【文献】
K Kagaguchi et al.,Synthesis of Ladder-Type d-Conjugated Heteroacenes via Palladium-Catalyzed Double N-Arylation and Intramolecular O-Arylation ,Journal of Organic Chemistry,2007年,Vol.72, No.14,pp.5119-5128
【文献】
Guy Koeckelberghs et al.,Influence of the Substituent and Polymerization Methodology on the Properties of Chiral Poly(dithieno[3,2-b:2',3'-d]pyrrole)s,Macromolecules,2007年,Vol.40, No.12,pp.4173-4181
【文献】
辻 二郎,遷移金属が拓く有機合成 その多彩な反応形式と最新の成果,(株)化学同人,1997年,pp.37-39
【文献】
H Suzuki et al.,A Convenient Synthesis of Functionalized Dibenzotellurophenes and Related Compounds via the Intramolecular Telluro Coupling Reaction. The Positive Effect of Heavy Chalcogen Atoms on the Molecular Hyperpolarizability of a Captodative Conjugation System,Journal of Organic Chemistry,1995年,Vol.60, No.16,pp.5274-5278
【文献】
GAO,J. et al,High-performance field-effect transistor based on dibenzo[d,d']thieno[3,2-b;4,5-b']dithiophene, an e,Advanced Materials(Weinheim, Germany),2007年,Vol.19, No.19,pp.3008-3011
【文献】
BALAJI,G. et al,Synthesis and Properties of Symmetric and Unsymmetric Dibenzothienopyrroles,Organic Letters,2009年,Vol.11, No.15,pp.3358-3361
【文献】
Database REGISTRY,2008年,RN 1026253-31-5,Retrieved from STN international [online] ;retrieved on 3 March 2015
【文献】
Palladium(0)-Catalyzed Allylation of 2,2′-Dihydroxybiphenyl by 1-Ethenylcyclopropyl Sulfonates: Preparation of 2,2′-Bis(cyclopropylideneethoxy) biphenyls,Synthesis,2002年,No.15,pp.2271-2279
【文献】
Rudolph A.A et al.,Base-Catalyzed Rearrangement of N-(Ary1oxy)pyridinium Salts. Effect of a 3-Substituent in the Pyridine Ring upon Orientation. Synthesis of Novel Tricyclic Rings,Journal of Organic Chemistry,1983年,Vol.48, No.5,pp.690-695
【文献】
Randolph R. et al.,Behavior or 2,2,2-trichloro-1,1-bis(3,5-dichloro-2-hydroxyphenyl)ethane towards alkali,Chemische Berichte,1964年,Vol.97, No.1,pp.300-301
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0027】
<本発明の第1の製造方法>
本発明の第1の製造方法は、遷移金属錯体の存在下で、前記式(1)で表される化合物と、前記式(2)で表される化合物とを反応させる工程を含む、前記式(3)で表される化合物の製造方法である。
【0028】
<式(1)で表される化合物>
前記式(1)中、A環及びB環は、各々独立して、芳香族環を表す。該芳香族環は置換基を有していてもよい。該芳香族環の炭素数は、好ましくは2〜60であり、より好ましくは2〜22であり、さらに好ましくは3〜14である。該炭素数には、芳香族環が有する置換基の炭素数は含まれない。該芳香族環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、テトラセン環、ピレン環、ペリレン環、フルオレン環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、オキサゾール環、チオフェン環、ピロール環、フラン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、トリアジン環、ベンゾチオフェン環、ベンゾピロール環、ベンゾフラン環、キノリン環、イソキノリン環、チエノ[3,2−b]チオフェン環、チエノ[2,3−b]チオフェン環、ジチエノ[3,2−b:2’,3’−d]チオフェン環等が挙げられる。
【0029】
前記A環とB環とが、環を介して多環構造を形成していてもよい。このような化合物の例は、後掲の式(1−2)の化合物及び式(1−34)の化合物である。
【0030】
前記A環及びB環は、各々独立して、芳香族複素5員環であることが好ましい。該複素5員環には、さらに環が縮環していてもよい。
【0031】
前記式(1)中、X
1及びX
2で表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0032】
前記式(1)中、X
1及びX
2で表されるアルキルスルホネート基としては、メタンスルホネート基、トリフルオロメタンスルホネート基等が挙げられる。
【0033】
前記式(1)中、X
1及びX
2で表されるアリールスルホネート基としては、ベンゼンスルホネート基、パラトルエンスルホネート基等が挙げられる。
【0034】
前記式(1)中、X
1及びX
2としては、反応の収率を上げる観点からは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましく、臭素原子、ヨウ素原子がさらに好ましい。
【0035】
前記式(1)で表される化合物の好ましい態様は、式(1A)で表される化合物、式(1B)で表される化合物である。
【0037】
式(1A)中、R
1は、各々独立して、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アルケニル基、アルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、ヘテロアリール基、カルボキシル基、置換カルボキシル基、ニトロ基又はシアノ基を表す。
nは、0〜2の整数を表す。2個あるnは、同一であっても相異なってもよい。R
1が複数個ある場合、それらは同一であっても相異なってもよい。nが2の場合、R
1の前記定義にかかわらず、隣接するR
1が、互いに結合してそれぞれのR
1が結合している炭素原子と共に環状構造を形成してもよい。Eは、各々独立して、−O−、−S−、−Se−又は−N(R
3)−を表す。R
3は、各々独立して、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表す。2個あるEは、同一であっても相異なってもよい。X
1及びX
2は、前記と同じ意味を表す。
【0038】
該環状構造には、飽和又は不飽和の、単環式又は多環式の炭化水素環又は複素環が該当し、その例としては、ベンゼン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、ナフタレン環、チエノチオフェン環、ベンゾチオフェン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環等が挙げられる。
【0040】
式(1B)中、pは、0〜4の整数を表す。2個あるpは、同一であっても相異なってもよい。R
2は、各々独立して、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アルケニル基、アルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、ヘテロアリール基、カルボキシル基、置換カルボキシル基、ニトロ基又はシアノ基を表す。R
2が複数個ある場合、それらは同一であっても相異なってもよい。ベンゼン環中の隣接する炭素原子がそれぞれR
2で表される基を有する場合、R
2の前記定義にかかわらず、隣接する炭素原子が有するR
2が、互いに結合して隣接する前記炭素原子と共に環状構造を形成してもよい。Eは、各々独立して、−O−、−S−、−Se−又は−N(R
3)−を表す。R
3は、各々独立して、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表す。2個あるEは、同一であっても相異なってもよい。X
1及びX
2は、前記と同じ意味を表す。
【0041】
該環状構造には、飽和又は不飽和の、単環式又は多環式の炭化水素環又は複素環が該当し、その例としては、ベンゼン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、ナフタレン環、チエノチオフェン環、ベンゾチオフェン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環等が挙げられる。
【0042】
ここで、アルキル基が有する炭素数は、通常1〜60であり、好ましくは1〜20である。アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、トリフルオロメチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基等が挙げられる。
【0043】
アルコキシ基が有する炭素数は、通常1〜60であり、好ましくは1〜20である。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、n−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、トリフルオロメトキシ基、パーフルオロヘキシルオキシ基、パーフルオロオクチルオキシ基、メトキシメチルオキシ基、2−エトキシエチルオキシ基等が挙げられる。
【0044】
アルキルチオ基の炭素数は、通常1〜60であり、好ましくは1〜20である。アルキルチオ基としては、ブチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、ドデシルチオ基等が挙げられる。
【0045】
アリール基は、芳香族炭化水素から環炭素原子に結合している水素原子1個を除いた原子団であり、ベンゼン環を有する基、縮合環を有する基を含む。アリール基は、置換基を有していてもよく、置換基を除いたアリール基の炭素数は、通常6〜60であり、好ましくは6〜20である。アリール基としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントラセニル基、2−アントラセニル基、9−アントラセニル基、1−テトラセニル基、2−テトラセニル基、5−テトラセニル基、1−ピレニル基、2−ピレニル基、4−ピレニル基、2−ペリレニル基、3−ペリレニル基、2−フルオレニル基、3−フルオレニル基、4−フルオレニル基、1−ビフェニレニル基、2−ビフェニレニル基、2−フェナンスレニル基、9−フェナンスレニル基等が挙げられる。
【0046】
アリールオキシ基は、置換基を有していてもよく、置換基を除いたアリールオキシ基の炭素数は、通常6〜60であり、好ましくは6〜20である。アリールオキシ基としては、フェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、ペンタフルオロフェニルオキシ基等が挙げられる。
【0047】
アリールチオ基は、置換基を有していてもよく、置換基を除いたアリールチオ基の炭素数は、通常6〜60であり、好ましくは6〜20である。アリールチオ基としては、フェニルチオ基、1−ナフチルチオ基、2−ナフチルチオ基、ペンタフルオロフェニルチオ基等が挙げられる。
【0048】
アルケニル基は、置換基を有していてもよく、置換基を除いたアルケニル基の炭素数は、通常2〜60であり、好ましくは2〜20である。アルケニル基としては、ビニル基、1−オクテニル基、2−フェニルビニル基等が挙げられる。
【0049】
アルキニル基は、置換基を有していてもよく、置換基を除いたアルキニル基の炭素数は、通常2〜60であり、好ましくは2〜20である。アルキニル基としては、エチニル基、1−オクチニル基、2−フェニルエチニル基、トリメチルシリルエチニル基等が挙げられる。
【0050】
置換アミノ基は、その炭素数が通常1〜60であり、好ましくは2〜48である。置換アミノ基としては、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、1−ナフチルアミノ基、2−ナフチルアミノ基、ペンタフルオロフェニルアミノ基、ピリジルアミノ基等が挙げられる。
【0051】
置換シリル基は、その炭素数が通常1〜60であり、好ましくは3〜48である。置換シリル基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基、トリフェニルシリル基、トリベンジルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基等が挙げられる。
【0052】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0053】
アシル基は、その炭素数が通常2〜20である。アシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ベンゾイル基、トリフルオロアセチル基、ペンタフルオロベンゾイル基等が挙げられる。
【0054】
アシルオキシ基は、その炭素数が通常2〜20である。アシルオキシ基としては、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、トリフルオロアセチルオキシ基、ペンタフルオロベンゾイルオキシ基等が挙げられる。
【0055】
アミド基は、その炭素数が通常2〜20である。アミド基としては、ホルムアミド基、アセトアミド基、プロピオアミド基、ブチロアミド基、ベンズアミド基、トリフルオロアセトアミド基、ペンタフルオロベンズアミド基、ジホルムアミド基、ジアセトアミド基、ジベンズアミド基等が挙げられる。
【0056】
ヘテロアリール基は、置換基を有していてもよく、置換基を除いたヘテロアリール基の炭素数は、通常3〜60であり、好ましくは3〜20である。ヘテロアリール基としては、2−フリル基、3−フリル基、2−チエニル基、3−チエニル基、2−ピロリル基、3−ピロリル基、2−オキサゾリル基、2−チアゾリル基、2−イミダゾリル基、2−ピリジル基、3−ピリジル基、4−ピリジル基、2−ベンゾフリル基、2−ベンゾチエニル基、2−チエノチエニル基等が挙げられる。
【0057】
置換カルボキシル基は、その炭素数が通常2〜20である。置換カルボキシル基としては、メチルカルボキシレート基、エチルカルボキシレート基、フェニルカルボキシレート基等が挙げられる。
【0058】
前記式(1A)中、Eは、各々独立して、−O−、−S−、−Se−が好ましく、−S−がより好ましい。
【0059】
式(1B)中、Eは、各々独立して、−O−、−S−、−Se−が好ましく、−S−がより好ましい。
【0060】
前記式(1)で表される化合物としては、例えば、以下の化合物が挙げられる。
【0065】
式(1−1)〜式(1−37)の化合物の中では、式(1−8)〜式(1−21)、式(1−24)〜式(1−26)、式(1−31)〜式(1−33)、式(1−36)の化合物が好ましく、式(1−11)〜式(1−20)、式(1−24)、式(1−32)、式(1−33)、式(1−36)の化合物がより好ましく、式(1−11)〜式(1−20)の化合物がさらに好ましい。
【0066】
<式(2)で表される化合物>
前記式(2)中、M
1で表されるアルカリ金属原子としては、リチウム原子、ナトリウム原子、カリウム原子等が挙げられる。
【0067】
前記式(2)中、M
1で表されるハロゲン化マグネシオ基としては、塩化マグネシオ基、臭化マグネシオ基、ヨウ化マグネシオ基等が挙げられる。
【0068】
前記式(2)中、M
2で表されるアルカリ金属原子としては、リチウム原子、ナトリウム原子、カリウム原子等が挙げられる。
【0069】
前記式(2)中、M
2で表されるハロゲン化マグネシオ基としては、塩化マグネシオ基、臭化マグネシオ基、ヨウ化マグネシオ基等が挙げられる。
【0070】
M
2の中でも、アルカリ金属原子、ハロゲン化マグネシオ基が好ましい。
【0071】
M
1及びM
2は、原料の入手容易さ及び原料の調製の容易さの観点からは、同一であることが好ましい。
【0072】
前記式(2)中、Yで表される第15族元素は、窒素、リン、砒素が例示される。
【0073】
前記式(2)中、Yで表される第16族元素は、酸素、硫黄、セレンが例示される。
【0074】
Yとしては、第16族元素が好ましく、硫黄がさらに好ましい。
【0075】
前記式(2)中、Zで表されるアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基の定義、具体例は、前記式(1A)中、R
1で表されるアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基の定義、具体例と同じである。
【0076】
前記式(2)中、mは0又は1を表す。Yが第15族元素の場合、mは1であり、Yが第16族元素の場合、mは0である。
【0077】
前記式(2)で表される化合物は、無水物であっても水和物であってもよい。例えば、硫化ナトリウム5水和物、硫化ナトリウム9水和物も、式(2)で表される化合物に含まれる。
【0078】
本発明の製造方法において、前記式(2)で表される化合物の使用量は、前記式(1)で表される化合物1モルに対して、1モル以上、1〜100モルであることが好ましく、より好ましくは1〜10モルである。式(2)で表される化合物の使用量が式(1)で表される化合物1モルに対して1モル以下であると、縮合環を形成するためのYの量が不足して、縮合環化合物の収率が低下する場合がある。
【0079】
前記式(2)で表される化合物としては、例えば、以下の化合物が挙げられる。
【0081】
式(2−1)〜式(2−19)の化合物の中では、式(2−1)〜式(2−11)の化合物が好ましく、式(2−4)〜式(2−11)の化合物がより好ましく、式(2−5)〜式(2−7)の化合物がさらに好ましい。
【0082】
<式(3)で表される化合物>
前記式(3)中、A環、B環、Y、Z、mは、前記式(1)におけるA環、B環、Y、Z、mと同じ意味を表す。
【0083】
式(3A)で表される化合物は、前記式(1A)で表される化合物を、遷移金属錯体の存在下で、前記式(2)で表される化合物と反応させることにより製造することができる。
【0085】
式(3A)中、R
1、n、Y、Z、m及びEは、前記と同じ意味を表す。
【0086】
式(3B)で表される化合物は、前記式(1B)で表される化合物を、遷移金属錯体の存在下で、前記式(2)で表される化合物と反応させることにより製造することができる。
【0088】
式(3B)中、R
2、p、Y、Z、m及びEは、前記と同じ意味を表す。
【0089】
前記式(3)で表される化合物としては、例えば、以下の化合物が挙げられる。
【0092】
本発明の第1の製造方法において、前記式(2)で表される化合物のM
2が水素原子の場合、遷移金属錯体の存在下で、前記式(1)で表される化合物と反応させると、式(5)で表される化合物が得られる。
【0094】
<式(5)で表される化合物>
式(5)中、A環、B環、X
2、Y、Z及びmは、前記と同じ意味を表す。
【0095】
前記式(5)で表される化合物の好ましい態様は、式(5A)で表される化合物、式(5B)で表される化合物である。
【0097】
式(5A)中、R
1は、各々独立して、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アルケニル基、アルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、ヘテロアリール基、カルボキシル基、置換カルボキシル基、ニトロ基又はシアノ基を表す。nは、0〜2の整数を表す。2個あるnは、同一であっても相異なってもよい。R
1が複数個ある場合、それらは同一であっても相異なってもよい。nが2の場合、R
1の前記定義にかかわらず、隣接するR
1が、互いに結合してそれぞれのR
1が結合している炭素原子と共に環状構造を形成してもよい。Eは、各々独立して、−O−、−S−、−Se−又は−N(R
3)−を表す。R
3は、各々独立して、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表す。2個あるEは、同一であっても相異なってもよい。Y、Z、m及びX
2は、前記と同じ意味を表す。
【0099】
式(5B)中、pは、0〜4の整数を表す。2個あるpは、同一であっても相異なってもよい。R
2は、各々独立して、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アルケニル基、アルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、ヘテロアリール基、カルボキシル基、置換カルボキシル基、ニトロ基又はシアノ基を表す。R
2が複数個ある場合、それらは同一であっても相異なってもよい。ベンゼン環中の隣接する炭素原子がそれぞれR
2で表される基を有する場合、R
2の前記定義にかかわらず、隣接する炭素原子が有するR
2が、互いに結合して隣接する前記炭素原子と共に環状構造を形成してもよい。Eは、−O−、−S−、−Se−又は−N(R
3)−を表す。R
3は、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表す。2個あるEは、同一であっても相異なってもよい。Y、Z、m及びX
2は、前記と同じ意味を表す。
【0100】
前記式(5A)中、Eは、各々独立して、−O−、−S−、−Se−が好ましく、−S−がより好ましい。
【0101】
前記式(5B)中、Eは、各々独立して、−O−、−S−、−Se−が好ましく、−S−がより好ましい。
【0102】
前記式(5)で表される化合物としては、例えば以下の化合物が挙げられる。
【0106】
式(5−1)〜式(5−28)で表される化合物の中では、式(5−8)〜式(5−21)、式(5−24)〜式(5−26)で表される化合物が好ましく、式(5−11)〜式(5−20)、式(5−24)で表される化合物がより好ましく、式(5−11)〜式(5−20)で表される化合物がさらに好ましい。
【0107】
前記式(5)で表される化合物と、例えば、アルカリ金属、アルカリ金属水素化物、アルキル金属及びアルキルマグネシウムハロゲン化物からなる群から選ばれる1種以上の反応物質とを反応させることで、式(4)で表される化合物を得ることができる。
【0109】
式(4)中、M
3は、典型金属原子又はハロゲン化マグネシオ基を表す。Y、Z、m、X
2、A環及びB環は、前記と同じ意味を表す。
【0110】
アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム等が挙げられる。
【0111】
アルカリ金属水素化物としては、水素化リチウム、水素化ナトリウム等が挙げられる。
【0112】
アルキル金属としては、メチルリチウム、ブチルリチウム等が挙げられる。
【0113】
アルキルマグネシウムハロゲン化物としては、メチルマグネシウムクロライド、エチルマグネシウムクロライド、メチルマグネシウムブロマイド、エチルマグネシウムブロマイド等が挙げられる。
【0114】
前記式(4)で表される化合物を用いて、前記式(3)で表される化合物を製造することができる。詳細は、本発明の第2の製造方法の項において後述する。
【0115】
尚、式(4)で表される化合物であってM
3がアルカリ金属又はハロゲン化マグネシオ基である化合物は、本発明の第1の製造方法において、反応中間体として生成する。
【0116】
<本発明の第2の製造方法>
本発明の第2の製造方法は、遷移金属錯体の存在下で、式(4)で表される化合物を分子内環化反応させる工程を含む、前記式(3)で表される化合物の製造方法である。
【0117】
<式(4)で表される化合物>
前記式(4)中、M
3で表される典型金属原子としては、アルカリ金属原子が好ましい。アルカリ金属原子としては、リチウム原子、ナトリウム原子、カリウム原子等が挙げられる。
【0118】
前記式(4)中、M
3で表されるハロゲン化マグネシウムとしては、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム等が挙げられる。
【0119】
前記式(4)で表される化合物の好ましい態様は、式(4A)で表される化合物、式(4B)で表される化合物である。
【0121】
式(4A)中、R
1は、各々独立して、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アルケニル基、アルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、ヘテロアリール基、カルボキシル基、置換カルボキシル基、ニトロ基又はシアノ基を表す。
nは、0〜2の整数を表す。2個あるnは、同一であっても相異なってもよい。R
1が複数個ある場合、それらは同一であっても相異なってもよい。nが2の場合、R
1の前記定義にかかわらず、隣接するR
1が、互いに結合してそれぞれのR
1が結合している炭素原子と共に環状構造を形成してもよい。Eは、各々独立して、−O−、−S−、−Se−又は−N(R
3)−を表す。R
3は、各々独立して、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表す。2個あるEは、同一であっても相異なってもよい。Y、M
3、Z、m及びX
2は、前記と同じ意味を表す。
【0123】
式(4B)中、pは、0〜4の整数を表す。2個あるpは、同一であっても相異なってもよい。R
2は、各々独立して、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アルケニル基、アルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、ヘテロアリール基、カルボキシル基、置換カルボキシル基、ニトロ基又はシアノ基を表す。R
2が複数個ある場合、それらは同一であっても相異なってもよい。ベンゼン環中の隣接する炭素原子がそれぞれR
2で表される基を有する場合、R
2の前記定義にかかわらず、隣接する炭素原子が有するR
2が、互いに結合して隣接する前記炭素原子と共に環状構造を形成してもよい。Eは、各々独立して、−O−、−S−、−Se−又は−N(R
3)−を表す。R
3は、各々独立して、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表す。2個あるEは、同一であっても相異なってもよい。Y、M
3、Z、m及びX
2は、前記と同じ意味を表す。
【0124】
前記式(4A)中、Eは、各々独立して、−O−、−S−、−Se−が好ましく、−S−がより好ましい。
【0125】
前記式(4B)中、Eは、各々独立して、−O−、−S−、−Se−が好ましく、−S−がより好ましい。
【0126】
前記式(4)で表される化合物としては、例えば以下の化合物が挙げられる。
【0130】
式(4−1)〜式(4−28)の化合物の中では、式(4−8)〜式(4−21)、式(4−24)〜式(4−26)の化合物が好ましく、式(4−11)〜式(4−20)、式(4−24)の化合物がより好ましく、式(4−11)〜式(4−20)の化合物がさらに好ましい。
【0131】
<遷移金属錯体>
本発明の第1の製造方法及び第2の製造方法に用いられる遷移金属錯体は、第8〜10族の元素を含む遷移金属錯体が好ましく、第10族の元素を含む遷移金属錯体がより好ましく、パラジウム錯体、ニッケル錯体がさらに好ましく、パラジウム錯体が特に好ましい。
【0132】
前記遷移金属錯体は、少なくともひとつのホスフィン配位子を有することが好ましい。
【0133】
前記遷移金属錯体には、遷移金属錯体前駆体も含まれる。ここで、遷移金属錯体前駆体とは、反応系中で遷移金属錯体に変換される組成物であり、前駆体用遷移金属錯体とホスフィン配位子又はホスホニウム塩とを含む組成物を表す。
【0134】
前記パラジウム錯体としては、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、テトラキス(トリストリルホスフィン)パラジウム(0)(オルト、メタ、およびパラの各種置換異性体を含む)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド、ビス(トリエチルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド、[1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]パラジウム(II)ジクロリド、[1,1'−ビス(ジフィルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリド、ビス(アセトニトリル)パラジウム(II)ジクロリド、及びビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)ジクロリド等が挙げられる。
【0135】
中でも、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、テトラキス(トリストリルホスフィン)パラジウム(0)(オルト、メタ、およびパラの各種置換異性体を含む)が好ましい。
【0136】
前記ニッケル錯体としては、テトラキス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(0)、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(II)ジクロリド、[1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]ニッケル(II)ジクロリド、[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ニッケル(II)ジクロリド、[1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン]ニッケル(II)ジクロリド、[1,1'−ビス(ジフィルホスフィノ)フェロセン]ニッケル(II)ジクロリド等が挙げられる。
【0137】
前記前駆体用遷移金属錯体としては、Pd
2(dba)
3(ここでdbaは、トランス、トランス−ジベンジリデンアセトンを表す。)、Pd(dba)
2、酢酸パラジウム(II)、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)等が挙げられる。
中でも、Pd
2(dba)
3、Pd(dba)
2、酢酸パラジウム(II)が好ましい。
【0138】
前記ホスフィン配位子としては、トリ−n−ブチルホスフィン、トリ−tert−ブチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリシクロペンチルホスフィン、トリベンジルホスフィン等のトリアルキルホスフィン類や、トリフェニルホスフィン、トリトリルホスフィン(オルト、メタ、およびパラの各種置換異性体を含む)、トリス(メトキシフェニル)ホスフィン(オルト、メタ、およびパラの各種置換異性体を含む)、等のトリアリールホスフィン類、ジフェニルシクロヘキシルホスフィン等のジアリールアルキルホスフィン類、ジシクロヘキシルフェニルホスフィン、(2−ビフェニリル)ジ−tert−ブチルホスフィン等のジアルキルアリールホスフィン類、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)シクロヘキサン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)ベンゼン、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン等の二座配位ホスフィン類が挙げられる。
【0139】
中でも、トリ−tert−ブチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、(2−ビフェニリル)ジ−tert−ブチルホスフィンが好ましい。
【0140】
前記ホスホニウム塩は、上記ホスフィン配位子とHBF
4、HPF
6、HSbF
6等の酸による塩であり、トリ−n−ブチルホスホニウムテトラフルオロボレート、トリ−tert−ブチルホスホニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルホスホニウムヘキサフルオロアンチモネート等が挙げられる。
中でも、トリ−tert−ブチルホスホニウムテトラフルオロボレートが好ましい。
【0141】
前記ホスホニウム塩を用いる場合は、ホスホニウム塩を反応溶液中でホスフィン配位子へと変換するために、さらに塩基を加えてもよい。
【0142】
前記塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、リン酸ナトリウムおよびリン酸カリウム等が挙げられる。
中でも、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウムが好ましい。
【0143】
遷移金属錯体及び前駆体用遷移金属錯体の使用量は、反応系に遷移金属が適量存在するように調節される。反応系中の遷移金属の適量は、前記式(1)、式(1A)、式(1B)、式(4)、式(4A)又は式(4B)で表される化合物1モルに対して、0.0001〜10モル、好ましくは0.001〜1モル、より好ましくは0.01〜0.5モルである。
【0144】
遷移金属錯体の使用量は、前記式(1)、式(1A)、式(1B)、式(4)、式(4A)又は式(4B)で表される化合物1モルに対して、0.0001〜10モルであることが好ましく、より好ましくは0.001〜1モルである。
【0145】
前駆体用遷移金属錯体の使用量は、前記式(1)、式(1A)、式(1B)、式(4)、式(4A)又は式(4B)で表される化合物1モルに対して、0.0001〜10モルであることが好ましく、より好ましくは0.001〜1モルである。
【0146】
ホスフィン配位子の使用量は、前駆体用遷移金属錯体1モルに対して、1〜10モルであることが好ましく、より好ましくは1〜4モルである。
【0147】
ホスホニウム塩の使用量は、前駆体用遷移金属錯体1モルに対して、1〜10モルであることが好ましく、より好ましくは1〜4モルである。
【0148】
塩基の使用量は、ホスホニウム塩1モルに対して、1〜10モルであることが好ましく、より好ましくは1〜5モルである。
【0149】
なお、遷移金属錯体は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0150】
遷移金属錯体は、反応系に添加する量を分割し、複数回に分けて、逐次的に加えることも可能である。本発明の製造方法において、遷移金属錯体の添加後、一定時間が経過すると反応速度が落ちることがあるが、この状態でさらに遷移金属錯体を加えることで、反応速度を上げることができる。
【0151】
<反応条件>
本発明の第1の製造方法及び第2の製造方法における反応温度は、20〜300℃であることが好ましい。反応を効率的に進行させる観点からは、50℃以上がより好ましく、80℃以上がさらに好ましい。また、副反応を抑える観点からは、250℃以下がより好ましく、200℃以下がさらに好ましい。
【0152】
反応時間は、通常、1分〜200時間である。反応を十分に進行させる観点からは、1時間以上が好ましい。
【0153】
前記反応は、無溶媒で行っても溶媒の存在下で行ってもよいが、溶媒の存在下で行うことが好ましい。溶媒を使用する場合、その溶媒は反応不活性な溶媒であればよく、一種単独で用いても複数の混合溶媒として用いてもよい。溶媒としては、例えば、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素溶媒、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素溶媒、テトラヒドロフラン、アニソール等のエーテル系溶媒、1−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル等の非プロトン性極性溶媒、水が挙げられ、芳香族炭化水素溶媒、エーテル系溶媒、非プロトン性極性溶媒が好ましい。
【0154】
前記反応は、空気中で行っても、不活性ガス雰囲気下で行ってもよいが、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
【0155】
次に、具体的な反応操作を説明する。
まず、不活性ガスで反応容器全体のガスを置換した後、この容器に式(1)で表される化合物、式(2)で表される化合物、遷移金属錯体及び溶媒を添加し、混合する。得られた混合物を所望の温度で反応させる。反応が終了したら、得られた反応生成物をそのまま濃縮することにより、或いは、反応生成物を水中に入れ、トルエン、酢酸エチル、ジエチルエーテル、ジクロロメタン等の有機溶媒を用いて抽出した後、得られた有機層を濃縮することにより、所望である式(3)で表される化合物が得られる。更に、この化合物を、カラムクロマトグラフィー、抽出、再結晶又は蒸留により精製してもよい。
【0156】
<反応機構>
本発明において、前記式(3)で表される化合物は以下の反応機構により生成していると推定される。
【0157】
まず、Mで表される遷移金属錯体が前記式(1)で表される化合物に酸化的付加して下記式(6)で表される化合物を生じる。下記式(6)で表される化合物は前記式(2)で表される化合物との間で金属交換反応して下記式(7)で表される化合物を生じる。下記式(7)で表される化合物から遷移金属錯体Mが還元的脱離して前記式(4)で表される化合物であってM
3がアルカリ金属又はハロゲン化マグネシオ基である化合物が生じると同時に遷移金属錯体Mが再生する。
【0159】
式中、Mは遷移金属錯体を表す。M
1、M
2、Y、Z、m、X
1、X
2、A環及びB環は、前記と同じ意味を有する。
【0160】
次に、Mで表される遷移金属錯体が前記式(4)で表される化合物に酸化的付加して下記式(8)で表される化合物を生じる。下記式(8)で表される化合物は分子内で金属交換反応して下記式(9)で表される化合物を生じる。下記式(9)で表される化合物から遷移金属錯体Mが還元的脱離して前記式(3)で表される化合物が生じると同時に遷移金属錯体Mが再生する。
【0162】
式中、Mは遷移金属錯体を表す。M
1、M
2、Y、Z、m、X
1、X
2、A環及びB環は、前記と同じ意味を有する。
【0163】
上述の反応機構から、遷移金属錯体の存在下で、前記式(1)で表される化合物と、前記式(2)で表される化合物は、反応系中で前記式(4)で表される化合物を経由して、前記式(3)で表される化合物が製造される。
【0164】
つまり、前記式(3)で表される化合物は、遷移金属錯体の存在下で、前記式(1)で表される化合物と、前記式(2)で表される化合物から、製造することもでき、また、前記式(3)で表される化合物は、遷移金属錯体の存在下で、前記式(4)で表される化合物から製造することもできる。
【0165】
<有機薄膜>
次に、本発明の製造方法によって得られる前記式(3)で表される化合物を含有する有機薄膜について説明する。
【0166】
有機薄膜の好適な厚さは、当該有機薄膜を適用する素子に応じて異なるが、通常1nm〜100μmの範囲であり、2nm〜1000nmであると好ましく、5nm〜500nmであるとより好ましく、20nm〜200nmであると更に好ましい。
【0167】
このような厚さの有機薄膜により、良好な電荷輸送性を有し、強度も十分な有機薄膜素子を形成しやすくなる。
【0168】
有機薄膜は、前記式(3)で表される化合物の1種類を単独で含むものであってもよく、また2種類以上を含むものであってもよい。有機薄膜が、前記式(3)で表される化合物以外の成分を含む場合は、前記式(3)で表される化合物を10質量%以上含むことが好ましく、30質量%以上含むことがより好ましい。前記式(3)で表される化合物の含有量が30質量%未満である場合、薄膜化が困難となったり、良好な電荷移動度が得られ難くなったりする傾向にある。
【0169】
前記式(3)で表される化合物以外の成分としては、例えば、前記式(3)で表される化合物以外の有機半導体材料が挙げられる。
【0170】
<有機薄膜素子>
本発明の有機薄膜は、高い電荷輸送性を発揮しうることから、有機薄膜素子に設けられた電極から注入された電荷、又は光吸収によって発生した電荷を輸送することができる。
これらの特性を活用して、有機薄膜トランジスタ、有機太陽電池、光センサ、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ等の有機薄膜素子に適用することができる。
【0171】
特に有機薄膜トランジスタの電荷輸送材料として有用である。
【実施例】
【0172】
以下、本発明をさらに詳細に説明するために実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0173】
(高速液体クロマトグラフィー(HPLC))
実施例において、HPLC面積百分率の値は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC、島津製作所製、商品名:LC−20AD)により、254nmの波長で検出したクロマトグラムにおける値を用いた。測定する化合物は、テトラヒドロフランに溶解させ、HPLCに得られた溶液を0.5μL注入した。HPLCの移動相には、0.1%酢酸水溶液(A液)及び酢酸を0.1%加えたアセトニトリル(B液)を用い、0.5mL/分の流速で、B液に対するA液の容積比を、6分かけて(A液)/(B液)=80/20〜0/100(容積比)とするグラジエントをかけて流した。カラムは、Shim−pack XR−ODS 内径2.0mm×長さ75mm(島津製作所製)を用いた。検出器は、フォトダイオードアレイ検出器(島津製作所製、商品名:SPD−M20A)を用いた。
【0174】
(質量分析)
実施例において、質量分析の値は、AccuTOF TLC JMS−T100TD(日本電子製)により求めた。
【0175】
(NMR分析)
NMR測定は、化合物を重クロロホルムに溶解させ、NMR装置(Varian社製、INOVA300)を用いて行った。
【0176】
実施例1
(チエノ[3,2−b:4,5−b’]ビスベンゾ[b]チオフェンの合成)
【0177】
【化33】
【0178】
フラスコ内の気体を窒素で置換した100mLフラスコに、3,3’−ジブロモ−2,2’−ジ(ベンゾ[b]チオフェン)(0.10g、0.24mmol)、硫化ナトリウム9水和物(0.056g、0.24mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(Pd(PPh
3)
4)(14mg)及び1−メチル−2−ピロリドン(10mL)を入れ、160℃で6時間加熱撹拌した。
反応液をHPLC分析し、面積百分率を求めたところ、化合物(3−8)の面積が61%、化合物(1−11)の面積が25%であった。
【0179】
実施例2
(チエノ[3,2−b:4,5−b’]ビスベンゾ[b]チオフェンの合成)
【0180】
【化34】
【0181】
フラスコ内の気体を窒素で置換した100mLフラスコに、3,3’−ジブロモ−2,2’−ジ(ベンゾ[b]チオフェン)(0.10g、0.24mmol)、硫化ナトリウム9水和物(0.056g、0.24mmol)、炭酸カリウム(0.13g、0.94mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(Pd
2(dba)
3)(5.4mg)、トリ−tert−ブチルホスホニウムテトラフルオロボレート(14mg)及び1−メチル−2−ピロリドン(10mL)を入れ、110℃で6時間加熱撹拌した。
【0182】
反応液をHPLC分析し、面積百分率を求めたところ、化合物(3−8)の面積が63%、化合物(1−11)の面積が34%であった。
【0183】
実施例3
(チエノ[3,2−b:4,5−b’]ビスベンゾ[b]チオフェンの合成)
【0184】
【化35】
【0185】
フラスコ内の気体を窒素で置換した100mLフラスコに、3,3’−ジブロモ−2,2’−ジ(ベンゾ[b]チオフェン)(0.50g、1.2mmol)、硫化ナトリウム9水和物(0.28g、1.2mmol)、Pd(PPh
3)
4(68mg)及び1−メチル−2−ピロリドン(50mL)を入れ、140℃で10時間加熱撹拌した。その後、フラスコ内にPd(PPh
3)
4(68mg)を加え、140℃で10時間加熱撹拌した。その後、フラスコ内にPd(PPh
3)
4(68mg)を加え、140℃で5時間加熱撹拌した。
【0186】
反応液をHPLC分析し、面積百分率を求めたところ、化合物(3−8)の面積は64%、化合物(1−11)の面積は0%であった。
【0187】
反応液を100mLの水に注ぎ、析出物を得た。該析出物をろ取した後、メタノールで洗浄し、固体を得た。得られた固体を、シリカゲルカラムを用いて精製し、化合物(3−8)を0.19g得た。収率は53%であった。
【0188】
1H−NMR(300MHz,CDCl
3)δ7.89(m,4H),7.47(m,2H),7.39(m,2H)
【0189】
(化合物(3−8)の反応中間体の質量分析)
実施例3において、反応開始後21時間経過した反応液を質量分析したところ、m/zが529.96であるフラグメントが得られた。
【0190】
m/zが529.96であるフラグメントは、反応機構の項で説明した、前記式(7)で表される化合物及び前記式(8)で表される化合物に対応する化合物の質量数に由来するものであり、前述した反応機構及び中間体としての前記式(4)で表される化合物の存在を示す測定結果である。
【0191】
検出された質量数の構造は、以下の式で表されるナトリウムと付加した化合物である。
どちらも質量数は同じで、528.73となる。反応液中では下記式中のパラジウムにホスフィンが配位していると推定される。
【0192】
【化36】
【0193】
合成例1
(6−オクチルベンゾ[b]チオフェンの合成)
【0194】
【化37】
【0195】
フラスコ内の気体を窒素で置換した100mLフラスコに、6−ブロモベンゾ[b]チオフェン(4.0g、19mmol)、オクチルボロン酸(4.5g、28mmol)、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウムジクロリド(PdCl
2(dppf))(0.10g、0.19mmol)及びテトラヒドロフラン(120mL)を入れ、加熱還流させつつ、水酸化カリウム水溶液(2.3M、24mL)を滴下した。滴下終了後、13時間加熱還流した。反応溶液を濃縮し、トルエンと水とを加え、トルエン溶液を抽出した。トルエン溶液を濃縮した。濃縮した溶液を、シリカゲルカラムを用いて精製を行い、6−オクチルベンゾ[b]チオフェンを1.9g得た。収率は52%であった。
【0196】
1H−NMR(300MHz,CDCl
3)δ7.72(d,J=8.1Hz,1H),7.68(s,1H),7.21−7.36(m,2H),7.19(d,J=8.1Hz,1H),2.72(t,J=7.7Hz,2H),1.60−1.70(m,2H),1.20−1.40(m,10H),0.85−0.94(m,3H)
【0197】
合成例2
(6,6’−ジオクチル−2,2’−ジ(ベンゾ[b]チオフェン)の合成)
【0198】
【化38】
【0199】
フラスコ内の気体をアルゴンで置換した100mLフラスコに、6−オクチルベンゾ[b]チオフェン(1.9g、7.6mmol)、ジエチルエーテル(37mL)を入れた。その後、フラスコ内にブチルリチウム(2.6M、3.8mL)を滴下した。滴下終了後、2時間加熱還流した。反応溶液を0℃に冷却し、塩化銅(II)(1.5g、11mmol)を加え、その後、2時間加熱還流した。反応溶液をろ過し、ろ物中の有機化合物をトルエン(200mL)及びテトラヒドロフラン(50mL)に溶解し、得られた溶液をろ液に加えた。その後、ろ液を酢酸水溶液及び水で洗浄した。ろ液を濃縮し、濃縮液をメタノールに注ぎ、得られた析出物をろ取し、6,6’−ジオクチル−2,2’−ジ(ベンゾ[b]チオフェン)を1.1g得た。収率は58%であった。
【0200】
1H−NMR(300MHz,CDCl
3)δ7.66(d,J=8.4Hz,2H),7.60(s,2H),7.44(s,2H),7.18(d,J=8.4Hz,2H),2.72(t,J=7.7Hz,4H),1.60−1.70(m,4H),1.20−1.40(m,20H),0.85−0.94(m,6H)
【0201】
合成例3
(3,3’−ジブロモ−6,6’−ジオクチル−2,2’−ジ(ベンゾ[b]チオフェン)の合成)
【0202】
【化39】
【0203】
100mLフラスコに、6,6’−ジオクチル−2,2’−ジ(ベンゾ[b]チオフェン)(1.0g、2.0mmol)及びクロロホルム(20mL)を入れた。その後、フラスコ内に臭素(0.68g、4.3mmol)を滴下した。その後、室温(25℃)で20分撹拌した。反応溶液にクロロホルムとチオ硫酸ナトリウム水溶液を加えて有機層を抽出し、有機層を水で2回洗浄し、その後、有機層を濃縮した。濃縮した有機層を、シリカゲルカラムを用いて精製を行い、3,3’−ジブロモ−6,6’−ジオクチル−2,2’−ジ(ベンゾ[b]チオフェンを0.70g得た。収率は53%であった。
【0204】
1H−NMR(300MHz,CDCl
3)δ7.79(d,J=8.1Hz,2H),7.63(s,2H),7.33(d,J=8.1Hz,2H),2.77(t,J=7.7Hz,4H),1.60−1.70(m,4H),1.20−1.40(m,20H),0.85−0.94(m,6H)
【0205】
実施例4
(2,7−ジオクチルチエノ[3,2−b:4,5−b’]ビスベンゾ[b]チオフェンの合成)
【0206】
【化40】
【0207】
フラスコ内の気体を窒素で置換した100mLフラスコに、3,3’−ジブロモ−6,6’−ジオクチル−2,2’−ジ(ベンゾ[b]チオフェン)(0.70g、1.1mmol)、硫化ナトリウム9水和物(0.25g、1.1mmol)、炭酸カリウム(0.60g、4.3mmol)、Pd
2(dba)
3(25mg)、トリ−tert−ブチルホスホニウムテトラフルオロボレート(63mg)及び1−メチル−2−ピロリドン(50mL)を入れ、110℃で3時間加熱撹拌した。その後、Pd
2(dba)
3(25mg)及びトリ−tert−ブチルホスホニウムテトラフルオロボレート(63mg)を加え、さらに130℃で10時間加熱撹拌した。その後、反応溶液をメタノールに注ぎ、得られた析出物をろ取した。析出物を、シリカゲルカラムを用いて精製を行い、トルエンと2−プロパノールとを用いて再結晶を行い、2,7−ジオクチルチエノ[3,2−b:4,5−b’]ビスベンゾ[b]チオフェンを300mg得た。収率は53%であった。
【0208】
1H−NMR(300MHz,CDCl
3)δ7.77(d,J=7.8Hz,2H),7.69(s,2H),7.27(d,J=7.8Hz,2H),2.75(t,J=7.7Hz,4H),1.65−1.75(m,4H),1.20−1.40(m,20H),0.85−0.94(m,6H)
【0209】
比較例1
(チエノ[3,2−b:4,5−b’]ビスベンゾ[b]チオフェンの合成)
【0210】
【化41】
【0211】
フラスコ内の気体を窒素で置換した100mLフラスコに、3,3’−ジブロモ−2,2’−ジ(ベンゾ[b]チオフェン)(0.10g、0.24mmol)、硫化ナトリウム9水和物(0.056g、0.24mmol)及び1−メチル−2−ピロリドン(10mL)を入れ、190℃で6時間加熱撹拌した。本反応は、遷移金属錯体を用いずに行った。
【0212】
反応液をHPLC分析し、面積百分率を求めたところ、化合物(3−8)の面積が33%、化合物(1−11)の面積が41%であった。
【0213】
比較例2
(チエノ[3,2−b:4,5−b’]ビスベンゾ[b]チオフェンの合成)
【0214】
【化42】
【0215】
3,3’−ジブロモ−2,2’−ジ(ベンゾ[b]チオフェン)(0.50g、1.2mmol)をジエチルエーテル(15mL)に加えて撹拌し、−78℃に冷却した。得られた溶液に、ブチルリチウムの2.8Mヘキサン溶液(0.98mL、2.7mmol)を加えた。その後、−78℃に保ち1時間撹拌し、ビス(フェニルスルホニル)スルフィド(0.56g、1.8mmol)を加えた。−78℃に保ち1時間撹拌した。その後、反応液を室温(25℃)にし、塩化アンモニウム水溶液を加えた。クロロホルムを加えて有機層を抽出した。有機層であるクロロホルム溶液を、塩化アンモニウム水溶液で洗浄した後、硫酸マグネシウムを用いて乾燥させ、濃縮した。濃縮した溶液を、トルエンとヘキサンとの混合溶液に注いで再沈殿し、生成した沈殿を熱クロロホルムを用いて再結晶を行い、チエノ[3,2−b:4,5−b’]ビスベンゾ[b]チオフェンを21mg得た。
収率は6%であった。