(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5799961
(24)【登録日】2015年9月4日
(45)【発行日】2015年10月28日
(54)【発明の名称】一貫した応答を実現する、オンツールおよびオンサイトMFC最適化方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
G05D 7/06 20060101AFI20151008BHJP
【FI】
G05D7/06 Z
【請求項の数】21
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-549037(P2012-549037)
(86)(22)【出願日】2011年4月25日
(65)【公表番号】特表2013-525870(P2013-525870A)
(43)【公表日】2013年6月20日
(86)【国際出願番号】JP2011002408
(87)【国際公開番号】WO2011135826
(87)【国際公開日】20111103
【審査請求日】2014年4月2日
(31)【優先権主張番号】12/768,583
(32)【優先日】2010年4月27日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100106840
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100117444
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 健一
(72)【発明者】
【氏名】スミルノフ,ヴィー.アレクセイ
(72)【発明者】
【氏名】ナガラジャン,アルン
【審査官】
川東 孝至
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭63−104113(JP,A)
【文献】
特開平09−171412(JP,A)
【文献】
特開2001−236125(JP,A)
【文献】
特開平09−217898(JP,A)
【文献】
特開昭62−014201(JP,A)
【文献】
特開2002−041149(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 7/06
G05B 11/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
初期調節済質量流量制御器弁開始位置を得る方法であって、
質量流量制御器アプリケーション開始から、前記質量流量制御器を通る流れの開始までの間の期間を含む質量流量制御器遅延期間を得るステップと、
弁を初期弁開口位置に設定するステップと、
初期所望流量および初期動作条件を、前記弁と通信している制御システムに入力するステップと、
前記初期弁開口位置および前記初期動作条件について制御システムの実行を開始し、前記制御システムが、前記初期所望流量および制御システムフィードバックに従って、弁開口位置を調節するように適合された、ステップと、
前記制御システムの実行の少なくとも一部分の間に、前記弁開口位置および流量を記録するステップと、
閾値に達する流量、および前記閾値を超える流量の一方を検出するステップと、
前記制御システム始動実行から、前記閾値に達したこと、および前記閾値を超えたことの一方の検出まで及ぶ初期流量期間を求めるステップと、
前記初期流量期間から前記質量流量制御器遅延期間を減じて、調節済開始時間を得るステップと、
前記調節済開始時間における前記弁開口位置を求めるステップと、
より迅速な流れ、および所望流量のオーバーシュートの低減の少なくとも一方が可能となるように、前記調節済開始時間における前記弁開口位置を、前記初期調節済質量流量制御器弁開始位置として確立するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記初期弁開口位置が、閉じた弁を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記初期弁開口位置が、最大弁開口の10%以下の開口を有する弁を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記初期調節済質量流量制御器弁開始位置が、最大弁開口の10%から50%の間の弁開口を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記初期弁開口位置が、デフォルト弁開始位置よりも少なくとも10%未満の弁開口を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
弁を1つまたは複数の追加の初期弁開口位置に設定し、前記1つまたは複数の追加初期弁開口位置が、1つまたは複数の追加の予想最適弁開口位置未満である、ステップと、
1つまたは複数の追加の所望流量、および1つまたは複数の追加の動作条件を、前記制御システムに入力するステップと、
前記1つまたは複数の追加の弁開口位置、および前記1つまたは複数の追加の動作条件について、1つまたは複数の追加の制御システムの実行を開始し、前記制御システムが、前記1つまたは複数の所望流量および制御システムフィードバックに従って、前記弁開口位置を調節するように適合された、ステップと、
前記1つまたは複数の追加の制御システムの実行の少なくとも一部分の間に、前記弁開口位置および流量を記録するステップと、
前記閾値に達する1つまたは複数の追加の流量、および前記閾値を超える1つまたは複数の追加の流量の一方を検出するステップと、
前記制御システム始動から、前記閾値に達したこと、および前記閾値を超えたことの一方の1つまたは複数の検出まで及ぶ1つまたは複数の追加の初期流量期間を求めるステップと、
前記1つまたは複数の追加の初期流量期間から前記質量流量制御器遅延期間を減じて、1つまたは複数の追加の調節済開始時間を得るステップと、
前記1つまたは複数の追加の調節済開始時間における1つまたは複数の追加の弁開口位置を求めるステップと、
前記1つまたは複数の追加の調節済開始時間における前記1つまたは複数の追加の弁開口位置を、前記1つまたは複数の追加の調節済質量流量制御器弁開始位置として確立するステップと
を含む、追加の調節済質量流量制御器弁開始位置を得るステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記初期調節済質量流量制御器弁開始位置と、前記1つまたは複数の追加の調節済質量流量制御器弁開始位置とを、質量流量制御器メモリに記憶するステップをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記初期調節済質量流量制御器弁開始位置と、前記1つまたは複数の追加の調節済質量流量制御器弁開始位置とを用いて、さらなる追加の初期弁開口位置、流量、および動作条件についてさらなる追加の弁開始位置を求めるステップをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
内挿および外挿の少なくとも一方を用いて、前記さらなる追加の弁開始位置を求める、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記1つまたは複数の追加の所望流量の1つが、前記初期所望流量を含み、前記1つまたは複数の追加の動作条件の1つが、前記初期動作条件を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記初期調節済質量流量制御器弁開始位置を、前記1つまたは複数の追加の調節済質量流量制御器弁開始位置の1つと比較するステップと、
前記初期調節済質量流量制御器弁開始位置と、前記1つまたは複数の追加の調節済質量流量制御器弁開始位置の前記1つとの間に差がある場合、質量流量制御器故障状態を信号発信するステップと
をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
質量流量制御器アプリケーションを開始するステップをさらに含み、前記初期調節済質量流量制御器弁開始位置の1つまたは複数と、前記1つまたは複数の追加の調節済質量流量制御器弁開始位置とが、前記アプリケーションにおいて弁開始位置として使用される、請求項6に記載の方法。
【請求項13】
前記初期調節済質量流量制御器弁開始位置と、前記1つまたは複数の追加の調節済質量流量制御器弁開始位置とが、個々のガス種に適した開始位置を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項14】
前記制御システムフィードバックに基づいて、前記初期調節済質量流量制御器弁開始位置を自動的に調節するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記初期調節済質量流量制御器弁開始位置を自動的に調節する前記ステップが、前記弁開口位置を増大させて、前記調節済開始時間を低減させるステップと、前記弁開口位置を低減させて、前記初期所望流量のオーバーシュートを低減させるステップとの一方を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記初期調節済質量流量制御器弁開始位置を自動的に調節する前記ステップが、
質量流量制御器高速応答モード中に、ゼロ流量からゼロでない設定点に流量移行する間、前記弁開口位置および流量を記録するステップと、
流れが出現し始めた時点を検出するステップと、
前記質量流量制御器遅延期間よりも後に、流れが出現し始めたときに、
前記調節済質量流量制御器弁開始位置を、予め規定された量だけ増大させるステップと、
新たな調節済質量流量制御器弁開始位置を得るステップとの一方と、
前記質量流量制御器遅延期間付近、および前記質量流量制御器遅延期間中の一方で流れが出現し始めたときに、
前記流れが、前記所望流量をオーバーシュートする場合には、前記調節済質量流量制御器弁開始位置を予め規定された量だけ低減させるステップと、
前記流れが、前記所望流量をオーバーシュートしない場合には、既存の前記調節済質量流量制御器弁開始位置を保持するステップとの一方と
を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
質量流量制御器と、
前記質量流量制御器と通信している制御システムであって、
所望流量および制御システムフィードバックに従って、弁開口位置を調節するステップと、
流量閾値に達する流量、および前記流量閾値を超える流量の一方を検出するステップと、
制御システム始動から、前記閾値に達したこと、および前記閾値を超えたことの一方の検出まで及ぶ初期流量期間を求めるステップと、
前記初期流量期間から質量流量制御器遅延期間を減じて、調節済開始時間を得、前記質量流量制御器遅延期間が、質量流量制御器アプリケーション開始から、前記質量流量制御器を通る流れの開始までの間の期間を含む、ステップと、
前記調節済開始時間における前記弁開口位置を求めるステップと、
前記調節済開始時間における前記弁開口位置を、前記初期調節済質量流量制御器弁開始位置として確立するステップ
とによって、前記初期調節済質量流量制御器弁開始位置を得るように適合された、制御システムと
を備える、システム。
【請求項18】
前記質量流量制御器遅延期間が、
ソフトウェア遅延およびファームウェア遅延の少なくとも一方と、
高圧変換器遅延と、
圧電遅延と、
弁応答遅延と
のうちの少なくとも1つを含む、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
1つまたは複数の初期調節済質量流量制御器弁開始位置を得るように適合された、選択可能な最適化モードをさらに備える、請求項17に記載のシステム。
【請求項20】
選択可能な迅速応答モードが、前記初期調節済質量流量制御器弁開始位置を使用するように適合される、請求項17に記載のシステム。
【請求項21】
前記質量流量制御器遅延期間が、10msから30msの遅延期間を含む、請求項17に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、質量流量制御器に関する。特に、限定するものではないが、本発明は、ガス種および動作条件にわたって質量流量制御器を最適化する方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、半導体および他の産業では、多くのアプリケーションにおいて、迅速応答(高速応答としても知られる)モードを有する質量流量制御器(MFC)が使用されている。これらの産業におけるアプリケーションでは、迅速に動作するMFCモードが求められるだけでなく、MFCが所望の質量流量のオーバーシュートを制限することも求められる。さらに、MFC迅速応答モードは、MFC工程の様々な段階を通して変動する流れ条件にわたって一貫した応答を実現する必要がある。例えば、あるアプリケーションでは、様々な設定点について変動する圧力にわたって、また、マルチガスアプリケーションでは、複数のガスにわたって、MFCが迅速かつ正確な流量を生成することが有利となる。
【0003】
大部分の質量流量制御器は、現在、N
2ガスを用いて製造業者で較正されている。したがって、MFCの性能は、現在のところN
2についてしか保証されず、他のガスを用いてMFCを使用すると、MFCの性能が大幅に劣化することがある。特定の各動作ガスを用いてMFCを較正することは、コストがかかるため、可能でない。さらに、ガスの多くでは、そのガス特性のため、MFCを較正することが可能でないことがある。例えば、ガスによっては、有毒であり、または可燃性が高いことがある。また、動作ガス
の特性と同様の特性を有するが、
動作ガスが有する望ましくないガス特性
を有さない「代理」ガス(surrogate gas)を用いてMFCを較正することは、多くのガス種について可能ではなく、または有効でない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで提案される本発明のいくつかの実施形態は、複数の動作ガスおよび動作条件、例えばそれだけに限られるものではないが、複数の所望の流量および圧力などにわたって、MFCからの一貫した、より最適な応答を実現する。一実施形態は、より迅速な応答時間を保証するために、MFC上で1つまたは複数の較正ランを実施するステップを含む。1つまたは複数のランの間、MFCは、必要な情報を収集し、工程の各段階について最適な調整パラメータを計算し、最適パラメータをMFCメモリに保存する。その後、動作中、必要に応じて最適な調整パラメータをMFCメモリから検索し、MFC動作に用いて、より一貫した、より正確な応答を実現することができる。一方法が、迅速または高速応答MFCモードとともに使用するために適合される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一方法は、MFC最適化ランを実施して、MFC遅延を低減させ、オーバーシュートを排除または減少させる初期調節済質量流量制御器弁開始位置を得るステップを含む。この初期調節済MFC弁開始位置は、特定のガスおよび動作条件に適した初期弁設定を含むことができる。このアプリケーション工程では、各ガスおよび/または動作条件について、複数の調節済質量流量制御器弁開始位置を得、MFCに保存することができる。
【0006】
一方法は、まず、製造業者から質量流量制御器遅延期間を得るステップを含むことができる。MFC遅延期間は、MFC工程を開始した時点から、MFC内で流体が流れ始める時点まで及ぶ期間を含む。MFC遅延期間は、MFC固有の特性であり、それだけに限られるものではないが、ソフトウェア/ファームウェア、電気的および機械的構成要素の遅延など、MFC自体の一部分に依存する。次いで、MFC弁を、典型的な初期弁開口位置未満の初期弁開口位置に設定することができる。例えば、MFC弁は、閉位置に設定してもよい。次いで、初期所望流量および動作条件を、MFCと通信している制御システムに入力することができる。その後、制御システムを始動し、MFCから受け取った所望流量およびフィードバックに従って、弁を調節することができる。
【0007】
この較正ランの間、弁の位置と、対応するMFCを通る流量とが、MFCメモリに記録される。流量が、閾値に達する、および閾値を超えるうちの一方となると、「初期流量期間(initial−flow time−period)」が計算され、この初期流量期間は、制御システムが始動した時点から、閾値に達したことを制御システムが検出する時点、例えば、MFC内で流れが始まる時点まで及ぶ。次いで、初期流量期間からMFC遅延期間(製造業者から得ることができる)を減じて、調節済開始時間を得る。次いで、調節済開始時間における弁位置を、記録データから求める。その後、この弁位置を、試験したその動作条件およびガスの最適弁開始位置として確立する。単一のアプリケーションにおいて、複数の動作条件および/またはガスを使用し得る場合、各ガス/動作条件について同様の手順を用いて、複数の弁開始位置を求めることができる。
【0008】
本発明の様々な目的および利点、ならびにより完全な理解が、以下の「発明を実施するための形態」、および添付の特許請求の範囲を、添付の図面と併せて参照することによって、明白となり、より容易に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】典型的なMFCの所望流量、予想流量、および実際流量を示すグラフである。
【
図2】典型的なMFCの流量および弁位置を時間の関数として示すグラフである。
【
図3A】デフォルト(製造業者)調整を有するMFCの様々な流量を示すグラフである。
【
図3B】
図3AのMFCの様々な流量であるが、本発明の一実施形態に従って調整が最適化された流量を示すグラフである。
【
図4A】様々な弁開始位置について、MFC弁位置を経時的に示すグラフである。
【
図4B】34%〜46%の弁開始位置について、MFC弁位置を経時的に示すグラフである。
【
図5A】
図4AのMFC弁位置について、MFC流量を時間の関数として示すグラフである。
【
図5B】
図4Bの34%〜46%のMFC弁位置について、MFC流量を時間の関数として示すグラフである。
【
図6】本発明の実施形態による、初期調節済質量流量制御器弁開始位置を得る方法を示す図である。
【
図7】本発明の一実施において記録された流量および弁位置を示すグラフである。
【
図8】本発明の一実施形態による質量流量制御器と制御システムとを備えるシステムを示す図である。
【
図9】本発明の一実施形態による一アプリケーションの弁位置、流量、および圧力を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1に、設定点または所望流量設定点としても知られる所望質量流量10と、予想過渡流量とも呼ばれる予想質量流量20と、実際質量流量30、または実際過渡流量との間の差を示すグラフが示されている。時間T
0で、所望流量設定点値がMFCに与えられる。例えば、設定点をMFC制御システムに入力することができる。それだけに限られるものではないが、迅速応答MFCモードを備える制御システムなどによって、MFCが始動すると、他の動作条件の中でもとりわけ、MFC制御システムに入力された所望流量設定点値に応答して、制御システムは、T
0の元の流量から、所望流量設定点10へと、
図1に示される予想過渡流量20に沿って経時的に流量を変えるように適合される。しかし、MFCを通る実際流量は、予想過渡流量20に等しいものではなく、
図1に示される実際過渡流量30に近い。
【0011】
実際過渡流量30と、予想過渡流量20との差は、少なくとも一部には、MFC遅延期間に起因する。例えば、
図2に示されるように、時間T
0で所望流量設定点を受け取ると、弁は、弁開口グラフ209に示されるように開き始めるが、流量グラフ212に示されるように、弁が特定の開口位置V
0に到達した時点T
1までは、流体がMFCを通って流れることはない。したがって、時間T
1は、弁位置V
0に依存する。すなわち、弁位置V
0に到達すると、その後まもなく、またはそのほぼ直後に時点T
1に到達する。
図1および2に示されるように、設定点10が与えられ、制御システムが始動する時点T
0と、MFC内で流れが始まる時点T
1との間に遅延期間25が存在する。
【0012】
図3Aに、デフォルト(製造時)調整を有し、「高速応答」モードで動作する典型的なMFCの実際流量を時間の関数として示すグラフが示されている。3つのガス(N
2、SF
6、C
4F
8)について、3つの異なる圧力(17psi、32psi、62psi)、および4つの異なる設定点(0〜5%、0〜20%、0〜50%、0〜100%)にわたって流量が示されている。全ての流量が、設定点に拘わらず0〜100%に正規化されている。アプリケーションによっては、流量が設定点をオーバーシュートすることが許容される場合があるが、一貫しない応答遅延は、許容されないことが多い。デフォルト調整は、デフォルトの弁開始位置を含むことができる。一実施形態では、初期弁開口位置は、デフォルトの弁開始位置未満でよく、それだけに限られるものではないが、弁開始位置が10%低減した位置などでよい。他の開始位置も企図される。
【0013】
図3Bは、本明細書に記載の本発明の実施形態を用いて調整を改善した、
図3AのMFCの実際流量を時間の関数として示す。
図3Bに示される応答が得られるように
図3Aの一貫しない応答遅延を低減させるには、
図3Aに示される動作条件およびガスのそれぞれにわたって、最適化工程を実行して、各ガスおよび動作条件について最適弁開始位置を得る必要がある。弁開始位置は、一実施形態では、MFCアプリケーション開始時に弁が設定される最大弁開口位置の百分率として定義される。かかる開始位置によって、遅延期間25を最小限に抑える、またはなくすことができる。例えば、最適弁開始位置を使用することによって、遅延期間25が、圧電動作、ファームウェア/ソフトウェア、および電気的/機械的構成要素によるMFC内で固有の遅延だけを含むように、遅延期間25を低減させることができる。したがって、本発明の一実施形態は、動作条件の中でもとりわけ、ガス種、圧力、および設定点にわたって一貫したMFC応答遅延が得られるように適合された方法を含む。そうするには、各アプリケーションについて、動作条件およびガス種にわたって調節された開始位置を求めなければならない。
【0014】
図4A〜5Bに示されるグラフを得るには、各アプリケーションを実行する前に、弁を指定された開始位置に設定しなければならない。次いで、PIDベースの閉ループアルゴリズムを実行するようにMFCを適合させ、このアルゴリズムは、要求された設定点、開始位置、動作条件、および流量センサフィードバックに従って弁を動かす。
図4A〜5Bは、選択された様々な開始位置について、MFCがどのように動作するかを示す。MFC動作始動時の弁開始位置が小さすぎる、例えばそれだけに限られるものではないが、ゼロまたは閉弁位置などである場合、
図4A〜5Bの設定点SP
0および流量F
0によって示されるように、流量が設定点410に達するのにかかる時間は、ほとんどのアプリケーションで許容可能でなくなる。しかし、開始位置が大きすぎる場合(すなわち、弁開口が大きすぎる場合)、MFCを通る流量が大きく、高速になりすぎることがあり、その結果、設定点SP
4および流量F
4によって示されるように、流量が設定点410をオーバーシュートすることになる。
【0015】
図4Aおよび
図4Bは、単一ガス、および同様の動作条件での、様々な弁開始位置について弁位置を経時的に示す。
図4Aでは、SP
0は、弁開口が小さい、または閉じていることもある弁開始位置であり、SP
1は、弁開口がSP
0の弁開口よりも大きい弁開始位置であり、SP
2は、SP
2の弁開口が、SP
1の弁開口よりも大きい弁開始位置である。同様に、SP
3は、弁開口がSP
2の弁開口よりも大きい弁開始位置であり、SP
4も同様である。
図4Bは、弁開始位置が最大弁開口位置の34%〜46%の範囲にあり、設定点410’が最大流量の50%に等しい弁の位置を、時間の関数として示している。
【0016】
図5Aには、開始位置SP
0〜SP
4にそれぞれ対応した流量F
0〜F
4が示されている。例えば、開始位置SP
0を使用すると、流量F
0が得られる。図示のように、弁開始位置開口がSP
0からSP
2に増大するにつれて、遅延期間
575は低減している。しかし、ある開始位置SP
3以上では、流量F
3以上で、設定点510をオーバーシュート540している。したがって、遅延期間
575を最小限に抑え、かつオーバーシュート540をなくす最適開始位置SP
nが存在する。一最適開始位置SP
nは、
図4Aに示される第2の開始位置SP
2を含むことができる。しかし、最適開始位置SP
2でも、
図5Aに示されるように、流量F
2は、当技術分野で既知のMFCおよび制御システムの機械的および電気的特性によって生じるMFC遅延542を有することがある。同様に、
図5Bは、
図4Bに示される弁開始位置に対応した流量のグラフである。
【0017】
図4A〜5Bに示されるように、
図4Aの弁開始位置SP
0〜SP
2、および
図4Bの34%〜42%の範囲では、流量の軌跡と、弁の軌跡とは、実質的に同様の波形を有し、軌跡間の時間間隔も実質的に同様である。例えば、
図4Bおよび5Bでは、時間間隔は、約10msである。さらに、弁開始位置が42%以上では、MFCの流れは、制御システムが始動した時間から約30msのMFC遅延542’後に出現し始めている。この30msの遅延は、制御システム、電子回路、圧電アクチュエータ、またはMFCの他の電気機械的部分の遅延の結果生じたものである。
【0018】
図4Bおよび5Bに示されるように、開始位置が増大すると、流量スルーレートも増大することになり、約46%の弁開始位置では、設定点510’のオーバーシュートが生じる。したがって、44%の弁開始位置が、約34%〜42%の弁開始位置よりも増大したスルーレートを有し、かつ46%の弁開始位置のようなオーバーシュートは有しないので、弁開始位置として適正な選択であるように見えるが、44%の弁開始位置は、動作条件の変動の影響を非常に受けやすいことがある。したがって、一実施形態では、42%の弁開始位置が、最適弁開始位置を成し得る。ガスおよび動作条件に依存して、他の弁開始位置が企図される。
【0019】
図6に、初期調節済質量流量制御器弁開始位置を得る方法が示されている。この方法は、699で開始し、601で、質量流量制御器遅延期間542’を得るステップを含む。MFC遅延期間542’は、製造業者による調整を有するMFC上で、上記に示し、
図4A〜5Bで概説した試験などの試験を実施することによって、ユーザが得ることができる。または、ユーザは、製造業者からMFC遅延期間542’を得ることができる。MFC遅延期間542’は固定され、装置の特性である。MFC遅延期間542’を得ると、一方法は、611で、MFC弁を初期弁開口位置に設定するステップを含む。MFC初期弁開口位置は、予想最適弁開口位置未満の弁開口位置を含むことができる。例えば、
図4Bおよび5Bのシナリオでは、弁は、最大弁開口位置の34%の初期弁開口位置に設定することができる。最大弁開口位置の0%(すなわち、弁が閉じている)の初期弁開口位置もやはり企図される。弁を初期弁開口位置に設定するステップは、ソフトウェアおよびファームウェアの一方で弁位置を設定するステップを含むことができる。
【0020】
初期弁開口位置を設定した後、631で示されるように、典型的なMFC工程を開始することができる。例えば、初期所望流量、およびそれだけに限られるものではないが、流体種および圧力など、1つまたは複数の初期流量動作条件を、MFCと通信している制御システムに入力することができる。一制御システムは、制御システムフィードバックに基づき、弁開始位置、および所望流量に従って弁開口位置を調節するように適合される。一方法中、641で、弁位置および流量を記録またはその他の形で記憶することができる。他の実施形態では、このステップは、実施しなくてもよい。651で、流量閾値に達する流量、および流量閾値を超える流量の一方が、
図7に示される点T
1で検出される。例えば、MFC内に流れが出現し始め、設定点710の1%を含む流量に達したときに、制御システム内で信号を立ち上げることができる。他の流量に対応する他の閾値、ならびにガスがMFC内で流れ始める正確な時間を得る、当技術分野で既知の他の方法も企図される。661で、初期流量期間を求める。一方法では、初期流量期間は、制御システムが始動した時点から、確立された閾値に達する流量、および確立された閾値を超える流量の一方が検出される時点まで及ぶ。(
図5Aに示される)オーバーシュート540および遅延525のどちらもが低減することになる最適弁開始位置を求めるために、671で、初期流量期間から質量流量制御器遅延期間542’を減じて、
図7に示される調節済開始時間T
2を得る。調節済開始時間T
2が得られると、調節済開始時間T
2に対応する調節済弁開口位置V
1が求められる。例えば、
図7に示されるように、調節済弁開口位置は、最大弁開口の42%の開口を有する弁を備える。この調節済弁開口位置を、そのガスおよび動作条件に適した初期調節済質量流量制御器弁開始位置として確立する。いくつかの実施形態では、初期調節済質量流量制御器弁開始位置は、最大弁開口の25%から50%の間を含むことができ、他の実施形態では、41%から44%の間を含むことができる。
図6の方法は、698で終了する。
【0021】
実施形態はまた、単一のアプリケーション/工程について、追加の調節済質量流量制御器弁開始位置を得るステップを含むことができる。例えば、
図9に、複数の圧力および流量にわたっていくつかの段階を有する典型的なMFC工程が示されている。したがって、ゼロ流量からゼロでない流量への変化を含む各ステップについて、初期調節済質量流量制御器弁開始位置を計算しなければならない。
図9の例は、17psiで5%、52psiで100%、および52psiで20%の、圧力それぞれについての初期調節済質量流量制御器弁開始位置を含む。追加の調節済質量流量制御器弁開始位置を得る方法は、
図7に示される初期調節済質量流量制御器弁開始位置を得るための上述の方法と同じであった。
【0022】
一実施形態では、追加の弁開始位置、ならびに対応する動作条件およびガス種が、
図8に示されるようにメモリ808に記憶される。その後、これらの初期および追加の調節済質量流量制御器弁開始位置、ガス種、ならびに動作条件を類似のアプリケーションに将来使用することができ、あるいは、恐らくは外挿または内挿によって1つまたは複数の追加の調節済質量流量制御器弁開始位置を得るために使用してもよい。
【0023】
本発明の1つまたは複数の実施形態はまた、MFC故障状態を信号発信するステップを含むことができる。例えば、本明細書に記載の最適化工程が、既に実施されたガスおよび動作条件について新たに実施され、そのデータがMFCメモリに記憶される場合、この新たな調節済質量流量制御器弁開始位置を、類似の条件についてMFCメモリ内に記憶されていた調節済質量流量制御器弁開始位置と比較することができる。この新たな調節済質量流量制御器弁開始位置が、古いものとは異なる場合、MFCは、それだけに限られるものではないが、MFCハードウェア問題など、MFCに問題があり得ることを示す信号を供給することができる。
【0024】
さらに、一方法は、調節済質量流量制御器弁開始位置を増大させるステップ、および調節済質量流量制御器弁開始位置を低減させるステップの一方を含み得る自動弁開始位置調節工程を含むことができる。かかる一方法では、制御システムは、
図9と同様のゼロ設定点からゼロでない設定点への各移行について、
図7と同様に弁位置および流量を記録することができる。かかるデータは、
図8に示されるMFCメモリ808に記憶することができる。次いで、MFCは、それだけに限られるものではないが、流量計807を用いて流量を検出するなどして、MFCを通って流れ始める瞬間を検出する。かかる時点で、制御システム806内にある、またはMFC875の他の位置にあるファームウェア、ソフトウェア、もしくはハードウェアが、MFCアプリケーションを開始した時点から、流れが出現した時点までの遅延期間を比較し、その遅延期間を、それだけに限られるものではないが、
図5Aに示される遅延期間542’など、類似の動作条件について既知の遅延期間と比較するように適合される。一遅延期間542’は、10msから30msの遅延期間を含み得る。2つの遅延期間を比較し、制御システム806または他のMFC875構成要素が、新たな遅延期間の方が元の遅延期間542’よりも長いと判定した場合、したがって新たな遅延期間中の方が、元の遅延期間中よりも流れが遅く開始する場合、調節済質量流量制御器弁開始位置を、予め規定された量だけ増大させることができる。例えば、一実施形態では、調節済質量流量制御器弁開始位置を、それだけに限られるものではないが、
図4Bに示される42%の開始位置から43%の開始位置まで増大させるなど、1%だけ増大させることができる。あるいは、新たな調節済質量流量制御器弁開始位置を求めてもよい。例えば、新たに得られた遅延期間から質量流量制御器遅延期間542’を減じることができ、その時点における弁位置が判明し、
図7と同様に、その時点における弁位置を、新たな調節済質量流量制御器弁開始位置に割り当てることができる。
【0025】
既知のMFC遅延期間542’中に、またはその付近で流れが開始し、オーバーシュートが生じることが判明した場合、調節済質量流量制御器弁開始位置を、それだけに限られるものではないが、1%など、指定された量だけ低減させることができる。オーバーシュートが起こらない場合、既存の調節済質量流量制御器弁開始位置を保持することができる。
【0026】
図8に、質量流量制御器875と、質量流量制御器875と通信している制御システム806とを備えるシステム800の一実施形態が示されている。
図8では、圧電アクチュエータ874および制御弁873だけがMFC875内に含まれるとして示されているが、
図8に記載の1つまたは複数の他の物品もやはり、MFC内に含めることができる。例えば、MFCは、制御システム806、メモリ808、および流量計807を含むことができる。
図8に示されるように、それだけに限られるものではないが、ガス種、圧力、および設定点などの入力872をシステム800に入力することができる。デジタルアナログ変換器871によって、入力をアナログ電圧に変換することができ、このアナログ電圧は、圧電アクチュエータ874を動作させるように適合された高電圧回路877に送ることができる。MFC遅延542’は、(i)ソフトウェアおよび/またはファームウェア、(ii)制御システム806、(iii)入力872、(iv)高電圧回路877、(v)圧電アクチュエータ874、および(vi)弁873のうちの1つまたは複数の遅延から構成され得る。
【0027】
さらに、
図8のシステム800の一実施形態では、システム800のユーザは、最適化モードを選択することができる。この最適化モードは、ソフトウェア、ファームウェアおよび/またはハードウェアで構成することができ、制御システム806内に含めることができる。最適化モードを選択すると、MFC875は、システムに入力された特定の動作条件について1つまたは複数の調節済質量流量制御器弁開始位置を得るように適合させることができる。最適化モードは、MFCの迅速応答モードで利用可能となり得る。1つまたは複数の調節済MFC弁開始位置が得られると、最適化モードは、所望のMFCアプリケーションをさらに実行することができる。