特許第5798907号(P5798907)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5798907ポリビニルアルコール系重合体及びこれを用いた加水分解性セルロースの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5798907
(24)【登録日】2015年8月28日
(45)【発行日】2015年10月21日
(54)【発明の名称】ポリビニルアルコール系重合体及びこれを用いた加水分解性セルロースの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08B 1/00 20060101AFI20151001BHJP
   C08L 1/00 20060101ALI20151001BHJP
   C08F 8/12 20060101ALI20151001BHJP
   C08L 29/04 20060101ALI20151001BHJP
【FI】
   C08B1/00
   C08L1/00
   C08F8/12
   C08L29/04 B
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-274506(P2011-274506)
(22)【出願日】2011年12月15日
(65)【公開番号】特開2013-124319(P2013-124319A)
(43)【公開日】2013年6月24日
【審査請求日】2014年8月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(72)【発明者】
【氏名】秦 誠二
(72)【発明者】
【氏名】仲前 昌人
【審査官】 柳本 航佑
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−285117(JP,A)
【文献】 特開2002−060406(JP,A)
【文献】 特開2001−233905(JP,A)
【文献】 特開2006−095724(JP,A)
【文献】 特表2011−516066(JP,A)
【文献】 特開昭54−024966(JP,A)
【文献】 特公昭54−003184(JP,B1)
【文献】 特開昭51−136914(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08B 1/00
C08F 8/00− 8/50
C08L 1/00−101/14
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース系バイオマスを原料とした加水分解性セルロースの製造方法であって、
平均重合度が300以上4,000以下、
ケン化度が78.0モル%以上95.0モル%以下、
残存酢酸基のブロックキャラクターが0.495以下であるポリビニルアルコール系重合体の水溶液及びセルロース系バイオマスを含む混合物を得る混合工程と、
上記混合物に剪断力を付加してセルロース系バイオマスを分断する分断工程と
を有する製造方法。
【請求項2】
上記水溶液がゲル状である請求項に記載の加水分解性セルロースの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロース系バイオマスを原料とした加水分解性セルロースの製造に用いられるポリビニルアルコール系重合体、及びこれを用いた加水分解性セルロースの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオマスとは、生物由来の再生可能な資源をいい、「再生可能な、生物由来の有機性資源で化石資源を除いたもの」と定義することができる。このバイオマスの中でも、間伐材等の木材、稲わら、麦わら、籾殻、トウモロコシやサトウキビ等澱粉系作物の茎、アブラヤシの空房(EFB)など、未利用の植物系バイオマスの有効活用が求められている。
【0003】
このような植物系バイオマスの成分の中でも、澱粉等の多くの多糖類は、酵素等により容易に単糖類に分解され、エネルギー源や食料等として利用されている。そこで、植物系バイオマスの有効活用のためには、植物細胞中の存在比率が高いセルロースをメタンや単糖類(グルコース)に分解し、エネルギー源や食料等として利用することが重要とされている。ただし、セルロースは細胞壁の大部分を形成していることからもわかるように、強固な構造を有し分解されにくいため、有効活用されていないのが実情である。
【0004】
具体的にはセルロースは、細胞壁中で以下のような多重構造を有している。細胞壁を形成するセルロースは、大部分がミクロフィブリルと言われる直線状に密着した準結晶構造を有している。この準結晶構造を有するセルロース(ミクロフィブリル)同士は、ヘミセルロースやリグニン等の非セルロース成分を介して互いに結合している。これらのセルロース成分(ミクロフィブリル)及び非セルロース成分は、一般的にフィブリルと言われる更に大きな構造体として配列されている。このフィブリルは、通常、シート状に積層されて、細胞壁を構成している。上述の準結晶構造を有するセルロース(ミクロフィブリル)において、セルロースのポリマー鎖は、水素結合によって強く結びついている。この水素結合により、植物は強固な細胞壁を備えることとなる。
【0005】
このような構造を有するセルロースをメタンに分解する手段としては、嫌気性微生物の分解消化による方法などがある。しかしながら、微生物を利用したセルロースの分解は、反応制御が複雑である等の理由から、実用性が十分ではない。
【0006】
一方、触媒や酵素を用いて、セルロースを単糖類に加水分解することも、化学的には可能である。セルロースの化学的分解により得られた単糖類は、例えば醗酵によってエタノールに変換され、既存の内燃機関やタービンにエネルギー源として用いることができる。しかしながら、植物由来のセルロース系バイオマスを化学的に直接加水分解することは、上述のような細胞壁におけるセルロースの分子構造上、効率的ではない。これはセルロースの強固な構造が、水及び酵素等の準結晶構造内部への進入を妨げ、セルロース分解酵素の作用を大きく遅らせることに起因すると考えられる。すなわち酵素は、水素結合によって強く結びついた準結晶構造の内部に容易には進入できないため、グリコシド結合を直接には分解することができない。従って、酵素はセルロースの準結晶構造の表面から徐々に分解していくことしかできないため、セルロース系バイオマスを直接、酵素によって加水分解することは効率が高くない。
【0007】
そこで、セルロース系バイオマスを酵素等による加水分解前に予め細かく分断して、加水分解しやすいセルロースを製造する方法が提案されている。この方法は、基本的には、準結晶構造を有するセルロースを徐々に水和させ、この水和によって隣接するセルロースのポリマー鎖間の水素結合を弱めるという化学的な作用と、セルロース系バイオマスに叩解、混練等により機械的に力を付与してセルロースポリマー鎖を分断するという物理的な作用とを利用するものである。この方法の具体的内容として、例えば(1)容器内でセルロース系バイオマス粒子を撹拌して粒子の浮遊体を生成し、その後、撹拌を継続しながら粒子の浮遊体の温度を上昇させると共に水を徐々に供給して水和させることによって微細な粉末を製造する技術(特許文献1参照)、(2)セルロース系バイオマス粒子を粘性のある水溶性ポリマー水溶液と混ぜて撹拌し、撹拌によって生じる機械的な力を効率的にセルロースポリマー鎖に伝え、セルロースポリマー鎖を互いに引き離すように分断する技術(特許文献2参照)等が提案されている。
【0008】
しかしながら、(1)の技術では、セルロース系バイオマスの微粒子を浮遊体として存在させるための装置が複雑なものとなる。また、この技術の使用の際に多大なエネルギーを消費するため、生産性が高いとは言えない。一方、(2)の技術では、水溶液に粘性を付与するための水溶性高分子の使用により、セルロース系バイオマスの一定程度の易加水分解性の向上が認められる。しかしながら、実用化に向けての加水分解性の向上のためには、更なる改良が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特表2004−526008号公報
【特許文献2】国際公開第2009/124072号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、このような事情に基づいてなされたものであり、セルロース系バイオマスを原料とした加水分解性セルロースの製造の際に、セルロース系バイオマスを含む混合物に好適な粘性を付与すること等により、セルロース系バイオマスの分子レベルの分断を容易に行うことができ、その結果、加水分解性セルロースを効率的に製造することができるポリビニルアルコール系重合体、及びこのポリビニルアルコール系重合体を用いた加水分解性セルロースの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するためになされた本発明のポリビニルアルコール系重合体は、
セルロース系バイオマスを原料とした加水分解性セルロースの製造に用いられるポリビニルアルコール系重合体であって、
平均重合度が300以上4,000以下、
ケン化度が78.0モル%以上95.0モル%以下、
残存酢酸基のブロックキャラクターが0.495以下である。
【0012】
当該ポリビニルアルコール系重合体によれば、平均重合度、ケン化度及び残存酢酸基のブロック性を表すブロックキャラクターを上記範囲とすることで、このポリビニルアルコール系重合体水溶液とセルロース系バイオマスとを好適な粘性で効率よくかつ均一に混ぜ合わせることができる。従って、当該ポリビニルアルコール系重合体を用いると、適度な粘性を有するこの水溶液とセルロース系バイオマスとを混ぜ合わせること等により、セルロース系バイオマスへ適当な剪断力を付加することができる。当該ポリビニルアルコール系重合体を用いたこのような作業においては、粘性のある水溶液によってセルロースポリマー鎖同士が容易にひき離され、また、準結晶構造を有するポリマー鎖の内部に水及びポリビニルアルコール系重合体が効率的に進入することでポリマー鎖間の水素結合を弱めていくことができる。さらには、このように引き裂かれたポリマー鎖間にポリビニルアルコール系重合体が進入することで、この構造の再準結晶化を防ぐことができる。すなわち当該ポリビニルアルコール系重合体によれば、セルロース系バイオマスにおけるセルロース鎖を効果的に分子レベルで分断し、酵素等によって容易に加水分解(糖化)されるセルロースを得ることができる。
【0013】
上記課題を解決するためになされた別の発明は、
セルロース系バイオマスを原料とした加水分解性セルロースの製造方法であって、
上記ポリビニルアルコール系重合体の水溶液及びセルロース系バイオマスを含む混合物を得る混合工程と、
上記混合物に剪断力を付加してセルロース系バイオマスを分断する分断工程と
を有する方法である。
【0014】
当該加水分解性セルロースの製造方法によれば、ポリビニルアルコール系重合体の水溶液とセルロース系バイオマスとを混合することで、適当な粘性を有する混合物とすることができる。また、当該製造方法によれば、この混合物に剪断力を付加することで、粘り気のある水溶液によってセルロースポリマー鎖同士が容易に引き離され、また、準結晶構造を有するポリマー鎖の内部に水及びポリビニルアルコール系重合体が効率的に進入することでポリマー鎖間の水素結合を弱めていくことができる。すなわち、当該加水分解性セルロースの製造方法によれば、セルロース系バイオマスにおけるセルロースポリマー鎖を効果的に分子レベルで分断し、酵素等によって容易に加水分解(糖化)されるセルロースを得ることができる。
【0015】
当該製造方法において、上記水溶液がゲル状であるとよい。このようにゲル状であるポリビニルアルコール系重合体水溶液を用いることで、分断工程における当初段階から混合物を好適な粘性とすることができ、また、その粘性を一定程度維持することができるため効率のよい加水分解性セルロースの製造を行うことができる。さらにはゲル状であることで、分断されたセルロースポリマー鎖間にこのゲル状水溶液が進入し、かつ留まることができるため、セルロースポリマー鎖の再準結晶化を防ぐことができ、分断能が向上することとなる。
【0016】
ここで、「加水分解性セルロース」とは、セルロース系バイオマス等を原料とし、これを物理的に分断等して得られるセルロースであり、上記原料よりも加水分解性が高まったものをいう。「平均重合度」とは、JIS−K6726に準じて測定した粘度平均重合度(P)の値である。すなわち、ケン化度が99.5モル%未満の場合は、ポリビニルアルコール系重合体をケン化度99.5モル%以上に再ケン化し、精製した後、30℃の水中で測定した極限粘度[η](単位:デシリットル/g)から下記式(1)により求めた値である。
P=([η]×1000/8.29)(1/0.62) (1)
また、「ケン化度」とは、JIS−K6726に準じて測定した値である。「水溶液」とは、溶媒として水を用いた溶液をいい、流動性を失ったゲル状のものも含む概念である。
【0017】
また、「残存酢酸基のブロックキャラクター」とは、部分ケン化ポリビニルアルコール系重合体の残存酢酸基の連鎖分布状態を表わすための指標であり、13C−NMRスペクトル中のメチレン領域に現れる3本のピークの解析により求められる。該スペクトルにおいて、3本のピークは、左側より(OH,OH)、(OH,OAc)、(OAc,OAc)に相当する3個の2単位連続構造(dyad)に相当し、その吸収強度は3個の構造に比例している。残存酢酸基のブロックキャラクター(η’)は、下記式(2)により求めた値である。
η’=(OH,OAc)/〔2(OH)(OAc)〕 (2)
(式(2)中、(OH,OAc)は、上記の測定から求められる2単位連続構造(OH,OAc)の割合を表わし、(OH)はケン化度を表わし、(OAc)は残存酢酸基の割合を表わし、それぞれモル分率で示される。)残存酢酸基のブロックキャラクター(η’)は、0から2までの値を取ることができる。残存酢酸基のブロックキャラクター(η’)が0の場合、完全にブロック的であり、2に近づく程交互性があり、η=1の場合は完全に残存酢酸基とOH基とがランダムに存在することを示す〔例えば「ポバール」、(株)高分子刊行会、1981年4月1日改定新版発行、第246頁〜第249頁参照〕。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明のポリビニルアルコール系重合体によれば、セルロース系バイオマスを原料として加水分解性セルロースを製造する際に、セルロース系バイオマスを含む混合物に好適な粘性を付与すること等により、セルロース系バイオマスの分子レベルの分断を容易に行うことができ、その結果、加水分解性セルロースを効率的に製造することができる。また、本発明の加水分解性セルロースの製造方法によれば、セルロース系バイオマスを原料として、効率よく加水分解性セルロースを製造することができる。
【0019】
従って、本発明によれば、植物系のバイオマス原料を、効率よく食物やエネルギー資源として活用することができ、バイオマス活用の実現性を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明のポリビニルアルコール系重合体、及びこれを用いた加水分解性セルロースの製造方法の実施の形態を順に詳説する。
【0021】
〔ポリビニルアルコール系重合体〕
本発明のポリビニルアルコール系重合体(以下、「PVA」ともいう。)は、平均重合度が300以上4,000以下、ケン化度が78.0モル%以上95.0モル%以下、残存酢酸基のブロックキャラクターが0.495以下である。
【0022】
当該PVAは、平均重合度、ケン化度及び残存酢酸基のブロックキャラクターが特定の範囲にあるため、水及びセルロースとの親和性が高く、また、そのようなれら官能基又は単位の高い反応性により、当該PVAは水溶液の粘性を高めることができると共に、この水溶液を粉末又は粒子状のセルロース系バイオマスと混ぜ合わせた際に、得られる混合物でのセルロース系バイオマスの均一分散性(混和性)を高めることができる。
【0023】
従って、当該PVAの水溶液とセルロース系バイオマス粒子とを混ぜ合わせるなどすることによって、セルロース系バイオマスへ適当な剪断力を付加することができる。つまり、当該PVAを用いたこのような作業において、粘性のある水溶液によってセルロースポリマー鎖同士が容易に引き離され、また、準結晶構造を有するポリマー鎖の内部に水及びPVAが効率的に進入することでポリマー鎖間の水素結合を弱めていくことができる。さらには、このように引き裂かれたポリマー鎖間にPVAが進入することで、ポリマー鎖の再準結晶化を防ぐことができる。すなわち当該PVAによれば、セルロース系バイオマスにおけるセルロースポリマー鎖を効果的に分子レベルで分断し、酵素等によって容易に加水分解(糖化)されるセルロースを得ることができる。
【0024】
当該PVAの製造方法は特に限定されないが、通常は、酢酸ビニルに代表されるビニルエステル系単量体又はビニルエステル系単量体とエチレン性不飽和単量体とを各種方法(塊状重合、メタノール等を溶媒とする溶液重合、乳化重合、懸濁重合等)で重合した後、公知の方法(アルカリケン化、酸ケン化等)によりケン化することによって得られる。なお、上記ビニルエステル系単量体としては、酢酸ビニル、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ピバリン酸ビニル等を挙げることができるが、重合制御性、入手容易性等から酢酸ビニルが好ましい。
【0025】
重合に際して、本発明の趣旨を損なわない範囲で共重合可能なエチレン性不飽和単量体が共重合されたものでもよい。このようなエチレン性不飽和単量体としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等のオレフィン類、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクタデシル等のアクリル酸エステル類、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸オクタデシル等のメタクリル酸エステル類、メチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル等のビニルエーテル類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル類、塩化ビニル、塩化アリル等のアリル化合物、フマール酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水トリメット酸、無水イタコン酸等のカルボキシル基含有化合物及びそのエステルや酸無水物、ジアセトンアクリルアミド、ジアセトンアクリレート、ジアセトンメタクリレート等のジアセトン基含有化合物、酢酸イソプロペニル、3−アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、3−メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
【0026】
また、チオール酢酸、メルカプトプロピオン酸などのチオール化合物存在下で、酢酸ビニルなどのビニルエステル系単量体を重合し、それをケン化することによって得られる末端変性物も用いることができる。
【0027】
さらに、本発明のPVAは、残存酢酸基のブロックキャラクターが0.495以下であることが重要であるが、このようなPVAにおける残存酢酸基のブロックキャラクターは、ポリビニルエステル系重合体をケン化する際の各種条件、例えば、ケン化触媒の種類、ケン化溶媒の種類、ケン化系のポリビニルエステル系重合体の濃度、ケン化系の混合性などで調整することができる。工業的には、これら残存酢酸基のブロックキャラクターに影響を与える因子を複合的に制御することにより所望のブロックキャラクターを有するPVAが製造される。具体的には、例えば、アルカリをケン化触媒に使用したり、ケン化系溶媒としてメタノールに加えて酢酸メチルなどの溶媒を混合し、ケン化触媒のビニルエステル系重合体溶液への混合性を低くしたり、ケン化系のポリビニルエステル系重合体の濃度を高くしたりすることにより残存酢酸基のブロックキャラクターを上記の範囲にすることができる。
【0028】
当該PVAの平均重合度は、300以上4,000以下であり、500以上3,500以下が好ましく、700以上3,000以下がより好ましい。当該PVAの平均重合度を上記範囲とすることで、このPVAを水溶液として用い、セルロース系バイオマスと混合した際に、好適な粘性で効率よく、かつ均一に混ぜ合わせることができ、その結果、セルロースポリマー鎖を効率的に分断し、加水分解を容易に行うことができる状態とすることができる。また、このように平均重合度の高いPVAを用いることで、少ない量のホウ酸等でゲル化させることができる。
【0029】
当該PVAの平均重合度が300未満の場合は、分子量が小さすぎるため、十分な粘性を水溶液に付与しにくく、混練の際にセルロースポリマー鎖同士を物理的に引き離す力が弱くなるおそれがある。逆に、この平均重合度が4,000を超えると溶解性が低下すると同時に、粘性が高すぎて分断工程における作業性やハンドリング性が低下し易く、また、分子量が大きすぎることでセルロースポリマー鎖間に進入し難くなり、水素結合を弱める作用が低下するおそれがある。
【0030】
当該PVAのケン化度としては、78.0モル%以上95.0モル%以下であり、80.0モル%以上94.5モル%以下が好ましく、83.0モル%以上94.0モル%以下がさらに好ましい。当該PVAのケン化度を上記範囲とすることで、このPVAを水溶液として用い、セルロース系バイオマスと混合した際に、好適な粘性で効率よくかつ均一に混ぜ合わせることができ、その結果、セルロースポリマー鎖を効率的に分断し、加水分解を容易に行うことができる状態とすることができる。
【0031】
当該PVAのケン化度が78.0モル%未満の場合は水溶性が低下すると共に、十分な粘性が得られず、混練等の際のセルロース分断能が低下する傾向がある。逆に、このケン化度が95.0モル%を超えても、セルロースポリマー鎖の分子レベルの分断能は頭打ちとなると共にハンドリング性が低下する。
【0032】
当該PVAの残存酢酸基のブロックキャラクターは0.495以下であり、0.490以下が好ましい。一方、上記PVAの残存酢酸基のブロックキャラクターの下限は、特に限定されないが、0.430が好ましいく、0.440がより好ましい。当該PVAの残存酢酸基のブロックキャラクターを上記範囲とすることで、このPVAを水溶液として用い、セルロース系バイオマスと混合した際に、好適な粘性で効率よく、かつ均一に混ぜ合わせることができるとともに、様々なサイズを有するセルロースの準結晶構造の隙間に効果的に進入することができ、その結果、セルロース鎖を効果的に分断し、加水分解を容易に行うことができる状態とすることができる。
【0033】
当該PVAの残存酢酸基のブロックキャラクターが上記上限より大きい場合は、セルロース系バイオマスの分散性が低くなり、PVAとセルロース系バイオマスの均一性が低下して、その結果、セルロース鎖を水素結合を効率的に弱める能力が小さくなる。
【0034】
本発明のPVAは、セルロース系バイオマスを原料とした加水分解性セルロースの製造に用いられるものである。具体的には、後に詳述するように、PVAの水溶液と、セルロース系バイオマスとを混合して混合物とし、この混合物を練り混ぜることなどにより剪断力を付加し、セルロース系バイオマスを分子レベル(準結晶構造レベル)で細かく分断するために用いることができる。この際、当該PVAの水溶液を用いることで上記混合物の粘性を好適な状態に保つことができる。その結果、当該PVAによれば、混合物の混練等の際、粘り気のある水溶液によってセルロースポリマー鎖を容易に引き剥がし、また、準結晶構造を有するポリマー鎖の内部に水及びポリビニルアルコール系重合体が効率的に進入することでポリマー鎖間の水素結合を弱めていくことができる。さらには、このように引き裂かれたポリマー鎖間にPVAが進入することで、この構造の再結晶化を防ぐことができる。なお、このように分子レベルで分断されたセルロースは、加水分解酵素等によって容易に分解される。
【0035】
〔加水分解性セルロースの製造方法〕
セルロース系バイオマスを原料とした加水分解性セルロースの製造方法は、上記のPVAの水溶液及びセルロース系バイオマスを含む混合物を得る混合工程と、上記混合物に剪断力を付加してセルロース系バイオマスを分断する分断工程とを少なくとも有する。なお、混合工程に先駆けて、当該PVAの水溶液を調製する水溶液調製工程、及びセルロース系バイオマス原料を切断して、セルロース系バイオマスを適当なサイズの粒子とするセルロース系バイオマス原料切断工程、同じく混合工程に先駆けて、当該PVA水溶液をゲル状にするゲル化工程を有することが好ましい。以下、加水分解性セルロースの製造工程に沿って順に説明する。
【0036】
(1)セルロース系バイオマス原料切断工程
本工程においては、以降の工程における処理を効率的にするために、セルロース系バイオマス原料を切断し、適当なサイズの粒子とする。ここで用いられるセルロース系バイオマス原料としては特に限定されず植物由来のバイオマスを好ましく用いることができる。具体的には、例えば、間伐材等の木材、稲わら、麦わら、籾殻、バガス、トウモロコシやサトウキビ等澱粉系作物の茎、アブラヤシの廃棄物(EFB等)、ヤシの実の殻などを挙げることができる。このようなセルロース系バイオマス原料を、可能な限り土等の不要分を取り除いた後、剪断、叩解等の各種切断手段により、粒子状に小さくする。この切断工程においては、例えば、特表2004−526008号公報に記載の分断器や、パルプチップを製造する際に用いられる装置等を好適に採用することができる。
【0037】
この切断工程を経たセルロース系バイオマス粒子のサイズとしては、平均粒径2mm以下が好ましく、1mm以下がさらに好ましく、100μm以下が特に好ましく、20μm以上70μm以下がさらに特に好ましい。セルロース系バイオマス粒子の平均粒径を2mm以下とすることで、以降の混合工程や、特に分断工程を効率よく行うことができ、短時間で加水分解性の優れたセルロースを得ることができる。
【0038】
(2)水溶液調製工程
本工程においては、上記のPVAを水に溶解して水溶液とする。このPVA水溶液の濃度としては、特に限定されないが、3質量%以上30質量%以下が好ましく、5質量%以上20質量%以下がさらに好ましい。PVA水溶液の濃度を上記範囲とすることで、水溶液に適当な粘性を付与することができる。従って、水溶液の濃度を上記範囲とすることで、混練の際に、水溶液を介してセルロース系バイオマスへ物理的な力が効果的に伝わり、その結果、この水溶液によってセルロースポリマー鎖が引き剥がされ、セルロース系バイオマスの分子レベルの分断を効果的に行うことができる。PVA水溶液の濃度が3質量%未満の場合は、水溶液が適当な粘性を有さず物理的な作用による分断機能が十分に発揮されないおそれがある。逆に、当該PVA水溶液の濃度が30質量%を超えると、水溶液の粘性が高すぎて混練しにくくなるため、分断工程における作業性が低下するおそれがある。
【0039】
なお、上記のPVA水溶液は、平均重合度、ケン化度及び残存酢酸基のブロックキャラクターが特定の範囲にある本発明のPVA以外のPVAをさらに含有してもよい。他のPVAを含有する場合、本発明のPVAの含有率は、PVA全体の含有量に対して50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましい。この場合、他のPVAを含むPVA全体としての濃度が、上記濃度範囲となっていることが好ましい。また、PVA水溶液には、PVA以外の他の化合物等が溶解又は分散されていてもよい。
【0040】
(3)ゲル化工程
上述したセルロース系バイオマス原料切断工程によって得られたセルロース系バイオマスの粒子と、上記のPVA水溶液とを混合するに先駆けて、当該PVA水溶液をゲル化すると好ましい。このようなゲル状のPVA水溶液を用いることで、後の分断工程において混合物が混練の初期段階から高い粘性を有するため、混練の物理的作用がセルロース系バイオマスに効果的に伝わり、このセルロース系バイオマスを分子レベルで効率的に分断することができる。さらには、ゲル状のPVA水溶液を用いることで、分断されたセルロースポリマー鎖間にこのゲル状水溶液が進入し、かつ留まることができるため、セルロースポリマー鎖の再準結晶化を防ぐことができ、分断能が向上することとなる。
【0041】
このPVA水溶液のゲル化の方法としては、通常は、ホウ酸塩、チタニウム酢酸塩、その他の金属塩等の化学物質を添加し、当該PVAを架橋させる方法などを挙げることができる。
【0042】
ホウ酸塩を添加してPVA水溶液をゲル化させる場合には、例えば、5質量%のPVA水溶液100質量部に対して、四ホウ酸ナトリウムの飽和水溶液を1〜10質量部加えて混ぜ合わせることで行うことができる。このようにしてゲル状にされたPVA水溶液は、当該製造において好適な粘性を有し、また、セルロース系バイオマスと混ぜ合わされて混練され続けても粘度が上昇(硬化)しにくいため容易かつ効率的に混練を行うことができる。なお、このゲル状のPVA水溶液は、酸性であることが好ましく、具体的にはpHが4以上6以下であることが好ましい。
【0043】
(4)混合工程
上記工程にて得られたPVAの水溶液、好ましくは上記ゲル化工程においてゲル状にされたPVAの水溶液、及び上記工程にて好ましいサイズに切断されるなどしたセルロース系バイオマスを混合して、これらを含む混合物を得る。
【0044】
セルロース系バイオマスの混合量としては、特に限定されないが、混合物全体に対するセルロース系バイオマスの混合量が5質量%以上50質量%以下が好ましく、10質量%以上40質量%以下がさらに好ましい。セルロース系バイオマスの混合量が5質量%未満の場合は、混合物の粘性が低く物理的な作用による分断機能が十分に発揮されないおそれがあると共に、セルロース系バイオマスの処理量が低いため、作業効率が低下する。逆にセルロース系バイオマスの混合量が50質量%を超えると、バイオマスによる吸水性が強く、混合物の粘性が高すぎて、混練しにくくなるため、作業性が低下する。この混合物の粘度としては、例えば5.0×10mPa・s以上1.0×10mPa・s以下が好ましい。
【0045】
(5)分断工程
上述の混合工程にて得られた混合物に剪断力を付加することによって、セルロース系バイオマスを分子レベル(準結晶構造レベル)で分断する。つまり、準結晶構造を有するセルロースが部分的に水和され、また、PVAが進入し、このセルロース分子間の水素結合が弱まり、加えて、剪断力の付加による物理的な力により、分子間の結合が弱まった状態でセルロースポリマー鎖同士が互いに引き離されることで、細胞壁の微視的な構造が分断されることとなる。
【0046】
ここで、平均重合度、ケン化度及び残存酢酸基のブロックキャラクターが上記特定の範囲にあるPVAの水溶液を用いることで、当該PVAと、水及びセルロースとの高い親和性により、混合物に適度な粘性を付与できるため、セルロース分子間の水素結合の低下という化学的な作用と、剪断力の付加という機械的な操作によってセルロース分子同士を物理的に引き離す作用とを共に効果的に発揮することができる。また、当該PVAを用いることで、物理的に引き離されたセルロースポリマー鎖の隙間にこのPVAが効果的に進入し、付着しやすくなる。従って、上記のPVAを用いた当該製造方法によれば、セルロースポリマー鎖の再準結晶化を防ぐことができ、効果的に加水分解性セルロースを製造することができる。
【0047】
更には、ゲル状とされたPVA水溶液を用いることで、剪断力の付加の最初の段階から常に好ましい粘性を有した混合物とすることができ、セルロース系バイオマスの分子レベルの分断を効率的に行うことができる。
【0048】
この分断工程における混合物に剪断力を付加する方法としては特に限定されず、例えば、混合物を練り混ぜる方法などが挙げられる。また、この分断工程に用いられる装置としては、特に限定されないが、熱可塑性樹脂の成形の際に一般的に使用される二軸押出成形機等が好適に用いられる。この分断工程に要する時間としては、混合物の量等に応じて適宜設定されるが、例えば、30分以上10時間以内程度である。なお、この分断工程の際、粘度が減少した場合は、適宜、四ホウ酸ナトリウム水溶液の添加などによって、粘性を調整するとよい。
【0049】
この加水分解性セルロースの製造方法によれば、上述の各工程を経ることで、セルロース系バイオマスは、準結晶構造が分断された容易に加水分解されるセルロースとなる。
【0050】
(6)後工程
なお、このようにして得られた加水分解性セルロースは、混合物中にセルラーゼ等の加水分解酵素を添加することで容易にグルコースに分解され、水溶液中に溶け出す。またセルロース系バイオマス中に含まれるヘミセルロース由来のキシロース等も、併せて水溶液中に溶け出す。この際、セルロース系バイオマスに含まれるリグニンが不溶な粒子として存在するが、このリグニンは、例えば、ろ過や遠心分離によって分離することができる。このようにして得られた可溶性のグルコース等の糖類は、醗酵によってエタノールとし、燃料資源などとして好適に使用することができる。
【実施例】
【0051】
以下、実施例に基づいて本発明を詳述するが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるものではない。
【0052】
[合成例1]PVA1の合成
75.0kgの酢酸ビニルと25.0kgのメタノールとを、撹拌器、窒素挿入口及び開始剤挿入口を備える250リットル反応容器に投入し、60℃に加熱した。反応容器内は、30分の窒素置換により窒素雰囲気とした。その後、重合開始剤として、2,2’−アゾビスイソブチロミトリル(AIBN)を反応容器に加えた。重合温度を60℃に維持したまま4時間重合を行い、仕込酢酸ビニルに対し30%が重合された。その後、冷却し、重合を止め、未反応の酢酸ビニルモノマーを減圧して除去し、ポリ酢酸ビニル(PVAc)のメタノール溶液を得た。
【0053】
メタノールを上述のPVAc溶液に加え、PVAc溶液の濃度が30質量%となるように調整した。アルカリモル比(PVAcポリマーのビニルエステル単位のモル量に対するNaOHのモル量の比)が0.08となるように、PVAc溶液333g(PVAc100g)に、アルカリ溶液(10%NaOHメタノール溶液)37.1gを加え、PVAcのケン化を行った。60℃に温度を保ち、1時間ケン化反応を進めた後、生成物(ケン化反応中、ゲル化したものを適宜反応容器から取り出してグラインダーで粉砕したものを含む)をろ過し、白色の固体を得た。この白色固体をメタノール1000gに混ぜ、室温で3時間放置することで洗浄を行った。この洗浄を3回行い、白色固体を遠心分離した後、乾燥機にて70℃二日間乾燥して、PVA1を得た。このPVA1の平均重合度は2,200、ケン化度は89.8モル%、残存酢酸基のブロックキャラクターは0.485であった。ブロックキャラクターの測定には、重合体の再沈精製を3回行った後、500MHzのプロトンNMR(JEOL GX−500)を用いて、13C−NMRを室温下で測定した。
【0054】
[合成例2〜9]PVA2〜9の合成
重合条件及びケン化条件を変えたこと以外は、PVA1と同様にしてPVA2〜9を得た。これらの平均重合度、ケン化度及び残存酢酸基のブロックキャラクターは、上述のPVA1の値と共に以下の表1に示す。
【0055】
また、株式会社クラレ製のPVA系重合体であるPVA−217及びPVA−205についての平均重合度、ケン化度及び残存酢酸基のブロックキャラクターを併せて以下の表1に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
[実施例1]
蒸留水を70℃まで加熱し、撹拌しながらPVA1を添加することで10質量%のPVA水溶液を調製した。このPVA水溶液は水より僅かに粘性を有するものであった。この水溶液100gを室温まで冷却した後、ホウ酸(HBO)の飽和水溶液2mLを加えて混合した。得られた水溶液のpHは5.0であった。更にこの水溶液に四ホウ酸ナトリウムの飽和水溶液0.5mLを加えて混合することで、水溶液を粘性のあるゲル状体とした。このゲル状体のpHは6.5であった。次に、セルロース系バイオマス粒子としてEFB(直径20〜70μmの粒子)50gをこのゲル状体に加えて、室温下でミキサー型混練機を用いて練り混ぜた。この混合物は、混練当初は比較的低粘性を有していたが、混練を続けるうちに、EFB(セルロース系バイオマス粒子)が水を吸収し、粘度が向上した。この混合物はローラで容易に伸ばし、練ることができた。一定時間混練を行う毎に、混合物の一部を取り出し、顕微鏡によって粒子サイズを確認した。この分断工程を進めるにつれて、粒子のサイズが減少すること、及び細胞構造が分断されることが観察できた。
【0058】
混練によるセルロースの分断が十分にされたことを顕微鏡により確認し、加水分解性セルロースの水溶液を得た。この後、混合物に蒸留水を添加し、粘性を低下させた。加水分解酵素の至適pHに調整するため、この混合物に更に水酸化ナトリウム溶液を添加し、pHを6.0に調整した。この混合物は、溶けたチョコレート程度の粘性を有した。この混合物に、加水分解酵素として、メイセラーゼ(明治製菓株式会社製)及びアクレモニウムセルラーゼ(Acremonium cellulolyticus菌から得られるセルラーゼ:明治製菓株式会社製)をEFB100質量部に対してそれぞれ0.5質量部ずつ添加し、50℃の温度で反応容器内で撹拌した。酵素を加えて数十分で、この混合物の粘性は目立って減少した。この撹拌を6時間行い、グルコース溶液を得た。
【0059】
[実施例2〜4、比較例1〜7]
PVAをPVA1から表1の他のPVAに替えたこと以外は実施例1と同様にして、実施例2〜7及び比較例1〜6を行い、加水分解性セルロース水溶液を得て、最終的にグルコース溶液を得た。
【0060】
[評価]
(糖化効率)
得られたグルコース溶液に蒸留水を加えて400mLとした後、このグルコース溶液のサンプル溶液を2mL(全溶液の0.5%)採取し、100℃にて5分間殺菌した。サンプル溶液を冷却した後、遠心分離器を用いて3,000rpmで30分間遠心分離し、ろ過して、固形物を取り除いた後、ろ液を液体クロマトグラフィーに供して単糖類(グルコースなど)を検量した。用いたEFB(50g)に占めるセルロース及びヘミセルロースの質量比を50%と定めて、以下の計算式(3)にて糖化効率(%)を求めた。測定結果を表1に示す。
糖化効率=〔サンプル溶液中の単糖類質量(g)/{50(g)×0.005×0.5}〕×100(%) (3)
【0061】
(混和性)
実施例1〜4及び比較例1〜7において、EFBをゲル状体に加えて、室温下でミキサー型混練機を用いて練り混ぜてから1時間後に混合物の一部を取り出した。顕微鏡を用いて、取り出した混合物におけるEFBの凝集を目視にて観察し、まったく凝集が見られなかった場合を「非常に良好」と判定し、そして該粒子がほとんど凝集していない場合を「良好」と判定し、該粒子が若干凝集している場合を「やや凝集」と判定し、該粒子が凝集している場合を「凝集」と判定した。
【0062】
表1に示されるように、実施例1〜4は、用いたPVAの平均重合度、ケン化度及び残存酢酸基のブロックキャラクターが適当なものであるため、いずれも糖化効率が80%を超え、セルロースが容易に加水分解される状態に分断されていることがわかった。一方、比較例1〜7は、用いたPVAが平均重合度、ケン化度及び残存酢酸基のブロックキャラクターのいずれかが好ましい範囲外であったためセルロースが容易に加水分解される状態にまで十分に分断されていないことがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0063】
以上説明したように、本発明のPVAは、セルロース系バイオマスを原料として加水分解性セルロースを製造する際に好適に用いることができる。従って、本発明によれば、植物系のバイオマス原料を、効率よく食物やエネルギー資源として活用することができ、バイオマスの活用の実現性を高めることができる。