【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、(メタ)アクリル酸エステル単量体60重量部〜89.9重量部と(メタ)アクリル酸アルキレンオキシド単量体10重量部〜30重量部を重合単位として含むアクリル重合体と、常温において液状で存在するイオン性化合物と、常温で固体状態である金属塩と、を含み、下記一般式1及び一般式2の条件を満足する粘着剤組成物に関する。
【0009】
[一般式1]
B + C ≦ 15
【0010】
[一般式2]
0.05 ≦ B;及び0 < C ≦ 10
【0011】
前記一般式1及び一般式2において、Bは、前記アクリル重合体100重量部に対する前記イオン性化合物の重量割合を示し、Cは、前記アクリル重合体100重量部に対する前記金属塩の重量割合を示す。
【0012】
以下、前記粘着剤組成物について詳細に説明する。
【0013】
一例において、前記粘着剤組成物は、光学フィルムの付着に使われる光学フィルム用粘着剤であり、例えば、偏光板と液晶パネルの付着や、偏光板、位相差板または視野角拡大フィルムなどの光学機能性フィルムの相互間付着などに使用することができる。また、他の例示において、前記粘着剤組成物は、偏光板を液晶パネルに付着するために使用する偏光板用粘着剤組成物である。
【0014】
前記粘着剤組成物は、アクリル重合体を含み、前記アクリル重合体は、(メタ)アクリル酸エステル単量体60重量部〜89.9重量部及び(メタ)アクリル酸アルキレンオキシド単量体10重量部〜30重量部を重合単位として含む。
【0015】
前記(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、例えば、アルキル(メタ)アクリレートを使用することができ、粘着剤の凝集力、ガラス転移温度及びまたは粘着性などを考慮して、炭素数が1〜14であるアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを使用することができる。このような単量体では、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルブチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート及びテトラデシル(メタ)アクリレートなどを挙げることができ、上記のうち1種又は2種以上が重合体に重合単位として含まれる。
【0016】
また、前記(メタ)アクリル酸アルキレンオキシド単量体では、例えば、下記化学式1で表示される単量体を使用することができる。
【0017】
【化1】
【0018】
前記化学式1において、Rは、水素または炭素数1〜4のアルキル基を示し、Aは、アルキレンを示し、R
1はアルキル基またはアリール基を示し、nは、1〜12の数を示す。
【0019】
前記化学式1の置換基の定義において、R
1のアルキル基は、炭素数1〜20、炭素数1〜16、炭素数1〜12、炭素数1〜8または炭素数1〜4の直鎖状、分岐状または環状アルキル基を示し、アルキレンは、炭素数1〜20、炭素数1〜16、炭素数1〜12、炭素数1〜8または炭素数1〜4の直鎖状、分岐状または環状アルキレンを示し、アリール基は、炭素数6〜20または炭素数6〜12のアリール基、例えば、フェニル基を示す。
【0020】
化学式1の単量体としては、アルコキシジアルキレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、アルコキシトリアルキレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、アルコキシテトラアルキレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、アリールオキシジアルキレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、アリールオキシトリアルキレングリコール(メタ)アクリル酸エステル及びアリールオキシテトラアルキレングリコール(メタ)アクリル酸エステルなどの1種または2種以上を挙げることができるが、これに限定されるものではない。前記具体例で、アルコキシは、好ましくは、炭素数1〜4のアルコキシ、より好ましくは、メトキシまたはエトキシであり、アルキレングリコールは、炭素数1〜4のアルキレングリコール、好ましくは、エチレングリコールまたはプロピレングリコールを挙げることができ、アリールオキシでは、炭素数6〜12のアリールオキシ、好ましくは、フェノキシなどを例示することができる。
【0021】
前記アクリル重合体は、前記(メタ)アクリル酸エステル単量体60重量部〜89.9重量部及び前記(メタ)アクリル酸アルキレンオキシド単量体10重量部〜30重量部を重合単位として含み、他の例示では、前記(メタ)アクリル酸エステル単量体65重量部〜89.9重量部または70重量部〜89.9重量部及び前記(メタ)アクリル酸アルキレンオキシド単量体10重量部〜25重量部または10重量部〜20重量部を重合単位として含むことができる。前記重量割合の範囲にすることで、粘着剤の物性、特に接着力や耐久性を優秀に維持することができ、且つ粘着剤が高温条件や高温多湿な条件などのような苛酷な条件に長期間露出される場合にも帯電防止特性を安定的に維持することができる。
【0022】
本明細書において、単位「重量部」は、各成分間の重量の割合を意味し、したがって、「重量部」及び「重量の割合」は同一の意味で使用することができる。
【0023】
また、前記アクリル重合体は、架橋性官能基を有する共重合性単量体を重合単位としてさらに含むことができる。前記単量体は、上述した(メタ)アクリル酸エステル単量体及び/または(メタ)アクリル酸アルキレンオキシド単量体と共重合されて重合単位として重合体に含まれて、また、前記重合体の測鎖または末端に架橋性官能基を提供することができる単量体である。
【0024】
前記架橋性官能基の例としては、ヒドロキシ基、カルボキシル基、エポキシ基、イソシアネート基またはアミノ基のような窒素含有官能基などを挙げることができる。アクリル重合体の製造分野では、前記のような役目ができる多様な単量体が公知されており、本出願ではこのような単量体をいずれも使用することができる。架橋性官能基を有する共重合性単量体の具体的な例では、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチレングリコール(メタ)アクリレートまたは2−ヒドロキシプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどのようなヒドロキシ基含有単量体; (メタ)アクリル酸、2−(メタ) アクリロイルオキシ醋酸、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシブチル酸、アクリル酸ダイマー、イタコン酸、マレイン酸及び無水マレインなどのカルボキシル基含有単量体または(メタ)アクリルアミド、N−ビニールピロリドンまたは N−ビニールカプロラクトンなどの窒素含有単量体などを挙げることができ、前記のうち1種または2種以上の混合を使用することができるが、これに限定されるものではない。
【0025】
前記架橋性官能基を有する共重合性単量体は、0.1重量部〜10重量部の割合で重合体に含むことができ、これによって、粘着剤の耐久性、粘着力及び凝集力などの物性を効果的に制御することができる。
【0026】
前記アクリル重合体には、必要に応じて、下記化学式2で表示される単量体を重合単位としてさらに含むことができる。化学式2の単量体は、ガラス転移温度の調節及びその他機能性付与を目的で付加することができる。
【0027】
【化2】
【0028】
前記化学式2において、R
2乃至R
4は、各々独立的に水素またはアルキルを示し、R
5は、シアノ、アルキルに置換または非置換されたフェニル、アセチルオキシ、またはCOR
6を示し、この時、R
6は、アルキルまたはアルコキシアルキルに置換または非置換されたアミノまたはグリシジルオキシを示す。
【0029】
前記化学式2のR
2乃至R
6の定義において、アルキルまたはアルコキシは、炭素数1〜8のアルキルまたはアルコキシを意味し、好ましくは、メチル、エチル、メトキシ、エトキシ、プロポキシまたはブトキシである。
【0030】
前記化学式2の単量体は、20重量部以下の重量割合で重合体に含まれることができるが、これは目的によって変更されることができる。
【0031】
前記アクリル重合体は、上述の多様な重合体を目的する重量割合によって配合した単量体の混合物を溶液重合(solution polymerization)、光重合(photo polymerization)、塊状重合(bulk polymerization)、懸濁重合(suspension polymerization)または乳化重合(emulsion polymerization)のような通常の重合方式に適用して製造することができる。
【0032】
また、前記粘着剤組成物は、常温において液状であるイオン性化合物を含む。前記イオン性化合物は常温において液状で存在する。本明細書において、用語「常温」は、加熱または冷却状態ではない自然そのままの気温として、例えば、約10℃〜約30℃、約15℃〜約30℃または約25℃の温度を意味する。常温において液状で存在するイオン性化合物を使用することで、適切な帯電防止性を確保すると共に粘着剤の光学物性、粘着物性及び作業性などを優秀に維持することができる。また、粘着剤を長期間放置または保管する場合にも、イオン性化合物の粘着剤からの析出及び粘着剤の光学的透明性または粘着物性などの経時的変化または悪化を防止することができる。
【0033】
前記イオン性化合物は、好ましくは、有機塩である。一例で、4級アンモニウム、ホスホニウム(phosphonium)、ピリジニウム(pyridinium)、イミダジリウム(imidazolium)、ピロ
リジニウム(pyrolidinium)またはピペリジニウム(piperidinium)などの陽イオン成分を含む有機塩である。
【0034】
有機塩は、好ましくは、4級アンモニウム陽イオンを含むことができ、一例で、前記4級アンモニウム陽イオンは、下記化学式3で表示できる。
【0035】
【化3】
【0036】
前記化学式3において、R
7乃至R
10は、各々独立的に水素、アルキル、アルコキシ、アルケニルまたはアルキニルを示す。
【0037】
前記化学式3の定義において、アルキルまたはアルコキシは、炭素数1〜20、炭素数1〜12、炭素数1〜8または炭素数1〜4のアルキルまたはアルコキシである。また、前記アルキルまたはアルコキシは、直鎖状、分岐状または環状のアルキルまたはアルコキシであり、任意的に一つ以上の置換基により置換されることができる。
【0038】
また、前記化学式3の定義において、アルケニルまたはアルキニルは、炭素数2〜20、炭素数2〜12、炭素数2〜8または炭素数2〜4のアルケニルまたはアルキニルである。また、前記アルケニルまたはアルキニルは、直鎖状、分岐状または環状のアルケニルまたはアルキニルであり、任意的に一つ以上の置換基により置換されることができる。
【0039】
前記化学式3の定義において、アルキル、アルコキシ、アルケニルまたはアルキニルが一つ以上の置換基により置換される場合、置換基の例では、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、シアノ、チオール、アミノ、アリールまたはヘテロアリールなどを挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0040】
一例において、前記化学式3のR
7乃至R
10は、各々独立的にアルキルであり、好ましくは、炭素数1〜12の直鎖状または分岐状のアルキルであり、より好ましくは、R
7乃至R
10が各々独立的に炭素数1〜12の直鎖状または分岐状のアルキルを示すが、R
7乃至R
10が同時に同一な炭素数のアルキルではない。すなわち、前記例示において、R
7乃至R
10が全て同一炭素数のアルキルの場合は除外することが好ましい。R
7乃至R
10が全て同一な炭素数のアルキルの場合、有機塩が常温で固状で存在する確率が高くなる。
【0041】
前記化学式3の陽イオンの具体的な例では、N−エチル−N,N−ジメチル−N−プロピルアンモニウム、N,N,N−トリメチル−N−プロピルアンモニウム、N−メチル−N,N,N−トリブチルアンモニウム、N−エチル−N,N,N−トリブチルアンモニウム、N−メチル−N,N,N−トリヘキシルアンモニウム、N−エチル−N,N,N−トリヘキシルアンモニウム、N−メチル−N,N,N−トリオクチルアンモニウムまたはN−エチル−N,N,N−トリオクチルアンモニウムなどの1種または2種以上を挙げることができる。
【0042】
一例において、化学式3で、R
7は、炭素数1〜3のアルキルであり、R
8乃至R
10は、各々独立的に炭素数4〜20、好ましくは、炭素数4〜15、より好ましくは、炭素数4〜10のアルキルである陽イオンを使用することができる。このような陽イオンを使用することで、光学物性、粘着物性、作業性及び帯電防止性が一層優れた粘着剤を提供することができる。
【0043】
前記有機塩に含まれる陰イオンでは、下記化学式4で表示される陰イオンを例示することができる。
【0044】
[化学式4]
[X(YO
mR
f)
n]
−
【0045】
前記化学式4において、Xは、窒素または炭素を示し、Yは、炭素または硫黄を示し、R
fは、ペルフルオロアルキル基を示し、mは、1または2を示し、nは、2または3を示す。
【0046】
前記化学式4において、Yが炭素の場合、mは1であり、Yが黄色の場合、mは、2であり、Xが窒素の場合、nは、2であり、Xが炭素の場合、nは3である。
【0047】
前記化学式4の陰イオンは、 ペルフルオロアルキル基(R
f)により高い電気陰性度を示し、また、特有の共鳴構造を含み、化学式3の陽イオンとの弱い結合性及び高い疎水性を同時に示す。これにより、有機塩は、アクリル重合体などの組合物の他の成分と優れた相溶性を示しながら、少量でも高い帯電防止性を粘着剤に付与することができる。
【0048】
一例において、前記化学式4のR
fは、炭素数1〜20、炭素数1〜12、炭素数1〜8または炭素数1〜4のペルフルオロアルキル基であり、この場合、上記ペルフルオロアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状または環状構造を有することができる。前記化学式4の陰イオンは、スルホニルメチド系、スルホニルイミド系、カルボニルメチド系またはカルボニルイミド系陰イオンであることができ、具体的には、トリストリフルオロメタンスルホニルメチド、ビストリフルオロメタンスルホニルイミド、ビスペルフルオロブタンスルホニルイミド、ビスペンタフルオロエタンスルホニルイミド、トリストリフルオロメタンカルボニルメチド、ビスペルフルオロブタンカルボニルイミドまたはビスペンタフルオロエタンカルボニルイミドなどの1種または2種以上の混合である。
【0049】
一例において、化学式4の陰イオンは、好ましくは、ビス(ペルフルオロアルキルスルホニルイミド)であり、この場合、前記ペルフルオロアルキルは、炭素数1〜12、好ましくは、炭素数1〜8のペルフルオロアルキルである。
【0050】
また、前記粘着剤組成物は、金属塩を含む。一例において、前記金属塩は、アルカリ金属の陽イオンまたはアルカリ土
類金属の陽イオンを含むことができ、好ましくは、アルカリ金属の陽イオンを含むことができる。前記のような陽イオンでは、リチウムイオン(Li+)、ナトリウムイオン(Na+)、カリウムイオン(K+)、ルビジウムイオン(Rb+)、セシウムイオン(Cs+)、ベリリウムイオン(Be2+)、マグネシウムイオン(Mg2+)、カルシウムイオン(Ca2+)、ストロンチウムイオン(Sr2+)及びバリウムイオン(Ba2+)などの1種または2種以上を例示することができ、このような例示で、好ましくは、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン及びバリウムイオンの1種または2種以上を使用することができ、イオン安全性及び粘着剤内での移動性を考慮してリチウムイオンを使用することがより好ましいが、これに限定されるものではない。
【0051】
前記金属塩に含まれることができる陰イオンとしては、フルオライド(F−)、クロライド(Cl−)、ブロマイド(Br−)、ヨウダイド(I−)、パークロレート(ClO4−)、ヒドロキシド(OH−)、カーボネート(CO32−)、ニトレート(NO3−)、トリフルオロメタンスルホネート(CF3SO3−)、スルホネート(SO4−)、ヘキサフルオロホスフェート(PF6−)、メチルベンゼンスルホネート(CH3(C6H4)SO3−)、p−トルエンスルホネート(CH3C6H4SO3−)、テトラボレート(B4O72−)、カルボキシベンゼンスルホネート(COOH(C6H4)SO3−)、トリフルオロメタンスルホネート(CF3SO2−)、ベンゾネート(C6H5COO−)、アセテート(CH3COO−)、トリフルオロアセテート(CF3COO−)、テトラフルオロボレート(BF4−)、テトラベンジルボレート(B(C6H5)4−)またはトリスペンタフルオロエチルトリフルオロホスフェート(P(C2F5)3F3−)などあるいは上述した化学式
4の陰イオンなどを例示することができ、これらのうち1種または2種以上を選択して使用することができる。一例において、前記陰イオンでは、電子求引(electron withdrawing)の役目が優れて疎水性のよいフルオロが置換されており、イオン安全性が高いイミド系陰イオンを使用することが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0052】
前記粘着剤組成物で、前記イオン性化合物及び金属塩の重量割合は、前記一般式1を満足する。
【0053】
すなわち、前記イオン性化合物及び金属塩は、アクリル重合体100重量部に対して合計重量で15重量部以下または0.5重量部〜12重量部の割合で粘着剤組成物に含まれることができる。また、前記イオン性化合物の前記アクリル重合体100重量部対比重量割合(B)は、0.05重量部以上、0.2重量部以上、0.5重量部以上または1重量部以上であり、前記金属塩の前記アクリル重合体100重量部対比重量割合(C)は、0重量部超過10重量部以下の範囲または0重量部超過8重量部以下の範囲である。
【0054】
前記イオン性化合物及び金属塩の重量割合を前記のように調節することで、粘着剤が安定的な帯電防止性能を示すことができ、特に粘着剤が苛酷条件などで長期間放置される場合にも前記帯電防止性能が安定的に維持され、また、イオン性化合物の可塑効果などにより再剥離性などの粘着剤の作業性も効果的に維持することができる。
【0055】
また、前記粘着剤組成物は、硬化過程で前記アクリル重合体を架橋させることができる成分として多官能性架橋剤をさらに含むことができる。多官能性架橋剤では、例えば、イソシアネート架橋剤、エポキシ架橋剤、アジリジン架橋剤または金属キレート架橋剤を使用することができ、好ましくは、イソシアネート架橋剤を使用することができる。
【0056】
イソシアネート架橋剤としては、例えば、トルエンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホルムジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネートまたはナフタレンジイソシアネートなどのジイソシアネート化合物や、または前記ジイソシアネート化合物をポリオールと反応させた化合物を使用することができ、前記ポリオールでは、例えば、トリメチロールプロパンなどを挙げることができる。また、エポキシ架橋剤では、エチレングリコールグリシジルエーテル、トリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、N,N,N',N'−テトラグリシジルエチレンジアミン及びグリセリンジグリシジルエーテルからなる群より選択された一つ以上の物質を挙げることができ、アジリジン架橋剤では、N,N’−トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカルボキサミド)、N,N'−ジフェニルメタン−4,4'−ビス−(1−アジリジンカルボキサミド)、トリエチレンメラミン、ビスイソフタロイル−1−(2−メチルアジリジン)及びトリ−1−アジリジニルホスフィンオキシドからなる群より選択された一つ以上の物質を挙げることができ、これに限定されるものではない。また、金属キレート系架橋剤では、アルミニウム、鉄、亜鉛、錫、チタン、アンチモン、マグネシウム及び/またはバナジウムのような多価金属がアセチルアセトンまたはアセト酢酸エチルなどに配位している化合物などを挙げることができる。本出願では前記物質のうち1種または2種以上の架橋剤を使用することができるが、本出願で使用できる架橋剤は、前記物質に限定されるものではない。
【0057】
前記多官能性架橋剤は、例えば、上述のアクリル重合体100重量部に対して0.01重量部〜10重量部で粘着剤組成物に含まれる。このような範囲にすることで粘着剤の凝集力や耐久性を優秀に維持し、また長期間保管する場合にも保存安全性を高めることができる。
【0058】
また、前記粘着剤組成物は、シランカップリング剤をさらに含むことができる。シランカップリング剤は、粘着剤の密着性及び接着安全性を向上させ、耐熱性及び耐湿性を改善できる。また、苛酷条件で粘着剤が長期間放置された場合にも接着信頼性を向上させる作用をする。シランカップリング剤では、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランまたはγ−アミノプロピルトリエトキシシランなどを使用することができ、前記物質の中で1種または2種以上の混合を使用することができる。
【0059】
一例において、粘着剤組成物は、βシアノ基またはアセトアセチル基を有するシランカップリング剤を含むことができる。このようなカップリング剤では、例えば、下記化学式5または化学式6で表示される化合物が挙げられる。
【0060】
[化学式5]
(R
11)
nSi(R
12)
(4−n)
【0061】
[化学式6]
(R
13)
nSi(R
12)
(4−n)
【0062】
前記化学式5または化学式6において、R
11は、β−シアノアセチル基を示し、R
13は、アセトアセチル基またはアセトアセチルアルキル基を示し、R
12は、アルコキシ基を示し、nは、1〜3の数を示す。
【0063】
前記化学式5または化学式6において、アルキルは、炭素数1〜20、炭素数1〜16、炭素数1〜12、炭素数1〜8または炭素数1〜4のアルキルであり、このようなアルキルは、直鎖状、分岐状または環状である。
【0064】
前記化学式5または化学式6において、アルコキシは、炭素数1〜20、炭素数1〜16、炭素数1〜12、炭素数1〜8または炭素数1〜4のアルキルであり、このようなアルキルは、直鎖状、分岐状または環状である。
【0065】
また、前記化学式5または化学式6において、nは、好ましくは、1〜2、より好ましくは、1である。
【0066】
前記化学式5または化学式6の化合物では、例えば、アセトアセチルプロピルトリメトキシシラン、アセトアセチルプロピルトリエトキシシラン、β−シアノアセチルトリメトキシシランまたは β−シアノアセチルトリエトキシシランなどを例示することができるが、これに限定されるものではない。
【0067】
粘着剤組成物内でシランカップリング剤は、アクリル重合体100重量部に対して0.01重量部〜5重量部、好ましくは、0.01重量部〜1重量部で含まれることができ、この範囲内で目的する物性を効果的に粘着剤に付与することができる。
【0068】
また、前記粘着剤組成物は、必要に応じて、粘着性付与剤をさらに含むことができる。粘着性付与剤では、例えば、ハイドロカーボン系樹脂またはその水素添加物、ロジン樹脂またはその水素添加物、ロジンエステル樹脂またはその水素添加物、テルペン樹脂またはその水素添加物、テルペンフェノール樹脂またはその水素添加物、重合ロジン樹脂または重合ロジンエステル樹脂などの1種又は2種以上の混合物を使用することができるが、これに限定されるものではない。粘着性付与剤は、アクリル重合体100重量部に対して、100重量部以下で粘着剤組成物に含むことができる。
【0069】
また、粘着剤組成物は、目的する効果に影響を与えない範囲で、エポキシ樹脂、硬化剤、紫外線安定剤、酸化防止剤、調色剤、補強剤、充填剤、消泡剤、界面活性剤及び可塑剤からなる群より選択された一つ以上の添加剤をさらに含むことができる。
【0070】
前記粘着剤組成物は、下記一般式3の条件を満足する。
【0071】
[一般式3]
△SR
A = logSR2−logSR1 ≦ 1.0
【0072】
前記一般式3において、SR1は、前記粘着剤組成物を硬化させて、23℃及び50%R.H.の条件で24時間の間保管した後に測定した表面抵抗を意味し、SR2は、前記SR1の測定時と同一な粘着剤組成物を硬化させて、60℃及び90%R.H.の条件で500時間の間保管して、更に23℃及び50%R.H.の条件で24時間の間保管した後に測定した表面抵抗を示す。
【0073】
また、粘着剤組成物は、下記一般式4の条件を満足する。
【0074】
[一般式4]
△SR
B = logSR3−logSR1 ≦ 1.0
【0075】
前記一般式4において、SR1は、前記一般式3で定義した内容と同一であり、SR3は、前記SR1の測定時と同一な粘着剤組成物を硬化させて、80℃条件で500時間の間保管して、更に23℃及び50%R.H.の条件で24時間の間保管した後に測定した表面抵抗を示す。
【0076】
前記用語「硬化」は、物理的または化学的反応を経て前記粘着剤組成物を粘着特性が発現できる状態に変化させる過程を意味し、このような硬化は、例えば、前記組成物内に含まれているアクリル重合体及び多官能性架橋剤が架橋反応を起こすことができる条件で粘着剤組成物を処理する過程である。
【0077】
また、本明細書で単位「R.H.」は、相対湿度を意味する。
【0078】
前記一般式3及び一般式4の表面抵抗を測定する具体的な条件及び方法は後述する実施例による。
【0079】
△SR
Aまたは△SR
Bが1.0を超過すれば、粘着剤で製造された状態で表面抵抗特性の変化が経時的に大きく発生するようになり、これによって、粘着剤の適用が制限されることがある。また、前記△SR
A及び△SR
Bは、その数値が低いほど効果的であるため、その下限は特別に限定されない。
【0080】
また、前記粘着剤組成物は、硬化された後のゲル(gel)含量が50重量%〜90重量%、好ましくは、70重量%〜90重量%である。前記硬化後のゲル分率は、下記一般式5で計算できる。
【0081】
[一般式5]
ゲル分率(%) = B/A × 100
【0082】
前記一般式5において、Aは、前記粘着剤組成物を硬化させた後に測定した質量を示し、Bは、前記Aの質量を有する硬化後粘着剤組成物を常温で酢酸エチルに48時間浸漬させた後に採取した不用分解の乾燥質量を示す。
【0083】
硬化後のゲル分率50重量%未満であれば、高温または高湿条件で粘着剤の耐久性が低下される恐れがあり、90%を超過すれば、粘着剤の応力緩和特性が低下される恐れがある。
【0084】
また、前記粘着剤組成物は、粘着剤の形態でガラス、例えば、ソーダ石灰(soda lime)ガラスに付着された後、常温で180度の剥離角度及び0.3m/minの剥離速度で測定した剥離力が150gf/25mm以上または250gf/25mm以上である。前記剥離力は、例えば、前記粘着剤組成物を使用して後述する粘着偏光板を製造し、製造された粘着偏光板を前記ガラスに付着した後、23℃の温度及び50%相対湿度の条件で24時間の間放置した後に測定することができる。前記剥離利力を150gf/25mm以上とすることで、特に偏光板用粘着剤組成物として優秀な耐久性を確保することができる。前記剥離力の下限は特別に限定されるものではないが、裁断性や再剥離性を考慮して、2500gf/25mm以下、または1500gf/25mm以下の範囲で調節することができる。
【0085】
また、本発明は、偏光子と、前記偏光子の一面または両面に形成されており、偏光板液晶パネルに付着するために使われて、前記粘着剤組成物を硬化された状態で含む粘着剤層と、を有する粘着偏光板に関するものである。
【0086】
偏光子では、特別に限定されないで、この分野で公知された一般的な種類を採用することができる。偏光子は、多くの方向に振動しながら入射される光から一方向に振動する光のみを抽出することができる機能性フィルムである。このような偏光子は、例えば, ポリビニールアルコール系樹脂フィルムに二色性色素が吸着配向されている形態である。偏光子を構成するポリビニールアルコール系樹脂は、例えば、ポリビニールアセテート系樹脂をゲル化して得ることができる。この場合、使用できるポリビニールアセテート系樹脂には、ビニールアセテートの単独重合体だけではなく、ビニールアセテート及びそれと共重合可能な他の単量体の共重合体も含まれる。前記ビニールアセテートと共重合可能な単量体の例では、不飽和カルボン酸類、オレフイン類、ビニールエーテル類、不飽和スルホン酸類及びアンモニウム基を有するアクリルアミド類などの1種または2種以上の混合を挙げることができるが、これに限定されるものではない。偏光子は、前記ポリビニールアルコール系樹脂フィルムを延伸して、二色性色素などで染色した後に前記色素を吸着させて、ホウ酸(boric acid)水溶液でフィルムを処理して、水洗する工程などを通して製造することができる。二色性色素では、ヨウ素(iodine)や二色性の有機染料などを使用することができる。
【0087】
また、前記偏光板は、前記偏光子の一面または両面に付着された保護フィルムをさらに含むことができる。この場合、前記粘着剤層は、前記保護フィルムの一面に形成される。保護フィルムの種類は、特別に限定されないで、例えば、TAC(Triacetyl cellulose)のようなセルロース系フィルム、ポリカーボネートフィルムまたはPET(poly(ethylene terephthalet))のようなポリエステル系フィルム、ポリエーテルスルホン系フィルム、またはポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムまたはシクロ系やノルボルネン構造を有する樹脂やエチレン−プロピレン共重合体などを使用して製造されるポリオレフイン系フィルムなどの1層または2層以上の積層構造のフィルムなどを使用することができる。
【0088】
また、前記偏光板は、保護層、反射層、防幻層、位相差板、広視野角補償フィルム及び輝度向上フィルムからなる群より選択された一つ以上の機能性層をさらに含むことができる。
【0089】
前記偏光板に粘着剤層を形成する方法は、特別に限定されないで、例えば、上述した粘着剤組成物をコーティングして硬化させて形成することができる。この過程で粘着剤組成物を偏光板に直接コーティング及び硬化させるか、異形フィルムの異形処理面にコーティング及び硬化させた後に、それを偏光板に転写する方式などで偏光板を製造することができる。
【0090】
粘着剤組成物のコーティングは、バーコータ(bar coater)などの通常の手段を使用して進行することができる。
【0091】
また、粘着剤組成物を硬化させる方法も特別に限定されないで、例えば、コーティング層内に含まれたアクリル重合体と多官能性架橋剤の架橋反応が誘発されるように、前記コーティング層を適正な温度で維持する方式などで実行することができる。
【0092】
また、本発明は、液晶パネル及び前記液晶パネルの一面または両面に付着されている前記偏光板を含む液晶表示装置に関するものである。
【0093】
前記装置で液晶パネルでは、例えば、TN(twisted nematic)型、STN(super twisted nematic)型、F(ferroelectic)型またはPD(polymer dispersed)型のようなアクティブマトリックス方式のパネル、2端子型(two terminal)または3端子型(three terminal)のようなパッシブマトリックス方式のパネル、IPS(In Plane Switching)パネル及びVA(Vertical Alignment)パネルなどの公知のパネルを全て適用することができる。
【0094】
また、液晶表示装置のその他構成、例えば、カラーフィルター基板またはアレイ基板のような上下部基板などの種類も特別に限定されないで、この分野で公知されている構成を制限なしに採用することができる。