特許第5799890号(P5799890)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許5799890ビスマス吸着カラム、ビスマス回収設備およびビスマス回収方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5799890
(24)【登録日】2015年9月4日
(45)【発行日】2015年10月28日
(54)【発明の名称】ビスマス吸着カラム、ビスマス回収設備およびビスマス回収方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 30/06 20060101AFI20151008BHJP
   C22B 3/24 20060101ALI20151008BHJP
   B01D 36/00 20060101ALI20151008BHJP
   B01D 36/02 20060101ALI20151008BHJP
   B01J 20/26 20060101ALN20151008BHJP
【FI】
   C22B30/06
   C22B3/24 101
   B01D36/00
   B01D36/02
   !B01J20/26 E
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-113118(P2012-113118)
(22)【出願日】2012年5月17日
(65)【公開番号】特開2013-237918(P2013-237918A)
(43)【公開日】2013年11月28日
【審査請求日】2014年7月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089222
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 康伸
(74)【代理人】
【識別番号】100134979
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 博
(74)【代理人】
【識別番号】100175400
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 伸
(72)【発明者】
【氏名】大原 卓也
(72)【発明者】
【氏名】山田 高裕
【審査官】 池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−162861(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2010−0036672(KR,A)
【文献】 特開2010−275619(JP,A)
【文献】 特開平03−106489(JP,A)
【文献】 特開2009−195879(JP,A)
【文献】 特開2006−057118(JP,A)
【文献】 特開2011−162862(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/00−61/00
B01D 15/00−15/08
B01D 36/00−36/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビスマスを含有する銅電解液が通液されるビスマス吸着カラムであって、
前記カラムの上端および下端に、内部と外部とを連通する上端連通口および下端連通口を有し、
前記カラムの内部には、
ビスマス吸着樹脂粒子からなるビスマス吸着樹脂層と、
該ビスマス吸着樹脂層の上に積層された、不活性樹脂粒子からなる不活性樹脂層と、が設けられており、
前記ビスマス吸着樹脂層と前記不活性樹脂層との間に、銅電解液に含まれる浮遊固形物を除去する濾過層が設けられている
ことを特徴とするビスマス吸着カラム。
【請求項2】
前記不活性樹脂層と前記上端連通口との間に、前記不活性樹脂粒子が該上端連通口から流出することを防止する上部粒子保持部材が設けられており、
前記不活性樹脂層と前記上部粒子保持部材との間に、銅電解液に含まれる浮遊固形物を除去する濾過層が設けられている
ことを特徴とする請求項1記載のビスマス吸着カラム。
【請求項3】
前記ビスマス吸着樹脂層と前記下端連通口との間に、前記ビスマス吸着樹脂粒子が該下端連通口から流出することを防止する下部粒子保持部材が設けられており、
前記ビスマス吸着樹脂層と前記下部粒子保持部材との間に、銅電解液に含まれる浮遊固形物を除去する濾過層が設けられている
ことを特徴とする請求項1または2記載のビスマス吸着カラム。
【請求項4】
前記濾過層は2枚以上の濾過材を積層して構成されている
ことを特徴とする請求項1、2または3記載のビスマス吸着カラム。
【請求項5】
前記浮遊固形物が有機物である
ことを特徴とする請求項1、2、3または4記載のビスマス吸着カラム。
【請求項6】
請求項1、2、3、4または記載のビスマス吸着カラムと、
孔径の異なる2段以上のプレフィルタと、を備え
前記プレフィルタで濾過された銅電解液が前記ビスマス吸着カラムに供給されるように構成されている
ことを特徴とするビスマス回収設備。
【請求項7】
ビスマスを含有する銅電解液からビスマスを回収する方法であって、
ビスマス吸着樹脂粒子が充填されたビスマス吸着カラム内に銅電解液を通液して、銅電解液に含まれるビスマスを該ビスマス吸着樹脂粒子に吸着させる吸着工程と、
該吸着工程後に、前記ビスマス吸着カラム内に溶離液を通液して、前記ビスマス吸着樹脂粒子に吸着されているビスマスを該溶離液に溶出させる溶離工程と、
該溶離工程に使用された前記溶離液からビスマスを回収する回収工程と、を備えており、
前記ビスマス吸着カラムは、
上端および下端に、内部と外部とを連通する上端連通口および下端連通口を有し、
前記ビスマス吸着カラムの内部には、
前記ビスマス吸着樹脂粒子からなるビスマス吸着樹脂層と、
該ビスマス吸着樹脂層の上に積層された、不活性樹脂粒子からなる不活性樹脂層と、が設けられており、
前記ビスマス吸着樹脂層と前記不活性樹脂層との間に、銅電解液に含まれる浮遊固形物を除去する濾過層が設けられている
ことを特徴とするビスマス回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビスマス吸着カラム、ビスマス回収設備およびビスマス回収方法に関する。さらに詳しくは、例えば、銅精錬で銅電解液中に蓄積される不純物である金属のうち、とくに電解精製された銅の品質に悪影響を及ぼす可能性の高いビスマスを回収する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ビスマスは、銅鉱石中に含有され、銅製錬で副産物として回収される。
ビスマスは、銅鉱石に多く含有されて産出され、その大部分は銅製錬の乾式工程で高熱によって揮発し、煙灰として鉛、砒素、アンチモンなどと共にコットレルなどに捕集される。しかし、溶体中に残ったビスマスは、スラグへの分配率が小さいため、乾式工程で産出される粗銅中に残留する。粗銅はアノードとして電解工程で使用されるが、粗銅中に残留したビスマスは、銅電解精製工程で電解液中に溶出し、電解液内に蓄積される。
ビスマスと銅の析出電位は実質的に同程度であるため、電解液中のビスマス濃度が上昇すると精製された銅(電気銅)中に、ビスマスが不純物として共析する。そして、ある一定量以上のビスマスが電気銅内に取り込まれると、電気銅の電気特性が悪化し、製品とならない。
【0003】
かかる電解液中に蓄積されたビスマスを回収する方法として、配位結合を有する樹脂であって、配位結合を担うクラウンエーテルのサイズによって、そのサイズに適合する各種の金属カチオンを選択的に吸着するという特性を有する分子認識技術樹脂(MRT樹脂)を用いた回収方法が開発されている(例えば、特許文献1)。
このMRT樹脂を用いた回収方法は、まず、MRT樹脂粒子を充填したカラムに銅電解液を通液して、銅電解液中のビスマスをMRT樹脂粒子に吸着させる。ついで、溶離液(例えば、硫酸)をカラムに通液してMRT樹脂粒子に吸着されているビスマスを溶離液に溶出させた後、溶離液を冷却して、ビスマスを沈殿物として回収する。
【0004】
このようなビスマス回収方法において、MRT樹脂粒子に通液される銅電解液や溶離液(以下、プロセス液という)の偏流が発生すると、MRT樹脂粒子の吸着能力が低下し、ビスマスの回収効率が低下することが知られている。プロセス液の偏流が発生すると、MRT樹脂粒子とプロセス液とが均一に接触せず、MRT樹脂粒子にビスマスが吸着しないまま吸着工程が終了し吸着量が減少したり、MRT樹脂粒子からビスマスの溶離が不十分となり次回の吸着工程における吸着量が減少したりするからである。
【0005】
この問題に対して、カラムに充填されたMRT樹脂粒子の層の上に不活性樹脂層を積層する方法がある(例えば、特許文献2)。この方法によれば、カラムに通液されたプロセス液は、不活性樹脂層を通過する間にカラムの軸方向と直交する断面内における流れが均一化される。そのため、プロセス液の偏流に起因するMRT樹脂粒子の吸着能力の低下を防止することができる。
【0006】
一方、銅電解液には浮遊固形物が含まれており、浮遊固形物が含まれた銅電解液がカラムに通液されると、MRT樹脂粒子の吸着能力が低下する。この浮遊固形物はアノードスライムや不純物が晶析したスケール、膠などの有機成分などに由来すると考えられる。このような浮遊固形物が含まれた銅電解液がカラムに通液されると、浮遊固形物がMRT樹脂粒子の官能基部分をコートした状態となり、MRT樹脂粒子の吸着能力が低下する。
【0007】
そのため、銅電解液をフィルタで濾過して浮遊固形物を除去した後にカラムへ通液することにより、浮遊固形物のカラムへの流入を防ぎ、MRT樹脂粒子の吸着能力を維持することが行われる。
しかし、銅電解液をフィルタで濾過しただけでは、浮遊固形物の除去が不十分な場合がある。特に、銅電解液の通液量が増えると、浮遊固形物をフィルタで除去しきれなくなる可能性が高くなる。そうすると、MRT樹脂粒子の吸着能力が次第に低下してしまう。
【0008】
このように、MRT樹脂粒子の吸着能力を維持することは難しく、計画した吸着量を確保するためには、前記の阻害によるロス分を考慮し所定量よりも余分のMRT樹脂粒子をカラムに充填する必要があり、充填量の面で操業効率は低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−213350号公報
【特許文献2】特開2011−162861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記事情に鑑み、浮遊固形物を十分に除去でき、ビスマスの回収効率の低下を防止できるビスマス吸着カラム、ビスマス回収設備およびビスマス回収方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1発明のビスマス吸着カラムは、ビスマスを含有する銅電解液が通液されるビスマス吸着カラムであって、前記カラムの上端および下端に、内部と外部とを連通する上端連通口および下端連通口を有し、前記カラムの内部には、ビスマス吸着樹脂粒子からなるビスマス吸着樹脂層と、該ビスマス吸着樹脂層の上に積層された、不活性樹脂粒子からなる不活性樹脂層と、が設けられており、前記ビスマス吸着樹脂層と前記不活性樹脂層との間に、銅電解液に含まれる浮遊固形物を除去する濾過層が設けられていることを特徴とする。
第2発明のビスマス吸着カラムは、第1発明において、前記不活性樹脂層と前記上端連通口との間に、前記不活性樹脂粒子が該上端連通口から流出することを防止する上部粒子保持部材が設けられており、前記不活性樹脂層と前記上部粒子保持部材との間に、銅電解液に含まれる浮遊固形物を除去する濾過層が設けられていることを特徴とする。
第3発明のビスマス吸着カラムは、第1または第2発明において、前記ビスマス吸着樹脂層と前記下端連通口との間に、前記ビスマス吸着樹脂粒子が該下端連通口から流出することを防止する下部粒子保持部材が設けられており、前記ビスマス吸着樹脂層と前記下部粒子保持部材との間に、銅電解液に含まれる浮遊固形物を除去する濾過層が設けられていることを特徴とする。
第4発明のビスマス吸着カラムは、第1、第2または第3発明において、前記濾過層は2枚以上の濾過材を積層して構成されていることを特徴とする。
第5発明のビスマス吸着カラムは、第1、第2、第3または第4発明において、前記浮遊固形物が有機物であることを特徴とする。
第6発明のビスマス回収設備は、第1、第2、第3、第4または第5発明のビスマス吸着カラムと、孔径の異なる2段以上のプレフィルタと、を備え前記プレフィルタで濾過された銅電解液が前記ビスマス吸着カラムに供給されるように構成されていることを特徴とする。
第7発明のビスマス回収方法は、ビスマスを含有する銅電解液からビスマスを回収する方法であって、ビスマス吸着樹脂粒子が充填されたビスマス吸着カラム内に銅電解液を通液して、銅電解液に含まれるビスマスを該ビスマス吸着樹脂粒子に吸着させる吸着工程と、該吸着工程後に、前記ビスマス吸着カラム内に溶離液を通液して、前記ビスマス吸着樹脂粒子に吸着されているビスマスを該溶離液に溶出させる溶離工程と、該溶離工程に使用された前記溶離液からビスマスを回収する回収工程と、を備えており、前記ビスマス吸着カラムは、上端および下端に、内部と外部とを連通する上端連通口および下端連通口を有し、前記ビスマス吸着カラムの内部には、前記ビスマス吸着樹脂粒子からなるビスマス吸着樹脂層と、該ビスマス吸着樹脂層の上に積層された、不活性樹脂粒子からなる不活性樹脂層と、が設けられており、前記ビスマス吸着樹脂層と前記不活性樹脂層との間に、銅電解液に含まれる浮遊固形物を除去する濾過層が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
第1発明によれば、ビスマス吸着樹脂層と不活性樹脂層との間に設けられた濾過層により、ビスマス吸着樹脂層に通液される直前の銅電解液に含まれる浮遊固形物を除去できる。そのため、銅電解液が不活性樹脂層を通過する際に発生する浮遊固形物を除去できるので、ビスマス吸着樹脂粒子が浮遊固形物にコートされて吸着能力が低下することを防止でき、ビスマスの回収効率の低下を防止できる。
第2発明によれば、不活性樹脂層と上部粒子保持部材との間に設けられた濾過層により、ビスマス吸着カラムに通液される直前の銅電解液に含まれる浮遊固形物を除去できる。そのため、銅電解液がプレフィルタを通過した後、ビスマス吸着カラムに達するまでに発生する浮遊固形物を除去できるので、ビスマス吸着樹脂粒子が浮遊固形物にコートされて吸着能力が低下することを防止でき、ビスマスの回収効率の低下を防止できる。
第3発明によれば、ビスマス吸着樹脂層と下部粒子保持部材との間に設けられた濾過層により、ビスマス吸着カラムの下端連通口から通液される銅電解液に含まれる浮遊固形物を除去できる。そのため、銅電解液がプレフィルタを通過した後、ビスマス吸着カラムに達するまでに発生する浮遊固形物を除去できるので、ビスマス吸着樹脂粒子が浮遊固形物にコートされて吸着能力が低下することを防止でき、ビスマスの回収効率の低下を防止できる。
第4発明によれば、濾過層は2枚以上の濾過材を積層して構成されているので、プロセス液が濾過層を通過する際に偏流が発生することを抑制できる。そのため、プロセス液の偏流に起因するビスマス吸着樹脂粒子の吸着能力の低下を防止することができ、ビスマスの回収効率の低下を防止できる。
第5発明によれば、有機物である浮遊固形物を除去できる。
第6発明によれば、プレフィルタが2段以上備えられているので、銅電解液に含まれる浮遊固形物を確実に除去できる。そのため、ビスマス吸着樹脂粒子が浮遊固形物にコートされて吸着能力が低下することを防止でき、ビスマスの回収効率の低下を防止できる。
第7発明によれば、ビスマス吸着樹脂層と不活性樹脂層との間に設けられた濾過層により、ビスマス吸着樹脂層に通液される直前の銅電解液に含まれる浮遊固形物を除去できる。そのため、銅電解液が不活性樹脂層を通過する際に発生する浮遊固形物を除去できるので、ビスマス吸着樹脂粒子が浮遊固形物にコートされて吸着能力が低下することを防止でき、ビスマスの回収効率の低下を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係るビスマス吸着カラムの説明図である。
図2】本発明の一実施形態に係るビスマス回収設備の概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
本発明のビスマス回収方法は、ビスマス吸着樹脂を利用してビスマスを含有する液体(ビスマス含有液)からビスマスを回収する方法であって、ビスマス含有液に含まれる浮遊固形物を除去して、ビスマス吸着樹脂粒子が浮遊固形物にコートされて吸着能力が低下することを防止したことに特徴を有している。
【0015】
ビスマス吸着樹脂とは、配位結合の一方の要素として、ビスマスのカチオンと共有結合するのに適切な官能基をもつ樹脂であって、配位結合のもう一方の要素としてビスマスをカチオンとして含有するビスマス含有液と接触するとビスマス含有液中のビスマスを選択的に吸着する機能と、前記配位結合を解除し、ビスマスを溶離させる性質を有する溶離液と接触すると吸着しているビスマスを解放する機能とを有する樹脂である。かかるビスマス吸着樹脂として、例えば、クラウンエーテルからなる分子認識技術樹脂(MRT樹脂)や陰イオン交換樹脂、陽イオン交換樹脂、キレート樹脂などを使用することができるが、上記のごとき性質を有するものであれば、とくに限定されない。
【0016】
本発明のビスマス回収方法を用いてビスマスの回収が可能なビスマス含有液として、例えば、銅精錬に使用された銅電解液やスズ−ビスマス合金メッキにおいて使用された液体などを挙げることができるが、ビスマス含有液はとくに限定されない。また、本発明のビスマス回収方法において使用できる溶離液として、例えば、硫酸や塩酸などの液体を挙げることができるが、上記機能を有する液体であれば、とくに限定されない。
【0017】
そして、ビスマス吸着樹脂、ビスマス含有液、溶離液の組み合わせもとくに限定されない。例えば、銅電解液からビスマスを回収する場合であれば、ビスマス吸着樹脂としてMRT樹脂、溶離液として硫酸を使用することが好ましい。
以下では、銅精錬に使用された銅電解液からビスマスを回収する場合であって、ビスマス吸着樹脂としてMRT樹脂、溶離液として硫酸を使用する場合を代表として説明する。また、以下では、ビスマス含有液や溶離液および後述の洗浄液をプロセス液とも称する。
【0018】
(ビスマス回収設備1)
まず、本発明の一実施形態に係るビスマス回収設備1について説明する。
図1に示すように、ビスマス回収設備1に用いられるビスマス吸着カラム10は、その内部の空間10hにビスマス吸着樹脂粒子としてMRT樹脂粒子が充填されており、ビスマス吸着樹脂層Mが形成されている。このビスマス吸着樹脂層Mの上には、不活性樹脂粒子からなる不活性樹脂層Bが設けられている。
【0019】
なお、不活性樹脂とは、ビスマス含有液や溶離液などのプロセス液と反応しない物質、つまり、プロセス液に影響を与えない物質である。不活性樹脂は、例えば、ポリプロピレンやポリエチレン、ウレタンなどを挙げることができるが、上記性質を有するものであれば、とくに限定されない。
【0020】
このビスマス吸着カラム10の上端には、その内部の空間10hと外部とを連通する上端連通口10aが設けられている。また、ビスマス吸着カラム10の下端には、その内部の空間10hと外部とを連通する下端連通口10bが設けられている。
【0021】
図2に示すように、ビスマス回収設備1は、ビスマス吸着カラム10の他に、ヒータ20、第1プレフィルタ31、第2プレフィルタ32、回収手段40を備えており、ヒータ20、第1プレフィルタ31、第2プレフィルタ32、ビスマス吸着カラム10、回収手段40がこの順で直列に接続されて構成されている。
【0022】
ヒータ20は銅電解液、遊離液および洗浄液を加温してビスマス回収に適した温度にする手段であり、プレートヒータなどの公知の加温手段が用いられる。
ヒータ20で加温された銅電解液は第1プレフィルタ31および第2プレフィルタ32に供給される。そして第1プレフィルタ31および第2プレフィルタ32で濾過された銅電解液はビスマス吸着カラム10に供給される。一方、ヒータ20で加温された遊離液および洗浄液は、第1プレフィルタ31および第2プレフィルタ32を介さず、直接ビスマス吸着カラム10に供給される。
【0023】
第1プレフィルタ31および第2プレフィルタ32は、銅電解液に含まれる浮遊固形物を除去するフィルタである。この浮遊固形物はアノードスライムや不純物が晶析したスケール、膠などの有機成分などに由来すると考えられる。第1プレフィルタ31および第2プレフィルタ32は、このような浮遊固形物を除去できるフィルタであれば、とくに限定されない。
【0024】
なお、本実施形態では、第1プレフィルタ31と第2プレフィルタ32とを直列に接続した2段のプレフィルタとしたが、これを1段のプレフィルタとしてもよい。ただし、1段のプレフィルタとした場合には浮遊固形物の除去が不十分となる可能性がある。浮遊固形物の除去が不十分であると、浮遊固形物が含まれた銅電解液がビスマス吸着カラム10に通液され、ビスマス吸着樹脂粒子が浮遊固形物にコートされて吸着能力が低下する。また、プレフィルタで除去しきれなかった浮遊固形物を、後述の濾過層13で除去できたとしても、その分濾過層13の寿命が短くなり交換の頻度が高くなる。そのため、2段以上のプレフィルタとして、銅電解液に含まれる浮遊固形物を確実に除去する方が好ましい。
【0025】
また、プレフィルタを2段以上とする場合、各プレフィルタを孔径の異なるものを使用することが好ましい。例えば、上流側のプレフィルタ(第1プレフィルタ31)を下流側のプレフィルタ(第2プレフィルタ32)に比べて孔径の大きいフィルタとする。そうすると、粒径の大きい浮遊固形物が上流側のプレフィルタで除去されるので、孔径の小さい下流側のプレフィルタが目詰りする頻度を低減できる。
【0026】
第2プレフィルタ32を通過した銅電解液、ヒータ20を通過した溶離液および洗浄液は、ビスマス吸着カラム10の上端連通口10aに供給される。一方、ビスマス吸着カラム10を通過した銅電解液、溶離液および洗浄液は、ビスマス吸着カラム10の下端連通口10bから排出される。このうち、溶離液は回収手段40に供給される。なお、下端連通口10bに接続された配管に介装されたバルブを制御するなどの手段により、銅電解液および洗浄液と、溶離液との供給先を切り替えることができる。
【0027】
回収手段40は、ビスマス吸着カラム10から排出される溶離液からビスマスを回収する手段である。回収手段40には、例えば、溶離液を冷却して、ビスマスをビスマス化合物の状態で沈殿させて回収する装置などを使用できるが、ビスマスを溶離液から効率よく回収できるのであれば、その方法や装置はとくに限定されない。
【0028】
(ビスマス回収方法)
以上のごとき構成を有するビスマス回収設備1によって、ビスマスを回収する方法を説明する。
【0029】
(吸着工程)
まず、銅の電解精製に使用された銅電解液を、ヒータ20に通して50〜60℃程度のMRT樹脂粒子がビスマスを吸着するのに適した温度とする。つぎに、銅電解液を第1プレフィルタ31、第2プレフィルタ32で濾過して銅電解液に含まれる浮遊固形物を除去する。つぎに、第2プレフィルタ32を通過した銅電解液をビスマス吸着カラム10内に通液する。
【0030】
銅電解液は、ビスマス吸着カラム10内を上端連通口10aから下端連通口10bに向かって流れ外部に排出される。
銅の電解精製に使用された銅電解液は、通常、銅濃度40〜50g/L、遊離硫酸濃度150〜200g/L、アンチモン0.5〜0.6g/L、ビスマス0.3〜0.8g/Lとなっている。つまり、一般的な濃度の銅電解液に比べて、アンチモン、ビスマス濃度が高い硫酸銅−硫酸水溶液の状態となっており、その状態でビスマス吸着カラム10内に充填されているビスマス吸着樹脂層Mを通過する。このため、銅電解液に含有されているビスマスがMRT樹脂粒子に吸着される。
【0031】
ビスマス吸着カラム10内に通過した銅電解液は、ビスマスが除去されており、電解槽に戻され再び使用される。
そして、所定の量の銅電解液がビスマス吸着カラム10に通液されると、ビスマス吸着カラム10に対する銅電解液の供給を停止する。なお、ビスマス吸着カラム10に供給される銅電解液の総量およびその流量は、例えば、ビスマス吸着カラム10内に充填されているMRT樹脂の量や、ビスマス吸着カラム10の容積、ビスマス吸着カラム10に接続されている配管の断面積などに応じて決定される。
【0032】
(洗浄工程)
ついで、ヒータ20で加温した洗浄液(例えば、水や硫酸(2mol/L程度)など)を、ビスマス吸着カラム10内の空間10hに供給する。すると、洗浄液はビスマス吸着カラム10内を上端連通口10aから下端連通口10bに向かって流れ外部に排出される。
このとき、洗浄液がビスマス吸着カラム10内に充填されているビスマス吸着樹脂層Mを通過するので、MRT樹脂粒子表面が洗浄液によって洗浄され、かつ、ビスマス吸着樹脂層M内に残留していた銅電解液が排出される。
【0033】
そして、所定の量の洗浄液がビスマス吸着カラム10に通液されると、ビスマス吸着カラム10に対する洗浄液の供給を停止する。なお、ビスマス吸着カラム10に供給する洗浄液の総量は、ビスマス吸着カラム10通液後の液分析値に基づいて決定され、その流量は、上述したように、ビスマス吸着カラム10内に充填されているMRT樹脂の量や、ビスマス吸着カラム10の容積、ビスマス吸着カラム10に接続されている配管の断面積などに応じて決定される。
【0034】
(溶離工程)
洗浄工程が終了すると、ヒータ20で加温した溶離液(例えば、硫酸(9mol/L程度)など)を、ビスマス吸着カラム10内の空間10hに供給する。すると、溶離液は、ビスマス吸着カラム10に残留している洗浄液を押しながら、ビスマス吸着カラム10内を上端連通口10aから下端連通口10bに向かって流れる。そして、溶離液は、ビスマス吸着カラム10内から外部に排出され、回収手段40に供給される。
このとき、溶離液は、ビスマス吸着カラム10内に充填されているビスマス吸着樹脂層Mを通過するので、MRT樹脂粒子に吸着されているビスマスが溶離液中に溶出する。
【0035】
そして、所定の量の溶離液がビスマス吸着カラム10に通液されると、ビスマス吸着カラム10に対する溶離液の供給を停止する。なお、ビスマス吸着カラム10に供給する溶離液の総量およびその流量も、ビスマス吸着カラム10内に充填されているMRT樹脂の量や、ビスマス吸着カラム10の容積、ビスマス吸着カラム10に接続されている配管の断面積などに応じて決定される。
【0036】
(回収工程)
溶離工程中にビスマス吸着カラム10から排出された溶離液は、回収手段40において冷却される。例えば、溶離液がビスマス化合物(例えば、硫酸ビスマス)の析出温度(約30℃)以下となるまで冷却される。すると、冷却に伴って溶離液中に溶解していたビスマスがビスマス化合物として析出するから、ビスマスをビスマス化合物の沈殿物として回収することができる。
【0037】
以上のごとく、本実施形態のビスマス回収設備1において上記各工程を行い銅電解液を処理すれば、銅電解液に含有されるビスマスを回収することができる。
また、ビスマス吸着樹脂層Mの上に不活性樹脂層Bが積層されているので、銅電解液などのプロセス液が不活性樹脂層Bを通過する間に、ビスマス吸着カラム10の軸方向と直交する断面内におけるプロセス液の流れが均一化される。そのため、プロセス液の偏流に起因するMRT樹脂粒子の吸着能力の低下を防止することができる。
【0038】
なお、上記工程を繰り返して銅電解液を連続処理する場合には、溶離工程終了後、再度洗浄液をビスマス吸着カラム10に供給して、ビスマス吸着カラム10を洗浄する溶離後洗浄工程を行うようにしてもよい。
かかる溶離後洗浄工程を行えば、ビスマス吸着カラム10内に前回の溶離工程に使用した溶離液が残留しない状態で次回の吸着工程を開始することができる。すると、ビスマス吸着カラム10のビスマス吸着樹脂層M内に残留する溶離液に起因する問題が発生することを防ぐことができる。例えば、次回の吸着工程において、MRT樹脂粒子のビスマス吸着能力の低下や装置の低温部でビスマス化合物が析出することによる回収量の低下などの問題が生じることを防ぐことができる。
【0039】
また、吸着工程において、銅電解液をビスマス吸着カラム10内の空間10hに対し下端連通口10bから上端連通口10aに向かって流れる上昇流となるように供給するなど、プロセス液を上昇流となるように供給してもよい。
【0040】
(ビスマス吸着カラム10の詳細説明)
つぎに、本実施形態のビスマス回収設備1に使用されるビスマス吸着カラム10の詳細な構造を説明する。
図1に示すように、ビスマス吸着カラム10内には、MRT樹脂粒子と不活性樹脂粒子とが収容されており、ビスマス吸着樹脂層Mの上に不活性樹脂層Bが積層された状態となるように充填されている。
【0041】
ビスマス吸着樹脂層Mは、上述したような性質を有するMRT樹脂粒子からなる層である。ビスマス吸着樹脂層Mを形成するMRT樹脂粒子は、例えば、直径が400〜500μm、軸方向長さが100〜200μm程度である円筒状の粒子である。
不活性樹脂層Bは、不活性樹脂粒子からなる層である。不活性樹脂粒子は、例えば、その直径が1.0〜2.0mm、軸方向長さが1.0〜2.0mm程度である円筒状の粒子である。
【0042】
不活性樹脂層Bとビスマス吸着カラム10の上端連通口10aとの間には、不活性樹脂粒子が上端連通口10aから流出することを防止する上部粒子保持部材11が設けられている。この上部粒子保持部材11には、テフロン(登録商標)やポリエステル、ポリエチレンから形成された網状の部材である。この上部粒子保持部材11は、プロセス液は通過できるがMRT樹脂粒子や不活性樹脂粒子は通過できない程度の目を有するように形成されたものである。
【0043】
ビスマス吸着樹脂層Mとビスマス吸着カラム10の下端連通口10bとの間には、MRT樹脂粒子が下端連通口10bから流出することを防止する下部粒子保持部材12が設けられている。この下部粒子保持部材12は、ビスマス吸着樹脂層粒子の流出を防止できるものであればとくに限定されない。
例えば、下部粒子保持部材12として、下端連通口10bの開口部を覆うように設けられた金網などのストレーナ12bと、このストレーナ12bの上に積層されたガラスビーズ層12aとを採用することができる。下部粒子保持部材12をかかる構成とすれば、プロセス液が流れるときに、その流動抵抗を小さくできるとともに、下端連通口10bから供給されるプロセス液の流れを整流する効果も得られる点で好ましい。
【0044】
ビスマス吸着カラム10の内部には、3つの濾過層13(第1濾過層13a、第2濾過層13b、第3濾過層13c)が設けられている。第1濾過層13aは不活性樹脂層Bと上部粒子保持部材11との間に設けられており、第2濾過層13bはビスマス吸着樹脂層Mと不活性樹脂層Bとの間に設けられており、第3濾過層13cはビスマス吸着樹脂層Mと下部粒子保持部材12との間に設けられている。
【0045】
これら濾過層13は、ビスマス吸着カラム10に通液される銅電解液に含まれる浮遊固形物を除去するものである。濾過層13には、浮遊固形物を除去できるものであれば種々の濾過材を用いることができ、とくに限定されないが、コスト、耐久性、取り扱いの容易さなどの点でグラスウールが好適である。
【0046】
また、シート状のグラスウールなど、シート状の濾過材を用いる場合には、各濾過層13a、13b、13cは、2枚以上の濾過材を積層して構成することが好ましい。本実施形態では、第1濾過層13aおよび第2濾過層13bを2枚のグラスウールシートで構成し、第3濾過層13cを1枚のグラスウールシートで構成している。
このように、濾過層13を2枚以上の濾過材を積層して構成すれば、プロセス液が濾過層13を通る際に偏流が発生することを抑制できる。そのため、プロセス液の偏流に起因するMRT樹脂粒子の吸着能力の低下を防止することができ、ビスマスの回収効率の低下を防止できる。
【0047】
前述のごとく、ビスマス吸着カラム10に通液する銅電解液は、プレフィルタ31(32)で濾過され浮遊固形物が除去される。しかし、本願発明者は、銅電解液をプレフィルタ31(32)で濾過しても、ビスマス吸着樹脂層Mに浮遊固形物が付着する場合があるという知見を得ている。
具体的には、銅電解液を1段のプレフィルタ(絶対濾過精度1μmのカートリッジフィルタ)で濾過した後に、ビスマス吸着樹脂粒子としてキレート樹脂粒子が充填されたビスマス吸着カラム10に通液した場合、不活性樹脂粒子中に浮遊固形物が混入していることが確認され、キレート樹脂粒子の吸着能力が次第に低下することが確認された。
【0048】
本願発明者はこの原因を以下の様に考えている。
すなわち、銅電解液がプレフィルタを通過した後、ビスマス吸着カラムに達するまでの間に新たな浮遊固形物が発生する。これは、銅電解液がプレフィルタとビスマス吸着カラムとを接続する配管内を通過する際に冷やされて、銅電解液に含まれるアンチモンなどの不純物が酸化物として析出し、それが浮遊固形物となるからである。また、プレフィルタを透過した極微細な浮遊固形物が凝集してビスマス吸着樹脂粒子の吸着能力を低下させる程度の大きさの浮遊固形物が形成される。ここで、銅電解液には、電着表面を平滑にするために、膠などの有機物からなる添加剤が加えられている。この添加剤が、プレフィルタを透過した極微細な浮遊固形物を凝集する凝集剤として作用する。
【0049】
また、一般に、ビスマス吸着カラム10は上端連通口10aよりも不活性樹脂層Bが収容される空間10hの方が、断面積が広くなっているので、上端連通口10aから流入した銅電解液は不活性樹脂層Bを通過する際に流速が低下する。そうすると、銅電解液からの放散熱量が増加し液温低下が加速し、銅電解液に含まれるアンチモンなど他の不純物のスケールが析出する。そして、析出したスケールが再溶解されることなく核として成長して浮遊固形物が発生する。
【0050】
以上の原因により、銅電解液をプレフィルタで濾過して浮遊固形物をほぼ完全に除去したとしても、銅電解液がプレフィルタを通過した後、ビスマス吸着カラム10に達するまでに新たな浮遊固形物が発生し、また、銅電解液が不活性樹脂層Bを通る際に新たな浮遊固形物が発生すると考えられる。
【0051】
本実施形態のビスマス吸着カラム10は、不活性樹脂層Bと上部粒子保持部材11との間に第1濾過層13aが設けられているので、この第1濾過層13aにより、ビスマス吸着カラム10に通液される直前の銅電解液に含まれる浮遊固形物を除去できる。そのため、銅電解液がプレフィルタ31、32を通過した後、ビスマス吸着カラム10に達するまでに発生する浮遊固形物を除去できる。
【0052】
また、ビスマス吸着樹脂層Mと不活性樹脂層Bとの間に第2濾過層13bが設けられているので、この第2濾過層13bにより、ビスマス吸着樹脂層Mに通液される直前の銅電解液に含まれる浮遊固形物を除去できる。そのため、銅電解液が不活性樹脂層Bを通過する際に発生する浮遊固形物を除去できる。
【0053】
前述のごとく、銅電解液は、ビスマス吸着カラム10内の空間10hに対し下端連通口10bから上端連通口10aに向かって流れる上昇流となるように供給される場合もある。このような場合でも、ビスマス吸着樹脂層Mと下部粒子保持部材12との間に第3濾過層13cが設けられているので、この第3濾過層13cにより、ビスマス吸着カラム10の下端連通口10bから通液される銅電解液に含まれる浮遊固形物を除去できる。そのため、銅電解液がプレフィルタ31、32を通過した後、ビスマス吸着カラム10に達するまでに発生する浮遊固形物を除去できる。
【0054】
以上のように、銅電解液をビスマス吸着樹脂層Mに通液する直前で浮遊固形物を除去するので、浮遊固形物がビスマス吸着樹脂層Mに混入することを確実に防止できる。そのため、MRT樹脂粒子が浮遊固形物にコートされて吸着能力が低下することを防止でき、ビスマスの回収効率の低下を防止できる。
【0055】
なお、第2濾過層13bおよび第3濾過層13cとして挿入されるグラスウールは、不活性樹脂粒子とMRT樹脂粒子との仕切り、またはガラスビーズ層12aを構成するガラスビーズとMRT樹脂粒子との仕切りとしての役割も担う。
不活性樹脂粒子、MRT樹脂粒子およびガラスビーズはいずれも粒子状であるから、ビスマス吸着カラム10内に密に充填されていても、ある程度移動することができる。そのため、仕切りがない場合、ビスマス吸着カラム10内にプロセス液を通液すると、不活性樹脂粒子とMRT樹脂粒子とがある程度混ざり合い、MRT樹脂粒子とガラスビーズとがある程度混ざり合った状態となる。そうすると、MRT樹脂層M内に不活性樹脂粒子およびガラスビーズが存在することに起因してプロセス液とMRT樹脂層粒子との接触性が低下し、MRT樹脂粒子の吸着能力が低下する恐れがある。この点、第2濾過層13bおよび第3濾過層13cにより、不活性樹脂粒子、MRT樹脂粒子およびガラスビーズがそれぞれ仕切られているので、互いに混ざり合うことがなく、MRT樹脂粒子の吸着能力が低下することを防止できる。
【実施例】
【0056】
つぎに、実施例について説明する。
(実施例)
上記実施形態に係るビスマス回収設備1において、第1プレフィルタ31として公称濾過精度0.5μmのカートリッジフィルタ(JNCフィルター株式会社製 商品名CSW-A5)を用い、第2プレフィルタ32として絶対濾過制度1.0μmのカートリッジフィルタ(JNCフィルター株式会社製 商品名BM-01、絶対精度ノンオイル型)を用いた。
【0057】
ビスマス吸着カラム10は、ビスマス吸着樹脂粒子としてMRT樹脂粒子(商品名:SuperLig、米国IBC社製)、不活性樹脂粒子としてポリプロピレン製のビーズを用いた。そして、第1濾過層13aとして2枚のグラスウールシート、第2濾過層13bとして2枚のグラスウールシート、第3濾過層13cとして1枚のグラスウールシートを用いた。
【0058】
ビスマスの回収サイクルは、以下のとおりである。
銅電解液を第1プレフィルタ31および第2プレフィルタ32で濾過して浮遊固形物を除去した。浮遊固形物を除去した後の銅電解液は、ビスマス濃度が0.5〜0.6g/Lであった。この銅電解液を30〜40BVの流量でビスマス吸着カラム10に通液し、MRT樹脂粒子にビスマスを吸着させた。つぎに、洗浄液として濃度2mol/Lの硫酸溶液を1.5〜2.0BVの流量でビスマス吸着カラム10に通液し、ビスマス吸着カラム10内に残存する銅電解液を洗浄した。つぎに、溶離液として濃度9mol/Lの硫酸溶液を4BVの流量でビスマス吸着カラム10に通液し、MRT樹脂粒子からビスマスを溶離させた。ビスマス吸着カラム10から排出された溶離液を回収手段40に供給し、回収手段40で溶離液からビスマスを回収した。
なお、BV(Bed Volume)は、MRT樹脂量に対して供給する液体の流量の倍数である。つまり、MRT樹脂量をAとし供給する液体の流量をBとすると、B/AがBVである。
【0059】
以上のビスマス回収サイクルを繰り返した結果、不活性樹脂粒子中に浮遊固形物が混入していることは確認されず、MRT樹脂粒子の吸着能力は経時変化しなかった。
また、第1濾過層13aとして用いたグラスウールは膠の分離物と思われる付着が生じ、茶色く変色していた。なお、この変色したグラスウールを炉に入れ500℃に加熱すると、元の無色に戻り、再利用可能であることが確認された。
【0060】
(比較例)
第1濾過層13a、第2濾過層13b、第3濾過層13cを設けなかったこと以外は実施例と同条件として、ビスマス回収サイクルを繰り返した。
その結果、不活性樹脂粒子中に浮遊固形物が混入していることは確認され、MRT樹脂粒子の吸着能力が次第に低下することが確認された。
【符号の説明】
【0061】
1 ビスマス回収設備
10 ビスマス吸着カラム
10a 上端連通口
10b 下端連通口
10h 空間
11 上部粒子保持部材
12 下部粒子保持部材
13a、13b、13c 濾過層
M ビスマス吸着樹脂層
B 不活性樹脂層
20 ヒータ
31 第1プレフィルタ
32 第2プレフィルタ
40 回収手段
図1
図2