特許第5800102号(P5800102)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5800102
(24)【登録日】2015年9月4日
(45)【発行日】2015年10月28日
(54)【発明の名称】ライニング構造
(51)【国際特許分類】
   B01J 3/02 20060101AFI20151008BHJP
   B01J 19/02 20060101ALI20151008BHJP
   C22B 3/04 20060101ALI20151008BHJP
   C22B 23/00 20060101ALI20151008BHJP
   F16J 12/00 20060101ALI20151008BHJP
   F16J 15/12 20060101ALI20151008BHJP
   F16L 51/00 20060101ALI20151008BHJP
   F16L 57/00 20060101ALI20151008BHJP
【FI】
   B01J3/02 A
   B01J19/02
   C22B3/04
   C22B23/00 102
   F16J12/00 Z
   F16J15/12 D
   F16L51/00
   F16L57/00 B
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-76425(P2015-76425)
(22)【出願日】2015年4月3日
(62)【分割の表示】特願2013-127541(P2013-127541)の分割
【原出願日】2013年6月18日
(65)【公開番号】特開2015-164723(P2015-164723A)
(43)【公開日】2015年9月17日
【審査請求日】2015年4月3日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067736
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100096677
【弁理士】
【氏名又は名称】伊賀 誠司
(72)【発明者】
【氏名】片坐 誠一郎
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 智孝
【審査官】 増田 健司
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭58−053955(JP,U)
【文献】 特開2010−221216(JP,A)
【文献】 特開2011−174493(JP,A)
【文献】 特開2003−254478(JP,A)
【文献】 特表2008−508100(JP,A)
【文献】 特開2007−224980(JP,A)
【文献】 特開昭62−267405(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 3/02
B01J 19/02
C22B 3/04
C22B 23/00
F16J 12/00
F16J 15/12
F16L 51/00
F16L 57/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラリーから金属を浸出するために高温の反応容器に薬剤を添加するために用いられる挿入管の母材に設けられたライニング部材のライニング構造であって、
前記母材は、管部とフランジ部とを有し、
前記ライニング部材は、前記母材に該母材とは異なる材料で設けられており、前記管部に設けられた管部ライニング部と、前記フランジ部に設けられたフランジライニング部とを有し、
前記フランジ部は、面取部が形成され、
前記管部ライニング部は、前記フランジライニング部の平坦面と同じ高さまで突出され、
前記フランジライニング部は、前記面取部上に前記母材側に向けて凸設され、該面取部の傾斜面から突出した前記管部ライニング部の突出部と溶接される曲面部を有することを特徴とするライニング構造。
【請求項2】
前記母材は、Ti(チタン)で形成されている請求項1に記載のライニング構造。
【請求項3】
前記ライニング部材は、Ta(タンタル)で形成されている請求項1又は請求項2に記載のライニング構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温高圧下にて浸出するための反応容器に薬剤を添加するために用いられる薬剤添加用挿入管の金属母材に設けられたライニング部材の高温高圧下での熱膨張差による破損対策に有効なライニング構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、特許文献1に開示されているように、高圧又は高温の流体の漏出を防止するためや、腐食、摩耗又は汚染等から保護するために、管内にライニング部材を設ける技術がある。
【0003】
このような技術を踏まえて、図3に示すように、例えば、高圧硫酸浸出法を用いたニッケル湿式製錬方法においてオートクレーブ102に酸性の薬剤を添加するために用いられる薬剤添加用挿入管103には、母材部材110にライニング部材120が設けられ、ライニング部材120によって金属ライニングが施されている。
【0004】
図4に示すように、母材部材110は、例えば、筒状の管部111と、管部111の一端部に外側に張り出したフランジ部112とを有し、Ti(チタン)等の金属母材で形成されている。ライニング部材120は、例えば、母材部材110の管部111の内面111aに設けられた筒状の管部ライニング部121と、母材部材110のフランジ部112上に設けられた円板状のフランジライニング部122とを有し、Ta(タンタル)等のライニング材で形成されている。
【0005】
フランジライニング部122は、平板の母材部材110のフランジ部112にライニング材が爆発圧接されると共に、管部ライニング部121に溶接によって接合されている。そして、このような従来の薬剤添加用挿入管103は、管部ライニング部121とフランジライニング部122とがほぼ直交して接合される構造となっているのが一般的である。
【0006】
ところが、オートクレーブ102の稼動時には所定の高温高圧状態であるが、定期点検や補修時等には気温や大気圧まで低下して常温常圧状態となるので、通常熱膨張率の違いを持つ母材部材110とライニング部材120との間には、熱膨張差が発生する。しかも、フランジライニング部122が母材部材110のフランジ部112に爆発圧接されると共に、管部ライニング部121に溶接によって接合され、管部ライニング部121とフランジライニング部122とがほぼ直交して接合される構造となっているので、熱膨張差による応力がフランジライニング部122に集中する構造となっている。
【0007】
なお、金属母材がTi(チタン)であれば、その熱膨張率は、およそ8〜9μm・m−1・K−1であって、ライニング材がTa(タンタル)であれば、その熱膨張率は、およそ6〜7μm・m−1・K−1であり、ライニング部材120の方が母材部材110よりもその熱膨張率が3割程度小さい。
【0008】
従って、薬剤添加用挿入管103が高温高圧下で熱膨張した際には、フランジ部112において、熱膨張係数の小さなライニング部材120が伸びを吸収しきれずに、ライニング部材120に割れが発生することで、薬剤添加用挿入管103の母材部材110及びオートクレーブ102のノズル部が損傷する虞がある。
【0009】
これを放置して、オートクレーブ102の内部と外部とが連通する程に損傷が進行してしまうと、その結果、オートクレーブ102からの高圧蒸気や薬剤が噴出し、重大な危険を有するだけでなく、操業の停止、各種部材の交換及び補修作業が必要となるために、生産効率が大幅に低下してしまうことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−128255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、このような状況を解決するためになされたものであり、熱膨張差による応力集中を緩和して、ライニング部材の破損を防止することが可能なライニング構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るライニング構造は、スラリーから金属を浸出するために高温の反応容器に薬剤を添加するために用いられる挿入管の母材に設けられたライニング部材のライニング構造であって、前記母材は、管部とフランジ部とを有し、前記ライニング部材は、前記母材に該母材とは異なる材料で設けられており、前記管部に設けられた管部ライニング部と、前記フランジ部に設けられたフランジライニング部とを有し、前記フランジ部は、面取部が形成され、前記管部ライニング部は、前記フランジライニング部の平坦面と同じ高さまで突出され、前記フランジライニング部は、前記面取部上に前記母材側に向けて凸設され、該面取部の傾斜面から突出した前記管部ライニング部の突出部と溶接される曲面部を有する。
【0013】
母材は、Ti(チタン)で形成されていることが好ましい。
【0014】
また、ライニング部材は、Ta(タンタル)で形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、母材のフランジ部に面取部を設けてフランジ部の角部の面取り幅を広げ、ライニング部材の管部ライニング部がライニング部材のフランジライニング部の平坦な上面と同じ高さまで突出され、更に、ライニング部材のフランジライニング部に曲げ加工を施したことにより、挿入管が高温高圧下で熱膨張しても、ライニング部材が伸びに追従することが出来、高温高圧下での反応においても熱膨張差を吸収することが出来、ライニング部材の破損を防止することが出来る。従って、本発明によれば、高圧蒸気や薬剤の噴出リスク、ライニング部材の破損に伴う薬剤添加用挿入管の交換作業や補修作業による生産設備停止損失等のリスクを抑制することが出来る。更に、本発明によれば、爆発圧接を必要としないので、製作作業工程の簡素化を図ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】薬剤添加用挿入管を示した断面図である。
図2】本発明を適用したライニング構造を示した断面図である。
図3】従来の薬剤添加用挿入管を示した断面図である。
図4】従来のライニング構造を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るライニング構造について図面を参照して説明する。なお、本発明は以下の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更可能である。更に、以下の順に説明を行う。
【0018】
1.ライニング構造の全体構成の説明
2.ライニング構造の効果の説明
3.ライニング構造の変形例の説明
【0019】
[1.ライニング構造の全体構成の説明]
本発明に係るライニング構造1は、例えば、図1に示すように、高圧硫酸浸出法を用いたニッケル湿式製錬方法等における、高温高圧下にてニッケル酸化鉱スラリーからニッケルやコバルトを浸出するための反応容器2、例えばオートクレーブに、酸性の薬剤を添加するために用いられる薬剤添加用挿入管3の母材部材10に設けられてライニングとなるライニング部材20に割れが発生することを防止するものである。
【0020】
具体的に、図2に示すように、薬剤添加用挿入管3は、母材部材10と、母材部材10に設けられ、ライニングとなるライニング部材20とを有している。
【0021】
母材部材10は、筒状の管部11と、管部11の一端部に外側に張り出したフランジ部12とを有し、例えば、Ti(チタン)等の金属母材で形成されている。フランジ部12は、平面状をなし、内側(管部11側)の角部に内側(管部11側)に向かうに連れて次第に薄肉となるように傾斜状に設けられた面取部13が形成されている。すなわち、フランジ部12は、平坦な平坦部12aと面取部13とを有している。
【0022】
ライニング部材20は、母材部材10の管部11の内面11aに設けられた筒状の管部ライニング部21と、母材部材10のフランジ部12上に設けられた円板状のフランジライニング部22とを有し、例えば、Ta(タンタル)等のライニング材で形成されている。更に、管部ライニング部21とフランジライニング部22とは、ライニング構造1を介して一体化されている。
【0023】
具体的に、管部ライニング部21は、一端部21aがフランジライニング部22の平坦な上面22aと略同じ高さとなるように設けられている。また、フランジライニング部22は、フランジ部12の上面に沿うように設けられている。具体的に、フランジライニング部22は、フランジ部12の平坦部12aに沿うように設けられた平坦部23と、平坦部23の内側(管部ライニング部21側)にフランジ部12側(下側)に向けて湾曲して凸設されたU字状又はV字状の曲面部24とを有している。更に、曲面部24は、面取部13に沿うように設けられた第一曲面部24aと、管部ライニング部21の一端側の面取部13の傾斜面13aから突出した突出部21bと面取部13との間に亘って配置される第二曲面部24bとを有している。第二曲面部24bは、内側(管部ライニング部21側)の端部が管部ライニング部21の一端部21a又は突出部21bに溶接され、管部ライニング部21と一体に設けられている。
【0024】
以上のようなライニング構造1によって、管部ライニング部21とフランジライニング部22とは、一体に設けられている。更に、ライニング構造1によって管部ライニング部21とフランジライニング部22とが一体に設けられると共に曲げ加工が施されたライニング部材20は、従来のように爆発圧接ではなく、溶接等によって母材部材10に設置されている。
【0025】
次に、図1及び図2に示すような、本発明に係るライニング構造1を有する薬剤添加用挿入管3と、図3及び図4に示すような、ライニング部材120のフランジライニング部122が母材部材110のフランジ部112に爆発圧接されると共に管部ライニング部121に溶接によって接合され、管部ライニング部121とフランジライニング部122とがほぼ直交して接合される構造を有する従来のライニング構造を有する薬剤添加用挿入管100とを、それぞれ半年毎にライニング部材の割れの有無を観察した。
【0026】
すると、従来のライニング構造を有する薬剤添加用挿入管100のライニング部材120では、半年毎の定期点検時に、必ず微細な割れが発見され、その度に交換が必要であった。これに対して、本発明に係るライニング構造1を有する薬剤添加用挿入管3のライニング部材20は、採用後3年間割れが発生しなかった。
【0027】
[2.ライニング構造の効果の説明]
以上のように、ライニング構造1は、フランジ部12に面取部13が形成され、管部ライニング部21がフランジライニング部22の平坦な上面22aと同じ高さまで突出され、更に、フランジライニング部22が、面取部13上に母材部材10側に向けて凸設され、管部ライニング部21の突出部21bと溶接される曲面部24を有することにより、薬剤添加用挿入管3が高温高圧下で熱膨張しても、熱膨張係数の小さなライニング部材20が伸びに追従することが出来、高温高圧下での反応においても熱膨張差を吸収することが出来る。更に、ライニング構造1は、母材部材10の金属母材に比べて膨張率の小さいライニング材で形成されたライニング部材20が高温高圧と常温常圧とを繰返す環境で使用されても、ライニング部材20に割れが発生するほどの応力集中が起こることを防止することが出来る。
【0028】
従って、ライニング構造1は、従来よりも、ライニング部材20の割れが発生することを防止することが出来る。よって、ライニング構造1は、高圧蒸気や薬剤の噴出リスク、ライニング部材20の割れ発生に伴う薬剤添加用挿入管の交換作業や補修作業による生産設備停止損失等のリスクを抑制することが出来る。
【0029】
更に、ライニング構造1は、母材部材10のフランジ部12において、従来のように、爆発圧接を必要としないので、従来よりも、製作作業工程の簡素化を図ることが出来る。
【0030】
[3.ライニング構造の変形例の説明]
なお、母材部材10の面取部13は、図2に示すように、広さ範囲wを、フランジ部12の管部11の内面と接する部分から、フランジ部12の幅をWとしたときに、1/4W〜1/2Wの範囲で設けるようにしても良い。広さ範囲が1/2W以下であると、加工時や設置時に母材部材10の強度を充分確保することが出来、広さ範囲が1/4W以上であると、応力の緩和が充分確保出来る程度、曲面部24を大きく設けることが出来る。
【0031】
更に、母材部材10の面取部13は、図2に示すように、深さ範囲dを、フランジ部12の厚みをDとしたときに、1/3D〜1/2Dの範囲で設けるようにしても良い。なお、深さ範囲が1/2D以下であると、加工時や設置時に母材部材10の強度を充分確保することが出来、深さ範囲が1/3D以上であると、応力の緩和が充分確保出来る程度、曲面部24を大きく設けることが出来る。
【0032】
更に、反応容器2は、ニッケル酸化鉱スラリーからニッケルを浸出するものに限定されるものではなく、その他のスラリーからその他の金属を浸出するようなものでも良い。更に、薬剤添加用挿入管3は、酸性の薬剤を反応容器に添加するものに限定されるものではなく、その他の薬剤を反応容器に添加するようなものでも良い。
【符号の説明】
【0033】
1 ライニング構造、2 反応容器、3 薬剤添加用挿入管、10 母材部材、11 管部、11a 内面、12 フランジ部、12a 平坦部、13 面取部、13a 傾斜面、20 ライニング部材、21 管部ライニング部、21a 一端部、21b 突出部、22 フランジライニング部、22a 上面、23 平坦部、24 曲面部、102 オートクレーブ、103 薬剤添加用挿入管、110 母材部材、111 管部、111a 内面、112 フランジ部、120 ライニング部材、121 管部ライニング部、122 フランジライニング部
図1
図2
図3
図4