【実施例】
【0091】
以下、本発明をさらに詳細に説明するために実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0092】
合成例1
(化合物2の合成)
四つ口フラスコに、化合物1を2.674g(15.00mmol)、ブロモオクタンを6.083g(31.50mmol)、ヨウ化カリウムを62.25mg(2.5mol%)、ジメチルスルホキシドを50mL加え、室温(25℃)で30分間アルゴンバブリングを行った。アイスバスを用いて0℃まで冷却後、水酸化カリウムを2.525g(45.00mmol)加え、6日間反応させた。反応溶液を液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析し、原料の消失を確認した。
その後、反応溶液に純水を加え、ヘキサンを用いて有機層の抽出を行った。その後、展開溶媒にヘキサンを用いたカラムで有機層の分離を行い、分離して得られた成分を乾燥させることで、化合物2を4.11g得た。
【0093】
合成例2
(化合物3の合成)
四つ口フラスコに、化合物2を4.11g(10.2mmol)、N、N−ジメチルホルムアミド(DMF)を200mL加え、室温(25℃)で30分間アルゴンバブリングを行った。−20℃まで冷却後、N−ブロモスクシンイミド(NBS)を1.91g(10.71mmol)加え、6時間かけて室温(25℃)まで昇温した。昇温中、さらに182mgのNBS(1.02mmol)を2回加えた。
その後、反応溶液に純水を加え、ジエチルエーテルを用いて有機層の抽出を行った。その後、展開溶媒にヘキサンを用いたカラムで有機層の分離を行い、分離して得られた成分を乾燥させることで、化合物3を3.17g得た。
【0094】
合成例3
(化合物5の合成)
四つ口フラスコに、化合物4(4,7−bis(4,4,5,5−tetramethyl−1,3,2−dioxaborolan−2−yl)−2,1,3−benzothiadiazole)(アルドリッチ社製)を1.173g(3.021mmol)、化合物3を3.178g(6.042mmol)、トルエンを90mL、及び、メチルトリアルキルアンモニウムクロリド(商品名Aliquat336(登録商標)、アルドリッチ社製)を606mg(1.50mmol)加え、室温(25℃)で30分間アルゴンバブリングを行った。90℃に昇温後、酢酸パラジウムを6.7mg(化合物4に対して1mol%)、トリス(2−メトキシフェニル)ホスフィンを37.0mg(化合物4に対して3.5mol%)加えた。その後、100℃で攪拌しながら、16.7wt%の炭酸ナトリウム水溶液を19.0g(30.0mmol)30分かけて反応液に滴下した。2時間後、応溶液をHPLCで分析し、化合物3の消失を確認した。なお反応はアルゴン雰囲気下で行った。
その後、反応液に純水を加え、トルエン層を分離後乾燥し、反応生成物を得た。その後、ヘキサンを展開溶媒に用いたカラムで反応生成物の分離を行うことで、化合物5を1.196g得た。
【0095】
1H-NMR(CDCl
3, δ(ppm)) : 0.822(t, 12H), 1.055(m, 8H), 1.167(m, 40H),1.919(t, 8H), 6.981(d, 2H), 7.234(d, 2H), 7.852(s, 2H), 8.046(s, 2H)
【0096】
合成例4
(化合物6の合成)
四つ口フラスコに、化合物5を1.190g(1.269mmol)、DMFを15mL、及び、テトラヒドロフラン(THF)を15mL加え、室温(25℃)で30分間アルゴンバブリングを行った。−60℃まで冷却後、NBSを474.3mg(2.665mmol)加え、6時間かけて0℃まで昇温した。昇温中、さらに22.6mgのNBS(0.127mmol)を2回加えた。
その後、反応溶液に純水を加え、ヘキサンを用いて有機層の抽出を行った。その後、展開溶媒にヘキサンを用いたカラムで有機層の分離を行い、分離して得られた成分を乾燥させることで、化合物6を1.612g得た。
【0097】
1H-NMR(CDCl
3, δ(ppm)) : 0.829(t, 12H), 1.026(m, 8H), 1.169(m, 40H), 1.876(t, 8H), 6.990(s, 2H), 7.837(s, 2H), 8.009(s, 2H)
【0098】
実施例1
(高分子化合物Aの合成)
四つ口フラスコ内に、化合物7を64.8mg(0.177mmol)、化合物6を203.9mg(0.186mmol)、テトラヒドロフランを10mL入れ、室温(25℃)で30分間アルゴンバブリングを行った。その後、フラスコ内に、トリス(ジベンジリデンアセトン)パラジウムを5.49mg(0.006mmol)、[トリ(ターシャリーブチル)ホスホニウム]テトラフルオロボレートを6.96mg(0.024mmol)加えた。反応液を80℃で攪拌しながら、27.6wt%の炭酸カリウム水溶液1.50g(3.00mmol)を30分かけて反応液に滴下した。15分後、フェニルホウ酸を3.66mg(0.03mmol)加え、さらに1時間攪拌した後、反応を停止した。なお、反応はアルゴン雰囲気下で行った。
その後、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウムを1g及び純水を10mL加え、反応液を1時間還流しながら攪拌を行った。反応液中の水層を除去後、有機層を水10mlで2回、3重量(wt)%の酢酸水溶液10mLで2回、さらに水10mLで2回洗浄し、その後、メタノールに注いでポリマーを析出させた。ポリマーをろ過後、乾燥し、得られたポリマーをトルエンに溶解させた。トルエン溶液をアルミナ/シリカゲルカラムに通し、得られた溶液をメタノールに注いでポリマーを析出させた。ポリマーろ過後、乾燥し、高分子化合物Aを150mg得た。
GPCで測定した高分子化合物Aのポリスチレン換算の分子量は、重量平均分子量(Mw)が8,000であり、数平均分子量(Mn)が6,000であった。
【0099】
合成例5
(化合物8の合成)
フラスコ内の空気をアルゴンで置換した1000mLの4つ口フラスコに、3−ブロモチオフェンを13.0g(80.0mmol)、ジエチルエーテルを80mL入れて均一な溶液とした。該溶液を−78℃に保ったまま、2.6Mのn−ブチルリチウム(n−BuLi)のヘキサン溶液を31mL(n−BuLiは80.6mmol)滴下した。−78℃で2時間反応させた後、3−チオフェンアルデヒド8.96g(80.0mmol)をジエチルエーテル20mLに溶解させた溶液を滴下した。滴下後、−78℃で30分攪拌し、さらに室温(25℃)で30分攪拌した。反応液を再度−78℃に冷却し、2.6Mのn−BuLiのヘキサン溶液62mL(n−BuLiは161mmol)を15分かけて滴下した。滴下後、反応液を−25℃で2時間攪拌し、さらに室温(25℃)で1時間攪拌した。その後、反応液を−25℃に冷却し、ヨウ素60g(236mmol)をジエチルエーテル1000mLに溶解させた溶液を30分かけて滴下した。滴下後、室温(25℃)で2時間攪拌し、1規定のチオ硫酸ナトリウム水溶液50mLを加えて反応を停止させた。ジエチルエーテルで反応生成物を抽出した後、硫酸マグネシウムで反応生成物を乾燥し、ろ過後、ろ液を濃縮して35gの粗生成物を得た。クロロホルムを用いて粗生成物を再結晶することにより精製し、化合物8を28g得た。
【0100】
合成例6
(化合物9の合成)
300mLの4つ口フラスコに、ビスヨードチエニルメタノール(化合物8)を10.5g(23.4mmol)、塩化メチレンを150mL加えて均一な溶液とした。該溶液にクロロクロム酸ピリジニウムを7.50g(34.8mmol)加え、室温(25℃)で10時間攪拌した。反応液をろ過して不溶物を除去後、ろ液を濃縮し、化合物9を10.0g(22.4mmol)得た。
【0101】
合成例7
(化合物10の合成)
フラスコ内の空気をアルゴンで置換した300mLフラスコに、化合物9を10.0g(22.4mmol)、銅粉末を6.0g(94.5mmol)、脱水N,N−ジメチルホルムアミド(以下、DMFと呼称することもある)を120mL加えて、120℃で4時間攪拌した。反応後、フラスコを室温(25℃)まで冷却し、反応液をシリカゲルカラムに通して不溶成分を除去した。その後、水500mLを加え、クロロホルムで反応生成物を抽出した。クロロホルム溶液である油層を硫酸マグネシウムで乾燥し、油層をろ過し、ろ液を濃縮して粗製物を得た。組成物をシリカゲルカラム(展開液:クロロホルム)で精製し、化合物10を3.26g得た。ここまでの操作を複数回行った。
【0102】
合成例8
(化合物11の合成)
メカニカルスターラーを備え、フラスコ内の空気をアルゴンで置換した300mL4つ口フラスコに、化合物10を3.85g(20.0mmol)、クロロホルムを50mL、トリフルオロ酢酸を50mL入れて均一な溶液とした。該溶液に過ホウ酸ナトリウム1水和物を5.99g(60mmol)加え、室温(25℃)で45分間攪拌した。その後、水200mLを加え、クロロホルムで反応生成物を抽出し、クロロホルム溶液である有機層をシリカゲルカラムに通し、エバポレーターでろ液の溶媒を留去した。メタノールを用いて残渣を再結晶し、化合物11を534mg得た。
【0103】
1H NMR(CDCl
3(ppm)):7.64(d、1H)、7.43(d、1H)、7.27(d、1H)、7.10(d、1H)
【0104】
合成例9
(化合物12の合成)
フラスコ内の空気をアルゴンで置換した100mL四つ口フラスコに、化合物11を1.00g(4.80mmol)、脱水THFを30ml入れて均一な溶液とした。フラスコを−20℃に保ちながら、1Mの3,7−ジメチルオクチルマグネシウムブロミドのエーテル溶液を12.7mL加えた。その後、30分かけて温度を−5℃まで上げ、そのまま30分攪拌した。その後、10分かけて温度を0℃に上げ、そのまま1.5時間攪拌を行った。その後、水を加えて反応を停止し、酢酸エチルで反応生成物を抽出した。酢酸エチル溶液である有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過後、酢酸エチル溶液をシリカゲルカラムに通し、ろ液の溶媒を留去し、化合物12を1.50g得た。
【0105】
1H NMR(CDCl
3(ppm)):8.42(b、1H)、7.25(d、1H)、7.20(d、1H)、6.99(d、1H)、6.76(d、1H)、2.73(b、1H)、1.90(m、4H)、1.58‐1.02(b、20H)、0.92(s、6H)、0.88(s、12H)
【0106】
合成例10
(化合物13の合成)
フラスコ内の空気をアルゴンで置換した200mLフラスコに、化合物12を1.50g、トルエンを30mL入れて均一な溶液とした。該溶液にp−トルエンスルホン酸ナトリウム1水和物を100mg入れ、100℃で1.5時間攪拌を行った。反応液を室温(25℃)まで冷却後、水50mLを加え、トルエンで反応生成物を抽出した。トルエン溶液である有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過後、溶媒を留去した。得られた粗生成物を、ヘキサンを溶媒に用いたシリカゲルカラムで精製し、化合物13を1.33g得た。ここまでの操作を複数回行った。
【0107】
1H NMR(CDCl
3(ppm)):6.98(d、1H)、6.93(d、1H)、6.68(d、1H)、6.59(d、1H)、1.89(m、4H)、1.58‐1.00(b、20H)、0.87(s、6H)、0.86(s、12H)
【0108】
合成例11
(化合物14の合成)
フラスコ内の空気をアルゴンで置換した300mLフラスコに、化合物13を3.52g(7.41mmol)、N、N−ジメチルホルムアミド(DMF)を100mL入れて均一な溶液とした。25℃で30分間アルゴンバブリングを行った後、−50℃まで冷却し、NBSを1.20g(6.74mmol)加え、5.5時間かけて25℃まで昇温した。反応液に水50mLを加え、ジエチルエーテルで反応生成物を抽出した。ジエチルエーテル溶液を硫酸ナトリウムで乾燥後、濾過し、溶媒を留去した。得られた粗生成物を、ヘキサンを溶媒としたシリカゲルカラムで精製して、化合物14を3.30g得た。
【0109】
1H NMR(CDCl
3(ppm)): 0.826(m, 18H), 1.08-1.47(m, 20H), 1.95(m, 4H), 6.65(d, 1H), 6.66(s, 1H), 6.98(s, 1H)
【0110】
合成例12
(化合物15の合成)
フラスコ内の空気をアルゴンで置換した300mLフラスコに、化合物4(4,7−bis(4,4,5,5−tetramethyl−1,3,2−dioxaborolan−2−yl)−2,1,3−benzothiadiazole)(アルドリッチ社製)を1.11g(2.85mmol)、化合物14を3.16g(5.70mmol)、トルエンを90mL、及び、メチルトリアルキルアンモニウムクロリド(商品名Aliquat336(登録商標)、アルドリッチ社製)を606mg(1.50mmol)入れて均一溶液とし、25℃で30分間アルゴンバブリングを行った。90℃に昇温後、酢酸パラジウムを6.7mg(化合物4に対して1mol%)、トリス(2−メトキシフェニル)ホスフィンを37.0mg(化合物4に対して3.5mol%)加えた。
その後、100℃で攪拌しながら、16.7wt%の炭酸ナトリウム水溶液19.0g(30.0mmol)を30分かけて滴下した。滴下後、100℃で2時間攪拌を行った。その後、反応液に純水を加え、トルエン層を分離後、トルエン層を硫酸ナトリウムで乾燥し、粗生成物を得た。ヘキサンを展開溶媒に用いたシリカゲルカラムで粗生成物の精製を行い、化合物15を2.25g得た。
【0111】
1H NMR(CDCl
3(ppm)) : 0.826(m, 36H), 1.08-1.47(m, 40H), 1.95(m, 8H), 6.71(d, 2H), 7.04(d, 2H), 7.77(s, 2H), 7.79(s, 2H)
【0112】
合成例13
(化合物16の合成)
フラスコ内の空気をアルゴンで置換した200mLフラスコに、化合物15を2.25g(2.08mmol)、DMFを40mL、及び、テトラヒドロフラン(THF)を40mL入れて均一溶液とした。−50℃まで冷却後、NBSを814mg(4.58mmol)加え、2.5時間かけて0℃まで昇温した。
その後、反応溶液に純水を加え、ヘキサンを用いて有機層の抽出を行った。溶媒を乾燥後、ヘキサンを展開溶媒に用いたシリカゲルカラムで粗生成物の精製を行い、化合物16を2.11g得た。
【0113】
1H-NMR(CDCl
3(ppm)) : 0.826(m, 36H), 1.08-1.47(m, 40H), 1.95(m, 8H), 6.72(s, 2H), 7.75(s, 2H), 7.77(s, 2H)
【0114】
実施例2
(高分子化合物Bの合成)
四つ口フラスコ内に、化合物7を102.5mg(0.280mmol)、化合物16を365.9mg(0.295mmol)、及び、テトラヒドロフランを10mL加え、室温(25℃)で30分間アルゴンバブリングを行った。その後、トリス(ジベンジリデンアセトン)パラジウムを5.49mg(0.006mmol)、[トリ(ターシャリーブチル)ホスホニウム]テトラフルオロボレートを6.96mg(0.024mmol)加えた。反応液を80℃で攪拌しながら、27.6wt%の炭酸カリウム水溶液1.50g(3.00mmol)を30分かけて反応液に滴下した。15分後、フェニルホウ酸を3.66mg(0.03mmol)加え、さらに1時間攪拌した後、反応を停止した。なお、反応はアルゴン雰囲気下で行った。
その後、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウムを1g及び純水を10mL加え、反応液を1時間還流しながら攪拌を行った。反応液中の水層を除去後、有機層を水10mlで2回、3重量(wt)%の酢酸水溶液10mLで2回、さらに水10mLで2回洗浄し、その後、メタノールに注いでポリマーを析出させた。ポリマーをろ過後、乾燥し、得られたポリマーをトルエンに溶解させた。トルエン溶液をアルミナ/シリカゲルカラムに通し、得られた溶液をメタノールに注いでポリマーを析出させた。ポリマーろ過後、乾燥し、高分子化合物Bを291mg得た。
GPCで測定した高分子化合物Bの分子量(ポリスチレン換算)は、重量平均分子量(Mw)が32,000、数平均分子量(Mn)が16,000であった。
【0115】
合成例14
(化合物18の合成)
フラスコ内の空気をアルゴンで置換した200mLフラスコに、化合物17を1.78g(10.0mmol)、2−エチルヘキシルブロミドを5.83g(25.0mmol)、ヨウ化カリウムを41.5mg(0.25mmol)、水酸化カリウムを1.68g(30.0mmol)入れ、ジメチルスルホキシド35mLに溶解させて、室温(25℃)で24時間攪拌した。反応後、水100mLを加え、ヘキサンで生成物を抽出し、ヘキサンを展開溶媒に用いたシリカゲルカラムで精製を行い、化合物18を2.61g得た。
【0116】
合成例15
(化合物19の合成)
フラスコ内の空気をアルゴンで置換した200mLフラスコに、化合物18を1.31g(3.25mmol)、及び、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)を25mL加えた。その後、フラスコを0℃に冷却して、N−ブロモスクシンイミド(NBS)(1.21g)を加え、12時間攪拌した。反応液中に水100mLを入れて反応を停止し、エーテルで生成物を抽出した。シリカゲルカラム(展開溶媒はヘキサン)で精製を行い、化合物19を1.70g得た。
【0117】
合成例16
(高分子化合物Cの合成)
フラスコ内の空気をアルゴンで置換した200mLフラスコに、化合物19を561mg(1.00mmol)、化合物4(4,7−bis(4,4,5,5−tetramethyl−1,3,2−dioxaborolan−2−yl)−2,1,3−benzothiadiazole)(アルドリッチ社製)を388.1mg(1.00mmol)、メチルトリアルキルアンモニウムクロリド(商品名Aliquat336(登録商標)、アルドリッチ社製)を202mg加え、トルエン20mlに溶解させ、得られたトルエン溶液をアルゴンで30分バブリングした。その後、酢酸パラジウムを2.25mg、トリス(2−メトキシフェニル)ホスフィン(Tris(2−methoxyphenyl)phosphine)を12.3mg、16.7wt%の炭酸ナトリウム水溶液を6.5mL加え、100℃で5時間攪拌を行った。その後、フェニルホウ酸を50mg加え、さらに70℃で2時間反応させた。その後、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム2gと水20mLを加え、2時間還流下で攪拌を行った。反応液中の水層を除去後、有機層を水20mlで2回、3wt%の酢酸水溶液20mLで2回、さらに水20mLで2回洗浄し、メタノールに注いでポリマーを析出させた。ポリマーをろ過後、乾燥し、得られたポリマーをo−ジクロロベンゼン30mLに再度溶解した。o−ジクロロベンゼン溶液をアルミナ/シリカゲルカラムに通し、得られた溶液をメタノールに注いでポリマーを析出させた。ポリマーをろ過後、乾燥し、精製した高分子化合物280mgを得た。以下、この高分子化合物を高分子化合物Cと呼称する。GPCで測定した高分子化合物Cの分子量(ポリスチレン換算)はMwが30,000、Mnが14,000であった。
【0118】
実施例3
(インク及び有機薄膜太陽電池の作製、評価)
スパッタ法により150nmの厚みでITO膜を付けたガラス基板を、オゾンUV処理して表面処理を行った。次に、高分子化合物B及びフラーレンC60PCBM(フェニルC61−酪酸メチルエステル)(phenyl C61-butyric acid methyl ester、フロンティアカーボン社製)を、高分子化合物Bの重量に対するC60PCBMの重量の比が3となるようにオルトジクロロベンゼンに溶解し、インク1を製造した。インク1の重量に対して、高分子化合物Bの重量とC60PCBMの重量の合計は2.0重量%であった。該インク1をスピンコートによりガラス基板上に塗布し、高分子化合物Bを含む有機膜を作製した。膜厚は約100nmであった。このようにして作製した有機膜の光吸収端波長は750nmであった。その後、有機膜上に真空蒸着機によりフッ化リチウムを厚さ2nmで蒸着し、次いでAlを厚さ100nmで蒸着し、有機薄膜太陽電池を製造した。得られた有機薄膜太陽電池の形状は、2mm×2mmの正方形であった。得られた有機薄膜太陽電池にソーラシミュレーター(分光計器製、商品名OTENTO-SUNII:AM1.5Gフィルター、放射照度100mW/cm
2)を用いて一定の光を照射し、発生する電流と電圧を測定して光電変換効率、短絡電流密度、開放電圧、フィルファクターを求めた。Jsc(短絡電流密度)は9.63mA/cm
2であり、Voc(開放端電圧)は0.67Vであり、ff(フィルファクター(曲線因子))は0.62であり、光電変換効率(η)は4.03%であった。結果を表1に表す。
【0119】
実施例4
高分子化合物Bにかえて高分子化合物Aを用いた以外は、実施例3と同様の方法でインク及び有機薄膜太陽電池を作製し、評価した。Jsc(短絡電流密度)は9.90mA/cm
2であり、Voc(開放端電圧)は0.61Vであり、ff(フィルファクター(曲線因子))は0.44であり、光電変換効率(η)は2.62%であった。結果を表1に表す。
【0120】
比較例1
高分子化合物Bにかえて高分子化合物Cを用いた以外は、実施例3と同様の方法でインク及び有機薄膜太陽電池を作製し、評価した。Jsc(短絡電流密度)は4.61mA/cm
2であり、Voc(開放端電圧)は0.60Vであり、ff(フィルファクター(曲線因子))は0.33であり、光電変換効率(η)は0.91%であった。結果を表1に表す。
【0121】
表1 光電変換素子評価結果
【0122】
合成例17
(化合物21の合成)
500mlフラスコに、4,5−ジフルオロ−1,2−ジアミノベンゼン(化合物20)(東京化成工業製)を10.2g(70.8mmol)、ピリジンを150mL入れて均一溶液とした。フラスコを0℃に保ったまま、フラスコ内に塩化チオニルを16.0g(134mmol)滴下した。滴下後、フラスコを25℃に温めて、6時間反応を行った。その後、反応液に水250mlを加え、さらにクロロホルムを加えて反応生成物を含む有機層を抽出した。クロロホルム溶液である有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過した。ろ液をエバポレーターで濃縮し、析出した固体を再結晶で精製した。再結晶の溶媒には、メタノールを用いた。精製後、化合物21を10.5g(61.0mmol)得た。
【0123】
1H-NMR(CDCl
3, δ(ppm)) : 7.75(s, 2H)
19F-NMR(CDCl
3, δ(ppm)) : -128.3(s, 2F)
【0124】
合成例18
(化合物22の合成)
100mLフラスコに、化合物21を2.00g(11.6mmol)、鉄粉を0.20g(3.58mmol)入れ、フラスコを90℃に加熱した。このフラスコに、臭素31g(194mmol)を1時間かけて滴下した。滴下後、反応液を90℃で38時間攪拌した。その後、フラスコを室温(25℃)まで冷却し、クロロホルム100mLを入れて希釈した。得られた溶液を、5wt%の亜硫酸ナトリウム水溶液300mLに注ぎ込み、1時間攪拌した。得られた混合液の有機層を分液ロートで分離し、水層をクロロホルムで3回抽出した。得られた抽出液を有機層に混合し、混合した溶液を硫酸ナトリウムで乾燥させた。ろ過後、ろ液をエバポレーターで濃縮し、溶媒を留去した。得られた黄色の固体を、55℃に熱したメタノール90mLに溶解させ、その後、25℃まで冷却した。析出した結晶をろ過して回収し、その後、室温(25℃)で減圧乾燥して化合物22を1.50g得た。
【0125】
19F-NMR(CDCl
3, δ(ppm)) : -118.9(s, 2F)
【0126】
合成例19
(化合物23の合成)
フラスコ内の空気をアルゴンで置換した200mLフラスコに、化合物13を2.16g(4.55 mmol)、脱水THFを100mL入れて均一な溶液とした。該溶液を−78℃に保ち、該溶液に2.6Mのn−ブチルリチウムのヘキサン溶液4.37mL(11.4mmol)を10分かけて滴下した。滴下後、−78℃で30分攪拌し、次いで、室温(25℃)で2時間攪拌した。その後、フラスコを−78℃に冷却し、トリブチルスズクロリドを4.07g(12.5mmol)加えた。添加後、−78℃で30分攪拌し、次いで、室温(25℃)で3時間攪拌した。その後、水200mlを加えて反応を停止し、酢酸エチルで反応生成物を抽出した。酢酸エチル溶液である有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過後、ろ液をエバポレーターで濃縮し、溶媒を留去した。得られたオイル状の物質をシリカゲルカラムで精製した(展開溶媒:ヘキサン)。シリカゲルカラムのシリカゲルには、あらかじめ5wt%のトリエチルアミンを含むヘキサンに5分間浸し、その後、ヘキサンで濯いだシリカゲルを用いた。精製後、化合物23を3.52g(3.34mmol)得た。
【0127】
実施例5
(高分子化合物Dの合成)
フラスコ内の空気をアルゴンで置換した100mLフラスコに、化合物23を500mg(0.475mmol)、化合物22を123mg(0.373mmol)、化合物24を24mg(0.088mmol)、トルエンを32ml入れて均一溶液とした。得られたトルエン溶液を、アルゴンで30分バブリングした。その後、トルエン溶液に、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムを6.33mg(0.007mmol)、トリス(2−トルイル)ホスフィンを12.6mg加え、100℃で6時間攪拌した。その後、反応液にフェニルブロミドを500mg加え、さらに5時間攪拌した。その後、フラスコを25℃に冷却し、反応液をメタノール300mLに注いだ。析出したポリマーをろ過して回収し、得られたポリマーを、円筒ろ紙に入れ、ソックスレー抽出器を用いて、メタノール、アセトン及びヘキサンでそれぞれ5時間抽出した。円筒ろ紙内に残ったポリマーを、o−ジクロロベンゼン100mLに溶解させ、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム2gと水40mLを加え、8時間還流下で攪拌を行った。水層を除去後、有機層を水50mlで2回洗浄し、次いで、3wt%の酢酸水溶液50mLで2回洗浄し、次いで、水50mLで2回洗浄し、次いで、水50mLで2回洗浄し、得られた溶液をメタノールに注いでポリマーを析出させた。ポリマーをろ過後、乾燥し、得られたポリマーをo−ジクロロベンゼン30mLに再度溶解し、アルミナ/シリカゲルカラムに通した。得られた溶液をメタノールに注いでポリマーを析出させ、ポリマーをろ過後、乾燥し、精製された重合体40mgを得た。以下、この重合体を高分子化合物Dと呼称する。
【0128】
実施例6
(インク及び有機薄膜太陽電池の作製、評価)
高分子化合物Bにかえて高分子化合物Dを用いた以外は、実施例3と同様の方法でインク及び有機薄膜太陽電池を作製し、評価した。Jsc(短絡電流密度)は12.64mA/cm
2であり、Voc(開放端電圧)は0.75Vであり、ff(フィルファクター(曲線因子))は0.61であり、光電変換効率(η)は5.74%であった。結果を表2に表す。
【0129】
表2 光電変換素子評価結果
【0130】
合成例20
(化合物25の合成)
四つ口フラスコに、化合物11を10.00g(48.02mmol)、テトラヒドロフランを400mL加え、室温(25℃)で30分間アルゴンバブリングを行った。反応液を−40℃に冷却後、n−ドデシルマグネシウムブロミドを1.0mol/L含むジエチルエーテル溶液を144mL加え、0℃まで昇温しながら攪拌した。3時間後に、液体クロマトグラフィーにより原料の消失を確認した。
反応液に水及びクロロホルムを加え、有機層の抽出を行い、展開溶媒にクロロホルムを用いたカラムで有機層の精製を行った後、精製した有機層を乾燥させることで、化合物25を含む混合オイルを得た。
【0131】
合成例21
(化合物26の合成)
四つ口フラスコに、化合物25を含む混合オイルを全量、トルエンを200mL加え、室温(25℃)で30分間アルゴンバブリングを行った。次に、反応液にパラ−トルエンスルホン酸1水和物を1000mg加えた後、120℃に昇温して攪拌を行い、1時間後に、液体クロマトグラフィーにより原料の消失を確認した。反応液に水及び酢酸エチルを加え、有機層の抽出を行った。展開溶媒にヘキサンを用いたカラムで有機層の精製、乾燥を行うことで、化合物26を21.1g得た。
【0132】
1H-NMR(CDCl
3, δ(ppm)) : 0.83(t, 6H), 1.21(m, 36H), 1.43(m, 4H), 1.96(t, 4H),
6.67 (d, 1H), 6.69 (d, 1H), 6.96 (d, 1H), 7.03 (d, 1H)
【0133】
合成例22
(化合物27の合成)
フラスコ内の空気をアルゴンで置換した300mLフラスコに、化合物26を5.00g(9.42 mmol)、脱水THFを150mL入れて均一な溶液とした。該溶液を−78℃に保ち、該溶液に2.6Mのn−ブチルリチウムのヘキサン溶液9.04mL(23.5mmol)を10分かけて滴下した。滴下後、−78℃で30分攪拌し、次いで、室温(25℃)で2時間攪拌した。その後、フラスコを−78℃に冷却し、トリブチルスズクロリドを8.43g(25.9mmol)加えた。添加後、−78℃で30分攪拌し、次いで、室温(25℃)で3時間攪拌した。その後、水200mlを加えて反応を停止し、酢酸エチルで反応生成物を抽出した。酢酸エチル溶液である有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過後、濾液をエバポレーターで濃縮し、溶媒を留去した。得られたオイル状の物質をシリカゲルカラムで精製した(展開溶媒:ヘキサン)。シリカゲルカラムのシリカゲルには、あらかじめ5wt%のトリエチルアミンを含むヘキサンに5分間浸し、その後、ヘキサンで濯いだシリカゲルを用いた。精製後、化合物27を9.80g(8.84mmol)得た。
【0134】
実施例7
(高分子化合物Eの合成)
フラスコ内の空気をアルゴンで置換した100mLフラスコに、化合物23を200mg(0.190mmol)、化合物27を211mg(0.190mmol)、化合物22を96mg(0.291mmol)、化合物24を20mg(0.074mmol)、トルエンを32ml入れて均一溶液とした。得られたトルエン溶液を、アルゴンで30分バブリングした。その後、トルエン溶液に、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムを5.01mg(0.0055mmol)、トリス(2−トルイル)ホスフィンを10.0mg加え、100℃で6時間攪拌した。その後、反応液にフェニルブロミドを113mg加え、さらに5時間攪拌した。その後、フラスコを25℃に冷却し、反応液をメタノール300mLに注いだ。析出したポリマーをろ過して回収し、得られたポリマーを、円筒ろ紙に入れ、ソックスレー抽出器を用いて、メタノール、アセトン及びヘキサンでそれぞれ5時間抽出した。円筒ろ紙内に残ったポリマーを、o−ジクロロベンゼン100mLに溶解させ、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム2gと水40mLを加え、8時間還流下で攪拌を行った。水層を除去後、有機層を水50mlで2回洗浄し、次いで、3wt%の酢酸水溶液50mLで2回洗浄し、次いで、水50mLで2回洗浄し、次いで、水50mLで2回洗浄し、得られた溶液をメタノールに注いでポリマーを析出させた。ポリマーをろ過後、乾燥し、得られたポリマーをo−ジクロロベンゼン30mLに再度溶解し、アルミナ/シリカゲルカラムに通した。得られた溶液をメタノールに注いでポリマーを析出させ、ポリマーをろ過後、乾燥し、精製された重合体118mgを得た。以下、この重合体を高分子化合物Eと呼称する。
【0135】
実施例8
(インク及び有機薄膜太陽電池の作製、評価)
高分子化合物Bにかえて高分子化合物Eを用いた以外は、実施例3と同様の方法でインク及び有機薄膜太陽電池を作製し、評価した。Jsc(短絡電流密度)は13.25mA/cm
2であり、Voc(開放端電圧)は0.73Vであり、ff(フィルファクター(曲線因子))は0.66であり、光電変換効率(η)は6.39%であった。結果を表3に表す。
【0136】
表3 光電変換素子評価結果