(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5799903
(24)【登録日】2015年9月4日
(45)【発行日】2015年10月28日
(54)【発明の名称】シングルモード光ファイバ
(51)【国際特許分類】
G02B 6/036 20060101AFI20151008BHJP
【FI】
G02B6/036
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-149030(P2012-149030)
(22)【出願日】2012年7月3日
(65)【公開番号】特開2014-10412(P2014-10412A)
(43)【公開日】2014年1月20日
【審査請求日】2014年7月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137855
【弁理士】
【氏名又は名称】沖川 寛
(72)【発明者】
【氏名】大薗 和正
(72)【発明者】
【氏名】姚 兵
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 智紀
【審査官】
吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2010/0158460(US,A1)
【文献】
特表2005−521093(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/036
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア層と、
前記コア層の外周に隣接した第1クラッド層と、
前記第1クラッド層の外周に隣接した第2クラッド層と、
前記第2クラッド層の外周に隣接した第3クラッド層を備えたシングルモード光ファイバであって、
前記コア層の中心における屈折率n0、前記第1クラッド層の平均屈折率n1、第2クラッド層の最小屈折率n2、および第3クラッド層の平均屈折率n3は、n0>n3>n1>n2の関係であり、
前記第3クラッド層の平均屈折率n3と前記コア層の中心屈折率n0とから算出される前記コア層の比屈折率差は0.3%以上、0.45%以下であり、
前記第3クラッド層の平均屈折率n3と前記第2クラッド層の最小屈折率n2とから算出される前記第2クラッド層の比屈折率差は、−0.1%以下、−0.45%以上で、
前記第1クラッド層の外径をr1、前記第2クラッド層の外径をr2としたときに、前記コア層の中心からの距離r(μm)に対する比屈折率差Δ(r)(%)の径方向に対する微分値dΔ(r)/drが、−0.10≦dΔ(r)/dr<0(r1≦r≦r2)、dΔ(r1)/dr>dΔ(r)/dr(r1<r<r2)、及び、dΔ(r2)/dr>dΔ(r)/dr(r1<r<r2)となることを特徴とするシングルモード光ファイバ。
【請求項2】
請求項1記載のシングルモード光ファイバであって、
前記コア層はゲルマニウムとフッ素および塩素が添加された石英ガラスからなり、
前記第1クラッド層及び前記第2クラッド層はフッ素と塩素が添加された石英ガラスからなり、
前記第3クラッド層は塩素が添加された石英ガラスからなることを特徴とするシングルモード光ファイバ。
【請求項3】
請求項1記載のシングルモード光ファイバであって、波長1310nmのモードフィールド径が8.2〜9.4μmであることを特徴とするシングルモード光ファイバ。
【請求項4】
請求項1記載のシングルモード光ファイバであって、曲げ直径15mmで曲げた時の波長1550nmにおける曲げ損失が0.5dB/ターン以下であることを特徴とするシングルモード光ファイバ。
【請求項5】
請求項1記載のシングルモード光ファイバであって、曲げ直径15mmで曲げた時の波長1625nmにおける曲げ損失が1.0dB/ターン以下であることを特徴とするシングルモード光ファイバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、曲げ損失特性に優れ、かつ低伝送損失な特性を備えたシングルモード光ファイバに関するものである。
【背景技術】
【0002】
通信用光ファイバの中でもシングルモード光ファイバ(SMF:Single−Mode optical Fiber)は、低損失・広帯域な伝送路として広く実用化されている。近年、FTTH(Fiber To The Home)システムの普及により光ファイバが室内まで配線されるケースが増えている。そのようなシステムにおいては、光ファイバは屋外のアクセス点よりドロップケーブルを介して、室内まで導かれるが、その際、建物の構造や室内の状況により、光ファイバは小さな曲げを伴った配線形態になるのが普通である。しかしながら、光ファイバを小さく曲げると、光ファイバの信号光を閉じ込める力が劣化し、大きな伝送損失が発生する。その対策として、クラッド層の屈折率分布を、
図7に示すような3層構造にしたトレンチ型屈折率分布シングルモード光ファイバが用いられている。本ファイバはトレンチ構造を有しているため、通常のシングルモード光ファイバに比べ、優れた曲げ損失特性を有している。このトレンチ型屈折率分布を形成するためには、光ファイバのクラッド層を屈折率の異なる3層構造で構成する必要がある。
【0003】
光ファイバは、光ファイバ母材を線引きして製造されるので、光ファイバのクラッド層を3層構造とするためには、クラッド層となる部分を屈折率の異なる3層構造とした光ファイバ母材を製造する必要がある。
【0004】
このような光ファイバ母材を製造するためには、
図8に示すように、気相軸付法(VAD法:Vapor phase Axial Deposition method)によってシリカガラス微粒子(スート)を堆積させ、次にHeとCl
2ガスの混合ガス雰囲気中で脱水焼結処理し、さらに、延伸してコアおよび第1クラッド同時合成母材を製造する((a)コア母材製造工程)。
【0005】
また、別工程にて、VAD法によってスートを堆積させ、次にHeとSiF
4ガスの混合ガス雰囲気中で焼結時にフッ素ドープし、得られたガラス母材に対してコア母材を挿入するための中空部をチュービング加工して、第2クラッド層となるフッ素ドープ第2クラッド層(フッ素ドープ管)を製造する((b)トレンチ部フッ素管製造工程)。
【0006】
以上のようにして製造したコア第1クラッド同時合成母材とフッ素ドープ第2クラッド層とをロッドインチューブ法により一体化する((c)ロッドイン加工工程)。さらに、外付けVAD法により第2クラッド層の外周にスートを堆積させた後、HeとCl
2ガスの混合ガス雰囲気中で焼結し、第3クラッド層となる塩素ドープ石英クラッド層を形成すると、クラッド層が3層構造の光ファイバ母材が得られ((d)外側クラッド製造工程)、その後、本母材を線引きしてクラッド層が3層構造のトレンチ型シングルモード光ファイバが得られる。
【0007】
このように、従来はトレンチ型シングルモード光ファイバの製造に際しては、第2クラッド層となるフッ素ドープ管をロッドインチューブ法により一体化して作製していたので、第1クラッド層と第2クラッド層の境界部は、
図9に示すようなファイバ組成の不連続点を伴った急激な屈折率分布変化部(点線で囲った部分)となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−64915号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、トレンチ型シングルモード光ファイバの第1クラッド層となる部分と第2クラッド層となる部分の組成が大きく異なると、光ファイバ母材を線引して形成された光ファイバにおいて、第1クラッド層と第2クラッド層との境界部に残留応力が発生し、
図10に示すような伝送損失増加の要因となる。本伝送損失は波長依存性が小さいことから特定の不純物に起因する吸収損失ではなく、一般に構造不整損失と呼ばれる損失で、コア/クラッド界面の揺らぎが原因と考えられる。当該ファイバの場合、コアと第1クラッドまでは、
図10に比較のために示した通常シングルモード光ファイバ(SMF)と同じなので、伝送損失増加の要因としては考えにくい。そのため、次に伝送損失増加を引き起こす可能性が高い要因は、第1クラッドと第2クラッド界面の組成差(揺らぎ)である。
【0010】
当該ファイバにおいては、第1クラッドと第2クラッドの境界部に、急峻な屈折率変化(比屈折率差Δ(r)をr(半径を表す。)で微分することにより算出される、dΔ(r)/drが−0.15となる箇所)が存在する。これは、前述した当該ファイバ母材の製造法に大きな原因がある。つまり、
図8で示した工程(c)において、コア/第1クラッド同時合成母材の第1クラッド部と屈折率が異なった第2クラッドとなるフッ素ドープ石英管を直接一体化しているため、その境界部には屈折率の不連続点が生じる。石英における屈折率は、石英を構成する組成によって決まり、組成が異なれば熱に対する膨張係数が異なるため、光ファイバの線引き工程のような加熱工程後に、残留応力が発生することになる。また、この残留応力は光ファイバ線引き時の張力にも依存し、張力が小さいと残留応力は小さくなる傾向を持つため、
図10に示すようにそれに伴って構造不整損失も小さくなるが、張力を実用的な作業条件の範囲内で最小(張力=0.1N)としても、十分に構造不整損失を低減することができない。
【0011】
本残留応力を緩和するためには、前記第1クラッド層となる部分と第2クラッド層となる部分の組成の性質の差(膨張係数の差)を小さくすること、つまり、第2クラッド層の屈折率を、第1クラッド層のそれに近づければよいが、その差が比屈折率差で−0.1%より大きくなると、今度は、トレンチ型光ファイバの特徴が緩和され、所望の曲げ損失特性(たとえばITU−TG657A2)が得られなくなり、FTTHシステムへの本ファイバの適用が困難になる。また、逆に−0.45%より小さくなると、ITU−TG657−A2規格におけるケーブルカットオフ波長とモードフィールド径の両方の特性を同時に満足させることが困難になるので、望ましくは、−0.45%以上とするのがよい。
【0012】
そこで本発明の目的は、上記課題を解決し、曲げ損失特性に優れ、かつ低伝送損失な特性を備えたシングルモード光ファイバを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために創案された本発明は、コア層と、前記コア層の外周に隣接した第1クラッド層と、前記第1クラッド層の外周に隣接した第2クラッド層と、前記第2クラッド層の外周に隣接した第3クラッド層を備えたシングルモード光ファイバであって、前記コア層の中心における屈折率n0、前記第1クラッド層の平均屈折率n1、第2クラッド層の最小屈折率n2、および第3クラッド層の平均屈折率n3は、n0>n3>n1>n2の関係であり、前記第3クラッド層の平均屈折率n3と前記コア層の中心屈折率n0とから算出される前記コア層の比屈折率差は0.3%以上、0.45%以下であり、前記第3クラッド層の平均屈折率n3と前記第2クラッド層の最小屈折率n2とから算出される前記第2クラッド層の比屈折率差は、−0.1%以下、−0.45%以上で、前記第1クラッド層の外径をr1、前記第2クラッド層の外径をr2としたときに、前記コア層の中心からの距離rに対する比屈折率差Δ(r)の径方向に対する微分値dΔ(r)/drが、−0.10≦dΔ(r)/dr<0(r1≦r≦r2)、dΔ(r1)/dr>dΔ(r)/dr(r1<r<r2)、及び、dΔ(r2)/dr>dΔ(r)/dr(r1<r<r2)となることを特徴とするシングルモード光ファイバである。
【0014】
前記シングルモード光ファイバのコア層はゲルマニウムとフッ素および塩素が添加された石英ガラスからなり、前記第1クラッド層及び前記第2クラッド層はフッ素と塩素が添加された石英ガラスからなり、前記第3クラッド層は塩素が添加された石英ガラスからなる。
【0015】
前記シングルモード光ファイバは、波長1310nmのモードフィールド径が8.2〜9.4μmである。
【0016】
前記シングルモード光ファイバは、曲げ直径15mmで曲げた時の波長1550nmにおける曲げ損失が0.5dB/ターン以下である。
【0017】
前記シングルモード光ファイバは、曲げ直径15mmで曲げた時の波長1625nmにおける曲げ損失が1.0dB/ターン以下である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、曲げ損失特性に優れ、かつ、低伝送損失の特性を備えたシングルモード光ファイバを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本実施の形態に係るシングルモード光ファイバの屈折率分布構造を説明する図である。
【
図2】本発明の光ファイバにおける比屈折率差のファイバ径方向の変化率の様子を示したものである。
【
図3】第1クラッド層と第2クラッド層の界面の屈折率の変化率を変えた場合に伝送損失がどのように変化するかを示した図である。
【
図4】コアスート母材製造の様子を示したものである。
【
図5】コア母材焼結工程の様子を示したものである。
【
図6】コア母材透明ガラス化後の屈折率分布を示したものである。
【
図7】従来のトレンチ型光ファイバの屈折率分布の一例を示す図である。
【
図8】従来のトレンチ型シングルモード光ファイバの製造に用いる光ファイバ母材の製造方法を説明する図である。
【
図9】従来のトレンチ型光ファイバの屈折率分布を示したものである。
【
図10】従来のトレンチ型光ファイバの伝送損失とSMFの伝送損失との比較結果を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好適な一実施の形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0021】
本実施の形態に係るシングルモード光ファイバは、従来のシングルモード光ファイバと同等の低損失な伝送特性を備えつつ、曲げ損失特性については、従来型のシングルモード光ファイバに比べ、優れた特性を備えたもので、その屈折率分布構造の実施例を
図1により説明する。
【0022】
まず、
図1に示すように、本発明のシングルモード光ファイバは、3層クラッド構造を有するトレンチ型の屈折率分布構造を有している。その特徴は、第1クラッド層と第2クラッド層の境界部に急激な組成変化領域がなく、その結果、その屈折率分布構造が第2クラッド層内で外径方向に対して、負の傾斜を持った構造になっている。
【0023】
本明細書における各層の半径の算出方法について下記する。まず、第3クラッド層の目標屈折率値(設計値)を用いて比屈折率差の径分布Δ(r)を求め、次に、
図2に示すように、比屈折率差の径分布Δ(r)の微分値であるdΔ(r)/dr(rは半径を表す。)を求める。なお、
図2においては、直径125μmの光ファイバを用意し、1.0μmピッチで比屈折率差Δ(r)を求めている。
【0024】
コア層の半径r0は、コア層の中心から外径方向に向かってdΔ(r)/drが最初に負の極値となる位置までの距離とする。第1クラッド層の外縁の半径r1は、コア層の外縁よりも外側で、かつ、dΔ(r)/drが最初に正から負へ変わる位置またはdΔ(r)/drが負の領域において極値となる最初の位置までの距離とする(dΔ(r)/drの値が、増加(または横ばい)から減少に転じる位置までの距離である)。第2クラッド層の外縁の半径r2は、第1クラッド層の外側で、かつ、dΔ(r)/drが正の値となる位置までの距離とする。第3クラッド層の外縁の半径r3は、光ファイバの外径に等しい。
【0025】
また、各層の比屈折率差は、以下のようにして算出される。コア層の比屈折率差Δn0は、第3クラッド層の平均屈折率n3とコア層の中心屈折率n0とから算出(Δn0=100×(n0−n3)/n0。以下同様である。)され、第1クラッド層の比屈折率差Δn1は、第3クラッド層の平均屈折率n3と第1クラッド層の平均屈折率n1とから算出され、第2クラッド層の比屈折率差Δn2は、第3クラッド層の平均屈折率n3と第2クラッド層の最小屈折率n2とから算出される。
【0026】
第1クラッド層の外縁部から第2クラッド層の外縁部に向かって、ファイバ径(r)方向に対する比屈折率差Δ(r)の分布の微分値dΔ(r)/drは、r1≦r≦r2を満たす領域で負(dΔ(r)/dr<0)となり、つまり、外径方向に対して比屈折率Δ(r)は常に減少している。また、r1<r<r2を満たす領域において、dΔ(r1)/dr及びdΔ(r2)/drよりも小さくなるdΔ(r)/drが存在する。
【0027】
本実施例に先立ち、コア層の半径r0を7.0μm、第1クラッド層の半径r1を20μm、第2クラッド層の半径r2を38μm、第3クラッド層の半径r3を125μm、コア層の比屈折率差Δn0を0.35%、第1クラッド層の比屈折率差Δn1を−0.04%、第2クラッド層の比屈折率差Δn3を−0.12%の条件で固定し、第1クラッドの外縁部から第2クラッドの外縁部に向かってのdΔ(r)/dr(r1<r<r2)の最小値が、−0.025、−0.10、−0.11、−0.12、−0.15の光ファイバ(光ファイバ線引時の張力は1.5N)を試作し、それぞれの伝送損失を調べた。その結果を
図3に示す。dΔ(r)/drの値が大きくなるにつれ構造不整損失の発生は抑制され、−0.10及び−0.025で通常のSMFと同等の伝送損失となることを見出した。そのため、本発明においては、−0.10≦dΔ(r)/dr<0となることを必要条件と定めた。
【0028】
次に、本発明のシングルモード光ファイバの製造方法について以下、詳細を述べる。
図4にコアスート母材製造の様子を示す。スート母材中心部(コア層)2形成用のバーナー3とスート母材第1クラッド部4形成用のバーナー5及びスート母材第2クラッド部6形成用のバーナー7に、酸素、水素、原料ガス(例えばSiCl
4、GeCl
4、SiF
4)を供給し、酸素と水素の混合気体の火炎中で、原料ガスを燃焼(加水分解)させて不純物の少ないシリカガラス微粒子(スート)を生成し、それを回転するロッド(種棒)1の下端に堆積させながらロッド1を引き上げていき、多孔質体のスート母材10を形成する。
【0029】
なお、この時スート堆積温度を制御することにより、ガラス微粒子(スート)の嵩密度を調節可能であり、嵩密度が高くなるほど後工程であるフッ素雰囲気中での焼結工程においてフッ素ドープ量を抑制することができる。この方法を用いて第1クラッドの外縁部から第2クラッドの外縁部に向かってのdΔ(r)/dr(r1<r<r2)の最小値の制御を行うことができる。
【0030】
このとき、バーナー3には原料ガスとしてSiCl
4=3g/min、GeCl
4=0.2g/minを可燃ガスとしてH
2=6.5L/min、助燃ガスとしてO
2=16L/minを供給した。また、バーナー5には原料ガスとしてSiCl
4=20g/min、可燃ガスとしてH
2=55L/min、助燃ガスとしてO
2=50L/minを、さらに、バーナー7には原料ガスとしてSiCl
4=18g/min、可燃ガスとしてH
2=60L/min、助燃ガスとしてO
2=50L/minを供給し、φ50mmのスート母材中心部2を、φ120のスート母材第1クラッド部を、φ220mmのスート母材第2クラッド部を持った全長1500mmの多孔質体のスート母材10を形成した。
【0031】
次に、当該スート母材10の焼結を行った。焼結には
図5に示す電気焼結炉20を使用した。焼結方法は、まず、スート母材10の脱OH処理として、炉内ガスHe=20L/min、Cl
2=300cc/minの混合ガス雰囲気で、焼結温度1200℃、送り速度5mm/minで、スート母材全長の加熱処理を行った。次に、母材へのフッ素ドープ及び透明ガラス化処理として、炉内ガスHe=20L/min、SiF
4=150cc/minの混合ガス雰囲気で、焼結温度1500℃、送り速度5mm/minで、スート母材全長の加熱処理を行った。その結果、直径φ100mm、全長850mmの透明ガラス化母材(図示無し)を得た。
【0032】
以上の方法で得られた透明ガラス化母材の屈折率分布測定結果の一例を
図6に示す。本実施例では、石英基準の比屈折率差が、センターコアΔn11は0.38%、第1クラッドΔn21は−0.05%、第2クラッド最小値Δn31は−0.16%であった。本屈折率分布結果を基にファイバ化後のケーブルカットオフ波長=1240nmとなるような設計を行ったところ、第2クラッド層の半径r2を38μmとすればよいことが分かった。
【0033】
そこで、本透明ガラス化母材30を所定の径に延伸し、その外周部に外付け法により第3クラッド層となるスート母材を堆積させ、外径φ250mm、長さ1600mmの母材40(図示無し)とした。本外付けスート母材を温度1500℃の電気焼結炉にて透明ガラス化を行い、φ110mm、長さ1500mmの透明ガラス化全合成母材(図示無し)を得た。
【0034】
次に得られた透明ガラス化母材を、線引き工程にてφ125μmの光ファイバ(
図1)とした。光ファイバの構造を表1に、光学的諸特性を表2に示す。
【0037】
通常のシングルモード光ファイバと同等の諸特性を備えつつ、特に、曲げ損失特性については、優れた特性を有しており、ITU−T G.657A2で規定されている特性を満足する特性となっている。なお、第2クラッド層におけるdΔ(r)/dr(r1≦r≦r2)が、表1に示した−0.019よりも大きくなっても、−0.010以下であれば、構造不正損失の発生を抑制したまま耐曲げ性が良くなり、本発明の目的である曲げ損失特性に優れ、かつ低伝送損失な特性を備えたシングルモード光ファイバを提供することができることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0038】
1 ロッド
2 スート母材中心部
3 スート母材中心部形成用バーナー
4 母材第1クラッド部
5 第1クラッド部形成バーナー
6 母材第2クラッド部
7 第2クラッド部形成バーナー
10 スート母材
20 電気焼結炉