(54)【発明の名称】めっきプロセス用プライマー層、めっきプロセス用プライマー層付き積層板及びその製造方法、めっきプロセス用プライマー層付き多層配線板及びその製造方法
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(A)エポキシ樹脂、(B)エポキシ樹脂硬化剤、(C)耐熱樹脂、及び(D)無機充填材の合計配合量中の(C)耐熱樹脂の配合割合が3〜30質量%である請求項1〜6のいずれか1項に記載のめっきプロセス用プライマー層。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、ガラスクロスを含むプリプレグにめっき銅との高接着性を有するプライマー層を設けることにより、高剛性・低熱膨張等の基材の性質を維持したまま、めっき銅との良好な接着性を確保できるめっきプロセス対応の積層板及び多層板を作製可能であることをこれまでに見出した。
【0009】
しかしながら、プライマー層とガラスクロス入り基材とは、異種材料の組合せであるため、レーザ加工によりプライマー層と界面付近でガラスクロス入り基材の一部がえぐれてしまう問題が生じた。
具体的には、
図1に示すように、基板10上に回路となる導電層12が形成されたてなり、その上にガラスクロス入り基材14であるプリプレグとプライマー層16とが順次形成された積層板20にレーザ加工を施すと、ガラスクロス入り基材14の上部でプライマー層16との界面付近がえぐれてしまい、プライマー層の一部がひさしのように突出してしまうアンダーカット部18が発生してしまうといった問題が生じた。
このようなアンダーカットが生じると、無電解めっき時にアンダーカット部分にボイドができやすく、電気的な信頼性を低下させるという問題が生じる。
【0010】
以上から、本発明は、粗化処理後の表面粗さが小さく、かつめっき銅との良好な接着性を確保しつつ、レーザ加工の際にアンダーカットが生じない、めっきプロセス用プライマー層付き多層配線板を製造することが可能な、プライマー層及び当該プライマー層を有するめっきプロセス用プライマー層付き積層板、並びにめっきプロセス用プライマー層付き多層配線板を提供することを目的とする。また、当該めっきプロセス用プライマー層付き積層板の製造方法、めっきプロセス用プライマー層付き多層配線板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らはこのような問題を解決するために研究を進めた結果、プライマー層とガラスクロス入り基材と間でのレーザ加工性の違いが生じる原因は、ガラスクロス入り基材は無機充填材を高充填していることにより、プライマー層と比較して熱伝導率が高く、レーザのエネルギーが効率良く伝播してしまうためであると推測した。プライマー層とガラスクロス入り基材とのレーザ加工性を同等にするためには、プライマー層にも無機充填材を含有することが有効であると考えられるが、プライマー層は厚さ10μm以下の薄い層であることや、粗化後の表面粗さの観点から、ガラスクロス入り基材に用いられるような粒径の大きな無機充填材は好ましくないと考えた。そこで、比表面積が20m
2/g以上の無機充填材を所定量用いれば、粗化処理後の表面粗さが小さく、かつめっき銅との良好な接着性を確保しつつ、レーザ加工性が向上することが分かり、本発明に想到した。すなわち本発明は、下記の通りである。
【0012】
[1] (A)エポキシ樹脂、(B)エポキシ樹脂硬化剤、(C)ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミドからなる群から選ばれる耐熱樹脂、(D)比表面積が20m
2/g以上の無機充填材を含有し、(D)無機充填材の含有量が1〜10質量%であり、ガラスクロス入り基材上に形成される、めっきプロセス用プライマー層。
[2] 厚みが1〜10μmである[1]に記載のめっきプロセス用プライマー層。
[3] (A)エポキシ樹脂が、多官能エポキシ樹脂である[1]又は[2]に記載のめっきプロセス用プライマー層。
[4] (A)エポキシ樹脂が、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂である[1]〜[3]のいずれかに記載のめっきプロセス用プライマー層。
[5] (B)エポキシ樹脂硬化剤が、フェノール系硬化剤である[1]〜[4]のいずれかに記載のめっきプロセス用プライマー層。
[6] (C)耐熱樹脂であるポリアミドが、ポリブタジエンとの共重合体である[1]〜[5]のいずれかに記載のめっきプロセス用プライマー層。
[7] (A)エポキシ樹脂、(B)エポキシ樹脂硬化剤、(C)耐熱樹脂、及び(D)無機充填材の合計配合量中の(C)耐熱樹脂の配合割合が、全質量中の3〜30質量%である[1]〜[6]のいずれかに記載のめっきプロセス用プライマー層。
[8] (D)無機充填材が、ヒュームドシリカ及び/又はコロイダルシリカである[1]〜[7]のいずれかに記載のめっきプロセス用プライマー層。
[9] (D)無機充填材が、表面処理を施されているシリカフィラーである[1]〜[8]のいずれかに記載のめっきプロセス用プライマー層。
[10] 支持体を有する[1]〜[9]いずれかに記載のめっきプロセス用プライマー層。
【0013】
[11] ガラスクロス入り基材の片面又は両面に、[1]〜[9]のいずれかに記載のめっきプロセス用プライマー層が設けられているめっきプロセス用プライマー層用付き積層板。
[12] ガラスクロス入り基材の両面又は片面に、[10]に記載のめっきプロセス用プライマー層を重ね、さらに鏡板を重ねて加熱及び加圧する、めっきプロセス用プライマー層付き配線板用積層板の製造方法。
【0014】
[13] 回路加工した配線板の両面又は片面に、ガラスクロス入り基材と、[1]〜[9]のいずれかに記載のめっきプロセス用プライマー層とがこの順に積層されてなるめっきプロセス用プライマー層付き多層配線板。
[14] 回路加工した配線板の両面に、ガラスクロス入り基材と、[10]に記載のプロセス用プライマー層とをこの順に重ね、さらに鏡板を重ねて加熱及び加圧する、めっきプロセス用プライマー層付き多層配線板の製造方法。
【0015】
ここで、本発明でいうめっきプロセスに用いられるプライマー層とは、例えば、多層配線板を製造する際に、回路層間に積層されるプリプレグや絶縁樹脂等の表面にめっきにより導体層を形成する際に用いられる薄い層で、この形成された薄い層の上にめっきを施すことにより、めっきにより形成された導体層のプリプレグや絶縁樹脂層に対する接着性を高め、形成された回路の電気的信頼性を確保するために設けられる層である。さらに、この層を設けることにより、層間の絶縁信頼性も向上する。なお、上記プライマー層は接着補助層といわれる場合がある。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、粗化処理後の表面粗さが小さく、かつめっき銅との良好な接着性を確保しつつ、レーザ加工の際にアンダーカットが生じない、めっきプロセス用プライマー層付き多層配線板を製造することが可能な、プライマー層及び当該プライマー層を有するめっきプロセス用プライマー層付き積層板、並びにめっきプロセス用プライマー層付き多層配線板を提供することができる。また、当該めっきプロセス用プライマー層付き積層板の製造方法、めっきプロセス用プライマー層付き多層配線板の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のめっきプロセスに用いられるプライマー層は、ガラスクロス入り基材と一括積層されるものであり、(A)エポキシ樹脂、(B)エポキシ樹脂硬化剤、(C)ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミドからなる群から選ばれる耐熱樹脂、(D)比表面積が20m
2/g以上の無機充填材を含有し、(D)無機充填材がプライマー層中に1〜10質量%含有されてなる。
ここで、ガラスクロス入り基材とは、配線板の作製に使用される半硬化状態のプリプレグが挙げられる。
【0019】
本発明のプライマー層は、例えば半硬化状態のプリプレグと積層され、プライマー層とプリプレグの界面が一体化される。従って、プリプレグと積層する際には、プライマー層は未反応の(A)エポキシ樹脂と(B)エポキシ樹脂硬化剤とが若干残った状態、いわゆる半硬化の状態(Bステージ)とすることが必要である。
【0020】
本発明のプライマー層に用いることができる(D)無機充填材としては、シリカ、アルミナ、硫酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、ホウ酸アルミニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム等が挙げられる。中でも、シリカが好ましい。
【0021】
無機充填材の粒径は、層間絶縁層上に微細配線を形成する観点から小さいことが必須で、比表面積が20m
2/g以上であることを必要とする。また、比表面積が20m
2/gより小さいとレーザ加工の際にプライマー層の界面付近でのアンダーカットの発生が生じやすくなる。これに対し、比表面積が20m
2/g以上の場合、無機充填材とプライマー樹脂との界面の面積が大きくなり、レーザ加工の際に熱を効率よく伝播することができるため、アンダーカット抑制効果が良好に発現する。比表面積は、30〜150m
2/gであることが好ましく、50〜130m
2/g以上であることがより好ましい。
【0022】
本発明に係る(D)無機充填材は、特に球形である必要はない。そのため、比表面積の規定が必要となる。
【0023】
比表面積は、この分野におけるメーカーが良く用いている方法で求めることが好ましく、BET法等がある。比表面積分析として、たとえば、粉体粒子表面に、吸着占有面積の分かった分子を液体窒素の温度で吸着させ、その量から試料の比表面積を求める方法がある。比表面積分析で、最も良く利用されているのが、不活性気体の低温低湿物理吸着によるBET法である。
【0024】
また、耐湿性を向上させるために、シランカップリング剤等の表面処理剤で表面処理している無機充填材であることが好ましい。また、分散性を向上させるために、疎水性化処理をしているものが好ましい。
【0025】
プライマー層中の(D)無機充填材の含有量は、1〜10質量%であり、4〜7質量%であることが好ましく、5〜6質量%であることがより好ましい。
含有量が1質量%未満であると、ガラスクロス入り基材との熱伝導率差が大きく、レーザ加工の際にアンダーカットが生じてしまうため好ましくない。また、含有量が10質量%を超えると、粗化処理後の表面形状が形成できなくなり、めっき特性が低下することに加え、層間の絶縁信頼性が低下するため好ましくない。また、接着強度が低下することもある。
【0026】
例えば、日本アエロジル株式会社製のヒュームドシリカであるAEROSIL R972(商品名)であると、比表面積は110±20m
2/g(カタログ値)であり、同社のAEROSIL R202であると、比表面積は100±20m
2/g(カタログ値)であり好ましい。また、上記日本アエロジル株式会社製以外の材料としては、PL−1(扶桑化学社製、商品名、181m
2/g)、PL−7(扶桑化学社製、商品名、36m
2/g)等がある。
一方で、アドマテックス社製の球状シリカは例えば同社のSO−C1(商品名)であると、17m
2/g(カタログ値)であり、酸化剤による粗化処理後の表面形状が大きくなるため、好ましくない。
【0027】
これらの無機充填材は、1種類のみでも構わなく、2種類以上の無機充填材を併用して使用しても構わない。
【0028】
さらに、樹脂の伸び性を向上させるために、架橋有機フィラー等を添加しても良い。架橋有機フィラー等は、どのようなものでもよいが、例えばアクリロニトリルブタジエンの共重合物として、アクリロニトリルとブタジエンとを共重合した架橋NBR粒子や、アクリロニトリルとブタジエンとアクリル酸等のカルボン酸とを共重合したもの、ポリブタジエン、NBR、シリコーンゴムをコアとしアクリル酸誘導体をシェルとした、いわゆるコア−シェルゴム粒子も使用可能である。
【0029】
例えば、架橋有機フィラーの市販品としては、ブタジエンゴム−アクリル樹脂のコアシェル粒子であるロームアンドハース株式会社製のパラロイドEXL2655や架橋シリコーンゴム−アクリル樹脂のコア−シェルゴム粒子である旭化成ワッカーシリコーン(株)製GENIOPERL P52等がある。
これらのポリマーは、樹脂組成物の全固形分中の配合量が0〜10質量%であることが好ましい。10質量%以下とすることで、耐薬品性を良好に維持し、耐熱性等のめっき特性の低下を抑制することができる。
【0030】
さらに、本発明におけるプライマー層用樹脂組成物には、通常の樹脂組成物に使用されるチキソ性付与剤、界面活性剤、カップリング剤等の各種添加剤を適宜配合できる。
【0031】
本発明のプライマー層を形成するための樹脂組成物に用いることができる(A)エポキシ樹脂としては、多官能エポキシ樹脂であることが好ましく、フェノールノボラック型エポキシ樹脂や、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、アラルキル型エポキシ樹脂等が挙げられる。特にエポキシ樹脂として、アラルキルノボラック型エポキシ樹脂を含むことが好ましい。本発明におけるアラルキルノボラック型エポキシ樹脂は、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(例えば、アラルキルノボラック型エポキシ樹脂)であることが好ましい。ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂であれば、樹脂の強靭化、高伸び率化により銅との接着性がさらに向上する。
ビフェニル構造を有するノボラック型エポキシ樹脂とは、分子中にビフェニル誘導体の芳香族環を含有したアラルキルノボラック型のエポキシ樹脂をいい、例えば、下記式(1)で示されるエポキシ樹脂が挙げられる。これらは単独でも、2種以上を組み合せて用いてもよい。
【0032】
【化1】
(式(1)中、pは1〜5を示す)
【0033】
市販品としては、日本化薬株式会社製のNC−3000(pが1.7の式(1)のエポキシ樹脂)、NC−3000−H(pが2.8の式(1)のエポキシ樹脂)が挙げられる。
【0034】
(A)エポキシ樹脂の配合量は、溶剤を除いた絶縁樹脂組成物の全固形分((A)エポキシ樹脂、(B)エポキシ樹脂硬化剤、(C)耐熱樹脂、及び(D)無機充填材の合計配合量)中の割合で20〜80質量%であることが好ましく、30〜60質量%であることがより好ましい。(A)成分の配合量が、20質量%以上であることで回路導体との接着強度を良好な状態とすることができ、80質量%以下であることではんだ耐熱性良好な状態とすることができる。
【0035】
本発明のプライマー層用樹脂組成物に用いることができる(B)エポキシ樹脂硬化剤には、各種フェノール樹脂類、酸無水物類、アミン類、ヒドラジット類等が使用できる。フェノール樹脂類としては、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂等が使用でき、酸無水物類としては、無水フタル酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、メチルハイミック酸等が使用でき、アミン類として、ジシアンジアミド、ジアミノジフェニルメタン、グアニル尿素等が使用できる。信頼性を向上させるためには、ノボラック型フェノール樹脂であることが好ましい。
【0036】
エポキシ樹脂硬化剤は、エポキシ基に対して0.5〜1.5当量であることが好ましい。エポキシ樹脂硬化剤がエポキシ基に対して0.5〜1.5当量であることで、外層銅との接着性の低下を防ぎ、かつTg(ガラス転移温度)や絶縁性の低下をも防ぐことができる。
【0037】
(C)耐熱樹脂としてのポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミドの製造に使用するジアミンとしては、芳香族ジアミンでも脂肪族ジアミンでも良く、芳香族ジアミンの具体例としては、ジアミノベンゼン、ジアミノトルエン、ジアミノフェノール、ジアミノジメチルベンゼン、ジアミノメシチレン、ジアミノニトロベンゼン、ジアミノジアゾベンゼン、ジアミノナフタレン、ジアミノビフェニル、ジアミノジメトキシビフェニル、ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノジメチルジフェニルエーテル、メチレンジアミン、メチレンビス(ジメチルアニリン)、メチレンビス(メトキシアニリン)、メチレンビス(ジメトキシアニリン)、メチレンビス(エチルアニリン)、メチレンビス(ジエチルアニリン)、メチレンビス(エトキシアニリン)、メチレンビス(ジエトキシアニリン)、イソプロピリデンジアニリン、ジアミノベンゾフェノン、ジアミノジメチルベンゾフェノン、ジアミノアントラキノン、ジアミノジフェニルチオエーテル、ジアミノジメチルジフェニルチオエーテル、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノジフェニルスルホキシド、ジアミノフルオレン等が挙げられる。
【0038】
脂肪族ジアミンの具体例としては、エチレンジアミン、プロパンジアミン、ヒドロキシプロパンジアミン、ブタンジアミン、ヘプタンジアミン、ヘキサンジアミン、ジアミノジエチルアミン、ジアミノプロピルアミン、シクロペンタンジアミン、シクロヘキサンジアミン、アザペンタンジアミン、トリアザウンデカジアミン等が挙げられる。これら芳香族及び脂肪族ジアミンは、1種のみを用いてもよく、2種以上を混合しても良い。
【0039】
本発明において、ポリアミドの製造に使用するジカルボン酸としては、芳香族ジカルボン酸でも脂肪族ジカルボン酸でも両末端にカルボキシル基を有するオリゴマーでも良い。
【0040】
芳香族ジカルボン酸のうち、フェノール性水酸基を含有しないジカルボン酸の具体例としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、メチレン二安息香酸、チオ二安息香酸、カルボニル二安息香酸、スルホニル二安息香酸、ナフタレンジカルボン酸等が、また、フェノール性水酸基含有のジカルボン酸としては、ヒドロキシイソフタル酸、ヒドロキシフタル酸、ヒドロキシテレフタル酸、ジヒドロキシイソフタル酸、ジヒドロキシテレフタル酸等が挙げられる。
【0041】
脂肪族ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、メチルマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、りんご酸、酒石酸、(メタ)アクリロイルオキシコハク酸、ジ(メタ)アクリロイルオキシコハク酸、(メタ)アクリロイルオキシりんご酸、(メタ)アクリルアミドコハク酸や、(メタ)アクリルアミドりんご酸等が挙げられる。
【0042】
両末端にカルボキシル基を有するオリゴマーは、数平均分子量200〜10000、好ましくは数平均分子量500〜5000のオリゴマーであり、その具体例としては、両末端にカルボキシル基を持ったポリブタジエン、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリイソプレン、エチレンプロピレン共重合体、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリウレタンやシリコーンゴム等が挙げられる。これら芳香族、脂肪族及び両末端にカルボキシル基を有するオリゴマーは、1種のみを用いてもよく、2種以上を混合しても良い。
【0043】
耐熱樹脂であるポリアミドが、ポリブタジエンとの共重合体(ポリブタジエン変性ポリアミド樹脂)であればめっき銅との接着性がさらに向上する。このようなポリブタジエン変性ポリアミド樹脂は、ジアミンとフェノール性水酸基含有のジカルボン酸とフェノール性水酸基を含有しないジカルボン酸とをN−メチル−2−ピロリドン(NMP)等の有機溶媒中で、触媒として亜リン酸エステルとピリジン誘導体の存在下でカルボン基とアミノ基とを重縮合させることにより合成されるフェノール性水酸基含有ポリアミドが挙げられる。但し、これらの割合が多い場合、樹脂全体のTg及び耐薬品性が低下し、耐熱性に悪影響を及ぼしてしまうため、これらが影響しない程度の割合を維持する必要がある。
このようなポリアミド樹脂は、例えば、フェノール性水酸基含有ポリアミド樹脂の市販品としては日本化薬株式会社製のBPAM−155が挙げられる。
【0044】
本発明において、ポリアミドイミドは、例えば、無水トリメリット酸と芳香族ジイソシアネートとの反応による、いわゆるイソシアネート法で合成されるポリアミドイミドが挙げられる。ポリアミドイミドを合成するイソシアネート法の具体例としては、芳香族トリカルボン酸無水物と上記ジアミン化合物とをジアミン化合物過剰存在下で反応させ、次いでジイソシアネートを反応させる方法(例えば、特許2897186号公報に記載の方法)、芳香族ジアミン化合物と無水トリメリット酸とを反応させる方法(例えば、特開平04−182466号公報に記載の方法)が挙げられる。
【0045】
ポリアミドイミド樹脂としては、東洋紡績株式会社製のバイロマックスHR11NN及びバイロマックスHR16NN等が挙げられる。
【0046】
本発明において、ポリイミドは、現在工業的に利用されているもっとも一般的な合成法で合成してもよい。例えばテトラカルボン酸2無水物と上記ジアミンを原料に等モルで 重合させ、ポリイミドの前駆体であるポリアミック酸を得た後、200℃以上の加熱又は 触媒を用いて脱水・環化反応を進め、ポリイミドを得る。触媒を用いる場合はアミン系化合物が多く用いられ、イミド化によって発生した水を速やかに除去するための脱水剤としてカルボン酸無水物を併用する場合もある。
【0047】
ポリイミド樹脂としては、日本理化株式会社製のリカコ−トSN20及びリカコートPN20等が挙げられる。
【0048】
また、この(C)成分の配合割合は、(A)エポキシ樹脂、(B)エポキシ樹脂硬化剤、(C)耐熱樹脂、及び(D)無機充填材の合計配合量中の3〜30質量%であることが好ましく、10〜20質量%であることがより好ましい。3質量%以上であることで、樹脂の強靭性を良好な状態とし、さらに緻密な粗化形状が得られやすくなり、めっき銅との接着力を向上させることができる。また、30質量%以下であることで、耐熱性が低下することを防ぐことができる。
なお、(C)成分は各々単独で用いても良く、2種類以上を組合せて用いても構わない。
【0049】
本発明のプライマー層を形成するためのプライマー層用樹脂組成物は、(A)〜(D)の成分に、必要に応じ、他の成分を加え、これらを充分に撹拌、混合した後、泡がなくなるまで静置して得られる。
なお、プライマー層用樹脂組成物に含有する無機充填材を均一に分散させることを目的に、ニーダー、ボールミル、ビーズミル、3本ロール、ナノマイザー等既知の混練・分散方法を用いても良い。
【0050】
本発明におけるプライマー層用の樹脂組成物は溶剤中で混合して希釈又は分散させてワニスの形態とするのが作業性の点で好ましい。この溶剤には、メチルエチルケトン、キシレン、トルエン、アセトン、エチレングリコールモノエチルエーテル、シクロヘキサノン、エチルエトキシプロピオネート、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等を使用できる。これらの溶剤は、単独あるいは混合系でも良い。この溶剤の前記樹脂組成物に対する割合は、従来使用している割合でよく、プライマー層用樹脂組成物の塗膜形成の設備にあわせてその使用量を調整する。一方、分散調製した後、上記の溶剤により、プライマー層用の樹脂組成物をさらに希釈又は分散し、ワニスを調製することもできる。
【0051】
次いで、得られたプライマー層用の樹脂組成物のワニスを用いて、支持体となる銅箔や樹脂フィルム上に塗工し、乾燥することにより、プライマー層付きの銅箔や樹脂フィルムが得られ、このプライマー層を、プリプレグ等のガラスクロス入り基材に積層することでプライマー層付き配線板用積層板やプライマー層付き多層配線板を得ることができる。そして、このプライマー層付き配線板用積層板やプライマー層付き多層配線板のプライマー層の上に無電解めっきや電解めっきによりめっき層を設け、回路を形成することで多層配線板を製造することができる。
【0052】
プライマー層を作製する方法はどのようなものでも良いが、例としてはコンマコータ、グラビアコータ、ダイコータ等を用いて支持体に塗布乾燥する方法がある。また、プライマー層の厚みは1〜10μmであることが好ましく、3〜5μmであることがより好ましい。厚みが1〜10μmであることで低CTE等のガラスクロス入り基材の特性を維持しつつ、良好なめっき特性を発現することができる。
【0053】
また、このようにして得られるプライマー層付きの銅箔や樹脂フィルムのプライマー層は、Bステージのプリプレグ等と接着させる必要があるため、半硬化の状態、いわゆるBステージ状態にあることが好ましく、この硬化度を制御することも重要である。硬化度は樹脂組成物によっても異なるが、示差走査熱量計等でも測定できる。
【0054】
ガラスクロス入り基材であるプリプレグは、どのようなものでもよい。一般にはエポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤、硬化促進剤、溶剤と無機フィラーを混合し、積層板用ガラスクロスに含浸・乾燥させて得られる。市販品としては、日立化成工業(株)製GEA−679FG、GEA−679GT等があるが、どのようなものでも構わない。
【0055】
本発明のプライマー層付き配線板用積層板は、ガラスクロス入り基材の両面又は片面に、めっきプロセス用プライマー層を重ね、その後鏡板を重ねてプレス成型することにより加圧及び加熱して硬化させた後、樹脂フィルムや銅箔のような支持体を剥離あるいはエッチング等で除去して得ることができる。
【0056】
また、本発明のプライマー層付き多層配線板は、回路加工した配線板(内層回路板)の両面にガラスクロス入り基材と、本発明のプロセス用プライマー層とをこの順に重ね、その後鏡板を重ねてプレス成型することにより加圧・加熱して硬化させた後、樹脂フィルムや銅箔のような支持体を剥離あるいはエッチング等で除去して得ることができる。成形条件は用いるプリプレグの種類によって異なるが、加圧積層条件は、通常0.5〜20MPaが好ましく、加熱温度は180〜230℃程度である。
【0057】
さらに、本発明のプライマー層付き多層配線板は、回路加工した内層板(内層回路板)の上下に真空ラミネーターに対応した配線板用プリプレグを配置し、その上にPETフィルムを支持体としためっきプロセス用プライマー層をPETフィルムが外側になるように重ね、真空ラミネーターを用いて積層し、その後、PETフィルムを剥離して乾燥機で180℃程度に加熱して得ることもできる。
【0058】
内層回路板は、例えば、第一の回路層(内層配線)が表面に形成された内層基板であり、内層基板として、通常の配線板において用いられている公知の積層板、例えば、ガラス布−エポキシ樹脂、紙−フェノール樹脂、紙−エポキシ樹脂、ガラス布・ガラス紙−エポキシ樹脂等が使用でき特に制限はない。また、ビスマレイミド−トリアジン樹脂を含浸させたBT基板、さらにはポリイミドフィルムを基材として用いたポリイミドフィルム基板等も用いることができる。
【0059】
また、回路を形成するための方法についても特に制限はなく、銅箔と前記絶縁基板を張り合わせた銅張り積層板を用い、銅箔の不要な部分をエッチング除去するサブトラクティブ法や、前記絶縁基板の必要な個所に無電解めっきによって回路を形成するアディティブ法等、公知の配線板の製造方法を用いることができる。
【0060】
次に、必要に応じて回路層の表面を接着性に適した状態に表面処理する。この手法も、特に制限はなく、例えば、次亜塩素酸ナトリウムのアルカリ水溶液により回路層1の表面に酸化銅の針状結晶を形成し、形成した酸化銅の針状結晶をジメチルアミンボラン水溶液に浸漬して還元するなど公知の製造方法を用いることができる。
【0061】
次いで、内層回路の上に設けられたプライマー層付き配線板用積層板又はプライマー層付き多層配線板のプライマー層を用い、これらのプライマー層の上に、めっき法により外層回路を形成する。外層回路の形成では、まず、プライマー層を粗化処理するのが好ましい。粗化液としては、クロム/硫酸粗化液、アルカリ過マンガン酸粗化液、フッ化ナトリウム/クロム/硫酸粗化液、ホウフッ酸粗化液などの酸化性粗化液を用いることができる。粗化処理としては、例えば、先ず膨潤液として、ジエチレングリコールモノブチルエーテルとNaOHとの水溶液を80℃に加温して積層板又は多層配線板を5分間浸漬処理する。次に、粗化液として、KMnO
4とNaOHとの水溶液を80℃に加温して10分間浸漬処理する。引き続き、中和液、例えば塩化第一錫(SnCl
2)の塩酸水溶液に室温で5分間浸漬処理し、KMnO
4を還元する。
【0062】
粗化処理後、パラジウムを付着させるめっき触媒付与処理を行う。めっき触媒処理は、塩化パラジウム系のめっき触媒液に浸漬して行われる。次に、無電解めっき液に浸漬してプライマー層の表面全面に厚さが0.1〜1.5μmの無電解めっき層(導体層)を析出させる。必要により、更に電気めっきを行って必要な厚さとする。無電解めっきに使用する無電解めっき液は、公知の無電解めっき液を使用することができ、特に制限はない。また、電気めっきについても公知の方法によることができ特に制限はない。これらのめっきは銅めっきであることが好ましい。さらに不要な箇所をエッチング除去して回路層を形成することができる。更に同様の工程を繰り返して層数の多い多層配線板を製造できる。
【0063】
なお、粗化処理はレーザビアのスミアを除去するためにも行われるため、粗化条件に関しては使用したガラスクロス入り基材のスミア除去性を考慮して選んでよい。
【実施例】
【0064】
次に実施例により本発明を説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0065】
(合成例1)ポリアミドAの合成
まず、ディーンスターク還流冷却器、温度計、撹拌器を備えた1Lのセパラブルフラスコに、イソフタル酸22g(132mmol)、3,4’−オキシジアニリン26.4g(132mmol)、塩化リチウム3.9g、塩化カルシウム12.1g、N−メチル−2−ピロリドン240ml、ピリジン54mlを入れ、攪拌溶解させた後、亜リン酸トリフェニル74gを加えて、90℃で4時間反応させて、ポリアミド樹脂の生成溶液を得た。この反応溶液をメタノール20Lに投入してポリアミド樹脂を析出させ、ポリアミドAを得た。
【0066】
(合成例2)ポリアミドイミドAの合成
まず、ディーンスターク還流冷却器、温度計、撹拌器を備えた1Lのセパラブルフラスコに、飽和脂環式炭化水素基を有するジアミン化合物Aとして(4,4’−ジアミノ)ジシクロヘキシルメタン(ワンダミンHM(WHM)、新日本理化社製、商品名)45mmol、シロキサンジアミン化合物Bとして反応性シリコーンオイル(X−22−161−B、信越化学工業社製、アミン当量:1500、商品名)5mmol、無水トリメリット酸(TMA)105mmol、非プロトン性極性溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)145gを入れ、フラスコ内の温度を80℃に設定して30分間撹拌した後、水と共沸可能な芳香族炭化水素としてトルエン100mLを更に添加し、フラスコ内の温度を160℃に昇温して約2時間還流した。水分定量受器に理論量の水が貯留され、水の留出が見られなくなっていることを確認した後、水分定量受器中の水を除去しながら、フラスコ内の温度を190℃まで上昇させて反応溶液中のトルエンを除去した。
フラスコ内の溶液を室温まで戻した後、ジイソシアネートとして4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)60mmolを添加し、フラスコ内の温度を190℃に上昇させて2時間反応させた後、NMPで希釈してポリアミドイミドのNMP溶液を得た。この反応溶液をメタノール20Lに投入してポリアミドイミド樹脂を析出させ、ポリアミドイミドAを得た。
【0067】
[プライマー層用樹脂ワニスの調製]
(調製例1)
(C)成分である合成例1で得られたポリアミドA1.8gに、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)を15.9g配合した後、続いて(A)成分であるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(NC3000H、日本化薬社製、商品名)5.0g、(B)成分であるクレゾールノボラック型フェノール樹脂(KA1165、DIC社製、商品名)2.1gを加え、更に硬化促進剤として2−フェニルイミダゾール(2PZ、四国化成工業社製、商品名)0.050gを添加した後、DMAc及びメチルエチルケトンからなる混合溶剤で希釈し、(D)成分である無機充填材(AEROSIL R972、日本アエロジル社製、商品名)0.50gを加え、分散機(ナノマイザー、商品名、吉田機械興業株式会社製)を用いて均一なプライマー層用樹脂ワニス(固形分濃度約25質量%)を得た。
【0068】
(調製例2)
(C)成分であるフェノール性水酸基含有ポリアミド(BPAM−155、日本化薬社製、商品名)1.8gに、N、N−ジメチルアセトアミド(DMAc)を15.9g配合した後、続いて(A)成分であるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(NC3000H、日本化薬社製、商品名)5.0g、(B)成分であるクレゾールノボラック型フェノール樹脂(KA1165、DIC社製、商品名)2.1gを加え、更に硬化促進剤として2−フェニルイミダゾール(2PZ、四国化成工業社製、商品名)0.050gを添加し、DMAc及びメチルエチルケトンからなる混合溶剤で希釈した後、(D)成分である無機充填材(AEROSIL R202、日本アエロジル社製、商品名)0.50gを加え、分散機(ナノマイザー、商品名、吉田機械興業株式会社製)を用いて均一なプライマー層用樹脂ワニス(固形分濃度約25質量%)を得た。
【0069】
(調製例3)
(C)成分であるフェノール性水酸基含有ポリアミド(BPAM−155、日本化薬社製、商品名)1.8gに、N、N−ジメチルアセトアミド(DMAc)を15.9g配合した後、続いて架橋有機フィラー(EXL−2655、ローム&ハース社製、商品名)0.27g、(A)成分であるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(NC3000H、日本化薬社製、商品名)5.0g、(B)成分であるビスフェノールAノボラック型フェノール樹脂(YLH129、油化シェルエポキシ社製、商品名)2.0gを加え、更に硬化促進剤として2−フェニルイミダゾール(2PZ、四国化成工業社製、商品名)0.050gを添加し、DMAc及びメチルエチルケトンからなる混合溶剤で希釈した後、(D)成分である無機充填材(AEROSIL R202、日本アエロジル社製、商品名)0.52gを加え、分散機(ナノマイザー、商品名、吉田機械興業株式会社製)を用いて均一なプライマー層用樹脂ワニス(固形分濃度約25質量%)を得た。
【0070】
(調製例4)
(C)成分である合成例2で得られたポリアミドイミドA0.32gに、N、N−ジメチルアセトアミド(DMAc)を1.3g配合した後、続いて架橋有機フィラー(EXL−2655、ローム&ハース社製、商品名)0.96g、(A)成分であるフェノールノボラック型エポキシ樹脂(N770、DIC社製、商品名)5.0g、(B)成分であるフェノールノボラック型フェノール樹脂(TD2090、DIC社製、商品名)2.8gを加え、更に硬化促進剤として2−フェニルイミダゾール(2PZ、四国化成工業社製、商品名)0.050gを添加した後、DMAc及びメチルエチルケトンからなる混合溶剤で希釈し、(D)成分である無機充填材(AEROSIL R972、日本アエロジル社製、商品名)0.54gを加え、分散機(ナノマイザー、商品名、吉田機械興業株式会社製)を用いて均一なプライマー層用樹脂ワニス(固形分濃度約25質量%)を得た。
【0071】
(比較調製例1)
調製例1の(D)成分を除く以外は、調製例1と同様として樹脂ワニスを得た。
【0072】
(比較調製例2)
調製例1の(D)成分の代わりに、比表面積が17m
2/g(カタログ値)である球状シリカ(SO−C1、アドマテックス社製、商品名)を0.50g配合した以外は、調製例1と同様として樹脂ワニスを得た。
【0073】
(比較調製例3)
調製例2の(D)成分を除く以外は、調製例2と同様として樹脂ワニスを得た。
【0074】
(比較調製例4)
調製例3の(D)成分の配合量を1.9gにした以外は調製例3と同様として樹脂ワニスを得た。
【0075】
(実施例1)
調製例1で得られたプライマー層用樹脂ワニスを銅箔(YGP−12、日本電解社製、商品名)の光沢面に、乾燥後5μmになるように塗布し、200℃で5分間乾燥させ、プライマー層付銅箔を得た。
【0076】
次いで、プライマー層付き配線板用積層板は次のようにして製造した。プリプレグ(GEA−679FG(R)、日立化成工業社製、商品名)の0.10mm厚4枚を重ね、その上下に上記プライマー層付銅箔を銅箔が外側になるように重ね、さらに鏡板と、クッション紙を重ねて、プレス機を用いて、4.0MPa、185℃で1時間加熱硬化させた。冷却後、銅箔をエッチングして、本発明のプライマー層付き配線板用積層板を得た。
【0077】
また、多層配線板は次のようにして製造した。このプライマー層付き配線板用積層板を化学粗化するために、膨潤液として、ジエチレングリコールモノブチルエーテル:200ml/L、NaOH:5g/Lの水溶液を作製し、80℃に加温して10分間浸漬処理した。次に、粗化液として、KMnO
4:60g/L、NaOH:40g/Lの水溶液を作製し、80℃に加温して15分間浸漬処理した。引き続き、中和液(SnCl
2:30g/L、HCl:300ml/L)の水溶液を作製し、40℃に加温して5分間浸漬処理し、KMnO
4を還元した。
【0078】
プライマー層付き配線板用積層板に回路層を形成するために、まず、PdCl
2を含む無電解めっき用触媒であるアクチベーターネオガント834(アトテック・ジャパン社製、商品名)を35℃に加温して5分間浸漬処理し、無電解銅めっき用であるめっき液プリントガントMSK−DK(アトテック・ジャパン社製、商品名)に室温−15分間浸漬し、さらに硫酸銅電解めっきを行った。その後、アニールを180℃−60分間行い厚さ20μmの導体層を形成し、めっきプロセス用プライマー層付き多層配線板を作製した。
【0079】
(実施例2)
実施例1の調製例1のワニスの代わりに調製例2を用いた以外は、実施例1と同様として、めっきプロセス用プライマー層付き多層配線板を作製した。
【0080】
(実施例3)
実施例1の調製例1のワニスの代わりに調製例3を用いた以外は、実施例1と同様として、めっきプロセス用プライマー層付き多層配線板を作製した。
【0081】
(実施例4)
実施例1の調製例1のワニスの代わりに調製例4を用いた。さらにプライマー層付き配線板用積層板は次のようにして製造した。プリプレグ(GEA−700G、日立化成工業社製、商品名)の0.10mm厚4枚を重ね、その上下に上記プライマー層付銅箔を銅箔が外側になるように重ね、さらに鏡板と、クッション紙を重ねて、プレス機を用いて、3.0MPa、230℃で1時間加熱硬化させた。冷却後、銅箔をエッチングして、本発明のプライマー層付き配線板用積層板を得た。それ以外は、実施例1と同様とした
【0082】
(実施例5)
プライマー層として調製例2で作製したワニスを離型処理したPENフィルム(帝人社製)に乾燥後5μmになるように塗布し、200℃で5分間乾燥させた以外、実施例1と同様として、めっきプロセス用プライマー層付き多層配線板を作製した。
【0083】
(比較例1)
実施例1において、プライマー層を形成していない単独の銅箔粗化面を用いた以外、実施例1と同様として、多層配線板を作製した。
【0084】
(比較例2)
プライマー層として比較調製例1で作製した樹脂ワニスを用いた以外、実施例1と同様として、多層配線板を作製した。
【0085】
(比較例3)
プライマー層として比較調製例2で作製した樹脂ワニスを用いた以外、実施例1と同様として、多層配線板を作製した。
【0086】
(比較例4)
プライマー層として比較調製例3で作製した樹脂ワニスを用いた以外、実施例1と同様として、多層配線板を作製した。
【0087】
(比較例5)
プライマー層として比較調製例4で作製した樹脂ワニスを用いた以外、実施例1と同様として、多層配線板を作製した。
【0088】
以上のようにして作製した樹脂組成物及び多層配線板について、外層回路との接着強度、絶縁樹脂の表面粗さ、レーザ加工後の断面観察を行った。その結果を下記表1、2に示す。なお、測定方法は次のとおりである。
【0089】
[外層回路との接着強度]
各実施例及び比較例で得た積層板の導体層にエッチング処理によって、幅10mm、長さ100mmの部分を形成し、この一端を回路層/樹脂界面で剥がしてつかみ具でつかみ、垂直方向に引張り速度約50mm/分、室温中で引き剥がした時の荷重を測定した。
【0090】
[絶縁樹脂の表面粗さ]
各実施例及び比較例で得た積層板の導体層の一部のエッチング処理によって得た絶縁樹脂表面を菱化システム社製マイクロマップMN5000型を用い、表面粗さRaを測定した。Raは本発明の趣旨から、微細配線を形成するために、小さいほうが好ましく、0.3μm未満をOKとした。
【0091】
[レーザ加工及び断面観察]
各実施例及び比較例で得た積層板の必要な箇所に層間接続用のビアホールを形成した。ビアホールは、三菱製レーザ加工機(ML−605GTX、外注先:レーザジョブ(株))を用い、ビア径60μm、周波数500Hz、パルス幅5μs、ショット数3ショット、パルスエネルギー0.8mJの条件で加工し形成した。その後、実施例に記載の方法で粗化処理を行い、次いで断面加工を行い、走査型電子顕微鏡(S−4700、日立ハイテクノロジーズ社製、商品名)を用いてビア断面を観察し、アンダーカットの有無を確認した。ビア断面において、アンダーカットが生じない場合を合格(表中の○)とし、
図1に示すようにアンダーカットが生じた場合を不合格(表中の×)とした。
【0092】
【表1】
【0093】
【表2】
【0094】
表1から、本発明のめっきプロセス用のプライマー層付き積層板並びに多層配線板の特性は、実施例1〜5に示したように、Raが0.3μm未満の平滑な樹脂表面上においても、無電解銅めっきとの高接着力を示し、さらに、良好なレーザ加工性を発現することが分かった。一方、表2に示すとおり、本発明の絶縁樹脂組成物を必須に含んでいない比較例1〜5に示す多層配線板は、表面粗さが大きいか、無電解銅めっきとの接着力が低い、もしくはレーザ加工性が悪化することが確認できた。