特許第5805198号(P5805198)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5805198
(24)【登録日】2015年9月11日
(45)【発行日】2015年11月4日
(54)【発明の名称】加工安定性ポリアミドの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 69/46 20060101AFI20151015BHJP
【FI】
   C08G69/46
【請求項の数】13
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-527546(P2013-527546)
(86)(22)【出願日】2011年8月31日
(65)【公表番号】特表2013-537244(P2013-537244A)
(43)【公表日】2013年9月30日
(86)【国際出願番号】EP2011064932
(87)【国際公開番号】WO2012031950
(87)【国際公開日】20120315
【審査請求日】2014年8月28日
(31)【優先権主張番号】10176093.2
(32)【優先日】2010年9月10日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ロルフ−エグベアト グリュッツナー
(72)【発明者】
【氏名】シャンカラ ナラヤナン キーラパンダル ラマムアジー
(72)【発明者】
【氏名】ファイサル−アリ エル−トウファイリ
(72)【発明者】
【氏名】アーヒム ゲアストラウアー
(72)【発明者】
【氏名】アーヒム シュタマー
【審査官】 繁田 えい子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−090076(JP,A)
【文献】 特開平02−255835(JP,A)
【文献】 米国特許第04891420(US,A)
【文献】 特開平08−073588(JP,A)
【文献】 米国特許第05596070(US,A)
【文献】 特表2004−502854(JP,A)
【文献】 米国特許第06268468(US,B1)
【文献】 特開昭61−211337(JP,A)
【文献】 特表2011−524925(JP,A)
【文献】 特開平03−097732(JP,A)
【文献】 特開2010−195930(JP,A)
【文献】 特開平02−296826(JP,A)
【文献】 特開平11−181084(JP,A)
【文献】 特開平04−337323(JP,A)
【文献】 特開2008−239908(JP,A)
【文献】 特開2000−154248(JP,A)
【文献】 特開2000−273167(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC C08G 69/00 − 69/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工安定性ポリアミドの製造方法において、ポリアミドを固相後縮合の間に、キャリアガス及び水及び
a) 酸若しくは無水物若しくはラクトン若しくはこれらの混合物又は
b) アンモニア若しくはアミン若しくはこれらの混合物
を含有するガスで、130〜200℃の温度及び0.01〜10barの圧力で処理し、
前記使用されるガスは、
水蒸気揮発性でない成分a)又はb)と水及び前記キャリアガスとの混合物を有し、前記使用されるガスを、固相後縮合器のキャリアガス流中に直接供給するか、又は
水蒸気揮発性でない成分a)又はb)と水及び前記キャリアガスとの混合物を有し、前記使用されるガスを、25kHz〜3MHzの範囲内の超音波によって霧化するか、又は
水蒸気揮発性でない成分a)又はb)と水及び前記キャリアガスとの混合物を有し、前記使用されるガスを、100〜300℃の範囲内の温度に加熱することを特徴とする、加工安定性ポリアミドの製造方法。
【請求項2】
ポリアミドに対して0.001〜10質量%の酸若しくは無水物若しくはラクトン若しくはこれらの混合物又はアンモニア若しくはアミン若しくはこれらの混合物を使用することを特徴とする、請求項1に記載の加工安定性ポリアミドの製造方法。
【請求項3】
水を、
a. 不活性ガス及び酸若しくは無水物若しくはラクトン若しくはこれらの混合物又はアンモニア若しくはアミン若しくはこれらの混合物からなる混合物に添加するか、又は
b. 不活性ガスに添加するか、又は
c. 若しくは無水物若しくはラクトン若しくはこれらの混合物の水溶液の形で又はンモニア若しくはアミン若しくはこれらの混合物の水溶液の形で添加することを特徴とする、請求項1又は2に記載の加工安定性ポリアミドの製造方法。
【請求項4】
水蒸気揮発性の酸若しくは無水物若しくはラクトン若しくはこれらの混合物又はアンモニア若しくはアミン若しくはこれらの混合物を、不活性ガス/水混合物と共に直接加熱し、後縮合器に導入することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の加工安定性ポリアミドの製造方法。
【請求項5】
水蒸気揮発性でない酸若しくは無水物若しくはラクトン若しくはこれらの混合物又はアミン若しくはこれらの混合物を、超音波霧化器を用いて25kHz〜3MHzの範囲内で、最も微細な滴として水中に分散させ、この混合物を不活性ガスに導入し、引き続き固相後縮合器に導入することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の加工安定性ポリアミドの製造方法。
【請求項6】
前記ガスは水を0.001〜20質量%含有することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の加工安定性ポリアミドの製造方法。
【請求項7】
不活性ガスとして、窒素又はアルゴンを使用することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の加工安定性ポリアミドの製造方法。
【請求項8】
酸として、ギ酸、酢酸、プロピオン酸又はこれらの混合物を使用することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の加工安定性ポリアミドの製造方法。
【請求項9】
酸として、リン酸又はリン酸とギ酸又はプロピオン酸との混合物を使用することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の加工安定性ポリアミドの製造方法。
【請求項10】
酸として、ジエチレントリアミン−ペンタ(メチレンホスホン酸)(DTPMP)又はDTPMPとリン酸及び/又はギ酸又はプロピオン酸からなる混合物を使用することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の加工安定性ポリアミドの製造方法。
【請求項11】
無水物として、無水コハク酸、グルタル酸無水物、無水マレイン酸又は無水フタル酸を使用することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の加工安定性ポリアミドの製造方法。
【請求項12】
ラクトンとして、ブチロラクトン、バレロラクトン又はカプロラクトンを使用することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の加工安定性ポリアミドの製造方法。
【請求項13】
フィルム、モノフィラメント又は繊維を製造するためのポリアミドを含有するか又はポリアミドからなるペレット及び顆粒のための、請求項1から12までのいずれか1項に記載のポリアミドの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高められた加工安定性を有するポリアミドの製造方法に関する。
【0002】
WO-A-02/4561(US-B-6,268,468)からは、固体の状態で存在するポリアミドの処理方法が公知であり、この処理方法では、前記ポリアミドを、ガス状の酸又はガス状の無水物又はアミンを含有する不活性な窒素キャリアガス又はアルゴンキャリアガスで処理する。
【0003】
EP-A-1 333 049からは、溶融液中で、後貯蔵された付加的な加工工程で、選択されたラクトン又は酸無水物により、乾燥されかつモノマー除去されたポリアミド6を安定化することが公知である。
【0004】
この方法はまだ不満がある。
【0005】
従って、本発明の基礎とする課題は、上記欠点を取り除くことであった。
【0006】
従って、ポリアミドを、固相後縮合の間に、キャリアガス(不活性ガス)、水及び酸若しくは無水物若しくはラクトン若しくはこれらの混合物又はアンモニア若しくはアミン若しくはこれらの混合物を含有するガスで、130〜200℃の温度で、0.01〜10barの圧力で処理することを特徴とする、加工安定性ポリアミドを製造する新規でかつ改善された方法が見出された。
【0007】
本発明による方法は次のように実施することができる:
ポリアミドの固相後縮合の際に、キャリアガス(不活性ガス)、水及び
a) 酸若しくは無水物若しくはラクトン若しくはこれらの混合物又は
b) アンモニア若しくはアミン若しくはこれらの混合物
を含有するガスで、又は連続してb)の前にa)で、又はa)の前にb)で、130〜200℃、好ましくは140〜180℃、特に好ましくは150〜175℃の温度で、0.01〜10bar、好ましくは0.1〜5barの圧力で、特に好ましくは常圧(大気圧)で処理することができる。この処理時間は、広い範囲で可変であることができ、通常では1〜100時間、好ましくは2〜60時間、特に好ましくは10〜50時間、殊に15〜40時間である。
【0008】
この使用されるガスは、一般に、水蒸気揮発性の成分a)或いはb)と水及び不活性ガスとの混合物を、固相後縮合器のキャリアガス流中に直接供給するか又は水蒸気揮発性でない成分a)或いはb)と水及び不活性ガスの混合物を25kHz〜3MHz、好ましくは200kHz〜3MHz、特に好ましくは400kHz〜3MHzの範囲内の超音波により霧化するか、又は100〜300℃、好ましくは180〜250℃、特に好ましくは200〜240℃、殊に210〜230℃の範囲内の温度に加熱し、かつ場合により超音波により霧化することにより得られる。
【0009】
このガスは、例えば直接か又は不活性ガス流を用いて、固相後縮合器中の多様な箇所に供給することができる。好ましい実施態様の場合に、この導入は後縮合器の上端部(この縮合器先端部の下側の約1/3の経路長)で行うことができる。2つの別個の供給管へのガス流の分割又は固相後縮合器の下端部でのガスの完全な供給も同様に可能である。特に好ましい実施態様の場合に、後縮合器の上端部での添加物/キャリアガス流の添加及びそれと関連してポリアミドを経由したガスの導通では、好ましくはポリアミドを通して例えば並流で達成される。この使用した添加物は、後縮合器に導入する前に水に溶かすことができ、この場合、濃度は一般に0.001〜10質量%、好ましくは0.01〜5質量%、特に好ましくは0.02〜1質量%である。引き続きこの溶液をキャリアガスと混合し、水蒸気揮発性の添加物を利用する場合には100〜300℃、好ましくは180〜250℃、特に好ましくは200〜240℃、殊に210〜230℃の範囲内の温度に加熱し、場合により引き続き後縮合器に供給することができる。水蒸気揮発性でない添加物の場合にも同様に水溶液を製造し、これを室温で霧化し、引き続き水蒸気揮発性添加物の場合と同様に行うことができる。
【0010】
水を、
a. 不活性ガス及び酸若しくは無水物若しくはラクトン若しくはこれらの混合物、又はアンモニア若しくはアミン若しくはこれらの混合物とからなる混合物に添加するか、又は
b. 不活性ガスに添加するか、又は
c. 酸若しくは無水物若しくはラクトン若しくはこれらの混合物の水溶液又は水性アンモニア若しくは水性アミン若しくはこれらの混合物の形で添加することができる。
【0011】
ポリアミドの製造の際の一部としての固相縮合(以後、Dにおいて記載)の場合に、一般に、500〜900kg/m3、好ましくは600〜800kg/m3、特に好ましくは700〜800kg/m3の嵩密度或いは1〜4mm、好ましくは1.5〜3m、特に好ましくは2〜2.5mmの直径を有する顆粒が存在する。
【0012】
固相縮合のために使用されるポリアミドは、次のように製造される:
A) 溶融重合(同様に、R. Vieweg; A. Mueller著、プラスチックハンドブック 第VI巻、ポリアミド;C.Hanser出版 1966、第190頁以降を参照)
液状カプロラクタムを、反応開始剤としての少量の水で1段階法又は2段階法で240℃〜270℃の温度で融液を介して重縮合させることができる。このために、例えばVK管を利用し、この管の端部で融液を冷却し、顆粒化することができる。
B) 熱水抽出(同様に、R. Vieweg; A. Mueller著、プラスチックハンドブック 第VI巻、ポリアミド;C.Hanser出版 1966、第193頁+リファレンスを参照)
ここでは、残留モノマー及びオリゴマーをポリアミドから、熱水を用いた例えば向流での抽出により除去を行うことができる。この抽出され、まだ湿っているポリアミド顆粒を、その後に、
C) 乾燥(同様に、R. Vieweg; A. Mueller著、プラスチックハンドブック 第VI巻、ポリアミド;C.Hanser出版 1966、第194頁+リファレンスを参照)
この第3のプロセス工程は、熱水抽出に引き続き行うことができ、抽出された顆粒を、残留湿分約10質量%から1〜2質量%への乾燥を含む。
D) 固相後縮合(同様のリファレンス)
抽出されかつ予備乾燥された顆粒を、空気酸素の遮断下で、閉鎖系で固体の状態で温度処理することができる。空気酸素の遮断は通常では不活性ガス雰囲気を生じさせることにより行う。この処理は、最終生成物として、適切な粘度水準及び著しく低下された残留水分を有する加工用のポリアミドが生じる。
【0013】
前記乾燥(C)及び固相後縮合(D)は、1つの工程で組み合わせることもでき、この場合、例えば、このために利用される管内で、この乾燥プロセスは一般に使用可能な管の長さの上側の3分の1で、後縮合は一般に使用可能な管の長さの下側の3分の2で、空気遮断下で行うことができる。
【0014】
高められた加工安定性を達成するための記載された添加物の添加は、本発明の場合に、固相後縮合D)の間に或いは組み合わせられた乾燥/後縮合管中でキャリア流中でガスとして又は霧化された水蒸気/添加物混合物として行う。
【0015】
ポリアミドは、ポリマー主鎖中にアミド基(−CO−NH−)を有する長鎖の合成ポリマーである。この種のポリアミドの例には、ラクタム又はジカルボン酸及びジアミンの重合により得られたホモポリアミド並びにジアミン、ジカルボン酸及びラクタムの混合物からの共重合生成物も含まれる。
【0016】
ポリアミドとして、例えばポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド666、ポリアミド69、ポリアミド610、ポリアミド6T、ポリアミド6I/6T、ポリアミド612、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド46、ポリアミドMXD6及びコポリマー又はこれらの混合物、好ましくはポリアミド6、ポリアミド66及びポリアミド666、特に好ましくはポリアミド6が適している。
【0017】
この熱いガスは、一般に、キャリアガス及び、使用したポリアミドに対して、0.001〜20質量%、好ましくは0.1〜15質量%、特に好ましくは1〜10質量%の水及び0.001〜10質量%、好ましくは0.01〜5質量%、特に好ましくは0.02〜1質量%の酸若しくは無水物若しくはラクトン若しくはこれらの混合物、又はアンモニア若しくはアミン若しくはこれらの混合物を含有する。
【0018】
キャリアガスとして、加工条件下で不活性の全てのガス、例えばヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、窒素、好ましくは窒素又はアルゴン、特に好ましくは窒素が適している。
【0019】
酸として、無機酸又は有機酸が適している。
【0020】
無機酸として、リンの酸素酸、例えばリン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸並びにホスホナート、例えばホスホン酸含有有機リン化合物、例えば2−アミノエチルホスホン酸(AEPN)、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸(HEDP)、アミノ−トリス(メチレンホスホン酸)(ATMP)、エチレンジアミン−テトラ(メチレンホスホン酸)(EDTMP)、テトラメチレンジアミン−テトラ(メチレンホスホン酸)(TDTMP)、ヘキサメチレンジアミン−テトラ(メチレンホスホン酸)(HDTMP)、ジエチレントリアミン−ペンタ(メチレンホスホン酸)(DTPMP)、2−カルボキシルエチル−ホスホン酸(CEPA)、好ましくはリン酸、ホスホン酸及びジエチレントリアミン−ペンタ(メチレンホスホン酸)(DTPMP)、特に好ましくはリン酸が適している。
【0021】
有機酸として、一般式R1−COOH(式中、R1は、水素、C1〜C10−アルキル、好ましくはC1〜C8−アルキル、特に好ましくはC1〜C4−アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル又はtert−ブチル、殊にエチル又はn−プロピル及びフェニルを表す)の、短鎖及び長鎖の分枝された脂肪族又は芳香族モノカルボン酸、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、安息香酸、ピバル酸、好ましくは酢酸及びプロピオン酸、特に好ましくはプロピオン酸が適している。
【0022】
無水物として、一般式R1−C=O−O−O=C−R2(式中、R1及びR2は、同じ又は異なり、C1〜C10−アルキル、好ましくはC1〜C8−アルキル、特に好ましくはC1〜C4−アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル又はtert−ブチル、特にメチル又はエチルを表す)の鎖状無水物、並びに一般式−R3−C=O−O−O=C−(式中、−R3−は、2〜6個のC原子、好ましくは2〜4個のC原子、特に好ましくは2〜3個のC原子を有するアルキレン、2〜6個のC原子、好ましくは2〜4個のC原子、特に好ましくは2個のC原子を有するアルケニレン、2〜6個のC原子、好ましくは2〜4個のC原子、特に好ましくは2個のC原子を有するアルキニレンを表す)の環状無水物、例えば、無水酢酸、無水コハク酸、グルタル酸無水物、無水マレイン酸、無水フタル酸、好ましくは無水コハク酸、グルタル酸無水物、無水マレイン酸、特に好ましくは無水コハク酸及びグルタル酸無水物が適している。
【0023】
ラクトンとして、γ−、δ−及びε−ラクトン、例えばブチロラクトン、バレロラクトン、カプロラクトン、好ましくはブチロラクトン、カプロラクトン、特に好ましくはカプロラクトンが適している。
【0024】
アミンとして、第1級アミンR1−NH2、第2級アミンR12−NH、第3級アミンR123−N及び第4級アミンR1234−N+(X-)(前記式中、R1、R2、R3、R4は、相互に無関係に、C1〜C20−アルキル、好ましくはC1〜C8−アルキル、特に好ましくはC1〜C4−アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル及びイソプロピル、C3〜C20−シクロアルキル、好ましくはC3〜C8−シクロアルキル、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びシクロオクチル、特に好ましくは、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びシクロオクチル、アリール、例えばフェニル、1−ナフチル及び2−ナフチル、C7〜C20−アルキルアリール、好ましくはC7〜C12−アルキルフェニル、例えばベンジル及びフェニルエチル、C8〜C20−アルキルアリールアルキル、好ましくはC7〜C16−アルキルフェニルアルキル、例えば2−メチルベンジル及び2−メチル−フェニルエチルを表し、Xはハロゲン、例えばフッ素、塩素、臭素又はヨウ素、好ましくは塩素又は臭素、特に好ましくは塩素を表し、特に好ましくは、C7〜C12−アルキルフェニルアルキル、例えば2−メチルベンジル、C1〜C20−アミン、好ましくはC1〜C8−アミン、例えばメチルアミン、ジメチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、2−プロピルアミン、n−ブチルアミン、prim−ブチルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、2−ペンチルアミン、3−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、2−ヘキシルアミン、3−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、2−ヘプチルアミン、3−ヘプチルアミン、4−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、2−オクチルアミン、3−オクチルアミン、シクロプロピルアミン、シクロブチルアミン、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、シクロヘプチルアミン、シクロオクチルアミン、1,1,3,3−テトラメチルブチルアミン、N−エチルメチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジ−イソプロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジ−sec−ブチルアミン、ジ−n−ペンチルアミン、N−メチルプロピルアミン、N−エチルプロピルアミン、特に好ましくはメチルアミン、ジメチルアミン及びシクロヘキシルアミン、C2〜C20−ジアミン、好ましくはC2〜C8−ジアミン、例えば1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノプロパン、1,2−ジアミノブタン、1,3−ジアミノブタン及び1,4−ジアミノブタン、特に好ましくはC2〜C6−ジアミンが適している。
【0025】
特に、アンモニアが好ましい。
【0026】
酸又は無水物又はラクトン又はこれらの混合物の使用により、アミノ末端基の低減を達成することができる。
【0027】
アンモニア又はアミン又はこれらの混合物の使用により、カルボキシル末端基の低減を達成することができる。
【0028】
このように製造された高粘度のポリアミドは、一般に、フラットダイ又リングダイを通してフラットフィルム又はインフレートフィルムにする並びに小さな直径のリングダイを通してモノフィラメントにする溶融押出の間に特に加工安定性であることが判明した。
【0029】
一般に、存在する末端基(アミノ末端基とカルボキシル末端基)の非等モル比を提供するポリアミドの本発明による加工の際に、押出又は溶融時の再モノマー化率(Remonomerisierungsrate)、それと関連する粘度の低下、特に高粘度ポリアミド品質の低下並びに完成品、例えばフィルム、モノフィラメント、繊維又はカーペットにおける再生されたモノマーの含有量は低減される。
【0030】
アミノ末端基の数の低減は、更に、紡糸染色した繊維にとって好ましく、この場合、例えばこの繊維から製造されたカーペットの斑点発生のしやすさは明らかに低減することが判明した。
【0031】
固相後縮合の間にポリアミドを処理するための本発明による方法は、一般に、後縮合工程における顆粒の必要な滞留時間にほとんど不利な影響を及ぼさないか又は不利な影響を及ぼさない。一般に、それとは反対に意外にも促進が観察される。
【0032】
本発明により製造されたポリアミドから、多様な製品を製造することができる。この種の製品についての、限定ではない例は、フィルム、モノフィラメント、繊維、糸、繊維布等が含まれる。
【0033】
ポリアミド、例えばポリアミド6及びポリアミド666からなるフレキシブルな包装用のフィルムは、溶融押出によりフラットフィルム(フラットダイにより)としてもインフレートフィルム(リングダイにより)としても製造することができ、この場合、装置サイズ及び処理量に依存してポリアミド溶融液に高い剪断力が作用する。この溶融押出は、優先的に使用された高い粘度(RV3.3〜5.0)に基づいて、モノマーとポリマーとの平衡の反転及び熱分解について本質的に敏感である。両方の場合に、モノマーのε−アミノカプロラクタムの形成が起こり、これはガス状で周囲に漏出するか又は冷却された装置部材に沈着物として堆積する。特にフラットフィルム装置での高度の吸引システムにもかかわらず、ダイ沈着物又はチルロール沈着物が生じ、この沈着物は、定義された耐用時間の後に不純物として生産されたフィルムを汚染し、クリーニングのための停止を引き起こす。このクリーニングのための停止はフィルム製造を中断し、完成品の不十分な収率を引き起こす。
【0034】
高粘度のポリアミドの熱分解は、更に平均鎖長の低下を引き起こし、このことは相対粘度に基づいて測定技術的に検出することができる。このプロセスは、過酷な加工条件で、例えば高められた加工温度で増強され、従って、例えばフィルムの製造のための装置の処理量は制限される。
【0035】
本発明により製造されたポリアミドを使用する場合、ポリマー鎖の短縮或いは粘度の低下を引き起こす熱分解を減少させ、モノマーの逆生成を低減し、それと関連してクリーニングのための停止の回数を低減させ、従ってこの収率を改善することができる。
【0036】
加工安定性とは、本発明との関連で、例えばフィルム、モノフィラメント、繊維又は他の製品に溶融加工する間の本質的に丈夫な特性を意味し、この特性は、過酷な加工条件下での低減された粘度低下並びにモノマーであるカプロラクタムのわずかな逆生成及び放出により特徴付けられる。
【0037】
試験の部/実施例
実施例1
(添加物なしでの固相重縮合に関する窒素湿分の影響)
この固相重縮合反応器は、長さ1000mm及び内径100mmの鋼製の二重壁円筒形容器及びサーモスタットを備えたジャケットとからなっていた。この管は円錐部上に置かれ、この円錐部は水冷式の管と接続されていた。この冷却管は、搬出スクリューコンベアのスクリューの直上にまで顆粒を導いた。この反応器の上に2つのボール弁を備えたゲートが配置され、このゲートを通して前記顆粒を導入した。
【0038】
この反応器は異なるガス供給部を備えていた。このメインガス供給は、管の下側(円錐部)で行われた。このガス供給には、ガス容量のための流量測定装置並びに供給されるガスを所望の温度に加熱する3つの熱交換器が所属していた。この熱交換器の前方に、このガス流に添加物(水及びキャップ剤)を、所望の量を導入するHPLCポンプを介して供給した。この供給されたガスは孔の空いた管を介して顆粒中へ分配された。
【0039】
ポリマー顆粒として、152ml/gの粘度数を有する、すでに抽出されたPA6顆粒を使用した。
【0040】
この反応器は必要な充填レベルにまで充填され、この量について印を付けた(6kg)。このガス供給(多様な水濃度の窒素)を開始した。反応温度に達した後に、顆粒350gを添加し、管中で27時間の平均滞留時間を達成するために、2時間のリズムで搬出した。4日の運転時間の後で、この試料を取り出し、分析した。
【0041】
表1は、165℃及び173℃での多様に湿った窒素を用いた処理の場合の27時間の固相後縮合の後の粘度数を示す。
【0042】
【表1】
【0043】
実施例2
工程D)の多様な酸及び酸誘導体を用いた固相後重合の間の気相変性(不連続な運転法:バッチプロセス、水/添加物混合物)
ポリアミド顆粒6250gを140℃で9時間にわたり予備乾燥し、反応器中に充填し、173℃に加熱し、窒素2000l/hでパージした。この温度に達した後に、窒素流(300Nl/h)に、1〜10質量%の酸、酸無水物、ラクトン又はアミンを含む蒸気流(流量13.5g/h)を混合した。この蒸気流の達成のために、1〜10質量%の酸溶液、酸無水物溶液、ラクトン溶液又はアミン溶液をHPLCポンプで熱交換器を介して供給した(84g/h)。この試験を30時間行い、その際、試料1kgを10時間ごとに搬出させた。各試料取り出しの前に、試料の均質性を保証するために、材料500gを搬出させた。
【0044】
一連の多様な酸、酸無水物、ラクトン及びアミンについての結果は表2中にまとめられている。
【0045】
【表2】
【0046】
実施例3
多様な酸及び酸誘導体を用いた気相変性(連続運転法、水/添加物混合物)
使用される添加物を水に溶かした。水溶液の利用された濃度は、表3及び4の第2欄に見られる。連続的固相後縮合器中での添加の前に(高さ:1メートル;直径:0.1メートル;顆粒処理量:0.15kg/h)、水溶液に4体積%のキャリアガスの窒素を添加した。この添加物/水/N2混合物を、熱い窒素流(220℃)に供給し、試験規定に応じて異なる添加位置に計量供給した。全体の窒素量(20℃及び3.5barで0.366Nm3/h)は、15%(0.0549Nm3/h)が、この固相後縮合の管頂部の上端から約1/3のプロセス長さで計量供給され、85%(0.23113Nm3/h)が管端部に計量供給された。添加物を負荷した窒素による処理量は、170℃でかつ1barの常圧で、PA6 1kg当たり0.554Nm3であり、導入された水量は15.566g/hであった。「−M」で示した試験添加物(表3及び4の第1欄)の場合には、添加物/水溶液は上方の添加箇所(プロセス長さの1/3、上述のように)に計量供給した。
【0047】
これらの試験を固相後縮合器中で167℃で連続的に運転し、顆粒の滞留時間を34hで一定に保持した。生じる粘度数(VZ)及びモノマー含有率の区別は、表3から推知することができる。
【0048】
この試験中で、PA6 1kg当たり添加物100ppm〜PA6 1kg当たり10000ppmの添加物濃度が観察され、この場合、PA6 1kg当たり添加物100ppm〜PA6 1kg当たり添加物2000ppmの範囲が特に適していることが判明した。
【0049】
一連の多様な酸、酸無水物、ラクトン及びアミンについての結果は表3中にまとめられている。
【0050】
【表3】
【0051】
実施例4
多様な酸及び酸誘導体を用いた気相変性(連続運転法、非揮発性添加物の水溶液の超音波霧化)
霧化試験のために、Sonosys Ultraschallsysteme GmbH社(Neuenburg、ドイツ国)の超音波霧化器Megasonic Sonosysを使用した。添加物/水混合物は、実施例3と同様に製造した。この霧化は、室温で400kHz〜3MHzの範囲内で行った。この霧化混合物は、同様に、4体積%の窒素で富化し、熱い(220℃)窒素循環路に実施例3で記載された位置Mに供給した。
【0052】
連続固相後縮合器の試験構造並びに全ての利用された運転パラメータは、実施例3に挙げられたものに一致する。
【0053】
一連の多様な酸、酸無水物、ラクトン及びアミンについての結果は表4中にまとめられている。
【0054】
【表4】
【0055】
実施例5
実施例3及び4中で変性されたポリアミドの、フラットフィルムへ押出成形する間の加工安定性
フラットフィルム装置(Barmag90mmの一軸スクリュー押出機、25Dプロセス長さ+フラットダイ、処理量40kg/h)で、50μmのPA6単層フィルムを製造した(融液温度280℃、融液滞留時間8min)。この可塑化された融液を、冷却されたチルロール(20℃)上を走行させ、フィルムを巻き取った。この製造されたフィルムの試料について、HPLCで抽出組成物を、特にカプロラクタムの絶対含有率(Absolutgehalt)を測定した。
【0056】
この結果は、表5及び6中にまとめられている。
【0057】
表5は、これについて、連続法における気相変性についてのそれぞれの相違を含めた粘度数(VZ)並びに測定された残留モノマー割合(%)を有し、表6は連続法における霧化法についての同じ情報を有する。
【0058】
【表5】
【0059】
【表6】