特許第5804237号(P5804237)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5804237
(24)【登録日】2015年9月11日
(45)【発行日】2015年11月4日
(54)【発明の名称】検査用治具
(51)【国際特許分類】
   G01R 1/073 20060101AFI20151015BHJP
【FI】
   G01R1/073 A
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-11899(P2011-11899)
(22)【出願日】2011年1月24日
(65)【公開番号】特開2012-154670(P2012-154670A)
(43)【公開日】2012年8月16日
【審査請求日】2014年1月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】392019709
【氏名又は名称】日本電産リード株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135965
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 要泰
(74)【代理人】
【識別番号】100111866
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 秀明
(72)【発明者】
【氏名】廣部 幸祐
(72)【発明者】
【氏名】時政 光伸
【審査官】 中村 説志
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/117058(WO,A1)
【文献】 特開2007−205808(JP,A)
【文献】 特開2010−085107(JP,A)
【文献】 特開2007−323865(JP,A)
【文献】 実開昭60−123666(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 1/06− 1/073
G01R31/02−31/06
G01R31/26−31/3193
H01L21/66
H01R13/00−13/74
C25D 1/00− 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査基板と基板検査用装置との間に配置され、該被検査基板と該基板検査用装置とを電気的に接続する検査用治具であって、
前記基板検査用装置に電気的に接続される複数の電極部を有する電極体と、
複数本のプローブを保持するとともに、各プローブの両端部を、前記被検査基板の検査対象である配線の所定の検査点及び前記電極体の所定の電極部へ夫々案内するプローブ保持部材とを備え、
前記各プローブは、導電材料により筒形状に形成され、軸方向に伸縮可能な第1接触子と、導電材料により棒形状に形成され、第1接触子と絶縁された状態で第1接触子の内部空間に収容された第2接触子とを有し、
前記電極体の電極部は、平面視においてリング形状に形成された第1電極部と、平面視において第1電極部と電気的に非接触で且つ第1電極部と同心円に配置された円形状の第2電極部とを有し、第1電極部及び第2電極部は、該電極体の表面から突出して形成され、
第1電極部は、第2電極部よりも前記電極体の厚み方向に相対的に突出した高さを有する頭頂部と、第1電極部の内径周縁から該頭頂部へ至る内側湾曲部と、第1電極部の外径周縁から該頭頂部へ至る外側湾曲部とを有し、
前記電極体と前記プローブ保持部材とが相対的に接近する時は、前記プローブの第1接触子の外側表面端部が、前記電極体の第1電極部の内側湾曲部と接触しながら接近することにより、該プローブは該電極体の電極に対して整合するよう位置決めされ、
接触して固着された時は、前記プローブの第1接触子は、前記電極体の第1電極部に電気的に接触し、該プローブの第2接触子は、該電極体の第2電極部に電気的に接触することを特徴とする、検査用治具。
【請求項2】
被検査基板と基板検査用装置との間に配置され、該被検査基板と該基板検査用装置とを電気的に接続する検査用治具であって、
前記基板検査用装置に電気的に接続される複数の電極部を有する電極体と、
複数本のプローブを保持するとともに、各プローブの両端部を、前記被検査基板の検査対象である配線の所定の検査点及び前記電極体の所定の電極部へ夫々案内するプローブ保持部材とを備え、
前記各プローブは、導電材料により筒形状に形成され、軸方向に伸縮可能な第1接触子と、導電材料により棒形状に形成され、第1接触子と絶縁された状態で第1接触子の内部空間に収容された第2接触子とを有し、
前記電極体の電極部は、平面視においてリング形状に形成された第1電極部と、平面視において第1電極部と電気的に非接触で且つ第1電極部と同心円に配置された円形状の第2電極部とを有し、第1電極部及び第2電極部は、該電極体の表面から突出して形成され、
第1電極部は、第2電極部よりも前記電極体の厚み方向に相対的に突出した高さを有する頭頂部と、第1電極部の内径周縁から該頭頂部へ至る内側湾曲部と、第1電極部の外径周縁から該頭頂部へ至る外側湾曲部とを有し、
前記電極体と前記プローブ保持部材とが相対的に接近する時は、前記プローブの第1接触子の内側表面端部が、前記電極体の第1電極部の外側湾曲部と接触しながら接近することにより、該プローブは該電極体の電極に対して整合するよう位置決めされ、
接触して固着された時は、前記プローブの第1接触子は、前記電極体の第1電極部に電気的に接触し、該プローブの第2接触子は、該電極体の第2電極部に電気的に接触することを特徴とする、検査用治具。
【請求項3】
前記電極体の第1電極部の突出量と第2電極部の突出量の比が、1.5〜5:1に形成されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の検査用治具。
【請求項4】
前記電極体の第1電極部の突出部及び前記第2電極部の突出部が、めっきにより形成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の検査用治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検査基板の検査対象となる配線パターンの電気的特性を検査するために用いられる検査用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
被検査基板に設けられた配線パターン等の検査対象電気的特性に関する検査手法として、電流供給用の接触子と電圧計測用の接触子の2つの接触子を設け、その2つの接触子を検査点に同時に接触させて検査対象の検査を行う手法(いわゆる4接点法)がある(例えば、特許文献1)。この4接点法では、電流供給用の接触子と電圧計測用の接触子とを分離したことで、電圧計測用の接触子と検査点との間に流れる電流が実質的に無視できる程度に抑えられるため、電圧計測用の接触子と検査点との接触抵抗の影響を実質的に除外して、電圧計測用の接触子が接触する2箇所の検査点間の電圧が正確に計測できる。
【0003】
このような4接点法に用いられる従来のプローブ及び検査用治具では、絶縁状態で並列配置された針状の2つの接触子をセットにして各検査点に対応させて設けており、その2つの接触子を各検査点に同時に接触させるようになっている。
【0004】
また、近年、基板に設けられる配線パターン等の細密化が急速に進展しているため、検査用治具にも検査対象の細密化への対応が求められている。
【0005】
このような微細化に対応するために、特許文献2に開示されるような基板検査用治具の提案がなされている。この特許文献2に開示される技術では、導電性の筒状接触子とこの筒状接触子の内部に棒状接触子を内部に収容することにより、狭ピッチに対応することを可能としている。
【0006】
【特許文献1】特開2004−184374号公報
【特許文献2】特開2007−205808号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2に開示されるような接触子を利用する場合には、検査装置と導通接続される電極部を接触子の断面形状と同様に形成されている。
【0008】
しかしながら、このような電極部の構造では、筒状接触子の外径よりも大きい径の電極部(部材)になり、電極部のピッチが狭ピッチに対応することができなかったり、電極部の構造が複雑になったりする問題を有していた。
【0009】
また、このような筒状接触子と棒状接触子のような構造を有する接触子(同軸接触子)は、基板に形成される微細な配線の抵抗値を算出するために用いられるため、同軸接触子と電極部との接触子の安定性が高く求められる。
【0010】
そこで、本発明の解決すべき課題は、上記の如き同軸接触子を利用する場合に、電極部の構成の微細化及び簡易化が図れるとともに、同軸接触子と電極部の接触安定性の高い基板検査用治具、その電極構造及びその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、本願発明の一面では、基板に形成される配線の検査を行う検査装置と該基板を電気的に接続する検査用治具であって、一端が被検査基板の検査対象の検査点に導通接触し、他端が電気的特性を検査するための検査装置に電気的に接続される電極部へ導通接触する複数のプローブと、前記プローブの両端を夫々所定の前記検査点及び前記電極部へ案内するとともに、該プローブを保持する保持体と、複数の前記電極部を備える電極体と、を備え、前記プローブは、導電材料により筒形状に形成された第1接触子と、導電材料により棒形状に形成され、前記第1接触子と絶縁された状態で前記第1接触子の内部空間に収容された第2接触子と、を備え、前記電極部は、平面視においてリング形状に形成されるとともに、前記第1接触子と導通接触する第1電極部と、平面視において前記第1電極部と電気的に非接触で且つ該第1電極部と同心円に配置されるとともに、前記第2接触子と導通接触する円形状の第2電極部と、を備え、前記第1電極部が、前記第2電極部よりも前記電極体の厚み方向に対して、相対的に突出していることを特徴とする検査用治具を提供する。
上記発明に関し、前記第1電極部及び前記第2電極部は、前記電極部表面から突出して形成されていることを特徴とすることができる
上記発明に関し、前記第1電極部の突出量と前記第2電極部の突出量の比が、1.5〜5:1に形成されることを特徴とすることができる
上記発明に関し、前記第1電極部は、前記突出する高さを有する頭頂部と、前記第1電極部の内径周縁から前記頭頂部へ形成される内側湾曲部と、前記第1電極部の外径周縁から前記頭頂部へ形成される外側湾曲部を備えてなり、前記第1接触子の外側表面が、前記内側湾曲部と接続されることを特徴とすることができる
上記発明に関し、前記第1電極部は、前記突出する高さを有する頭頂部と、前記第1電極部の内径周縁から前記頭頂部へ形成される内側湾曲部と、前記第1電極部の外径周縁から前記頭頂部へ形成される外側湾曲部を備えてなり、前記第1接触子の内側表面が、前記外側湾曲部にて接続されることを特徴とすることができる
上記発明に関し、前記第1電極部の突出部と前記第2電極部の突出部が、めっきにより形成されていることを特徴とすることができる
更に、本願発明の一面では、一端が被検査基板の検査対象の検査点に導通接触し、他端が電気的特性を検査するための検査装置に電気的に接続される電極部へ導通接触するプローブを複数備えてなる検査用治具の電極構造であって、平面視においてリング形状に形成される第1電極部と、平面視において前記第1電極部と電気的に非接触で且つ該第1電極部と同心円に配置される第2電極部と、を備え、前記第1電極部が、前記第2電極部よりも前記電極体の厚み方向に対して、相対的に突出していることを特徴とする検査用治具の電極構造を提供する。
更に、本願発明の一面では、一端が被検査基板の検査対象の検査点に導通接触し、他端が電気的特性を検査するための検査装置に電気的に接続される電極部へ導通接触するプローブを複数備えてなる検査用治具の電極構造の製造方法であって、導電性の芯線と、該芯線の周縁に配置される絶縁性の絶縁層と、該絶縁層の周縁に配置される導電性の導電層が、同心円に配置される線状部材を、該線状部材を保持する保持孔を有する絶縁性の保持体に貫通配置し、前記保持体から突出した前記線状部材の突出部分を、該保持体の表面と面一となるように除去し、前記導電層の表面部分と前記芯線の表面部分にめっきを行い、該導電層のめっき厚が、該芯線のめっき厚よりも厚くなるように形成することを特徴とする検査用治具の電極構造の製造方法を提供する。
上記発明に関し、前記めっきは、電解めっきにより行われ、前記導電層及び前記芯線へ供給する電力により、前記導電層のめっき厚と前記芯線のめっき厚が調整されることを特徴とすることができる
【発明の効果】
【0012】
上記発明によれば、同軸接触子を利用する場合に、電極部の構成の微細化及び簡易化が図れるとともに、同軸接触子と電極部の接触安定性の高い基板検査用治具、その電極構造及びその製造方法を提供することができる。
上記発明によれば、電極体表面から第1電極部と第2電極部が突出するように形成されているので、各電極部を容易に形成することができるとともに、突出量の制御を容易に行うことができる。
上記発明によれば、第1電極部の突出量と第2電極部の突出量の比が、1.5〜5:1に形成されるので、接触子と電極部が好適な接触圧で安定して導通接触することができる。
上記発明によれば、第1接触子の外側表面が、内側湾曲部と接続されることになるので、第1電極部41が内側に配置されることになる第1接触子11を内側に押し付ける向きに力が働くように配置されることになり、安定した接続状態を提供することができる。
上記発明によれば、第1接触子の内側表面が、外側湾曲部にて接続されることになるので、第1電極部が外側に配置されることになる第1接触子11を外側に押し広げる向きに力が働くように配置されることになり安定した接続状態を提供することができる。
上記発明によれば、第1電極部の突出部と前記第2電極部の突出部が、めっきにより形成されているので、容易に製造することができる。
上記発明によれば、めっきが、電解めっきにより行われ、導電層及び芯線へ供給する電力により、導電層のめっき厚と前記芯線のめっき厚が調整されるので、容易に電極部を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は本発明の一実施形態に係る検査用治具に用いられるプローブを側方から見た図である。図2(a)は図1のプローブに備えられる第1接触子を側方から見た図であり、図2(b)は図1のプローブに備えられる第2接触子を側方から見た図である。
【0014】
本実施形態に係るプローブ1は、図1図2(a)及び図2(b)に示すように、筒形状を有する第1接触子11及び細長い棒形状の第2接触子12を備えて構成されている。このプローブ1は、被検査基板の検査対象の電気的特性を検査するために用いられる。検査対象としては、例えば、被検査基板に設けられた配線パターン、その配線パターンに付与された半田バンプ、又は、配線パターン及び半田バンプの両方が挙げられる(以下、本出願書類では、これらを総称して「配線」という。)。検査の内容としては、例えば、配線パターンが導通しているか否か等を検査する導通検査、配線パターン同士が絶縁されているか否か等を検査する絶縁検査等が挙げられる。特に、本実施形態に係るプローブ1は、後述するように第1接触子11内に第2接触子12を絶縁状態で挿入した同軸構造を有しており、これらの2つの第1接触子11と第2接触子12を検査対象の同一の検査点に電気的に接触させることにより、検査対象の電気的特性を4接点法により検査できるようになっている。なお、図1等では、第1接触子11が、第2接触子12よりも僅かに長い状態に形成されている。
【0015】
第1接触子11は、図2(a)に示すように細長い筒形状を有している。この第1接触子11は、筒状の導電部113とこの導電部113の外側周縁を覆う絶縁被膜112から形成されている。第1接触子11は、この外側周縁を絶縁被膜112により覆われており、この絶縁被膜112は第1接触子11の両端(先端と後端)の部分を除いて形成される。このように絶縁被膜112を設けることにより、隣接する第1接触子11との短絡不良を防止することができる。なお、図1又は図2(a)で示される絶縁被覆112は、後述する伸縮部111にも設けられているが、伸縮部111の部分には設けなくても良い。
【0016】
この第1接触子11は、その周縁の少なくとも1カ所(本実施形態では2箇所)に二つの伸縮部111が設けられていることが好ましい。このような伸縮部111を備えることによって、第1接触子11が検査点に接触した場合に、この伸縮部111が収縮することで、第1接触子11よりも短い第2接触子12が検査点に接触するように構成することができる。この伸縮部111は、プローブ1を保持するプローブ保持部材の板状部材の貫通孔内に配置されるように形成されることが好ましい。これは、伸縮部111が板状部材の貫通孔内に配置されることにより、板状部材の貫通孔側壁が伸縮部111の案内として働くことができるからである。
【0017】
この伸縮部111は、第1接触子11の軸方向に弾性的に伸縮するように、筒の側壁をスリット状の切欠きを設けることにより形成することができる。なお、この伸縮部111は、第1接触子11を形成する筒状部材の一部を、レーザ光等を用いて螺旋状にカットされて形成することができる。第1接触子11を形成する筒状部材の材料は、金属材料(例えば、ニッケル(Ni)又はベリリウム銅(CuBe)等)が用いられる。
【0018】
第2接触子12は、導電材料により細長く形成され、第1接触子11内(より具体的には、その中心軸が第1接触子11と中心軸が略一致するように第1接触子11内)に挿入される。この第2接触子12は、図2(b)で示す如く、細長い棒状に形成する。なお、第2接触子12の先端は先細り形状に形成しても良い。第2接触子12は、細い棒状に形成される導電部122とこの導電部122の外側周縁を覆う絶縁被覆121を有している。
【0019】
第2接触子12は第1接触子11内に挿入されるため、第2接触子12の外径は第1接触子11の内径よりも小さく設定されているが、第1接触子11と第2接触子12との間の絶縁を確保するため、第2接触子12の外周側面(外周面における径方向外方を向いた面)には絶縁材料(例えば、樹脂)からなる絶縁被覆121が付与されている。第2接触子12を構成する棒状部材や筒状部材に絶縁被覆を付与してから伸縮部を形成する方法、又は、筒状部材や棒状部材に伸縮部を形成してから絶縁被覆を付与する方法が採用される。
【0020】
図1で示されるプローブの構成では、第1接触子11が、後述する第2接触子12よりも僅かに長く形成されており、プローブ1が検査点に接触して検査が実施される場合には、後述する第1接触子11の伸縮部が収縮することで、第2接触子12も検査点に接触することになる。なお、検査点に第1接触子11及び第2接触子12とも接触することができれば、その長さは特に限定されない。
このプローブ1は、第1接触子11と第2接触子12が、両端側から押圧された場合には湾曲することができるように形成される。このように形成されることにより、プローブ1が湾曲することにより、プローブ1の両端から外向きに働く付勢力が生じることになる。
【0021】
第1接触子11と第2接触子12の長軸方向の長さは、例えば5〜100mmに設定され、第1接触子11が第2接触子12より僅かに長い(例えば、1〜100μm)ように設定される。第1接触子11の外径は、例えば、50〜200μmに形成され、その内径は30〜180μmに形成される。第2接触子12の直径は、例えば、20〜150μmに設定される。
【0022】
上記のように、本実施形態に係るプローブ1は、導電材料により筒形形状に形成された第1接触子11内に、導電材料により細長く形成された第2接触子12が、第1接触子11と絶縁された状態で挿入されるいわゆる同軸構造となっている。それ故、外側の第1接触子11と内側の第2接触子12とを絶縁状態を確保しながら容易に高い位置精度で近接配置できる。その結果、被検査基板に設けられた検査対象(例えば、配線パターン)の細密化に十分に対応して、4接点法による検査を高い信頼性で実施できる。
【0023】
また、プローブ1を構成する第1接触子11及び第2接触子12の少なくとも1箇所(本実施形態では2箇所)に軸方向に弾性的に伸縮する伸縮部がそれぞれ設けられていることが好ましい。この伸縮部を有する接触子を長く形成し、伸縮部が収縮することにより、他の接触子との長さが等しくなるように形成することで、二つの接触子とも検査点に接触することができるようになる。
【0024】
また、このような伸縮部が設けられることによって、軸方向に圧縮されたときの反発力が安定する。その結果、第1接触子11及び第2接触子12の先端が被検査基板の検査対象に接触されたときに、第1接触子11及び第2接触子12の先端と検査対象との間、及び、第1接触子11及び第2接触子12の後端と基板検査装置本体側の電極部との間の押圧力を安定させることができ、第1接触子11及び第2接触子12と検査対象及び電極部との間の電気的な接続状態(例えば、接触抵抗)を安定させることができる。
【0025】
上記する説明のプローブ1は、伸縮部を利用することにより、検査点と電極部へ圧接されるプローブ構造を説明したが、第1接触子11及び/又は第2接触子12自体が可撓性を有する部材で形成し、両端から押圧された場合にどちらか又は両接触子が湾曲することによって、同時に検査点と電極部を押圧して接触するように形成することもできる。
なお、第1接触子11と第2接触子12は、短絡不良を生じさせず且つ互いの動きに影響を与えない範囲にて、接着剤、かしめやはんだなどによりお互いを固着しておいても良い。
【0026】
図3図1のプローブを用いた本発明の一実施形態に係る検査用治具の構成を示す概略断面図である。図4図3の構成の一部を拡大して示す図である。図4図3の検査用治具における各プローブに備えられる接触子と電極部との位置関係等を示す図である。なお、実際の検査用治具は、プローブと電極部は接触して(プローブ保持部材と電極保持部材が接続して)設けられている。なお、図3では基板Tと検査点Bは点線にて示されている。図3図4では、説明の都合上、一組のプローブと電極部が示されている。
【0027】
検査用治具2は、複数のプローブ1、プローブ保持部材3、プローブ1と同数セットの電極部を有する電極体4を備えており、基板Tの検査対象の電気的特性を検査するために用いられる。検査用治具2は、図示されない基板検査用装置に電気的に接続されており、この基板検査用装置が検査用治具2からの電気的特性を基に配線パターンの良・不良を判定する。
【0028】
図3の概略構成図では、プローブ1の先端が基板Tの配線パターンに付与された半田バンプBに接触され、プローブ1の後端が電極部に接触することを示している。具体的には、基板Tの1つ検査点(半田バンプB)にプローブ1の第1接触子11の先端11aと第2接触子12の先端12aが接触されるようになっている。また、一方で、各電極部に第1接触子11の後端11bと第2接触子12の後端12bが接触することになる。
なお、このプローブ1の一方の接触子(例えば、第1接触子11)を介して基板Tの検査用Bへ電流の供給が行われ、他方の接触子(第2接触子12)を介して検査点間の電位計測が行われる。これによって、基板Tの配線パターンの電気的特性に関する4接点法による検査が行われることになる。
【0029】
プローブ保持部材3は、図3に示すように、プローブ1を保持する部材であり、絶縁材料によって形成されている。図3の実施形態では、プローブ保持部材3として、第1保持部材31と第2保持部材32を用いて形成している。第1保持部材31は、プローブ1の後端1bを所定の電極部へ案内する案内孔31hが形成されている。第2保持部材32は、プローブ1の先端11aを所定の検査点に案内する案内孔32hが形成される。
【0030】
このプローブ保持部材3は、これら二つの案内孔の配置により、プローブ1を湾曲して保持することが好ましく、プローブ保持部材3の平面に対して直角方向に重なり合わないように配置されることもできる(図3では、二つの案内孔が直角方向に重なり合うように配置されているが、図3の側面において重なり合わないように配置されている)。
【0031】
第1保持部材31と第2保持部材32は、複数の板状部材から形成することができ、この枚数は特に限定されるものではない。図3の実施形態においては、第1保持部材31と第2保持部材32は、夫々二枚の板状部材から形成されている。また、第1保持部材31と第2保持部材32は、所定間隔(空間)を有して配置されている。なお、プローブ1は、第1保持部材31と第2保持部材32の間に形成される空間にて、湾曲されることになる。
【0032】
第1保持部材31に形成される案内孔31hは、プローブ1がプローブ保持部材3から抜け出ることを防止するために、第1接触子11の絶縁被膜112の境界部分が案内孔31hに係止されるよう、案内孔31hの口径が絶縁被膜112の外径よりも僅かに短く形成することができる。組み立てられた検査用治具2では、プローブ1の先端11aが、プローブ保持部材3の第2保持部材32案内孔32hから突出して保持されることになる。またこのとき、プローブ1の後端1bは、電極体4の電極部40と当接している。
実際の検査用治具2は、上記の如く、電極体4とプローブ保持部材3が接触して固着され、プローブ保持部材3からプローブ1の先端が僅かに突出していることになる。このとき、プローブ1は、絶縁被覆112と案内孔31hにより係止され、プローブ1が湾曲し且つ伸縮部111が所定量収縮した状態となり、プローブ1が電極部を押圧している状態となっている。この後、検査が実施され、プローブ1の先端が検査点に接触すると、更に、プローブ1が湾曲して検査点と電極部を押圧することになる。
【0033】
電極体4は、第1電極部41、第2電極部42と電極保持部43を有してなる。電極保持部43は絶縁部材から形成され、第1電極部41と第2電極部42が短絡しないように形成される。
第1電極部41は、図4(a)で示される如く、プローブ1の第1接触子11の後端11bと導通接触する。第2電極部42は、図4(a)で示される如く、プローブ1の第2接触子12の後端12bと導通接触する。
【0034】
第1電極部41は、平面視において、リング形状に形成される(図4(b)参照)。この第1電極部41は、第1接触子11と導通接触するため、第1接触子11と同じ断面形状(リング形状)に形成されている。第1電極部41の外径は、第1接触子11の内径よりも大きく形成され、第1電極部41の内径は、第1接触子11の外径よりも小さく形成される。
【0035】
第2電極部42は、平面視において、第1電極部41と電気的に非接触で且つ、第1電極部41と同心円に配置される円形状に形成される(図4(b)参照)。この第2電極部42は、細い棒形状の第2接触子12と導通接触するため、第2接触子21の外径よりも僅かに大きい直径を有する円形状に形成される。
【0036】
第1電極部41は所定の高さ41hを有して形成され、第2電極部42は所定の高さ42hを有して形成される。この第1電極部41の高さ41hは、第2電極部42の高さ42hよりも電極体4の厚み方向に対して、相対的に突出して形成される。具体的には、第1電極部41及び第2電極部42は、電極体4の表面から突出して形成され、第1電極部41の高さ41hが、第2電極部42の高さ42hよりも、電極体4の表面から高くなるように形成されている。
【0037】
このように第1電極部41の高さ41hが高くなるように高さに差異を設けて形成することにより、第1接触子11と第1電極部41が接触する高さ位置と、第2接触子22と第2電極部42が接触する高さ位置を相違させて、夫々の接触子が電極部に安定的に導通接触させることができる。
【0038】
第1電極部41の高さ41hと、第2電極部42の高さ42hの比は、1.5〜5:1に形成されることが好ましい。このような比に形成されることにより、第1接触子11と第1電極部41の接触位置が、第2接触子22と第2電極部42の接触位置を回りから抑えるような位置関係となり、各接触子と電極部が安定して接触することになる。
この第2電極部42の高さ42hは、例えば、1〜10μmに形成することができ、このような高さに応じて、第1電極部41の高さ41hも形成されることができる。
【0039】
各接触子と電極部の接触位置関係は、上記の如き高さ関係を有しているが、更に、下記のような配置関係を有していることが好ましい。
【0040】
第1電極部41が、突出する高さ41hを有する第1頭頂部411と、第1電極部41の内径41i周縁から第1頭頂部411へ形成される内側湾曲部412と、第1電極部41の外径41o周縁から第1頭頂部411へ形成される外側湾曲部413を備えるように形成する(図4参照)。
【0041】
このとき、第1接触子11の外側表面が、第1電極部41の内側湾曲部412と接続されるように、第1接触子11と第1電極部41を形成する(図4(a)参照)。このように、第1接触子11の外側表面と内側湾曲部412とが導通接触して接続されることにより、第1電極部41が内側に配置されることになる第1接触子11を内側方向に向かって押し付けるように配置されることになり、接続状態が安定することになる。
【0042】
また、第1接触子11の内側表面が、第1電極部41の外側湾曲部413と接続されるように、第1接触子11と第1電極部41を形成することもできる。このように、第1接触子11の内側表面と外側湾曲部413とが導通接触して接続されることにより、第1電極部41が外側に配置されることになる第1接触子11を外側方向に向かって広がり押されるように配置されることになり、接続状態が安定することになる。
【0043】
第1電極部41は、第1導電線414を有している。この第1導電線414は、第1電極部41と電気的に接続され、第1電極部41からの電気信号を検査装置へ送受信する。この第1導電線414は、後述する第2導電線422と同軸状に配置されてなり、第1導電線414と第2導電線422との間には絶縁性が保たれている。なお、第1電極部41は、第1導電線414の端面と電極体4の表面が面一となるように形成されており、その第1導電線414の端面に第1電極部41が形成されることになる。
【0044】
第2電極部42は、第2頭頂部421と第2導電線422を有している。第2頭頂部421は、第2電極部42の高さ42hを有している。第2導電線422は、第2頭頂部421と電気的に接続され、第2電極部42からの電気信号を検査装置へ送受信する。
【0045】
この第2導電線422は、平面視においてリング状に形成される第1導電線414の内側に配置される。なお、第2電極部42は、第2導電線422の端面と電極体4の表面が面一となるように形成されており、その第2導電線421の端面に第2頭頂部422が形成されることになる。
【0046】
第1電極部41の第1頭頂部411と第2電極部42の第2頭頂部421は、電極体4の表面から突出して形成されるが、めっきにより形成することができる。このようにめっきにより形成することで容易に製造することができる。この第1電極部41と第2電極部42の製造方法は、例えば、絶縁層を間に形成される同軸線の部材を準備し、電極体4となる絶縁部材にこの同軸線を位置決め配置する貫通孔を設けておく。
そして、この貫通孔にこの同軸線を貫通配置して、電極体4の表面と同軸線が面一となるように、同軸線を切断する。次に、電極体4の表面には導電層が二層構造の部材が配置されることになるので、この電極体4の表面にめっきを施す。このとき、外側の導電端面(第1導電線414の端面)と内側の導電端面(第2導電線422の端面)のめっき厚を電流やその時間に応じて制御する。
この制御により、第1電極部41と第2電極部42の高さ(電極体表面からの突出量)を調整して、第1電極部41の高さ41hが第2電極部42の高さ42hよりも高くなるように形成される。
【0047】
ここで、図5を参照して、第1電極部41及び第2電極部42の製造する工程について説明する。なお、図5では三つの電極部を製造する場合を概略的に示している。
【0048】
まず、第1導電線414と第2導電線422となる二層構造の同軸線aを準備する。次に、電極部を保持する電極体4となる絶縁性の板状部材bを用意し、この板状部材bに同軸線aを貫通配置するための貫通孔cを所望の数(図5では三箇所)設ける。そして、板状部材aの貫通孔cに同軸線を貫通支持させる。板状部材aの表面から突出する同軸線cを切除し、板状部材aの表面と同軸線cの切断面が面一となるように形成する(図5(a)参照)。
【0049】
続いて、図5(b)に示すように、図5(a)の如き形成された板状部材bをめっき液dの入っためっき槽eに浸す。このとき、二層構造の同軸線aは、外側導電部a1と内側導電部a2を有している。図5(b)では複数の外側導電部a1を並列接続して、電流の供給量や電流の供給時間の制御を一括して行うように接続している。また、複数の内側導電部a2を並列接続して、電流の供給量や電流の供給時間を一括制御するように接続している。
【0050】
このように接続することによって、第1電極部41となる外側導電部a1のめっき高さや第2電極部42となる内側導電部a2のめっき高さを夫々均一的に制御することができる。また、外側導電部a1のめっき高さが内側導電部a2のめっき高さよりも高く形成する制御を行う場合に、外側導電部a1と内側導電部a2のめっき高さの制御を比較しながら実施することができ、電流の供給量や電流の供給時間を容易に制御することができるようになる。
【0051】
図5(b)に示される状態にて、上記の方法により、第1電極部41となる外側導電部a1のめっき高さが、第2電極部42となる内側導電部a2のめっき高さよりも高くなるように、めっきが実施されることになる。
【0052】
以上が本発明の電極部を形成する方法である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る検査用治具に用いられるプローブを側方から見た図である。
図2図2(a)は図1のプローブに備えられる第1接触子を側方から見た図であり、図2(b)は図1のプローブに備えられる第2接触子を側方から見た図である。
図3図3は、図1のプローブを用いた本発明の一実施形態に係る検査用治具の構成を示す断面図である。なお、プローブ、プローブ保持部材、電極体と検査点との位置関係を概略的に示している。
図4図4(a)は電極体とプローブの構成の一部を拡大して示す図であり、図4(b)は平面視における電極体の電極位置の関係を示す概略図である。点線は、第1導電線と第2導電線を示している。
図5図5(a)及び図5(b)は、第1電極部及び第2電極部の作製工程の説明図である。
【符号の説明】
【0054】
1 プローブ
11 第1接触子
12 第2接触子
2 検査用治具
3 プローブ保持部材
4 電極体
41 第1電極部
42 第2電極部
図1
図2
図3
図4
図5