(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
I.シリコーンミスト抑制剤
本発明は第一に、シリコーンミスト抑制剤を提供する。本発明のシリコーンミスト抑制剤は、100〜4000nmの範囲にある体積平均粒径を有する、有機粉末、無機粉末、及び無機・有機複合体粉末から選ばれる少なくとも1種類からなることを特徴とする。本発明のシリコーンミスト抑制剤は、好ましくは200〜2500nmの範囲、更に好ましくは300〜2000nmの範囲にある体積平均粒径を有する。体積平均粒径が上記下限値未満では、粉末の凝集性が高くなり、シリコーン組成物中に粉末が均一に分散できなくなり、ミスト抑制効果が乏しくなる。体積平均粒径が上記上限値超ではミスト発生の原因である霧状のシリコーンオイル中に粉末自体が存在できなくなり、ミスト抑制効果が乏しくなる。尚、本発明において、体積平均粒径とは、レーザー回折・散乱法によって求めた体積基準の平均粒径を意味する。体積平均粒経は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置で測定することができる。例えば、株式会社 堀場製作所製のLA−920や、日機装株式会社製のマイクロトラックMT3000により測定することができる。
【0013】
有機粉末、無機粉末、及び無機・有機複合体粉末の種類及び形状は特に限定されず、従来公知の粉末を使用することができる。例えば、球状、紡錘形状、偏平形状、粒子表面に凸部がある形状、粒子表面に凹みがある形状、不定形状、粒子が2個以上直鎖状に連なった形状、粒子が2個以上凝集した形状等を有する粉末が挙げられる。中でも、球状が好ましい。粒子の形状は該粒子を電子顕微鏡にて観察することにより確認することができる。粉末は2種類以上を含む複合粉末であっても構わない。以下、各粉末についてさらに詳しく説明する。
【0014】
1.有機粉末
有機粉末の種類は、上記平均粒径を有するものであれば特に制限されるものでない。特には、有機粉末の粒径分布を小さくするために乳化重合或いは微細懸濁重合されているものが好ましい。有機粉末としては、ポリ(メタ)アクリレート等のアクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、フェノール系樹脂、ウレタン系樹脂、ナイロン系樹脂、ビニル系樹脂、アクリルアミド系樹脂、セルロース系樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、及び、4フッ化エチレン樹脂(PTFE)等のフッ素ポリマー等の粉末が挙げられる。これらは、1種類を単独で、あるいは2種類以上を混合して使用してもよい。中でも、フッ素ポリマー、(メタ)アクリルポリマー、ポリエチレン、又はポリスチレンの粉末が好ましく、特にはフッ素ポリマーを主成分とする粉末、及び(メタ)アクリルポリマーを主成分とする粉末が好ましい。これらの市販品としては、株式会社喜多村社製のKT/KTLシリーズ(4フッ化エチレン樹脂の微粉末)、及び綜研化学株式会社製のMPシリーズ(アクリル超微粉体)を使用することができる。
【0015】
2.無機粉末
無機粉末の種類は、上記平均粒径を有するものであれば特に制限されるものでない。無機粉末としては、カーボン、アルミニウム、アルミナ、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、石英粉末、カーボンブラック、ヒュームドシリカ、疎水化ヒュームドシリカ、沈降法シリカ、疎水化沈降法シリカ、溶融シリカ、けい藻土、タルク、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、二酸化チタン、酸化鉄、炭酸マンガン、及び水酸化セリウム等の粉末が使用できる。これらは、1種類を単独で、あるいは2種類以上を混合して使用してもよい。
【0016】
3.無機・有機複合体粉末
無機・有機複合体粉末としてはシリコーン粒子の粉末を使用することができる。該シリコーン粒子の種類は上記平均粒径を有するものであれば特に限定されず、従来公知のシリコーン粒子を使用することができる。好ましくは、シリコーンゴム粒子、ポリオルガノシルセスキオキサン粒子、シリコーンゴム粒子表面をポリオルガノシルセスキオキサンで被覆した粒子、及びシラン表面処理シリカ系粒子が挙げられる。これらのシリコーン粒子は、1種類を単独で、あるいは2種類以上を混合して使用してもよい。以下、各シリコーン粒子について詳しく説明する。
【0017】
(1)シリコーンゴム粒子
シリコーンゴム粒子は、ゴム弾性を有し、べたつきがないシリコーン硬化物の粒子である。シリコーンゴム粒子は従来公知のものを使用することができ、その構造は特に限定されるものでない。特には、硬化性液状シリコーン組成物の硬化物である。該シリコーンゴム粒子のゴム硬度は、JIS K 6253に規定されているタイプAデュロメータによる測定で5以上、より好ましくは10以上、更に好ましくは20以上であるのがよい。ゴム硬度の上限は特に制限されないが、通常90以下、特には80以下である。ゴム硬度が上記下限値未満であると、シリコーンゴム粒子の凝集性が強くなり、無溶剤型シリコーン組成物に対する分散性が悪く、ミスト抑制性能が乏しくなる場合がある。
【0018】
シリコーンゴム粒子の製造方法は、従来公知の方法に従えばよい。該方法としては、硬化性液状シリコーン組成物を、縮合反応、ラジカル反応、及び付加反応により硬化して製造する方法が挙げられる。詳細には、メトキシシリル基(≡SiOCH
3)とヒドロキシシリル基(≡SiOH)との縮合反応、ヒドロシリル基(≡SiH)とヒドロキシシリル基(≡SiOH)との縮合反応、メルカプトプロピルシリル基(≡Si−C
3H
6SH)とビニルシリル基(≡SiCH=CH
2)とのラジカル反応、及びビニルシリル基(≡SiCH=CH
2)とヒドロシリル基(≡SiH)との付加反応によるものが例示される。特には、反応性の点から、縮合反応又は付加反応により硬化することが好ましい。
【0019】
例えば、付加反応を用いて球状のシリコーンゴム粒子を製造する方法としては、特開昭62−243621号公報、特開昭62−257939号公報、及び特開昭63−17959号公報に記載されている方法を使用することができる。特開昭62−243621号公報には、一分子中に1価オレフィン性不飽和基を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン、一分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、および白金系触媒とからなる硬化性液状シリコーン組成物を、界面活性剤を用いて温度0〜25℃の範囲で乳化して水性エマルジョンとした後、25℃以上の水に分散し、硬化させることにより製造する方法が記載されている。特開昭62−257939号公報には、一分子中に1価オレフィン性不飽和基を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサンと、一分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンとからなる硬化性液状シリコーン組成物を、界面活性剤を用いて水性エマルジョンとした後、白金系触媒を添加して硬化させることにより製造する方法が記載されている。特開昭63−17959号公報には、一分子中に1価オレフィン性不飽和基を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン、一分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、および白金系触媒とからなる硬化性液状シリコーン組成物を、温度−60〜+5℃の範囲で混合し、該混合物を温度80〜200℃の熱風中に噴霧して噴霧状態で硬化させることにより製造する方法が記載されている。
【0020】
該シリコーンゴム粒子としては、特には、−(R
12SiO
2/2)
n−で示される直鎖状オルガノシロキサンブロックを有するオルガノポリシロキサンの硬化物が挙げられる。上記式中のR
1は、置換もしくは非置換の、炭素数1〜30、好ましくは1〜20の1価炭化水素基である。R
1としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基(=エイコシル基)、ヘンイコシル基(=ヘンエイコシル基)、ドコシル基、トリコシル基、テトラデシル基、トリアコンチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等のシクロアルキル基;およびこれらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部をハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)および/またはアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、エポキシ基、グリシドキシ基、カルボキシル基等で置換した基等が挙げられる。中でも、メチル基が好ましい。nは5〜5,000の整数、好ましくは10〜3,000の整数である。
【0021】
(2)ポリオルガノシルセスキオキサン粒子
ポリオルガノシルセスキオキサン粒子は、3官能性シランを加水分解及び縮合反応することにより得られる三次元網目状架橋構造を有する、レジン状固体物の粒子である。本発明において該ポリオルガノシルセスオキサン粒子は、従来公知のものを使用することができ、その構造は特に限定されるものでないが、無溶剤型シリコーン組成物に溶解せず、かつ融点が80℃以上もしくは融点を有しないものであることが好ましい。
【0022】
該ポリオルガノシルセスキオキサン粒子の製造は、従来公知の方法に従えばよい。例えば、特公昭40−16917号公報、特開昭63−77940号公報、特開平4−88023号公報に記載されている方法を使用することができる。特公昭40−16917号公報には、水溶性アルカリ性物質を含有する水に、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシランおよびそれらの混合物から選択されるシランを、攪拌しながら添加することにより製造する方法が記載されている。特開昭63−77940号公報には、メチルトリアルコキシシランおよび/またはその部分加水分解縮合物を上層とし、アンモニアまたはアミンの水溶液を下層にして、これらの界面でメチルトリアルコキシシランおよび/またはその部分加水分解縮合物を加水分解・縮合反応させることにより製造する方法が記載されている。特開平4−88023号公報には、メチルトリアルコキシシランおよび/またはその部分加水分解縮合物と水を攪拌し、均一溶液とした後、アルカリを添加することにより製造する方法が記載されている。
【0023】
該ポリオルガノシルセスキオキサン粒子は、特には、R
2SiO
3/2で示される単位が三次元網目状に架橋した構造を有する。該ポリオルガノシルセスキオキサン粒子は、上述した通り、アルコキシシラン、シラノール基含有シラン、あるいはこれらの部分加水分解縮合物を加水分解及び縮合反応させることにより製造されるため、構造中に未反応のシラノール基が残存することがある。そのため、構造中にR
2Si(OH)O
2/2で示される単位を含んでいてもよい。
【0024】
上記式において、R
2は、置換又は非置換の、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜6の1価炭化水素基である。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基(=エイコシル基)等のアルキル基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等のシクロアルキル基;及びこれらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)等の原子及び/又はアミノ基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、エポキシ基、グリシドキシ基、メルカプト基、カルボキシル基等の置換基で置換した炭化水素基等が挙げられる。中でも、球状の粒子を得るためには、R
2の50モル%以上、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上が、メチル基、ビニル基、フェニル基、アクリロイルオキシアルキル基、又はフロロアルキル基であることが好ましい。
【0025】
上記ポリオルガノシルセスキオキサンは、R
2SiO
3/2単位の他に、R
22SiO
2/2単位、R
23SiO
1/2単位、及びSiO
4/2単位の少なくとも1種を含んでいてもよい。R
2は上述した通りである。ポリオルガノシルセスキオキサン中のR
2SiO
3/2単位の含有率は、全シロキサン単位中、好ましくは40〜100モル%、より好ましくは80〜100モル%、更には90〜100モル%である。
【0026】
(3)シリコーンゴム粒子表面をポリオルガノシルセスキオキサンで被覆した粒子
シリコーンゴム粒子表面をポリオルガノシルセスキオキサンで被覆した粒子は、従来公知のものを使用することができ、その構造は特に限定されるものでない。シリコーンゴム粒子としては、上述したシリコーンゴム粒子と同じ構造が挙げられる。ポリオルガノシルセスキオキサンとしては、上述したポリオルガノシルセスキオキサン粒子と同じ構造が挙げられる。
【0027】
シリコーンゴム粒子表面をポリオルガノシルセスキオキサンで被覆した粒子の製造は、従来公知の方法に従えばよい。例えば、特開平7−196815号公報に記載されている方法を使用することができる。詳細には、シリコーンゴム球状粒子の水分散液に、アルカリ性物質またはアルカリ性水溶液と、オルガノトリアルコキシシランを添加し、加水分解及び縮合反応させる方法である。
【0028】
シリコーンゴム粒子表面をポリオルガノシルセスキオキサンで被覆した粒子は、シリコーンゴム粒子100質量部に対するポリオルガノシルセスキオキサンの量が0.5〜25質量部、好ましくは1〜15質量部の範囲であるのが好ましい。
【0029】
(4)シラン表面処理シリカ系粒子
シラン表面処理シリカ系粒子とは、シリカ粒子の表面に存在するシラノール基あるいはアルコキシ基などの反応性基を疎水化するために、シラン化合物で表面処理されたシリカ粒子である。該シラン表面処理シリカ系粒子は従来公知のものを使用することができる。例えば、SiO
2単位からなる親水性シリカ粒子と、R
3SiNHSiR
3で示されるシラザン化合物及び/又はR
3SiOR’で示されるシラン化合物を反応させ、シリカ粒子の表面にR
3SiO
1/2単位を導入することによって得られる、疎水性シリカ粒子が挙げられる。式中、−OR’は、OH基、又は加水分解性基である。加水分解性基としては、炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜6のアルコキシ基またはアルコキシアルコキシ基が挙げられる。Rは、置換又は非置換の、炭素数1〜20の1価炭化水素基である。Rとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基等のアルキル基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等のシクロアルキル基;及びこれらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)等の原子及び/又はアミノ基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、エポキシ基、グリシドキシ基、メルカプト基、カルボキシル基等の置換基で置換した炭化水素基等が挙げられる。
【0030】
上記シラン表面処理シリカ粒子の製造は、従来公知の方法に従えばよい。例えば、特許3612259号公報、特許3756339号公報に記載されている方法を使用することができる。詳細には、Si(OR)
4で示される4官能性シラン化合物またはその加水分解物から選択される1種または2種以上の化合物を、メタノールやエタノールなどの親水性溶媒、水、及びアンモニア或いは有機アミンなどの塩基性化合物の混合溶液中で加水分解及び縮合反応し、得られた親水性シリカ微粒子分散液に、R
3SiNHSiR
3で示されるシラザン化合物及び/又はR
3SiOR’で示されるシラン化合物を添加し、反応させてシリカ粒子表面に存在するシラノール基を疎水化する方法である。
【0031】
II.無溶剤型シリコーン組成物
本発明は第二に、上記シリコーンミスト抑制剤を含む無溶剤型シリコーン組成物を提供する。該無溶剤型シリコーン組成物は、25℃で25〜50,000mPa・sの範囲にある粘度を有するオルガノポリシロキサンを含有する組成物である。本発明の無溶剤型シリコーン組成物は、上述した本発明のシリコーンミスト抑制剤を、上記オルガノポリシロキサン100質量部に対して0.1〜10質量部、好ましくは0.2〜9質量部となる量で含有する。シリコーンミスト抑制剤の量が上記上限値を超えてもミスト抑制効果はそれ以上向上しない場合がある。また、上記下限値未満ではミスト抑制効果が十分に発揮されない。
【0032】
本発明の無溶剤型シリコーン組成物において、オルガノポリシロキサンは、ロールコーティング、吹付け等によって、各種紙、ラミネート紙、合成フィルム、透明樹脂、金属箔等の基材表面に塗布できるような、流動性の粘稠度をもつ必要がある。従って、該オルガノポリシロキサンは、25℃にて25〜50,000mPa・sの範囲にある粘度、更に好ましくは50〜30,000mPa・sの範囲にある粘度を有するのがよい。粘度が上記下限値よりも低いと、ロールコーティングする場合に液ダレが激しくなり、塗工自体が困難となる。また粘度が上記上限値より高くなると、ロールコーティングで塗工を行なう場合、コーターに高い圧力が掛かり、塗工が困難となる。尚、本発明において、オルガノポリシロキサンの粘度はBN型回転粘度計を用いて25℃で測定した値である(以下、同じ)。
【0033】
本発明の無溶剤型シリコーン組成物に含まれるオルガノポリシロキサンの種類は、上記粘度を有しており、組成物を基材等に塗工した後で硬化することができるものであれば特に制限されず、従来公知のオルガノポリシロキサンを使用することができる。例えば、加熱または放射線照射により硬化することができるオルガノポリシロキサンが挙げられる。本発明の無溶剤型シリコーン組成物は、熱硬化型あるいは放射線硬化型であるのがよい。
【0034】
1.熱硬化型の無溶剤型シリコーン組成物
熱硬化型オルガノポリシロキサンとしては、ヒドロシリル化反応(付加反応)により硬化するオルガノポリシロキサンが挙げられる。オルガノポリシロキサンが付加硬化型である場合、該オルガノポリシロキサンは(a−1)1分子中に少なくとも2個の、ケイ素原子に結合した脂肪族不飽和炭化水素基を有するオルガノポリシロキサンであるのがよい。また、このとき、本発明の無溶剤型シリコーン組成物は、さらに(b−1)1分子中に少なくとも2個の、ケイ素原子に結合した水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、及び(c−1)付加反応触媒を含有するのがよい。以下、各成分について詳しく説明する。
【0035】
(a−1)付加硬化型オルガノポリシロキサン
付加硬化型オルガノポリシロキサンは、1分子中に少なくとも2個の、ケイ素原子に結合した脂肪族不飽和炭化水素基を有する。該オルガノポリシロキサンは、25℃で25〜50,000mPa・sの範囲にある粘度、好ましくは50〜30,000mPa・sの範囲にある粘度を有するものであればよく、従来公知のオルガノポリシロキサンを使用することができる。特には、該オルガノポリシロキサンは、ケイ素原子に結合した脂肪族不飽和炭化水素基を、100g中に0.002〜0.6mol、更に好ましくは0.005〜0.3molとなる量で含むのがよい。
【0036】
該オルガノポリシロキサンは、例えば、下記平均組成式(1)で表されることができる。
R
3aR
4bSiO
(4−a−b)/2 (1)
上記式(1)中、R
3は、互いに独立に、脂肪族不飽和結合を有しない、置換または非置換の、炭素数1〜18、好ましくは1〜10の一価炭化水素基である。R
4は、互いに独立に、炭素数2〜10、好ましくは2〜8の、脂肪族不飽和結合を有する一価炭化水素基であり、好ましくは、−(CH
2)
c−CH=CH
2(cは0〜6)で表されるアルケニル基である。aは0≦a<3を満たす正数、bは0<b≦3を満たす正数、ただし1≦a+b≦3であり、好ましくは、aは0.5≦a≦2.5を満たす正数、bは0.0002≦b≦1を満たす正数、ただし1.5≦a+b≦2.5である。
【0037】
R
3としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等のアルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、ナフチル基、トリル基等のアリール基;又は、これらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部を、ハロゲン原子、シアノ基、水酸基などで置換した基、例えば、クロルメチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、シアノプロピル基、フェノール基、ヒンダードフェノール基等が例示される。本発明においては、炭素数1〜8のアルキル基及びフェニル基が好ましく、特にメチル基が好ましく、全R
3の50mol%以上がメチル基であることが好ましい。R
4としては、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基等が挙げられるが、不飽和結合が末端にあるもの、即ち、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、3−ブテニル基、4−ペンテニル基等が好ましく、より好ましくはビニル基及びアリル基である。
【0038】
上記オルガノポリシロキサンの構造は特に制限されるものでなく、直鎖状、分岐状、分岐構造を有する直鎖状等のいずれでもよい。好ましくは直鎖状である。又、その末端は、例えば、メチル基、水酸基、アルケニル基、フェニル基、アクリロキシアルキル基、アルコキシ基等のいずれの有機基であってもよいが、好ましくはアルケニル基である。特に、両末端にビニル基を有する、直鎖状のジアルキルポリシロキサンが好ましい。
【0039】
(b−1)オルガノハイドロジェンポリシロキサン
オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1分子中にケイ素原子に結合した水素原子(以下、SiH基と称す)を2個以上、好ましくは3個以上、特には3〜10個有するものである。該オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、触媒存在下で上記(a―1)オルガノポリシロキサンと付加反応することにより硬化被膜を形成することができるものであればよく、従来公知のオルガノハイドロジェンポリシロキサンを使用することができる。特には、該オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、25℃での粘度2〜5000mPa・s、好ましくは3〜3000mPa・sを有するものが好ましい。
【0040】
該オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、下記平均組成式(2)で表すことができる。
R
5cH
dSiO
(4−c−d)/2 (2)
上記式(2)中、R
5は、互いに独立に、脂肪族不飽和結合を含まない、非置換又は置換の、炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜8の一価炭化水素基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基、または水酸基である。一価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、フェニル基等のアリール基、及び、これらの基の炭素原子に結合している水素原子の一部又は全部をハロゲン原子等で置換した、3、3、3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン置換アルキル基が挙げられる。好ましくは、全R
5の80%以上がメチル基である。c、dは、0.5≦c≦1.5、0.5≦d≦1.5、及び0≦c+d≦3を満たす正数、特には、0.8≦c≦1、0.8≦d≦1、及び1.6≦c+d≦2を満たす正数であることが好ましい。上記オルガノハイドロジェンポリシロキサンの構造は特に制限されるものでなく、直鎖状、分岐状、分岐構造を有する直鎖状等のいずれでもよい。好ましくは直鎖状である。
【0041】
(b−1)ポリオルガノハイドロジェンシロキサンの配合量は、(a−1)成分中の脂肪族不飽和基の個数に対する(b−1)成分中のSiH基の個数の比が0.5〜10、好ましくは1〜5となる量であるのがよい。(b−1)成分の量が上記範囲内にあることにより、十分な硬化性を得られるため好ましい。
【0042】
(c−1)付加反応触媒
付加反応触媒は、(a―1)成分と(b−1)成分との付加反応を促進するための触媒であり、従来公知の付加反応触媒を使用すればよい。特には、白金族金属系触媒を使用することが好ましい。該白金族金属系触媒としては、例えば白金系、パラジウム系、ロジウム系、ルテニウム系等の触媒が挙げられる。中でも、特に白金系触媒が好ましく用いられる。白金系触媒としては、例えば塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液又はアルデヒド溶液、塩化白金酸の各種オレフィン又はビニルシロキサンとの錯体などが挙げられる。
【0043】
付加反応触媒の添加量は有効量であればよい。有効量とは、(a―1)成分と(b−1)成分との付加反応を進行させて組成物を硬化するのに有効な量である。特には、(a−1)成分及び(b−1)成分の合計質量部に対して、金属換算量(質量部)として1〜2000ppm、好ましくは2〜1500ppmとすることが好ましい。該範囲にあることにより、良好な硬化被膜を得ることができる。また、経済的な見地からも好ましい。
【0044】
本発明の無溶剤型シリコーン組成物は、上記(a−1)成分〜(c−1)成分に加えて、任意でポットライフ延長剤を含有することができる。ポットライフ延長剤は(a−1)成分、(b−1)成分及び(c−1)成分を混合した後、ロールコーティングを行なうまでのポットライフを確保するために機能する。該ポットライフ延長剤は従来公知のものを使用すればよい。例えば、アセチレン化合物、マレイン酸エステル、フマル酸エステル、不飽和アミド、不飽和イソシアナート、不飽和炭化水素ジエステル、ヒドロペルオキシド、ニトリル、およびジアジリジン等が挙げられる。アセチレン化合物としては、例えば、1−エチニルシクロヘキサン−1−オール、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、3−メチル−1−ペンテン−4−イン−3−オール、及び3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール等が挙げられる。
【0045】
ポットライフ延長剤の量は、良好な浴安定性が得られる量であればよく、特に制限されない。通常、(a−1)成分及び(b−1)成分の合計100質量部に対し、0.01〜10質量部、好ましくは0.05〜5質量部で使用される。
【0046】
上記熱硬化型の無溶剤型シリコーン組成物の硬化条件は特に制限されないが、通常30℃〜250℃、特には50〜200℃で、1秒〜5分で硬化することができる。
【0047】
2.放射線硬化型の無溶剤型シリコーン組成物
放射線硬化型のオルガノポリシロキサンとしては、カチオン重合やラジカル重合により硬化するオルガノポリシロキサンが挙げられる。オルガノポリシロキサンがカチオン重合型である場合、オルガノポリシロキサンは(a−2)1分子中に少なくとも1個のエポキシ基を有するオルガノポリシロキサンであるのがよい。またこのとき、本発明の無溶剤型シリコーン組成物は、さらに(b−2)光カチオン重合開始剤を含有するのがよい。オルガノポリシロキサンがラジカル重合型である場合、オルガノポリシロキサンは(a−3)1分子中に少なくとも1個の(メタ)アクリル基を有するオルガノポリシロキサンであるのがよい。またこのとき、本発明の無溶剤型シリコーン組成物は、さらに(b−3)光ラジカル重合開始剤を含有するのがよい。以下、各成分について詳しく説明する。
【0048】
(a−2)カチオン重合型オルガノポリシロキサン
カチオン重合型オルガノポリシロキサンは、1分子中に少なくとも1個のエポキシ基を有し、25℃で25〜50,000mPa・sの範囲にある粘度、好ましくは50〜30,000mPa・sの範囲にある粘度を有するものであればよく、従来公知のオルガノポリシロキサンを使用することができる。特には、該オルガノポリシロキサンは、エポキシ基の量が、該オルガノポリシロキサンが有する全ケイ素原子の合計モル量に対して1〜50mol%、より好ましくは2〜45mol%、更に好ましくは3〜40mol%であるのがよい。エポキシ基の量が上記下限値未満であると、硬化速度が遅くなり硬化不良となるおそれがある。
【0049】
該オルガノポリシロキサンは、例えば、下記平均組成式(3)で表されることができる。
R
6eR
7fSiO
(4−e−f)/2 (3)
上記式(3)中、R
6は、互いに独立に、置換または非置換の、炭素数1〜18、好ましくは1〜10の一価炭化水素基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基、または水酸基である。一価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、又はこれらの基の炭素原子に結合している水素原子の一部又は全部をヒドロキシ基、シアノ基、ハロゲン原子等で置換したヒドロキシプロピル基、シアノエチル基、1−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等が挙げられる。中でも、R
6の80mol%以上がアルキル基であることが望ましく、特にメチル基であることがより好ましい。
【0050】
上記式(3)中、R
7は、互いに独立に、エポキシ基を有する有機基であり、下記式に示される基から選ばれるのが好ましい。
【化1】
【0051】
上記式(3)中、e及びfは夫々、e>0、f>0、及び0<e+f≦3を満たす正数である。好ましくは、eは、1.6≦e≦2.4、より好ましくは1.65≦e≦2.35、更に好ましくは1.7≦e≦2.3を満たす正数であり、fは、0.01≦f≦0.3、より好ましくは0.2≦f≦0.25、更に好ましくは0.3≦f≦0.2を満たす正数である。
【0052】
(b−2)光カチオン重合開始剤
光カチオン重合開始剤は、光により(a−2)オルガノポリシロキサンの重合反応を開始できる化合物であればよく、従来公知のものを使用することができる。例えば、下記式(4)で表される構造を有するオニウム塩を挙げることができる。
{R
8aR
9bR
10cR
11dY}
m+{MZ
n+m}
m−(4)
式(4)において、Yは、S、Se、Te、P、As、Sb、Bi、O、I、Br、Cl又はN
2であり、R
8、R
9、R
10及びR
11は同一又は異なる有機基であり、a、b、c及びdはそれぞれ0〜3の整数であって、(a+b+c+d)はYの価数に等しい。ここで、R
8〜R
11の有機基としては、例えばフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基等のアリール基;C1〜C18のアルキル基によりモノ及びポリ置換されたアリール基;フェノキシフェニル基;チオフェニルフェニル基;ピリジル基、N−メチルピリジル、インドリル基等の複素環基;メトキシフェニル基、イソプロポキシフェニル基等のアリールオキシ基;4−メトキシピリジル基等の複素環オキシ基等が例示される。Mは、ハロゲン化物錯体{MZ
n+m}の中心原子を構成する金属又はメタロイドであり、例えば、B、P、As、Sb、Fe、Sn、Bi、Al、Ca、In、Ti、Zn、Sc、V、Cr、Mn、Co等である。Zは、例えばF、Cl、Br等のハロゲン原子であり、mはハロゲン化物錯体イオンの正味の電荷であり、nはMの原子価である。
【0053】
上記光カチオン重合開始剤として、特には、R
2I
+X
−、R
3S
+X
−、R
3Se
+X
−、R
4P
+X
−、またはR
4N
+X
−で示される、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、トリアリールセレノニウム塩、テトラアリールホスホニウム塩、アリールジアゾニウム塩が好適である。上記式中、Rは、フェニル基、トリール基、4−(エチル)フェニル基等、C1〜C18のアルキル基によりモノ及びポリ置換されたアリール基;ピリジル基、N−メチルピリジル、インドリル基等の複素環基;メトキシフェニル基、イソプロポキシフェニル基等のアリールオキシ基;4−メトキシピリジル基等の複素環オキシ基から選ばれる基である。Rは互いに結合して環構造を形成していてもよい。X
−はSbF
6−、AsF
6−、PF
6−、BF
4−、HSO
4−、ClO
4−などの陰イオンである。中でも、硬化反応性の点でジアリールヨードニウム、トリアリールスルホニウムの六フッ化アンチモン酸塩が好ましい。
【0054】
光カチオン重合開始剤としては、下記一般式(5)で示されるフッ素化アルキルフルオロリン酸塩を使用することもできる。
【化2】
【0055】
上記式(5)中、[(Rf)
pPF
6−p]は、フッ素化アルキルフルオロリン酸アニオンであり、Rfはフッ素化アルキル基であり、炭素数1〜8、好ましくは1〜4のアルキル基の、炭素原子に結合する水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換された基である。該アルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、オクチル等の直鎖アルキル基、イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル等の分岐アルキル基、更にシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等のシクロアルキル基などが挙げられる。アルキル基が有する炭素原子に結合した水素原子のうちフッ素原子に置換された水素原子の割合は、通常、80mol%以上、好ましくは90mol%以上、更に好ましくは100mol%である。フッ素原子の置換率が上記下限値未満では、本発明のオニウム塩のカチオン重合開始能が低下するおそれがある。
【0056】
上記式(5)において、Rfは、好ましくは、炭素数が1〜4であるアルキル基の炭素原子に結合する全ての水素原子がフッ素原子に置換された、直鎖状または分岐を有するパーフルオロアルキル基である。例えば、CF
3−、CF
3CF
2−、(CF
3)
2CF−、CF
3CF
2CF
2−、CF
3CF
2CF
2CF
2−、(CF
3)
2CFCF
2−、CF
3CF
2(CF
3)CF−、及び(CF
3)
3C−が挙げられる。pは、1〜5の整数であり、好ましくは2〜4の整数であり、特に好ましくは2または3である。尚、式(5)中、Rfは、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0057】
上記[(Rf)
pPF
6−p]で示されるアニオンとして好ましくは、[(CF
3CF
2)
2PF
4]
−、[(CF
3CF
2)
3PF
3]
−、[((CF
3)
2CF)
2PF
4]
−、[((CF
3)
2CF)
3PF
3]
−、[(CF
3CF
2CF
2)
2PF
4]
−、[(CF
3CF
2CF
2)
3PF
3]
−、[((CF
3)
2CFCF
2)
2PF
4]
−、[((CF
3)
2CFCF
2)
3PF
3]
−、[(CF
3CF
2CF
2CF
2)
2PF
4]
−、及び[(CF
3CF
2CF
2CF
2)
3PF
3]
−が挙げられる。中でも、特に好ましくは[(CF
3CF
2)
3PF
3]
−、[(CF
3CF
2CF
2)
3PF
3]
−、[((CF
3)
2CF)
3PF
3]
−、[((CF
3)
2CF)
2PF
4]
−、[((CF
3)
2CFCF
2)
3PF
3]
−、及び[((CF
3)
2CFCF
2)
2PF
4]
−である。
【0058】
光カチオン重合開始剤は、カチオン重合性オルガノポリシロキサンへの溶解を容易にするため、あらかじめカチオン重合を阻害しない溶剤類に溶かしておいてもよい。例えば、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のカーボネート類、酢酸エチル、乳酸エチル、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン等のエステル類、例えば、モノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノブチルエーテル等のモノアルキルエーテル類、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル等のジアルキルエーテル類、アセトニトリル、酢酸エステルなどが挙げられる。溶剤を使用する場合の使用割合は、光カチオン重合開始剤の濃度が1〜95質量%、好ましくは5〜90質量%となるように調整すればよい。
【0059】
光カチオン重合開始剤の添加量は、有効量、即ち、光照射により(a−2)オルガノポリシロキサンを硬化させるのに有効な量であればよい。通常、(a−2)成分100質量部に対して0.05〜20質量部、好ましくは0.01〜15質量部とすればよい。光カチオン重合開始剤の量が上記上限値超では、得られる硬化物が十分な強度を有さないことがあり、上記下限値未満では組成物が十分硬化しない場合がある。
【0060】
(a−3)ラジカル重合型オルガノポリシロキサン
ラジカル重合型オルガノポリシロキサンは、1分子中に少なくとも1個の(メタ)アクリル基を有し、25℃で25〜50,000mPa・sの範囲にある粘度、好ましくは50〜30,000mPa・sの範囲にある粘度を有するものであればよく、従来公知のオルガノポリシロキサンを使用することができる。(メタ)アクリル基の量は、硬化性の面から、該オルガノポリシロキサンが有する全ケイ素原子の合計モルに対して1〜50mol%であるのが好ましく、より好ましくは2〜45mol%、更に好ましくは3〜40mol%である。(メタ)アクリル基の量が上記下限値未満であると、硬化速度が遅くなり硬化不良となるおそれがある。
【0061】
該オルガノポリシロキサンは、下記平均組成式(6)で表されることができる。
R
12gR
13hSiO
(4−g−h)/2 (6)
上記式(6)中、R
12は、互いに独立に、置換または非置換の、炭素数1〜18、好ましくは1〜10の一価炭化水素基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基、または水酸基である。一価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、又はこれらの基の炭素原子に結合している水素原子の一部又は全部をヒドロキシ基、シアノ基、ハロゲン原子等で置換したヒドロキシプロピル基、シアノエチル基、1−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等が挙げられる。特には、R
12の80mol%以上がアルキル基であることが望ましく、特にメチル基であることが好ましい。
【0062】
上記式(6)中、R
13は、炭素数2〜20の、(メタ)アクリル基を有する有機基である。該R
13で示される基としては、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド、ジエチレングリコールモノアクリレート、ペンタエリスリトールモノアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート等のヒドロキシ官能性(メタ)アクリレート誘導体、γ−アクリロキシプロピル、γ−メタクリロキシプロピル等のアルキルオキシアルキル誘導体などが挙げられる。
【0063】
上記式(6)中、g及びhは、g>0、h>0、0<g+h≦3を満たす正数である。好ましくは、gは、1.6≦g≦2.4、より好ましくは1.65≦g≦2.35、更に好ましくは1.7≦g≦2.3を満たす正数であり、hは0.01≦h≦0.3、より好ましくは0.2≦h≦0.25、更に好ましくは0.3≦h≦0.2を満たす正数である。
【0064】
(b−3)光ラジカル重合開始剤
光ラジカル重合開始剤は、上記(a−3)オルガノポリシロキサンに溶解可能であり、放射線照射によってラジカルを発生させる能力があればよく、従来公知のものを使用することができる。該光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、4’−イソプロピル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2−ヒドロキシメチル−2−メチルプロピオフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ターシャリブチルジクロロアセトフェノン、p−ターシャリブチルトリクロロアセトフェノン、p−アジドベンザルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパノン−1、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン− 1、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジル、アニシル、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、ミヒラーケトン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(ピル−1−イル)チタニウム、1−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)−2−ヒドロキシジ−2−メチル−1−プロパン−1−オン等が挙げられる。上記光ラジカル重合開始剤は、1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0065】
光ラジカル重合開始剤の量は、有効量、即ち、光照射により(a−3)オルガノポリシロキサンを硬化させるのに有効な量であればよい。特には(a−3)オルガノポリシロキサン100質量部に対して、好ましくは0.05〜20質量部、より好ましくは0.1〜15質量部であるのがよい。光ラジカル重合開始剤の量が上記上限値超では、得られる硬化物が十分な強度を有さないことがあり、上記下限値未満では組成物が十分硬化しない場合がある。
【0066】
上記放射線硬化型の無溶剤型シリコーン組成物の硬化は、従来公知の方法に従えばよく、特に制限されない。好ましくは、放射線エネルギー線として、高圧または超高圧の水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、カーボンアークランプ、蛍光灯、半導体固体レーザ、アルゴンレーザ、He−Cdレーザ、KrFエキシマレーザ、ArFエキシマレーザ、F2レーザなどから得られる、紫外〜可視光領域(約100〜約800nm)のエネルギー線が用いられる。特に好ましくは、200〜400nmの領域にて光硬度が強い放射線光源がよい。更には、電子線、X線などの高エネルギーを有する放射線を用いることもできる。放射線エネルギーの照射時間は、通常は常温で0.1秒〜10秒程度で十分であるが、エネルギー線の透過性が低い場合や組成物の膜厚が厚い場合には、それ以上の時間をかけるのが好ましいことがある。必要であればエネルギー線の照射後、室温〜150℃で数秒〜数時間加熱し、アフターキュアーしてもよい。
【0067】
本発明の無溶剤型シリコーン組成物は、上述した各成分以外に、任意成分として、従来公知の添加剤を含有することができる。該添加剤としては、例えば、シリコーンレジン、ポリジメチルシロキサン、充填剤、帯電防止剤、難燃剤、消泡剤、流動調整剤、光安定剤、非反応性の樹脂、及びラジカル重合性化合物などが挙げられる。添加剤の配合量は、本発明の効果を妨げない範囲で適宜調整すればよい。
【0068】
尚、本発明の無溶剤型シリコーン組成物は、必要に応じて、溶剤と併せた組成物としてもよい。該溶剤としてはトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステルが挙げられる。溶剤の配合量は、オルガノポリシロキサン100質量部に対して10〜10,000質量部、好ましくは15〜50,000質量部であるのがよい。
【0069】
本発明の無溶剤型シリコーン組成物は、上記各成分を、同時に又は別々に、必要により加熱処理を加えながら攪拌、溶解、混合、分散させることにより得ることができる。これらの混合、攪拌、分散等の装置は特に限定されないが、攪拌、加熱装置を備えたライカイ機、3本ロール、ボールミル、プラネタリーミキサー等を用いることができる。これら装置を適宜組み合わせてもよい。
【0070】
本発明はさらに、上記無溶剤型シリコーン組成物を各種基材、特にはシート状基材上に塗布し、硬化させることにより、無溶剤型シリコーン組成物の硬化物からなる膜を有する物品を提供する。例えば、本発明の無溶剤型シリコーン組成物は、剥離紙・剥離フィルム用の剥離剤、粘着ラベル用剥離紙のコーティング剤、粘着テープの背面処理剤、又は金属・プラスチックの保護コーティング剤等として使用できる。基材は特に限定されるものでなく、上記用途に一般に使用されている基材を使用することができる。例えば、基材としては、グラシン紙、クラフト紙、クレーコート紙、上質紙などの紙基材、ポリエチレンラミネート紙、ポリエチレンラミネートクラフト紙などのラミネート紙、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミドなどの合成樹脂から得られるプラスチックフィルムまたはシート、ポリカーボネート等の透明樹脂、及びアルミニウムなどの金属箔等が挙げられる。
【0071】
基材に本発明の組成物を塗布する方法は特に制限されるものでなく、ロール塗布、グラビア塗布、ワイヤードクター塗布、エアーナイフ塗布、ディッピング塗布などの公知の方法を用いることができる。塗布量は、用途に応じて適宜調整すればよい。例えば、剥離紙を提供する場合は、通常0.05〜3.0g/m
2程度とすればよい。
【0072】
本発明の無溶剤型シリコーン組成物は、本発明のシリコーンミスト抑制剤を含まない組成物と比較して、シリコーンミスト発生量を顕著に抑制することができる。特には、高速塗工、例えば塗工速度300m/min以上で、シリコーン組成物をシート状基材上に塗布する場合において、優れたシリコーンミスト抑制効果を発揮することができる。さらに、本発明の無溶剤型シリコーン組成物は、保存安定性に優れ、経時で増粘することがなく、得られる硬化被膜の物性が経時で変化することがない。従って、各種紙、ラミネート紙、合成フィルム、透明樹脂、金属箔等の基材表面を高機能化するために、前記基材にシリコーン組成物を塗布する工程において、好適に使用することができる。
【実施例】
【0073】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。下記において、粘度は、BN型回転粘度計を用いて25℃で測定した値である。平均粒径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LA−920((株)堀場製作所製)を用いて測定した、体積基準の平均粒径である。また構造式中のMeはメチル基、Epは下記式で表される基を意味する。
【化3】
【0074】
I.シリコーンミスト抑制剤
実施例及び比較例において使用したシリコーンミスト抑制剤を以下に示す。
(1)シリコーンミスト抑制剤I:シラン表面処理シリカ粒子の粉末、平均粒径300nm
(2)シリコーンミスト抑制剤II:ポリオルガノシルセスキオキサン粒子の粉末、平均粒径800nm
(3)シリコーンミスト抑制剤III:シリコーンゴム粒子表面をポリオルガノシルセスキオキサンで被覆した粒子の粉末、平均粒径800nm
(4)シリコーンミスト抑制剤IV:シリコーンゴム粒子表面をポリオルガノシルセスキオキサンで被覆粒子の粉末、平均粒径2000nm
(5)シリコーンミスト抑制剤V:MP−1000(商品名、綜研化学株式会社製、(メタ)アクリルポリマーを主成分とする微粉末、平均粒径400nm)
(6)シリコーンミスト抑制剤VI:KTL−500L(商品名、株式会社喜多村社製、4フッ化エチレン樹脂を主成分とする微粉末、平均粒径400nm)
(7)シリコーンミスト抑制剤VII:シリコーンゴム粒子表面をポリオルガノシルセスキオキサンで被覆した粒子の粉末、平均粒径5000nm
(8)シリコーンミスト抑制剤VIII:シラン表面処理シリカ粒子の粉末、平均粒径80nm
【0075】
II.シリコーン組成物の調製
【0076】
[実施例1]
25℃における粘度400mPa・sを有する両末端ビニル基含有ポリジメチルシロキサン(ビニル価含有量0.02mol/100g)98質量部、下記平均式(7)で表される25℃における粘度20mPa・sを有するポリオルガノハイドロジェンシロキサン2.0質量部(SiH基/Vi基(モル比)=1.8)、
【化4】
及びエチニルシクロヘキサノール0.3質量部を均一に混合した。ここにシリコーンミスト抑制剤Iを3部、及び塩化白金酸とビニルシロキサンの錯塩を2質量部(白金原子として約100ppm)添加し、均一に混合することで、シリコーン組成物1を得た。
【0077】
[実施例2]
シリコーンミスト抑制剤IIを3部添加した以外は実施例1を繰返し、シリコーン組成物2を得た。
【0078】
[実施例3]
シリコーンミスト抑制剤IIIを3部添加した以外は実施例1を繰返し、シリコーン組成物3を得た。
【0079】
[実施例4]
シリコーンミスト抑制剤IVを3部添加した以外は実施例1を繰返し、シリコーン組成物4を得た。
【0080】
[実施例5]
シリコーンミスト抑制剤Vを3部添加した以外は実施例1を繰返し、シリコーン組成物5を得た。
【0081】
[実施例6]
シリコーンミスト抑制剤VIを3部添加した以外は実施例1を繰返し、シリコーン組成物6を得た。
【0082】
[実施例7]
下記平均組成式(8)で示され、25℃における粘度6,500mPa・sを有するカチオン重合性オルガノポリシロキサンを100質量部、
【化5】
シリコーンミスト抑制剤Iを1部、及びアセトニトリルに92質量%溶解したビス−[4−nアルキル(C10〜C13)フェニル]ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート溶液1.09質量部を均一に混合することで、シリコーン組成物7を得た。
【0083】
[実施例8]
シリコーンミスト抑制剤IIを1部添加した以外は実施例7を繰返し、シリコーン組成物8を得た。
【0084】
[実施例9]
シリコーンミスト抑制剤IIIを1部添加した以外は実施例7を繰返し、シリコーン組成物8を得た。
【0085】
[実施例10]
シリコーンミスト抑制剤IVを1部添加した以外は実施例7を繰返し、シリコーン組成物10を得た。
【0086】
[比較例1]
シリコーンミスト抑制剤Iを除いた以外は実施例1を繰返し、シリコーン組成物11を得た。
【0087】
[比較例2]
シリコーンミスト抑制剤Iを除いた以外は実施例7を繰返し、シリコーン組成物12を得た。
【0088】
[比較例3]
シリコーンミスト抑制剤VIIを3部添加した以外は実施例1を繰返し、シリコーン組成物13を得た。
【0089】
[比較例4]
シリコーンミスト抑制剤VIIを1部添加した以外は実施例7を繰返し、シリコーン組成物14を得た。
【0090】
[比較例5]
シリコーンミスト抑制剤VIIIを3部添加した以外は実施例1を繰返し、シリコーン組成物15を得た。
【0091】
[比較例6]
シリコーンミスト抑制剤VIIIを1部添加した以外は実施例7を繰返し、シリコーン組成物16を得た。
【0092】
評価試験
上記シリコーン組成物1〜16を用いて、ミスト発生試験、硬化性試験、及び剥離力試験を行なった。各試験方法を以下に示す。各試験の結果を表1に示す。
【0093】
[シリコーンミスト発生試験1]
バイブレーションロール(φ50.8×184.1mm)、金属ロール(φ76.2×152.4mm)、及びゴムロール(φ79.3×155.6mm)から形成される3本ロールを備えるミスティングテスタ((株)東洋精機製作所製)を用い、バイブレーションロールに無溶剤型シリコーン組成物1.6gを滴下した。1400rpmにて3本ロールを回転させ、60秒後、120秒後におけるシリコーンミスト発生量をデジタル粉塵機DustTrack Model 8520(トランステック社製)を用いて測定した(測定可能範囲=0〜150mg/m
3)。シリコーンミスト発生量が150mg/m
3を超えた場合は「測定不能」とした。
【0094】
[シリコーンミスト発生試験2]
バイブレーションロール(φ50.8×184.1mm)、金属ロール(φ76.2×152.4mm)、及びゴムロール(φ79.3×155.6mm)から形成される3本ロールを備えるミスティングテスタ((株)東洋精機製作所製)を用い、バイブレーションロールに無溶剤型シリコーン組成物1.6gを滴下した。2500rpmで3本ロールを回転させ、60秒後、120秒後におけるシリコーンミスト発生量をDUSTTRAK Aeroso Monitor(TSI社製)を用いて測定した(測定可能範囲=0〜150mg/m
3)。シリコーンミスト発生量が150mg/m
3を超えた場合は「測定不能」とした。
【0095】
[無溶剤型シリコーン組成物の保存安定性評価(粘度変化)]
上記各シリコーン組成物の25℃における粘度を、BM型粘度測定機を用いて測定した(初期値)。また、上記各シリコーン組成物の組成から付加反応触媒及び光カチオン重合開始剤を除いた組成でシリコーン組成物を調製し、40℃下で5日間保管した後、各組成物の25℃における粘度を、BM型粘度測定機を用いて測定した(保存後)。
【0096】
[熱硬化型シリコーン組成物の硬化]
実施例1〜6、比較例1、3及び5で調製したシリコーン組成物を、夫々、ロール塗布によりポリエチレンラミネート上質紙の上に約0.8g/m
2の塗布量となるように塗布した。その後、140℃の熱風乾燥機中にて30秒間加熱して硬化被膜を形成した。
【0097】
[放射線硬化型シリコーン組成物の硬化]
実施例7〜10、比較例2、4及び6で調製したシリコーン組成物を、夫々、ロール塗布によりポリエチレンラミネート上質紙の上に約0.8g/m
2の塗布量となるように塗布した。その後、80W/cmの高圧水銀灯を2灯用い、50mJ/cm
2の照射量の紫外線を照射して硬化被膜を形成した。
【0098】
[硬化性の評価]
上記で得られた硬化被膜について硬化状態を観察した。組成物全体が硬化した場合を○、一部が未硬化である場合を△、組成物全体が未硬化である場合を×で示す。結果を表1に示す。
【0099】
[硬化被膜の保存安定性評価(剥離力試験)]
上記で得られた硬化被膜、及び該硬化被膜を23℃下で20時間保管した後の被膜を用いて剥離力試験を行った。各硬化被膜の表面に幅25mmのアクリル粘着テープTESA7475(商品名)を貼り付けた。該テープを2Kgのローラーを一往復させて圧着し、剥離力測定用のサンプルを作成した。このサンプルに70g/cm
2の荷重をかけながら、70℃で20〜24時間エージングした。その後、引っ張り試験機を用いて180°の角度で剥離速度0.3m/分にて貼り合わせたテープを引っ張り、剥離するのに要する力(N/25mm)を測定した。結果を表1に示す。
【0100】
【表1】
【0101】
表1に示す通り、本発明のシリコーンミスト抑制剤はシリコーンミスト抑制効果に優れており、高速塗工を行った場合でもシリコーンミストの発生を顕著に抑制することができる。また、本発明のシリコーンミスト抑制剤を含む無溶剤型シリコーン組成物は、経時で増粘することがなく保存安定性に優れる。さらに、該組成物から得られる硬化被膜は、物性が経時で劣化することがない。