特許第5798885号(P5798885)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社フジクラの特許一覧 ▶ 日本電信電話株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5798885-光ファイバケーブル 図000005
  • 特許5798885-光ファイバケーブル 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5798885
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】光ファイバケーブル
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/44 20060101AFI20151001BHJP
【FI】
   G02B6/44 366
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-234666(P2011-234666)
(22)【出願日】2011年10月26日
(65)【公開番号】特開2013-92647(P2013-92647A)
(43)【公開日】2013年5月16日
【審査請求日】2014年7月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102783
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 高明
(72)【発明者】
【氏名】竹田 大樹
(72)【発明者】
【氏名】岡田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】山中 正義
(72)【発明者】
【氏名】富川 浩二
(72)【発明者】
【氏名】山田 裕介
(72)【発明者】
【氏名】角田 大祐
(72)【発明者】
【氏名】中根 久彰
【審査官】 吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−216834(JP,A)
【文献】 特開平08−262288(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバユニットを内部に収納する一つのスロット溝を備えたC字断面形状のスロットコアと、このスロットコアの周囲を押え巻きテープを介して被覆するシースと、前記スロットコア及びシースにケーブル長手方向に沿って埋設された抗張力体と、を備えた光ファイバケーブルにおいて、
前記光ファイバユニットは、前記スロット溝からその一部がはみ出しており、該スロット溝からはみ出た部分を含めて該スロット溝の開口部が、前記押え巻きテープで覆われており、
前記スロット溝の開口部幅をW、光ファイバユニットの直径をUd、スロット溝の直径をD、スロット溝の開口部先端からスロット溝底までの距離をS1とした場合に、0.66Ud≦W≦D、かつ、0.49Ud≦S1≦1.0Udなる関係にある
ことを特徴とする光ファイバケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバユニットを内部に収納するC字断面形状のスロットコアを備えた光ファイバケーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載の光ファイバケーブルは、汎用工具でケーブル端末やケーブル中間部位で分岐を可能のするために、C字断面形状を有したスロットコアに光ファイバユニットを集合し、それらをシースで覆った構造である。
【0003】
近年、ケーブルの細径化が進み、光ファイバ特性を担保可能な範囲でスロットコアに形成したスロット溝の面積を低減し、また、スロットコア及びシースの肉厚を薄くして細径化を追求することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−76897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、C字断面形状のスロットコアを備えた光ファイバケーブルでは、光ファイバユニットをスロットコアから取り出す際に、当該光ファイバユニットがスロット溝の開口部先端に形成されたスロットコアリブに覆われていると、光ファイバユニットの取り出しが悪くなる。
【0006】
前記スロット溝の開口部幅が狭くなる程、前記スロットコアリブによって光ファイバユニットがより一層覆われるため、該光ファイバユニットの取り出し時のきっかけが確保できなくなる。仮に、光ファイバユニットをつかんで取り出したとしても、光ファイバユニットを前記スロットコアリブでしごいてしまい大きな損失変動を与えることがある。
【0007】
特に、近年の要求により細径化を狙い実装密度を向上させた光ファイバケーブルでは、光ファイバユニット径とスロット溝径が近くなるため、スロットコアのスロット溝内から光ファイバユニットを取り出し難くなることがより顕著になる。この一方、スロット溝の開口部幅を広くした場合には、ケーブル製造時にスロット溝へ光ファイバユニットを集合しようとした際に、集合時の回転等が伝播した際にスロット溝から光ファイバユニットが脱落したりする。
【0008】
そこで、本発明は、光ファイバユニットをスロットコアから損失変動を生じさせずに取り出すことを可能にすると共に、ケーブル製造時の光ファイバユニットのスロットコアからの脱落を防止することのできる光ファイバケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、光ファイバユニットを内部に収納する一つのあるいは複数のスロット溝を備えたC字断面形状のスロットコアと、このスロットコアの周囲を押え巻きテープを介して被覆するシースと、前記スロットコア及び前記シースにケーブル長手方向に沿って埋設された抗張力体と、を備えた光ファイバケーブルにおいて、前記光ファイバユニットは、前記スロット溝からその一部がはみ出しており、該スロット溝からはみ出た部分を含めて該スロット溝の開口部が、前記押え巻きテープで覆われていることを特徴としている。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、前記スロット溝の開口部幅をW、光ファイバユニットの直径をUd、スロット溝の直径をD、スロット溝の開口部先端からスロット溝底までの距離をS1とした場合に、0.66Ud≦W≦D、かつ、0.49Ud≦S1≦1.0Udなる関係にあることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の光ファイバケーブルによれば、スロット溝から光ファイバユニットの一部がはみ出ているので、スロットコアリブにしごかれることなく光ファイバユニットを取り出すことができ、光ファイバの損失変動を抑制することができる。また、スロット溝からはみ出た光ファイバユニットの一部を押え巻きテープで覆っているので、スロット溝への集線時に光ファイバユニットが押え巻きテープによってスロット溝から脱落するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態の光ファイバケーブルの横断面図である。
図2】本実施形態の光ファイバケーブルを構成するスロットコアのスロット溝と光ファイバユニットの寸法関係をそれぞれ示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を適用した具体的な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。図1は本発明を適用した光ファイバケーブルのケーブル長手方向に垂直な横断面図である。
【0014】
光ファイバケーブル1は、光ファイバユニット2を内部に収納する一つのあるいは複数のスロット溝3を備えたC字断面形状のスロットコア4と、このスロットコア4の周囲を押え巻きテープ5を介して被覆するシース6と、スロットコア4及びシース6にケーブル長手方向に沿って埋設された抗張力体7と、から構成されている。
【0015】
光ファイバユニット2は、例えば光ファイバ素線、光ファイバテープ心線などを複数本纏めて円形状にしたものである。光ファイバ素線は、石英ガラスファイバの周囲に紫外線硬化型樹脂で被覆したものである。光ファイバテープ心線は、光ファイバ素線の複数本を並列しそれらをテープ材で被覆したもの、または光ファイバ素線の複数本を並列し互いに隣接する光ファイバ素線同士を間欠的に連結したものである。
【0016】
スロットコア4は、図2に示すように、C字断面形状に形成されている。このスロットコア4には、光ファイバユニット2をその内部に収納するファイバ収納部としてのスロット溝3が形成されている。スロットコア4は、円形の一部を削り落とした断面形状となっている。そのため、スロットコア4のスロット溝開口部側にはスロットコアリブが無く、スロット溝3の開口両端部は水平面4aとされている。スロット溝3は、スロットコア4の中心位置から外れた位置を中心とした円弧形状とされている。なお、この実施形態では、スロット溝3は一つであるが、その数は複数でもよい。
【0017】
スロットコア4には、ケーブルの曲げ方向を規制すると共にケーブル自体の剛性を確保するための抗張力体7が設けられている。抗張力体7は、鋼線や樹脂繊維線などからなり、ケーブル長手方向に沿ってスロットコア4のスロット溝底下側の位置に埋設されている。
【0018】
押え巻きテープ5は、光ファイバユニット2のスロット溝3からはみ出た部分を含めて前記スロットコア4のスロット溝開口両端部に形成された水平面4aに密着するようにして当該スロット溝全体を覆っている。
【0019】
シース6は、光ファイバユニット2及びスロットコア4の外周囲全体を被覆するように押し出し成形されることにより形成されている。かかるシース6には、例えばポリエチレン(PE)、ポリオレフィン(PO)等の樹脂が使用される。そして、シース6には、光ファイバケーブル1の中心を通る中心線上に、光ファイバユニット2を挟んでスロットコア4に埋設された抗張力体7と同じく抗張力体7がケーブル長手方向に沿って埋設されている。
【0020】
以上のように構成された光ファイバケーブル1においては、スロットコア4のスロット溝3と光ファイバユニット2との寸法関係を次のようにしている。図2に示すように、スロット溝3の開口部幅をW、光ファイバユニット1の直径をUd、スロット溝3の直径をD、スロット溝3の開口部先端からスロット溝底までの距離をS1とした場合に、0.66Ud≦W≦D、かつ、0.49Ud≦S1≦1.0Udなる関係としている。
【0021】
スロット溝3の開口部幅W、溝深さS1及び直径Dと光ファイバユニット直径Udとの関係は、次の理由及び実験結果に基づく。光ファイバユニットの把持性(つまみ出し性)に関しては、スロット溝深さS1が光ファイバユニット直径Udよりも大きい場合、スロット溝3からの光ファイバユニット2の把持(つまみ出し)が困難になる。これに対して、スロット溝深さS1が光ファイバユニット直径Udよりも小さい場合、光ファイバユニット2の一部がスロット溝3からはみ出すことから、その部位を把持することが可能となる。
【0022】
さらに、一般的には、光ファイバユニット2は光ファイバに延び歪みが加わらないようにケーブル中で余長を持たせており、ケーブルの開口部が内側になるように僅かに曲げると光ファイバユニット2が開口部からはみ出し、把持が比較的容易になる。また、光ファイバユニット2は、複数の光ファイバ心線を撚って形成されているため、その一部を把持することができれば、それを引き上げることで撚り合わせた他の光ファイバ心線も共に取り出すことができる。
【0023】
光ファイバユニット2の取り出し性に関しては、スロット溝3の開口部幅Wが光ファイバユニット2に対して充分に大きい場合、取り出し性は容易になる。逆に、スロット溝3の開口部幅Wが小さいと、光ファイバユニット2の取り出し時にスロットコアリブで当該光ファイバユニット2をしごき、光ファイバに損失変動を与えたり、損傷や断線を発生させる原因になる。なお、光ファイバユニット2は、複数本の光ファイバ心線を集合してなるものであるから、取り出し時にそれ自体が変形する。そのため、スロット溝3の開口部幅Wは、必ずしも光ファイバユニット直径Udよりも大きい必要はない。
【0024】
実験による検証は、次のようにした。外径φ10.0mmの200心型光ファイバケーブルを製造した。シース及びスロットコアに高密度ポリエチレンを被覆し、φ0.95mmの抗張力体をシース及びスロットコアに各々1本づつ実装した。なお、200心の光ファイバユニットの集合径をφ5.2mmとした。
【0025】
そして、スロット溝深さS1を表1に示すように変化させ、光ファイバケーブルからの光ファイバユニットの把持性(つまみ出し性)と製造時の集合性を確認した。
【表1】
【0026】
光ファイバユニットの把持性は、光ファイバケーブルを中間後分岐した際に、スロット溝から光ファイバユニットが指を使ってつまみ出せる場合を○、光ファイバケーブルをスロット溝の開口部側に曲げることで光ファイバユニットがつまみ出せる場合を△、つまみ出せない場合を×として評価した。また、光ファイバユニットの集合性は、スロットコアへの光ファイバユニットの集合時に集合点からシース間でスロット溝から光ファイバユニットが外れた場合を×、きちんと集合できた場合を○として評価した。
【0027】
これらの検討結果、スロット溝深さS1が1.12Udであると、光ファイバユニットの取り出し代が確保できず、取り出しが困難となった。また、製造時の集合性については、スロット溝深さS1が光ファイバユニットの0.49Ud以上でないと、光ファイバユニットがスロット溝から外れ、集合が困難になる現象が生じた。
【0028】
次に、スロット溝の開口部幅Wを表2に示すように変化させ、光ファイバケーブルからの光ファイバユニットの取り出し時の損失変動を確認した。
【表2】
【0029】
光ファイバケーブルを中間後分岐し、光ファイバユニットをスロット溝から取り出す際の損失変動が0.1dB以上となる場合を×、0.1dB未満である場合を○とした。この結果、光ファイバユニット直径Udの0.66倍以上であれば、取り出しの際の伝送損失を良好に保てることが確認された。以上の結果から、光ファイバケーブルを、前記したように、0.66Ud≦W≦D、かつ、0.49Ud≦S1≦1.0Udなる関係とすることが望ましい。
【0030】
次に、前記関係式を満たす本実施形態の光ファイバケーブルを以下の条件の基に製造し、そのケーブル特性を調べた。外径φ10.0mmの200心型光ファイバケーブルを製造した。シース及びスロットコアに高密度ポリエチレンを被覆し、φ0.95mmの抗張力体をシース及びスロットコアに各々1本づつ実装した。なお、200心の光ファイバユニットには、隣接する光ファイバ素線同士を間欠的固定した4心のテープ心線を用い、その集合径をφ5.2mmとした。スロットコアについては、スロット溝の開口部幅Wを4.5mm、スロット溝深さS1を3.1mmとした。
【0031】
前記光ファイバケーブルのケーブル特性を表3に示す。ケーブル特性の項目は、製造後の伝送損失、伝送損失温度特性、側圧特性、衝撃特性、曲げ特性、捻回特性、光ファイバユニット取り出し時の損失変動とした。
【表3】
【0032】
表3の結果によると、何れの各項目も良好である結果が得られた。
【0033】
以上のように、本実施形態の光ファイバケーブルによれば、スロット溝3から光ファイバユニット2の一部がはみ出しているので、スロットコアリブにしごかれることなく光ファイバユニット2を取り出すことができる。これにより、光ファイバユニット取り出し時の損失変動を抑制することが可能となる。
【0034】
また、本実施形態の光ファイバケーブルによれば、スロット溝3からはみ出た光ファイバユニット2の一部を押え巻きテープ5で覆っているので、スロット溝3への集線時に光ファイバユニット2が押え巻きテープ5によってスロット溝3から脱落するのを防止することができる。
【0035】
また、本実施形態の光ファイバケーブルによれば、スロット溝3の開口部幅をW、光ファイバユニット2の直径をUd、スロット溝3の直径をD、スロット溝3の開口部先端からスロット溝底までの距離をS1とした場合に、0.66Ud≦W≦D、かつ、0.49Ud≦S1≦1.0Udなる関係としたので、光ファイバユニット2の把持性、スロット溝3への光ファイバユニット2の集合性、スロット溝3からの光ファイバユニット2の取り出し性の何れも良好なものになる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、光ファイバユニットを内部に収納するC字断面形状のスロットコアを備えた光ファイバケーブルに利用することができる。
【符号の説明】
【0037】
1…光ファイバケーブル
2…光ファイバユニット
3…スロット溝
4…スロットコア
6…シース
7…抗張力体
図1
図2