(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
現像液が、2−オクタノン、2−ノナノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−ヘキサノン、3−ヘキサノン、ジイソブチルケトン、2−メチルシクロヘキサノン、3−メチルシクロヘキサノン、4−メチルシクロヘキサノン、アセトフェノン、2’−メチルアセトフェノン、4’−メチルアセトフェノン、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、酢酸ブテニル、酢酸イソアミル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル、蟻酸イソブチル、蟻酸アミル、蟻酸イソアミル、吉草酸メチル、ペンテン酸メチル、クロトン酸メチル、クロトン酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル、乳酸イソブチル、乳酸アミル、乳酸イソアミル、2−ヒドロキシイソ酪酸メチル、2−ヒドロキシイソ酪酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、酢酸フェニル、酢酸ベンジル、フェニル酢酸メチル、蟻酸ベンジル、蟻酸フェニルエチル、3−フェニルプロピオン酸メチル、プロピオン酸ベンジル、フェニル酢酸エチル、酢酸2−フェニルエチルから選ばれる1種以上の有機溶剤を含有し、これら有機溶剤の総濃度が現像液総量に対して60質量%以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のパターン形成方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、記述中の一般式において、エナンチオ異性体(enantiomer)やジアステレオ異性体(diastereomer)が存在し得る場合があるが、その場合、一つの平面式あるいは立体異性体の式で立体異性体の全てを代表して表す。これらの立体異性体は単独で用いてもよいし、混合物として用いてもよい。
【0019】
本発明のレジスト組成物は、第1に、酸不安定基を有し、酸の作用により極性が変化する高分子化合物[A]を含有する。ここで、高分子化合物[A]は、より具体的には、酸不安定基により保護された極性基を含み、光酸発生剤より発生した酸の作用により脱保護反応が起こることに伴い、極性が変化する高分子化合物を示す。
極性基としては、例えば、カルボキシル基、水酸基、スルホンアミド基を挙げることができる。
【0020】
また、酸不安定保護基としては、具体的には下記一般式(L1)で示されるアルコキシメチル基、又は(L2)〜(L8)で示される三級アルキル基を挙げることができるが、これらに制限されるものではない。
【化3】
【0021】
上記式中、破線は結合手を示す(以下、同様)。また、R
L01、R
L02は水素原子又は炭素数1〜18、好ましくは1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示し、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、アダマンチル基等が例示できる。R
L03は炭素数1〜18、好ましくは炭素数1〜10の酸素原子等のヘテロ原子を有してもよい一価の炭化水素基を示し、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、これらの水素原子の一部が水酸基、アルコキシ基、オキソ基、アミノ基、アルキルアミノ基等に置換されたものを挙げることができ、具体的には、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基としては上記R
L01、R
L02と同様のものが例示でき、置換アルキル基としては下記の基等が例示できる。
【化4】
【0022】
R
L01とR
L02、R
L01とR
L03、R
L02とR
L03とは互いに結合してこれらが結合する炭素原子や酸素原子と共に環を形成してもよく、環を形成する場合には、環の形成に関与するR
L01とR
L02、R
L01とR
L03、又はR
02とR
L03は、それぞれ炭素数1〜18、好ましくは炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を示す。
【0023】
R
L04、R
L05、R
L06はそれぞれ独立に炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示す。具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基等が例示できる。
【0024】
R
L07は炭素数1〜10の置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又は炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基を示し、置換されていてもよいアルキル基としては、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基等の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、これらの水素原子の一部が水酸基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、オキソ基、アミノ基、アルキルアミノ基、シアノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、スルホ基等に置換されたもの、又はこれらのメチレン基の一部が酸素原子又は硫黄原子に置換されたもの等が例示でき、置換されていてもよいアリール基としては、具体的にはフェニル基、メチルフェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ピレニル基等が例示できる。式(L3)において、xは0又は1、yは0,1,2,3のいずれかであり、2x+y=2又は3を満足する数である。
【0025】
R
L08は炭素数1〜10の置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又は炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基を示し、具体的にはR
L07と同様のもの等が例示できる。R
L09〜R
L18はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜15の一価の炭化水素基を示し、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロペンチルブチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロヘキシルブチル基等の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、これらの水素原子の一部が水酸基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、オキソ基、アミノ基、アルキルアミノ基、シアノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、スルホ基等に置換されたもの等が例示できる。R
L09とR
L10、R
L09とR
L11、R
L09とR
L12、R
L10とR
L12、R
L11とR
L12、R
L13とR
L14、又はR
L15とR
L16は互いに結合して環を形成していてもよく、その場合、環の形成に関与するR
L09とR
L10、R
L09とR
L11、R
L09とR
L12、R
L10とR
L12、R
L11とR
L12、R
L13とR
L14、又はR
L15とR
L16は、炭素数1〜15の二価の炭化水素基を示し、具体的には上記一価の炭化水素基で例示したものから水素原子を1個除いたもの等が例示できる。また、R
L09とR
L11、R
L11とR
L17、又はR
L15とR
L17は、隣接する炭素に結合するもの同士で何も介さずに結合し、二重結合を形成してもよい。
【0026】
R
L19は炭素数1〜10の置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又は炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基を示し、具体的にはR
L07と同様のもの等が例示できる。
【0027】
R
L20は炭素数1〜10の置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又は炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基を示し、具体的にはR
L07と同様のもの等が例示できる。
Xはこれが結合する炭素原子と共に置換又は非置換のシクロペンタン環、シクロヘキサン環、又はノルボルナン環を形成する二価の基を示す。R
L21、R
L22はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の一価の炭化水素基を示す。R
L21とR
L22は互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよく、その場合、置換又は非置換のシクロペンタン環、又はシクロヘキサン環を形成する二価の基を示す。rは1又は2を示す。
【0028】
R
L23は炭素数1〜10の置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又は炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基を示し、具体的にはR
L07と同様のもの等が例示できる。
Yはこれが結合する炭素原子と共に置換又は非置換のシクロペンタン環、シクロヘキサン環、又はノルボルナン環を形成する二価の基を示す。R
L24、R
L25はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の一価の炭化水素基を示す。R
L24とR
L25は互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよく、その場合、置換又は非置換のシクロペンタン環、又はシクロヘキサン環を形成する二価の基を示す。qは1又は2を示す。
【0029】
R
L26は炭素数1〜10の置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又は炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基を示し、具体的にはR
L07と同様のもの等が例示できる。
Zはこれが結合する炭素原子と共に置換又は非置換のシクロペンタン環、シクロヘキサン環、又はノルボルナン環を形成する二価の基を示す。R
L27、R
L28はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の一価の炭化水素基を示す。R
L27とR
L28は互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよく、その場合、置換又は非置換のシクロペンタン環、又はシクロヘキサン環を形成する二価の基を示す。
【0030】
上記式(L1)で示される酸不安定基のうち直鎖状又は分岐状のものとしては、具体的には下記の基が例示できる。
【化5】
【0031】
上記式(L1)で示される酸不安定基のうち環状のものとしては、具体的にはテトラヒドロフラン−2−イル基、2−メチルテトラヒドロフラン−2−イル基、テトラヒドロピラン−2−イル基、2−メチルテトラヒドロピラン−2−イル基等が例示できる。
【0032】
上記式(L2)の酸不安定基としては、具体的にはtert−ブチル基、tert−アミル基、及び下記の基が例示できる。
【化6】
【0033】
上記式(L3)の酸不安定基としては、具体的には1−メチルシクロペンチル、1−エチルシクロペンチル、1−n−プロピルシクロペンチル、1−イソプロピルシクロペンチル、1−n−ブチルシクロペンチル、1−sec−ブチルシクロペンチル、1−シクロヘキシルシクロペンチル、1−(4−メトキシ−n−ブチル)シクロペンチル、1−(ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル)シクロペンチル、1−(7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル)シクロペンチル、1−メチルシクロヘキシル、1−エチルシクロヘキシル、3−メチル−1−シクロペンテン−3−イル、3−エチル−1−シクロペンテン−3−イル、3−メチル−1−シクロヘキセン−3−イル、3−エチル−1−シクロヘキセン−3−イル等が例示できる。
【0034】
上記式(L4)の酸不安定基としては、下記式(L4−1)〜(L4−4)で示される基が特に好ましい。
【化7】
【0035】
前記一般式(L4−1)〜(L4−4)中、破線は結合位置及び結合方向を示す。R
L41はそれぞれ独立に炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基等の一価の炭化水素基を示し、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等を例示できる。
【0036】
前記一般式(L4−1)〜(L4−4)には、エナンチオ異性体(enantiomer)やジアステレオ異性体(diastereomer)が存在しえるが、前記一般式(L4−1)〜(L4−4)は、これらの立体異性体の全てを代表して表す。これらの立体異性体は単独で用いてもよいし、混合物として用いてもよい。
【0037】
例えば、前記一般式(L4−3)は下記一般式(L4−3−1)、(L4−3−2)で示される基から選ばれる1種又は2種の混合物を代表して表すものとする。
【化8】
(式中、R
L41は前述と同様である。)
【0038】
また、上記一般式(L4−4)は下記一般式(L4−4−1)〜(L4−4−4)で示される基から選ばれる1種又は2種以上の混合物を代表して表すものとする。
【化9】
(式中、R
L41は前述と同様である。)
【0039】
上記一般式(L4−1)〜(L4−4)、(L4−3−1)、(L4−3−2)、及び式(L4−4−1)〜(L4−4−4)は、それらのエナンチオ異性体及びエナンチオ異性体混合物をも代表して示すものとする。
【0040】
なお、式(L4−1)〜(L4−4)、(L4−3−1)、(L4−3−2)、及び式(L4−4−1)〜(L4−4−4)の結合方向がそれぞれビシクロ[2.2.1]ヘプタン環に対してexo側であることによって、酸触媒脱離反応における高反応性が実現される(特開2000−336121号公報参照)。これらビシクロ[2.2.1]ヘプタン骨格を有する三級exo−アルキル基を置換基とする単量体の製造において、下記一般式(L4−1−endo)〜(L4−4−endo)で示されるendo−アルキル基で置換された単量体を含む場合があるが、良好な反応性の実現のためにはexo比率が50%以上であることが好ましく、exo比率が80%以上であることが更に好ましい。
【化10】
(式中、R
L41は前述と同様である。)
【0041】
上記式(L4)の酸不安定基としては、具体的には下記の基が例示できる。
【化11】
【0042】
上記式(L5)の酸不安定基としては、具体的には下記の基が例示できる。
【化12】
上記式(L6)の酸不安定基としては、具体的には下記の基が例示できる。
【化13】
【0043】
上記式(L7)の酸不安定基としては、具体的には下記の基が例示できる。
【化14】
【0044】
上記式(L8)の酸不安定基としては、具体的には下記の基が例示できる。
【化15】
【0045】
高分子化合物[A]の例としては、酸不安定基で保護された極性基を含む(i)環状オレフィンモノマーの付加重合体、(ii)環状オレフィンモノマーの開環メタセシス重合体水素添加物、(iii)(メタ)アクリレート樹脂を挙げることができるが、これらに制限されるものではない。
【0046】
上記(i)の具体例を以下に記載するが、これらに制限されるものではない。
【化16】
【0049】
上記(ii)の具体例を以下に記載するが、これらに制限されるものではない。
【化19】
【0050】
高分子化合物[A]として最も好ましい化合物は、酸不安定基で保護された極性基を含む繰り返し単位を含有する(iii)(メタ)アクリレート樹脂である。一般に、(メタ)アクリレート樹脂は、酸不安定基脱保護前後の極性変化が大きく、溶解コントラストにおいて有利である。
この場合、(メタ)アクリレート樹脂に含まれる、酸不安定基で保護された極性基を含む繰り返し単位は、下記式で示すことができる。
【化20】
(式中、R
11は水素原子又はメチル基、ALは酸不安定基を含む有機基を示す。)
【0051】
(メタ)アクリレート樹脂に含まれる、酸不安定基で保護された極性基を含む繰り返し単位の具体例を以下に挙げるが、これらに制限されるものではない。
【化21】
【0059】
【化29】
(R
11は水素原子又はメチル基を表す。)
【0060】
中でも、下記一般式(2)で表される繰り返し単位が、高分子化合物[A]に含まれる、酸不安定基により保護された極性基を有する単位として好ましい。
【化30】
【0061】
上記式中、R
5は水素原子又はメチル基を示す。R
6は炭素数2〜16の直鎖状、分岐状又は環状の二価の脂肪族炭化水素基であり、エーテル結合又はエステル結合を有していてもよい。R
7は炭素数1〜7の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基である。mは0又は1であり、nは1又は2である。
上記一般式(2)で表される繰り返し単位は、有機溶剤現像液に対する溶解性が優れ、溶解コントラストを向上させることができる。
【0062】
上記一般式(2)で表される繰り返し単位の具体例を以下に挙げるが、これらに制限されるものではない。
【化31】
【0063】
【化32】
(R
11は上記と同様である。)
【0064】
上記一般式(2)で表される繰り返し単位について、式中のR
7がtert−ブチル基、tert−ペンチル基又はネオペンチル基であるものが、未露光部溶解性の点において特に好ましい。
また、高分子化合物[A]は、酸不安定基により保護された極性基を含む繰り返し単位を2種以上含んでもよい。この場合、上記式(2)で示される繰り返し単位は、酸不安定基を有する繰り返し単位全体の20〜100モル%、特に40〜100モル%であることが好ましい。
【0065】
高分子化合物[A]は、酸不安定基を含む繰り返し単位の他に、下記一般式(3)で表される構造の繰り返し単位を有することが好ましい。
【化33】
【0066】
上記式中、R
8は水素原子又はメチル基を示す。R
9は炭素数2〜16の直鎖状、分岐状又は環状の二価の脂肪族炭化水素基であり、エーテル結合又はエステル結合を有していてもよい。R
10は炭素数4〜15の水酸基、エーテル、ケトン、エステル、炭酸エステル、スルホン酸エステルから選ばれる少なくとも1つ以上の部分構造を有する環状の炭化水素基である。pは0又は1である。
【0067】
上記一般式(3)で表される構造の繰り返し単位を、酸不安定基を有する繰り返し単位と適切に組み合わせることにより、露光部の溶解速度を抑制し、更に溶解コントラストを高めることができる。
【0068】
上記一般式(3)で表される繰り返し単位の具体例を以下に挙げるが、これらに制限されるものではない。
【化34】
【0070】
【化36】
(R
11は上記と同様である。)
【0071】
高分子化合物[A]が含んでもよい、その他の繰り返し単位の例として、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、カーバメート基、シアノ基等の極性基を有する繰り返し単位や芳香族基を有する繰り返し単位を挙げることができる。これらの繰り返し単位を必要に応じて導入することにより、現像液に対する溶解特性を調整することができ、また、発生酸の拡散性を制御することができる。以下に具体例を挙げるが、これらに制限されるものではない。
【0073】
更には、オキシラン環又はオキセタン環を有する繰り返し単位を共重合することもできる。オキシラン環又はオキセタン環を有する繰り返し単位を共重合することによって、露光部が架橋するために、露光部分の残膜特性とエッチング耐性が向上する。
オキシラン環、オキセタン環を有する繰り返し単位は、具体的には下記に例示される。
【化38】
【0074】
【化39】
(R
41は水素原子又はメチル基を表す。)
【0075】
高分子化合物[A]の各繰り返し単位の好ましい比率は、酸不安定基を含む繰り返し単位のモル比の合計をa、一般式(3)で表される繰り返し単位のモル比の合計をb、それ以外の繰り返し単位の合計をcとし、0.2≦a≦0.8、0.2≦b≦0.8、0≦c<0.2を共に満たす比率であり、特に、0.3≦a≦0.7、0.3≦b≦0.7、0≦c<0.1を共に満たすことが好ましい。ここで、a+b+c=1である。
【0076】
本発明のパターン形成方法に用いられるレジスト組成物のベース樹脂となる高分子化合物は、テトラヒドロフラン(THF)溶液によるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量が1,000〜500,000、特に2,000〜30,000であることが好ましい。重量平均分子量が小さすぎると有機溶剤現像時に膜減りを生じ易くなり、大きすぎると有機溶剤への溶解性が低下し、パターン形成後に裾引き現象が生じ易くなる可能性がある。
【0077】
更に、本発明のパターン形成方法に用いられるレジスト組成物のベース樹脂となる高分子化合物においては、分子量分布(Mw/Mn)が広い場合は低分子量や高分子量のポリマーが存在するために露光後、パターン上に異物が見られたり、パターンの形状が悪化したりするおそれがある。それ故、パターンルールが微細化するに従ってこのような分子量、分子量分布の影響が大きくなり易いことから、微細なパターン寸法に好適に用いられるレジスト組成物を得るには、使用する多成分共重合体の分子量分布は1.0〜2.0、特に1.0〜1.5と狭分散であることが好ましい。
また、組成比率や分子量分布や分子量が異なる2つ以上のポリマーをブレンドすることも可能である。
【0078】
本発明に用いるレジスト組成物は、下記一般式(1)で表される構造の光酸発生剤[B]を含む。
R
1−COOC(CF
3)
2−CH
2SO
3- R
2R
3R
4S
+ (1)
(式中、R
1はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜50の直鎖状、分岐状又は環状の一価の炭化水素基を示す。R
2、R
3及びR
4は相互に独立に置換もしくは非置換の炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキル基、アルケニル基又はオキソアルキル基、又は置換もしくは非置換の炭素数6〜18のアリール基、アラルキル基又はアリールオキソアルキル基を示すか、あるいはR
2、R
3及びR
4のうちのいずれか2つ以上が相互に結合して式中の硫黄原子と共に環を形成してもよい。)
【0079】
ここで、上記一般式(1)におけるR
1としては、具体的には下記のものが挙げられる。アルキル基として、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロプロピルメチル基、4−メチルシクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、ノルボルニル基、1−アダマンチル基、1−アダマンチルメチル基、ステロイド構造含有基等が挙げられる。オキソアルキル基としては、2−オキソシクロペンチル基、2−オキソシクロヘキシル基、4−オキソシクロヘキシル基、2−オキソプロピル基、2−オキソエチル基、2−シクロペンチル−2−オキソエチル基、2−シクロヘキシル−2−オキソエチル基、2−(4−メチルシクロヘキシル)−2−オキソエチル基、4−オキサ−トリシクロ[4.2.1.0
3,7]ノナン−5−オン−9−イル基、4−オキソ−1−アダマンチル基等を挙げることができる。アリール基としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、アントラニル基、チエニル基等や、4−ヒドロキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、2−メトキシフェニル基、4−エトキシフェニル基、4−tert−ブトキシフェニル基、3−tert−ブトキシフェニル基等のアルコキシフェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−n−ブチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基等のアルキルフェニル基、メチルナフチル基、エチルナフチル基等のアルキルナフチル基、メトキシナフチル基、エトキシナフチル基等のアルコキシナフチル基、ジメチルナフチル基、ジエチルナフチル基等のジアルキルナフチル基、ジメトキシナフチル基、ジエトキシナフチル基等のジアルコキシナフチル基等が挙げられる。アラルキル基としてはベンジル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基等が挙げられる。アリールオキソアルキル基としては、2−フェニル−2−オキソエチル基、2−(1−ナフチル)−2−オキソエチル基、2−(2−ナフチル)−2−オキソエチル基等の2−アリール−2−オキソエチル基等が挙げられる。その他、ビニル基、イソプロペニル基等が挙げられる。
【0080】
R
1の中で特に好ましく用いられるものとして、tert−ブチル基、シクロヘキシル基、1−アダマンチル基、1−アダマンチルメチル基、4−オキサ−トリシクロ[4.2.1.0
3,7]ノナン−5−オン−9−イル基、4−オキソ−1−アダマンチル基、ステロイド構造含有基等が挙げられる。
【0081】
上記一般式(1)中のR
2、R
3及びR
4として、具体的には以下のものが挙げられる。
アルキル基として、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロプロピルメチル基、4−メチルシクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等が挙げられる。アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。オキソアルキル基としては、2−オキソシクロペンチル基、2−オキソシクロヘキシル基、2−オキソプロピル基、2−オキソエチル基、2−シクロペンチル−2−オキソエチル基、2−シクロヘキシル−2−オキソエチル基、2−(4−メチルシクロヘキシル)−2−オキソエチル基等を挙げることができる。アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、チエニル基等や、4−ヒドロキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、2−メトキシフェニル基、4−エトキシフェニル基、4−tert−ブトキシフェニル基、3−tert−ブトキシフェニル基等のアルコキシフェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−n−ブチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基等のアルキルフェニル基、メチルナフチル基、エチルナフチル基等のアルキルナフチル基、メトキシナフチル基、エトキシナフチル基等のアルコキシナフチル基、ジメチルナフチル基、ジエチルナフチル基等のジアルキルナフチル基、ジメトキシナフチル基、ジエトキシナフチル基等のジアルコキシナフチル基等が挙げられる。アラルキル基としてはベンジル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基等が挙げられる。アリールオキソアルキル基としては、2−フェニル−2−オキソエチル基、2−(1−ナフチル)−2−オキソエチル基、2−(2−ナフチル)−2−オキソエチル基等の2−アリール−2−オキソエチル基等が挙げられる。更には置換基としてアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等の重合可能な置換基を有するアリール基が挙げられ、具体的には4−アクリロイルオキシフェニル基、4−メタクリロイルオキシフェニル基、4−アクリロイルオキシ−3,5−ジメチルフェニル基、4−メタクリロイルオキシ−3,5−ジメチルフェニル基、4−ビニルオキシフェニル基、4−ビニルフェニル基等が挙げられる。また、R
2、R
3及びR
4のうちのいずれか2つ以上が相互に結合して硫黄原子を介して環状構造を形成する場合には、これらの環状構造を形成する基としては、1,4−ブチレン、3−オキサ−1,5−ペンチレン等の二価の有機基が挙げられる。
【0082】
また、具体的にスルホニウムカチオンを示すと、トリフェニルスルホニウム、4−ヒドロキシフェニルジフェニルスルホニウム、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリス(4−ヒドロキシフェニル)スルホニウム、4−tert−ブトキシフェニルジフェニルスルホニウム、ビス(4−tert−ブトキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリス(4−tert−ブトキシフェニル)スルホニウム、3−tert−ブトキシフェニルジフェニルスルホニウム、ビス(3−tert−ブトキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリス(3−tert−ブトキシフェニル)スルホニウム、3,4−ジ−tert−ブトキシフェニルジフェニルスルホニウム、ビス(3,4−ジ−tert−ブトキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリス(3,4−ジ−tert−ブトキシフェニル)スルホニウム、ジフェニル(4−チオフェノキシフェニル)スルホニウム、4−tert−ブトキシカルボニルメチルオキシフェニルジフェニルスルホニウム、トリス(4−tert−ブトキシカルボニルメチルオキシフェニル)スルホニウム、(4−tert−ブトキシフェニル)ビス(4−ジメチルアミノフェニル)スルホニウム、トリス(4−ジメチルアミノフェニル)スルホニウム、2−ナフチルジフェニルスルホニウム、(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ジフェニルスルホニウム、(4−n−ヘキシルオキシ−3,5−ジメチルフェニル)ジフェニルスルホニウム、ジメチル(2−ナフチル)スルホニウム、4−ヒドロキシフェニルジメチルスルホニウム、4−メトキシフェニルジメチルスルホニウム、トリメチルスルホニウム、2−オキソシクロヘキシルシクロヘキシルメチルスルホニウム、トリナフチルスルホニウム、トリベンジルスルホニウム、ジフェニルメチルスルホニウム、ジメチルフェニルスルホニウム、2−オキソ−2−フェニルエチルチアシクロペンタニウム、ジフェニル2−チエニルスルホニウム、4−n−ブトキシナフチル−1−チアシクロペンタニウム、2−n−ブトキシナフチル−1−チアシクロペンタニウム、4−メトキシナフチル−1−チアシクロペンタニウム、2−メトキシナフチル−1−チアシクロペンタニウム等が挙げられる。より好ましくはトリフェニルスルホニウム、4−tert−ブチルフェニルジフェニルスルホニウム、4−tert−ブトキシフェニルジフェニルスルホニウム、トリス(4−tert−ブチルフェニル)スルホニウム、4−tert−ブトキシカルボニルメチルオキシフェニルジフェニルスルホニウム等が挙げられる。
【0083】
光酸発生剤[B]のアニオン部分の構造の具体例を以下に挙げるが、これらに制限されるものではない。
【化40】
【0085】
光酸発生剤[B]のカチオン部分の構造の具体例を以下に挙げるが、これらに制限されるものではない。
【化42】
【0087】
光酸発生剤[B]は、有機溶剤に対する溶解性が高く、レジスト組成物を塗布して得られる膜の有機溶剤現像に対する溶解を阻害することがないため、未露光部溶解速度を高める効果が期待できる。また、発生酸のスルホ基のアルファ位上にフッ素原子やフルオロアルキル基が存在しないため、例えば、ArFリソグラフィー用のレジスト組成物に広く使用されているパーフルオロアルカンスルホン酸等に比べて酸性度が低い。このため、解像性劣化やラフネス増大の原因となり得る発生酸の拡散の影響を抑制できたものと考えられる。
【0088】
また、本発明のレジスト組成物に含まれる光酸発生剤[B]の配合量はベース樹脂100質量部に対し0.5〜30質量部、特に1〜20質量部とすることが好ましい。
【0089】
本発明のレジスト組成物は、光酸発生剤[B]の他に、それ以外の光酸発生剤成分を含んでもよく、高エネルギー線照射により酸を発生する化合物であればいずれでも構わない。好適な光酸発生剤としてはスルホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニルジアゾメタン、N−スルホニルオキシイミド、オキシム−O−スルホネート型酸発生剤等があり、これらは単独あるいは2種以上混合して用いることができる。
このような酸発生剤の具体例としては、特開2008−111103号公報の段落[0123]〜[0138]に記載されているものが挙げられる。
【0090】
本発明のパターン形成方法に用いられるレジスト組成物は、有機溶剤[C]を含み、更に必要に応じて、塩基性化合物、界面活性剤、溶解制御剤、アセチレンアルコール類、その他の成分を含有することができる。
【0091】
有機溶剤[C]の具体例としては、特開2008−111103号公報の段落[0144]〜[0145]に記載のシクロヘキサノン、メチル−2−n−アミルケトン等のケトン類、3−メトキシブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール等のアルコール類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert−ブチル、プロピオン酸tert−ブチル、プロピレングリコールモノtert−ブチルエーテルアセテート等のエステル類、γ−ブチロラクトン等のラクトン類及びその混合溶剤が挙げられる。アセタール系の酸不安定基を用いる場合は、アセタールの脱保護反応を加速させるために高沸点のアルコール系溶剤、具体的にはジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール等を加えることもできる。
【0092】
塩基性化合物としては、特開2008−111103号公報の段落[0146]〜[0164]に記載の1級、2級、3級のアミン化合物、特にはヒドロキシ基、エーテル基、エステル基、ラクトン環、シアノ基、スルホン酸エステル基を有するアミン化合物あるいは特許第3790649号公報に記載のカルバメート基を有する化合物を挙げることができる。
【0093】
界面活性剤は特開2008−111103号公報の段落[0165]〜[0166]、溶解制御剤は特開2008−122932号公報の段落[0155]〜[0178]、アセチレンアルコール類は特開2008−122932号公報の段落[0179]〜[0182]に記載のものを用いることができる。
【0094】
なお、有機溶剤の配合量はベース樹脂100質量部に対し100〜10,000質量部、特に300〜8,000質量部とすることが好ましい。また、塩基性化合物の配合量はベース樹脂100質量部に対し0.0001〜30質量部、特に0.001〜20質量部とすることが好ましい。
また、溶解制御剤、界面活性剤、アセチレンアルコール類の配合量は、その配合目的に応じて適宜選定し得る。
【0095】
その他の成分として、スピンコート後のレジスト膜表面の撥水性を向上させるための高分子化合物を添加することもできる。レジスト膜表面の撥水性を向上させることにより、トップコートを用いない液浸リソグラフィーにおいてもレジスト組成物成分の露光中の溶出を抑制し、露光機の汚染を防ぐことができる。このような添加剤としては、フッ素原子を含む高分子化合物が好ましく、例えば、フルオロアルキル基を含む高分子化合物や特定構造の1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール残基を有する高分子化合物を挙げることができ、具体的には特開2007−297590号公報、特開2008−111103号公報、特開2012−128067号公報に例示されている。撥水性向上剤の添加量は、レジスト組成物のベース樹脂100質量部に対して0.1〜20質量部、好ましくは0.5〜10質量部である。
【0096】
上記レジスト組成物は、上述したように、基板上に塗布してレジスト膜を形成し、加熱処理後に高エネルギー線をこのレジスト膜の所用部分に照射、露光し、加熱処理後に有機溶剤の現像液を用いて上記レジスト膜の未露光部分を溶解、露光部分が膜として残り、ホールやトレンチ等のネガティブトーンのレジストパターンを形成する。
【0097】
本発明に係るパターニング方法は、
図1に示される。この場合、
図1(A)に示したように、本発明においては基板10上に形成した被加工基板20に直接又は中間介在層30を介してポジ型レジスト組成物を基板上に塗布してレジスト膜40を形成する。レジスト膜の厚さとしては、10〜1,000nm、特に20〜500nmであることが好ましい。このレジスト膜は、露光前に加熱(プリベーク)を行うが、この条件としては60〜180℃、特に70〜150℃で10〜300秒間、特に15〜200秒間行うことが好ましい。
なお、基板10としては、シリコン基板が一般的に用いられる。被加工基板20としては、SiO
2、SiN、SiON、SiOC、p−Si、α−Si、TiN、WSi、BPSG、SOG、Cr、CrO、CrON、MoSi、低誘電膜及びそのエッチングストッパー膜が挙げられる。中間介在層30としては、SiO
2、SiN、SiON、p−Si等のハードマスク、カーボン膜による下層膜と珪素含有中間膜、有機反射防止膜等が挙げられる。
【0098】
次いで、
図1(B)に示すように露光50を行う。ここで、露光は波長140〜250nmの高エネルギー線、波長13.5nmのEUV、電子ビーム(EB)が挙げられるが、中でもArFエキシマレーザーによる193nmの露光が最も好ましく用いられる。露光は大気中や窒素気流中のドライ雰囲気でもよいし、水中の液浸露光であってもよい。ArF液浸リソグラフィーにおいては液浸溶剤として純水、又はアルカン等の屈折率が1以上で露光波長に高透明の液体が用いられる。液浸リソグラフィーでは、プリベーク後のレジスト膜と投影レンズの間に、純水やその他の液体を挿入する。これによってNAが1.0以上のレンズ設計が可能となり、より微細なパターン形成が可能になる。液浸リソグラフィーはArFリソグラフィーを45nmノードまで延命させるための重要な技術である。液浸露光の場合は、レジスト膜上に残った水滴残りを除去するための露光後の純水リンス(ポストソーク)を行ってもよいし、レジスト膜からの溶出物を防ぎ、膜表面の滑水性を上げるために、プリベーク後のレジスト膜上に保護膜を形成させてもよい。液浸リソグラフィーに用いられるレジスト保護膜を形成する材料としては、例えば、現像液に溶解する1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール残基を有する高分子化合物をベースとし、炭素数4以上のアルコール系溶剤、炭素数8〜12のエーテル系溶剤、又はこれらの混合溶剤に溶解させた材料が好ましい。この場合、保護膜形成用組成物は、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール残基を有する繰り返し単位等のモノマーから得られるものが挙げられる。保護膜は有機溶剤の現像液に溶解する必要があるが、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール残基を有する繰り返し単位からなる高分子化合物は前述の有機溶剤現像液に溶解する。特に、特開2007−25634号公報、特開2008−3569号公報に例示の1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール残基を有する保護膜材料の有機溶剤現像液に対する溶解性は高い。
【0099】
保護膜形成用組成物にアミン化合物又はアンモニウム塩を配合あるいはアミノ基又はアンモニウム塩を有する繰り返し単位を共重合した高分子化合物を用いることは、フォトレジスト膜の露光部から発生した酸の未露光部分への拡散を制御し、ホールの開口不良を防止する効果が高い。アミン化合物を添加した保護膜材料としては特開2008−3569号公報に記載の材料、アミノ基又はアンモニウム塩を共重合した保護膜材料としては特開2007−316448号公報に記載の材料を用いることができる。アミン化合物、アンモニウム塩としては、上記フォトレジスト添加用の塩基性化合物として詳述したものの中から選定することができる。アミン化合物、アンモニウム塩の配合量は、ベース樹脂100質量部に対して0.01〜10質量部、特に0.02〜8質量部が好ましい。
【0100】
また、保護膜形成用組成物に用いられる溶剤としては、炭素数4以上のアルコール系溶剤、炭素数8〜12のエーテル系溶剤、又はこれらの混合溶剤が好ましい。
【0101】
炭素数4以上のアルコール系溶剤としては、1−ブチルアルコール、2−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、tert−アミルアルコール、ネオペンチルアルコール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、3−メチル−3−ペンタノール、シクロペンタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、2,3−ジメチル−2−ブタノール、3,3−ジメチル−1−ブタノール、3,3−ジメチル−2−ブタノール、2−エチル−1−ブタノール、2−メチル−1−ペンタノール、2−メチル−2−ペンタノール、2−メチル−3−ペンタノール、3−メチル−1−ペンタノール、3−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−3−ペンタノール、4−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、4−メチル−3−ペンタノール、シクロヘキサノール、1−オクタノールなどを挙げることができる。
炭素数8〜12のエーテル系溶剤としては、ジ−n−ブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジ−sec−ブチルエーテル、ジ−n−ペンチルエーテル、ジイソペンチルエーテル、ジ−sec−ペンチルエーテル、ジ−tert−アミルエーテル、ジ−n−ヘキシルエーテルなどを挙げることができる。
【0102】
フォトレジスト膜形成後に、純水リンス(ポストソーク)を行うことによってレジスト膜表面からの酸発生剤等の抽出、あるいはパーティクルの洗い流しを行ってもよいし、露光後に膜上に残った水を取り除くためのリンス(ポストソーク)を行ってもよい。
【0103】
露光における露光量は1〜200mJ/cm
2程度、好ましくは10〜100mJ/cm
2程度となるように露光することが好ましい。次に、ホットプレート上で60〜150℃、1〜5分間、好ましくは80〜120℃、1〜3分間ポストエクスポージャベーク(PEB)する。
【0104】
更に、
図1(C)に示されるように有機溶剤の現像液を用い、0.1〜3分間、好ましくは0.5〜2分間、浸漬(dip)法、パドル(puddle)法、スプレー(spray)法等の常法により現像することにより未露光部分が溶解するネガティブパターンが基板上に形成される。上記有機溶剤を含む現像液としては、2−オクタノン、2−ノナノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−ヘキサノン、3−ヘキサノン、ジイソブチルケトン、2−メチルシクロヘキサノン、3−メチルシクロヘキサノン、4−メチルシクロヘキサノン、アセトフェノン、2’−メチルアセトフェノン、4’−メチルアセトフェノンのケトン類、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、酢酸ブテニル、酢酸イソアミル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル、蟻酸イソブチル、蟻酸アミル、蟻酸イソアミル、吉草酸メチル、ペンテン酸メチル、クロトン酸メチル、クロトン酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル、乳酸イソブチル、乳酸アミル、乳酸イソアミル、2−ヒドロキシイソ酪酸メチル、2−ヒドロキシイソ酪酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、酢酸フェニル、酢酸ベンジル、フェニル酢酸メチル、蟻酸ベンジル、蟻酸フェニルエチル、3−フェニルプロピオン酸メチル、プロピオン酸ベンジル、フェニル酢酸エチル、酢酸2−フェニルエチルのエステル類を好ましく用いることができる。
【0105】
これらの有機溶剤は、1種単独で又は2種以上を混合して使用することができる。これらの有機溶剤の総量は、現像液総量の60質量%以上であることが好ましい。より好ましくは80〜100質量%である。また、その他の有機溶剤を含んでもよく、具体的にはオクタン、デカン、ドデカン等のアルカン類、イソプロピルアルコール、1−ブチルアルコール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、4−メチル−2−ペンタノール等のアルコール類等が挙げられる。
また、上記現像液は、界面活性剤を含んでもよく、界面活性剤としては前述のレジスト組成物に添加してよいものと同様の具体例が挙げられる。
【0106】
現像の終了時には、リンスを行う。リンス液としては、現像液と混溶し、レジスト膜を溶解させない溶剤が好ましい。このような溶剤としては、炭素数3〜10のアルコール、炭素数8〜12のエーテル化合物、炭素数6〜12のアルカン、アルケン、アルキン、芳香族系の溶剤が好ましく用いられる。
【0107】
具体的に、炭素数6〜12のアルカンとしては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、メチルシクロペンタン、ジメチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン等が挙げられる。炭素数6〜12のアルケンとしては、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、シクロヘキセン、メチルシクロヘキセン、ジメチルシクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどが挙げられる。炭素数6〜12のアルキンとしては、ヘキシン、ヘプチン、オクチンなどが挙げられる。炭素数3〜10のアルコールとしては、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、1−ブチルアルコール、2−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、tert−アミルアルコール、ネオペンチルアルコール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、3−メチル−3−ペンタノール、シクロペンタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、2,3−ジメチル−2−ブタノール、3,3−ジメチル−1−ブタノール、3,3−ジメチル−2−ブタノール、2−エチル−1−ブタノール、2−メチル−1−ペンタノール、2−メチル−2−ペンタノール、2−メチル−3−ペンタノール、3−メチル−1−ペンタノール、3−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−3−ペンタノール、4−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、4−メチル−3−ペンタノール、シクロヘキサノール、1−オクタノール等が挙げられる。炭素数8〜12のエーテル化合物としては、ジ−n−ブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジ−sec−ブチルエーテル、ジ−n−ペンチルエーテル、ジイソペンチルエーテル、ジ−sec−ペンチルエーテル、ジ−tert−アミルエーテル、ジ−n−ヘキシルエーテルから選ばれる1種以上の溶剤が挙げられる。前述の溶剤に加えてトルエン、キシレン、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、tert−ブチルベンゼン、メシチレン等の芳香族系の溶剤を用いることもできる。
【0108】
ネガティブトーン現像はトレンチパターン形成において、ポジティブトーン現像よりも高コントラストの光学像を利用できる場合が多い。ここでトレンチパターンとは、ラインアンドスペースパターンにおけるスペース部分がライン部分の寸法幅より狭いパターンを指し、スペース部とスペース部の間隔が無限に離れた場合、即ちライン幅が無限に広い場合が孤立トレンチに相当する。特にトレンチ幅(スペース幅)が微細になるほど、マスク上のラインパターン像を反転しトレンチを形成させるネガティブトーン現像は解像性の点で有利となる。
【0109】
ネガティブトーン現像によってホールパターンを形成する方法は、マスクデザインによる分類により、以下の3通りの方法に集約される。
(i)ドット状の遮光パターンが配置されたマスクを用い、ドット部分をネガ現像後にホールパターンとする方法。
(ii)格子状遮光パターンが配置されたマスクを用い、格子の交点をネガ現像後にホールパターンとする方法。
(iii)ライン状の遮光パターンが配置されたマスクを用いて2回の露光を行う方法であり、1回目の露光と2回目の露光のライン配列の向きを変えることでラインが交差するように重ねて露光し、ラインの交点をネガ現像後にホールパターンとする方法。
【0110】
上記(i)の方法について、ドット状の遮光パターンが配置されたマスクを
図7に例示する。この方法において、露光時の照明条件は特に限定されないが、
図17に示されるアパチャー形状のクロスポール照明(4重極照明)が狭ピッチ化のために好ましく、これにX−Y偏光照明あるいは円形偏光のAzimuthally偏光照明を組み合わせて更にコントラストを向上させることが可能である。
【0111】
上記(ii)の方法について、格子状遮光パターンが配置されたマスクを
図5に例示する。(i)の方法と同様、クロスポール照明及び偏光照明と組み合わせることが狭ピッチの解像性向上の点で好ましい。
【0112】
図8に、波長193nmのArFエキシマレーザーを用いたNA1.3レンズ、クロスポール照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク、Azimuthally偏光照明でのピッチ90nm、一辺の幅が60nmの正四角形のドットパターンが配置されたマスクにおける光学像コントラストを示す。また、
図6にNA1.3レンズ、クロスポール照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク、Azimuthally偏光照明でのピッチ90nm、幅30nmの格子状ラインパターンの光学像を示す。前者のドットパターンを利用する場合よりも後者の格子状パターンを利用する場合の方が、光の強度が低下するためにレジストの感度が低下する欠点があるものの、光学コントラストが向上するという利点がある。
【0113】
上記(ii)の方法において、更に透過率3〜15%のハーフトーン位相シフトマスクを用い、格子状のシフター格子の交点を現像後にホールパターンとする方法が、光学コントラストが向上することから好ましい。
【0114】
上記(iii)の方法について、
図15、
図16に示されるアパチャー形状のダイポール照明(2重極照明)を用い、X、Y方向のラインパターンを2回に分けて露光し、光学像を重ねることにより、上記(i)及び(ii)の方法に比べて、更に高いコントラストを得ることができる。ダイポール照明に併せてs偏光照明を加えると、更にコントラストを上げることができる。
【0115】
図2は、波長193nmのArFエキシマレーザーを用いたNA1.3レンズ、ダイポール照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク、s偏光でのピッチ90nm、ラインサイズ45nmのX方向ラインの光学像を示す。また、
図3は、波長193nmのArFエキシマレーザーを用いたNA1.3レンズ、ダイポール照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク、s偏光でのピッチ90nm、ラインサイズ45nmのY方向ラインの光学像を示す。色が濃い方が遮光部分、白い方が光の強い領域であり、白と黒のコントラスト差がはっきりしており、特に強い遮光部分が存在することが示されている。
図4は、Y方向ラインにX方向ラインの光学像を重ねたコントラストイメージである。XとYのラインの組み合わせで格子状のイメージができ上がるように思われるがそうではなく、光の弱い黒い部分のパターンは円形である。円形のサイズが大きい場合は菱形形状で隣のパターンと繋がり易いが、円のサイズが小さいほど円形度合いが向上し、強く遮光された小さな円が存在することが示されている。
【0116】
上記(iii)の2回露光する方法は、(i)や(ii)の1回露光による方法に比べてスループットが低下するものの、光学コントラストが高いことから、微細なパターンを寸法均一性よく形成でき、狭ピッチ化においても有利である。1回目のラインと2回目のラインがなす角度は90度が好ましいが、90度以外の角度でも構わなく、1回目のラインの寸法と2回目のラインの寸法やピッチが同じであっても異なってもよい。1回目のラインと、これと異なる位置に2回目のラインが1枚のマスクに有するマスクを用いて1回目の露光と2回目の露光を連続露光することも可能である。また、1枚のマスクを用いてX方向とY方向のコントラストを強調した2回の連続した露光は、現在の市販のスキャナーで行うことが可能である。
【0117】
ピッチや位置がランダムに配列された微細なホールパターンの形成は困難である。密集パターンは、ダイポール、クロスポール等の斜入射照明に位相シフトマスクと偏光を組み合わせた超解像技術によってコントラストを向上することができるが、孤立パターンのコントラストはそれほど向上しない。
【0118】
密集の繰り返しパターンに対して超解像技術を用いた場合、孤立パターンとの粗密(プロキシミティー)バイアスが問題になる。強い超解像技術を使えば使うほど密集パターンの解像力が向上するが、孤立パターンの解像力は変わらないために、粗密バイアスが拡大する。微細化に伴うホールパターンにおける粗密バイアスの増加は深刻な問題である。粗密バイアスを抑えるために、一般的にはマスクパターンの寸法にバイアスを付けることが行われている。粗密バイアスはレジスト組成物の特性、即ち、溶解コントラストや酸拡散によっても変わるために、レジスト組成物の種類毎にマスクの粗密バイアスが変化する。レジスト組成物の種類毎に粗密バイアスを変えたマスクを用いることになり、マスク製作の負担が増している。そこで、強い超解像照明で密集ホールパターンのみを解像させ、パターンの上に1回目のポジ型レジストパターンを溶解させないアルコール溶剤のネガ型レジスト膜を塗布し、不必要なホール部分を露光、現像することによって閉塞させて密集パターンと孤立パターンの両方を作製する方法(Pack and unpack;PAU法)が提案されている(Proc. SPIE Vol. 5753 p.171 (2005))。この方法の問題点は、1回目の露光と2回目の露光の位置ずれが挙げられ、この点については文献の著者も指摘している。また、2回目の現像で塞がれないホールパターンは2回現像されることになり、これによる寸法変化も問題として挙げられる。
【0119】
ランダムピッチのホールパターンをポジネガ反転の有機溶剤現像で形成するためには、格子状の遮光パターンが全面に配列され、ホールを形成する場所だけに格子の幅を太くしたマスクを用いることが有効である。
【0120】
上記(ii)の方法において、ハーフピッチ以下のライン幅による格子状の第1のシフターと、第1のシフター上に第1のシフターの線幅よりもウエハー上の寸法で2〜30nm太い第2のシフターが配列された位相シフトマスク(
図9)を用い、太いシフターが配列された点を現像後にホールパターンとする方法により、あるいはハーフピッチ以下のライン幅による格子状の第1のシフターと、第1のシフター上に第1のシフターの線幅よりもウエハー上の寸法で2〜100nm太いドットパターンの第2のシフターが配列された位相シフトマスク(
図11)を用い、太いシフターが配列された点を現像後にホールパターンとする方法により、ランダムピッチのホールパターンを形成することができる。
【0121】
ピッチ90nmで、20nmラインの格子状パターン上に、
図9に示すようにパターンを形成したい部分に十字の太い交差ラインを配置する。色の黒い部分がハーフトーンのシフター部分である。孤立性の所ほど太いライン(
図9では幅40nm)、密集部分では幅30nmのラインが配置されている。密集パターンよりも孤立パターンの方が光の強度が弱くなるために、太いラインが用いられる。密集パターンの端の部分も光の強度がやや低下するために、密集部分の中心よりもやや幅広の32nmのラインが宛われている。
図9のマスクを用いて得られた光学像のコントラストイメージを
図10に示す。黒い遮光部分にポジネガ反転によってホールが形成される。ホールが形成されるべき場所以外にも黒点が見られるが、黒点のサイズは小さいために、実際には殆ど転写されない。不必要な部分の格子ラインの幅を狭くしたりするなどの更なる最適化によって、不必要なホールの転写を防止することが可能である。
【0122】
同じく格子状の遮光パターンを全面に配列し、ホールを形成する場所だけに太いドットを配置したマスクを用いることもできる。ピッチ90nmで、15nmラインの格子状パターン上に、
図11に示すようにドットを形成したい部分に太いドットを配置する。色の黒い部分がハーフトーンのシフター部分である。孤立性の所ほど大きなドット(
図11では一辺90nm)、密集部分では一辺55nmの四角状のドットが配置されている。ドットの形状は正四角形でも、長方形、菱形、5角形、6角形、7角形、8角形以上の多角形、円形でも構わない。
図11のマスクを用いて得られた光学像のコントラストイメージを
図12に示す。
図10に比べてもほぼ同等の黒い遮光部分が存在し、ポジネガ反転によってホールが形成されることが示されている。
【0123】
図13に示されるような格子状パターンが配列されていないマスクを用いた場合、
図14に示されるように黒い遮光部分は現れない。この場合はホールの形成が困難であるか、もし形成できたとしても光学像のコントラストが低いために、マスク寸法のバラツキがホールの寸法のバラツキに大きく反映する結果となる。
【実施例】
【0124】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例等に制限されるものではない。
【0125】
レジスト組成物の調製
本発明のレジスト組成物を下記表1に示す組成で配合して溶剤に溶解させ、0.2μmのテフロン(登録商標)フィルターで濾過したレジスト溶液を調製した(Resist−1〜24)。また、同様の方法で、下記表2に示す組成の比較例のレジスト組成物を調製した(Resist−25〜29)。表1、2中のベース樹脂の構造、分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を下記表3〜6に示す。表3〜6中の( )内の数値は各繰り返し単位の構成比率(モル%)を示す。また、表1、2中の高分子添加剤の構造、分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)をそれぞれ下記表7に示す。表7中の( )内の数値は各繰り返し単位の構成比率(モル%)を示す。また、表1、2中の光酸発生剤の構造を表8に、表1、2中のクエンチャー成分の構造を表9に示す。なお、表8に示した光酸発生剤のうち、PAG−1〜8が本発明のレジスト組成物の必須成分である一般式(1)で表される構造の化合物に該当する。
【0126】
【表1】
【0127】
【表2】
【0128】
【表3】
【0129】
【表4】
【0130】
【表5】
【0131】
【表6】
【0132】
【表7】
【0133】
【表8】
【0134】
【表9】
【0135】
なお、上記表中に示した溶剤は以下の通りである。
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
CyHO:シクロヘキサノン
GBL:γ−ブチロラクトン
また、界面活性剤A(0.1質量部)を表1、2中に示したいずれのレジスト組成物にも添加した。界面活性剤Aの構造を以下に示す。
界面活性剤A:3−メチル−3−(2,2,2−トリフルオロエトキシメチル)オキセタン・テトラヒドロフラン・2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール共重合物(オムノバ社製)(下記式)
【化44】
【0136】
レジスト評価
[評価方法]
上記表1、2に示したレジスト組成物を、シリコンウエハーに信越化学工業(株)製スピンオンカーボン膜ODL−50(カーボンの含有量が80質量%)を200nm、その上に珪素含有スピンオンハードマスクSHB−A940(珪素の含有量が43質量%)を35nmの膜厚で成膜したトライレイヤープロセス用の基板上にスピンコーティングし、ホットプレートを用いて100℃で60秒間ベーク(PAB)し、レジスト膜の厚みを90nmにした。
これをArFエキシマレーザー液浸スキャナー((株)ニコン製、NSR−610C、NA1.30、σ0.98/0.74、ダイポール開口90度、s偏光照明)を用い、露光量を変化させながら露光を行い、その後任意の温度にて60秒間ベーク(PEB)し、その後任意の現像液により30秒間現像し、その後ジイソアミルエーテルでリンスした。使用した現像液DS−1〜3を下記に示す。
DS−1:酢酸ブチル
DS−2:2−ヘプタノン
DS−3:酢酸ブチル/安息香酸メチルの質量比1:1混合溶剤
【0137】
また、マスクは透過率6%のハーフトーン位相シフトマスクであり、マスク上デザインが45nmライン/90nmピッチ(1/4倍縮小投影露光のためマスク上実寸法は4倍)のパターンについて、光遮蔽部に形成されたトレンチパターンの寸法を(株)日立ハイテクノロジーズ製、測長SEM(CG4000)にて測定した。トレンチ幅の寸法が45nmとなる露光量を最適露光量(Eop、mJ/cm
2)とした。次に、最適露光量において、10nm間隔200nm範囲のトレンチ幅寸法のばらつき(3σ)を求め、エッジラフネス(nm)とした。
【0138】
また、露光量を小さくすることでトレンチ寸法は拡大し、ライン寸法は縮小するが、ラインが倒れずに解像するトレンチ幅の最大寸法を求め、倒れマージン(nm)とした。数値が大きいほど倒れ耐性が高く好ましい。
【0139】
上記表1中の本発明のレジスト組成物を評価した際の条件(PEB温度及び現像液)及び評価結果を下記表10に示す。また、上記表2中の比較例のレジスト組成物の評価結果を下記表11に示す。
【0140】
【表10】
【0141】
【表11】
【0142】
上記結果より、本発明の特定のレジスト組成物を用いた有機溶剤ネガ型現像を行うことにより、エッジラフネスが小さいトレンチパターンを形成でき、また、倒れマージンを改善できることがわかった。
【0143】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。