(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5799991
(24)【登録日】2015年9月4日
(45)【発行日】2015年10月28日
(54)【発明の名称】液浸リソグラフィにおける光学素子の洗浄方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20151008BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20151008BHJP
【FI】
H01L21/30 515D
G03F7/20 521
【請求項の数】16
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-168656(P2013-168656)
(22)【出願日】2013年8月14日
(62)【分割の表示】特願2012-83162(P2012-83162)の分割
【原出願日】2004年4月2日
(65)【公開番号】特開2013-251573(P2013-251573A)
(43)【公開日】2013年12月12日
【審査請求日】2013年9月10日
(31)【優先権主張番号】60/462,556
(32)【優先日】2003年4月11日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】60/482,913
(32)【優先日】2003年6月27日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100167933
【弁理士】
【氏名又は名称】松野 知紘
(74)【代理人】
【識別番号】230112025
【弁護士】
【氏名又は名称】小林 英了
(74)【代理人】
【識別番号】100115808
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 真司
(74)【代理人】
【識別番号】100113549
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 守
(74)【代理人】
【識別番号】100174078
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 寛
(72)【発明者】
【氏名】ハゼルトン, アンドリュー, ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】川井 秀実
(72)【発明者】
【氏名】ワトソン, ダグラス, シィ.
(72)【発明者】
【氏名】ノヴァック, ダブリュー., トーマス
【審査官】
植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第99/049504(WO,A1)
【文献】
特開平11−162831(JP,A)
【文献】
特開2002−336804(JP,A)
【文献】
特開平11−191525(JP,A)
【文献】
特開平06−168866(JP,A)
【文献】
特開2001−013677(JP,A)
【文献】
国際公開第2002/093232(WO,A2)
【文献】
特開平06−124873(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液浸リソグラフィプロセス中に、投影光学系の光学素子の下に位置付けられた基板上に、前記基板の上方から液体供給口を介して液浸液体が供給され、前記液浸液体を介して前記基板を露光する液浸リソグラフィ装置であって、
液浸リソグラフィプロセス中に露光対象の基板を保持可能なホルダを有するステージを備え、
前記ホルダは、洗浄プロセス中に洗浄デバイスを載置可能であり、洗浄プロセス中に、前記ホルダに載置され、前記液体供給口の下方に配置された洗浄デバイスと前記光学素子との間に、前記液体供給口から液体を供給し、
前記洗浄デバイスの厚みは、露光対象の基板と同じであるか、0.5mm〜1mmである液浸リソグラフィ装置。
【請求項2】
前記ステージは、前記液体供給口の下方で前記液体供給口に対して移動可能である請求項1記載の液浸リソグラフィ装置。
【請求項3】
前記洗浄デバイスは、露光対象の基板のような形状を有している請求項1又は2記載の液浸リソグラフィ装置。
【請求項4】
前記洗浄デバイスは、前記洗浄デバイス上に供給された液体に圧力波を発生させる振動ツールを含む請求項1〜3のいずれか一項に記載の液浸リソグラフィ装置。
【請求項5】
液浸リソグラフィプロセス中に、前記基板の上方から液体回収口を介して液浸液体が回収され、
洗浄プロセス中に、前記液体供給口からの液体供給を行った後、前記液体供給口からの液体供給と前記液体回収口からの液体供給が継続される請求項1〜4のいずれか一項に記載の液浸リソグラフィ装置。
【請求項6】
液浸リソグラフィプロセス中に、前記基板の上方から液体回収口を介して液浸液体が回収され、
洗浄プロセス中に、前記液体供給口からの液体供給を行った後、前記液体供給口からの液体供給と前記液体回収口からの液体供給が停止される請求項1〜4のいずれか一項に記載の液浸リソグラフィ装置。
【請求項7】
洗浄プロセス中に、前記液体供給口から供給される液体は、水である請求項1〜6のいずれか一項に記載の液浸リソグラフィ装置。
【請求項8】
洗浄プロセス中に、前記液体供給口から供給される液体は、液浸液体である請求項7に記載の液浸リソグラフィ装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の液浸リソグラフィ装置を用いて基板を露光することと、
前記露光された基板を現像することと、
を含むデバイス製造方法。
【請求項10】
液浸リソグラフィプロセス中に、ステージのホルダに保持され、投影光学系の光学素子の下に位置付けられた基板上に、前記基板の上方から液体供給口を介して液浸液体が供給され、前記液浸液体を介して前記基板を露光する液浸リソグラフィ装置で行われる洗浄方法であって、
洗浄プロセス中に、ホルダ上に洗浄デバイスを載置することと、
洗浄プロセス中に、前記ホルダに載置され、前記液体供給口の下方に配置された洗浄デバイスと前記光学素子との間に、前記液体供給口から液体を供給することと、
を含み、
前記洗浄デバイスの厚みは、露光対象の基板と同じであるか、0.5mm〜1mmである洗浄方法。
【請求項11】
前記洗浄デバイスは、露光対象の基板のような形状を有している請求項10記載の洗浄方法。
【請求項12】
前記洗浄デバイスは、前記洗浄デバイス上に供給された液体に圧力波を発生させる振動ツールを含む請求項10又は11記載の洗浄方法。
【請求項13】
液浸リソグラフィプロセス中に、前記基板の上方から液体回収口を介して液浸液体が回収され、
洗浄プロセス中に、前記液体供給口からの液体供給を行った後、前記液体供給口からの液体供給と前記液体回収口からの液体供給が継続される請求項10〜12のいずれか一項に記載の洗浄方法。
【請求項14】
液浸リソグラフィプロセス中に、前記基板の上方から液体回収口を介して液浸液体が回収され、
洗浄プロセス中に、前記液体供給口からの液体供給を行った後、前記液体供給口からの液体供給と前記液体回収口からの液体供給が停止される請求項10〜12のいずれか一項に記載の洗浄方法。
【請求項15】
洗浄プロセス中に、前記液体供給口から供給される液体は、水である請求項10〜14のいずれか一項に記載の洗浄方法。
【請求項16】
洗浄プロセス中に、前記液体供給口から供給される液体は、液浸液体である請求項15に記載の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願のデータ:本出願は、2003年4月11日に出願された米国仮特許出願第60/462,556号及び2003年6月27日に出願された米国仮特許出願第60/482,913号の優先権を主張しており、これらの仮出願の開示全てをここに援用して本文の記載の一部とする。
【背景技術】
【0002】
本発明は、液浸リソグラフィシステムに関し、より具体的には、液浸リソグラフィのプロセスにおいて、水と接触し水を吸収する光学素子を洗浄するための方法及びシステムに関する。
【0003】
液浸リソグラフィシステムは、例えば、WO99/49504に開示されており、WO99/49504はこの分野の一般的背景技術及びそれに関連する幾つかの一般的な考慮点を記載するために、その開示をここに援用して本文の記載の一部とする。このような液浸リソグラフィシステムは、ウェハなどのワークピースと、レチクルの像をワークピース上に投影するための光学系(システム)の最終段階(終端)光学素子との間の空間に液体を供給するように適合されている。これによって、供給された液体は、光学システムの性能と露光の質を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第99/49504号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
供給される液体は、波長が193nmの光に対しては水にし得るが、他の波長を有する光に対しては異なる液体が必要とされ得る。光学システムの終端光学素子は液体に曝されるため、液体は幾らかが吸収される可能性がある。この可能性は、光学システムの終端光学素子がレンズである場合に特に高くなる。なぜならば、リソグラフィシステム用の一般的なレンズ材料はフッ化カルシウムであるが、これは吸湿性を有する材料であり周囲の環境から水を吸収し易い。
【0006】
吸収された水は様々な問題を起こし得る。第一に、吸収された水はレンズの屈折性を変えること又はレンズを膨張させそれによってレンズの形状を変えることにより、レンズによって投影された像を劣化し得る。第二に、化学的効果に起因するレンズの長期間にわたる劣化を引き起こし得る。
【0007】
従来の空気浸露光リソグラフィシステムにおいては、光学素子がクリーニング(清掃、洗浄)される時などの保守(メンテナンス)作業のために、光学素子を着脱可能に製造することが要求されていた。しかしながら、光学素子を取り外してクリーニング後に付け直すこと、又は光学素子を新たに交換することは、煩雑で時間のかかる作業である。
【0008】
本発明の目的は、したがって、吸収された水の量が臨界値に達することなく、且つ像の劣化及びレンズの長期間にわたる損傷を防止出来るように、レンズから水を定期的に取り除くためのシステム及び方法を提供することである。
【0009】
本発明の別の目的は、液浸リソグラフィ装置の光学素子の保守をより容易なものとし、それにより光学素子の耐用年限を向上させるためのシステム及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の液浸リソグラフィ装置は、レチクルを保持するために配置されたレチクルステージと、ワークピースを保持するために配置されたワーキングステージと、照明源と、前記ワーキングステージに対向する光学素子とを含み、前記光学素子とワークピースとの間に隙間を画成しながら前記照明源からの照射により前記レチクルのパターン像を前記ワークピース上に投影するための光学システムと、液浸リソグラフィプロセス中に液浸液体を前記光学素子と前記ワークピースとの間に供給し且つ前記光学素子及びワークピースの両方に液浸液体を接触させるための流体供給デバイスとを備える。この装置はまた、前記光学素子を洗浄するための洗浄デバイス(クリーニングデバイス)を備える。本願の全体において、「クリーニング(清掃、洗浄)」という用語は光学素子中に吸収された液浸液体を取り除くことと、汚れ、破片、塩類等を除去することとの両方を意味するために使用される。
【0011】
様々な種類の前述のクリーニングデバイスを、本発明の範囲内で使用し得る。例えば、クリーニングデバイスは光学素子と接触する液浸液体に対して親和性を有する洗浄液体(クリーニング液体)を備え得る。液浸液体が水である場合、エタノールをクリーニング液体にし得る。別の例として、クリーニングデバイスは光学素子を加熱するための熱発生デバイス及び/又は光学素子上に減圧状態を発生させる真空デバイスを含み得る。
【0012】
吸収された液体を取り除くために、超音波バイブレーターを使用し得る。圧電変換器(圧電トランスデューサ)のような超音波バイブレーターを、光学素子のハウジング(筐体)に取り付けるか又は光学素子に対向して設置して、隙間に維持されている液体を介して振動が光学素子に伝達されるようにし得る。
【0013】
又は、キャビテーション気泡を吸収された液体を取り除くために使用し得る。フィン付き当て物(パッド)を使用して、パッドと光学素子との間に維持された液体にキャビテーション気泡を発生させ得る。
【0014】
本発明のさらに別の実施形態によれば、自身を通じて、液浸液体をワークピースと光学素子との間の隙間に供給するノズルは、切り替え弁(スィッチバルブ)などの流路切り替えデバイスを設けることにより、代替的にクリーニング液体を供給するために用いられ得る。
【0015】
本発明のシステム及び方法を用いれば、クリーニングのために光学素子を取り外す必要がないためクリーニングの手順を著しく容易にかつ早く行えるようになり、またクリーニングプロセスによって光学素子の耐用年限が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の方法及びシステムを適用し得る液浸リソグラフィ装置の概略断面図である。
【
図2】
図2は、本発明に従い、
図1に示された装置を用いて半導体デバイスを製造するプロセスの例を示すプロセスのフローチャートである。
【
図3】
図3は、本発明に従って半導体デバイスを製造する場合の、
図2に示されたウェハ処理プロセスのフローチャートである。
【
図4】
図4は、
図1の液浸リソグラフィ装置の一部を示す概略側面図である。
【
図5】
図5は、クリーニングデバイスとして機能するための超音波トランスデューサが装着された、別の液浸リソグラフィ装置の一部の概略側面図である。
【
図6】
図6は、さらに別の液浸リソグラフィ装置であって、その光学システムの下方に圧電クリーニングデバイスを有するさらに別の液浸リソグラフィ装置の一部の概略側面図である。
【
図7】
図7は、圧電デバイスの一例の概略斜視図である。
【
図8】
図8は、二つの互いに付着した面状部材をクリーニングデバイスとして有する、さらに別の液浸リソグラフィ装置の一部の概略側面図である。
【
図9】
図9は、気泡発生パッドをクリーニングデバイスとして有する、さらに別の液浸リソグラフィ装置の一部の概略側面図である。
【
図10】
図10は、流体供給デバイスに組み込まれた切り換えデバイスを有する、さらに別の液浸リソグラフィ装置の一部の概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、そのさらなる目的と利点とともに、以下の記載を添付の図面と併せて参照することによって最も良く理解出来るであろう。
【0018】
本願の全体において、類似又は同等の構成部品は、異なる図面において同じ符号にて示されることがあり、且つ、そのような構成部品は説明の簡略化のために重複して説明されない場合がある。
【0019】
図1は、本発明のクリーニング方法及びシステムを適用し得る液浸リソグラフィ装置100を示す。
【0020】
図1に示すように、液浸リソグラフィ装置100は、照明光学ユニット1であって、エキシマレーザユニットなどの光源と、オプティカルインテグレータ(又はホモジナイザー)と、レンズとを含み、波長が248nmのパルス状紫外光ILを射出してレチクルR上のパターンに入射させる照明光学ユニット1を備えている。レチクルR上のパターンは、フォトレジストが塗布されたウェハWに、テレセントリック光投影ユニットPLを介して特定の倍率(1/4又は1/5等)にて投影される。パルス状の光ILは、あるいは、波長が193nmのArFエキシマレーザ、波長が157nmのF
2レーザ、又は波長が365nmの水銀ランプのi線であってもよい。以下の説明において、
図1に示されたX軸、Y軸及びZ軸の座標系を参照してリソグラフィ装置100の構造及び機能を記述する際の方向を説明する。開示及び説明の便宜上、光投影ユニットPLは、ウェハWに対向して置かれた終端光学素子(レンズなど)と、その他の構成部品を含む円筒状のハウジング3のみが、
図1に示されている。
【0021】
レチクルRは、レチクルRをX方向、Y方向及びZ軸回りの回転方向に移動させるための機構が組み込まれたレチクルステージRST上に支持されている。レチクルステージRST上のレチクルRの二次元的な位置及び向きは、レーザ干渉計(図示せず)によってリアルタイムで検知され、このようになされた検知に基づいてレチクルRの位置決めが主制御ユニット14により行われる。
【0022】
ウェハWは、ウェハWのフォーカス位置(Z軸に沿った)及び傾斜角を制御するためのZステージ9上のウェハホルダ(図示せず)により保持されている。Zステージ9は、XY平面において光投影ユニットPLの結像面と実質的に平行に移動するように適合されたXYステージ10に固定されている。XYステージ10はベース11上に設けられている。このように、Zステージ9は、ウェハWのフォーカス位置(Z軸に沿った)及び傾斜角をオートフォーカス及びオートレベリング法によって調整することにより、ウェハ表面を光投影ユニットPLの像面と合致させるものであり、XYステージ10はウェハWのX方向及びY方向における位置を調整するものである。
【0023】
Zステージ9の二次元的位置及び向き(ゆえに、ウェハWの二次元的位置及び向きも同様に)は、別のレーザ干渉計13がZステージ9に取り付けられた可動鏡12を参照することによりリアルタイムで監視される。この監視の結果に基づく制御データが主制御ユニット14からステージ駆動ユニット15に転送され、ステージ駆動ユニット15はこの受領した制御データに従ってZステージ9とXYステージ10の動きを制御するように適合されている。露光時には、投影光は、ステップ・アンド・リピート手順又はステップ・アンド・スキャン手順にて、レチクルR上のパターンに従ってウェハW上の異なる露光位置から露光位置へと逐次移動される。
【0024】
図1を参照して記載されているリソグラフィ装置100は液浸リソグラフィ装置であり、それゆえに、少なくともレチクルRのパターン像がウェハWに投影されている間は、ウェハWの表面と光投影ユニットPLの終端光学素子4の下面との間の空間(「隙間(ギャップ)」)を水などの特定の種類の液体(又は「液浸流体」)7で満たすように適合されている。
【0025】
光投影ユニットPLの終端光学素子4は、円筒状のハウジング3に着脱可能に取り付けられており、この円筒状のハウジング3は典型的には金属材料を含み腐食し易いために、液体7がハウジング3に接触せず、終端光学素子4のみに接触するように設計されている。
【0026】
液体7は、タンク、加圧ポンプ及び温度調節器(個々には図示されていない)を備え得る液体供給ユニット5から、ウェハW上方の空間に温度が調整された条件下で供給され、液体回収ユニット6によって収集される。液体7の温度は、リソグラフィ装置100自体が置かれている室内とおおよそ同じ温度になるように調節される。符号21は、液体7が供給ユニット5から供給される複数の供給ノズルを示し、符号23は液体7が回収ユニット6へと回収される複数の回収ノズルを示している。しかしながら、
図1を参照して上記に説明したこの構造は、本発明のクリーニング方法及び装置が適用可能な液浸リソグラフィ装置の範囲を限定するように意図されたものではないことをここに記す。換言すれば、本発明のクリーニング方法及び装置は、様々な種類の液浸リソグラフィ装置に適用可能であることは言うまでもない。特に、光投影ユニットPL周りの供給ノズル21及び回収ノズル23の数と配置は、液浸液体7の円滑な流れと速やかな回収を実現するための様々な方法で設計され得ることをここに記す。
【0027】
次に、
図1から4を参照して、本発明を具体化する、吸湿性材料で形成された終端光学素子4によって吸収された水などの液体7の一部を取り除くとともに、汚れや破片等を除去する方法を説明する。
図1に示すように、ウェハWが、照明光学ユニット1から光投影ユニットPLを介した光によって液体7の存在下で露光された後、液体7は光投影ユニットPLの下から取り除かれ、クリーニングデバイス30が
図4に示すように終端光学素子4と接触させられる。クリーニングデバイスが
図4に示すような携帯型である場合、クリーニングデバイス30は、
図4に示すように、ウェハWの代わりにZステージ9上又は前述のZステージ9上のウェハホルダに置かれ得る。
【0028】
本発明の目的のために、異なる型や種類のクリーニングデバイス30を使用し得る。
第一の例として、クリーニングデバイス30は、光学素子4に吸収された液浸液体7に対して強い親和性を有する液体(「クリーニング液体」)を収容する容器(コンテナー)にし得る。液浸液体7が水である場合、エタノールは水に対して強い親和性を有するため、クリーニングデバイス30はエタノールを収容し得る。取り除かれるべき液体に対して強い親和性を有し且つ光学素子4又はその被膜(コーティング)を損なわないのであれば、任意のクリーニング液体を使用し得る。光学素子4の底面は、吸収された液体の度合いを減らすのに十分な期間でクリーニング液体に浸される。クリーニングデバイス30はその後取り外され、再び光学素子4が液体に晒されるべく準備される。
【0029】
別の例として、クリーニングデバイス30は熱発生デバイス及び/又は真空デバイス(個別には図示されず)を含み得る。熱と減圧を光学素子4上で組み合わせることにより、吸収された液体が蒸気へと相変化し、又は光学素子の表面から蒸発する。光学素子4の表面上の液体密度の低下によって、素子4のより深部に吸収された液体7が表面へと引きつけられる。
【0030】
図5は、第三の例であって、光投影ユニットPLのハウジング3に取り付けられた、超音波トランスデューサ(又は超音波バイブレーター)32を使用する例を示す。超音波トランスデューサ32(圧電トランスデューサ等の)が作動すると、圧力波が発生し伝播して、光学素子4の表面をクリーニングする役割を果たす。
【0031】
図5のクリーニングオペレーション(クリーニング動作)の間、光学素子4に隣接する隙間は液浸液体7で満たされている。この場合、供給及び回収ノズルは液浸液体7の供給及び回収を続行してもよく、又は供給及び回収ノズルは液浸液体7の供給及び回収を停止してもよい。また、クリーニングオペレーションの間は、光学素子4はウェハWの表面や、Zステージ9の表面又は他の組立部(アセンブリ)の表面に対向してもよい。
【0032】
図6は、第四の例であって、清掃されるべき光学素子4の下方に置かれたバイブレーションツール(振動ツール)34を使用する例を示す。ツール34はウェハWのような形状で、おおよそウェハWの厚み又は約0.5〜1mmの厚みを有するように形成され得、作動時にはその厚みが変動するように専ら圧電材料で形成され得る。ツール34が光学素子4の下方に
図1のウェハWのように置かれ、光学素子4とツール34の間の隙間に液体7が満たされると、圧力波が液浸液体7において発生して光学素子をクリーニングする。
【0033】
図6のクリーニングオペレーションの間、光学素子4に隣接する隙間は液浸液体7で満たされる。この場合、供給及び回収ノズルは液浸液体7の供給及び回収を続行してもよく、又は供給及び回収ノズルは液浸液体7の供給及び回収を停止してもよい。他の例において、バイブレーションツール34はZステージ9上のウェハホルダ又は他のアセンブリに取り付けられた超音波トランスデューサにし得る。
【0034】
図7に、平面状の支持部材39に支持された複数の圧電トランスデューサ38を備える、代替の構成を有する別のツール36を示す。
【0035】
図8に、2つの平面状部材40を有する、クリーニングデバイスのさらに別の例を示す。2つの平面状部材40は圧電材料で形成され、向かい合った関係で取り付けられており、互いに対して平行に且つ180°位相をずらして振動するように適合されている。その結果、互いに対して取り付けられたこれらの部材40は、
図8に極めて誇張されて示されているように、横方向に振動する。この振動は一定の間隔で節点を有しており、その節点では部材40は変位していない。部材40はこれらの節点で支持部材41上に支持されている。これらの部材40に電圧が印加されて上述されたモードで振動が引き起こされると、それによって超音波の圧力波が発生されて液体7を介して伝播し、所望されたように光学素子4がクリーニングされる。
【0036】
図9に、液体を取り除くためのさらに別のシステムの例を示す。このシステムは、キャビテーション気泡を創出することにより光学素子4をクリーニングすることを特徴とする。超音波によって閉じこめられ且つ活性化されたキャビテーション気泡は、高温、高圧のマイクロリアクターであり、気泡の爆縮によって開放された強力なエネルギーは分子を引き裂くと考えられている。
図9に示された例は、複数のフィンを有するパッド43を備えることを特徴とする。パッド43のフィンは上方に突出しており、パッド43は、気泡発生液17が光学素子4とパッド43との間の隙間に充填された状態で、光学素子4の下方で矢印に示されるように水平に急速に動かされる(パッド43を動かすための手段は図示されていない)。パッド43がこのように動かされると、フィンが液体17を撹拌する働きをしてキャビテーション気泡を発生させ、キャビテーション気泡は光学素子をクリーニングする働きをする。
【0037】
図10に、終端光学素子4をクリーニングするという課題に対する異なった取り組みを示す。この取り組みでは、液浸液体7の供給のために使用されたものと同じ供給ノズル21を用いて、終端光学素子4の底面にクリーニング液体を適用することにより終端光学素子をクリーニングする。この目的のために、液浸液体7とクリーニング液体とを選択的に供給ノズル21を介して供給出来るように、スイッチ弁25が供給ノズル21と液体供給ユニット5の間に挿入されている。
【0038】
なお、本発明に従うクリーニング方法及びシステムは、異なった種類及び型の液浸リソグラフィ装置、例えば、供給ノズルの数が異なる液浸リソグラフィ装置等に適用可能であることをここに再び記す。上述のスィッチ弁は必ずしも各供給ノズルに備えられなくてもよく、スイッチ弁は供給ノズルの群に備えられてもよい。
【0039】
クリーニング液体がこのように供給ノズル21を介して供給される時、ウェハW自体又は好適な種類のパッド18が光学素子4の下方に置かれて光学素子との間に好適な隙間を備え得る。本発明のこの実施形態は、液浸液体を供給するために既に存在している供給ノズルをクリーニングプロセスのために利用出来るという利点を有する。
【0040】
上述のように、様々な方法を別々に説明したが、これらの方法は個別に図示されてはいないが組み合わせて使用し得ることは言うまでもない。例えば、
図9に示されたフィン付きパッド43を
図10のパッド18の代わりに使用してもよい。換言すれば、上述の実施形態は本発明の範囲を限定するように意図されたものではなく、本発明の範囲内で多々の修正や変形が可能である。例えば、化学機械的研磨で使用されるものと類似の研磨パッドをこの目的のために使用し得る。
図4から
図10に示したクリーンアップの手順は、紫外光を用いて実行してもよく、この光を光学素子4に照射し得る。光は、照明光学ユニット1からの通常の露光光、又はクリーンアップの目的に適切な波長を有する他の光にし得る。他の例では、クリーンアップ目的の紫外光は
図4から
図10に示されたクリーンアップ手順なしで使用され得、また、光学素子4に隣接する隙間が液体供給ユニット5からの液浸液体7で満たされるという条件下で使用され得る。当業者にとって明らかでありうるこのような全ての修正や変形は、本発明の範囲内として意図されている。
【0041】
また、終端光学素子によって吸収された液浸液体を取り除くための上述のクリーニング方法はいずれも、蓄積され得る塩類、沈殿物、汚れ及び破片をも除去するためのものであることをここに記す。それゆえに「クリーニング(清掃、洗浄)」という用語はこれらの現象の両方に言及する。
【0042】
次に、
図2を参照して、本発明を具体化した、液体供給回収システムが組み込まれた液浸リソグラフィ装置を使用して、半導体デバイスを製造するためのプロセスを説明する。工程301において、デバイスの機能及び性能特性が設計される。次に、工程302においてパターンを有するマスク(レチクル)が先の設計工程に従って設計され、並行する工程303において、ウェハがシリコン材料で形成される。工程302で設計されたマスクパターンは、工程304において上述のシステムのようなフォトリソグラフィシステムによって工程303で製造されたウェハ上に露光される。工程305において半導体デバイスは組み立てられ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージング工程を含む)、最終的に、デバイスは工程306において検査される。
【0043】
図3に、半導体デバイス製造の場合における、上記工程304の詳細なフローチャートの例を示す。工程311(酸化工程)において、ウェハ表面が酸化される。工程312(CVD工程)において、絶縁膜がウェハ表面に形成される。工程313(電極形成工程)において、蒸着によってウェハ表面上に電極が形成される。工程314(イオン注入工程)において、イオンがウェハ内に注入される。上記の工程311から工程314は、ウェハ加工処理中のウェハに対する前処理工程を形成し、各々の工程において加工処理の要請に従って選択が行われる。
【0044】
ウェハ加工処理の各々の段階において、上述の前処理工程が完了したとき、以下の後処理工程が実行される。後処理工程の間、先ず、工程315(フォトレジスト形成工程)において、フォトレジストがウェハに塗布される。次に、工程316(露光工程)において、上述の露光装置を用いて、マスク(レチクル)の回路パターンをウェハに転写する。
その後、工程317(現像工程)において、露光されたウェハが現像され、工程318(エッチング工程)において、残存したフォトレジスト以外の部分(露光された材料表面)がエッチングによって除去される。工程319(フォトレジスト除去工程)において、エッチング後に残存する不必要なフォトレジストが除去される。多重の回路パターンが、これらの前処理工程及び後処理工程を繰り返すことによって形成される。
【0045】
幾つかの好ましい実施形態の観点から、本発明のリソグラフィシステムを説明したが、本発明の範囲内での変更、置き換え、及び様々な代替同等物が存在する。また、本発明の方法及び装置を実行する多くの代替方法が存在することをここに記す。したがって、以下に添付された請求項は、そのような変更、置き換え、及び様々な代替同等物の全てを、本発明の真の趣旨及び範囲に含まれるものとして包含するものとして解釈されるよう意図されている。
【符号の説明】
【0046】
3…ハウジング、4…終端光学素子、5…液体供給ユニット、6…液体回収ユニット、21…供給ノズル、23…回収ノズル、100…液浸リソグラフィ装置