特許第5805296号(P5805296)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5805296アミン吸収剤を用いて酸性ガスを除去する際のアミンの保持
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5805296
(24)【登録日】2015年9月11日
(45)【発行日】2015年11月4日
(54)【発明の名称】アミン吸収剤を用いて酸性ガスを除去する際のアミンの保持
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/14 20060101AFI20151015BHJP
   B01D 53/78 20060101ALI20151015BHJP
   B01D 53/62 20060101ALI20151015BHJP
   B01D 53/54 20060101ALI20151015BHJP
【FI】
   B01D53/14 210
   B01D53/78ZAB
   B01D53/62
   B01D53/54
【請求項の数】14
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-501645(P2014-501645)
(86)(22)【出願日】2012年3月30日
(65)【公表番号】特表2014-509561(P2014-509561A)
(43)【公表日】2014年4月21日
(86)【国際出願番号】EP2012055750
(87)【国際公開番号】WO2012131016
(87)【国際公開日】20121004
【審査請求日】2015年3月27日
(31)【優先権主張番号】11160742.0
(32)【優先日】2011年3月31日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ゲオルク ズィーダー
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ ノッツ
(72)【発明者】
【氏名】ウーゴ ラファエル ガルシア アンダルシア
(72)【発明者】
【氏名】ザンドラ シュミット
(72)【発明者】
【氏名】ペーター モーザー
【審査官】 山本 吾一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−126439(JP,A)
【文献】 特開平10−033938(JP,A)
【文献】 特開平09−262432(JP,A)
【文献】 特開平08−080421(JP,A)
【文献】 特開平05−245340(JP,A)
【文献】 特表2012−530597(JP,A)
【文献】 特表2012−520167(JP,A)
【文献】 特表2012−516762(JP,A)
【文献】 特表2012−500713(JP,A)
【文献】 特表2011−521774(JP,A)
【文献】 特表2010−516464(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/102877(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/020017(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/14
B01D 53/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体フローから酸性ガスを除去する方法において、
a) 前記流体フローを吸収区域中で、少なくとも1種のアミンの水溶液を有する吸収剤で処理し、
b) 前記処理された流体フローを、少なくとも2つの洗浄区域を通過するように案内し、非酸性の水相で処理して、連行されたアミン及び/又は連行されたアミン分解生成物を少なくとも部分的に、前記水相中へ移行させ、少なくとも1つの洗浄区域を介して水相をリサイクルし、かつ少なくとも1つの洗浄区域を通過するように水相をリサイクルせずに案内し、
第1の洗浄区域は吸収区域の上方に配置されており、第2の洗浄区域は第1の洗浄区域の上方に配置されており、その際、第2の洗浄区域を介して水相はリサイクルされ、第2の洗浄区域を介してリサイクルされた水相の部分流は第1の洗浄区域を通過するように案内され、第1の洗浄区域から流出する水相は前記吸収区域中で前記吸収剤と合一され、第2の洗浄区域を介してリサイクルされる水相を冷却する、流体フローから酸性ガスを除去する方法。
【請求項2】
前記洗浄区域が充填層、規則充填物及び/又はトレーを有する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記吸収区域が吸収塔中に配置されていて、少なくとも1つの洗浄区域が、前記吸収塔の、前記吸収区域の上方に配置された領域として構成されている、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記吸収区域が吸収塔中に配置されていて、少なくとも1つの洗浄区域が、前記吸収塔とは異なる洗浄塔中に配置されている、請求項1又は2記載の方法。
【請求項5】
供給水を第2の洗浄区域中へ供給する、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
負荷された吸収剤をストリッパ中で加熱により、前記吸収剤を部分的に蒸発させながら再生させ、前記酸性ガスを少なくとも部分的に放出させる、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
負荷された吸収剤をストリッパ中で加熱により、前記吸収剤を部分的に蒸発させながら再生させ、前記酸性ガスを少なくとも部分的に放出させ、前記放出された酸性ガスを冷却し、連行された水蒸気を少なくとも部分的に凝縮し、凝縮物を少なくとも部分的に供給水として使用する、請求項5記載の方法。
【請求項8】
前記供給水は、少なくとも部分的に新たな水を有する、請求項5記載の方法。
【請求項9】
新たな水の量は吸収剤循環路の水損失量にほぼ一致する、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記処理された流体フローを引き続き酸性の水溶液で洗浄する、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記処理された流体フローを、酸性の水溶液がリサイクルされる洗浄区域を通過するように案内する、請求項10記載の方法。
【請求項12】
酸性の水溶液として、二酸化硫黄含有ガスの処理から生じる酸性のプロセス水を使用する、請求項10又は11記載の方法。
【請求項13】
前記アミンは、少なくとも1種の第1級アミン又は第2級アミンを有する、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記アミンは、少なくとも1種のアルカノールアミン及び/又は少なくとも1種のピペラジン誘導体を有する、請求項1から13までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体フローから酸性ガスを除去する方法、例えば煙道ガスから二酸化炭素を除去する方法に関する。
【0002】
化学工業の数多くのプロセスにおいて、例えばCO2、H2S、SO2、CS2、HCN、COS又はメルカプタンのような酸性ガスを含有する流体フローが生じる。この流体フローは、例えばガスフロー、例えば天然ガス、精油所ガス、合成ガス、煙道ガス又は有機物質の堆肥化の際に生じる排気物質を含む反応ガスであることができる。この流体フローからの酸性ガスの除去は、様々な理由から望ましい。
【0003】
煙道ガスからの二酸化炭素の除去は、特に、いわゆる温室効果の主因と見なされている二酸化炭素の排出を避けるために用いられる。
【0004】
合成ガスは、主に一酸化炭素と水とからなる。合成ガスは、一般に炭化水素の部分酸化又は水蒸気改質によって製造される。この粗製合成ガスは、酸性ガス、例えば二酸化炭素、硫化水素又は硫化カルボニルを含み、これらは除去しなければならない。
【0005】
天然ガス中の酸性ガスの含有量は、適切な処理手段によって、天然ガス源で直接低減される、それというのも、この酸性ガスは、天然ガスにより頻繁に連行される水の中で、腐食性に作用する酸を形成するためである。
【0006】
工業的規模で、酸性ガス、例えば二酸化炭素を流体フローから除去するために、吸収剤として頻繁に有機塩基、例えばアミン、例えば特にアルカノールアミンの水溶液を使用する。この場合、酸性ガスの溶解の際に、塩基及び酸性ガス成分からイオン性の生成物が生成する。この吸収剤は、加熱、低圧での放圧又はストリッピングにより再生することができ、その際、このイオン性の生成物は反応して酸性ガスに戻るか及び/又は蒸気を用いて酸性ガスをストリッピング除去することができる。この再生プロセスの後に、吸着剤は再使用することができる。
【0007】
これらのアミンは、ただし無視できないほどの蒸気圧を有する。従って、酸素ガス不含の流体フローは微量のアミンを含有する。処理された流体フローの汚染は、様々な理由から望ましくない。処理された煙道ガスと一緒に微量のアミンが環境に漏れ出る場合にはこれは不都合である。
【0008】
合成ガスは他の触媒反応の出発材料である。この場合、微量のアミンは触媒として作用することがある。
【0009】
天然ガス又は天然ガスから液化により製造されるLPG(液化石油ガス)中のアミン含有量は同様に、制限が課せられることがある。
【0010】
先行技術の場合には、連行されるアミンを少なくとも部分的に水相中へ移行させるために、処理される流体フローを水相で洗浄することが提案された。
【0011】
EP0798029A2は、二酸化炭素の吸収のために塩基性アミン化合物を用いてガスを処理し、次いで、処理されたガスを、20〜60℃で水相と接触させ、連行された塩基性アミンを少なくとも部分的にこの水相内へ移行させる方法を開示している。この水相は好ましくは再生塔中に放出された二酸化炭素から凝縮された凝縮物であるべきである。
【0012】
US2008/0159937からは、ガスフローから二酸化炭素を除去する方法が明らかになっており、この場合、二酸化炭素が低減されたガスフローは吸収塔中の充填物部分中で水で洗浄される。水は再生塔の塔頂からの凝縮物であるか、又は損失量を補償するための新たな水であることができる。
【0013】
再生塔中に放出された二酸化炭素から凝縮された凝縮物を洗浄水として使用することは、吸収剤循環路の水収支に悪い影響を与えないという利点がある。他方で、この凝縮物は、限定された量で提供されるだけである。吸収剤を希釈させず、かつ方法中で水を蓄積させるために、新たな水を洗浄水として限定された量でのみ使用できる。この供給されるべき新たな水の量は、導入される流体フローと搬出されるフローとの含水量の差から生じる。図1中で示された配置について、例えば導入されるフロー1及び搬出される2つのフロー21及び25とは水収支の関係にある。損失量を補償するために必要な新たな水は、メークアップ水(図1中ではフロー11)ともいわれる。これらの搬出されるフローは水蒸気で飽和されている。導入される流体フローの含水量は、多様な条件に依存する。導入される、水で飽和された流体フローの場合、提供されるメークアップフローは、吸収と再生との間の圧力差が僅かになると共に減少する。従って、特に、吸収圧力がほぼ大気圧である煙道ガス洗浄の場合には、メークアップ水の提供される量は限られる。
【0014】
制限された洗浄水量でも十分な洗浄作用を達成するために、洗浄水を、単流で洗浄区域を通過させるのではなく、洗浄水をポンプ循環させるか又はリサイクルし、つまり、洗浄区域の下方で集めて洗浄区域の上方に再び供給することが提案される。任意に、洗浄水はこの場合に付加的な冷却器を介して導くこともできる。この冷却によって、処理される流体フローから水が凝縮される。洗浄水循環路中で洗浄される吸収剤成分の蓄積を防ぐために、洗浄水の部分量を搬出させ、メークアップ水に置き換える。洗浄水循環路から搬出される水は、通常では吸収剤循環路に導入される。
【0015】
2003年5月5〜8日の、USA、Alexandria VAでのSecond National Conference on Carbon Sequestration, National Energy Technology Department of Energyで発表されたSatish Reddy et al.のFluor's Econamine FG PlusSM Technologyは、ポンプ循環された洗浄水を用いる洗浄区域を備えたガス洗浄法の一般的な実施形態である。
【0016】
洗浄水のリサイクル及び任意な冷却により、洗浄作用を高めることができる。リサイクルされた洗浄水のメークアップ水に対する通常の体積比率は、10〜500の間である。このリサイクルによって、もちろん洗浄水のバックミキシングが生じる。リサイクルされる洗浄水のメークアップ水に対する極めて高い体積比率では、洗浄区域中での接触区間の長さに無関係に、この洗浄区域中で理論段の効率を最大に達することができるだけである。
【0017】
WO2010/102877は、二酸化炭素について低減されたガスフローを酸性水溶液で洗浄し、その中に含まれるアミン及び塩基性分解生成物の量を低減させる方法を記載している。二酸化炭素吸収区域と酸性洗浄との間に、水を用いた洗浄を設けることができる。
【0018】
本発明の基礎をなす課題は、処理された流体フローからアミンのより効率的な保持が可能な、流体フローから酸性ガスを除去する、特に煙道ガスから二酸化炭素を除去する方法を提供することである。
【0019】
本発明は、流体フローから酸性ガスを除去するにあたり、
a) 前記流体フローを吸収区域中で、少なくとも1種のアミンの水溶液を有する吸収剤で処理し、
b) 前記処理された流体フローを、少なくとも2つの洗浄区域を通過するように案内し、非酸性の水相で処理して、連行されたアミン及び/又は連行されたアミン分解生成物を少なくとも部分的に、前記水相中へ移行させ、少なくとも1つの洗浄区域を介して水相をリサイクルし、少なくとも1つの洗浄区域を通過するように水相をリサイクルせずに案内する、
流体フローから酸性ガスを除去する方法を提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】先行技術による、処理されるガスから連行された吸収液体を洗い出すための洗浄区域を備えた、ガスフローから酸性ガスを除去するための装置を示す。
図2】本発明による方法を実施するために適した、ガスフローから酸性ガスを除去するための装置を示す。
図3】本発明による方法の他の実施態様を実施するために適した、ガスフローから酸性ガスを除去するための装置を示す。
【0021】
この処理された流体フローを非酸性の液状の水相で処理して、連行されたアミン及び/又は連行されたアミン分解生成物を少なくとも部分的にこの水相中へ移行させる。換言すると、この流体フロー中へ入り込んだアミンはこの流体フローから再び洗い出される。この洗浄の際に、アミン分解生成物、例えばニトロソアミン又はアンモニアも、処理された流体フローから洗い出される。
【0022】
非酸性の水相として特に水自体が適している。この方法の実施の際に、他の複数の成分、例えばアミン及びアミン分解生成物は水相に移行することがありえるため、非酸性の水相は一般に程度に差はあるが水とは異なる成分を含有すると解釈される。この非酸性の水相は中性であるかもしくは連行されたアミン成分に基づいて僅かに塩基性である。一般に、この非酸性の水相のpH値は、7〜11、好ましくは8〜10である。
【0023】
洗浄区域中では、処理された流体フローに対してこの非酸性の水相は向流で案内される。好ましくは、この洗浄区域は、この流体フローと非酸性の水相との接触を強化するために、充填層、規則充填物及び/又はトレーを有する。この非酸性の水相は、洗浄区域の上方で、適切な液体分配器によって洗浄区域の横断面にわたって分配させることができる。
【0024】
吸収塔の領域は吸収区域と見なされ、この吸収塔中でこの流体フローは吸収剤と物質交換が行われるように接触される。
【0025】
好ましい実施態様の場合には、少なくとも1つの洗浄区域が吸収区域の上方に配置された吸収塔の領域として構成されている。好ましくは、非酸性の水相を用いた処理のための全ての洗浄区域は、吸収塔の吸収区域の上方に配置された領域として構成されている。この洗浄区域は、このために逆洗浄区域又は濃縮部として構成された、吸収塔の、吸収剤を供給口の上側の部分である。
【0026】
他の実施態様の場合には、少なくとも1つの洗浄区域は、吸収塔とは異なる洗浄塔、例えば充填層を備えた塔、規則充填物を備えた塔及び段塔中に配置され、この塔内で処理された流体フローは非酸性の水相で洗浄される。
【0027】
本発明の場合には、少なくとも1つの洗浄区域を介して非酸性の水相をリサイクルする。このために、この非酸性の水相は、この洗浄区域の下方で、例えば適切な捕集トレーを用いて集められ、ポンプによって洗浄塔の上端に供給される。好ましい実施態様の場合に、リサイクルされる非酸性の水相は、好ましくは20〜70℃の温度、特に30〜60℃の温度に冷却される。このために、非酸性の水相は好ましくは冷却器を介してポンプ循環される。洗い出された吸収剤成分が洗浄水循環路中に蓄積されることを避けるために、好ましくは非酸性の水相の部分流を排出し、供給水に置き換える。
【0028】
少なくとも1つの洗浄区域を通して非酸性の水相はリサイクルせずに案内され、つまり、この非酸性の水相は処理される流体フローに対して向流で、洗浄区域を単流で流通する。
【0029】
好ましい実施態様の場合に、第1の洗浄区域は吸収区域の上方に配置されており、第2の洗浄区域は第1の洗浄区域の上方に配置されており、その際、第2の洗浄区域を介して非酸性の水相はリサイクルされ、第2の洗浄区域を介してリサイクルされる非酸性の水相の部分量は、第1の洗浄区域を通過するように案内され、第1の洗浄区域から流出する非酸性の水相は吸収区域中で吸収剤と合一される。好ましい実施態様の場合に、第2の洗浄区域を介してリサイクルされた非酸性の水相は、好ましくは20〜70℃の温度、特に30〜60℃の温度に冷却される。このために、非酸性の水相は好ましくは冷却器を介してポンプ循環される。好ましくは、この部分流の体積を置き換えるために、供給水が第2の洗浄区域に供給される。
【0030】
他の実施態様の場合には、第1の洗浄区域は吸収区域の上方に配置されおり、第2の洗浄区域は第1の洗浄区域の上方に配置されており、その際、第1の洗浄区域を介して非酸性の水相はリサイクルされ、第2の洗浄区域に供給水が供給され、この供給水は、第2の洗浄区域を通過するように案内され、非酸性の水相と第1の洗浄区域中で合一される。好ましくは、リサイクルされた非酸性の水相の部分流は除去され、この部分流は好ましくは吸収剤循環路中へ導入される。この実施態様は一般にはあまり好ましくはない、それというのも、第2の洗浄区域は供給水だけで運転され、洗浄を機能させるために、例えば洗浄区域中の組込部材の濡らすために必要となる、水相についての水力的な必要量を下回ることがありえるためである。
【0031】
この供給水は少なくとも部分的に、再生の際に、例えばストリッパ中で放出される酸性ガスから凝縮される凝縮物を有することができる。この凝縮物を供給水として使用することは、この供給水が吸収剤循環路の水収支に悪い影響を及ぼさないという利点を有する。他方で、この凝縮物は、ストリッパ中の条件に依存して吸収剤からのアミンを含有することができるので、この凝縮物の洗浄効果は制限され、処理される流体フロー中の極めて低いアミン濃度を達成することはできない。従って、供給水として凝縮物を(もっぱら)使用することは、一般に好ましくない。
【0032】
好ましくは、供給水は少なくとも部分的に新たな水を含む。水、例えば高熱蒸気凝縮物は新たな水と見なされ、この新たな水は、有意な量のアミン、アミン分解生成物又は他の吸収剤成分を含有しない。吸収剤循環路の水収支に悪影響を及ぼさず、水の蓄積を防ぐために、好ましくは新たな水の量は、主に吸収剤循環路中での水損失量(メークアップ水)に一致する。
【0033】
処理される流体フローの本発明による洗浄は、連行されるアミン及び/又は連行されるアミン分解生成物の主要量の除去を可能にする。連行される最終的な微量アミンの除去及び/又は高い蒸気圧を有する塩基性アミン分解生成物の除去のために、処理される流体フローの十分な精製は、処理される流体フローを引き続き酸性の水溶液で洗浄する本発明による実施態様で達成される。このために、処理される流体フローは、酸性の水溶液がリサイクルされる洗浄区域を通過するように案内され、好ましくは洗浄塔、例えば充填層を備えた塔、規則充填物を備えた塔、段塔中へ案内される。これらの酸は、連行された微量アミン又はアミン分解生成物をプロトン化し、その蒸気圧を著しく低下させる。このプロトン化された化合物は、その塩状の特性に基づき、水相に容易に移行される。
【0034】
酸としては、無機酸又は有機酸、例えば硫酸、亜硫酸、リン酸、硝酸、酢酸、ギ酸、炭酸、クエン酸などが適している。好ましくは使用される酸は−4〜7のpKs値を有する。酸性の水溶液の好ましいpH値は3〜7、特に4〜6である。
【0035】
酸性の水溶液として、特に酸性のプロセス水が適している。この種の酸性のプロセス水は、特に二酸化硫黄含有ガスの処理の際に、例えばSO2予備精製工程において生じる。二酸化硫黄含有ガスの冷却もしくは予備洗浄の際に、酸性の凝縮物が得られ、これを酸性のプロセス水として使用することができる。
【0036】
酸性の水溶液中へのアミン及び/又はアミン分解生成物の吸収により、酸性の水溶液中でのアミン及び/又はアミン分解生成物の濃度は上昇する。酸性の水溶液中に溶解した塩の高すぎる濃度を避けるために、好ましくは、酸性の水溶液の部分流を排出し、これを新たな酸性の水溶液と置き換える。排出された部分流から、アミン又はアミン分解生成物、例えばアンモニアを少なくとも部分的に回収することができる。このために、この排出された水溶液を、アルカリ、例えば水酸化ナトリウムで処理することができ、その際、アミン又はアミン分解生成物が遊離される。
【0037】
これとは別に、この排出された水溶液を廃棄するか、又は排水処理に供給することもできる。
【0038】
吸収剤を用いた処理の前に、この流体フローを冷却しかつ湿らせる(クエンチング)ために、この流体フロー、例えば煙道ガスは、好ましくは水性の液体、特に水を用いた洗浄に供される。この洗浄の際に、粉塵又はガス状の不純物、例えば二酸化硫黄も除去することができる。二酸化硫黄含有ガスの処理の際に、上述の酸性の水溶液として使用することができるような酸性のプロセス水が得られる。
【0039】
流体フローの吸収剤での処理は、吸収塔又は吸収カラム、例えば充填層を備えた塔、規則充填物を備えた塔及び段塔中で行われる。この流体フローの吸収剤での処理は、好ましくは吸収塔中で向流で行われる。この流体フローは、この場合、一般に、この塔の下側の領域に供給され、吸収剤はこの塔の上側の領域に供給される。
【0040】
吸収剤の温度は、吸収工程中では一般に約20〜90℃、塔の使用の場合には、例えば塔頂で20〜60℃であり、かつ塔底で30〜90℃である。酸性のガス成分が少ない、つまりこれらの成分の濃度が低い流体フローと、酸性のガス成分が負荷された吸収剤とが生じる。
【0041】
酸性のガス成分が負荷された吸収剤から、再生工程において、二酸化炭素及び他の酸性ガスを放出させ、その際、再生された吸収剤を得ることができる。この再生工程において吸収剤の負荷が低減され、得られた再生された吸収液体は、好ましくは引き続き吸収工程に返送される。
【0042】
一般に、この負荷された吸収液体は、例えば70〜130℃に加熱、放圧、不活性流体でのストリッピング又はこれらの2つ又は全ての処置の組合せによって再生される。好ましくは、この負荷された吸収液体はストリッパ中で再生される。ストリッピングのために必要なストリッピングガスは、ストリッパの底部で吸収液体の部分的蒸発によって作成される。
【0043】
再生された吸収剤を再び吸収塔に供給する前に、この吸収剤は適切な吸収温度に冷却される。再生された熱い吸収剤中に含まれるエネルギーを利用するために、吸収装置から生じる負荷された吸収剤を間接的な熱交換器を通して再生された熱い吸収剤で予熱するのが好ましい。この熱交換により、負荷された吸収剤はより高い温度にもたらされるので、再生工程において僅かなエネルギー導入が必要なだけである。この熱交換により、既に、二酸化炭素を放出させながら、負荷された吸収剤の部分的な再生を行うこともできる。
【0044】
吸収剤は、少なくとも1つのアミンを有する。好ましくは、このアミンは少なくとも第1級アミン又は第2級アミンを有する。
【0045】
好ましいアミンは次のものである:
(i) 式Iのアミン
NR1(R22 (I)
式中、R1はC2〜C6−ヒドロキシアルキル基、C1〜C6−アルコキシ−C2〜C6−アルキル基、ヒドロキシ−C1〜C6−アルコキシ−C2〜C6−アルキル基及び1−ピペラジニル−C2〜C6−アルキル基から選択され、R2は、独立して、H、C1〜C6−アルキル基及びC2〜C6−ヒドロキシアルキル基から選択される;
(ii) 式IIのアミン
34N−X−NR56 (II)
式中、R3、R4、R5及びR6は、相互に独立して、H、C1〜C6−アルキル基、C2〜C6−ヒドロキシアルキル基、C1〜C6−アルコキシ−C2〜C6−アルキル基及びC2〜C6−アミノアルキル基から選択され、Xは、C2〜C6−アルキレン基、−X1−NR7−X2−又は−X1−O−X2−を表し、その際、X1及びX2は、相互に独立して、C2〜C6−アルキレン基を表し、R7は、H、C1〜C6−アルキル基、C2〜C6−ヒドロキシアルキル基又はC2〜C6−アミノアルキル基を表す;
(iii) 環中に少なくとも1つの窒素原子を有し、窒素及び酸素から選択される1つ又は2つの更なるヘテロ原子が環中に含まれていてもよい5〜7員の飽和複素環式化合物、及び
(iv) これらの混合物。
【0046】
特別な例は次のものである:
(i) 2−アミノエタノール(モノエタノールアミン)、2−(メチルアミノ)エタノール、2−(エチルアミノ)−エタノール、2−(n−ブチルアミノ)エタノール、2−アミノ−2−メチルプロパノール、N−(2−アミノエチル)−ピペラジン、メチルジエタノールアミン、エチルジエタノールアミン、ジメチルアミノプロパノール、t−ブチルアミノエトキシエタノール、2−アミノメチルプロパノール;
(ii) 3−メチルアミノプロピルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、2,2−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン、ヘキサメチレンジアミン、1,4−ジアミノブタン、3,3−イミノビスプロピルアミン、トリス(2−アミノエチル)アミン、ビス(3−ジメチルアミノ−プロピル)アミン、テトラ−メチルヘキサメチレンジアミン;
(iii) ピペラジン、2−メチルピペラジン、N−メチルピペラジン、1−ヒドロキシエチル−ピペラジン、1,4−ビス−ヒドロキシエチル−ピペラジン、4−ヒドロキシエチル−ピペリジン、ホモピペラジン、ピペリジン、2−ヒドロキシエチルピペリジン及びモルホリン;及び
(iv) これらの混合物。
【0047】
この中で、モノエタノールアミン、ピペラジン、メチルアミノプロピルアミン、ジエタノールアミン、1−ヒドロキシエチル−ピペラジンが特に好ましい。
【0048】
一般に、吸収剤は、10〜60質量%アミンを有する。
【0049】
この吸収液体は、添加剤、例えば腐食防止剤、酵素などを含有してもよい。一般に、この種の添加剤の量は、吸収液体の約0.01〜3質量%の範囲内にある。
【0050】
本発明の方法は、流体フロー、特に全ての種類のガスフローの処理のために適している。酸性ガスとは、特にCO2、H2S、COS及びメルカプタンである。更に、SO3,SO2、CS2及びHCNも除去することができる。一般に、この酸性ガスは、少なくともCO2を含むか、又はもっぱらCO2からなる。
【0051】
酸性ガスを含む流体は、一方で、ガス、例えば天然ガス、合成ガス、コークス炉ガス、分解ガス、石炭ガス化ガス、循環ガス、集積所ガス及び燃焼ガスであり、他方で吸収剤と、ほとんど混合不能な液体、例えばLPG(Liquefied Petroleum Gas)又はNGL(Natural Gas Liquids)である。
【0052】
好ましい実施態様の場合に、この流体フローは、次のものである:
(i) 水素含有の流体フロー;これには、例えば石炭ガス化又は蒸気改質により製造可能でありかつ場合により水性ガスシフト反応に供せられる合成ガスが数えられ;この合成ガスは、例えばアンモニア、メタノール、ホルムアルデヒド、酢酸、尿素の製造のため、フィッシャー・トロプシュ合成のため、又は石炭ガス化複合発電(IGCC)プロセスにおけるエネルギー獲得のために使用される;
(ii) 炭化水素含有の流体フロー;これには、天然ガス、多様な精製プロセスの排ガス、例えばテールガスユニット(TGU)、ビスブレーキング装置(VDU)、接触分解装置(LRCU/FCC)、水素化分解装置(HCU)、水素化処理装置(HDS/HTU)、コーキング装置(DCU)、大気圧蒸留(CDU)又は液体処理装置(例えばLPG)の排ガスが数えられる。
【0053】
本発明による方法又は吸収剤は、酸素含有の流体フロー、例えば煙道ガスの処理のために適している。
【0054】
好ましい実施態様の場合に、酸素含有の流体フローは、
a) 有機物質の酸化、
b) 有機物質を含む廃棄物の堆肥化又は貯蔵、又は
c) 有機物質の細菌による分解
から由来する。
【0055】
いくつかの実施態様の場合に、流体フロー中の二酸化炭素の分圧は、500mbar未満であり、例えば30〜150mbarである。
【0056】
この酸化は、火炎現象のもとで、例えば慣用の燃焼として、又は火炎現象なしの酸化として、例えば接触酸化又は接触部分酸化の形で実施することができる。燃焼が行われる有機物質は、通常では化石燃料、例えば石炭、天然ガス、石油、ガソリン、ディーゼル、ラフィネート又はケロシン、バイオディーゼル又は有機物質を含む廃棄物である。接触(部分)酸化の出発材料は、例えばギ酸又はホルムアルデヒドに反応させることができるメタノール又はメタンである。
【0057】
酸化、堆肥化又は貯蔵が行われる廃棄物は、一般に家庭ゴミ、プラスチック廃棄物又は包装ゴミである。
【0058】
有機物質の燃焼は、大抵は通常の燃焼装置中で空気を用いて行う。有機物質を含む廃棄物の堆肥化及び貯蔵は、一般にゴミ集積場で行われる。この種の装置の排ガス又は排気は、好ましくは本発明による方法により処理することができる。
【0059】
細菌による分解のための有機物質として、通常では、敷き藁、藁、水肥、汚泥、発酵残渣、サイレージなどが使用される。細菌による分解は、例えば通常のバイオガス装置中で行われる。この種の装置の排気は、好ましくは本発明による方法により処理することができる。
【0060】
この方法は、有機物質の(部分)酸化を用いる燃料電池セル及び化学的合成装置の排ガスの処理のためにも適している。
【0061】
上記の生成a)、b)又はc)の流体フローは、例えば周囲空気の圧力にほぼ一致する圧力、つまり常圧を有するか、又は常圧とは1barまで異なる圧力を有することができる。
【0062】
本発明は、添付された図面により及び次の実施例により詳細に説明される。
【0063】
図1は、先行技術による、処理されるガスから連行された吸収液体を洗い出すための洗浄区域を備えた、ガスフローから酸性ガスを除去するための装置を示す。
【0064】
図2は、本発明による方法を実施するために適した、ガスフローから酸性ガスを除去するための装置を示す。
【0065】
図3は、本発明による方法の他の実施態様を実施するために適した、ガスフローから酸性ガスを除去するための装置を示す。
【0066】
図1によるとガスフロー1は吸収塔2の下側部分に導入される。この吸収塔2は、吸収区域3,4及び洗浄区域5を有する。吸収区域3,4では、ガスは向流で吸収剤と接触し、この吸収剤は導管7を介してこれらの吸収区域の上方で吸収塔2内へ導入される。酸性ガスが減らされたガスは、洗浄区域5内で水相で洗浄され、この水相はポンプ8、冷却器9及び導管10を介してリサイクルされる。導管11を介して、損失量を補償するための新たな水(メークアップ水)が洗浄区域5に供給される。この洗浄区域5中で、水蒸気飽和された処理されたガスは同時に冷却され、それにより水は凝縮される。凝縮された水及びメークアップ水によって、洗浄循環路に液体が供給される。この洗浄循環路からの過剰の液相は導管12を介して吸収剤循環路内へ導入される。それにより、処理された煙道ガスから洗い出された吸収剤成分が洗浄水循環路中で蓄積されることは防止される。この処理されたガスフローは、吸収塔2から導管25を介して排出される。
【0067】
二酸化炭素で負荷された吸収剤は、吸収塔2の底部から取り出され、ポンプ13、熱交換器14及び導管15を介してストリッパ16中へ供給される。このストリッパ16の下方の部分で、負荷された吸収剤は蒸発器17を介して加熱され、部分的に蒸発させられる。この温度上昇により、吸収された二酸化炭素の一部は再び気相へ移行する。この気相18はストリッパ16の頂部から搬出され、凝縮器19に供給される。この凝縮物は相分離容器20中で集められ、ストリッパ16内へ戻される。ガス状の二酸化炭素は、フロー21として取り出される。再生された吸収剤22は、熱交換器14、ポンプ23、冷却器24及び導管7を介して吸収塔2に再び戻される。
【0068】
図2では、図1と同じ符号は図1と同じ意味を有する。この吸収塔2は、2つの洗浄区域5,6を有する。酸性ガスが減らされたガスは、洗浄区域6内で水相で洗浄され、この水相は導管26を介して洗浄区域6の上方に供給される。引き続き、この処理されたガスは洗浄区域5を通過し、水相で洗浄され、この水相はポンプ8、冷却器9及び導管10を介してリサイクルされる。導管11を介して、損失量を補償するための新たな水(メークアップ水)が洗浄区域5に供給される。洗浄水循環路からの過剰な液相は、吸収剤循環路中へ直接導入されず、導管26を介して洗浄区域6の上方に供給される。洗浄区域6から排出される水相は、この吸収塔2の内部で吸収区域3中へ入り込む。
【0069】
図3は、本発明の他の実施態様を示す。図3では、図2と同じ符号は図2と同じ意味を有する。吸収塔2から搬出される処理されたガスは、導管33を介して洗浄塔27に供給され、酸性の水溶液で洗浄され、この酸性の水溶液はポンプ28及び導管29を介してポンプ循環させられる。使われた酸性の水溶液は導管32を介して搬出される。新たな酸性の水溶液は導管30を介して供給される。この処理されたガスは、この装置から導管31を介して排出される。
【0070】
比較例1
図1による装置を使用した。この吸収塔は、直径600mmを有し、組込構造体として比表面積250m2/m3の構造化された充填物を使用した。この吸収剤の供給部の上方に、リサイクル部及び冷却部を備えた水洗浄のための洗浄区域が設置されていた。この洗浄区域の床の高さは3mであった。
【0071】
32質量%のモノエタノールアミンの水溶液を、塩基性吸収剤として使用し、これを40℃で供給した。この吸収塔には、40℃の温度及び含水率3.6体積%及びCO2含有率14.0体積%の煙道ガス(1563kg/h)を供給した。この装置中で、供給されたCO2の90%が分離された。ポンプ循環された洗浄水の量は5500kg/hであり、この洗浄水は41℃に冷却された。メークアップ水をこの装置に34kg/hで供給した。吸収セクションの上方のガスの温度は67℃であり、水洗浄によって41℃に冷却された。
【0072】
洗浄水中のモノエタノールアミンの含有率をガスクロマトグラフィーにより測定し、これは0.8質量%であった。
【0073】
実施例2
図2による装置を使用した。吸収剤の供給部の上方に、4.5mの高さの第1の洗浄区域(リサイクル無し)が設置され、この第1の洗浄区域の上方に、3mの高さの第2の洗浄区域がリサイクル部及び冷却部を備えた洗浄のために設置された。
【0074】
煙道ガスの量は1540kg/hであり、含水率3.6体積%で、CO2含有率14体積%を有し、比較例1と同様に90%が分離された。吸水剤中のモノエタノールアミンの含有率は27質量%であった。第2の洗浄区域中では5000kg/hの洗浄水が循環され、この場合、39℃に冷却された。メークアップ水をこの第2の洗浄区域に28kg/hで供給した。この第2の洗浄区域中でのガスの冷却(63.5℃から39℃に)により、付加的に水が凝縮した。188kg/hの水の体積フローが、第1の洗浄区域中へ導入された。
【0075】
この構成で、ガスクロマトグラフィーを用いて、リサイクルされた洗浄水中にモノエタノールアミンは検出できなかった。この検出限界は、0.01質量%であった。
【0076】
リサイクルされる洗浄水中のモノエタノールアミンに関する多様な含有率は、処理される流体フロー中のモノエタノールアミンの相応する含有率で校正する、つまり吸収塔から出る処理される流体フローは、実施例2中では、比較例1の場合よりも明らかに低いモノエタノールアミンを含有していた。
【0077】
シミュレーションモデルを用いて、両方の構造(比較例1及び実施例2)について計算を実施した。このシミュレーションモデルの基礎は、Chen et al. (Chen, C.C; Evans, L.B.: A local Composition Model for the Excess Gibbs Energy of Aqueous Electrolyte Solutions, AIChE J. (1986) 32(3), 444)によるElectrolyte-NRTLアプローチに基づく熱力学的モデルであり、このモデルを用いて、この系についての相平衡を記載することができる。この吸収工程のシミュレーションは、物質移行に基づくアプローチを用いて記載される;これについての詳細は、Asprion(Asprion, N.: Nonequilibrium Rate-Based Simulation of Reactive Systems: Simulation Model, Heat Transfer, and Influence of Film Discreti-zation,; Ind. Eng. Chem. Res. (2006) 45(6), 2054-2069)に記載されている。
【0078】
比較例3
この実施例は比較例1の装置構造に基づく。この吸収塔は、幾何学的表面積250m2/m3の構造化された充填物が取り付けられ、かつ直径600mmを有する。リサイクル部及び冷却部を有する洗浄区域は、3mの充填物高さを有する。
【0079】
このシミュレーションは次の値を基礎とする:CO2 14体積%及び水3.6体積%、酸素5.5体積%及び窒素76.9体積%の組成を有する煙道ガス1540kg/hを、40℃で吸収塔に供給する。ここでは向流で、29.3質量%のモノエタノールアミン水溶液を用いて、二酸化炭素の90%が分離される。この再生された吸収剤は40℃の温度で供給される。このリサイクルされた洗浄水は40℃に冷却される。メークアップ水については38kg/hが必要となる。この構造によって、水洗浄の搬出物で5v−ppmのMEAの残留含有量が計算される。
【0080】
実施例4
この実施例は実施例2の装置構造に基づく。吸収剤の供給部の上方に、4.5mの高さの第1の洗浄区域(リサイクル無し)が設置され、この第1の洗浄区域の上方に、3mの高さの第2の洗浄区域がリサイクル部及び冷却部を備えた洗浄のために設置された。
【0081】
第1の洗浄区域に、ガスに対して向流で、洗浄水209kg/hを供給し、この量は、第2の洗浄区域で供給されたメークアップ水と、ガスの冷却によって凝縮した水との量に相当する。従って、搬出されるガス中のモノエタノールアミン含有量40v−ppbが達成される。第1の洗浄区域中の液負荷は0.7m3/(m2h)であり、構造化された充填物の濡れ限界(Entnetzungsgrenze)(製造元の記載:0.2m3/(m2h);出典:Sulzerカタログ)上廻る。
【0082】
実施例5
実施例4の装置構造で洗浄区域を交換する。吸収剤の供給部の上方に、リサイクル部及び冷却部を備えた3mの高さの第1の洗浄区域が存在し、この第1の洗浄区域の上方に、3mの高さの第2の洗浄区域(リサイクル無し)が存在する。CO2貧有のガスはまず第1の洗浄区域を通過するように通され、引き続きメークアップ水に対して向流で第2の洗浄区域を通過するように通される。この第2の洗浄区域について、0.1m3/(m2h)の液負荷が生じるだけである。この液負荷は、使用した充填物の濡れ限界を下回り、十分な濡れもしくは均質な濡れを、従ってそれにより十分な分離効率を補償することができない。
図1
図2
図3