縦辺14c、14dを両側から回転自在に軸支する。両開閉軸部20が同一軸線上に配されるため、床窓12は開閉軸部20を回動軸として、開閉することができる。これにより、床窓12の下辺14bが開閉軸となり、床窓12の上辺14aが開口するようになる。
【0033】
また、開閉軸部20は移動できるように形成されるため、開閉軸部20は外枠11bに沿って床窓12を移動することができる。図4に示すように、開閉軸部20はローラー状に形成され、ローラー状に形成された開閉軸部が回転することで、開閉軸部20を介して床窓12を移動させることができる。
【0034】
開閉軸部20は外枠11bに沿って移動できるものであればよい。例えば、開閉軸部20は回転体で形成しなくともよく、外枠11bに沿って開閉軸部20を介して床窓12を移動することができればよい。また、開閉軸部20も床窓12を開閉する際の開閉軸となるヒンジの役割を果たせばよい。例えば開閉軸部20は床窓12を軸支するものではなく、床窓12を移動体に蝶着するようなものでもよい。
【0035】
ローラー状に形成された開閉軸部20には金属製の車輪や、その車輪に弾性をもったタイヤを装着したものなどを用いることができる。とくに弾性素材を表面に使用した場合は動作音を抑えることができる。
【0036】
反転支持部30は、図4に示すように、床窓12の縦辺14c、14dに床窓12を回動自在に軸支する床窓用接合部31と、伸縮自在の支持部33と、長さが固定の腕部34と、床窓用接合部31よりも上辺14a側の外枠11bに反転支持部30を回動自在に軸支する外枠用接合部32とを備え、床窓12を外枠11bに支持している。
【0037】
支持部33は縦辺14c、14dの床窓用接合部31の軸を移動するように、刳り抜かれたレール33aを設け、床窓用接合部31の軸がレール33a内を移動することで床窓用接合部31と外枠用接合部32との間の長さを変える。
【0038】
また、支持部30は伸縮自在であればいいので、図7に示すように油圧式ダンパーやモータ式ダンパーなどのダンパーを使用することもできる。ダンパーを使用することで床窓12はダンパーから付勢され、開口時に小さい力で開口することができる。
【0039】
反転支持部30の床窓用接合部31と外枠用接合部32を前述とは逆に設けることもできる。床窓用接合部31を外枠用接合部32よりも上辺14a側に設けても、同様の動作を行う。
【0040】
床窓用接合部31は、床窓12が回動自在になるように、床窓12を軸支している。対して、外枠用接合部32は、反転支持部30が回動自在になるように、外枠11bに反転支持部30を軸支している。よって、反転支持部30は外枠用接合部32を軸に床窓12の開閉の回動方向と逆方向の回動を行う。
【0041】
レール40は外枠11bに設けられ、開閉軸部20(以下、ローラー状に形成された開閉軸部20をローラーヒンジ20という)が沿って移動できるようにレール状に形成されている。レール40の形状はローラーヒンジ20の形状に合わせた形状であればよい。ただし、開閉時にローラーヒンジ20には図3上において、上下方向の力が加わり、そのため外枠11から外れてしまわないように、ローラーヒンジ20の上下を覆う形状が好ましい。
【0042】
制動部41はレールと同一に形成され、ローラーヒンジ20の移動を制動する。レール40はローラーヒンジ20の移動を制動できればいいので、板状のストッパなどでもよい。
【0043】
床窓12の上辺には床窓12を引き上げるための取手15を設ける。
【0044】
本発明に係る第1の実施の形態のクレーン100の動作を説明する。図4に床窓12が閉口状態、図5に床窓12の開閉動作の途中、図6に床窓12の開口状態を示す。
【0045】
図4に示すように、床窓反転機構10は水平から9度〜15度の角度となるようにクレーン100の運転室61に設置され、運転室61の下方の作業を確認することができる。床窓12が閉口状態にあるとき、反転支持部30の接合部31と接合部32の間の長さは最短の長さになっている。
【0046】
床窓12の上辺14aを開方向に引き上げる。すると、床窓12はローラーヒンジ20によって軸支されているため、下辺14bを開閉軸として、図5において左回りに回動する。反転支持部30は支持部33の長さを床窓12の回動に合わせて伸ばしながら、両端の床窓用接合部31、外枠用接合部32が回動し、床窓12の開閉動作を支える。このとき、反転支持部30は外枠用接合部32を回動軸として、床窓12とは反対方向の回動を行う。
【0047】
開閉軸部20と反転支持部30の連動により床窓12は開いていく。この床窓12の開閉回動動作を開閉回動という。開閉回動は反転支持部30の支持部33の長さが最も長くなるまで、そのままの状態で進む。
【0048】
図5に示す状態は、丁度、支持部33の長さが長くなった状態を示す。このとき床窓の開口動作角は鋭角である。
【0049】
次に、ローラーヒンジ20を外枠11bに沿って、外枠11bの上辺14a方向にレール40内で移動させていく。このとき反転支持部30の床窓用接合部31を軸に床窓12の回動が始まる。この回動を反転回動という。同時にローラーヒンジ20を開閉軸にする開閉回動も引き続き行われており、床窓12の開口動作角の角度も大きくなっていく。
【0050】
図6に示すように、床窓12の開口動作角が鈍角になったとき、すなわち、床窓12の運転室61から見て外側の面が運転室61内に向いたとき、ローラーヒンジ20がレール40に設けた制動部41で制止する。制動部41があるためにローラーヒンジ20の移動がそれ以上は行われず、よって、床窓12の開閉動作も止まり、床窓12の開口動作は終了する。このとき床窓12の開口動作角は鈍角を示し、運転室から外側の面が運転室内に向いた状態になる。さらにこのとき、床窓12を平面投影すると、床窓12の上辺14aは、外枠11bからはみ出ていない、または少しはみ出す程度である。
【0051】
反転支持部30の床窓用接合部31、外枠用接合部32に、それぞれの回動を止めるロック機能を設ければ、ロックをかけることで、床窓12は閉方向への回動ができずに固定され、安全に清掃作業を行うことができる。また、レール40にローラーヒンジ20の移動をロックするための機能を設け、ローラーヒンジ20の移動が戻らないようにすれば、開方向及び閉方向どちらにも回動はできず、床窓12を固定した状態で清掃作業を行うことができる。
【0052】
図7は本発明に係る第2の実施の形態のクレーン100の運転室61の床窓反転機構1
0の開状態を示す。反転支持部50は床窓用接合部51と外枠用接合部52とダンパー53(支持部)を備える。ダンパー53(支持部)は床窓12を付勢し、外枠11bに支持している。本発明に係る第2の実施の形態において、ダンパー53(支持部)の付勢により、床窓12が閉状態のとき、開閉ストッパを開くと、ダンパー53(支持部)によって床窓12は上辺14aが少し立ち上がる。
【0053】
クレーンの運転室61に上記の床窓反転機構10を設置する。図8に示すように、床窓12は反転動作中および反転が完了した状態において、床窓12が平面視で外枠11bから外の領域にはみ出ることがない。そのため運転室61内の運転室コンソール67や運転席68の配置をわざわざ変えなくても、床窓12は運転室コンソール67や運転席68などにぶつからない。
【0054】
また、床窓12が反転した際に、運転室61から見て床窓12の外面の全面を運転室61の室内に向けることができる。そのため、安全且つ効率的に床窓12の清掃を行うことができる。
【0055】
床窓12の開口動作角度は鈍角である必要はなく、床窓12が開口状態のときに、床窓12の運転室61より外側の面が運転室61内に向けばよい。
【0056】
本発明に係る実施の形態として、クレーン100の運転室61の床窓反転機構10を説明したが、この運転室61の床窓反転機構10を岸壁クレーン、門型のヤードクレーン、ゴライアスクレーン、ジブクレーン、タワークレーン、アンローダークレーン、及び天井クレーンなどのクレーンに設け、高所に設けた床窓を、運転室内から安全に清掃することができる。また、高所で床窓が必要な設備、例えば高層建築物の展望台など床窓に適用可能である。加えて、床窓反転機構10は床窓12に限らず、横すべり出し窓や縦すべり出し窓、もしくは天窓に利用することもできる。その際、内側から窓の外側を清掃することができる効果の他に、開口時に開口面積を大きくすることができるという効果もある。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明のクレーンの運転室は、床窓の運転室より外側の面を運転室内に向けることができ、床窓の清掃が運転室内から行うことができるため、岸壁クレーン、門型のヤードクレーン、ゴライアスクレーン、ジブクレーン、タワークレーン、アンローダークレーン、及び天井クレーンなどのクレーンの運転室に適用できる。加えて、高層建築物の展望台などの高所での床窓が必要な設備にも適用できる。
【符号の説明】
【0058】
10 床窓反転機構 33 支持部
11 床面 40 レール
11a 開口部 41 制動部
11b 外枠 50 反転支持部
12 床窓 51、52 接合部
20 開閉軸部(ローラーヒンジ) 53 ダンパー(支持部)
30 反転支持部 61 クレーンの運転室
31、32 接合部
図1
図2
図3
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図7
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図10