特許第5799456号(P5799456)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5799456
(24)【登録日】2015年9月4日
(45)【発行日】2015年10月28日
(54)【発明の名称】可変径ロールベーラ
(51)【国際特許分類】
   A01F 15/08 20060101AFI20151008BHJP
【FI】
   A01F15/08 R
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-13868(P2011-13868)
(22)【出願日】2011年1月26日
(65)【公開番号】特開2012-152134(P2012-152134A)
(43)【公開日】2012年8月16日
【審査請求日】2013年11月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(73)【特許権者】
【識別番号】000107653
【氏名又は名称】株式会社IHIスター
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】特許業務法人 英知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橘 保宏
(72)【発明者】
【氏名】川出 哲生
(72)【発明者】
【氏名】志藤 博克
(72)【発明者】
【氏名】原田 伸也
(72)【発明者】
【氏名】横内 博史
【審査官】 中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−267612(JP,A)
【文献】 米国特許第04517795(US,A)
【文献】 米国特許第06094900(US,A)
【文献】 実開昭62−148031(JP,U)
【文献】 実開昭59−191145(JP,U)
【文献】 特開2010−284108(JP,A)
【文献】 特開2000−139197(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01F 15/00 − 15/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被成形材料を一つ又は複数のベルトを用いてロールベールに圧縮成形するロールベール成形室と、前記ロールベール成形室に前記被成形材料を投入する投入コンベアとを備え、前記ロールベール成形室は、前記被成形材料の投入口と、前記ベルトが巻回され、成形される前記ロールベールの径に応じて、前記ロールベール成形室を拡開するように、該ロールベール成形室の中心からの位置を可変に軸支された可変ローラと、を備え、前記可変ローラが、ロールベールの周方向に向かい合って軸支された第1可動ローラ及び第2可動ローラと、該第1可動ローラ及び第2可動ローラよりも可変方向外側に軸支された第3可動ローラと、を備え、前記ベルトを、前記第1可動ローラ及び前記第2可動ローラに対して、ロールベール成形室とは反対側の面を接触させて巻回するとともに、前記第3可動ローラに対して、前記ロールベール成形室側の面を接触させて巻回することで、前記ロールベール成形室と連通する凹部が構成され、前記凹部内に、該凹部内への前記被成形材料の侵入を抑制するスクレーパを備え、前記投入口を、該投入口の開口方向が前記可変ローラの可変方向と正対しない方向となるように設けたことを特徴とする可変径ロールベーラ。
【請求項2】
前記投入口が、成形される前記ロールベールの最大径の中心位置よりも上部に設けられていることを特徴とする請求項1記載の可変径ロールベーラ。
【請求項3】
前記投入コンベアの流側端部を、前記投入口の下端部と上下方向で重畳するように配置したことを特徴とする請求項1又は2記載の可変径ロールベーラ。
【請求項4】
複数のベルトを有するロールベール成形室を備えた可変径ロールベーラであって、ロールベール成形室の下部に配置されるベルトの前記投入コンベア側のローラが、前記ロールベール成形室を構成する他の前記ベルトのローラよりも前記投入コンベア側に位置するように設けられていることを特徴とする請求項2又は3いずれか1項記載の可変径ロールベーラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、径の異なるロールベールの成形が可能な可変径ロールベーラに関する。
【背景技術】
【0002】
径の異なるロールベールの成形が可能なロールベーラは、成形室に投入された被成形材料が円柱状のロールベールに成形される際に、このロールベールの径の拡大に伴って、成形室の径を拡大するようにしたものが知られている。
【0003】
下記特許文献1に記載の成形室は、投入口が被成形材料のピックアップ部と連続するように下向きに開口され、ピックアップ部から投入口を経て成形室に投入された被成形材料が、相互に対面して反対方向に動くベルトによって、円柱状のロールベールに成形するようになっている。そして、このロールベールの径の拡大に伴う圧力がベルトに作用し、この圧力でベルトを巻掛けたローラを、投入口の開口方向と対向する上方に変位させることによって、成形室を拡大するようになっている。
【0004】
特許文献2に記載の成形室は、投入口が成形室の中心よりもやや下側、且つ斜め下向きに開口され、この投入口に向けて配したコンベアから成形室に投入される被成形材料が、タイトバーの回転によって、円柱状のロールベールに成形されるようになっている。そして、このロールベールの径の拡大に伴う圧力がタイトバーに作用し、この圧力でタイトバーを径方向外側に変位させることによって、成形室をロールベールの径及び形状に伴って拡大するようになっている。
【0005】
これら特許文献1及び特許文献2の成形室は、この成形室の径が拡大すると同時に、径を縮小させる方向(ロールベールを圧縮する方向)に力が作用するようになっており、この径を縮小させる方向の力によって、ロールベールを圧縮しながら成形するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭60−188013号公報
【特許文献2】特開2007−267675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1及び特許文献2の従来技術によると、成形室がロールベールの径及び形状に伴って拡大し、この拡大と同時に成形室を縮小する方向に力が生じるようにしているので、小径のロールベールから大径のロールベールまで、固く締まったロールベールを無段階で成形することができる。
【0008】
しかしながら、前述の被成形材料には、細断されたものがあるが、このような被成形材料は、まとまり難くロールベール成形時において崩れ易いということがある。特に、特許文献1の従来技術では、ロールベールの上方への変位によって生じる下方への圧縮力が、成形室の全体の内、最も強くなるため、投入口の開口部に向かう方向に作用する圧縮力によって、被成形材料が投入口に向けて崩れながらこの投入口から漏れ出してしまうという問題があった。
【0009】
特許文献2の従来技術では、成形されるロールベールに対して、投入口を除くロールベールの周囲面から径方向に圧縮力を平均的に作用させる構成であるが、このような成形室においても、斜め下向きの投入口に向かう圧縮力によって、被成形材料の種類によっては、成形室が満量近くになったとき、被成形材料が成形室に入らなくなる現象が生じてしまうという問題があった。
【0010】
そのため、特許文献1及び特許文献2のような成形室を備えるロールベーラの場合、ロールベールの成形において、前述のように被成形材料が成形室に入らなくなることによって、被成形材料の成形室外への漏れ出しが生じ、この漏れ出しによって被成形材料が無駄になる、或いは、形状の良い締まったロールベールの成形、効率よいロールベールの成形ができないという問題があった。
【0011】
本発明は、このような問題に対処することを課題とするものである。すなわち、ロールベール成形中における被成形材料の投入口からの漏れ出しを防止できるようにすること、投入口からの被成形材料の漏れ出しを防止することで、被成形材料を無駄なく有効に使用できるとともに、成形室が満量近くになったときにも、被成形材料を成形室に円滑に入れることができ、且つ形状の良い締まったロールベールの成形、効率よいロールベールの成形ができること等、が本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このような目的を達成するために、本発明による可変径ロールベーラは、以下の構成を少なくとも具備するものである。
【0013】
被成形材料を一つ又は複数のベルトを用いてロールベールに圧縮成形するロールベール成形室と、前記ロールベール成形室に前記被成形材料を投入する投入コンベアとを備え、前記ロールベール成形室は、前記被成形材料の投入口と、前記ベルトが巻回され、成形される前記ロールベールの径に応じて、前記ロールベール成形室を拡開するように、該ロールベール成形室の中心からの位置を可変に軸支された可変ローラと、を備え、前記可変ローラが、ロールベールの周方向に向かい合って軸支された第1可動ローラ及び第2可動ローラと、該第1可動ローラ及び第2可動ローラよりも前記可変方向外側に軸支された第3可動ローラと、を備え、前記ベルトを、前記第1可動ローラ及び前記第2可動ローラに対して、ロールベール成形室とは反対側の面を接触させて巻回するとともに、前記第3可動ローラに対して、前記ロールベール成形室側の面を接触させて巻回することで、前記ロールベール成形室と連通する凹部が構成され、前記凹部内に、該凹部内への前記被成形材料の侵入を抑制するスクレーパを備え、前記投入口を、該投入口の開口方向が前記可変ローラの可変方向と正対しない方向となるように設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
このような特徴を有することで本発明は以下の効果を奏する。すなわち、成形される前記ロールベールの径に応じて、前記ロールベール成形室を拡開するように、該ロールベール成形室の中心からの位置を可変に軸支された可変ローラと、を備え、前記投入口を、該投入口の開口方向が前記可変ローラの可変方向と正対しない方向となるように設けたので、ロールベール成形中における被成形材料の投入口からの漏れ出しを防止できる。投入口からの被成形材料の漏れ出しを防止することで、被成形材料を無駄なく有効に使用できるとともに、成形室が満量近くになったときにも、被成形材料を成形室に円滑に入れることができ、且つ形状の良い締まったロールベールの成形、効率よいロールベールの成形ができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る可変径ロールベーラの第1実施形態を示す概略構成図。
図2図1におけるロールベール成形室の拡大図で最小のロールベール成形状態を示す。
図3図1におけるロールベール成形室の拡大図で最大のロールベール成形状態を示す。
図4】本発明に係る可変径ロールベーラの第2実施形態を示す概略構成図。
図5】本発明に係る可変径ロールベーラの第3実施形態を示すロールベール成形室の拡大概略構成図。
図6図5におけるロールベール成形室において最小のロールベール成形状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の可変径ロールベーラがロールベールを成形することが可能な被成形材料は、青刈りトウモロコシや牧草等の飼料作物、食品加工後の食品残渣、粗飼料や濃厚飼料等を混合調整した混合飼料等の家畜用飼料に用いる各種材料、籾殻、麦殻、木屑、おがくず、敷料、家畜糞等の肥料に用いる各種材料等である。本発明の可変径ロールベーラは、特に、前述の各種材料を細断してなる被成形材料をロールベールに成形するのに効果的な細断型のものである。
【0017】
前述の可変径ロールベーラは、トラクター等の走行車に牽引される牽引式、自走式、据置式を含む。また、この可変径ロールベーラは、成形したロールベールにネット、トワイン(ロープ)、シート等の結束資材や梱包資材を巻回して圃場に排出するもの、この結束資材や梱包資材が巻回されたロールベールをラップするラッピングマシンを備えた複合型のものを含む。
【0018】
投入口は、成形されるロールベールの最大径の中心位置より下部にあっても、前述の構成により被成形材料の湧き出し現象を防止できるが、より好ましくは、成形される前記ロールベールの最大径の中心位置よりも上部である。
【0019】
被成形材料をロールベール成形室内により確実に投入して、この被成形材料を無駄なく有効に使用するという点において、投入コンベアの流側端部を、投入口の下端部と上下方向で重畳するように配置することが好ましい。
【0021】
更に、本発明の可変径ロールベーラは、複数のベルトを有するロールベール成形室を備えた可変径ロールベーラであって、ロールベール成形室の下部に配置されるベルトの前記投入コンベア側のローラが、ロールベール成形室を構成する他のベルトのローラよりも前記投入コンベア側に位置するように設けられていることが好ましい。
【0022】
以下、可変径ロールベーラ(以下、ロールベーラという)1の第1実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態において例示するロールベーラ1は、青刈りトウモロコシや牧草等の飼料作物を細断した被成形材料(図示せず)をロールベールに成形するのに適した細断型のロールベーラ1である。
【0023】
ロールベーラ1の基本構成は、上流側からホッパ2、投入コンベア3、ロールベール成形室(以下、成形室という)4を備えており、ホッパ2に貯留された被成形材料を、投入コンベア3を介して成形室4に投入し、この成形室4の成形駆動によってロールベールR1、R2(図2図3参照)を成形するようになっている。ロールベールR1、R2が所定径に成形されると、投入コンベア3の駆動を停止するとともに、ネット10をネット供給部1Aから成形室4に供給し、この成形室4の成形駆動によってロールベールR1、R2に巻付け、このネット10の巻付け終了後に、成形室4の下流側半部4Aを開いて(図示せず)ロールベールR1、R2を機外に排出するようになっている。ネット10は、成形室4に確保された投入口40から供給されるようになっている。
【0024】
尚、本実施形態では、ホッパ2側(図1において左側)を上流側とし、成形室4側(図1において右側)を下流側として説明する。また、本実施形態では、ロールベールR1、R2に対してネット10を巻付ける形態を例示したが、本発明のロールベーラは、ネット10に換えてロールベールR1、R2に対してトワインを巻付ける形態も含まれ、この場合、ネット供給部1Aに換えてトワイン供給部が設置される(図示せず)。
【0025】
ホッパ2は、成形室4と間にホッパ2の一部を構成するように設置された投入コンベア3により区切られた、ロールベーラ1の最上流側(図1において左側)の空間であり、図1において逆三角形状を呈する空間である。このようなホッパ2に貯留される被成形材料は、投入コンベア3により運搬され、投入口40から成形室4内に投入される。
【0026】
投入コンベア3は、ホッパ2の最下部20よりも下側の位置から投入口40にわたって傾斜状に設置されている。投入コンベア3のコンベアベルト30の表面には、被成形材料を支持する複数の支持突起31が突設されており、この支持突起31が運搬される被成形材料を支持することによって、この被成形材料を投入コンベア3の傾斜に沿って滑り落ちるのを防止できるようになっている。また、投入コンベア3の下流側端部32を、投入口40の下端部40Aと上下方向で重畳するように配置して、被成形材料の投入口40への投入時に、この被成形材料のこぼれ落ちを抑制している。また、投入コンベア3の上流側端部33をホッパ2の最下部20の直下に配置している。
【0027】
成形室4は、投入される被成形材料を複数のベルト6、7、8を用いてロールベールR1、R2に圧縮成形するとともに、成形されるロールベールR1、R2の径に応じて、ベルト6の成形室4の中心Cからの位置を可変に設けた構成のものであり、ベルト6とベルト7との間に投入口40が確保されている。
【0028】
この成形室4は、ベルト6、7、8をロールベールの周方向に沿うように配置することにより構成されている。尚、成形室4は、実際には、ホッパ2から成形室4にわたって設けられた側板(図示せず)を含んで成形室4が構成されている。また、ホッパ2についても同様であり、前述の側板を含んで構成されている。
【0029】
ベルト6は、投入口40を境として成形室4の下流側半部4Aを構成するものであり、可変ローラの一例である第1可動ローラ6A及び第2可動ローラ6Bと、8個の固定ローラ6C〜6E及び固定ローラ6G〜6Kと1個の可動テンションローラ6Fとにわたりエンドレス状に巻回して張設されている。可動ローラ6A、第2可動ローラ6B及び固定ローラ6C〜6Kは、その軸線をロールベールR1、R2の軸線と平行として回転可能に軸支されている。
【0030】
第1可動ローラ6A、第2可動ローラ6Bは、一端側が、軸線をロールベールR1、R2の軸線と平行とする回転軸Pに軸支された可動アーム60に軸支され、他端側が、前述の側板に開孔された長孔61、61に軸支されている。この第1可動ローラ6A、第2可動ローラ6Bは、成形中のロールベールR1、R2のベルト6に対する押圧力が、このベルト6を介して作用するようになっており、この押圧力により、長孔61、61に沿って、成形室4の中心Cから下流側へ移動するようになっている。この第1可動ローラ6A、第2可動ローラ6Bの下流側への移動によって、ベルト6の成形室4の中心Cからの位置を可変にすることができる。
【0031】
この長孔61、61は、長手方向が可動アーム60の回転軸Pと同心とする円弧となるように形成されている。可動アーム60は、第1可動ローラ6A、第2可動ローラ6Bの移動に伴って、回転軸Pを回転中心として回転するようになっている。
【0032】
可動アーム60の回転軸Pを境とする上側の端部には、油圧シリンダ62が連結されている。油圧シリンダ62は、収縮する方向に圧力が作用しており、第1可動ローラ6A、第2可動ローラ6Bの移動に伴う可動アーム60の回転に伴って、前述の圧力に抗して伸長するようになっている。この油圧シリンダ62は、可動アーム60の回転位置にかかわらず、一定の圧力となるように制御されている。また、可動アーム60の回転軸Pには、角度計が設置されており、設定した角度に達すると、投入コンベア3の運搬駆動が停止するとともに、ネット10の供給が開始されるように制御されている。
【0033】
すなわち、ロールベールが目的の径に至ったときに投入コンベア3の運搬駆動が停止するように制御されているので、目的の径のロールベールを確実に成形することができる。また、ベルト6の位置が成形室4の中心から外側へ変化する際に、油圧シリンダ62の収縮方向への圧力が可動アーム60を介してベルト6に作用し、このベルト6に作用する収縮方向への圧力をロールベールに作用させることによって、形状良く締まった状態のロールベールを成形することができる。
【0034】
また、長孔61、61は、その長手方向が投入口40の開口方向とほぼ直角に交差するように開孔されており、この長孔61、61に沿って移動する第1可動ローラ6A、第2可動ローラ6Bの移動方向を投入口40の開口方向と正対させないようになっている。すなわち、可動アーム60を介して油圧シリンダ62の圧力が第1可動ローラ6A、第2可動ローラ6Bに作用したとき、成形室4で成形されるロールベールR1、R2に対する第1可動ローラ6A、第2可動ローラ6Bの成形室4の中心C方向への圧力が、投入口40の開口方向と交差する方向に作用し、ロールベールR1、R2を投入口40の開口方向と正対しない方向から圧縮するため、ロールベールR1、R2の最も崩れ易い投入口40付近の崩れを抑制することができ、しかも、被成形材料が成形室4に入らなくなる現象を防止することができる。
【0035】
尚、成形されたロールベールR1、R2に対してネット10が所定量で巻付けられたとき、駆動源の駆動を停止させるように制御してもよいし、駆動源の駆動停止がされたときに、この駆動停止をランプ等の点灯又は点滅によって知らせたり、ブザー等の音声によって知らせたりするように制御してもよい(図示せず)。また、駆動源が駆動停止したときに、成形室4が自動的に開くように制御してもよいし、前述のランプ等やブザー等で駆動源の駆動停止を知らされたときに、手動操作によって成形室4を開くようにしてもよい。
【0036】
ベルト7は、投入口40を境として成形室4の上流側半部4Bの投入口40側を構成するものであり、2個の固定ローラ7A、7Bにわたって巻回して張設されている。固定ローラ7A、7Bは、その軸線を固定ローラ6C〜6Kの軸線と平行にされている。
【0037】
固定ローラ7Aは、投入口40の下端部40Aを構成するとともに、固定ローラ7Bの上側の位置にあって、ロールベーラ1が成形できる最小径のロールベールR1の中心位置P1から最大径のロールベールR2の中心位置P2よりも上部に配置されている(図2図3参照)。すなわち、このような位置に固定ローラ7Aを配置したことにより、投入口40を成形されるロールベールR1、R2の中心位置P1よりも上部に配置することができる。このような位置に投入口40を配置したので、前述したような第1可動ローラ6A、第2可動ローラ6Bの投入口40の開口方向と交差する方向への圧縮による、被成形材料の崩れ防止効果及び湧き出し現象防止効果をより確実なものとすることができる。
【0038】
ベルト8は、成形室4の上流側半部の下側を構成するものであり、固定ローラ7Bの下側から固定ローラ6Jと隣接する位置に配置されている。ベルト8は、3個の固定ローラ8A〜8Cにわたって巻回して張設されている。固定ローラ8A〜8Cは、その軸線を固定ローラ6C〜6Kの軸線と平行にされている。
【0039】
固定ローラ8Aは、投入コンベア3の下側で、且つ固定ローラ7A、7Bよりも下流側に位置するように配置されている。固定ローラ8Bは、固定ローラ7Bの下方に離間して、ベルト8とベルト7との間に隙間80が確保できる位置に配置されている。固定ローラ8Cは、固定ローラ6Jとその下流側で隣接する位置に配置されている。本実施形態では、固定ローラ6Jと固定ローラ8Cの間が、成形室4の上流側半部4Bと下流側半部4Aの境部であり、この境部で下流側半部4A上方に開くことにより、成形されてネット10が巻付けられたロールベールR1、R2が排出されるようになっている。
【0040】
すなわち、このように配置されたベルト8によると、投入コンベア3が被成形材料を投入口40から投入するときに、この被成形材料が成形室4外にこぼれた場合に、こぼれた被成形材料を受け止めることができる。また、各ベルト6、7、8は、成形室4内においてロールベールを反時計方向に回転させる方向に駆動するようになっているため、ベルト8上の被成形材料は、このベルト8により隙間80を介して成形室4内に投入され、各ベルト6、7、8の回転により、ロールベールR1、R2に成形される。したがって、被成形材料のロールベーラ1外へのこぼれやロールベーラ1内の滞留を防止することができるので、被成形材料を無駄なく有効に使用することができる。
【0041】
尚、各ベルト6、7、8は、固定ローラ6C〜6E及び固定ローラ6G〜6Kのいずれか一つ以上、固定ローラ7A、7Bのいずれか一つ以上、固定ローラ8A〜8Cのいずれか一つ以上を、モータ等の駆動源(図示せず)からチェーン等の回転伝達機構(図示せず)を介して伝達される駆動力によって駆動回転させることで、夫々に巻回されたベルト6、7、8を駆動回転させるようになっている。
【0042】
このロールベーラ1には、投入コンベア3からこぼれ落ちる被成形材料をホッパ2側に戻し、この戻した被成形材料を投入コンベア3が再び成形室4へ運搬できるようにする戻し装置Aが備えられている。戻し装置Aは、投入コンベア3の戻り側(下側)に沿って傾斜状に設けられた傾斜板A1と、傾斜板A1の下側(ホッパ2側)で連続して設けられ、この傾斜板A1の傾斜に沿って滑り落ちる被成形材料を貯留する貯留部A2と、傾斜板A1の上端部A10から連続してベルト8に至るように配置した第2傾斜板A3とを備えている。
【0043】
傾斜板A1は、上端部A10がベルト8の突出側の端部と重畳するように位置し、この上端部A10とベルト7の外側との間に、投入コンベア3が被成形材料投入時にこぼれ落ちる被成形材料をベルト8上に落とすための空間Sを確保して設けられている。すなわち、投入口40又は投入コンベア3の投入口40近く側からこぼれ落ちる被成形材料は、空間Sを通ってベルト8に受け止められるとともに、成形室4に投入され、投入コンベア3の投入口40近く側を除く部位からこぼれ落ちる被成形材料は、傾斜板A1に受け止められて、貯留部A2に滑り落ちるようになっている。
【0044】
尚、傾斜板A1の材質は、少なくとも、被成形材料を滑り落とすことができる程度の摩擦係数のものであって、耐食性を有するものが好ましく、例えば、ステンレス等の非鉄金属材、防錆加工を施した金属材、合成樹脂材等が挙げられる。また、本発明は、傾斜板A1の角度を投入コンベア3の角度と同角度とすること、傾斜板A1と投入コンベア3間の距離、傾斜板A1の位置等を限定するものでなく、こぼれ落ちた被成形材料を貯留部A2に滑り落とせる構成であればよい。
【0045】
貯留部A2は、傾斜板A1の下側から連続し、投入コンベア3の上流側端部33の周りを円弧で囲んでホッパ2の下端を塞ぐように設けられている。この円弧は、投入コンベア3の上流側端部33における反転部分と同心とする円弧であり、上流側端部33が貯留部3内に配置される円弧である。このような貯留部A2は、上流側端部33との間に、コンベアベルト30の支持突起31の先端が円弧に近接する程度の空間を確保してあり、コンベアベルト30の反転時に支持突起31が貯留部A2に貯留された被成形材料をすくい上げるとともに、投入コンベア3の運搬面側で支持できるようになっている。
【0046】
第2傾斜板A3は、傾斜板A1と同材質のものであり、ベルト8側の先端が、このベルト8に対して近接又は接触するように設置されており、運搬コンベア3及び投入口40からこぼれ落ちる被成形材料をベルト8上に案内するようになっている。
【0047】
このような戻し装置Aによると、傾斜板A1から滑り落ちて貯留部A2に貯留された被成形材料を、投入コンベア3及びベルト8によって再び成形室4に投入することができる。したがって、被成形材料のロールベーラ1外へのこぼれやロールベーラ1内の滞留を防止することができるので、被成形材料を無駄なく有効に使用することができる。
【0048】
このようなロールベーラ1によると、成形中における被成形材料の投入口40からの湧き出し現象を抑制し、投入動作中の投入コンベア3や投入されるときに投入口40からこぼれ落ちる被成形材料を、ベルト8や戻し装置Aによって成形室4に投入するようにしているので、被成形材料を無駄なく有効に使用できるようにした上で、形状の良い締まったロールベールの成形、効率よいロールベールの成形をすることができる。
【0049】
次に、図4に基づいてロールベーラ1の第2実施形態を説明する。本実施形態では、前述した第1実施形態と重複する部位についての説明は同符号を付すことにより省略する。
【0050】
本実施形態のロールベーラ1は、ベルト8が固定ローラ8Bと固定ローラ8Cとにわたって巻回して張設された成形室4を備えている。すなわち、ベルト8が固定ローラ7A、7Bよりも下流側に突出した部分がない成形室4を備えたものであり、投入口40への投入時にこぼれ落ちる被成形材料をベルト8によって成形室4に戻す機能を備えていないものである。そのため、本実施形態のロールベーラ1では、傾斜板A1の上端部A10をベルト7の外側面に近接する程度に延長することで、投入口40への投入時にこぼれ落ちる被成形材料を、傾斜板A1で受け止めることにより、戻し装置Aを経て成形室4に再び投入することができる。したがって、本実施形態のロールベーラによっても、前述の第1実施形態のロールベーラ1と同等の作用効果が期待できる。
【0051】
次に、図5及び図6に基づいてロールベーラ1の第3実施形態を説明する。本実施形態では、前述した第1実施形態と重複する部位についての説明は同符号を付すことにより省略する。
【0052】
本実施形態のロールベーラ1は、第1実施形態における固定ローラ6Kに代えて、第1可動ローラ6A、第2可動ローラ6Bに伴って長孔61に沿って移動する可変ローラの一例である第3可動ローラ6Lを備えたものである。第3可動ローラ6Lは、可動アーム60に軸支されるとともに、第2可動ローラ6Bが軸支された長孔61に、第2可動ローラ6Bよりも移動方向外側に軸支されている。また、第3可動ローラ6Lは、第1可動ローラ6A、第2可動ローラ6B間の隙間の中心線上に、且つ第1可動ローラ6A、第2可動ローラ6Bに近接するように配置されている。
【0053】
このような、第1可動ローラ6A、第2可動ローラ6Bにベルト6の成形室4とは反対側の面を接触させて巻回し、第3可動ローラ6Lには、ベルト6の成形室4側の面を接触させて巻回することで、第1可動ローラ6A、第2可動ローラ6B間に形成される凹部63の深さを浅くすることができる。すなわち、凹部63の深さを浅くすることで、ロールベールR1、R2の成形中における被成形材料の凹部63への侵入量を少なくすることができるので、成形室4内の被成形材料の残留量を低減することができる。凹部63には、この凹部63に侵入しようとする被成形材料を阻んだり、ベルト6にこびりついた被成形材料をこそぎ落としたりするスクレーパ64が設けられており、このスクレーパ64によって、凹部63への被成形材料の侵入を抑制することができる。
【0054】
尚、本発明では、前述の第1実施形態〜第3実施形態のような、こぼれ落ちる被成形材料を再び成形室4に投入する機能を備えず、投入口40がロールベールR1、R2の中心位置P1、P2よりも上方に配置されたロールベーラ1も含み、このようなロールベーラ1によっても、被成形材料が成形室4に入らなくなる現象を防止することができるので、形状の良い締まったロールベールの成形、効率よいロールベールの成形をすることができる(図示せず)。
【符号の説明】
【0055】
1:ロールベーラ(可変径ロールベーラ)
3:投入コンベア
4:成形室(ロールベール成形室)
6:ベルト
7:ベルト
8:ベルト
32:下流側端部
33:上流側端部
40:投入口
40A:下端部
6A:第1可動ローラ(可変ローラ)
6B:第2可動ローラ(可変ローラ)
6L:第3可動ローラ(可変ローラ)
7A:固定ローラ
8A:固定ローラ
R1:ロールベール
R2:ロールベール
63:凹部
64:スクレーパ
図1
図2
図3
図4
図5
図6