(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
誘電体の窓を有する処理容器と、前記処理容器内で被処理基板を保持する基板保持部と、前記基板に所望のプラズマ処理を施すために、前記処理容器内に所望の処理ガスを供給する処理ガス供給部と、前記処理容器内で誘導結合により処理ガスのプラズマを生成するために、前記誘電体窓の外に設けられるRFアンテナと、前記処理ガスの高周波放電に適した周波数の高周波電力を前記RFアンテナに供給する高周波給電部とを有するプラズマ処理装置において前記基板に所望のプラズマ処理を施すプラズマ処理方法であって、
前記RFアンテナを、径方向に間隔を開けて相対的に内側、中間および外側にそれぞれ配置され、前記高周波給電部の高周波伝送路に設けられた第1および第2のノードの間で電気的に並列に接続される内側コイル、中間コイルおよび外側コイルに分割し、
前記第1のノードから前記第2のノードまで各々の高周波分岐伝送路を一筆書きで廻った場合に、前記中間コイルを通るときの向きが前記内側コイルおよび前記外側コイルをそれぞれ通るときの向きと周回方向で逆になるように、前記内側コイル、前記中間コイルおよび前記外側コイルを結線し、
前記第1のノードと前記第2のノードとの間に、前記中間コイルと電気的に直列に接続される第1の可変コンデンサを設け、
前記第1の可変コンデンサの静電容量を選定または可変制御して、前記基板上のプラズマ密度分布を制御し、
前記中間コイルには、前記内側コイルおよび前記外側コイルをそれぞれ流れる電流と周回方向で同じ向きの電流を流す、
プラズマ処理方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図を参照して本発明の好適な実施形態を説明する。
[装置全体の構成および作用]
【0019】
図1に、本発明の一実施形態における誘導結合型プラズマ処理装置の構成を示す。
【0020】
このプラズマ処理装置は、平面コイル形のRFアンテナを用いる誘導結合型のプラズマエッチング装置として構成されており、たとえばアルミニウムまたはステンレス鋼等の金属製の円筒型真空チャンバ(処理容器)10を有している。チャンバ10は、保安接地されている。
【0021】
先ず、この誘導結合型プラズマエッチング装置においてプラズマ生成に関係しない各部の構成を説明する。
【0022】
チャンバ10内の下部中央には、被処理基板としてたとえば半導体ウエハWを載置する円板状のサセプタ12が高周波電極を兼ねる基板保持台として水平に配置されている。このサセプタ12は、たとえばアルミニウムからなり、チャンバ10の底から垂直上方に延びる絶縁性の筒状支持部14に支持されている。
【0023】
絶縁性筒状支持部14の外周に沿ってチャンバ10の底から垂直上方に延びる導電性の筒状支持部16とチャンバ10の内壁との間に環状の排気路18が形成され、この排気路18の上部または入口に環状のバッフル板20が取り付けられるとともに、底部に排気ポート22が設けられている。チャンバ10内のガスの流れをサセプタ12上の半導体ウエハWに対して軸対象に均一にするためには、排気ポート22を円周方向に等間隔で複数設ける構成が好ましい。各排気ポート22には排気管24を介して排気装置26が接続されている。排気装置26は、ターボ分子ポンプなどの真空ポンプを有しており、チャンバ10内のプラズマ処理空間を所望の真空度まで減圧することができる。チャンバ10の側壁の外には、半導体ウエハWの搬入出口27を開閉するゲートバルブ28が取り付けられている。
【0024】
サセプタ12には、RFバイアス用の高周波電源30が整合器32および給電棒34を介して電気的に接続されている。この高周波電源30は、半導体ウエハWに引き込まれるイオンのエネルギーを制御するのに適した一定周波数(通常13.56MHz以下)の高周波RF
Lを可変のパワーで出力できるようになっている。整合器32は、高周波電源30側のインピーダンスと負荷(主にサセプタ、プラズマ、チャンバ)側のインピーダンスとの間で整合をとるためのリアクタンス可変の整合回路を収容している。その整合回路の中に自己バイアス生成用のブロッキングコンデンサが含まれている。
【0025】
サセプタ12の上面には、半導体ウエハWを静電吸着力で保持するための静電チャック36が設けられ、静電チャック36の半径方向外側に半導体ウエハWの周囲を環状に囲むフォーカスリング38が設けられる。静電チャック36は導電膜からなる電極36aを一対の絶縁膜36b,36cの間に挟み込んだものであり、電極36aには高圧の直流電源40がスイッチ42および被覆線43を介して電気的に接続されている。直流電源40より印加される高圧の直流電圧により、静電力で半導体ウエハWを静電チャック36上に吸着保持することができる。
【0026】
サセプタ12の内部には、たとえば円周方向に延びる環状の冷媒室または冷媒流路44が設けられている。この冷媒室44には、チラーユニット(図示せず)より配管46,48を介して所定温度の冷媒たとえば冷却水cwが循環供給される。冷却水cwの温度によって静電チャック36上の半導体ウエハWの処理中の温度を制御できる。これと関連して、伝熱ガス供給部(図示せず)からの伝熱ガスたとえばHeガスが、ガス供給管50を介して静電チャック36の上面と半導体ウエハWの裏面との間に供給される。また、半導体ウエハWのローディング/アンローディングのためにサセプタ12を垂直方向に貫通して上下移動可能なリフトピンおよびその昇降機構(図示せず)等も設けられている。
【0027】
次に、この誘導結合型プラズマエッチング装置においてプラズマ生成に関係する各部の構成を説明する。
【0028】
チャンバ10の天井または天板はサセプタ12から比較的大きな距離間隔を隔てて設けられており、この天板としてたとえば石英板からなる円形の誘電体窓52が気密に取り付けられている。この誘電体窓52の上には、チャンバ10内に誘導結合のプラズマを生成するためのRFアンテナ54を外部から電磁的に遮蔽して収容するアンテナ室56がチャンバ10と一体に設けられている。
【0029】
RFアンテナ54は、誘電体窓52と平行で、径方向に間隔を開けて内側、中間および外側にそれぞれ配置される内側コイル58、中間コイル60および外側コイル62を有している。この実施形態における内側コイル58、中間コイル60および外側コイル62は、各々円環状のコイル形体を有し、互いに同軸(より好ましくは同心状)に配置されるとともに、チャンバ10またはサセプタ12に対しても同軸に配置されている。
【0030】
なお、本発明において「同軸」とは、軸対称の形状を有する複数の物体間でそれぞれの中心軸線が互いに重なっている位置関係であり、複数のコイル間に関してはそれぞれのコイル面が軸方向で互いにオフセットしている場合だけでなく同一面上で一致している場合(同心状の位置関係)も含む。
【0031】
内側コイル58、中間コイル60および外側コイル62は、電気的には、プラズマ生成用の高周波給電部66からの高周波給電ライン68と接地電位部材に至る帰線ライン70との間(2つのノードN
A,N
Bの間)で並列に接続されている。ここで、帰線ライン70は接地電位のアースラインであり、電気的に接地電位に保たれる接地電位部材(たとえばチャンバ10または他の部材)に接続されている。
【0032】
アースライン70側のノードN
Bと中間コイル60および外側コイル62との間には、可変のコンデンサ86,88がそれぞれ電気的に直列に接続(挿入)されている。これらの可変コンデンサ86,88は、主制御部84の制御の下で容量可変部90により一定範囲内でそれぞれ独立かつ任意に可変されるようになっている。以下、ノードN
A,N
Bの間で、内側コイル58と直列に接続されるコンデンサを「内側コンデンサ」と称し、中間コイル60と直列に接続されるコンデンサを「中間コンデンサ」と称し、外側コイル62と直列に接続されるコンデンサを「外側コンデンサ」と称する。
【0033】
高周波給電部66は、高周波電源72および整合器74を有している。高周波電源72は、誘導結合の高周波放電によるプラズマの生成に適した一定周波数(通常13.56MHz以上)の高周波RF
Hを可変のパワーで出力できるようになっている。整合器74は、高周波電源72側のインピーダンスと負荷(主にRFアンテナ、プラズマ)側のインピーダンスとの間で整合をとるためのリアクタンス可変の整合回路を収容している。
【0034】
チャンバ10内の処理空間に処理ガスを供給するための処理ガス供給部は、誘電体窓52より幾らか低い位置でチャンバ10の側壁の中(または外)に設けられる環状のマニホールドまたはバッファ部76と、円周方向に等間隔でバッファ部76からプラズマ生成空間に臨む多数の側壁ガス吐出孔78と、処理ガス供給源80からバッファ部76まで延びるガス供給管82とを有している。処理ガス供給源80は、流量制御器および開閉弁(図示せず)を含んでいる。
【0035】
主制御部84は、たとえばマイクロコンピュータを含み、このプラズマエッチング装置内の各部たとえば排気装置26、高周波電源30,72、整合器32,74、静電チャック用のスイッチ42、可変コンデンサ86,88、処理ガス供給源80、チラーユニット(図示せず)、伝熱ガス供給部(図示せず)等の個々の動作および装置全体の動作(シーケンス)を制御する。
【0036】
この誘導結合型プラズマエッチング装置において、エッチングを行なうには、先ずゲートバルブ28を開状態にして加工対象の半導体ウエハWをチャンバ10内に搬入して、静電チャック36の上に載置する。そして、ゲートバルブ28を閉めてから、処理ガス供給源80よりガス供給管82、バッファ部76および側壁ガス吐出孔78を介してエッチングガス(一般に混合ガス)を所定の流量および流量比でチャンバ10内に導入し、排気装置26によりチャンバ10内の圧力を設定値にする。さらに、高周波給電部66の高周波電源72をオンにしてプラズマ生成用の高周波RF
Hを所定のRFパワーで出力させ、整合器74,RF給電ライン68および帰線ライン70を介してRFアンテナ54の内側コイル58、中間コイル60および外側コイル62に高周波RF
Hの電流を供給する。一方、高周波電源30をオンにしてイオン引き込み制御用の高周波RF
Lを所定のRFパワーで出力させ、この高周波RF
Lを整合器32および給電棒34を介してサセプタ12に印加する。また、伝熱ガス供給部より静電チャック36と半導体ウエハWとの間の接触界面に伝熱ガス(Heガス)を供給するとともに、スイッチ42をオンにして静電チャック36の静電吸着力により伝熱ガスを上記接触界面に閉じ込める。
【0037】
チャンバ10内において、側壁ガス吐出孔78より吐出されたエッチングガスは、誘電体窓52の下の処理空間に拡散する。RFアンテナ54の各コイル58,60,62を流れる高周波RF
Hの電流によってそれらのコイルの周りに発生する磁力線(磁束)が誘電体窓52を貫通してチャンバ10内の処理空間(プラズマ生成空間)を横切り、処理空間内で方位角方向の誘導電界が発生する。この誘導電界によって方位角方向に加速された電子がエッチングガスの分子や原子と電離衝突を起こし、ドーナツ状のプラズマが生成される。
【0038】
このドーナツ状プラズマのラジカルやイオンは広い処理空間で四方に拡散し、ラジカルは等方的に降り注ぐようにして、イオンは直流バイアスに引っぱられるようにして、半導体ウエハWの上面(被処理面)に供給される。こうして半導体ウエハWの被処理面にプラズマの活性種が化学反応と物理反応をもたらし、被加工膜が所望のパターンにエッチングされる。
【0039】
ここで「ドーナツ状のプラズマ」とは、チャンバ10の径方向内側(中心部)にプラズマが立たず径方向外側にのみプラズマが立つような厳密にリング状のプラズマに限定されず、むしろチャンバ10の径方向内側より径方向外側のプラズマの体積または密度が大きいことを意味する。また、処理ガスに用いるガスの種類やチャンバ10内の圧力の値等の条件によっては、ここで云う「ドーナツ状のプラズマ」にならない場合もある。
【0040】
この誘導結合型プラズマエッチング装置は、RFアンテナ54の内側コイル58、中間コイル60および外側コイル62を以下に説明するような特殊な電気的接続構成とし、さらにはRFアンテナ54にコンデンサ(
図1の例では可変コンデンサ86,88)を付加する構成により、RFアンテナ54内の波長効果や電位差(電圧降下)を効果的に抑制または低減し、半導体ウエハW上のプラズマプロセス特性つまりエッチング特性(エッチングレート、選択比、エッチング形状等)の周回方向および径方向の向上させることができる。
[RFアンテナの基本的な構成及び作用]
【0041】
この誘導結合型プラズマエッチング装置における主たる特徴は、RFアンテナ54の内部の空間的レイアウト構成および電気的接続構成にある。
図2および
図3に、この実施形態におけるRFアンテナ54のレイアウトおよび電気的接続(回路)の基本構成を示す。
【0042】
図2に示すように、内側コイル58は、間隙または切れ目G
iを挟んで一周する半径一定の単巻き円環状コイルからなり、径方向においてチャンバ10の中心寄りに位置している。内側コイル58の一方の端つまりRF入口端58inは、上方に延びる接続導体92および第1ノードN
Aを介して高周波給電部66のRF給電ライン68に接続されている。内側コイル58の他方の端つまりRF出口端58outは、上方に延びる接続導体94および第2ノードN
Bを介してアースライン70に接続されている。
【0043】
中間コイル60は、間隙または切れ目G
mを挟んで一周する半径一定の単巻き円環状コイルからなり、径方向において内側コイル58よりも外側でチャンバ10の中間部に位置している。中間コイル60の一方の端つまりRF入口端60inは、径方向で内側コイル58のRF出口部58outに隣接しており、上方に延びる接続導体96および第1ノードN
Aを介して高周波給電部66のRF給電ライン68に接続されている。中間コイル60の他方の端つまりRF出口端60outは、径方向で内側コイル58のRF入口端58inに隣接しており、上方に延びる接続導体98および第2ノードN
Bを介してアースライン70に接続されている。
【0044】
外側コイル62は、間隙または切れ目G
oを挟んで一周する半径一定の単巻き円環状コイルからなり、径方向において中間コイル60よりも外側でチャンバ10の側壁寄りに位置している。外側コイル62の一方の端つまりRF入口端62inは、径方向で中間コイル60のRF出口端60outに隣接しており、上方に延びる接続導体100および第1ノードN
Aを介して高周波給電部66のRF給電ライン68に接続されている。外側コイル62の他方の端つまりRF出口端62outは、径方向で中間コイル60のRF入口端60inに隣接しており、上方に延びる接続導体102および第2ノードN
Bを介してアースライン70に接続されている。
【0045】
図2に示すように、RFアンテナ54の上方に延びる接続導体92〜102は、アンテナ室56(
図1)内で誘電体窓52から十分大きな距離を隔てて(相当高い位置で)横方向の分岐線または渡り線を形成しており、各コイル58,60,62に対する電磁的な影響を少なくしている。
【0046】
上記のようなRFアンテナ54内のコイル配置および結線構造において、高周波電源72からRF給電ライン68、RFアンテナ54およびアースライン70を通って接地電位部材まで廻った場合、より端的には第1ノードN
Aから第2ノードN
BまでRFアンテナ54を構成する各コイル58,60,62の高周波分岐伝送路を廻った場合に、内側コイル58および外側コイル62をそれぞれ通るときは
図2で反時計回りになるのに対して、中間コイル60を通るときは
図2で時計回りになる。このように、中間コイル60を通るときの向きと内側コイル58および外側コイル62をそれぞれ通るときの向きが周回方向で逆になることが、重要な特徴点である。
【0047】
この実施形態の誘導結合型プラズマエッチング装置においては、高周波給電部66より供給される高周波の電流がRFアンテナ54内の各部を流れることにより、RFアンテナ54を構成する内側コイル58、中間コイル60および外側コイル62の周りにはアンペールの法則にしたがってループ状に分布する高周波数の交流磁界が発生し、誘電体窓52の下には比較的内奥(下方)の領域でも処理空間を半径方向に横断する磁力線が形成される。
【0048】
ここで、処理空間における磁束密度の半径方向(水平)成分は、チャンバ10の中心と周辺部では高周波電流の大きさに関係なく常に零であり、その中間の何処かで極大になる。高周波数の交流磁界によって生成される方位角方向の誘導電界の強度分布も、径方向において磁束密度と同様の分布を示す。つまり、径方向において、ドーナツ状プラズマ内の電子密度分布は、マクロ的にはRFアンテナ54内の電流分布にほぼ対応する。
【0049】
この実施形態におけるRFアンテナ54は、その中心または内周端から外周端まで旋回する通常の渦巻コイルとは異なり、アンテナの中心部に局在する円環状の内側コイル58とアンテナの中間部に局在する円環状の中間コイル60とアンテナの周辺部に局在する円環状の外側コイル62とからなり、RFアンテナ54内の電流分布は各コイル58,60,62の位置に対応した同心円状の分布になる。
【0050】
ここで、内側コイル58には、そのループ内で一様または均一な高周波の電流(以下「内側コイル電流」と称する。)I
iが流れる。中間コイル60には、そのループ内で一様または均一な高周波の電流(以下「中間コイル電流」と称する。)I
mが流れる。外側コイル62には、そのループ内で一様または均一な高周波の電流(以下「外側コイル電流」と称する。)I
oが流れる。この実施形態では、上記のようなコイル配置および結線構造(
図2)の下で、後述するように中間コンデンサ86および外側コンデンサ88の静電容量C
86,C
88をそれぞれ所定の範囲内で可変または選定することにより、RFアンテナ54内でそれらのコイル58,60,62をそれぞれ流れるコイル電流I
i,I
m,I
oを周回方向で全部同じ向きに揃えることができる。
【0051】
したがって、チャンバ10の誘電体窓52の下(内側)に生成されるドーナツ状プラズマにおいては、内側コイル58、中間コイル60および外側コイル62のそれぞれの直下の位置付近で電流密度(つまりプラズマ密度)が突出して高くなる(極大になる)。このように、ドーナツ状プラズマ内の電流密度分布は径方向で均一ではなく凹凸のプロファイルとなる。しかし、チャンバ10内の処理空間でプラズマが四方に拡散することによって、サセプタ12の近傍つまり基板W上ではプラズマの密度が均される。
【0052】
この実施形態においては、内側コイル58、中間コイル60および外側コイル62のいずれも円環状コイルであり、コイル周回方向で一様または均一な高周波電流が流れるので、コイル周回方向では常にドーナツ状プラズマ内はもちろんサセプタ12の近傍つまり基板W上でも略均一なプラズマ密度分布が得られる。
【0053】
また、径方向においては、後述するように中間コンデンサ86および外側コンデンサ88の静電容量C
86,C
88を所定の範囲内で適切な値に可変ないし選定することにより、内側コイル58、中間コイル60および外側コイル62をそれぞれ流れる電流I
i,I
m,I
oのバランスを調節して、ドーナツ状プラズマ内のプラズマ密度分布を自在に制御することができる。このことによって、サセプタ12の近傍つまり基板W上のプラズマ密度分布を自在に制御することが可能であり、プラズマ密度分布の均一化も高い精度で容易に達成することができる。
【0054】
この実施形態においては、RFアンテナ54内の波長効果や電圧降下は個々のコイル58,60,62毎にその長さに依存する。したがって、個々のコイル58,60,62で波長効果を起こさないように、各コイルの長さを選定することによって、RFアンテナ54内の波長効果や電圧降下の問題を全て解決することができる。波長効果の防止に関しては、各コイル58,60,62の長さを高周波RF
Hの1/4波長よりも短くすることが望ましい。
【0055】
このコイル長に関する1/4波長未満条件は、コイルの径が小さいほど、巻数が少ないほど、満たされやすい。したがって、RFアンテナ54内でコイル径の最も小さい内側コイル58は、複数巻きの構成を容易に採り得る。他方、コイル径の最も大きい外側コイル62は、複数巻きよりは単巻きの方が望ましい。中間コイル60は、半導体ウエハWの口径、高周波RF
Hの周波数等にも依存するが、通常は外側コイル62と同様に単巻きが望ましい。
[RFアンテナに付加されるコンデンサの機能]
【0056】
この実施形態の誘導結合型プラズマエッチング装置におけるもう一つの重要な特徴は、RFアンテナ54に付加される可変コンデンサ(特に中間コンデンサ86)の機能または作用にある。
【0057】
この実施形態の誘導結合型プラズマエッチング装置においては、中間コンデンサ86の静電容量C
86を可変することにより、中間コイル60と中間コンデンサ86との合成リアクタンス(以下「中間合成リアクタンス」と称する。)X
mを可変し、中間コイル60を流れる中間電流I
mの電流値を可変することができる。
【0058】
ここで、中間コンデンサ86の静電容量C
86には、望ましい範囲がある。すなわち、上記のように高周波給電部66に対する中間コイル60の結線が内側コイル58および外側コイル60の結線とは逆方向になっていることと関連して、中間合成リアクタンスX
mが負の値になる(中間コイル60の誘導性リアクタンスよりも中間コンデンサ86の容量性リアクタンスの方が大きくなる)ように、中間コンデンサ86の静電容量C
86を可変ないし選定するのが望ましい。別の見方をすれば、中間コイル60と中間コンデンサ86とからなる直列回路が直列共振を起こすときの静電容量よりも小さな領域内で、中間コンデンサ86の静電容量C
86を可変ないし選定するのが望ましい。
【0059】
上記のように内側コイル58および外側コイル62に対して中間コイル60が逆方向に結線されているRFアンテナ54においては、中間合成リアクタンスX
mが負の値になる領域で中間コンデンサ86の静電容量C
86を可変することによって、中間コイル60を流れる中間電流I
mが内側コイル58および外側コイル62をそれぞれ流れる内側電流I
iおよび外側電流I
oと周回方向で同じ向きになる。しかも、中間電流I
mの電流値を略ゼロから徐々に増大させることも可能であり、たとえば内側電流I
iおよび外側電流I
oの1/10以下ないしは1/5以下に選定することもできる。
【0060】
そして、このように中間電流I
mを内側電流I
iおよび外側電流I
oよりも十分小さな電流値に制御すると、この実施形態のような並列接続で同心状に配置される3つのコイル58,60,62からなるRFアンテナ54を用いる誘導結合型プラズマエッチング装置においては、チャンバ10内の直下に生成されるドーナツ状プラズマ内のプラズマ密度を精細かつ良好に均一化できることが
図4に示すような実験で確かめられている。
【0061】
この実験では、
図4Aに示すように、RFアンテナ54において、内側コイル58を直径100mmで2回巻き(2ターン)に形成し、中間コイル60および外側コイル62をそれぞれ直径200mm、300mmで単巻き(1ターン)に形成した。主なプロセス条件として、高周波RF
Hの周波数は13.56MHz、RFパワーは1500W、チャンバ10内の圧力は100mTorr、処理ガスはArとO
2の混合ガス、ガスの流量はAr/O
2=300/30sccmであった。
【0062】
この実験において、中間コンデンサ86および外側コンデンサ88の静電容量C
86,C
88を可変して、
図4Bに示すように内側コイル電流I
iを13.5A、中間コイル電流I
mを3.9A、外側コイル電流I
oを18.4Aに調節したところ、
図4Cに示すように径方向で均一なプラズマ密度分布が確かめられた。
【0063】
なお、中間コイル電流I
mを0Aにしても(中間コイル60が無い場合でも)、内側コイル58および外側コイル62のそれぞれの直下位置付近で生成されたプラズマが径方向において拡散するので、
図3の点線で示すように両コイル58,62の中間の領域でも決して低くはない(幾らか落ち込む程度の)プラズマ密度が存在する。そこで、両コイル58,62とは別にその中間に位置する中間コイル60に少量の電流I
mを両コイル58,62でそれぞれ流れる電流I
i,I
oと周回方向で同じ向きに流すと、中間コイル60の直下位置付近で誘導結合プラズマの生成が程良く増強され、プラズマ密度が径方向で均一になる。
【0064】
この実施形態では、中間コイル電流I
mの電流値を相当小さな値に制御できるように、上記のように中間コイル60を逆方向に結線し、中間コンデンサ86の静電容量C
86を中間合成リアクタンスX
mが負の値になる領域で可変するようにしている。この場合、X
m<0の領域内でC
86の値を小さくするほど、中間合成リアクタンスX
mの絶対値が大きくなって、中間電流I
mの電流値は小さくなる(ゼロに近づく)。反対に、X
m<0の領域内でC
86の値を大きくするほど、中間合成リアクタンスX
mの絶対値が小さくなって、中間電流I
mの電流値は大きくなる。
【0065】
ここで、
図5Aおよび
図5Bを参照して、中間コンデンサ86の機能をより詳しく説明する。
【0066】
図5Aは、50Ωのリアクタンスを有するコイル(結線分を含めた直径約200mmの単巻き円環状コイルに相当)に可変コンデンサを直列に接続してこの可変コンデンサの静電容量Cを20pF〜1000pFの範囲で可変したときの合成リアクタンスXの値をプロットしたものである。
図5Bは、そのときにコイルを流れる電流I
Nの値を規格化して(可変コンデンサが無いときに流れる電流に対する比の値として)プロットしたものである。
【0067】
可変コンデンサの静電容量Cが十分小さいときは、合成リアクタンスXは負の大きな値を示す。可変コンデンサの静電容量Cが増大するにつれて、合成リアクタンスXは直列共振に相当する零(Ω)を通り過ぎて大きくなり、コイルのリアクタンスの値(50Ω)に漸近していく。
【0068】
コイルを流れる電流I
Nは、1/Xに比例し、下記の式で表わされる。
【数1】
ここで、fはコイルに印加される高周波の周波数である。
【0069】
可変コンデンサの静電容量Cが十分小さいと電流I
Nも略零に近い値で負符号すなわち逆向きの電流となる。そこから、静電容量Cを増大させていくと、可変コンデンサが無いときにコイルを流れる電流と同じ大きさの電流I
Nが逆方向に流れる状態(I
N=−1)を通って、直列共振になるときの値C
Rに向かいどんどん逆向き電流I
Nの電流値が増大していく。そして、直列共振点C
Rを通り過ぎると、今度は一転して正の向きに大きな電流I
Nが流れる状態となり、そこから静電容量Cを更に大きくしていくにしたがい、可変コンデンサが無いときにコイルを流れる電流と同じ向きおよび同じ大きさの電流I
Nが流れる状態(I
N=+1)に漸近していく。
【0070】
ここで注意が必要なのは、このコイルと可変コンデンサとからなる直列回路においては、十分小さい(つまり+1より小さい)正の電流I
Nが流れるような状態は存在し得ないことである。正の向きでは必ず可変コンデンサが無いときと同等以上の大きさ(I
N≧1)でしか電流I
Nは流せない。電流I
Nを可変コンデンサが無いときよりも小さい正の値に絞りたければ、静電容量Cを直列共振点C
Rよりも小さい範囲つまり電流I
Nが逆向きになる範囲内で可変するほかない。
【0071】
そこで、この実施形態では、中間コイル60に関しては、合成リアクタンスX
mが負の値になる領域で中間コンデンサ86の静電容量C
86を可変し、かつ中間コイル電流I
mが内側コイル電流I
iおよび外側コイル電流I
oと周回方向で同じ向きに流れるように中間コイル60の結線を内側コイル58および外側コイル62の結線と逆向きにしている。これによって、内側コイル電流I
iおよび外側コイル電流I
oと周回方向で同じ向きに十分小さな中間コイル電流I
mを中間コイル60に流すことが可能となり、プラズマ密度分布を径方向で精細に均一化することができる。
【0072】
ただし、逆向きに結線する中間コイル86に流す電流I
mの選定には1つの制約がある。つまり、電気的に並列接続される複数のコイルにおいては、逆向きに結線したコイル(この実施形態では中間コイル60)には他のコイル(内側コイル58および外側コイル62)に流れる電流(I
i,I
o)と同程度の電流(I
m)を流せないという制約である。
【0073】
逆向きに結線したコイルと可変コンデンサとからなる直列回路において、合成リアクタンスが負となる条件下で可変コンデンサの静電容量を十分小さい値から大きくしていくと、それにつれて電流も増えていくが、どこかで他のコイル側の合成リアクタンスと符号が逆で値が同じになるような領域に至る。並列リアクタンス回路では電流の比がリアクタンスの逆数に比例することから考えると、これは符号が逆で同程度の電流が流れるような状態に相当する。そのような状態では並列リアクタンス回路全体が並列共振回路となり、整合器からみた負荷インピーダンスが非常に大きな値をとる。通常の整合器では、このような領域は整合の範囲を外れてしまうか、あるいはパワー伝送効率が極端に悪化する。したがって、逆向きに結線した中間コイル60には、他のコイル58,62を流れる電流と同程度の電流を流さないように留意する必要がある。
【0074】
RFアンテナ54に中間コンデンサ86と一緒に付加される外側コンデンサ88は、内側コイル58を流れる内側電流I
iと外側コイル62を流れる外側電流I
0とのバランスを調整するために機能する。上記のように、中間コイル60を流れる中間電流I
mは通常少量であり、高周波給電部66からRFアンテナ54に供給される高周波電流の大部分が内側コイル58と外側コイル62とに分かれて流れる。ここで、外側コンデンサ88の静電容量C
88を可変することにより、外側コイル62と外側コンデンサ88との合成リアクタンス(以下「外側合成リアクタンス」と称する。)Z
oを可変し、ひいては内側電流I
iと外側電流I
oとの間の分配比を調節することができる。
【0075】
内側コイル58および外側コイル62はどちらも順方向に結線されているので、周回方向で内側電流I
iと外側電流I
oを同じ向きにするには、外側合成リアクタンスX
oが正の値になる領域で外側コンデンサ88の静電容量C
88を可変すればよい。この場合、X
o>0の領域内でC
88の値を小さくするほど、外側合成リアクタンスX
oの値が小さくなって、外側電流I
oの電流量が相対的に大きくなり、そのぶん内側電流I
iの電流量が相対的に小さくなる。反対に、X
o>0の領域内でC
88の値を大きくするほど、外側合成リアクタンスX
oの値が大きくなって、外側電流I
oの電流量が相対的に小さくなり、そのぶん内側電流I
iの電流量が相対的に大きくなる。
【0076】
なお、外側コンデンサ88に代えて、内側コイル58にコンデンサを直列接続する構成、つまり内側コンデンサを設ける構成も考えられる。しかしながら、RFアンテナ54にコンデンサを一切付加しない場合は、コイル径に比例してインピーダンス(特にリアクタンス)の最も低い内側コイル58に電流が集中して流れ、ドーナツ状プラズマ内のプラズマ密度は中心部が突出して高くなりやすい。内側コンデンサを付加することは、内側コイル58への電流の集中を強めるだけであり、したがって内側コイル電流I
iと外側コイル電流I
oとのアンバランスを拡大するだけであり、プラズマ密度分布の制御の上で望ましくない。
【0077】
このように、この実施形態の誘導結合型プラズマエッチング装置においては、外側コンデンサ88の静電容量C
88を可変することにより、内側コイル58を流れる内側電流I
iと外側コイル62を流れる外側電流I
0とのバランスを任意に調節することができる。また、上述したように、中間コンデンサ86の静電容量C
86を可変することにより、中間コイル60を流れる中間電流I
mと内側電流I
iおよび外側電流I
0とのバランスを任意に調節することができる。
[RFアンテナに関する他の実施例または変形例]
【0078】
上記した実施形態では、中間コンデンサ86および外側コンデンサ88を中間コイル60および外側コイル62のRF出口端60out,62outとアースライン70側の第2ノードN
Bとの間にそれぞれ接続した。一変形例として、
図6に示すように、高周波電源72側の第1ノードN
Aと中間コイル60および外側コイル62のRF入口端60in,62inとの間に中間コンデンサ86および外側コンデンサ88をそれぞれ接続する構成も可能である。
【0079】
別の実施例として、
図7に示すように、第1ノードN
Aと第2ノードN
Bとの間で中間コイル60の結線を逆方向および順方向のいずれにも切り換えられるようにするための切換スイッチ110を設ける構成も可能である。図示の構成例では、中間コイル60の両端60a,60bに切換スイッチ110の2つの可動接点110a,110bがそれぞれ接続されている。第1の可動接点110aは、高周波電源72側の第1ノードN
Aに接続されている第1の電源側固定接点110cと、アースライン70側の第2ノードN
Bに接続されている第1のアース側固定接点110dとの間で切換可能となっている。第2の可動接点110bは、高周波電源72側の第1ノードN
Aに接続されている第2の電源側固定接点110eと、アースライン70側の第2ノードN
Bに接続されている第2のアース側固定接点110fとの間で切換可能となっている。
【0080】
かかる構成において、第1および第2の可動接点110a,110bを第1の電源側固定接点110cおよび第2のアース側固定接点110fにそれぞれ切り換えると、中間コイル60は逆方向に結線される。第1および第2の可動接点110a,110bを第1のアース側固定接点110dおよび第2の電源側固定接点110eにそれぞれ切り換えると、中間コイル60は順方向に結線される。
【0081】
また、別の実施例として、
図8に示すように、逆方向に結線される第1の中間コイル60Aと順方向に結線される第2の中間コイル60Bとを併有する構成も可能である。この場合も、第1ノードN
Aと第2ノードN
Bとの間で、第1および第2の中間コイル60A,60Bとそれぞれ直列接続で第1および第2の中間コンデンサ86A,86Bを設ける構成が好ましい。
【0082】
この実施例において、内側コイル電流I
iおよび外側コイル電流I
oと同程度ないしそれ以上大きな中間コイル電流I
m(I
mA+I
mB)が必要な場合には、順方向側の第2の中間コンデンサ86Bの静電容量C
86Bを大きい値から直列共振点C
Rに向かって調節し、逆方向側の第1の中間コンデンサ86Aの静電容量C
86Aを最小値付近に合わせる。逆に、内側コイル電流I
iおよび外側コイル電流I
oよりも十分小さい中間コイル電流I
m(I
mA+I
mB)が必要な場合には、第2の中間コンデンサ86Bの静電容量C
86Bを最小値付近に合わせ、第1の中間コンデンサ86Aの静電容量C
86Aを最小値と直列共振点C
Rとの間で調節する。
【0083】
図9Aには、RFアンテナ54を構成するコイル(内側コイル54/中間コイル60/外側コイル62)の各々が空間的かつ電気的に並列な関係にある一対のスパイラルコイルからなる例を示す。波長効果がそれほど問題にならない場合は、このようなスパイラルコイルを使用してもよい。
【0084】
図示の構成例において、内側コイル58は、周回方向で180°ずらして並進する一対のスパイラルコイル58a,58bからなる。これらのスパイラルコイル58a,58bは、高周波電源72側のノードN
Aよりも下流側に設けられたノードN
Cとアースライン70側のノードN
Bよりも上流側に設けられたノードN
Dとの間で電気的に並列に接続されている。
【0085】
中間コイル60は、周回方向で180°ずらして並進する一対のスパイラルコイル60a,60bからなる。これらのスパイラルコイル60a,60bは高周波電源72側のノードN
Aよりも下流側に設けられたノードN
Eとアースライン側のノードN
Bよりも(さらには中間コンデンサ86よりも)上流側に設けられたノードN
Fとの間で電気的に並列に接続されている。
【0086】
外側コイル62は、周回方向で180°ずらして並進する一対のスパイラルコイル62a,62bからなる。これらのスパイラルコイル62a,62bは高周波電源72側のノードN
Aよりも下流側に設けられたノードN
Gとアースライン70側のノードN
Bよりも(さらには外側コンデンサ88よりも)上流側に設けられたノードN
Hとの間で電気的に並列に接続されている。
【0087】
このように並列スパイラルコイルを用いる場合でも、内側コイル58および外側コイル62は順方向に結線され、中間コイル60は逆方向に結線される。すなわち、第1ノードN
AからノードN
Bまで各々の高周波分岐伝送路を一筆書きで廻った場合、内側コイル58(58a,58b)および外側コイル62(62a,62b)をそれぞれ通るときの向きは
図9Aで時計回りになるのに対して、中間コイル60(60a,60b)を通るときの向きは
図9Aで反時計回りになる。
【0088】
この実施例においても、
図9Bに示すように、中間コンデンサ86および外側コンデンサ88を高周波電源72側に設ける構成、より詳細にはノードN
AとノードN
E,N
Gとの間にそれぞれ接続する構成も可能である。
【0089】
この実施形態のRFアンテナ54を構成する各コイル58,60,62のループ形状は円形に限るものではなく、被処理体の形状等に応じて、たとえば
図15Aおよび
図15Bに示すような四角形であってもよい。このようにコイル58,60,62のループ形状が多角形である場合でも、図示のように内側コイル58および外側コイル62に対して中間コイル60を逆方向で結線し、可変の中間コンデンサ86および可変の外側コンデンサ88を備える構成が好ましい。なお、コイルの断面形状は矩形に限らず、円形、楕円形などでもよく、単線に限らず撚線であってもよい。
【0090】
また、図示省略するが、RFアンテナ54において、内側コイル58の径方向内側および/または外側コイル62の径方向外側に更に別のコイルを配置し、全体で4つ以上のコイルを並列接続する構成も可能である。あるいは、内側コイル58を省いて中間コイル60と外側コイル62だけの構成(この場合は中間コイル60が相対的には内側のコイルになる構成)も可能である。さらには、外側コイル62を省いて内側コイル58と中間コイル60だけの構成(中間コイル60が相対的には外側のコイルになる構成)も可能である。この場合、内側コイル58と直列に可変の内側コンデンサを接続するのが好ましい。
【0091】
また、必要に応じて、中間コンデンサ86の静電容量C
86を中間合成リアクタンスX
mが正の値になる領域で可変することも可能である。この場合、中間コイル60を流れる中間コイル電流I
mは内側コイル58および外側コイル62内でそれぞれ流れる内側コイル電流I
iおよび外側コイル電流I
oと周回方向で逆の向きになる。これは、中間コイル60の直下付近でプラズマ密度を意図的に低減したい場合に有用である。
【0092】
さらには、RFアンテナ54に付加するコンデンサの一部(中間コンデンサ86も含めて)を固定コンデンサまたは半固定コンデンサとすることも可能であり、RFアンテナ54に中間コンデンサ86だけを付加する構成も可能である。
【0093】
上述した実施形態における誘導結合型プラズマエッチング装置の構成は一例であり、プラズマ生成機構の各部はもちろん、プラズマ生成に直接関係しない各部の構成も種種の変形が可能である。
【0094】
たとえば、RFアンテナの基本形態として、平面型以外のタイプたとえばドーム型等も可能である。処理ガス供給部においてチャンバ10内に天井から処理ガスを導入する構成も可能であり、サセプタ12に直流バイアス制御用の高周波RF
Lを印加しない形態も可能である。
【0095】
さらに、本発明による誘導結合型のプラズマ処理装置またはプラズマ処理方法は、プラズマエッチングの技術分野に限定されず、プラズマCVD、プラズマ酸化、プラズマ窒化、スパッタリングなどの他のプラズマプロセスにも適用可能である。また、本発明における被処理基板は半導体ウエハに限るものではなく、フラットパネルディスプレイ用の各種基板や、フォトマスク、CD基板、プリント基板等も可能である。